商標異議申立
2022-900237
アップユニティ、アップ、エイピイピイ、ユニティ
- 審判番号
- 2022-900237
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2021-057416
- 登録番号
- 6539454
- 請求日
- 2022年06月03日
- 審決日
- 2023年08月15日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社フィードフォース
- 【権利者代理人】IBC一番町弁理士法人
- 【異議申立人】ユニティ アイピーアール エーピーエス
- 【異議申立人代理人】田中 克郎
- 【異議申立人代理人】稲葉 良幸
- 【異議申立人代理人】佐藤 俊司
- 【異議申立人代理人】池田 万美
- 【異議申立人代理人】村瀬 純一
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 山根 まり子
- 分類
- T1651.261-Y (W3542) / T1651.262-Y (W3542) / T1651.263-Y (W3542) / T1651.271-Y (W3542)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号、商標法第43条の2第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6539454号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6539454号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6539454号商標(以下「本件商標」という。)は、「App Unity」の文字を標準文字で表してなり、令和3年5月12日に登録出願、第35類「経営の診断又は経営に関する助言,経営に関するコンサルティング及び情報の提供,コンピュータ機器及びコンピュータプログラムソフトの販売に関する情報の提供,コンピュータソフトウェアに関する消費者製品についての情報の提供,経営システムの構築に関するコンサルティング,情報技術を活用するための経営上の助言及び指導,情報技術の導入に伴う経営に関する助言又はコンサルティング,商業用・販売促進用及び広告用のイベント・展示会・見本市及びショーの運営,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供(インターネットによるものを含む。),広告業,マーケティング,マーケティングに関する助言,マーケティングに関する情報の提供,マーケティングの支援」及び第42類「コンピュータプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータプログラムの設計・作成又は保守に関する情報の提供,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,ウェブサイトに関するデザインの考案,デザインの考案(広告に関するものを除く。),機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,インターネットなどの通信ネットワークを用いて行う電子計算機用プログラムの提供,オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS),アプリケーションサービスプロバイダーによるコンピュータプログラムの提供,クラウドコンピューティング」を指定役務として、同4年3月1日に登録査定され、同年4月1日に設定登録されたものである。
第2 引用商標及び引用標章
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は、次の(1)及び(2)のとおりであり、現に有効に存続しているものである。
(1)国際登録第1294494号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「UNITY」の文字を横書きしてなる商標
国際商標登録出願日:2015年(平成27年)12月22日
優先権主張:2015年(平成27年)12月18日 アメリカ合衆国
設定登録日:令和3年9月17日
指定役務:第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の役務
(2)国際登録第1138230号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「UNITY」の文字を横書きしてなる商標
国際商標登録出願日:2012年(平成24年)4月20日
優先権主張:2011年(平成23年)10月26日 アメリカ合衆国
設定登録日:平成26年3月14日
指定商品及び指定役務:第9類、第35類及び第41類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品及び役務
以下、引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、引用商標という。
2 申立人が、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する標章(以下「引用標章」という。)は、「UNITY」の文字よりなる標章であり、申立人が、「ゲームプログラムの設計・開発に用いられるコンピュータソフトウェア・オンラインによるダウンロードが不可能なゲームプログラムの設計・開発に用いられるコンピュータソフトウェアの提供」(以下「申立人の使用に係る役務」という場合がある。)に使用し、需要者の間に広く認識されているとするものである。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、商標法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第40号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、欧文字の標準文字で「App Unity」を配した構成よりなり、「App」は、「Application Software」という英熟語の略称であり、「Unity」は、「単一性、統一、結合体」という意味の英単語である。
本件商標の「App」部分は、「Application Software」(アプリケーション・ソフトウェア)の略称として各種辞書に掲載されている事実がある(甲7~甲10)。
さらに、一般的にも、「App」は、「Application Software」(アプリケーション・ソフトウェア)の略称として使用されている事実が多数確認される(甲11~甲17)。
以上のとおり、本件商標の「App」部分は、アプリケーションソフトウェアの略称であるといえるから、本件商標の第35類及び第42類のコンピュータソフトウェア、情報技術関連の指定役務との関係においては、役務の質(内容)を表示する関係の指定役務との関係において、役務の質(内容)を直接表示するものであり、自他役務識別力が弱い部分であるといえる。
したがって、本件商標の「App」部分は自他役務識別力が弱いといえるから、本件商標の「Unity」部分が本件商標の要部であるといえ、当該要部から、「ユニティ」の称呼が生じ、「Unity」は「単一性、統一、結合体」という意味の英単語であるほか、「申立人の業務に係るゲームプログラムの設計・開発に用いられるコンピュータソフトウェア・オンラインによるダウンロードが不可能なゲームプログラムの設計・開発に用いられるコンピュータソフトウェアの提供」という意味合いが生じるというべきである。
さらに、申立人の業務に係る「ゲームプログラムの設計・開発に用いられるコンピュータソフトウェア・オンラインによるダウンロードが不可能なゲームプログラムの設計・開発に用いられるコンピュータソフトウェアの提供」に使用される商標として周知著名であることから、その周知著名性をうけて、本件商標に接する需要者・取引者にとっては、「Unity」部分が強く記憶に残り、該部分が、本件商標の要部として認識されるものと思料する。
したがって、本件商標の構成中「App」の文字部分からは、自他商品等識別標識としての独立した称呼や観念は生じず、「Unity」の文字部分が本件類否判断の対象となる要部というべきであるといえる。
(2)引用商標について
引用商標は欧文字の「UNITY」からなり、「ユニティ」の称呼が生じ、「単一性、統一、結合体」という英単語であるほか、「申立人の業務に係るゲームプログラムの設計・開発に用いられるコンピュータソフトウェア・オンラインによるダウンロードが不可能なゲームプログラムの設計・開発に用いられるコンピュータソフトウェアの提供」という意味合いが生じる。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標の要部「Unity」と引用商標を対比すると、両者は、2文字目以降が大文字と小文字の違いはあるものの同一の欧文字の綴りであり、外観において類似であるといえ、「ユニティ」の称呼及び「単一性、統ー、結合体」及び「申立人の業務に係るゲームプログラムの設計・開発に用いられるコンピュータソフトウェア・オンラインによるダウンロードが不可能なゲームプログラムの設計・開発に用いられるコンピュータソフトウェアの提供」の観念においても同一である。
また、本件商標に係る一部の指定役務は、引用商標に係る指定商品及び指定役務と類似している。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(4)商標権者の本件商標の登録出願の審査における主張について
本件商標の出願の審査において、引用商標と同一又は類似であって、その商標登録に係る指定商品(指定役務)と同一又は類似の商品(役務)について使用するものなので、商標法第4条第1項第11号に該当する旨の拒絶理由が通知されたが(甲19)、本件商標の商標権者は、「App」又は「Unity」の各語について、それぞれ自他役務識別力があるとの主張に係る意見書(甲20)を提出し、登録査定を得ている。
しかしながら、当該意見書において、本件商標の商標権者が述べている主張は妥当ではない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用標章の周知著名性及び独創性について
申立人は、2007年に設立されたソフトウェア開発会社であり、ゲームプログラムの設計・開発に用いられるコンピュータソフトウェア・オンラインによるダウンロードが不可能なゲームプログラムの設計・開発に用いられるコンピュータソフトウェアの提供(「申立人の使用に係る役務」)に係る「Unity」の開発・販売している(甲25)。
2021年にUnityで構築されたアプリの1か月あたりのダウンロード数は、500万回を達成し、トップ1,000のモバイルゲームのうち、Unityの製品を使用して作成されたものは、72%を誇り、Unityで作成されたモバイル、PC、コンソールのゲームの割合は50%を超え、Unityソリューションで作成または運用されたコンテンツを消費した月間アクティブユーザーは、390万人を誇り、190以上の国と地域にUnityのクリエイターを要し、全世界のモバイルゲーム作成ソフトウェアにおいて圧倒的なシェアを誇っている(甲26)。
ア 引用標章に係る商品・役務の世界シェア率
「Unity」はモバイルゲーム市場では約50%、AR/VRコンテンツにおいては約60%を超えるシェアを獲得しており、世界シェアNo.1のゲームエンジンであり、特に日本では「ゲーム開発にはUnity」が根付いているといえることは様々な媒体で報じられている(甲27、甲28)。
イ 申立人の売上高
申立人の売上高は、2018年12月期:約3.8億米ドル、2019年12月期:5.41億米ドル、2020年12月期:7.72億米ドル、2021年12月期11.1億米ドルであり(甲29)、3年間で売上高を約3倍にする急成長を遂げている。
これは、ゲームをプレイする人の数はCOVID以前よりも増加したためであり、ゲーム市場は2027年までに3000億米ドル超に達する勢いで、2021年、Unityで作られたゲームの数は93%増加し、新しいクリエイターの数は31%増加し、Unityで運営されるゲームの収益は30%上昇し、この盛り上がりは今後も続くと予想されている(甲30)。
ウ 「UNITY」の語のインターネット検索エンジン検索結果
インターネット検索エンジン「Google」及び「Yahoo!JAPAN」において、「UNITY」の語を検索すると、トップページの検索上位に表示されるのは引用標章に関するページであるので、「UNITY」の語は一般需要者に対して、申立人の業務に係る商標であると広く認識されているといえる(甲22、甲23)。
エ 申立人が開催したイベント
日本においては、申立人は、2014年から2022年まで9年連続で、日本全国の高校生、高専生、小・中学生向けのデジタルコンテンツ開発の全国大会「Unity ユースクリエイターカップ」を開催し(甲31、甲32)、2021年の大会では177チームのエントリーがあり、本選において12チームによるプレゼン発表が行われ(甲32)、その様子は「PR TIMES」において報じられて話題になった(甲33)。
オ 申立人のソーシャルネットワークサービスの登録者・フォロワー数
申立人はSNSにおいても、自社製品の宣伝紹介を行っており、YouTubeのチャンネル登録者数は112万人を誇り、「Enemies-real-time cinematic teaser Unity」と題する動画は再生回数140万回を誇る(甲34)。
申立人のInstagramのフォロワー数は、25.6万人であり(甲35)、投稿動画の最大再生回数は3.2万回である。
また、申立人のFacebookのフォロワー数は7.2万人であり(甲36)、Twitterのフォロワー数は4.6万人である(甲37)。
カ 小括
上記のとおり、引用標章は、「申立人の使用に係る役務」の名称として、日本を含めた全世界で約15年使用されており、遅くとも、本件商標の出願時までには、日本国内においても周知.著名な商標となっていたというべきである。
引用標章は、申立人の商標として周知・著名であり、「UNITY」は、「単一性、統一、結合体」の意を有する既成語であって、造語商標ほどの独創性があるとまではいえないとしても、申立人の商標として周知.著名であり、しかも、引用商標の指定商品及び指定役務との関係で何ら直接的に商品の品質等の内容を表示するものではなく、このような文字を採択すること自体、高い自他商品役務識別力を有しているのであり、十分に独創的であるといえる。
(2)本件商標の指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品・役務の取引者及び需要者の共通性
本件商標の第35類の指定役務及び第42類の指定役務は、コンピュータソフトウェアや情報技術に係る役務である。
引用商標1の第42類の指定役務も、コンピューティングソフトウェア・ソフトウェア・情報技術関係の役務である。
引用商標2の第9類の指定商品、第35類の指定役務も、コンピュータソフトウェアや情報技術関係の商品・役務であるといえる。
したがって、本件商標の指定役務と、引用商標の指定役務又は指定役務は、コンピュータソフトウェアや情報技術関係のものであるので、性質、用途又は目的における関連性の程度は高く、商品・役務の取引者及び需要者の共通性はあるといえる。
(3)本件商標が、申立人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であると認めるべきその他取引の実情
商標権者は、データフィード関連事業、デジタル広告関連事業、ソーシャルメディアマーケティング関連事業等を行う企業であり(甲38)、本件商標を「コンピュータプログラムの設計・作成等」に使用している事実がある(甲39)。
よって、商標権者は、「ゲームプログラムの設計・開発に用いられるコンピュータソフトウェア・オンラインによるダウンロードが不可能なゲームプログラムの設計・開発に用いられるコンピュータソフトウェアの提供」に係る「Unity」の開発・販売等を行っている申立人とは、コンピュータプログラム・コンピュータソフトウェアメーカーとして、同業種であるといえ、商標権者が、引用標章の周知著名性を知らないはずはなく、本件商標は、引用標章の周知著名性を承知の上で登録出願したものであって、引用標章の周知著名性へのただ乗り(いわゆるフリーライド)や希釈化(いわゆるダイリューション)を意図したものであると合理的に推認することができる。
なお、商標権者は、商標権者とは何ら資本関係、事業提携その他一切の関係性がなく、本件商標の使用について許諾を得た者でもない。
したがって、需要者は、商標権者が申立人から、あたかも上記商品の販売の許諾を受けて販売していると誤認するおそれがあるといえ、「Unity」を含む本件商標がその指定役務について使用された場合には、それらの商品又は役務があたかも申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
(4)まとめ
本件商標の要部は、引用標章と同一又は類似である「UNITY」の文字からなる商標として、引用標章と高い類似性を有すること、引用標章は周知著名な商標であること、本件商標の指定役務は、引用標章が周知著名性を獲得した役務と関連性が高いものであり、需要者の範囲も一致するものであることから、本件商標は取引者・需要者にとって引用標章と極めて強い関連性を持って認識されること、さらには、商標権者が、本件商標をその指定役務に使用するときは、これに接する取引者・需要者は、引用標章に係る役務を想起・連想し、あたかも申立人が取り扱う業務に係る役務であるかの如く認識して取引にあたると考えられるため、その出所について混同を生ずるおそれがあることは明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
第4 当審の判断
1 引用標章の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次の事実が認められる。
ア 申立人は、平成19年(2007年)に設立されたソフトウェア開発会社であり、ゲームプログラムの設計・開発を行う者が用いるためのコンピュータソフトウェアである「Unity」(以下、「申立人ソフトウェア」という場合がある。)の開発、販売、提供をしている(申立人の主張、甲25、甲28)。
イ 申立人ソフトウェアは、クリエイター(ゲーム開発者)がゲームプログラムを開発する際に使用されるゲームエンジン(ゲームプログラムの設計・開発に用いられるコンピュータソフトウェア)であり(甲26)、令和3年(2021年)に、新しいクリエイター(ゲーム開発者)の数は31%増加し、その収益は30%上昇したとされる(甲30)。
ウ 申立人ソフトウェアについて、日本では「ゲーム開発にはUnity」が根付いている旨が含まれる記事が1回、また、ゲームエンジンとして、世界シェアNo.1である旨が含まれる記事が2回掲載されたが(甲27、甲28)、当該シェア等における具体的な対象役務の範囲や算出方法、期間等は不明である。
エ 「ユニティ・ソフトウェア」の米国株の紹介記事において、その売上高は、「2018年12月期:約3.8億米ドル、2019年12月期:5.41億米ドル、2020年12月期:7.72億米ドル、2021年12月期11.1億米ドル」であったとされるが(甲29)、我が国におけるものは不明であり、本件商標の登録出願時前の我が国における役務の提供実績及びその多寡を裏付ける証拠は提出されていない。
オ 申立人は、SNSにおいて、英語で自社製品の宣伝紹介を行い、YouTubeのチャンネル登録者数は112万人(甲34)、Instagramのフォロワー数は25.6万人であり、318件の投稿がされ(甲35)、Facebookのフォロワー数は7.2万人(甲36)、Twitterのフォロワー数は4.6万人である(甲37)。
カ 申立人の日本法人によって、平成26年(2014年)から令和4年(2022年)まで、日本全国の高校生、高専生、小・中学生向けのデジタルコンテンツ開発の全国大会「Unityユースクリエイターカップ」が開催され(申立人の主張)、2021年の同イベントでは177チームのエントリーがあり、本選において12チームによるプレゼン発表が行われ(甲32)、その様子は「PRTIMES」において報じられた(甲33)。また、2022年の同イベントの開催する旨が、同年6月に発表された(甲31)。
キ 前記カの大会以外についての申立人ソフトウェアに係る記事が、我が国において4回掲載された(甲25、甲27、甲28、甲30)。
(2)上記(1)で認定した事実によれば、申立人は、引用標章を、「ゲームプログラムの設計・開発に用いられるコンピュータソフトウェア・オンラインによるダウンロードが不可能なゲームプログラムの設計・開発に用いられるコンピュータソフトウェアなどの提供」について使用していることが認められる。
そして、申立人ソフトウェアは、日本でも利用されているものであること、世界において高いシェアを獲得していることが記事において紹介されたこと、過去数年において、引用標章を冠した名称の我が国の学生向けのデジタルコンテンツ開発の全国大会が数回開催されたこと、前記大会以外についての申立人ソフトウェアに係る記事が我が国において4回掲載されたことから、引用標章が、ゲームプログラムの設計・開発を行うことに強い関心を持つ我が国の需要者の間で一定程度知られているといい得る。
しかしながら、申立人が提出した証拠によっては、申立人による、申立人ソフトウェアについての我が国における具体的な役務の提供実績(期間、数量、売上げ及びその多寡、市場シェア等)は明らかではない。
また、申立人による、申立人ソフトウェアに関連する広告宣伝として、申立人のSNSでは、その情報を英語で発信していることから、我が国の需要者の認識を確認することができないし、その登録者数も、それほど多いとは評価できないものである。
さらに、過去数年において、申立人の日本法人によって、引用標章を冠した名称の我が国の学生向けのデジタルコンテンツ開発の全国大会が数回開催されたこと、前記大会以外についての申立人ソフトウェアに係る記事が我が国において4回掲載されたことが認められるものの、それら以外に、引用標章の我が国の需要者の間における出所識別標識としての知名度の向上につながるような具体的な広告宣伝活動及びその実績、規模等は、提出証拠からは明らかではない。
以上からすると、提出証拠からは、引用標章が、我が国の需要者の間において、申立人に係る出所識別標識として広く認知されているものとは認めるに足りないから、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用標章が、申立人の役務に係る役務を表示する出所識別標識として、需要者の間に広く知られていると認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「App Unity」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、空白を介してなることから、「App」と「Unity」の2つの欧文字を組み合わせてなると理解されるものである。
ア 本件商標の構成中「App」の文字について
本件商標の指定役務(第35類「コンピュータ機器及びコンピュータプログラムソフトの販売に関する情報の提供,コンピュータソフトウェアに関する消費者製品についての情報の提供」等及び第42類「コンピュータプログラムの設計・作成又は保守」等)の需要者は、例えば、ゲームプログラムの設計・開発を行うためにコンピュータソフトウェアを利用するようなコンピュータに関する専門的な知識を有する者に限られるものではなく、スマートフォン等を通じてコンピュータソフトウェアを日常的に利用する一般の消費者が含まれるものである。
ところで、本件商標の構成中「App」の文字は、一部の専門的な辞書やウェブサイトにおいて、「アプリ」(甲8)、「アプリケーション」や「Application Software(アプリケーションソフトウェア)」(甲10)を示す旨の説明があるものの、我が国において、広く一般的に利用されている国語辞典(例:「広辞苑 第七版」(株式会社岩波書店)、「大辞林 第四版」(株式会社三省堂)、「大辞泉 第二版」(株式会社小学館))や、高校生が学習用に使う基礎的な英和辞典(例:「ベーシックジーニアス英和辞典第2版」(株式会社大修館書店))には「App」の項の載録が確認できない。
そして、申立人が提出した証拠によれば、「英語では略語としてApp、appが使われる」(甲9)、「米国では「Application」の略として「App」が使われており、いろんなアプリという意味で「Apps」と複数形が付いたりします。」(甲16)、「アプリをダウンロードできるApp Storeでは英語でapp・appsと表記されますが、この場合の読み方はアップ・アップスとなりアプリと同じ意味になります。」(甲17)との記載にみられるように、英語圏においては、「Application」等の略称として「App」が用いられていることがうかがえる。
また、当審において職権をもって調査したところ、我が国においては、アプリケーションソフトウェアの略称は、「アプリ」の片仮名が標準的な呼称として使用されているものであることがうかがえる。
以上を踏まえると、「App」の文字は、我が国のコンピュータに関する専門的な知識を有する者や、英語圏において、「Application」等の略称として認識、理解されていることがうかがえるものの、一般の消費者が含まれる本件商標の指定役務の我が国の需要者において、「App」の文字が有する意味合いが、広く一般的に認識、理解されているものとは言い難いものであるから、「App」の文字が、本件商標の指定役務との関係において、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないと判断しなければならない特段の事情は見いだせないものである。
イ 本件商標の構成中「Unity」の文字について
本件商標の構成中「Unity」の文字は、「単一(性)、統一(性)、結束、団結。」(「ベーシックジーニアス英和辞典第2版」(株式会社大修館書店))や、「一致。統一。」(「広辞苑 第七版」(株式会社岩波書店)、「大辞林 第四版」(株式会社三省堂)、「大辞泉 第二版」(株式会社小学館) 「ユニティー(unity)」の項参照)の意味を有する英語である。
ウ 本件商標「App Unity」について
本件商標は、上記のとおり、「App Unity」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同じ書体、同じ大きさで、等間隔に、まとまりよく表されており、視覚上一体的に看取されるものであるから、本件商標は、外観上、構成文字全体が一連一体のものとして把握、認識されるとみるのが自然である。
そして、その構成文字全体から生じる「エーピーピーユニティー」の称呼も格別冗長ではなく、無理なく一連に称呼し得るものである。
また、当該文字は、全体として、辞書等に掲載のないものであって、上記アのとおり、構成中の、「App」の文字が有する意味合いが、本件商標の指定役務の需要者において、広く一般的に理解されているものとは言い難いものであるし、当審における職権調査によって、本件商標の指定役務の分野において、「App ○○」のように「App」を冠した構成からなる文字が、後半の「○○」の文字部分のみで取引に資されているような実情も確認することはできないものである。
さらに、「UNITY」の文字(引用標章)が、上記1のとおり、我が国の需要者に、特定の者の業務に係る役務を表示するものとして、広く認識されている等の特別な事情は見いだせないものである。
そうすると、本件商標は、その構成態様において、その構成中の「App」又は「Unity」のいずれかの文字部分が、取引者、需要者に対し、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与え、本件商標の要部として認識されるものではなく、構成文字全体をもって、特定の観念を生じない一体不可分の造語を表したものとして認識、把握されるとみるのが相当である。
したがって、本件商標は、「エーピーピーユニティー」の称呼のみを生じ、特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、上記第2の1のとおり、「UNITY」の文字を横書きしてなるものである。
そして、当該文字は、上記1のとおり、特定の者の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているともいえないものである一方、上記(1)イのとおり、「単一(性)、統一(性)、結束、団結。」や「一致。統一。」(前掲書)の意味を有する英語として知られているものである。
したがって、引用商標は、その構成文字に相応して「ユニティー」の称呼及び「統一」程度の観念を生じるというのが相当である。
(3)本件商標と引用商標との類否について
ア 本件商標と引用商標とを比較すると、これらは、上記(1)及び(2)のとおり、それぞれ構成する文字数が9文字又は6文字と、明らかに相違することから、両者の外観は、明確に区別し得るものであって、相紛れるおそれのないものである。
イ 称呼においては、本件商標から生じる「エーピーピーユニティー」の称呼と、引用商標から生じる「ユニティー」の称呼とを比較すると、両称呼は、それぞれ10音又は4音で構成されるものであって構成音数が相違し、かつ、語頭の「エーピーピー」の音の有無に差異を有することから、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語調、語感が異なり、相紛れるおそれのないものである。
ウ 観念においては、本件商標からは特定の観念を生じないものであるところ、引用商標からは「統一」程度の観念を生じるものであるから、本件商標と引用商標とは、観念において相紛れるおそれはないものである。
エ そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念において相紛れるおそれのないものであるから、これらが需要者に与える印象、記憶、連想等を総合してみれば、両者は、非類似の商標というのが相当である。
(4)小括
以上によれば、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、本件商標の指定役務と引用商標の指定商品又は指定役務を比較するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記1のとおり、引用標章は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されていたということはできないものである。
また、上記2で認定したように構成文字全体をもって把握される本件商標は、引用商標と類似するとはいえないものであって、引用商標と同一のつづりからなる引用標章も同様に、本件商標と類似するとはいえないもので別異のものというのが相当である。
そうすると、本件商標は、これをその指定役務に使用しても、需要者において、引用標章を連想、想起するということはできず、よって、その役務が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じさせるおそれがある商標とはいえない。
その他、本件商標が役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべき事情を見いだすこともできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するという事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-900237