商標異議申立
2022-900297
クラウドコレクション、クラウド
- 審判番号
- 2022-900297
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2021-153228
- 登録番号
- 6558366
- 請求日
- 2022年07月21日
- 審決日
- 2023年05月25日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】トラヴィスマシュー エルエルシー
- 【権利者代理人】中川 康生
- 【異議申立人】オン クラウズ ゲーエムベーハー
- 【異議申立人代理人】田中 克郎
- 【異議申立人代理人】稲葉 良幸
- 【異議申立人代理人】佐藤 俊司
- 【異議申立人代理人】池田 万美
- 【異議申立人代理人】橋 沙耶香
- 審判長/審判官
- 審判長 豊田 純一
- 審判官 杉本 克治
- 審判官 小田 昌子
- 分類
- T1651.261-Y (W25) / T1651.262-Y (W25) / T1651.263-Y (W25) / T1651.271-Y (W25) / T1651.222-Y (W25)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第19号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6558366号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6558366号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6558366商標(以下「本件商標」という。)は、「CLOUD COLLECTION」の文字を標準文字で表してなり、令和3年11月26日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊靴,運動用特殊衣服」を指定商品として、同4年4月13日に登録査定、同年5月19日に設定登録されたものである。
第2 登録異議申立人が引用する商標及び標章
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する登録商標は以下の1のとおりであり、同人が同人の取り扱いに係るランニングシューズ及び運動靴に使用する標章は以下の2のとおりである。
1 国際登録第1361124号商標(以下「引用商標」という。)は、「CLOUD」の欧文字を横書きしてなり、2016年11月8日にSwitzerlandにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、2017年5月4日に国際商標登録出願、第25類「Running shoes; training shoes.」を指定商品として、令和元年8月9日に設定登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
2 申立人が同人の取り扱いに係るランニングシューズ及び運動靴に使用して、需要者の間に広く認識されていると主張するする標章は、「CLOUD」の欧文字よりなるもの(以下「引用標章」という。)である。
なお、以下、引用商標及び引用標章をまとめて「申立人商標及び標章」という場合がある。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第68号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、甲各号証の表記にあたっては、甲第1号証を「甲1」のように省略して表示する場合があり、また、枝番号の全てを示すときは枝番号を省略する。
1 引用商標の周知性について
(1)「On」について
「On」ブランドは、主にランニングシューズ、ランニングウェア等を展開するスイス発祥のブランドである。
申立人は、「On」ブランドの知財財産権を管理しており、兄弟会社の「On AG」(以下「OnAG社」という。)は、「On」ブランドの商品の製造・販売を行っており、両社は、持株会社On Holding AGの100%子会社である(甲4)。
OnAG社は、2010年1月、スイスのチューリッヒにおいて、「スイスの最先端のテクノロジー技術を採用した商品を開発する」というミッションを持ち、ランニングシューズに係るメーカーとして設立された。
OnAG社による試作品は、2010年2月、スポーツのイノベーションにおいて最も権威のある、国際スポーツ用品展示会ISPO Brandnew Awardを受賞し(甲41の1)、テストランナー達はすぐさま、「On」ブランドのシューズがもたらす、雲の上を走るような感覚のとりこになった。
そして2010年7月、「On」ブランドのランニングシューズの販売を開始し、「On」ブランドのランニングシューズは、その後も毎年のように数多くの賞を獲得している(甲34の1、甲41)。
その後、OnAG社は、現在まで12年間、商品の販売を継続し、現在では、66か国以上で9,500店舗を超える販売店が「On」ブランドのランニングシューズを取り扱うようになり、700万人以上のランナーが「On」ブランドのランニングシューズを愛用している(甲4)。
このようにして、「On」ブランドは、スイス、米国及び我が国の市場における成長率1位の称号を獲得し、「On」のスニーカーは、「シューズ界のアップル」、「シューズ界のダイソン」とも呼ばれるようになった(甲22、甲33の93)。
2016年のリオオリンピックでは、「On」ブランドのシューズを着用した女子トライアスロンの選手が銀メダルを獲得し(甲24)、我が国においても、同選手が着用していたのは「On」ブランドのシューズであったとして話題になった(甲25)。
2019年11月には、共同起業家として、グランドスラム優勝回数歴代3位の20勝を誇り、ウインブルドンでも最多8回の優勝を勝ち取り、全米オープン最多連覇の5連覇の記録を持ち、世界ランキング1位を最長237週の連続記録を持つテニス界だけでなくスポーツ界全体でも名実共に最高クラスの評価を受けている男子テニス選手がOnAG社のパートナーに参画し、2020年7月には、同選手と共同開発したシューズの第1弾「The ROGER Centre Court」をリリースし、我が国においても日経MJにおいて紹介され、即完売となるなど話題になった(甲3、甲21、甲33の94、甲67)。
現在、OnAG社は、チューリヒの本社に加え、我が国のほか、米国、オーストラリア、カナダ、中国、ベトナム、香港、ドイツ及びブラジルにも事業拠点を置いている(甲4)。
OnAG社は、2013年から日本市場に参入し、2015年に、アジア支社として「オン・ジャパン株式会社(ON Japan K.K.)」を設立し(甲21)、現在、我が国において、675の販売店及びECサイト等において、「On」ブランドの商品が販売されている(甲5、甲10、甲11)。
このように、「On」ブランドが世界中で注目され、我が国を含む世界中で周知になっていることは、多数の雑誌、ウェブサイト等の記事における記載からも明らかである(甲33)。
また、「On」ブランドは、「CLOUD」シリーズのランニングシューズを中心に、ハイキングシューズ、ウェア、帽子やソックス等のアクセサリー等を展開しており(甲5の2、甲5の3)その商品を販売するにあたっても、ブランドの基本のコンセプトである「雲の上の走り」を大々的に掲げ、「CLOUD」シリーズのランニングシューズに限らず、ウェア、アクセサリー等も一体的に販売している(甲6)。
(2)「CLOUD」について
「On」ブランドでは、「雲の上の走り」というコンセプトをもとにランニングシューズの研究、開発に取り組んでおり(甲21)、かかるコンセプトのもと、空洞の形をした「Cloud パーツ」をつなぎ合わせ、運動消費エネルギーを抑え、ランニング効率を引き上げるソール「CloudTec」を開発し、特許も取得し(甲7)、当該「CloudTec」は、「On」ブランドから展開している全シューズのソールに使用されている(甲8)。
「On」ブランドは、2012年4月に、上記コンセプトを実現したシューズ「Cloudraccer」を発売して以降、数々のランニングシューズ、ハイキングシューズ等を発売しており、これらのシューズの商品名の冒頭には、そのコンセプトである「Cloud」という標章を使用しており、現在、同ブランドが展開しているランニングシューズは、そのほとんどが「CLOUD」シリーズのランニングシューズである(甲5の1、甲21)。
そして、「On」ブランドは、かかる「CLOUD」シリーズのランニングシューズの各名称についても商標登録及び登録出願をするなど、その権利保護に努めている(甲9)。
我が国においても、「CLOUD」シリーズのランニングシューズは、「On」の公式サイトのほか、675の店舗、当該店舗のウェブサイト、ECサイト等において多数販売されている(甲5の1、甲10、甲11)。
また、販売店舗においては、「On」ブランドの基本コンセプトを大々的に表示し、「CLOUD」シリーズのランニングシューズのみならず、ウェア、アクセサリー等も一体的に販売されており、引用商標をはじめとする「CLOUD」の商標は、ランニングシューズはもちろんのこと、ウェア、アクセサリー等とも関連付けられている(甲6)。
(3)広告宣伝
ア 申立人による広告宣伝
(ア)インターネットを利用した広告宣伝活動及び広告宣伝費用
「On」ブランドは、ランニングシューズ「Cloudracer」を発売して以来、我が国を含む世界各国において、販売促進活動・広告宣伝活動を行ってきた。
我が国における「On」ブランドの商品についての広告として、パーソナルコンピュータや携帯電話の端末に表示されるインターネット広告、雑誌等における広告、動画配信サイトに開設した公式チャンネルでの広告配信等を行っており、なかでも「CLOUD」シリーズのランニングシューズの広告に力を入れている(甲12~甲14)。
YouTubeでの公式チャンネルにおけるチャンネル登録者数は、約3.7万人にのぼり(甲15)、再生回数が多いもので1動画につき約167万回以上再生され(甲16)、その動画内では、引用商標とともにランニングシューズが紹介されており、多くの人々に閲覧されていることがうかがえる。
「On」ブランドの売上高に比例して、広告費も増加し、2016年に、約33万円であったものが、2021年には、約1,725万円に達している(甲4)。
(イ)SNSにおける投稿
申立人を含む「On」ブランドは、前述の宣伝広告活動以外にも、Facebook、Instagram、Twitter等に公式アカウントを開設して最新の情報を発信し、「CLOUD」シリーズのランニングシューズの新作をリリースする際にも、商品の写真やプロモーション動画等を配信している。
Facebook、Instagram及びTwitterの公式アカウントのフォロワー数は、それぞれ、約56万人、99.4万人、約4.7万人にのぼり(甲17~甲19)、そのフォロワー数をみるだけでも、各SNSを通じて「CLOUD」シリーズのランニングシューズの新作が発表される際には、かかる商品及び引用商標を含む「CLOUD」の標章が、我が国を含む世界中の多数の需要者及び取引者の目に触れることになる。
例えば、Facebook公式アカウントでは、アクセス数が多いもので1投稿において約10万回アクセスされ(甲20)、それらの投稿内では、引用商標とともにランニングシューズの画像や動画が掲載されている。
これらの投稿へのアクセス数が極めて多数であることは、「CLOUD」シリーズのランニングシューズが消費者及び需要者から極めて注目されており、引用商標を含む「CLOUD」の商標が、「On」ブランドのランニングシューズの出所を示す表示として認知されていることの証左といえる。
(ウ)有名人の起用
「On」ブランドでは、数々の著名なアスリートを「Onアスリート」として迎え、彼らによって、「CLOUD」シリーズのランニングシューズが着用されることにより、その知名度のより一層の向上・維持を図っている(甲23~甲27)。
(エ)イベント等
「On」ブランドでは、イベントでの参加・開催も行っており、東京マラソンEXPOには、2014年から出展している。
2016年には、雑誌においても紹介されたとおり(甲33の18)、東京マラソンEXPOによる「On」ブランドのシューズの売上げが年々急増しており、マラソンランナーやトライアスロン競技者からの注目が高まっていることは明らかである。
また、2017年にも、雑誌において紹介され(甲33の38)、2020年には、フォトセッション(集合写真撮影)イベントを開催した(甲28)。
2018年には、ランニングシューズ「Cloud X」のニューカラーの発売を記念して、「On」のポップアップショップイベントが開催され、開催予定期間を1週間延長するほどの好評を得た(甲29)。
2019年には、atmos銀座店において、新作「Cloudflow」を試し履きするランニングイベントを行った(甲30)。
さらに、2019年9月から合計24日にわたり、日本各地の小売店において、「CLOUD」シリーズのランニングシューズの試し履きをするイベントを行い、同様の試し履きイベントは2021年にも開催されている(甲31、甲32)。
以上のとおり、「On」ブランドでは、様々な企画・イベント等の開催・参加により、「CLOUD」シリーズのランニングシューズブランドの知名度の向上・維持に努めている。
イ 各種刊行物、ネット記事、新聞等
「CLOUD」シリーズのランニングシューズは、我が国をはじめとする世界各国のランニング雑誌、トレーニング雑誌、靴雑誌、スポーツ雑誌、ファッション雑誌等において多数掲載されており、ランニングシューズの表示として、引用商標を含む「CLOUD」が大々的に使用されている(甲33、甲34)。
これらの掲載内容や掲載回数の多さに照らしてみても、引用商標が一般の需要者において、申立人を含む「On」ブランドの手掛ける人気シリーズのランニングシューズを示すものとして、スイス、米国、我が国を含む世界中で自他商品識別力を獲得していること明らかである。
ウ 他ブランドとのコラボレーション
「On」ブランドは、他のファッションブランドとのコラボレーションも行っており、例えば、2021年には、「On」ブランドとして世界初のコラボモデルを、我が国において発売し、当該モデルは、「On」ブランドの「Cloudnova」をベースとして、東京のスニーカーカルチャーを世界に向けて発信し、我が国のみならず、海外でも店舗を展開しているスニーカーショップ「atmos」とコラボレーションした商品であり、限定40足のみを抽選販売したことも相まって、話題を呼んだ(甲35)。
エ 有名人による着用
「CLOUD」シリーズのランニングシューズは、有名人やインフルエンサーに着用されることによっても、その知名度を高めている(甲33の119、甲36~甲39)。
このほか、「CLOUD」シリーズのランニングシューズは、多数のフォロワーを擁するSNSアカウント等においても紹介されている(甲40)。
(4)売上・マーケットシェア
「On」ブランドは、2013年の日本市場参入以降、我が国においても「CLOUD」シリーズのランニングシューズを含む同ブランドの商品の販売や宣伝広告を幅広く継続的に行った結果、売上げを増大させている。
我が国における「CLOUD」シリーズのランニングシューズを含む「On」ブランドの商品の売上高の推移は、2013年が約72万スイスフラン(約9,713万円)、2014年が約22万スイスフラン(約3,021万円)、2015年が約79万スイスフラン(約1億円)、2016年が約295万スイスフラン(約4億円)、2017年が約558万スイスフラン(約8億円)、2018年が約885万スイスフラン(約12億円)、2019年が約941万スイスフラン(約13億円)、2020年が約849万スイスフラン(約11億円)、2021年が約1,250万スイスフラン(約17億円)であり、日本市場に参入してからわずか7年で、その売上は約17億円を達成した(甲4)。
このうち、我が国における「On」ブランドの全体の売上高に対して、「CLOUD」シリーズのランニングシューズの売上高は、大きな割合を占めている。
また、2021年には、「CLOUD」シリーズのランニングシューズは13万足以上販売されており、これらの売上高の割合及び販売数量からしても、「CLOUD」シリーズのランニングシューズが「On」ブランドの主力商品であることがわかる。
我が国のランニングシューズ市場における「On」ブランドのマーケットシェアをみると、2020年には、21社中第6位の位置についている。
なお、「On」ブランドから展開しているシューズのほとんどが「CLOUD」シリーズのランニングシューズであることからすれば、上記のマーケットシェアは、「CLOUD」シリーズのランニングシューズのマーケットシェアであるといえる。
また、スイス及び米国における「CLOUD」シリーズのランニングシューズの売上高は、スイスにおいて2021年に約4,509万スイスフラン(約68億円)、米国において同年に約3億4,797万スイスフラン(約522億円)であり、2021年におけるその販売数量は、スイスにおいて44万足以上、米国において461万足以上であることからしても、これらの国においても、「CLOUD」シリーズのランニングシューズが広く知られ、高い需要があることがわかる。
(5)受賞歴
「On」ブランドは、「CLOUD」シリーズのランニングシューズを含め、そのブランド及びシューズについて高く評価され、多数の賞を受賞している(甲41)。
また、我が国においては、ランニング雑誌「ランニングマガジンcourir」2017年12月号における、ランニングシューズの採点企画において、複数の部門でランクインした(甲33の47)。
(6)引用商標の周知性の継続
引用商標を含む「CLOUD」商標は、本件商標の登録出願時までに周知となり、かかる周知性は、本件商標の登録出願後、現在に至るまで継続している(甲42~甲49、甲68)。
(7)小括
以上より、「On」ブランドは、2010年に創設された比較的新しいブランドではあるものの、「CLOUD」シリーズのランニングシューズの試作品が、スポーツのイノベーションにおいて最も権威のある国際スポーツ用品展示会ISPO Brandnew Awardを受賞したことを皮切りに、同ブランドの全てのシューズに特許技術「CloudTec」を使用し、そのほとんどに「CLOUD」という標章を使用して販売し、多額の広告宣伝費用をかけて、インターネット・雑誌・SNSでの広告、有名アスリートの起用、イベント開催等を通じて広告宣伝を行い、雑誌・ネット記事等で紹介され、他のブランドともコラボレーションし、有名人等によっても着用されたことにより、引用商標は、我が国で周知になったといえる。
そして、本件商標の登録出願後も、「CLOUD」シリーズのランニングシューズが継続して販売されるのみならず、多様な方法で広告宣伝が行われていること等からすれば、引用商標を含む「CLOUD」商標は、現在においても周知である。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、「CLOUD COLLECTION」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「CLOUD」と「COLLECTION」との間にはスペースがあり、分離して認識され得るといえ、また、その構成中、「COLLECTION」の文字は、「収集、収集物」等の意味を有し、我が国において一般的に用いられる単語であって(甲50)、被服、履物等を含むファッション関連商品においては、特定のブランドから展開されるシリーズ商品等に使用することは多々あることであり、当該部分は、特に取引者、需要者に着目される部分とはいえない(甲53~甲57)。
他方、本件商標の構成中「CLOUD」の文字部分は、「On」ブランドの創設以来10年以上にわたって、高い広告費をかけて、我が国のみならず世界各国で使用し続け、多数の雑誌等でも紹介された結果、「On」ブランドのランニングシューズ、運動靴を表示するものとして、本件商標の登録出願時には、高い周知性を獲得するに至っている。
このことは、「CLOUD」シリーズのランニングシューズが多額の売上高及び多数の販売数量を誇り、多数の賞を受賞し続けていることからも明らかである。
そして、本件商標は、かかる周知である「CLOUD」の文字が含まれていることに鑑みれば、その構成中「CLOUD」の文字部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部となるというべきである。
そうすると、本件商標は、その構成中の「CLOUD」の文字部分より「クラウド」の称呼が生じ、かつ、「On」ブランドに係るランニングシューズ、運動靴のシリーズの商標として周知な「CLOUD」の観念を生じる。
(2)引用商標について
引用商標は、「CLOUD」の欧文字よりなるところ、「CLOUD」の欧文字が「On」ブランドに係るランニングシューズ、運動靴のシリーズを示すものとして周知になっていることからすると、当該シリーズの名称である「クラウド」の称呼及び「On」ブランドに係るランニングシューズ、運動靴のシリーズの「CLOUD」の観念を生じる。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標は、その構成中の「CLOUD」の文字部分が要部であり、そこから、「クラウド」の称呼を生じ、申立人がランニングシューズ、運動靴に使用して周知となった商品シリーズ「CLOUD」との観念が生じる。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念において類似する。
(4)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の類否について
本件商標の指定商品中「履物」は、引用商標に係る指定商品「Running shoes; training shoes.」に類似する。
また、本件商標の指定商品と引用商標に係る指定商品は、いずれも着用することを目的・用途とするファッション関連商品に属する点で共通し、いずれも同一の主体により販売されることも広く一般的に行われており、また、スポーツ用品店等の同一店舗において同時に取り扱われることも多々あることからすると、販売部門及び需要者は一致する。
以上から、本件商標の指定商品は、引用商標に係る指定商品と類似する。
(5)小括
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標と引用商標の類似性の程度について
本件商標の要部「CLOUD」の文字部分は、引用商標と同一の欧文字であり、両者の外観は極めて類似する。
また、本件商標の要部及び引用商標からは、いずれも「クラウド」の称呼、及び「On」ブランドに係るランニングシューズのシリーズ「CLOUD」の観念が生じ、同一の称呼、観念が生じる。
したがって、本件商標と引用商標は、類似性が高い。
(2)引用商標の著名性及び独創性について
引用商標は、「On」ブランドに係るランニングシューズに使用される標章であって、我が国にとどまらず、世界的に周知性を獲得している。
(3)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品等との間の性質用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品は、被服、履物等を含むファッション関連商品であり、いずれも通常時のみならずスポーツをする際にも着用されるものであり、ファッション・アパレルブランドから展開されるという性質を有する。
他方、引用商標が周知性を獲得しているランニングシューズ、運動靴も、通常時のみならずスポーツをする際にも着用されるものであり、いずれもファッション・アパレルブランドから展開されている。
このように、被服、履物、ベルト等を含む本件商標の指定商品と、引用商標が周知性を獲得したランニングシューズ、運動靴は、共通の用途及び性質を有し、密接な関連性を有するものである。
また、本件商標の指定商品の取引者、需要者は、アパレル商品を取り扱う取引者及びこれらを着用する消費者であるのに対し、ランニングシューズ、運動靴の取引者、需要者は、運動靴を含むアパレル商品を取り扱う取引者及びこれらを着用する消費者であって、取引者は共通しており、需要者も重なるといえる。
(4)取引の実情について
ア 被服、運動靴等における本件商標及び引用商標の使用態様
本件商標がその指定商品に使用された場合、商品のタグ等に小さく付されることが多いと考えられる。この場合において、本件商標と引用商標を離隔的観察した場合、本件商標の要部と周知である引用商標との間に極めて高い類似性が認められることに鑑みると、これに接した需要者においては、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
イ 申立人も「CLOUD COLLECTION」という標章を使用していること
申立人は、その事業の展開にあたり、引用商標のみならず、「CLOUD COLLECTION」という標章も使用している(甲52)。
このことからすると、本件商標に接した需要者としては、申立人の業務に係る商品であるとの誤認混同を生じさせるおそれが高いというべきである。
ウ 同一ブランドからランニングシューズを含む履物や被服等のアパレル商品が販売され、商品シリーズに「~COLLECTION」と名付けることは一般的であること
一つのブランドから、ランニングシューズのみならず、他のスポーツ用品(被服、履物、アクセサリー等)を展開することは、一般的に多く行われており、また、特定のシリーズ商品について「~COLLECTION」と名付けることも多く行われている(甲52~甲57)。
エ 商標法第4条第1項第15号に該当すると判断した審決例等
審決例等においては、被服等と履物、運動靴等が広くファッション関連商品に属することを認めた上で、商標法第4条第1項第15号該当性を認めている(甲58~甲60)。
以上からしても、本件商標に係る指定商品に、引用商標と酷似する本件商標を使用した場合には、需要者において、出所につき誤認混同を生じることは明らかである。
(5)小括
以上のとおり、引用商標を含む「CLOUD」は、ランニングシューズ、運動靴において周知性を獲得した商標であり、これと極めて類似する本件商標を、同じくファッション関連商品に属し、需要者も共通するその指定商品に使用した場合、本件商標及び引用商標の使用態様や、「On」ブランドが実際に「CLOUD COLLECTION」という標章を使用していること、同一のブランドからランニングシューズを含む履物や被服等のアパレル商品が販売され、商品シリーズに「~COLLECTION」と名付けることは一般的であること等も併せ鑑みると、本件商標に接した取引者、需要者は、あたかも申立人を含む「On」ブランド、若しくは「On」ブランドと何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあり、このことは、被服等と履物、運動靴等が広くファッション関連商品に属することを認めた上で、商標法第4条第1項第15号該当性を認めている審判決例が複数あることからも明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 商標法第4条第1項第19号について
引用商標は、「On」ブランドに係る商品を表示するものとして、世界中、とりわけスイス、米国、我が国における需要者の間に広く認識されているといえ、引用商標は、商標法第4条第1項第19号に規定する「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」に該当するものである。
本件商標の要部は「CLOUD」の欧文字であり、申立人の周知な引用商標と同一の称呼、観念が生じるものである。
本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)は、米国のアパレルブランドであって、ランニングウェア等も取り扱っており(甲64)、本件商標権者は、当然に海外のランニングシューズブランドの知識も有していると考えられる。
また、「CLOUD」シリーズのランニングシューズが米国において多額の売上高及び多数の販売数量を達成していることも併せ鑑みれば、本件商標権者は、当然に、同じくランニングシューズを扱っている申立人を含む「On」ブランドが展開している米国でも周知な「CLOUD」シリーズの製品も知っていると考えられ、本件商標権者が周知な引用商標を知らず、偶然に、引用商標に係る指定商品と重なる商品について、引用商標と同一の外観、称呼及び観念を生じさせる本件商標を登録出願したとは考え難い。
これらの事情からすれば、本件商標権者は、周知な引用商標を当然に知ったうえで、その有する高い名声・信用・評判にフリーライドする目的で本件商標を登録出願し、使用しているものと推認される。
なお、本件商標権者は、我が国における申立人を含む「On」ブランドの商品の販売代理店であるという事情はなく、本件商標権者が、申立人の許諾を得て本件商標を登録出願したなどという事情もない。
したがって、本件商標権者が本件商標を不正の目的で使用するものであることは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
第4 当審の判断
1 申立人商標及び標章の周知性について
申立人の提出に係る証拠及び申立人の主張によれば、申立人は、主にランニングシューズ、ランニングウェア等を展開するスイス発祥の「On」ブランドの知財財産権を管理しており、兄弟会社のOnAG社は、「On」ブランドの商品の製造・販売を行っており、両社は、持株会社On Holding AGの100%子会社であること(甲4)、「On」ブランドの全てのシューズに特許技術「CloudTec」を使用し、そのほとんどに「CLOUD」という標章を使用して販売していること、我が国において、「CLOUD」シリーズのランニングシューズは、「On」の公式サイトのほか、675の店舗、当該店舗のウェブサイト、ECサイト等において多数販売されていること(甲5の1、甲10、甲11)、我が国における「On」ブランドの商品について、パーソナルコンピュータや携帯電話の端末に表示されるインターネット広告、雑誌等における広告、動画配信サイトに開設した公式チャンネルでの広告配信等を行っていること(甲12~甲16)、著名なアスリートを「Onアスリート」として迎え、彼らによって、「CLOUD」シリーズのランニングシューズが着用されることにより、その知名度の向上・維持を図っていること(甲23~甲27)、「CLOUD」シリーズのランニングシューズは、世界各国のランニング雑誌、トレーニング雑誌、靴雑誌、ランニング雑誌、ファッション雑誌等において掲載されていること(甲33、甲34)、「CLOUD」シリーズのランニングシューズは、有名人やインフルエンサーに着用されること(甲37~甲40)、「On」ブランドは、「CLOUD」シリーズのランニングシューズを含め、多数の賞を受賞していること(甲41)、我が国においては、ランニング雑誌における、ランニングシューズの採点企画において、複数の部門でランクインしたこと(甲33の47)等は確認できる。
しかしながら、申立人は、我が国における「CLOUD」シリーズのランニングシューズを含む「On」ブランドの商品の売上高は、2021年が約1,250万スイスフラン(約17億円)である旨主張するが、係る売上高の根拠は明らかではない。
また、申立人商標及び標章を付した商品に関する広告宣伝についても、ランニングシューズの需要者が興味を引くランニング関係の専門雑誌等によるものが多く、履物等の一般需要者に向けて宣伝広告が行われているのか否かも明らかではなく、我が国又は外国における申立人商標及び標章に係るランニングシューズ等に限定した売上高、市場シェア等を示す証左も見いだせない。
そうすると、申立人商標及び標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又はOnAG社の業務に係る「ランニングシューズ」等の商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「CLOUD COLLECTION」の文字を標準文字で表してなるところ、「CLOUD」の文字と「COLLECTION」の文字の間に一文字分の空白があるとしても、同じ大きさ、同じ書体でまとまりよく一体的に表してなるものである。
また、本件商標の構成文字に相応して生じる「クラウドコレクション」の称呼は、よどみなく一連で称呼し得るものである。
そして、本件商標の構成中の「CLOUD」の文字は、「雲」等を意味する我が国においてよく知られている英語(出典:研究社「新英和大辞典 第6版」)であり、また、「COLLECTION」の文字は「集合。収集物」等を意味する我が国においてよく知られている英語(同掲書)であって、本件商標の指定商品との関係において、これらの語が、自他商品の識別標識としての機能を有さないと判断するべき特別な事情は見当たらない。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「クラウドコレクション」の称呼を生じ、当該文字は、辞書等に載録が認められないことから、特定の観念は生じないものである。
なお、申立人は、本件商標の構成中の「CLOUD」と「COLLECTION」との間にはスペースがあり、分離して認識され得るといえ、その構成中の「COLLECTION」の文字は、「収集、収集物」等の意味を有し、我が国において一般的に用いられる単語であって(甲50)、被服、履物等を含むファッション関連商品においては、特定のブランドから展開されるシリーズ商品等に使用することは多々あり、当該部分は、特に取引者、需要者に着目される部分とはいえず(甲53~甲57)、他方、その構成中「CLOUD」の文字は周知であり、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部となるというべきである旨主張する。
しかしながら、本件商標の構成中の「CLOUD」の文字は、「雲」等を意味する我が国においてよく知られている英語であり、また、上記第1のとおり、申立人商標及び標章の「CLOUD」の文字が「雲」等の意味合いのみではなく、申立人の取り扱う商品のブランド名を表示するものと認識するとはいい難いことからすると、本件商標は、特定のブランドである「CLOUD」から展開されるシリーズ商品であると理解されるとはいえないと判断するのが相当である。
(2)引用商標について
引用商標は、前記第2の1のとおり、「CLOUD」の欧文字を書してなり、その構成文字に相応して、「クラウド」の称呼を生じるものであり、「雲」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標は「CLOUD COLLECTION」の文字よりなり、一方、引用商標は「CLOUD」の欧文字よりなるものであり、両商標は、「COLLECTION」の文字の有無に差異を有することから、外観上明らかに相違する。
また、本件商標より生じる「クラウドコレクション」の称呼と引用商標より生じる「クラウド」の称呼は、「コレクション」の音の有無に差異を有し、両者は、音数において明らかな差異を有し、それぞれを一連に称呼しても、語調、語感が相違し、称呼上類似しない。
さらに、観念においては、本件商標は特定の観念は生じないものであり、引用商標は「雲」の観念が生じるから、両者は、観念において相紛れるおそれがない。
以上からすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念において相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(4)小括
したがって、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似であるとしても、本件商標と引用商標は、非類似の商標というべきであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)申立人商標及び標章の周知性について
上記1のとおり、申立人商標及び標章は、申立人又はOnAG社の業務に係る「ランニングシューズ」等の商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)本件商標と申立人商標及び標章の類似性の程度について
上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであるから、本件商標と引用商標の類似性の程度は低いものといえる。
また、本件商標と「CLOUD」の文字よりなる引用標章とは、本件商標と引用商標と同様に、相紛れるおそれのない非類似の商標及び標章というべきであるから、本件商標と引用標章の類似性の程度は低いものといえる。
よって、本件商標と申立人商標及び標章の類似性の程度は低いものである。
(3)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品であるランニングシューズ及び運動靴の関連性、需要者の共通性について
本件商標の指定商品中「履物」は、申立人の業務に係る商品であるランニングシューズ及び運動靴と類似の商品であり、密接な関係にある商品であり、需要者の範囲も共通にするものである。
(4)出所の混同のおそれについて
上記(3)のとおり、本件商標の指定商品中「履物」は、申立人の業務に係る商品であるランニングシューズ及び運動靴と類似の商品であり、密接な関係にある商品であり、需要者の範囲も共通にするものであるとしても、上記(1)のとおり、申立人商標及び標章は、申立人又はOnAG社の業務に係る「ランニングシューズ」等の商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできず、上記(2)のとおり、本件商標と申立人商標及び標章の類似性の程度は低いものであることからすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者が、申立人商標及び標章を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人又はOnAG社)あるいは申立人又はOnAG社と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
(4)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記1のとおり、申立人商標及び標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の需要者の間で、申立人又はOnAG社の業務に係る商品を表示するものとして、広く認識されていたとは認められないものであり、また、上記(2)のとおり、本件商標と申立人商標及び標章とは非類似の商標及び標章である。
そして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標権者が申立人商標及び標章にフリーライドするなど不正の目的をもって本件商標を使用するものであると認めるに足りる証拠は何ら提出されていない。
そうすると、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が申立人商標及び標章の名声を毀損させることを認識し、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-900297