商標異議申立
2022-900242
ハイチューン
- 審判番号
- 2022-900242
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2021-140355
- 登録番号
- 6536066
- 請求日
- 2022年06月06日
- 審決日
- 2023年05月01日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ユーグリーン・グループ・リミテッド
- 【異議申立人】アップル インコーポレイテッド
- 【異議申立人代理人】弁理士法人大島・西村・宮永商標特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 森山 啓
- 審判官 鈴木 雅也
- 審判官 小林 裕子
- 分類
- T1651.261-Y (W09) / T1651.262-Y (W09) / T1651.263-Y (W09) / T1651.271-Y (W09) / T1651.222-Y (W09)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第19号、商標法第68条の32第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6536066号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6536066号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6536066号商標(以下「本件商標」という。)は、「HiTune」の欧文字を横書きした構成からなり、商標法第68条の32第1項の規定による商標登録出願(議定書第6条(4)の規定により取り消された国際登録:国際登録第1566404号、国際登録日:2020年10月28日)として、令和3年11月10日に登録出願、第9類「データ処理装置,コンピュータ周辺機器,イヤホン,ケーブル,バッテリーチャージャー,ヘッドホーン,マイクロホン,スピーカー用筐体,音声・映像受信機,音声送信装置」を指定商品として、令和4年2月22日に登録査定され、同年3月29日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する登録商標は、以下の5件の商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第4570713号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲のとおり、「iTUNE」(決定注:語頭の「i」の文字はややデザイン化されている。以下、同じ。)の欧文字を横書きした構成からなり、平成12年10月20日に登録出願、第9類「配電用又は制御用の機械器具,電池,電線及びケーブル,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,回転変流機,調相機,抵抗線,電極,電気計算機,アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置」を指定商品として、平成14年5月24日に設定登録されたものである。
2 登録第4610312号商標(以下「引用商標2」という。)は、「ITUNES」の欧文字を標準文字により表してなり、2000年10月24日にグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、平成13年4月24日に登録出願、第9類「理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,レコード,メトロノーム,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む),ダウンロードできるコンピュータプログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,遊園地用機械器具,スロットマシン,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,磁心,抵抗線,電極,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,電気計算機,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,家庭用テレビゲームおもちゃ」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守に関する指導及び助言,電子計算機システム及び電子計算機情報網の導入・管理に関する指導及び助言,データベースの検索,データベースへのアクセスタイムの貸与,インターネットによるコンピュータソフトウェアの提供,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらにより構成される設備の設計,デザインの考案,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電気に関する試験又は研究,機械器具に関する試験又は研究,カメラの貸与,光学機械器具の貸与,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)の貸与」を指定商品及び指定役務として、平成14年10月4日に設定登録されたものである。
3 登録第5155781号商標(以下「引用商標3」という。)は、「iTunes」の欧文字を標準文字により表してなり、平成19年9月5日に登録出願、第9類「コンピュータソフトウェア,電子応用機械器具及びその部品,携帯用デジタルオーディオプレイヤー,携帯用デジタルビデオプレイヤー,電気通信機械器具,家庭用テレビゲームおもちゃ用ソフトウェア,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し及び保存することができる映像ファイル,電子出版物」のほか、第36類、第38類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成20年8月1日に設定登録されたものである。
4 登録第5174544号商標(以下「引用商標4」という。)は、「iTunes」の欧文字を標準文字により表してなり、平成19年4月20日に登録出願、第35類「コンピュータ・コンピュータソフトウェア・その他の電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(電子商取引によるものを含む。),インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイルの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(電子商取引によるものを含む。),インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル(ビデオ画像ファイルを含む。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(電子商取引によるものを含む。)」を指定役務として、平成20年10月17日に設定登録されたものである。
5 国際登録第943547号商標(以下「引用商標5」という。)は、「ITUNES」の欧文字を横書きしてなり、2020年(令和2年)4月17日に国際商標登録出願(事後指定)、第9類「Computer software for use in authoring, downloading, transmitting, receiving, editing, extracting, encoding, decoding, playing, storing and organizing text, data, images, audio files, video files and electronic games; computer software for personal information management; computer software for use in recording, organizing, transmitting, manipulating, and reviewing text, data, audio files, video files and electronic games in connection with computers, television set-top boxes, music players, video players, media players, cellular phones, and portable and handheld digital electronic devices; computer software for accessing, browsing and searching online databases; computer software to enable users to program and distribute audio, video, text and other multimedia content, including music, concerts, videos, radio, television, news, sports, games, cultural events, and entertainment-related and educational programs via communications networks; computer software for identifying, locating, grouping, distributing, and managing data and links between computer servers and users connected to electronic communications networks.」を指定商品として、令和3年7月9日に日本国において設定登録されたものである。
以下、上記の引用商標1ないし引用商標5をまとめて、「引用商標」という場合がある。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきものである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。
1 申立人について
米国カリフォルニア州に本社を置く申立人は、GAFAと称されるデジタル市場の巨大企業の4つのうちの一社であり、「MacBook」、「iMac」等のパーソナルコンピュータ「Mac」シリーズ、スマートフォン「iPhone」、タブレット型コンピュータ「iPad」、腕時計型コンピュータ「AppleWatch」等を製造販売し、音楽・映像配信サービス「AppleMusic」等を提供する米国の法人であり(甲2)、「世界の最も価値あるブランドランキング」で首位を獲得するなど、高い知名度を誇り、当該ランキングにおいては、2011年から9年連続で首位の座を維持し、ブランド価値が2000億ドルを超えた唯一の企業と評価されている(甲3)。
2 申立人の引用商標「iTunes」の著名性について
(1)「iTunes」について
「iTunes」とは、2001年にリリースされた申立人が提供するアプリケーションソフトウェアの名称であって、音楽・動画等コンテンツの再生・管理の他、申立人製品のデータ管理等の機能を有している(甲4~甲7)。また、「iTunes Store」を通じて音楽や映像作品の購入も可能である(甲8)。
(2)新聞・ウェブ記事情報
新聞記事情報については、以下の記事が確認できる。
ア 2010年6月24日付け日本経済新聞には「米HP、ネット音楽配信会社を買収個人向けサービス強化」の見出しの下「現在は米アップルの『iTunes(アイチューンズ)』が音楽配信の有力サービスとなっているが、クラウドを活用した次世代サービスを巡る競争も活発になりそうだ。」の記載がある。
イ 2013年2月8日付け日本経済新聞には「『iTunes Store』が250億曲ダウンロードを達成」の見出しの下「iTunes Storeは2003年4月に開設され(当時の名称は『iTunes Music Store』)、2008年6月に50億曲ダウンロード、2010年2月に100億曲ダウンロードを達成した。以来、約3年間で150億曲がダウンロードされたことになる。iTunes Storeは現在、2600万曲以上の音楽カタログを提供、119カ国でサービスを展開している。アップルのインターネットソフトウエア・サービス担当上級バイスプレジデントのEddy Cue氏によると、iTunes Storeでは1分あたり1万5000曲以上がダウンロードされているという。」の記載がある。
ウ 2013年11月28日付け日本経済新聞には「同様の音楽配信サービスでは米アップルの『iTunes(アイチューンズ)ストア』が2005年から国内でサービスを開始して先行、国内シェアは5割を超える。」の記載がある。
エ 2014年8月5日付け日本経済新聞には「聴き放題や見放題 ストリーミングの波、日本にも」の見出しの下「音楽の聴き方は21世紀になって一度、激変したのを覚えているだろう。米アップルが2001年に投入したiTunes(アイチューンズ)とiPod(アイポッド)だ。それまで音楽はCDを店で買って聴くものだったが、iTunesは個別の楽曲をiPodなどにダウンロードして聴く行動へと劇的に転換した。」の記載がある。
オ 2014年11月20日付けIT PRO ウェブ記事には「音楽業界に詳しい英国の市場調査会社MIDiA Researchの推計によるとiTunesのアクティブユーザー数は2億人。」の記載がある。
カ 2015年6月2日付け日本経済新聞には「IoT勝利の方程式『携帯電話の失敗』生かせ」の見出しの下「違法ダウンロードに苦しむレーベルを説得し、格安の価格で楽曲をiTunes(アイチューンズ)に集約した。消費者が店に足を運ばなくても自由に楽曲を購入し、気軽に楽しめる新しい体験を提供した。」の記載がある。
キ 2015年7月1日付け日本経済新聞には「アップル、コンテンツに接近 揺らぐIT企業の支配力」の見出しの下「かつてはアップルの『iTunes』と『iPod』のように、端末を持つ者が配信サービスを支配していた。だが再生端末にもなるスマートフォンやタブレット(多機能携帯端末)の普及で様々な配信サービスが登場し、競争が激化。」の記載がある。
ク 2016年10月18日付け日本経済新聞には「アップル再点火にかかる期待」の見出しの下「市場ではインターネット配信事業『iTunes』を軸にした収益の再拡大をはやす声も多い。」の記載がある。
ケ 2018年8月3日付け日本経済新聞には「アップル、時価総額294倍 ジョブズ氏復帰から21年で」の見出しの下「当時の株価をけん引したのは『音楽の楽しみ方を作り替える存在』としてのアップルだ。03年にネット経由で楽曲などを配信する『iTunes』を開始。携帯音楽プレーヤー『iPod』シリーズを続々とヒットさせた。ソフトとハードを融合させた事業モデルで革新を起こす企業の象徴となった。」の記載がある。
コ 2019年3月26日付け日本経済新聞には「アップル、動画に託す『サービス』企業への転換」の見出しの下「一方で、唯一成長を遂げているのが音楽配信『iTunes』などのサービス部門だ。2018年の売上高は約370億ドル(約4兆円)と、スマホの1667億ドルと比べるとまだ小さいが、12年と比べると額は約2.8倍にまで膨らんだ。営業利益率も約63%と、会社全体の38%を大きく上回る。」の記載がある。
サ 2020年2月25日付け日本経済新聞には「広がるサブスクリプション(下)多様化・個人向けに進化も」の見出しの下「ストリーミングが登場するまで音楽配信の主役だった米アップルのiTunesは、音楽ファイルをダウンロードすることを製品提供方式としており、ダウンロードするたびに課金する従量料金制だった。」の記載がある。
シ 2022年5月11日付け日本経済新聞には「Apple、iPodの販売を終了 20年の歴史に幕」の見出しの下「iPodや、組み合わせて楽曲の管理などに使う『iTunes』のヒットにより、音楽のインターネットを通じた流通が拡大した」の記載がある。
(3)広告
申立人の「iTunes」は、製品のリリース以来、テレビでも継続的に広告されている(甲9)。
(4)申立人の「i〇〇」ブランド
申立人の製品及びサービス名称は、「iTunes」の他、「iPhone」「iPad」「iMac」「iPod」「iCloud」「iOS」「iWork」「iMovie」「iMessage」「iSight」「iWeb」「iPhoto」「iDVD」「iChat」「iFrame」など、iを冠したものが極めて多く(甲10)、これらの特徴は小文字のiで始まり2文字目のみ大文字としているところにあり、「頭文字が小文字、二文字目が大文字」とする構成は外観上強い印象を与える。
つまり、申立人に係る製品・サービスは我が国で高い人気を誇り、それに付随するサービスに至るまで「i〇〇」の名称が多くそろえられていることから、小文字の「i」は申立人を強く想起させるものである。インターネット辞書wikipediaでも小文字の「i」の説明において「アップルの製品。→iMac、iPhone、iPad等」と紹介されている(甲11)。
以上のとおり「iTunes」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人のアプリケーションソフトウェアないし音楽等のマルチコンテンツ配信サービスを示す商標として我が国において広く知られている。
3 商標法第4条第1項第11号該当性
本件商標は、欧文字「HiTune」を横書きした構成からなり、引用商標は、欧文字「iTunes」もしくは「ITUNES」を横書きした構成からなる。
外観において両者を比較すると、本件商標は、引用商標3及び4「iTunes」を構成する「iTune」の文字を大文字・小文字の別まで(Tのみ大文字で他は小文字)そっくりそのまま含んだ構成であって、外観上異なるのは語頭の「H」及び末尾の「s」の文字の有無のみである。
上記のとおり、申立人の商標の特徴の一つとして「頭文字が小文字のi、二文字目が大文字」とする構成を挙げることができるところ、本件商標は、大文字の「H」で始まり、次の文字は小文字で「i」と表記されているにもかかわらず、「T」の文字を大文字で表しており、この点は看者の注意を強く惹きつけるといえるから、本件商標と引用商標3及び4は、外観において極めて相紛らわしい類似商標と考える。
また、引用商標1、2及び5においても、本件商標「HiTune」6文字中、「iTune」の5文字は、書体、大文字・小文字の差異はあるにしても共通しており、外観上紛らわしい類似商標と考える。
次に称呼において比較すると、本件商標「HiTune」より生じる自然な称呼は、「ハイチューン」と解される。一方、引用商標からは「アイチューンズ」の称呼が生じる。両者は、語頭において「ハ」と「ア」の点で異なるが、「ハ」と「ア」は母音同一の類似音であり、また、末尾における「s」(ズ)の音の有無については、末尾の「s」は英文法においては名詞の複数形を表す表示であって、一般にその前の名詞部分に比べ弱く称呼されることから、ほとんど称呼に影響を与えないと解される。よって、本件商標と引用商標は称呼においても類似する。
最後に観念について比較すると、引用商標は、申立人のアプリケーションソフトウェアの名称そのものであるので、申立人を想起させる。一方、本件商標は、上記のとおり、「iTune」の文字をそのまま構成要素に含むものであって、これより申立人を想起させると考える。したがって、両者は観念においても混同するおそれが極めて大きいと考える。
以上より、本件商標は、引用商標と外観・称呼・観念のいずれにおいても共通し、申立人の「iTunes」の著名性を考慮すれば、特にその混同可能性は明白であり、両者が類似することは疑いなく、かつ、本件商標の指定商品は引用商標の指定商品及び指定役務と抵触しているので、商標法第4条第1項第11号に該当する。
4 商標法第4条第1項第15号該当性
(1)引用商標の周知性について
申立人の「iTunes」商標が著名であることは前記のとおりである。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度
両者が類似することは前記のとおりである。
また、上述のとおり「iTunes」は、申立人の商標として広く理解されている著名商標であることから、本件商標中の「iTune」の文字は即座に申立人の著名商標「iTunes」を想起させ、本件商標は、アップル社に関連するブランドであるかのように誤認される可能性が高いと考える。
(3)引用商標の独創性について
申立人の「iTunes」商標は、辞書に掲載されているような既成語ではなく、申立人による独創的な商標である。
(4)引用商標がハウスマークであるかどうか
引用商標「iTunes」は、申立人のハウスマークではないが、申立人の主力商品・役務に係る商標であることは前記新聞記事情報等のとおりである。
(5)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品・役務の関連性、需要者の共通性
本件商標の指定商品は、「データ処理装置,コンピュータ周辺機器,イヤホン,ケーブル,バッテリーチャージャー,ヘッドホーン,マイクロホン,スピーカー用筐体,音声・映像受信機,音声送信装置」であって、申立人の「iTunes」商標が特に知られている音楽分野と非常に関連深い商品であって、商品・役務間の関連性があることは、十分に認められるから、その需要者の範囲や販売部門等も一致し、混同が生ずる可能性が極めて高い。
(6)企業における多角経営の可能性
申立人は、コンピュータの他、本件商標指定商品に係るヘッドホン、イヤホン等の製造・販売を行っている。
以上を総合勘案すると、本件商標をその指定商品に使用すると、申立人の「iTunes」ソフトウェア及び「iTunes Store」コンテンツ配信サービスに関する商品・役務若しくは申立人が製造・販売する製品を想起させ、申立人と何らかの関係があるかのように誤認・混同させるおそれが高い。
(7)特許庁審査基準
また、特許庁審査基準において.「他人の著名な商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め、原則として、商品又は役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して、取り扱うものとする。」(「商標審査基準〔改訂第15版〕第3 十三、第4条第1項第15号2.」)と規定されていることから考えても、申立人の著名な「iTunes」商標に係る「iTune」をそのまま構成要素に含む本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当することが明らかである。
本件商標「HiTune」は辞書等に掲載のない語であり、造語と看ることができるが、その構成中に申立人の著名商標「iTunes」に係る「iTune」の文字を有している。
そして、「Hi」に続く「tune」の頭文字を大文字とする必要は全くなく、申立人の著名商標「iTunes」に寄せているようにみえる。また、本件商標は黒色の文字で表されたものであるが、登録商標は色違い商標の使用をすることができるため、「H」と「iTune」を色分けされた場合には、一層「iTunes」との混同リスクが高まる。特に、申立人の主力製品の一つである「コンピュータ周辺機器,イヤホン,ヘッドホーン」等も指定しており、その需要者の範囲や販売部門等も一致する。
本件商標が使用されると、出所の混同が生じるおそれや、申立人から公認を受けているとの誤認あるいは、申立人の周知な引用商標に係る「iTunes」商標の希釈化・汚染化が生じるおそれがあることは明らかである。
(8)まとめ
以上のとおり、本件商標がその指定商品に使用されると、かかる指定商品分野における需要者は、それらの商品が申立人の業務に係る商品ないし申立人と何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかであって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
5 商標法第4条第1項第19号該当性
「iTunes」は、申立人によって創作された造語であって、その構成(2文字目のTのみ大文字で表した構成)は、構成上顕著な特徴を有するといえるところ、本件商標は、その構成中に申立人の著名商標「iTunes」に係る「iTune」の文字について、大文字と小文字の違いも含めそのまま有し、申立人を想起させる相紛らわしい類似の商標である。
そして、上記のとおり、「iTunes」は申立人の商標として日本のみならず世界中で著名であることも考慮すれば、本件商標は不正の目的をもって使用するものと認められるべきである。
さらに、本件商標は日本国内で著名なApple社の「iTunes」商標と類似する商標であり、Apple社の「iTunes」商標の出所表示機能を稀釈化させるおそれが極めて高いため、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、本件商標登録は同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、次のとおりである。
ア 申立人について
(ア)米国カリフォルニア州に本社を置く申立人は、GAFAと称されるデジタル市場の巨大企業の一社であり、「MacBook」、「iMac」等のパーソナルコンピュータ「Mac」シリーズ、スマートフォン「iPhone」、タブレット型コンピュータ「iPad」、腕時計型コンピュータ「AppleWatch」等を製造販売し、音楽・映像配信サービス「AppleMusic」等を提供する米国の法人である(甲2)。
(イ)申立人は、「世界の最も価値あるブランドランキング」で首位を獲得するなど、当該ランキングにおいては、2011年から9年連続で首位の座を維持している(甲3)。
イ 「iTunes」について
「iTunes」とは、2001年にリリースされた申立人が提供するアプリケーションソフトウェアの名称であって、音楽・動画等コンテンツの再生・管理の他、申立人製品のデータ管理等の機能を有しており(甲4~甲7)、「iTunes Store」を通じて音楽や映像作品の購入も可能である(甲8)。
ウ 新聞・ウェブ記事情報
(ア)2013年2月8日付け日本経済新聞には「『iTunes Store』が250億曲ダウンロードを達成」の見出しの下「iTunes Storeは2003年4月に開設され(当時の名称は『iTunes Music Store』)、2008年6月に50億曲ダウンロード、2010年2月に100億曲ダウンロードを達成した。以来、約3年間で150億曲がダウンロードされたことになる。iTunes Storeは現在、2600万曲以上の音楽カタログを提供、119カ国でサービスを展開している。アップルのインターネットソフトウエア・サービス担当上級バイスプレジデントのEddy Cue氏によると、iTunes Storeでは1分あたり1万5000曲以上がダウンロードされているという。」の記載がある。
(イ)2013年11月28日付け日本経済新聞には「同様の音楽配信サービスでは米アップルの『iTunes(アイチューンズ)ストア』が2005年から国内でサービスを開始して先行、国内シェアは5割を超える。」の記載がある。
(ウ)2014年11月20日付けIT PRO ウェブ記事には「音楽業界に詳しい英国の市場調査会社MIDiA Researchの推計によるとiTunesのアクティブユーザー数は2億人。」の記載がある。
(エ)2019年3月26日付け日本経済新聞には「アップル、動画に託す『サービス』企業への転換」の見出しの下「一方で、唯一成長を遂げているのが音楽配信『iTunes』などのサービス部門だ。2018年の売上高は約370億ドル(約4兆円)と、スマホの1667億ドルと比べるとまだ小さいが、12年と比べると額は約2.8倍にまで膨らんだ。営業利益率も約63%と、会社全体の38%を大きく上回る。」の記載がある。
(オ)2022年5月11日付け日本経済新聞には「Apple、iPodの販売を終了 20年の歴史に幕」の見出しの下「iPodや、組み合わせて楽曲の管理などに使う『iTunes』のヒットにより、音楽のインターネットを通じた流通が拡大した」の記載がある。
エ 広告
申立人は、申立人の「iTunes」は、製品のリリース以来、テレビでも継続的に広告されている旨主張し、「iTunes」に係るCM画像(甲9)を提出している。
しかし、該証拠は、外国語で作成されたものであり、訳文がないばかりでなく、放映された国、テレビ局、放映時間・回数・期間等の具体的説明が一切なく、詳細内容は不明である。
オ 申立人の「i〇〇」ブランド
申立人の製品及びサービス名称には、「iTunes」の他、「iPhone」「iPad」「iMac」「iPod」「iCloud」「iOS」「iWork」「iMovie」「iMessage」「iSight」「iWeb」「iPhoto」「iDVD」「iChat」など、iを冠したものがあることが認められる(甲10)。
(2)上記アないしオによれば、申立人は、スマートフォン「iPhone」、デジタルオーディオプレイヤー「iPod」、タブレット型コンピュータ「iPad」等を製造販売する米国の法人であり、申立人の製品及びサービス名称は、「iTunes」の他、「iPhone」「iPad」「iMac」「iPod」「iCloud」「iOS」「iWork」「iMovie」「iMessage」「iSight」「iWeb」「iPhoto」「iDVD」「iChat」など、iを冠したものが多く、そのうち、「iTunes」は、2001年にリリースされた申立人が提供する音楽・動画等コンテンツのダウンロード、管理等に使用されるアプリケーションソフトウェアの名称であることが認められる(甲4~甲7)。
そして、申立人の主張に係る各種新聞及びウェブサイトにおける「iTunes」に関する記事の内容やその他の申立人提出の証拠などにより考察すると、「iTunes」は、申立人が提供する音楽・動画等コンテンツのダウンロード、管理等に使用されるアプリケーションソフトウェアを表示するものとして、我が国又は外国における音楽配信サービスの需要者の間に一定程度知られていることがうかがわれる。
しかしながら、引用商標の具体的な使用態様、申立人が引用商標を実際に使用開始した時期、地域についての具体的な事実及びそれを裏付ける証拠、並びに引用商標を用いた宣伝広告の回数、宣伝広告の額などの広告実績等を客観的に示す証拠の提出はなく、我が国及び外国における引用商標を使用した商品の販売数量、売上高等の量的規模を示す証拠など、客観的な使用事実に基づいて引用商標の使用状況を把握することができないから、引用商標の周知性の程度を推し量ることができない。
したがって、申立人が提出した証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、引用商標が申立人の業務に係る商品又は役務を表すものとして我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「HiTune」の欧文字を横書きしてなるところ、第1文字目及び第3文字目が大文字で表されているものの、構成各文字は、同じ書体、同じ間隔でまとまりよく表されているものであり、また、その構成文字に相応して生ずる「ハイチューン」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。
さらに、本件商標の構成文字は「Hi」の語及び「Tune」の語を組み合わせてなるものといえるところ、いずれかの文字が、取引者・需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもの、又は商品の出所識別標識としての機能を果たし得ないものとみるべき事情はなく、本件商標はその構成文字全体をもって、一体的に認識、把握されるものとみるのが相当である。
そして、「HiTune」の文字は、辞書類に載録された既成語とは認められないものであるから、本件商標は、特定の意味合いを想起させるものではなく、一種の造語として理解されるものである。
してみると、本件商標からは、「ハイチューン」の称呼が生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
前記第2のとおり、引用商標1は「iTUNE」、引用商標2及び引用商標5は「ITUNES」、引用商標3及び引用商標4は「iTunes」の欧文字を横書きした構成からなるところ、それぞれの構成文字に相応して、引用商標1からは、「アイチューン」の称呼を生じ、引用商標2及び引用商標5からは「イツネス」の称呼を生じ、引用商標3及び引用商標4からは、「アイチューンズ」の称呼を生じるものである。
そして、引用商標は、いずれも辞書等に掲載のない文字であって、特定の意味合いを有しない造語といえるものであるから、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
ア 外観について
(ア)本件商標は、上記(1)のとおり、語頭の「H」及び第3文字目の「T」を大文字で表しそれ以外の文字を小文字で「HiTune」と表してなり、一方、引用商標1は別掲のとおり、語頭の「i」をデザイン化された小文字で表し、それに続く文字を大文字で「iTUNE」と表してなるところ、両者は、語頭における「H」の有無、「i」のデザイン化の有無などにおいて相違するものであるから、外観上、判然と区別し得るものである。
(イ)本件商標と引用商標2及び引用商標5は、上記(1)及び(2)のとおり、語頭における「H」の有無、大文字と小文字の相違、末尾における「s」の有無といった差異を有し、これらの差異は、比較的短い文字構成からなる両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は大きいといえるから、外観上、判然と区別し得るものである。
(ウ)本件商標と引用商標3及び引用商標4は、上記(1)及び(2)のとおり、語頭における「H」の有無及び末尾における「s」の有無という差異があるから、両者は、外観上、判然と区別し得るものである。
イ 称呼について
本件商標から生じる「ハイチューン」の称呼と引用商標1、引用商標3及び引用商標4から生じる「アイチューン」及び「アイチューンズ」の称呼は、語頭における「ハ」と「ア」の音の差異、末尾における「ズ」の音の有無といった差異を有するものであり、比較的短い音構成において、当該差異音が及ぼす影響は大きいといえるから、それぞれを称呼した場合、称呼上、互いに聴き誤るおそれはないというべきである。
また、本件商標から生じる「ハイチューン」の称呼と引用商標2及び引用商標5から生じる「イツネス」の称呼は、構成音及び構成音数が明らかに相違し、称呼上、明瞭に聴別できるものである。
ウ 観念について
本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することはできない。
エ 判断
してみると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において区別し得るものであるから、両商標が需要者に与える印象、記憶等を総合してみれば、両商標は、非類似の商標であって、別異のものというのが相当である。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標であるから、商品及び役務の類否について判断するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないものである。
そして、上記2のとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であって、別異の商標である。
そうすると、本件商標に係る指定商品の取引者・需要者と、引用商標に係る商品及び役務の取引者・需要者に共通性があるとしても、本件商標は、これを本件商標権者がその指定商品に使用しても、その取引者・需要者が引用商標を想起して、その商品が申立人又は同人と親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると、その商品の出所について混同を生じるおそれはないというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないものであり、上記2のとおり、本件商標と引用商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標であり、また、上記3のとおり、本件商標は引用商標を連想又は想起させるものでもない。
そうすると、本件商標は、引用商標の名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることもできない。
また、申立人は、商標権者が不正の目的をもって本件商標を使用していることについての具体的な主張や証拠を提出していない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するとはいえない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-900242