商標異議申立
2022-900256
ザポリベーガルセオリーポリベーガルリロン、ザポリベーガルセオリー、ポリベーガルセオリー、ポリベーガルリロン
- 審判番号
- 2022-900256
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2021-094077
- 登録番号
- 6543688
- 請求日
- 2022年06月17日
- 審決日
- 2023年02月27日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社メディアパール
- 【異議申立人】木藤 圭次郎
- 【異議申立人代理人】守田 敏宏
- 審判長/審判官
- 審判長 大森 友子
- 審判官 旦 克昌
- 審判官 馬場 秀敏
- 分類
- T1651.13 -Z (W4144) / T1651.272-Z (W4144)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法4条1項16号商標法43条の3第2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6543688号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6543688号商標の商標登録を取り消す。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6543688商標(以下「本件商標」という。)は、「The Polyvagal Theory」の欧文字と「ポリヴェーガル理論」の文字を2段書きしてなり、令和3年7月28日に登録出願、第41類及び第44類に属する別掲のとおりの役務を指定役務として、同4年3月25日に登録査定され、同年4月12日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由の要旨
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により、取り消されるべきと申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第35号証を提出した。
(1)本件商標を構成する語について
「ポリヴェーガル理論」の語は、学会誌への寄稿のタイトル「ポリヴェーガル理論の臨床的可能性について」に係る語として普通に用いられる方法で使用されている。また、該寄稿中には、「ポリヴェーガル理論(polyvagal theory)とは、米国の神経生理学者が1994年に発表し、発展を続けている自律神経系の適応反応に関する画期的な理論である」、「ポリヴェーガル理論によって、トラウマの症状形成の理解と治療の可能性が大きく広がることとなった」、「トラウマに限らず、ポリヴェーガル理論は、患者の症状、状態像への理解についても新たな視点を提供してくれる」及び「ポリヴェーガル理論・・・の臨床的有用性は明らかであり、諸外国では様々な領域への応用がなされ実績が蓄積されている」との記載がある(甲1)。
これ以外の論文・紀要関係で「ポリヴェーガル理論/polyvagal Theory」なる語が登場するものは多数ある(甲2~甲18)。
セミナー、カウンセリング関係においても「ポリヴェーガル理論」の語が登場するものは多数ある(甲19~甲25)。
教育等用のビデオの製作、及びインターネットを利用して行う映像の提供においても「ポリヴェーガル理論」の語が登場するものは多数ある(甲26~甲35)。
このように、「The Polyvagal Theory/ポリヴェーガル理論」の語は、自律神経系に関する一つの理論を普通に用いられる方法で表示する語として、論文・紀要、書籍、インターネット、DVD(ビデオ)等の様々な情報発信媒体を介して、研究者、医療従事者、心理・身体セラピスト、カウンセラー等の様々な専門職・対人援助職を含む多数の人々、あるいは、これらの人々を擁する大学、病院等の団体によって多くの発信・言及がなされている事実がある。
(2)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について
本件商標は、「The Polyvagal Theory」の欧文字を上段に、「ポリヴェーガル理論」の片仮名文字及び漢字を下段に、それぞれ横書きしてなるところ、上記の事実によれば、「ポリヴェーガル理論」及び「The Polyvagal Theory」の文字は、心理療法、精神療法等に関連する様々な学問領域において、自律神経系に関する一科学的理論を表す語として普通に使用されている。
そして、「ポリヴェーガル理論」及び「The Polyvagal Theory」の文字が、心理療法・精神療法等に直接或いは間接的に関連する様々な論文、書籍、WEBページ等を介して発信される文章中において多数使用されていること(甲1~甲35)から、本件商標をその指定役務に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その役務が「ポリヴェーガル理論に関する内容のものであること」を表示したものと理解するにとどまるのが相当である。なお、2段にする構成は、取引者等において一般的に使用する範囲にとどまり、普通に用いられる方法で表示するに該当する。
してみれば、本件商標は、その指定役務について役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当し、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものであることは明らかである。また一方で、本件商標が、ポリヴェーガル理論に関係のない指定役務に用いられた場合には、役務の質の誤認を生ずるおそれのある商標に該当する。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
3 当審における令和4年12月8日付け取消理由
当審において、本件商標の商標権者に対し、申立人提出の証拠に対する認定事実を示した上で、本件商標は商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するから、本件商標の登録は同法第43条の3第2項の規定に基づいて取り消すべき旨を通知し、意見を求めた。
4 上記通知に対する本件商標権者の意見
商標権者は、上記3の取消理由に対し、何ら意見を述べるところがない。
5 当審の判断
(1)本件商標に係る登録査定の日(令和4年(2022年)3月25日)前に発行等されたと認められる申立人提出の甲各号証によれば、次のとおりである。
ア 「The Polyvagal Theory」及び「ポリヴェーガル理論」の文字(語)について
(ア)甲第1号証は、2020年(令和2年)に発行等されたと認められる雑誌「日本外来精神医療学会誌 第20巻 第2号」(発行:日本外来精神医療学会)であり、そこには「ポリヴェーガル理論の臨床的可能性について」をタイトルの下、「はじめに」の項に、「ポリヴェーガル理論(polyvagal theory)とは、米国の神経生理学者Stephen W.Porges(以下ポージェス)が1994年に発表し、発展を続けている自律神経系の適応反応に関する画期的な理論である。」との記載があり、続く「I.ポリヴェーガル理論について」の項に、その説明等が記載されているほか、文中に「ポリヴェーガル理論」の文字とその説明が多数記載されている。
(イ)甲第2号証は、「2021年(令和3年)に発行等されたと認められる雑誌「ゲシュタルト療法研究 第11号」(発行:日本ゲシュタルト療法学会)であり、「トラウマ・セラピーとしてのゲシュタルト療法の可能性 ~ポリヴェーガル理論との対比から~」のタイトル及びその英訳タイトルの記載があり、英訳タイトル中には「Polyvagal Theory」の語の記載がある。さらに、「1.「ポリヴェーガル理論」(Polyvagal Theory)とその概要」の項に、「「ポリヴェーガル理論」(Polyvagal Theory)は、Stephen W.Porges(1945-)により、1994年にはじめて公表された神経科学理論である」との記載があるほか、文中に「ポリヴェーガル理論」の文字が複数記載されている。
(ウ)甲第5号証は、2020年5月頃に発行等されたと認められる雑誌「臨床心理学 第20巻第3号」(発行:(株)金剛出版)であり、「トラウマ ポリヴェーガル理論と感情」のタイトルの下、「I はじめに」の項に、「最近のトラウマに関連する欧米の文献で,「ポリヴェーガル理論(Polyvagal theory)」に言及しないものをほとんど見ないという印象を受ける。それほどにこの理論は,トラウマ関連のみならず,解離性障害,愛着関連など,さまざまな分野に関わり,また強い影響を及ぼしている。」との記載がある。
(エ)甲第6号証は、2021年8月25日に発行されたと認められる書籍「治療文化の考古学(臨床心理学 増刊第13号)」(発行:(株)金剛出版)であり、「心理臨床の身体的転回」をタイトルの下、「ポリヴェーガル理論」の項に「・・・を発見したステファン・W・ポージェス(Porges SW)(2018)による,自律神経系の活動からストレスへの対処メカニズムを説明する理論。」などの記載がある。
(オ)甲第10号証は、2022年3月10日に発行されたと認められる書籍「実力が120%発揮できる! 緊張しないからだ作りワークブック」(発行:(株)ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス ミュージックメディア部)であり、「◎ポリヴェーガル理論による自律神経のしくみ」をタイトルの下、図解による説明記載がある。
(カ)甲第11号証は、2020年11月20日に発行されたと認められる書籍「催眠心理面接法」(発行:(株)金剛出版)であり、「4 トラウマおよびPTSD治療における臨床催眠」のタイトルの下、「VI 考察とまとめ」の項に、「筆者はトラウマ治療において,ポリヴェーガル理論(Porges,2001)に基づいて治療計画を立てる。」との記載がある。
(キ)甲第12号証は、2022年3月18日に発行されたと認められる書籍「ポリヴェーガル理論への誘い」(発行:(株)星和書店)であり、「まえがき」の項に、「ポリヴェーガル理論のセミナーを初めて行ったのが,2016年の夏。以来,今日に至るまで,文字通り北は北海道から南は沖縄まで,全国各地のさまざまな団体,さまざまな方々から相次ぎお呼び頂き,しかも開催すれば毎回大入り満員の大盛況,と全く驚くばかりです。」との記載がある。
(ク)他にも、甲第9号証((株)日本評論社発行の書籍)、甲第13号証((株)世界文化社発行の書籍)、甲第18号証((株)紀伊國屋書店発行の書籍)などに「ポリヴェーガル理論」の文字と、その説明などが記載されている。
イ 上記アからすれば、「ポリヴェーガル理論」及び「The Polyvagal Theory」とは、「米国の神経生理学者Stephen W.Porgesが1994年に発表した「自律神経系の適応反応に関する理論」」のことをいい、当該理論はトラウマの治療やカウンセリングなどに用いられているといえる。
そして、上記アのとおり、「ポリヴェーガル理論」の語の記載がある、雑誌や書籍が、本件商標に係る登録査定の日以前に発行されていることをあわせ考慮すると、「ポリヴェーガル理論」及び「The Polyvagal Theory」の文字は、本件商標に係る登録査定時において、少なくとも心理療法による治療、カウンセリングなどを行う者をして、トラウマの治療やカウンセリングなどに用いられる理論の一つをいうものと認識されているものであり、かつ、同治療等を受ける者の間には同様に認識する者が少なくないものと判断するのが相当である。
(2)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の該当性について
本件商標は、上記1のとおり「The Polyvagal Theory」と「ポリヴェーガル理論」の文字からなるものである。
そして、「The Polyvagal Theory」及び「ポリヴェーガル理論」の文字は、上記イのとおり本件商標に係る登録査定時において、トラウマの治療やカウンセリングなどに用いられる理論の一つをいうものと認識されているものである。
そうすると、「The Polyvagal Theory」と「ポリヴェーガル理論」の文字からなる本件商標は、その登録査定時において、これをその指定役務について使用するときは、これに接する取引者、需要者をして、該文字をトラウマの治療やカウンセリングなどに用いられる理論の一つである「ポリヴェーガル理論」に関する又は内容とする役務(知識の教授など)若しくは当該理論を用いた役務(治療、カウンセリングなど)であることを表示したもの、すなわち役務の質(内容)を表示したものと認識させるに過ぎないものといわざるをえない。
また、本件商標を、その指定役務中、前記に照応する理論の内容に基づく役務以外の役務に使用するときは、役務の質(内容)の誤認を生じるおそれがある。
そして、本件商標は、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である。
したがって、本件商標は、その登録査定時において、これをその指定役務中、「ポリヴェーガル理論」に関する又は内容とする役務(知識の教授など)若しくは当該理論を用いた役務(治療、カウンセリングなど)について使用するときは、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって、自他役務識別標識としての機能を果たし得ないものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当し、上記役務に照応しない役務に使用するときは、役務の質(内容)の誤認を生じるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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