商標異議申立
2022-900274
ジャンニバレンチノ、ジャンニバレンティノ、ジアンニバレンチノ、ジアンニバレンティノ、ジャンニ、ジアンニ、バレンチノ、バレンティノ、バレンティーノ、ジイブイ
- 審判番号
- 2022-900274
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2021-140169
- 登録番号
- 6550051
- 請求日
- 2022年07月06日
- 審決日
- 2024年08月23日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ヤング産業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人東京アルパ特許事務所
- 【異議申立人】ヴァレンティノ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
- 【異議申立人代理人】山尾 憲人
- 【異議申立人代理人】田中 陽介
- 【異議申立人代理人】佐々木 美紀
- 審判長/審判官
- 審判長 山田 啓之
- 審判官 杉本 克治
- 審判官 渡邉 あおい
- 分類
- T1651.261-Z (W25) / T1651.262-Z (W25) / T1651.263-Z (W25)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法43条の3第2項商標法43条の21号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第19号、商標法第43条の4第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6550051号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6550051号商標の商標登録を取り消す。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6550051商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和3年11月10日に登録出願、第25類「履物」を指定商品として、同4年4月6日に登録査定され、同月27日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
1 商標登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する国際登録第975800号商標(以下「11号引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、2008年5月26日にイタリアにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2008年(平成20年)7月22日に国際商標登録出願、第18類「Leather and imitations of leather, and goods made of these materials and not included in other classes; animal skins, hides; trunks and travelling bags; umbrellas, parasols and walking sticks; whips, harness and saddlery.」及び第25類「Clothing, footwear, headgear.」を指定商品として、平成21年6月12日に設定登録され、この商標権は、現に有効に存続しているものである。
2 申立人が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する商標は、別掲3ないし別掲7のとおりの構成からなる標章(以下、別掲3を「引用商標1」、別掲4を「引用商標2」、別掲5を「引用商標3」、別掲6を「引用商標4」、別掲7を「引用商標5」という場合があり、これらをまとめていう場合は「引用商標」という。)であり、いずれも、申立人が同人の業務に係る商品「婦人服,紳士服,靴,ネクタイ,ベルト,バッグ,時計,眼鏡,サングラス,化粧品,香水,ネックレス,イヤリング,ピアス,ブレスレット,家具,インテリア,シガレットケース等」に使用して、我が国において需要者の間に広く知られている旨主張するものである。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第43号証(甲各号証の表記に当たっては、「甲第1号証」を「甲1」のように省略して記載する。)を提出した。
なお、申立人は、登録異議申立書について補正をすることができる期間(理由補正期間。商標法第43条の4第2項)経過後の令和5年2月2日付け上申書をもって、甲第44号証ないし甲第104号証を提出している。
1 具体的理由
(1)本件商標について
本件商標は、2021年11月10日付けで、本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)によって登録出願され、2022年4月27日に設定登録されたもので、本件商標において優先権主張はされておらず、その先願権発生日は登録出願日の2021年11月10日である(甲1)。
(2)申立人について
申立人は、1933年に生まれたValentino Garavani氏(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)が立ち上げた引用商標に係るブランド「VALENTINO」を世界的に展開しており、本国イタリア及び我が国、欧州、北米、アフリカ、アジア等において、婦人服、紳士服、靴、ネクタイ、ベルト、バッグ、時計、眼鏡、サングラス、化粧品、香水、ネックレス、イヤリング、ピアス、ブレスレット、家具、インテリア、シガレットケース等の販売を行っていることが、審決においても認められている(甲4)。
(3)本件商標についての過去の経緯
本件商標については、本件商標の登録出願と同一の出願人が、同一の商標について第3類、第8類、第9類、第12類、第14類、第16類、第20類、第21類、第24類、第27類の商品を指定した出願を2003年10月2日付けで行い、申立人の引用商標を引例として商標法第4条第1項第15号に該当するとした拒絶査定に対する不服審判(不服2004-20018)において、申立人の引用商標を引例として、同項同号に該当するとの判断が維持され、2009年10月15日に審決が確定している(甲4)。
また、本件商標の登録と異なる出願人が同一の商標について、本件商標登録と同一の商品を含む第18類「傘」及び第25類「履物」を指定して出願した商願2003-89149号についても、申立人の引用商標を引例として商標法第4条第1項第15号に該当するとして拒絶され、2009年11月9日に確定している(甲5)。
当該出願人と本件商標権者の関係は不明ではあるものの、当該審決において、本件商標と同一の商標及び指定商品が、申立人の引用商標を引例として商標法第4条第1項第15号に該当することは認定されているところである。
(4)引用商標について
引用商標1、引用商標2、引用商標4及び引用商標5は、引用商標に係るブランドの創業者の名前及びその名前をロゴ化した「V(図形)」を含む商標であり、「VALENTINO」(引用商標2)は、デザイナーであるヴァレンティノ・ガラヴァーニ氏が1959年にローマで独立して店舗を開いた後、1960年に最初のコレクションを発表した際に使用が開始されている(甲4)。
引用商標の使用実績及び著名性は、既に複数の審決において認められており(甲4~甲10)、これら審決においても明らかなとおり、ヴァレンティノ・ガラヴァーニ氏のデザインによる商品は、バッグ、アクセサリー、婦人服、紳士服、香水、化粧品、家具、インテリア、ベルト、靴等広範囲にわたり、「Valentino Garavani」及び「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」、その略称である「VALENTINO」又は「ヴァレンティノ」は、各種ファッション雑誌、新聞記事等において、ファッション関連の商品のデザイナー「Valentino Garavani(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)」の略称として、また、同氏のデザイナーブランドである「Valentino Garavani」及び「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」を示す表示として、現在においても繰り返し使用されている(甲4)。
上記商品は、本国イタリア及び我が国を含む世界各国において販売されており、審決においても、我が国における当該ブランドのショップリストが認定されており(甲4)、店舗リスト(甲11)及び現在の申立人ホームページからも、日本全国において多数の店舗(24店舗)を有することが明らかとなっている(甲12)。
(5)引用商標の使用及びその周知性について
ア 使用期間
引用商標1の「VALENTINO GARAVANI」は、デザイナーであるヴァレンティノ・ガラヴァーニ氏が1959年に独立して店舗を開いた後、1960年に最初のコレクションにて使用されているとおり、本件商標の登録出願日である2021年11月10日以前にイタリア及び我が国を含む世界各国で大々的に使用されている(甲4)。
引用商標に係るブランドの創業者ヴァレンティノ・ガラヴァーニ氏は、1967年にはデザイナーとして最も栄誉があるファッションオスカー賞を受賞し、作品がライフ誌、ニューヨークタイム誌等著名な新聞、雑誌に「Valentino Garavani(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)」の作品として掲載され、「Valentino Garavani」とともに「VALENTINO」の名が世界に知れ渡り、我が国においても、1976年9月にヴァレンティノ・ガラヴァーニの76秋冬コレクションを大阪ロイヤルホテルで開催したことが、新聞各社によって報道されている(甲4)。
引用商標に係るブランドであるヴァレンティノは、継続して世界的なラグジュアリーブランドとして著名人を含む多くの人々に愛用された結果、2000年には創立40周年を迎え、世界的に著名なファッション・ライフスタイル雑誌Vogueの日本版にも特集が掲載されている(甲13)。著名な米国のTIME誌においても、当該ブランドの創立40周年を取り上げる記事が掲載され、レーガン大統領夫人等数々の著名人がヴァレンティノの商品を愛用していたことが紹介されている(甲14)。
そして、2008年にヴァレンティノの新しいクリエイティブディレクターが来日した際は、女性政治家や女性モデル等を含む我が国の著名人がイベントに参加したことが多く報じられている(甲15)。
イ 販売実績
ヴァレンティノの事業に目を向けると、例えば、眼鏡類についての2006年から2011年までの世界各国における売上げでは、日本市場だけで、ヨーロッパや他のアジアの重要な市場と同等若しくはそれ以上の規模で事業が展開されていることが確認できる(甲16)。
また、2014年及び2015年の、靴、バッグ、ジュエリー、香水の各国売上げにおいても、地域別の概算として、他の東アジア各国の合算項目とは別項目にて、我が国だけが計算されており、具体的な国別の売上げでは、例えばジュエリーについては本国イタリアを上回り、アメリカ、香港に次ぐ売上げとなっている(甲17)。
甲第18号証は、2005年から2014までの国内における各種商品の売上げを示しており、被服、アクセサリー、時計、眼鏡類、香水等が幅広く販売されていることを示している。
なお、別項目のREDとは、ヴァレンティノブランドにおける若者向けのラインである。
ウ 宣伝広告
ヴァレンティノは我が国を含む世界中において宣伝広告も継続的かつ大々的に行っており、甲第19号証は、イタリア、我が国、アジアにおける広告画像を表示したスライドであり、雑誌「VOGUEgirl」(2013年3月12日発行、同年8月30日発行)、雑誌「ELLEgirl」(2013年3月12日発行、同年9月12日発行)、ウェブサイト「ELLEonline」(2013年3月11日~17日、9月9日~15日)、東京青山の広告用掲示板(2013年3月1日~3月28日、9月1日~9月28日)、雑誌「ヴァンサンカン」(2014年2月28日発行、同年8月28日発行)、地下鉄表参道駅の広告用掲示板(2014年3月~7月、2014年8月~12月)にヴァレンティノの広告が掲載されたことを示している。
エ 審決例
引用商標の継続的な使用の結果、審決においても、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ氏の名前は、「Valentino Garavani」とフルネームで表示され、紹介されることも多いものの、辞書類、新聞、雑誌等に掲載された中には、単に「VALENTINO」、「Valentino」、「ヴァレンティノ」、「バレンチノ」といえば同氏を指すものと広く認識されるに至っている」旨認定されている(甲4~甲10)。
また、申立人以外の名義により「VALENTINO」、「Valentino」を含む商標が登録されている事実が認められるものの、これらについては、「「Vaalleennttiino Garavani」(ウァレンティノ・ガラヴァーニ)以外の、「VALENTINO」の文字を含むデザイナーに係るブランドが、単に「ヴァレンティノ」若しくは「VALENTINO」と略称されている事実は存在しない」と審決にて判断されている(甲4)。
また、当該審決においては、「本件商標の文字部分である「GIANNI VALENTINO」がイタリアのミラノ在のデザイナーであることは認められるものの、「VALENTINO」が、著名なファッションデザイナーヴァレンティノ・ガラヴァーニに係る表示として取引者、需要者に広く知られていることと同程度に「GIANNI VALENTINO」が広く知られているとは認め難い」と認定している(甲4)。
オ 引用商標に関する近年の著名性
不服2004-20018号審決において上記認定がされた後においても、申立人の各引用商標の著名性は継続して維持されている。
近年の引用商標に係るブランドの財務報告においては、売上げが世界的に堅調である中、我が国は他のアジア諸国とは別項目で報告され、市場としての存在感を示している(甲20)。
甲第12号証は現在の我が国の店舗リストだが、大都市の有名百貨店に店舗を構えている上、流行をけん引するようなブランドしか入居しないGINZASIX、渋谷スクランブルスクエア、表参道ヒルズ等の新しい商業施設にも店舗を構えている。
さらに、申立人は、自らのブランドを法的に守り、維持するために多大な費用を費やし世界各国で商標登録出願を行い、登録を保有しているが、権利リスト(甲21)にあるとおり、商標「VALENTINO」、「Valentino Garavani」及び「V(図形)」を中心として世界中において登録がされている。
当該リストは、申立人が1959年から海外出願を大々的に行った結果、その国数は世界156か国に上ることを示している。
近年の動向として、2019年には、世界的に著名な雑誌である米国のTIME誌が選ぶ「最も影響力のある100人」に、引用商標に係るブランドのクリエイティブディレクターを務めるピエールパオロ・ピッチョーリ氏が選出され、我が国においても話題となった(甲22)。
また、ヴァレンティノは、国内の新聞やテレビ等のメディアにおいても著名なラグジュアリーブランドとして頻繁に取り上げられている(甲23~甲29)。
東京の渋谷が再開発により新たな魅力を高めつつあるという報道の中においても、その変貌を象徴するものとして話題となった商業施設である渋谷スクランブルスクエアに当該ブランドが入居したことが2019年12月の朝日新聞において取り上げられ(甲30)、さらに、一世を風びしたディズニーのアニメ映画「アナと雪の女王2」の主役を演じ、主題歌を歌った女優の松たか子氏が、米国ハリウッドで開かれたアカデミー賞授賞式のステージで着たドレスがヴァレンティノのドレスであることを2020年2月11日のスポーツ新聞デイリースポーツが報じている(甲31)。
また、近年アパレルブランドが新たな顧客を獲得するためゲームや仮想現実等のバーチャル空間に進出する事例が相次ぐ中、ヴァレンティノが任天堂の人気ゲーム「あつまれどうぶつの森」の中で、プレイヤーが着ることができる服を提供していることが朝日新聞の記事に掲載され、2020年9月17日の朝日放送のテレビ番組「おはよう朝日です」にて取り上げられている(甲32)。
さらに、引用商標中、欧文字「V」を楕円の中に配してつなげた「V(図形)」商標については、単独でもヴァレンティノブランドを象徴するデザインとして大々的に使用されている。
上記の商標登録リストにおいても、当該商標は1997年当時から出願されており、長年、商標「V(図形)」を単独で配したバッグ等を様々なデザインで展開している。
2019年の広告(甲33)において、著名なモデルであるナオミ・キャンベル氏が当該商標を配したバッグを身に付けていることを示しており、ファッション業界における最もメジャーなイベントであるパリファッションウィークにおいて上記モデルナオミ・キャンベル氏が商標「V(図形)」を配したバッグを持っている写真(甲34)がある。
ヴァレンティノのこのシリーズのバッグは、他の著名人にも多く愛用されており、世界的な歌手セリーヌ・ディオン氏や女優アンジェリーナ・ジョリー氏等が所有しているところがファッション関連の記事に取り上げられている(甲35)。
2020年には、アメリカで開催されたニューヨーク・ファッション・ウィークにおいてCDFA(アメリカファッションデザイナー協会)が選出するグローバル女性デザイナー賞にヴァレンティノのピエールパオロ・ピッチョーリ氏が選出されて受賞し、これが世界最古のファッション誌のサイト「Harper’s BAZAAR」や著名ファッション誌サイト「VOGUE」に取り上げられており、我が国の繊研新聞においても報じられている(甲36、甲39)。
近年においても引用商標の著名性が継続していることは、不服2017-10825審決においても認定されており、当該審決においては、「商品「時計」について引用商標と類似の商標を使用した場合、時計はファッション関連の商品であり、引用商標が使用されるファッション関連の商品群と関連性を有し、その需要者は共に一般消費者であり共通するため、ヴァレンティノ・ガラヴァーニのブランドを連想又は想起させ、経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する業務に係る商品であるかのように、出所について混同を生ずるおそれがあるというべき」と判断されている(甲10)。
また、近年デジタル分野における宣伝広告・販売促進活動が事業の明暗を分けるような状況にある中、世界のアパレル分野のラグジュアリーブランドのデジタルマーケティングの動向を調査した報告書(甲40)であるが、対象は2頁に列挙された37の著名ラグジュアリーブランドであり、ヴァレンティノも含まれている。
当該調査は、デジタルマーケティングの活用度合に関する調査であり、3頁に記載のオンライン販売の利便性やウェブサイトにアクセスした際のカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)の充実度等、複数の項目について調査されており、調査範囲が全世界である項目については我が国も対象であることが記載されている。
まず、調査結果が5頁のグラフにて視覚的に示されており、ヴァレンティノは縦軸のデジタル戦略到達度及び横軸のデジタルカスタマーエクスペリエンスにおいてハイスコアを獲得していることが明らかであり、6頁においては、各ブランドのオンライン販売を行っている国が表になっており、ヴァレンティノはカバーしている国数において37ブランド中の首位を獲得しており、19頁においては、対象ブランド中ヴァレンティノを含む4ブランドが我が国の「伊勢丹三越ラグジュアリー」という百貨店伊勢丹三越のラグジュアリーブランド専用サイトでオンライン販売を行っていることが記載されている。
デジタルとリアルでのカスタマーエクスペリエンスを融合したサービスとして、「Reserve&Try(予約&試着)」というサービスがあり、オンラインで商品を見つけて店舗での試着を予約した後、店舗に出向いて試着するサービスとなっているところ、当該サービスを始めたブランドとしてヴァレンティノを含む4ブランドが取り上げられている(甲40)。当該調査報告の結論部分においては、イタリアの高級ファッションのオンライン販売サイトYnapでヴァレンティノを扱っており、ヴァレンティノを含む8ブランドが世界のオンライン販売において最も存在感があることが記載されている(甲40)。
現に、写真・動画投稿用SNSであるlnstagramにおいてヴァレンティノの公式アカウントを確認すると、そのフォロワー数は1,728万人に上っている(甲41)。
以上より、引用商標は、本件商標の登録出願時である2021年11月10日において、歴史ある著名ブランドとしての認知度は世界的に維持されており、今もなお我が国におけるアパレル分野の需要者・取引者の間で広く知られ、周知・著名であることは明らかである。
(6)本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標と、申立人が所有する11号引用商標(国際登録第975800号商標)とは、以下のとおり、互いに類似する商標である。
まず、本件商標と11号引用商標との外観を比較した場合、両者は「V(図形)」部分が類似し、「VALENTINO」の文字部分が共通している。「V(図形)」部分は、需要者が最初に目につき注意を引く部分であるところ、共に楕円の中に欧文字「V」が書され、当該欧文字と楕円がつながる態様にてロゴ化されている構成からなり、外観上紛らわしい。
さらに、両者は、共に「VALENTINO」の欧文字を有し、それ以外の部分である本件商標の「GIANNI」の欧文字と11号引用商標の「GARAVANI」の欧文字とは語頭の「G」と末尾の「NI」が共通する欧文字であることから、一見すると相紛らわしい。
よって、本件商標と11号引用商標とは全体として需要者が両者の外観を見誤るおそれがあるため、両商標は、外観において類似する。
観念においては、既に述べたとおり、「VALENTINO」の欧文字が申立人のブランド名として世界的に著名であることに加え、当該引用商標中の「V(図形)」も申立人のブランドのロゴとして著名であり、そのような知名度を獲得している他のデザイナーやブランドが存在していない実情を鑑みると、両商標の「VALENTINO」の欧文字及び「V(図形)」からは、引用商標に係るブランドヴァレンティノの観念が生じ得る。
よって、両商標は、観念において類似する。
称呼においては、本件商標からは「ジャンニヴァレンティノ」の称呼が生じるほか、「VALENTINO」の欧文字が世界的に著名であることから、「ヴァレンティノ」のみの称呼も生じる。
他方、11号引用商標からも「ヴァレンティノ」及び「ヴァレンティノガラヴァーニ」との称呼が生じる。
両商標からは、共通して「ヴァレンティノ」の称呼が生じるため、両者は、称呼上類似する。
また、本件商標の指定商品「履物」は、11号引用商標の指定商品「footwear」と同一である。
したがって、本件商標と11号引用商標は、外観・観念・称呼において類似し、同一の商品について使用された場合には、商品の出所について混同を生じるおそれがある類似商標であることは明白である。
以上より、本件商標は、11号引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(7)本件商標の商標法第4条第1項第10号該当性について
本件商標は、11号引用商標と類似し、引用商標「VALENTINO GARAVANI」及び「VALENTINO」と比較した場合においても、「VALENTINO」の欧文字が申立人のブランド名として世界的に著名であり、本件商標から「ヴァレンティノ」との称呼も生じることから、全体としての観念、称呼、外観が類似し、引用商標中の「V(図形)」部分も本件商標の「V(図形)」部分と類似する。
また、本件商標の指定商品と引用商標の使用商品は同一である。
そして、引用商標は、本件商標の登録出願時に、既に我が国のアパレル市場において広く知られた存在であることは明白である。
したがって、本件商標は、引用商標との関係において、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(8)本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について
まず、上述のとおり、本件商標と引用商標とは類似している。
そして、申立人は、1960年から引用商標1の使用を開始し、上記(4)で述べたように、引用商標1、引用商標2、引用商標4及び引用商標5は本件商標の登録出願の日以前から申立人の業務に係る商品を表示するものとして世界各国における需要者の間に既に広く認識され、その周知・著名性は、本件商標の登録査定時においても継続している。
次に、本件商標権者であるヤング産業株式会社は、既に述べたとおり、過去に本件商標と同一の商標を、第3類、第8類、第9類、第12類、第14類、第16類、第20類、第21類、第24類及び第27類を指定して登録出願し、不服2004-20018号審決において、引用商標の著名性に基づき、商標法第4条第1項第15号に該当することを理由に拒絶されている(甲4)。
当該審決にて拒絶された登録出願は、被服や履物の属する第25類の商品より引用商標に係るブランドヴァレンティノの扱う商品との関連性が低いにもかかわらず、ヴァレンティノが世界的に著名であるため混同のおそれがあるとして拒絶されている。
このような経緯があるにも関わらず、本件商標権者は、申立人がヴァレンティノの商品として長年、我が国を含む世界中で展開してきている靴と同一の商品を指定して過去の登録出願と同一の商標を登録出願している。
かかる行為は、本件商標権者が、申立人の引用商標が有する周知・著名性へのフリーライドの意図を有し、不正の目的をもって申立人が引用商標を使用していた商品を指定して登録出願したものであると考えざるを得ない。
さらに、本件商標権者は、ベルト・小物・バック及びファッション製品の企画・製造・販売、及びブランドライセンス業務をその業務内容としていることから、ヴァレンティノが世界的に著名なブランドであり、靴の製造販売も行っていることは、同業者として当然認識していたはずである。
ところで、商標審査基準改訂第15版によれば、「出願人がその商標を使用した場合、その周知商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるおそれがある」場合であって、「一以上の外国において周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するもの」である場合、不正の目的をもって使用するものと推認すると明示されている(甲42)。
既に述べているとおり、本件商標は、登録出願日において我が国及び本国イタリアを含む世界各国において周知著名であった引用商標と類似する。
また、引用商標は、申立人のアパレル分野における歴史ある功績により、世界的な知名度を獲得している商標である。
したがって、本件商標権者が偶然の一致をもって本件商標を第25類の申立人の展開する商品と同一の商品を指定して登録出願したとは到底考え難く、本件商標権者が不正の目的を有していたことは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(9)本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
商標法第4条第1項第7号に定める「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」は、商標審査基準改訂第15版によれば、「商標の構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与える文字」等でなくても、「当該商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合」も該当すると明示されている(甲43)。
本件商標は、申立人の引用商標と類似していることは明白であって、図形部分及び文字部分の両方において同一又は類似であるため、本件商標を引用商標と偶然に一致して採択したとは到底考えられず、過去の審決における判断を鑑みれば、本件商標権者が申立人によって既に使用されている商品と同一の商品を指定し、最初に本件商標を登録出願した際には既に引用商標に係るブランドの存在を知っていたことは明白である。
すなわち、本件商標権者は、引用商標に依拠し、本件商標を剽窃的に採択し、登録出願した蓋然性が極めて高いといえる。
また、本件商標に係る登録出願に際し、引用商標の商標権者より承諾を受けていたと認める事実もない。
したがって、本件商標は、引用商標の顧客吸引力に便乗し、不当な利益を得る目的で登録出願した商標であるといわざるを得ない。
かかる状況において、本件商標の登録出願を正当化すれば、商標登録制度に対する信頼は損なわれ、また、市場流通秩序を乱し、需要者を混乱に陥らせることになりかねない。
そうすると、本件商標は、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くというべきであり、商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものというべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
第4 当審における取消理由の要旨
当審において、本件商標権者に対して、「本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。」旨の取消理由を令和5年6月13日付けで通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。
第5 本件商標権者の意見
本件商標権者は、上記第4の取消理由に対して、要旨次のように意見を述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、乙各号証の表記に当たっては、「乙第1号証」を「乙1」のように省略して記載し、枝番号のすべてを引用する場合には、枝番号の記載を省略する。
1 本件商標と11号引用商標の類否について
本件商標と11号引用商標の外観について対比すると、本件商標は、右側上方に切り欠きを有する縦長楕円形の輪郭図形内の中央に「V」の欧文字を配した図形(以下「本件図形」という。)とその横に「GIANNI VALENTINO」の欧文字(以下「本件欧文字」という。)を一連に書してなり、これに対して、11号引用商標は、上段に上部中央に切り欠きを有する横長楕円形の輪郭図形内の中央に「V」の欧文字を配した図形(以下「引用図形」という。)を、中段に「VALENTINO」の欧文字、更に下段に「GARAVANI」の欧文字を小さく横書きしてなる3段からなる構成の商標であり、両商標は、図形も文字構成も異なっているのは明らかである。
よって、一連に書してなる本件商標と3段構成の11号引用商標とは外観において顕著な差異があることから、彼これ識別することは容易であり、本件商標と11号引用商標は、外観において類似するものではない。
次に、本件商標と11号引用商標の称呼について対比すると、本件商標の欧文字部分は「GIANNI」と「VALENTINO」の文字の間を半角程度開けて構成しているが、この程度の間隔であれば、本件商標に接する需要者は、よどみなく一連に「ジャンニ ヴァレンティノ」と称呼するものである。
これに対して、11号引用商標は、明確に「ヴァレンティノ」のみ、「ガラヴァーニ」のみの別々の称呼が生じるものとなっていることは明らかである。
さすれば、「ジャンニ ヴァレンティノ」の一連の称呼と「ヴァレンティノ」のみの称呼、及び「ジャンニ ヴァレンティノ」の一連の称呼と「ガラヴァーニ」のみの称呼を対比すれば、それらの差異は明らかであるにもかかわらず、「ヴァレンティノ」の称呼が共通することをもって、称呼において類似するとの判断には納得できない。
たとえ、11号引用商標から「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」の一連の称呼が生じるとされても、「ジャンニ ヴァレンティノ」の称呼と全体を対比すれば明確に聴別することができる。
よって、本件商標と11号引用商標とは、称呼においても相紛れるおそれはなく、類似するものではない。
さらに、観念について、取消理由では、「VALENTINO」の欧文字は、我が国において、本件商標に係る指定商品の需要者の間に広く認識されている著名なファッションデザイナーであるヴァレンティノ・ガラヴァーニのデザインに係る商品群に使用されるブランドを表したものと把握されるものとされ、本件欧文字中の「VALENTINO」の欧文字を要部として抽出し、商標の類否を判断することが許されるものとも認定されている。
ヴァレンティノ・ガラヴァーニの著名性を否定するものではないが、対比する商標に「VALENTINO」の欧文字を有していることのみをもって、本件商標の要部を「VALENTINO」の欧文字として、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニのデザインに係る商品に使用されるブランド」の観念が生じると判断されている点についても全く納得することができない。
本件商標は、イタリアンテイストを背景に、機能的でシンプル、かつ飽きのこない洗練されたデザインの商品を、手頃な価格にて提供することをコンセプトとして、1987年に誕生したブランドであり、今日まで「GIANNI VALENTINO」の一連の商標として継続して使用し、かつ、各種商品の商品化を展開しているものである。
したがって、本件商標から「ヴァレンティノ・ガラヴァーニのデザインに係る商品に使用されるブランド」との観念は一切生じないもので、観念において11号引用商標に類似するものではない。
2 本件商標の登録が維持されるべきその他の理由
(1)本件商標権者及び関連会社であるサン・グリーン・リバー株式会社(以下「関連会社」という。)は、本件商標を除き、15件の登録商標を有しているもので、1987年にブランドが誕生したその年の同年4月30日に最初の「GIANNI VALENTINO」の商標登録を得ている(商標登録第1944782号)。
15件のいずれの登録商標も、有効に存続しており、それらのうち、3件は本件商標と同一の構成からなる商標であり、また、1件は本件図形と同一の図形が本件欧文字と同一の文字の上方に構成されているもので、指定商品においても、かばん類や被服など広い分野に及んでいる。
このように、本件商標と同一の商標を含む15件の登録商標が存続しているという事実を前にして、本件商標のみが、11号引用商標に類似するとの判断には到底納得できないものである。
(2)本件商標権者の業務内容は、主として、ベルト、バッグ、財布、服飾小物、アクセサリー及び被服等、ファッション製品の企画・製造・販売並びにブランドライセンス業務であり、「1987年に誕生したGIANNI VALENTINOも、ヤング産業の主要ブランドとして34年が経ちました。」と紹介した記事があり、商品化している各商品の紹介も掲載されている(乙1)。
さらに、本件商標については、本件商標権者及び関連会社による「GIANNI VALENTINO」を使用した商品が、「楽天市場」、「Yahooショッピング」などのECモールでネット販売も行われており、長年にわたり、両社協力して商標の周知に努力しており、両社が取り扱う各種商品の分野における取引者・需要者の間では「GIANNI VALENTINO」は、既に広く知られている商標である(乙2~乙6)。
上記のECモールの情報を見れば、全て「GIANNI VALENTINO」の一連の商標を使用しているのであり、商品との関連でこのような使用が、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニのデザインに係る商品に使用されるブランド」と関係があるかのような認識は一切見いだせないものである。
また、本件商標権者は、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー及びシンガポールにも登録商標を得ている(乙7)。
ラオスでは、VALENTINO S.P.Aの代理人ラオ・インターコンサルト社から取消しを請求された事案があったが、ラオスの知的財産局は、「両商標はVALENTINOの用語を使用しており、これは、イタリアでは名や姓に広く使われている一般的な言葉であり、一般の人も一緒に使うことができる。」及び「商標のデザインV(ロゴ)とGV(ロゴ)は、明らかに異なる英字を商標の要素としており、製造元について公衆に混同を生じさせない。」との理由により、本件商標権者の登録は維持されているものである(乙8)。
(3)本件商標のように、「VALENTINO」の文字を含む商標は、11号引用商標のみではなく、我が国に数多くの商標が登録されている事実は、周知のことと思う。
11号引用商標と同等の周知性を有している商標として「MARIO VALENTINO」(登録第21141686号)があり、イタリアのナポリに本社を置くファッションブランドで、我が国でも広く知られているほか、「GIOVANNI VALENTINO」(登録第2541272号)、「RUDOLPH VALENTINO」(登録第2584758号)、「Valentino Rudy」(登録第2636882号)、「Orlandi Valentino」(登録第4191792号)、「Romeo Valentino」(登録第4266975号)など、一例であるが我が国でも知られているブランドである。
また、「VALENTINO」は、イタリアでは広く使用されている一般的な苗字であることも知られている。
ウェブサイトでは、「ヴァレンティノっていろいろあって、ややこしい?」、「マリオ・バレンティノ、ヴァレンティノガラバニ、レッドヴァレンティノ、さらにはジャンニバレンティノ、ルドルフバレンティノ、、、ヴァレンティノっていろいろあって、ややこしい!という方いませんか?」という記事に続き、「VALENTINO」を姓とするデザイナーは多数存在するから、「GIANNI VALENTINO」商標や「VALENTINO RUDY」などさまざまな商標があっても、何ら不思議なことではないそうです。その数、約100人以上のヴァレンティノさんが確認されているとか!」という記事があり、その中で、「GIANNI VALENTINO」が取り上げられており、事例として挙げられるほど、需要者に広く知られている商標であるといえる(乙9)。
3 結論
以上のとおり、本件商標は、11号引用商標と外観において顕著に異なっていることを始めとして、称呼においても明確に聴別することができ、さらに、観念においても、本件商標は、本件商標権者の独自のブランドであり、引用商標の商標権者のデザインに係る商品に使用されるブランドとの観念は一切生じないものである。
よって、本件商標は、11号引用商標に類似するものではなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
第6 当審の判断
1 「VALENTINO」商標について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張並びに職権調査によれば、次のとおりである。
ア 「Valentino Garavani(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)」(以下「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」という。)は、世界的に著名なデザイナーであり、1967年にはデザイナーとして最も栄誉があるファッション・オスカー賞を受賞し、国際的に知られるようになった。
また、同人が1959年にローマで独立して店舗を開き、1960年に最初のコレクションを発表した以降、同人のデザインによる商品に使用されてきた「VALENTINO」、「Valentino」及び「ヴァレンティノ」(以下、これらをまとめて「VALENTINO等」という。)の表示は、同人の略称又はそのデザインに係る被服、バッグ、靴、革小物、ベルト及びアクセサリーなどのファッション関連の商品群に使用されるブランドを表すものとして、本国イタリア及び我が国、欧州、北米、アフリカ、アジア等における関連会社(甲3)等を通じて使用され、継続して行われてきた宣伝広告活動(甲19)やメディアにおける掲載(甲23~甲29)、女優等の著名人による当該商品の愛用についての特集記事が雑誌において掲載され(甲13、甲14)、我が国における2008年の申立人の関連イベントには、著名な政治家やモデル等の著名人が参加したことが報じられる(甲15)など、本件商標の登録出願日の時点において、我が国の取引者・需要者の間に広く認識され、その周知性は、近時では、写真・動画投稿用SNSであるInstagramにおいてヴァレンティノの公式アカウントのフォロワー数が1,728万人に上っているなど、現在においても継続しているものと認められる。
イ 新聞情報
(ア)「渋谷、大人も楽しめる街へ 世界中の「感度高い客」にアピール 再開発、高級ブランドからビンテージまで」(朝日新聞 2019年12月5日 東京夕刊5頁)の見出しの下、「213店舗が入る渋谷スクランブルスクエアは11月1日に開業した。駅改札に向かう通路に面した3階にヴァレンティノ、バレンシアガなど高級ブランドが集まる。」の記載がある(甲30)。
(イ)「温故知新、テーラード深化 細部や機能性で差別化/スニーカー激減 20年秋冬パリ・メンズ」(朝日新聞 2020年1月23日 東京朝刊27頁)の見出しの下、「ストリート色を薄めてシックになったヴァレンティノのコートも、内側のベルトを垂らしてアクセントにしたり、シルエットを絞ったりする機能性があった。」の記載がある(甲23)。
(ウ)「[定番物語]メキシコ五輪用に開発」(読売新聞 2020年7月20日 東京朝刊22頁)の見出しの下、「薄く、柔らかい靴底は、足の動きに合わせてしなやかに屈曲し、履き心地は抜群だ。性別、年代、国籍を問わず愛用され、近年は、ジバンシィやヴァレンティノなどの高級ファッションブランドとの共同製作でも注目を集める。」との記載がある(甲25)。
(エ)「第92回アカデミー賞 松たか子“未知の”大役全う アカデミー賞日本人初の快挙 世界の“エルサ”と熱唱リレー ハリウッドで授賞式」(デイリースポーツ 2020年2月11日 24頁)の見出しの下、「ステージには、ピンクベージュのヴァレンティノのドレス姿で登場した。」の記載がある(甲31)。
(オ)「20年CFDAファッション賞の受賞者発表 ウイメンズウエアにガブリエラ・ハースト」(繊研新聞 2020年9月17日)の見出しの下、「インターナショナルは、ウイメンズは「ヴァレンティノ」のピエールパオロ・ピッチョーリ、メンズは「ディオール」のキム・ジョーンズが受賞した。」の記載がある(甲39)。
(カ)「[モードUPDATE]春夏パリ・オートクチュール 各ブランド映像で発表」(読売新聞 2021年2月12日 東京夕刊6頁)の見出しの下、「ヴァレンティノは創業地のローマにあるコロンナ美術館を会場に選んだ。歴史的な絵画や彫刻が展示されている中を、オーガンディにスパンコールを総刺しゅうした黄金色のドレスなどを着たモデルが歩き荘厳さを醸し出した。」の記載がある(甲26)。
(キ)「大胆にさっそうと、歩む私たち 2021年秋冬ミラノ・コレクション」(朝日新聞 2021年3月4日 東京夕刊5頁)の見出しの下、「ヴァレンティノは、超ミニ丈の作品が目立った。創業の地ローマの古典的なドレス風のロング丈もあったが、「あらゆるものを短くした」とブランド。」の記載がある(甲27)。
(ク)「「ヴァレンティノ」21~22年秋冬オートクチュール アーティスト17人と協業」(繊研新聞 2021年7月27日)の見出しの下、「「ヴァレンティノ」はこのほど、伊ベネチアで21~22年秋冬オートクチュールコレクションを披露した。・・・「ヴァレンティノ・デ・アトリエ」と題したコレクションは、世界で活躍する17人のアーティストとのコラボレーションで服を制作した。」の記載がある(甲28)。
ウ 雑誌等
雑誌では、「Vogue 日本版」において、ヴァレンティノブランドの創立40周年の特集記事が掲載された(甲13)。
そして、2013年ないし2014年にかけて、「VOGUEgirl」(2013年3月12日発行、同年8月30日発行)、「ELLEgirl」(2013年3月12日発行、同年9月12日発行)及び「ヴァンサンカン」(2014年2月28日発行、同年8月28日発行)の各雑誌において、また、「ELLEonline」のウェブサイト(2013年3月11日~17日、9月9日~15日)、東京青山の広告用掲示板(2013年3月1日~3月28日、9月1日~9月28日)及び地下鉄表参道駅の広告用掲示板(2014年3月~7月、2014年8月~12月)において、ヴァレンティノの広告が掲載された(甲19)。
エ 当審における職権調査
(ア)「新・田中千代服飾事典」(2004年4月1日 株式会社同文書院発行)の「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ[Valentino Garavani]」の項には、「1980年代後半からパリを発表の場にした、イタリアのデザイナー。・・・1962年のコレクションの成功と1967年の『ファッション・オスカー』の受賞で、国際的に知られる。」等の記載がある。
(イ)「英和ブランド名辞典」(2011年8月31日 株式会社研究社発行)の「Valentino Garavani ヴァレンティノガラヴァーニ,バレンチノガラバーニ」の項には、「イタリアのローマのデザイナーValentino Garavani(1932-)のデザインした婦人・紳士物の衣料品・毛皮・革製バッグ・革小物・ベルト・ネクタイ・アクセサリー・婦人靴・香水・ライター・インテリア用品など.ローマ,フィレンツェ,ミラノなどにあるその店の名称はValentino(vは小文字で書くこともある.)」の記載がある。
(2)上記(1)からすれば、「VALENTINO等」の商標は、本件商標の登録出願時である2021年11月10日において、ブランドとしての認知度は世界的に維持されており、今もなお我が国におけるアパレル分野の需要者・取引者の間で広く知られ、周知・著名であると認められる。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、本件図形と、その右側に本件欧文字「GIANNI VALENTINO」を横書きした構成からなるところ、本件図形と本件欧文字とは、スペースを有することから、それぞれ視覚的に分離して看取されるもので、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではない。
そして、本件欧文字中の「VALENTINO」の欧文字は、我が国において、本件商標に係る指定商品の需要者の間に広く認識されている著名なファッションデザイナーであるヴァレンティノ・ガラヴァーニのデザインに係る商品群に使用されるブランドである「VALENTINO等」の商標を表したものと把握されるものである。
また、本件商標は、本件欧文字に相応して「ジャンニバレンティノ」の称呼が生じるものであるが、本件欧文字全体として親しまれた既成の語を形成するものとは認められない。
そうすると、本件商標は、本件欧文字中の「VALENTINO」の欧文字が、取引者、需要者に強く印象付けられて特に注意を引き、支配的な印象を与えるものであって、自他商品識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められることから、本件欧文字中の「VALENTINO」の欧文字を要部として抽出し、他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許されるものである。
したがって、本件商標は、本件欧文字全体から生じる「ジャンニバレンティノ」の称呼のほか、本件商標の要部である「VALENTINO」の欧文字に相応した「ヴァレンティノ」の称呼が生じ、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニのデザインに係る商品に使用されるブランド」の観念が生じる。
(2)11号引用商標について
11号引用商標は、別掲2のとおり、上段に引用図形、中段に「VALENTINO」の欧文字を大きく横書きし、中段部3文字目の「L」から7文字目の「I」の欧文字部分の下段に「GARAVANI」の欧文字を小さく横書きした3段の構成からなるところ、引用図形及び11号引用商標を構成する各文字とは、段を異にすることもあって、それぞれ視覚的に分離して看取されるもので、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではない。
また、11号引用商標は、その構成文字に相応して「ヴァレンティノガラヴァーニ」の称呼が生じるものとみるのが自然であるが、上記1のとおり、「VALENTINO」の欧文字は、我が国において、本件商標に係る指定商品の需要者の間に広く認識されている著名なファッションデザイナーであるヴァレンティノ・ガラヴァーニのデザインに係る商品群に使用されるブランドである「VALENTINO等」を表したものと把握されるものである。
そうすると、11号引用商標は、その構成文字全体のみではなく、構成中の「VALENTINO」の欧文字が取引者、需要者に強く印象付けられて特に注意を引き、支配的な印象を与えるものであって、自他商品識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められることから、11号引用商標の構成文字中の「VALENTINO」の欧文字を要部として抽出し、他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許されるものである。
したがって、11号引用商標は、その構成文字全体に相応した「ヴァレンティノガラヴァーニ」の称呼が生じるほか、11号引用商標の要部である「VALENTINO」の欧文字に相応した「ヴァレンティノ」の称呼が生じ、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニのデザインに係る商品に使用されるブランド」の観念が生じる。
(3)本件商標と11号引用商標との類否について
ア 外観について
本件商標は、上記(1)のとおり、その構成中の「VALENTINO」の欧文字部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり、また、11号引用商標は、上記(2)のとおり、その構成中の「VALENTINO」の欧文字部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものである。
そうすると、本件商標の構成中、「VALENTINO」の欧文字は、11号引用商標の構成中の「VALENTINO」の欧文字とつづりを同じくするものである。
また、本件商標の本件図形と11号引用商標の引用図形とは、縦長又は横長の楕円形の輪郭内中央に「V」を配した構成からなるものであるから、その構成の軌を一にする相紛らわしい図形といえる。
したがって、本件商標と11号引用商標は、外観上相紛らわしいものである。
イ 称呼について
本件商標は、その構成中の「VALENTINO」の欧文字より「ヴァレンティノ」の称呼を生じ、当該称呼は、11号引用商標の構成中の「VALENTINO」の欧文字より生じる「ヴァレンティノ」の称呼と共通するものである。
したがって、本件商標と11号引用商標は、称呼を共通にするものである。
ウ 観念について
本件商標と11号引用商標は、いずれも「ヴァレンティノ・ガラヴァーニのデザインに係る商品に使用されるブランド」の観念を生じるものであるから、両商標は、観念において共通するものである。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と11号引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点についても、相紛れるおそれのある類似の商標といわなければならない。
(4)本件商標の指定商品と11号引用商標の指定商品の類否について
本件商標の指定商品である「履物」は、11号引用商標の指定商品中「footwear」と同一又は類似する商品である。
(5)小括
以上のとおり、本件商標は、11号引用商標と類似するものであり、かつ、本件商標の指定商品と11号引用商標の指定商品は、同一又は類似のものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 本件商標権者の主張について
(1)本件商標権者は、本件商標と11号引用商標について対比すると、本件商標は、本件図形とその横に本件欧文字を一連に書してなり、これに対して、11号引用商標は、引用図形と欧文字を3段に表してなる構成の商標であり、両商標は、図形も文字構成も異なっているのは明らかであり、本件商標と11号引用商標は、外観において類似するものではなく、本件欧文字は「GIANNI」と「VALENTINO」の文字の間を半角程度開けて構成しているが、この程度の間隔であれば、本件商標に接する需要者は、よどみなく一連に「ジャンニ ヴァレンティノ」と称呼するものであることに対して、11号引用商標は、明確に「ヴァレンティノ」のみ、「ガラヴァーニ」のみの別々の称呼が生じものとなっていることは明らかであることから、それらの称呼上の差異は明らかであって、たとえ、11号引用商標から「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」の一連の称呼が生じるとされても、「ジャンニ ヴァレンティノ」の称呼と全体を対比すれば明確に聴別することができ、さらに、観念について、ヴァレンティノ・ガラヴァーニの著名性を否定するものではないが、本件商標は、イタリアンテイストを背景に、機能的でシンプル、かつ飽きのこない洗練されたデザインの商品を、手頃な価格にて提供することをコンセプトとして、1987年に誕生したブランドであり、今日まで「GIANNI VALENTINO」の一連の商標として継続して使用し、かつ、各種商品の商品化を展開しているから、本件商標から「ヴァレンティノ・ガラヴァーニのデザインに係る商品に使用されるブランド」との観念は一切生じないもので、観念において11号引用商標に類似するものではない旨主張する。
しかしながら、上記1のとおり、「VALENTINO等」の商標は、我が国におけるアパレル分野の需要者・取引者の間で広く知られ、周知・著名であるのに対し、本件商標において、「GIANNI VALENTINO」の文字が一体のものとして需要者の間に広く認識されているといった事情は見いだせないことからすれば、上記2(1)のとおり、本件商標は、その構成中の「VALENTINO」の欧文字を要部として抽出し、他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許されるというべきである。
そして、上記2(3)のとおり、本件商標と11号引用商標とは、外観上、相紛らわしい商標であって、両商標の要部から生じる「ヴァレンティノ」の称呼及び「ヴァレンティノ・ガラヴァーニのデザインに係る商品に使用されるブランド」の観念を共通にするものであるから、本件商標は、11号引用商標と類似する商標であって、かつ、本願商標は、11号引用商標の指定商品と同一又は類似の商品について使用するものである。
よって、本件商標権者の上記主張は、採用することができない。
(2)本件商標権者は、同人及び関連会社は、本件商標を除き、15件の登録商標を有しているもので、1987年にブランドが誕生したその年の同年4月30日に最初の「GIANNI VALENTINO」の商標登録(商標登録第1944782号)を得ており、本件商標と同一の商標を含む15件の登録商標が存続しているという事実を前にして、本件商標のみが、11号引用商標に類似するとの判断には納得できない旨主張する。
しかしながら、商標の類否の判断は、対比する商標同士の構成態様と、それらの指定商品との関係から、個別かつ具体的に判断をなすべきものであって、その登録出願の時期、判断の時期が相違するものであるから、他の商標登録の事例により本件審理の判断が左右されるものではない。
よって、本件商標権者の上記主張は、採用することができない。
(3)本件商標権者は、同人及び関連会社による「GIANNI VALENTINO」を使用した商品が、「楽天市場」、「Yahooショッピング」などのECモールでネット販売も行われており、長年にわたり、両社協力して商標の周知に努力しており、両社が取り扱う各種商品の分野における取引者・需要者の間では「GIANNI VALENTINO」は、既に広く知られている商標であり(乙2~乙6)、当該ECモールの情報を見れば、全て「GIANNI VALENTINO」の一連の商標を使用しているのであり、商品との関連でこのような使用が、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニのデザインに係る商品に使用されるブランド」と関係があるかのような認識は一切見いだせない旨主張する。
しかしながら、上記ECモールにおいて、本件欧文字を表示した商品が掲載されていることはうかがえるものの、当該商品の販売数量、販売期間、市場シェアなどの販売実績、広告宣伝に関する具体的な証拠の提出はなく、「VALENTINO」が著名なファッションデザイナー「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」に係る表示として取引者、需要者に広く知られていることと同程度に、本件欧文字を構成する「GIANNI VALENTINO」の文字が広く知られているとは認め難い。
そうすると、「VALENTINO」の表示から、取引者及び需要者は、直ちに「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」ないしは、同デザイナーのデザインに係る商品群について使用される「VALENTINO(ヴァレンティノ)商標」を想起することは明らかである。
よって、本件商標権者の上記主張は、採用することができない。
(4)本件商標権者は、本件商標のように「VALENTINO」の文字を含む商標は、11号引用商標のみではなく、我が国に数多くの商標が登録されている旨主張する。
しかしながら、本件商標は、これら登録例とは、その出願の時期、判断の時期が相違するものであるから、同一視することはできないものであり、そして、審理にあたっては、既登録例に何ら拘束されることなく客観的証拠に基づき個別具体的に判断するものであるから、既登録例の存在をもって上記認定が左右されるものではない。
(5)以上のとおり、本件商標権者の主張は、いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、その登録は同項の規定に違反してされたものであるから、その他の登録異議の申立ての理由について論及するまでもなく、その登録は、同法第43条の2第1号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-900274