商標異議申立
2022-900335
ホテルオリンピア、ホテル、オリンピア
- 審判番号
- 2022-900335
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2021-136394
- 登録番号
- 6578915
- 請求日
- 2022年08月05日
- 審決日
- 2023年11月13日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】オーエルティー コンサルティング エルエルシー.
- 【権利者代理人】村越 智史
- 【異議申立人】オーエルティー
- 【異議申立人代理人】窪田 英一郎
- 【異議申立人】コミッティー インターナショナル オリンピック
- 【異議申立人代理人】田中 尚文
- 【異議申立人代理人】岡田 淳
- 【異議申立人代理人】渡部 彩
- 審判長/審判官
- 審判長 豊田 純一
- 審判官 小田 昌子
- 審判官 岩谷 禎枝
- 分類
- T1651.22 -Y (W1416182425) / T1651.25 -Y (W1416182425) / T1651.261-Y (W1416182425) / T1651.262-Y (W1416182425) / T1651.263-Y (W1416182425) / T1651.271-Y (W1416182425) / T1651.4 -Y (W1416182425)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項10号商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法8条1項商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第10号、商標法第8条第1項、商標法第4条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6578915号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6578915号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6578915号商標(以下「本件商標」という。)は、「Hotel Olympia」の文字を標準文字で表してなり、令和3年11月2日に登録出願、第14類「宝飾品,宝石箱,キーホルダー」、第16類「文房具類,ポスター,はがき,包装紙,包装用紙袋,紙製包装容器,ティッシュペーパー,絵画印刷物,紙製テーブルクロス,紙製ナプキン」、第18類「旅行かばん,バッグ,財布,動物用革製アクセサリー,革製の財布,革製小銭入れ,革製のハンドバッグ,革製買物袋,革製のケース」、第24類「ベッドカバー,敷布,テーブルクロス(紙製のものを除く。),織物製テーブルナプキン,ビーチタオル,タペストリー(壁掛け),タペストリー用又は刺しゅう用布」及び第25類「女性用被服,男性用被服,靴及び運動用特殊靴,靴下,スリッパ」を指定商品として、同4年6月14日に登録査定、同月28日に設定登録されたものである。
第2 登録異議申立人が引用する商標及び標章
1 登録異議申立人「オーエルティー」(以下「申立人1」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する登録商標及び標章は、以下の(1)及び(2)のとおりである。
(1)申立人1が、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、以下のア及びイのとおりであり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
ア 登録第5985182号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成27年12月8日に登録出願、第18類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同29年10月6日に設定登録されたものである。
イ 国際登録第1309950A号商標(以下「引用商標2」という。)は、「OLYMPIA LE-TAN」の欧文字を横書きしてなり、2015年7月24日にEUIPOにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、2016年1月22日に国際商標登録出願、第18類、第25類及び第35類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務として、平成29年12月22日に設定登録されたものである。
(2)申立人1が本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するとして引用する商標及び標章は、同人が業務に係る商品「かばん」(以下「申立人1商品」という。)を示す商標及び標章として、需要者の間に広く知られていると主張する引用商標2及び引用商標2と構成を同じくする標章(以下、これらをまとめていう場合は「申立人1商標及び標章」という。)である。
2 登録異議申立人「コミッティー インターナショナル オリンピック」(以下「申立人2」という。)が本件商標に係る登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する登録商標及び標章は、以下の(1)ないし(3)のとおりである。
(1)申立人2が、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に該当するとして引用する登録商標及び標章は、以下のア及びイのとおりである。
ア 国際登録第1128501号商標(以下「引用商標3」という。)は、「OLYMPIC」の欧文字を横書きしてなり、2011年9月16日にSwitzerlandにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、同年11月8日に国際商標登録出願、第1類ないし第22類、第24類ないし第45類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務として、平成27年6月19日に設定登録されたものであり、その後、2021年10月28日付けで国際商標登録原簿に記載された本件の登録の減縮があった結果、本件商標の指定商品及び指定役務は、第1類ないし第3類、第5類、第7類ないし第12類、第14類、第16類ないし第19類、第21類、第24類、第25類、第28類、第32類、第35類ないし第39類、第41類ないし第44類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務とされたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
イ 申立人2が、同人の運営・統括の中心となって開催する「オリンピック競技大会」やオリンピック・ムーブメントの普及・啓発事業を示すものとして、需要者の間に広く知られていると主張する標章は、引用商標3と構成を同じくする「OLYMPIC」の文字よりなる標章(以下「OLYMPIC標章」という。)である。
以下、引用商標3と「OLYMPIC標章」をまとめていう場合は「申立人2商標及び標章」という。
(2)申立人2が本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する国際登録第1056066号商標(以下「引用商標4」という。)は、「OLYMPIAN」の欧文字を横書きにし、2010年9月28日に国際登録出願、第1類、第3類ないし第6類、第10類ないし第12類、第14類、第17類ないし第19類、第25類、第32類、第35類ないし第40類、第42類ないし第44類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成25年9月13日に設定登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
(3)申立人2が本件商標は商標法第8条第1項に該当するとして引用する国際登録商標第1496460号商標(以下「引用商標5」という。)は、「OLYMPIAN」の欧文字を横書きにし、2019年6月26日に国際登録出願、第2類、第7類ないし第9類、第16類、第21類、第28類及び第41類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和5年6月30日に設定登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
第3 登録異議の申立ての理由
1 申立人1の登録異議の申立ての理由
申立人1は、本件商標は、商標法第4条第1項10号、同項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとし、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、申立人1が提出した証拠を表示する場合は、以下「甲第○号証A」とし、これを省略して「甲○A」のように記載する。
また、枝番号を有する証拠において、枝番号の全てを表示する場合は、枝番号を省略する。
(1)申立人1商標及び標章が申立人1商品を示すものとして広く知られていることについて
ア 申立人1は、フランスのパリを拠点とするファッション業界の世界的なリーディングカンパニーであり、「OLYMPIA LE-TAN」のブランド名の下、主にかばん類やアクセサリーの開発・製造販売を行っている。
申立人1商品は、世界中の国々で販売されており、現在までに少なくとも14,500点以上を販売し、現在までの総売上げは、少なくとも1,730万ユーロ(約25億円)を超える。
特に申立人1は、申立人1商標及び標章のブランド名の下、「ブッククラッチ」という、書籍のような外観を有するかばんの製造に注力しており、ブッククラッチについては、消費者の様々なニーズに応えられるよう、多様なデザインが用意されている(甲4A)。
申立人1が初めて、「OLYMPIA LE-TAN」の商標を付したかばんを公開したのは、2009年9月から同年10月10日までフランスのパリで行われた展覧会でのことであり(甲5A)、その後、申立人1商品を示す商標として我が国において広く知られるに至っている。
イ 我が国における売上げ
申立人1は、我が国では、2012年2月13日に初めて東京のナノ・ユニバースにおいて申立人1商品を納品し、その後、百貨店、コンセプトストア、国内ブティック、ネット通販を通じて、継続して申立人1商品などの製品を我が国において販売してきた(甲6A)。
申立人は、我が国では2018年から2022年の期間のみで、88点の申立人1商品を販売した。
我が国では、2020年1月15日に最初の新型コロナウイルス感染症の感染者が確認されたあと、営業の自粛などを求める新型コロナウイルス感染症対策が政府によって行われ(甲7A)、申立人1は積極的な営業活動や販促活動を控えることを余儀なくされた。
申立人1商品は、1つあたり3,400ユーロ(約50万円)ほどの金額で販売されており(甲4A)、かばんとしてはかなり高額な製品である。
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、申立人1が積極的な営業活動や販促活動を控えることを余儀なくされた状況においても申立人商標を付したかばんの購入が行われたことは、すでにその当時、申立人1商標及び標章の知名度がかなり高かったことを示すものである。
そして、2012年に我が国で申立人1商品の販売が開始されてからの全期間(10年間)の総売上げは、少なくとも64万ユーロ(約9,400万円)を超える。
ウ 紹介記事、広告・宣伝等
我が国においては、「ELLE Japon」2010年2月号、「VOGUE Japan」2012年3月号を始めとして継続的に雑誌やウェブページにおいて、申立人1商品についての紹介記事を掲載してきた(甲8A)。
さらに、著名人のソーシャルネットワークサービスにおいても、申立人1商品についての投稿が行われ、多くのユーザーがこの投稿を閲覧している(甲9A)。
エ 小括
申立人1商標及び標章を用いて販売されたかばんの数、売上げは決して高いものとはいえないが、著名人やインフルエンサーがこのかばんを持ち歩いたり、購入したことにより、当該商品は世界中から注目を集め、雑誌記事にも見られるように、我が国でも申立人1商標及び標章は、ファッションに興味のある需要者には、極めて注目されている。
以上から、申立人1商標及び標章は、かばんの需要者の間で広く認識されていたといえ、周知性を獲得するに至っていた。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標1とが類似すること
(ア)本件商標は、「Hotel Olympia」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「Hotel」の文字と「Olympia」の文字は、1文字分程度のスペースを空けて表されていることから、視覚上分離して観察される。
そして、「Hotel」の文字部分は、ホテルや旅館を意味する平易な英単語であるため、需要者は通常そのような単語であると理解する(甲10A)。
また、「Hotel」の文字はしばしば他の単語と組み合わせて「○○ Hotel」又は「Hotel ○○」といった態様で用いられる(甲11A~甲14A)。
以上のとおり、「Hotel」の文字が他の単語と組み合わせた態様で商品に用いられた場合には、需要者はその表示に接したときに、その商品や役務を提供する事業者がホテル業を営むものであろうと認識するにすぎず、「Hotel」の文字は識別力が乏しいため、「Hotel ○○」といった態様の商標に接した需要者は、むしろ「Hotel」の文字と組み合わされた単語から出所の認識を行うのが通常であって、「Hotel」の文字のみでは、具体的な出所を認識することはできない。
一方、「Olympia」の文字は、人名であるところの「オリンピア」、絵画である「オランピア」、古代オリンピックが開催されたギリシャの地名である「オリンピア」などを意味する語であり、一般に広く親しまれた語である(甲15A)ところ、本件商標の指定商品との関係において、商品の特定の特徴を想起させるものではなく、記述的とは解されない。
そうすると、本件商標は、その構成中の「Olympia」の文字が商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与え、当該文字をもって取引に資されるということができるから、「オリンピア」の称呼ならびに人名であるところの「オリンピア」、絵画である「オランピア」、及び古代オリンピックが開催されたギリシャの地名である「オリンピア」などの観念を生じるものである。
(イ)引用商標1は、横長の黒い楕円形の内側に筆記体で白抜きの「Olympia」の欧文字と活字体で白抜きの「U.S.A.」の欧文字を配置してなるところ、その構成中の「U.S.A.」の欧文字は、「Olympia」と比べてかなり小さく、商標全体のうち、かなりの割合を「Olympia」の文字が占めている。
さらに、引用商標1の全体から特定の意味合いを生ずるものでないから、各構成文字を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえない。
そうすると、引用商標1は、その構成中「Olympia」の欧文字が商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与え、当該文字部分のみをもって取引に資されるということができるから、「オリンピア」の称呼を生じ、また、人名である「オリンピア」、絵画である「オランピア」、及び古代オリンピックが開催されたギリシャの地名である「オリンピア」などの観念を生じる。
(ウ)本件商標と引用商標1との類否について検討するに、両商標は、「Olympia」の欧文字部分を共通にするものであるから、外観において近似した印象を与える。
次に、本件商標と引用商標1は、「オリンピア」の称呼を生じ、また、人名であるところの「オリンピア」、絵画である「オランピア」、及び古代オリンピックが開催されたギリシャの地名である「オリンピア」などの観念を生じるから、称呼及び観念を同一にする。
そして、本件商標は、第18類「旅行かばん、バッグ」等の商品を指定商品としているところ、引用商標1は、「米国でデザインされたラゲッジ」等を指定商品としており、これらは類似である。
イ 本件商標と引用商標2が類似すること
(ア)引用商標2についてみると、その構成中の「OLYMPIA」の文字と「LE-TAN」の文字は、半角分程度のスペースを空けて表されていることから、視覚上分離して観察される。
そして、引用商標2の構成中「OLYMPIA」の文字は一般に広く親しまれた語であるところ(甲15A)、当該文字と「LE-TAN」の文字を組み合わせた引用商標2は、構成全体として特定の意味合いを生ずるものではないことから、これらが不可分に結合しているとはいえない。
加えて、「OLYMPIA」の文字は、その指定商品との関係で商品の品質を表すものとみるべき事情はない。
さらに、「OLYMPIA」の文字は、一般に広く親しまれた語であるのに対して、それに続く「LE-TAN」の文字は、一般になじみがない語である。
しかし、引用商標1の構成中の「OLYMPIA」の文字が人名であることから、それに続く「LEーTAN」の文字は、姓を表すものであると多くの需要者は理解する。
そして、このような人名と姓の組み合わせにおいては、なじみのある「OLYMPIA」の文字が需要者には着目されることになる。
したがって、引用商標2は、その構成中の「OLYMPIA」の文字が商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与え、当該文字をもって取引に資されるということできる。
(イ)本件商標と引用商標2の類否についてみると、両商標は、「OLYMPIA(Olympia)」の文字を共通にするものであるから、外観において近似した印象を与える。
さらに、本件商標と引用商標2は、「オリンピア」の称呼を生じ、また、人名であるところの「オリンピア」、絵画である「オランピア」、及び古代オリンピックが開催されたギリシャの地名である「オリンピア」などの観念を生じるものであるから、称呼及び観念を同一にする。
そして、本件商標は、第18類「旅行かばん、バッグ」等及び第25類の商品を指定商品としているところ、引用商標2は、第18類及び第25類の商品を指定商品としており、これらは類似である。
ウ まとめ
したがって、本件商標は、引用商標1及び引用商標2と類似し、その指定商品も互いに類似するから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第10号について
ア 申立人1商標及び標章が申立人1商品を示すものとして広く知られている。
イ 本件商標と申立人1商標及び標章は、外観において近似した印象を与えるものであり、称呼及び観念を同一にするものであるから、両商標は、相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
ウ 申立人1商標及び標章は、申立人1商品を示すものとして、本件商標の登録出願時及び現在においても広く知られているところ、申立人1商品であるかばんと本件商標の指定商品中の「旅行かばん,バッグ,財布,動物用革製アクセサリー,革製の財布,革製小銭入れ,革製のハンドバッグ,革製買物袋,革製のケース」は、類似である。
エ 以上より、本件商標は、申立人1商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている申立人1商標及び標章と類似する商標であって、申立人1商品であるかばんと類似する商品について使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と申立人1商標及び標章の類似性
本件商標と申立人1商標及び標章は、相紛れるおそれのある類似の商標及び標章である。
イ 申立人1商標及び標章は広く知られていること及び特徴
申立人1商標及び標章は、本件商標の登録出願時において、既に広く知られるに至っており、現在においても、申立人1商品を示すものとして広く認識されている。
ウ 商品間の関連性、需要者の共通性及び取引の実情
本件商標の指定商品は、いずれもファッション分野に関係する商品として、一般的な消費者、特にファッションへの関心の高い男女を需要者とする商品である。
一方、申立人1商標及び標章は、申立人1商品を示すものとして広く認識されているところ、申立人1商品であるかばんの需要者も一般的な消費者、特にファッションへの関心の高い男女であるから、需要者を共通にする。
エ 申立人1の名称と本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)の名称が類似していること
申立人1はフランス国の法人であって、その名称を「OLT(オーエルティー)」とする会社である。
一方、本件商標権者の名称はその名称が「OLT Consulting LLC.(オーエルティー コンサルティング エルエルシー)とするアメリカ合衆国の会社である。
申立人1と本件商標権者は、いずれもその名称に「OLT(オーエルティー)」の文字を含むものの、その間には資本関係・人的関係は一切なく、両会社は、全く関係ない別会社である。
このような状況において、申立人1商標及び標章と類似する本件商標の登録を認めると、需要者・取引者は、本件商標が付された商品が申立人1の業務に係る商品であると誤認する可能性が高い。
オ 申立人1による「HOTEL OLYMPIA」の使用
申立人1は、我が国においては、2016年に「HOTEL OLYMPIA」の名称のコレクションを商品化・発売している。
例えば、このコレクションのために2015年頃から製品や製品のスケッチ、刺しゅうを用意しており、申立人1によって販売されたこのコレクションについては、インターネット上でも多くの情報が発信されており、また、伊勢丹新宿店でも当該コレクションのポップアップショップが現れるなどし、雑誌「VOGUE」においても、当該コレクションのレビューがされた(甲16A)。
以上のとおり、申立人1の「HOTEL OLYMPIA」コレクションは、需要者、消費者の間でよく知られたものである。
カ 上記の事情を考え併せると、本件商標権者が、本件商標をその指定商品に使用した場合、申立人1商標及び標章が需要者の間で広く知られるに至っていることに鑑みれば、本件商標に接した需要者は、本件商標から申立人1商標及び標章を連想し、本件商標の指定用品と申立人1商品が同一又は類似であることも踏まえれば、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあり、又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者による商品であると誤認して商品の出所について混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 申立人2の登録異議の申立ての理由
申立人2は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同法第8条第1項に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第121号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、申立人2が提出した証拠を表示する場合は、以下「甲第○号証B」とし、これを省略して「甲○B」のように記載する。
また、枝番号を有する証拠において、枝番号の全てを表示する場合は、枝番号を省略する。
(1)商標法第4条第1項第7号について
ア 申立人2について
申立人2は、近代オリンピックの創始者であるフランス人、ピエール・ド・クーベルタン男爵の提唱で1894年6月23日に設立されたオリンピック競技大会を運営・統括する国際的な非政府の非営利団体であり、世界中の競技者を一同に集めて開催される偉大なスポーツの祭典たるオリンピック競技大会の運営・統括と共に、オリンピックの理念であるオリンピズムを具現化し、次の世代へと受け継いでいく様々な活動たるオリンピック・ムープメントを統括する最高機関として、オリンピック憲章に従い、オリンピズムを普及させる役割を担っている(甲4B)。
イ OLYMPIC標章の著名性について
(ア)申立人2が運営・統括に携わる、近代オリンピック競技大会の誕生は、今から120年以上前の1896年であり、同年に第1回オリンピックアテネ大会が開催され、以後、オリンピック競技大会は1世紀以上にわたり、美と技を競う世界規模の平和とスポーツの祭典として原則として2年又は4年に一度開催されてきた。
近年に開催されたオリンピック競技大会では、200国を超える多くの国、1万人を超える多数の選手が参加しており、テレビ・インターネット・ラジオを通じて世界中の人々に視聴された(甲5B、甲6B)。
我が国で出版されたオリンピック競技大会に関する書籍からは、同競技大会が我が国でも大いに注目されており、OLYMPIC標章が、オリンピック競技大会を表すものとして、120年以上もの間継続して使用されてきた事実をうかがい知ることができる(甲7B~甲66B)。
以上より、1896年の第1回オリンピックアテネ大会以降、120年以上の長期にわたり、世界の各都市を舞台として盛大に開催されてきたオリンピック競技大会を指称するOLYMPIC標章は、全世界で老若男女問わず、申立人2がその運営・統括の中心となって開催するオリンピック競技大会やその関連活動等を広く示すものとして認識されており、その程度は極めて高く、世界でも最も著名な標章の一つであるとともに、公益性も非常に高いものである。
(イ)申立人2及びOLYMPIC標章の公益性については、オリンピック憲章では、申立人2の使命として、「スポーツと文化および教育を融合させる活動を奨励し支援する」と規定されており(甲4B)、かかる規定に基づき、申立人2は、オリンピック・ムーブメントの一環として、様々な教育・文化活動を世界的規模で行い、OLYMPIC標章は、これらの各種教育・文化活動についても広く用いられ、親しまれている。
我が国では、日本オリンピック委員会(JOC)等がオリンピック・ムーブメントの普及・啓発事業として、各種の教育・文化活動を国内で行っている(甲67B~甲119B)。
以上より、申立人2は、多くの協力者とともに、オリンピック・ムーブメントと呼ばれるオリンピックの理念であるオリンピズムを具現化し、次の世代へと受け継いでいく様々な活動を行い、また、オリンピック憲章に従い、オリンピズムを推進すべく、普遍かつ恒久的な活動を行っている。
(ウ)このように極めて公益性が高く、世界各国で著名に至っていることが明白なOLYMPIC標章と同一又は類似、あるいは、これとの関連性を想起させるような商標の登録・使用が認められれば、スポーツによる教育、平和への貢献といったオリンピック・ムーブメントにより築き上げられた価値観が棄損され、公益に反する結果を招くことは想像に難くなく、我が国でもオリンピック・ムーブメントの公益的な目標の達成に向けて官民一体となって邁進していたことは記憶に新しいことも鑑みると、本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性の検討に際しては、OLYMPIC標章及びこれが使用される各種活動の公益性という点が十分に考慮されるべきである。
ウ 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
(ア)申立人2は、オリンピズムの理念に基づいてオリンピック競技大会を頂点としたオリンピック・ムーブメントを主導的な立場で推進してきたが、申立人2と何ら関わりのない本件商標は、著名なOLYMPIC標章に便乗し、その信用、名声にあやかろうとする意図が明らかであって、申立人2が推進してきたオリンピック・ムーブメントが阻害されることを意味する。
(イ)本件商標の構成中の「Olympia」の文字と「OLYMPIC」の文字とを比較するに、両者は7文字中6文字において共通する一方、語尾におけるアルファベット「a」と「C」との差異を有するにすぎないことから、OLYMPIC標章と見誤るおそれがある。
また、OLYMPIC標章に関連して、「オリンピズム/OLYMPISM」や「オリンピアン/OLYMPIAN」等の「オリン(ピ)/OLYMP」を語頭に含む表現が多用されている現状がある。
そうすると、本件商標は、OLYMPIC標章に着想を得た名称であると容易に理解され、これに接する需要者等をしてOLYMPIC標章との関連性を想起させる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)を総合的に勘案すると、本件商標は、本来的にOLYMPIC標章に由来し、これを派生させたものであることは明白であって、OLYMPIC標章に化体した信用にただ乗りし、不正な利益を得ようとしたものと考えられ、スポーツを通じ、平和でよりよい世界の実現に貢献するという、公共の利益を追求するオリンピック競技大会の尊厳が害されるおそれがあるのみならず、OLYMPIC標章の著名性にあやかって不正な利益を得ようとするものであり、公正な取引秩序を乱すばかりか、国際信義及び公序良俗にも反するものである。
そうすると、申立人2と何ら関係のない本件商標権者が本件商標を独占して使用することは、オリンピック憲章に基づき開催されるオリンピック競技大会の権威を損なうおそれがあるばかりか、社会公共の利益に反し、公の秩序を乱すものであり、本件商標は、OLYMPIC標章に化体した信用、名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって、OLYMPIC標章の特徴を模倣して登録出願し登録を受けたものであり、商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護するという商標法の目的に反するものであるから、公正な取引秩序を乱し、商道徳に反するものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第11号又は同法第8条第1項について
ア 本件商標について
本件商標は、「Hotel Olympia」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「Hotel」の文字は、「ホテル」の語の英語表記として我が国で親しまれているものであり、本件商標の指定商品との関係において商品の販売地等を表したものと認識させるものであることに鑑みると、その指定商品との関係で自他商品識別機能を発揮するとはいい難い。
そして、本件商標にあっては、その構成上、「Hotel」の文字と「Olympia」の文字とを常に一体として把握しなければならないとする特段の事由は存在しないばかりか、「Hotel」の文字は、本件商標の指定商品との関係で独占適応性が極めて低いことから、「Olympia」の文字のみが自他商品識別機能を発揮する要部として需要者・取引者をして認識され、当該文字に相応した「オリンピア」の称呼のみをもって、実際の商取引に資されることも少なくない。
イ 引用商標4及び引用商標5について
引用商標4及び引用商標5は、「OLYMPIAN」の欧文字を横書きしてなるところ、当該文字に相応して、「オリンピアン」の称呼が生じる。
ウ 本件商標と引用商標4及び引用商標5の類否について
本件商標と引用商標4及び引用商標5は、語尾音における弱音「ン」の有無の差異のみであり、語尾音は一般に聴取し難いことに鑑みると、これらを一気一連に称呼した場合、これらは聴別し難く、称呼上相紛らわしい互いに類似する商標といえる。
エ 本件商標の指定商品と引用商標4及び引用商標5の指定商品について
本件商標の指定商品と引用商標4及び引用商標5の指定商品は、同一又は類似のものである。
オ 小括
本件商標は、引用商標4と類似し、本件商標の指定商品と引用商標4及び引用商標5の指定商品は同一又は類似のものであって、引用商標4は、本件商標の登録出願日及び登録査定日より先に登録出願及び登録査定されたものであるから、引用商標4との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
また、本件商標は、引用商標5と類似し、本件商標の指定商品と引用商標5の指定商品は同一又は類似のものであって、引用商標5は、本件商標の登録出願日より先に登録出願されたものであるから、引用商標5との関係において、商標法第8条第1項に該当するものである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア OLYMPIC標章の著名性について
OLYMPIC標章は、我が国を含む全世界で著名性の高いものである。
そして、オリンピック競技大会の開催を始めとするオリンピック・ムーブメントの諸活動を継続的に実施するためには、莫大な費用が必要であり、オリンピック・ムーブメントの推進には、民間企業等の資金的・技術的な協力が不可欠であることから、申立人2は、世界各国でオリンピック・ムーブメントの推進と、オリンピック競技大会運営のための資金調達を目的としたマーケティング活動を実施している。
このようなマーケティングの主なものとしては、スポンサーシップ、放映権、ライセンシングがある(甲120B、甲121B)。
このうち、スポンサーシップ契約は、原則として1業種につき1社のみとされ、これにより契約したスポンサーは、契約したスポンサーの種類に応じ、「OLYMPIC」の名称、オリンピック・シンボル(五輪マーク)、大会のエンブレムと大会マスコット等のオリンピック資産を利用した様々なマーケティング活動を行うことができる。
オリンピックのスポンサー契約のうち、最高位のスポンサーシッププログラムは、申立人2が1985年にスタートさせたTOP(THE OLYMPIC Partner)プログラムであり、TOPスポンサー企業は、世界的規模で、契約を締結した各分野について独占的に、オリンピック資産を活用したマーケティングを行うことが可能となり、オリンピック開催国では、国内マーケティングプログラムが用意され、TOPスポンサーの業種との調整を踏まえて、業種別にスポンサー企業が決められることになっている(甲121B)。
このような、マーケティング活動を介しても、OLYMPIC標章は著名なものとなっていることが容易に理解できるものである。
イ 出所の混同のおそれについて
(ア)商標法第4条第1項第15号の適用にあたっては、混同を生ずるおそれがある対象が当該他人の使用する商標であるかは全く問題とならず、同法上の商標としては認められないものの、商品等との関係で周知・著名な当該他人の名称や略称、又はその者に係る各種活動等も当然にその対象に含み、かつ、出願商標の採択の必要性、取引の実情等を多角的に十分に勘案した上で同号の該当性を判断するのが、規定上の文言及び立法趣旨からも妥当である。
このような状況において、申立人2の使用に係るOLYMPIC標章が、1894年から現在に至るまでおよそ130年以上にわたり、世界最大級のスポーツの祭典であるオリンピック競技大会を指称する商標として使用されており、オリンピック競技大会といったスポーツの興行の企画・運営にとどまらず、これに関連した広範な商品や役務との関係で著名である。
(イ)本件商標の構成中の「Hotel」の文字は、「ホテル」の語の英語表記として我が国で親しまれているものであり、その指定商品との関係では、自他商品識別機能を発揮するとはいい難いことから、本件商標は、「Olympia」の文字が本件商標の要部として把握されることが少なくないとともに、「Olympia」の文字とOLYMPIC標章とは、語頭の「Olympi(OLYMPI)」を共通することに加え、申立人2は、OLYMPIC標章との関係で「オリンピアン」や「オリンピズム」等の「オリンピ」を語頭に含む表示を多用していることも考慮すると、OLYMPIC標章の高い著名性と相まって、本件商標は、OLYMPIC標章関連の一群の商標と認識され得るものである。
(ウ)申立人2は、各企業とのスポンサーシップ契約を締結し、それらのスポンサーがオリンピック資産を利用した様々なマーケティング活動を行っているという実態があることからすれば、著名なOLYMPIC標章との関係性を容易に想起させる本件商標が付された本件商標の指定商品が実際の商取引に資された場合、これに接した需要者・取引者は、申立人2あるいは国内オリンピック委員会(我が国においては日本オリンピック委員会)と正式なスポンサー契約を締結した、オフィシャルスポンサーの業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
ウ 小括
したがって、申立人2が中心となって開催されるオリンピック競技大会やオリンピック・ムーブメントの普及・啓発事業を表示する「OLYMPIC」標章と密接な関連性を印象付ける本件商標を、本件商標権者が、その指定商品に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、オリンピック競技大会を容易に想起又は連想し、申立人2あるいは日本オリンピック委員会とスポンサー関係にある者の業務に係る商品であると商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
第4 当審の判断
1 申立人1商標及び標章の周知性について
(1)申立人1の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 申立人1は、フランスを拠点とするファッション関連の企業であり、申立人1商標及び標章のブランド名の下、「ブッククラッチ」という、書籍のような外観を有するかばんを製造している。
なお、申立人1は、2009年9月から同年10月10日までフランスのパリで行われた展覧会で申立人1商標及び標章を付したかばんを公開した(甲5A)と主張するが、その開催日は確認できない。
イ 2012年から2020年にかけて、我が国の百貨店、企業及び個人宛ての申立人1商標及び標章が付されたインボイスにおいて、「BOOK CLUTCH」という商品が納品されたことは認められるが、当該商品に申立人1商標及び標章が表示されたことは確認できない(甲6A)。
ウ 2010年2月から2021年9月にかけて、我が国で発行された複数の女性向け雑誌及びウェブサイトにおいて、申立人商標Aについての記載や申立人1商品の写真が掲載されていることが推認できるが、当該雑誌の発行部数やウェブサイトの閲覧回数等は確認できない(甲8A)。
著名人のSNSの記事には、書籍様商品の写真が掲載されているが、当該商品に申立人1商標及び標章が表示されたことは確認できず、また、当該SNSの掲載時期も確認できない(甲9A)。
エ 申立人1は、我が国で申立人1商品の販売が開始されてからの10年間の総売上げが64万ユーロ(約9,400万円)を超える旨主張しているが、当該主張を裏付ける証拠の提出がないのに加え、当該売上高についてもさほど多いとはいえない。
(2)上記(1)からすると、2012年から2020年にかけて、我が国の百貨店、企業及び個人宛てに「BOOK CLUTCH」という申立人1商品が販売されたことが認められものの、当該商品に申立人1商標及び標章が表示されたことは確認できない。
また、2010年2月から2021年9月にかけて、我が国で発行された複数の女性向け雑誌及びウェブサイトにおいて、申立人1商標及び標章が紹介されていることが推認できるものの、当該雑誌の発行部数は不明であり、ウェブサイトの閲覧回数も不明である。
さらに、著名人のSNSの記事には、書籍様商品の写真が掲載されているのみで、当該商品に申立人1商標及び標章が表示されたことは確認できず、また、当該SNSの掲載時期も確認できない。
加えて、申立人1商品の売上高についてその主張を裏付ける証拠の提出はなく、そのほかに申立人商品1の販売数、宣伝広告の程度、市場シェア、需要者の認知度を示すアンケート等についての証拠の提出もない。
そうすると、申立人1より提出された証拠及び同人の主張によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人1商標及び標章が、申立人1又は申立人1商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く知られていると認めることはできない。
2 申立人2商標及び標章の周知性について
(1)申立人2の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 申立人2は、1894年に設立された、オリンピック競技大会を運営・統括する国際的な非政府の非営利団体であり、オリンピック競技大会は、1896年の第1回オリンピックアテネ大会以降、120年以上にわたり、美と技を競う世界規模の平和とスポーツの祭典として、原則として4年に一度開催され、多くの国と地域から多数の選手が参加しており、テレビ・インターネット・ラジオを通じて世界中の人々に視聴され、我が国で出版されたオリンピック競技大会に関する書籍などにOLYMPIC標章が、オリンピック競技大会を表示するものとして継続して使用されたことが確認できる(甲5B~甲66B)。
イ オリンピック憲章では、申立人2の使命として「スポーツと文化および教育を融合させる活動を奨励し支援する」と規定されており(甲4B)、申立人2は、当該規定に基づき、OLYMPIC標章の下、オリンピック・ムーブメントの一環として、様々な教育・文化活動を世界的規模で行い、我が国でも、各種教育・文化活動を多岐にわたり行っている(甲67B~甲119B)。
ウ 上記ア及びイよりすれば、オリンピック競技大会は、120年以上にわたり開催され、多くの国と地域から多数の選手が参加しており、テレビ・インターネット・ラジオを通じて世界中の人々に視聴され、我が国で出版されたオリンピック競技大会に関する書籍などにOLYMPIC標章が、オリンピック競技大会を表示するものとして継続して使用されたこと、申立人2は、OLYMPIC標章の下、オリンピック競技大会及びオリンピック・ムーブメントと呼ばれる様々な教育・文化活動を行っていたことなどから、申立人2商標及び標章は、多くの国と地域から多数の選手が参加する、申立人2に係るオリンピック競技大会を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く知られていたといえる。
3 商標法第4条第1項第11号及び同法第8条第1項について
(1)本件商標について
本件商標は、「Hotel Olympia」の文字を標準文字で表してなるところ、「Hotel」の文字と「Olympia」の文字の間に1文字程度のスペースを有しているとしても、その構成文字は、同じ書体、同じ大きさで外観上まとまりよく一体的に表されているものである。
そして、本件商標の構成中の「ホテル」の意味を有する「Hotel」の文字及び「女の名、古代オリンピア競技の発祥地」(「ジーニアス英和辞典第5版」株式会社大修館発行)などの意味を有する「Olympia」の文字が、本件商標の指定商品との関係において、商品の品質等を表示する語である等の特別な事情はない。
また、本件商標は、その構成文字全体に相応して、「ホテルオリンピア」の称呼を生じるところ、当該称呼は、無理なく一連に称呼し得るものである。
そうすると、本件商標は、構成全体をもって一体のものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応して、「ホテルオリンピア」の称呼を生じ、本件商標の構成各文字の意味合いから、「オリンピアという名称のホテル」の観念が生じるものである。
(2)引用商標1、引用商標2、引用商標4及び引用商標5について
ア 引用商標1について
引用商標1は、別掲のとおり、黒色横楕円形(以下「図形」という。)内に白抜きした筆記体風の「Olympia」の欧文字をやや右肩上がりに横書きし、その右下に小さく白抜きした「U.S.A.」の文字を横書きした構成よりなるところ、「Olympia」の欧文字及び「U.S.A.」の文字は、図形内にあるとしても、これらの文字は、重なることなく配置されていることからすると、それぞれが、視覚上、分離して看取、把握され得るものであって、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているとはいえないものである。
また、引用商標1の構成中、白抜きでひときわ太く、大きく顕著に表されている「Olympia」の欧文字は、その構成において、特に、看者の注意を引く部分であるといえる。
そして、引用商標1の構成中の「Olympia」の欧文字は、上記(1)のとおり、「女の名、古代オリンピア競技の発祥地」を意味する英語であり、「U.S.A.」の文字は、「United States of america(アメリカ合衆国)」の略称であるが、これらの文字を結合した「Olympia U.S.A」の文字が一般の辞書等に載録されているものではなく、また、これらの文字が、一連で何らかの特定の意味合いを生じると判断するべき特別な事情はないことからすると、「Olympia」の欧文字と「U.S.A.」の文字は、観念上のつながりがあるとは認められない。
また、引用商標1の構成中の「U.S.A.」の文字は、上記のとおり、アメリカ合衆国の略称であり、引用商標1の指定商品との関係からすれば、自他商品の識別標識としての機能を有しないものである。
さらに、引用商標1の構成中の図形は、特定の事物を表したもの、又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められないことから、当該図形部分からは、特定の称呼及び観念は生じない。
そうすると、引用商標1は、本件商標との類否を判断するに当たって、引用商標1の構成中の白抜きでひときわ太く、大きく顕著に表されている「Olympia」の欧文字を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
したがって、引用商標1は、その構成文字全体より、「オリンピアユーエスエー」の称呼を生じるほか、その構成中、白抜きでひときわ太く、大きく顕著に表されている「Olympia」の欧文字に相応して「オリンピア」の称呼を生じ、「女の名、古代オリンピア競技の発祥地」の観念が生じるものである。
イ 引用商標2について
引用商標2は、上記第2の1(1)イのとおり、「OLYMPIA LE-TAN」の欧文字を横書きしてなるところ、「OLYMPIA」の欧文字と「LE-TAN」の欧文字の間に1文字程度のスペースを有しているとしても、その構成文字は、同じ書体、同じ大きさで外観上まとまりよく一体的に表されているものである。
そして、引用商標2の構成中の「女の名、古代オリンピア競技の発祥地」(前掲書)などの意味を有する「OLYMPIA」の欧文字が、引用商標2の指定商品との関係において、商品の品質等を表示する語である等の特別な事情はなく、また、その構成中の「LE-TAN」の欧文字は、一般の辞書に載録はなく、これが引用商標2の指定商品との関係において、商品の品質等を表示する語である等の特別な事情はない
また、引用商標2は、その構成文字全体に相応して、「オリンピアレタン」の称呼を生じるところ、当該称呼は、無理なく一連に称呼し得るものである。
そうすると、引用商標2は、構成全体をもって一体のものと判断するのが相当である。
したがって、引用商標2は、その構成文字に相応して、「オリンピアレタン」の称呼を生じ、「OLYMPIA LE-TAN」の欧文字は、一般の辞書等に載録されているものではなく、また、当該文字が、一連で何らかの特定の意味合いを生じると判断するべき特別な事情はないことから、特定の観念は生じないものである。
ウ 引用商標4及び引用商標5について
引用商標4及び引用商標5は、前記第2の2(2)及び(3)のとおり、「OLYMPIAN」の欧文字を横書してなるところ、その構成文字に相応して、「オリンピアン」の称呼が生じるものである。
また、「OLYMPIAN」の欧文字は、「オリンポス山の12神の1人。オリンピック出場選手」(「ジーニアス英和辞典第5版」株式会社大修館発行)などの意味を有する語である。
したがって、引用商標4及び引用商標5は、その構成文字に相応して、「オリンピアン」の称呼を生じ、「オリンポス山の12神の1人。オリンピック出場選手」の観念が生じるものである。
エ 本件商標と引用商標1、引用商標2、引用商標4及び引用商標5との類否について
本件商標は、「Hotel Olympia」の文字を標準文字で表してなるのに対し、引用商標1は、図形内に白抜きした筆記体風の「Olympia」の欧文字をやや右肩上がりに横書きし、その右下に小さく白抜きした「U.S.A.」の文字を横書きした構成よりなる筆記体風の「Olympia」の欧文字をやや右肩上がりに横書きし、その右下に小さく「U.S.A.」の文字を白抜きした構成よりなり、引用商標2は、「OLYMPIA LE-TAN」の欧文字を横書きしてなり、引用商標4及び引用商標5は、「OLYMPIAN」の欧文字を横書してなるものであるから、本件商標と引用商標1、引用商標2、引用商標4及び引用商標5とは、構成文字数等において差異を有し、これらは、明確に区別し得ることから、外観において、相紛れるおそれはない。
また、本件商標より生じる「ホテルオリンピア」の称呼と引用商標1より生じる「オリンピア」の称呼とは、「ホテル」の音の有無に差異を有し、引用商標2より生じる「オリンピアレタン」の称呼とは、語頭及び語尾における「ホテル」の音と「レタン」の音の有無に差異を有し、引用商標4及び引用商標5より生じる「オリンピアン」の称呼とは、語頭における「ホテル」の音と語尾における「ン」の音の有無に差異を有するものであるから、これらは、明瞭に聴別できるため、称呼において、相紛れるおそれはない。
さらに、本件商標は、「オリンピアという名称のホテル」ほどの観念が生じるのに対し、引用商標1は「女の名、古代オリンピア競技の発祥地」の観念が生じ、引用商標4及び引用商標5は、「オリンポス山の12神の1人。オリンピック出場選手」の観念が生じ、引用商標2は、特定の観念を生じないものであるから、本件商標と引用商標1、引用商標4及び引用商標5は、観念が相違し、また、本件商標と引用商標2は、観念において相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標1、引用商標2、引用商標4及び引用商標5とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
したがって、本件商標の指定商品と引用商標1、引用商標2、引用商標4及び引用商標5の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同法第8条第1項に該当しない。
4 商標法第4条第1項第10号該当性について
上記1のとおり、申立人1商標及び標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く知られているとは認められない。
また、申立人1商標及び標章は、引用商標2及び引用商標2と構成を同じくする標章であるから、上記3(2)エのとおり、本件商標と申立人1商標及び標章とは、非類似の商標及び標章である。
そうすると、申立人1商品であるかばんと本件商標の指定商品中の「旅行かばん,バッグ,財布,動物用革製アクセサリー,革製の財布,革製小銭入れ,革製のハンドバッグ,革製買物袋,革製のケース」は、類似であるとしても、本件商標は、他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標に該当しない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)申立人1商標及び標章との関係における出所の混同のおそれについて
ア 申立人1商標及び標章の周知性について
上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人1商標及び標章が、申立人1又は申立人1商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く知られていると認めることはできない。
イ 本件商標と申立人1商標及び標章の類似性とその程度について
上記4のとおり、本件商標と申立人1商標及び標章とは、非類似の商標及び標章であり、別異のものであるから、類似性の程度は低いものである。
ウ 出所の混同のおそれについて
上記アのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人1商標及び標章が、申立人1又は申立人1商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く知られていると認めることはできず、上記イのとおり、本件商標と申立人1商標及び標章とは、非類似の商標及び標章であり、別異のものであるから、類似性の程度は低いものであることからすると、たとえ、本件商標の指定商品の需要者と申立人1商品の需要者が共通するものであるとしても、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、申立人1商標及び標章を連想、想起するとはいえず、その商品が他人(申立人1)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。
その他、本件商標が申立人1商標及び標章との関係において、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
(2)申立人2商標及び標章との関係における出所の混同のおそれについて
ア 申立人2商標及び標章の周知性
上記2のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人2商標及び標章は、「オリンピック競技大会」を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く知られていたものである。
イ 本件商標と申立人2商標及び標章の類似性とその程度について
(ア)上記3(1)のとおり、本件商標は、「Hotel Olympia」の文字に相応して、「ホテルオリンピア」の称呼を生じ、本件商標の構成各文字の意味合いから、「オリンピアという名称のホテル」の観念が生じるものである。
(イ)申立人2商標及び標章は、「OLYMPIC」の欧文字よりなるものであるから、その構成文字に相応して、「オリンピック」の称呼を生じ、「オリンピック競技大会」の観念が生じるものである。
(ウ)本件商標と申立人2商標及び標章とを比較すると、本件商標は、「Hotel Olympia」の文字を標準文字で表してなるのに対し、申立人2商標及び標章は、「OLYMPIC」の欧文字よりなるものであるから、本件商標と申立人2商標及び標章とは、構成文字数等において差異を有し、これらは、明確に区別し得ることから、外観において、相紛れるおそれはない。
また、本件商標より生じる「ホテルオリンピア」の称呼と申立人2商標及び標章より生じる「オリンピック」の称呼とは、8音と5音という比較的短い音構成において明らかな差異を有するから、これらは、明瞭に聴別できるため、称呼において、相紛れるおそれはない。
さらに、本件商標は、「オリンピアという名称のホテル」ほどの観念が生じるのに対し、申立人2商標及び標章は、「オリンピック競技大会」の観念が生じるから、両者は、観念が相違するため、観念において相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と申立人2商標及び標章とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標であり、別異のものであるから、類似性の程度は低いものである。
ウ 出所の混同のおそれについて
上記アのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人2商標及び標章は、「オリンピック競技大会」を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く知られていたものであるとしても、上記イのとおり、本件商標と申立人2商標及び標章とは、非類似の商標及び標章であり、別異のものであるから、類似性の程度は低いものであることからすると、申立人2商標及び標章が使用される商品の需要者と本件商標の指定商品の需要者が共通する場合があるとしても、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、申立人2商標及び標章を連想、想起するとはいえず、その商品が他人(申立人2)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。
その他、本件商標が申立人2商標及び標章との関係において、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
(3)まとめ
以上(1)及び(2)のとおり、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、申立人1商標及び標章、申立人2商標及び標章を連想、想起するとはいえず、その商品が他人(申立人1及び申立人2)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないことは明らかであり、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべき事情は見いだせない。
また、申立人2商標及び標章が、「オリンピック競技大会」を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く知られていたものであるとしても、本件商標と申立人2商標及び標章とは、非類似の商標及び標章であり、別異のものであるから、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くなど、登録を維持することが商標法の予定する秩序に反するものというべき証左も見いだせない。
さらに、本件商標は、他の法律によって、その商標の使用等が禁止されているものではなく、特定の国若しくは国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもない。
そうすると、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標に該当するとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
7 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号、同法第8条第1項に該当するものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-900335