商標異議申立
2022-900208
カオフン、カオファン
- 審判番号
- 2022-900208
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2021-099130
- 登録番号
- 6525997
- 請求日
- 2022年05月17日
- 審決日
- 2023年04月13日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】平林 幸恵
- 【異議申立人】花王 株式会社
- 【異議申立人代理人】羽切 正治
- 【異議申立人代理人】仲村 圭代
- 【異議申立人代理人】小野 博喜
- 【異議申立人代理人】大木下 香織
- 審判長/審判官
- 審判長 大森 友子
- 審判官 板谷 玲子
- 審判官 須田 亮一
- 分類
- T1651.23 -Y (W05) / T1651.25 -Y (W05) / T1651.261-Y (W05) / T1651.262-Y (W05) / T1651.263-Y (W05) / T1651.271-Y (W05)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項8号商標法4条1項10号商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第8号、商標法第4条第1項第15号、商標法第43条の2第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6525997号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6525997号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6525997号商標(以下「本件商標」という。)は、「Kaofun」の文字を標準文字により表してなり、令和3年8月10日に登録出願、第5類「衛生マスク,綿製の衛生マスク,立体型衛生マスク,不織布製衛生マスク」を指定商品として、同4年2月2日に登録査定され、同年3月10日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する商標は、以下の3件の商標であり(以下、これらをまとめていうときは「引用商標」という。)、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第3048241号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1に示したとおりの構成からなり、平成4年9月28日に登録出願、「医療用油紙,衛生マスク,オブラ―ト,ガ―ゼ,カプセル,耳帯,眼帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液」を含む第5類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同7年6月30日に設定登録されたものである。
2 登録第5300448号商標(以下「引用商標2」という。)は、「KAO」の文字を標準文字により表してなり、平成21年6月10日に登録出願、第5類「医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド」、第10類「おしゃぶり,氷まくら,三角きん,支持包帯,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,ほ乳用具,魔法ほ乳器,綿棒,指サック」及び第21類「デンタルフロス」を含む第1類、第3類、第5類、第10類、第11類、第16類、第21類、第29類ないし第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同22年2月12日に設定登録されたものである。
3 登録第3027307号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲2に示したとおりの構成からなり、平成4年9月28日に登録出願、「せっけん類,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料,化粧品」を含む第3類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同7年2月28日に設定登録されたものである。
なお、上記の引用商標3については、第1類ないし第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務について防護標章登録されている。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第10号及び同項第8号に該当するため、商標法第43条の2第1号の規定により、その登録は取り消されるべきものである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第61号証(枝番号を含む。なお、枝番号を有する証拠において、枝番号のすべてを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)を提出した。
1 申立人について
申立人は、1940年(昭和15年)5月に設立され、資本金854億円、従業員数8,508人(連結対象会社合計33,507人)(甲5の1)、本社を含めた国内事業場を4カ所、工場10カ所、研究所4カ所、研修所1カ所を有する(甲5の2)。
申立人のグループ会社は、国内に9社存在し、海外においては、アジア・オセアニア地域に30社、北米・中南米地域に8社、ヨーロッパ・アフリカ地域に26社を有しており、日本を代表する大企業の1つであるとともに、海外においても広く事業を行っているグローバル企業である(甲5の3~5)。
申立人の英文社名は「Kao Corporation」であって、海外におけるグループ会社の社名にも、申立人の商標「Kao」が付されている。
申立人の事業内容は、一般消費者に向けたコンシューマープロダクツ事業と、産業界のニーズにきめ細かく対応した製品を幅広く展開するケミカル事業とがあり、2021年12月期における申立人の売上高は、1兆4,188億円であった(甲5の6)。
2 「KAO」「Kao」の周知・著名性について
(1)申立人商標の独創性及び継続使用
「花王」は、申立人が1890年に販売を開始した石けんに採用した名称であり、「カオ(顔)石鹸」と名づけ、「花王」という文字をあてることにより創作されたものである(甲6)。これが社名の由来ともなり、申立人は1985年までは「花王石鹸株式会社」、その後は「花王株式会社」の商号で営業を継続し(甲7)、申立人の業務に係る商品・役務を表示する商標として使用され続け、「花王」の英字表記である「KAO」「Kao」についても、申立人の業務に係る商品・役務を表示するものとして、長年にわたり使用されている(甲8、甲9)。
そして、申立人は2009年までは「花王」と擬人化された月のマークをコーポレートマークとして使用していたが、2009年からは花王グループを表すロゴを、英文字の「Kao」に、日本及びアジアのコンシューマープロダクツとケミカル事業のロゴを擬人化された月のマークに英文字の「Kao」を組み合わせたロゴに変更し(甲10の1・2)、2021年には花王グループを表すすべてのロゴ(日本及びアジアのコンシューマープロダクツとケミカル事業のロゴ)が「Kao」の文字に統一された(甲10の3)。
申立人は、多様な商品分野において周知著名なブランドを多数保有しており、申立人はこれら膨大な量の商品の1つ1つに「Kao」の商標を付して販売している(甲11~甲19)。
さらに、申立人は「KAO」及び「Kao」の文字よりなる商標をパンフレット、カタログ等にも使用してきた(甲20~甲23)。
(2)申立人の広告活動
申立人の広告宣伝費は、2013年度:864億600万円、2014年度:924億1000万円、2015年度:944億9600万円、2016年度:974億3700万円、2017年度:899億3500万円、2018年度:802億7400万円、2019年度:775億4500万円、2020年度:719億8400万円と膨大である(甲24)。
申立人は、東洋経済オンラインの「「広告宣伝費」が多いトップ300社ランキング」において2017年11位(甲25)、日経広告研究所の「有力企業の広告宣伝費2020年版」(2019年度の宣伝広告費についてまとめたもの)において単独決算ベースで2位となるなど(甲26)、広告費用に関するランキングにおいても上位を占めている。
申立人は、積極的にテレビCMを流しており(甲27)、関東エリアにおいて、半期ごとに1万件以上のCMを流している。また、テレビCMについては、東洋経済オンラインの「「CMがよく見られている」200社ランキング」において2017年上半期1位となっている(甲28)。放送回数ランキングにおいても、関東民放5局を調査した2014年6月度のランキングで1位(甲29)、東京・大阪・名古屋・福岡・札幌・BSデジタルを調査した2020年5月度のランキングで2位(甲30)、株式会社ビデオリサーチによる2020年10月度におけるテレビ広告ランキングにおいても、関東地区(2位)・関西地区(1位)・名古屋地区(2位)と全ての地域において上位にランクインしている等(甲31)、「Kao」が数多くの需要者等の目に触れる状態にある。
また、新聞においても、2009年のロゴマーク変更の際には全国42紙に「Kao」を使用した全面広告を出している(甲32)他、近年でも日本経済新聞(日本経済新聞・電子版購読数合計約226万)や読売新聞(朝刊発行部数約709万部)等の全国紙に「Kao」を使用した全面広告を出す等(甲33~甲35)、広告活動を行っている。
さらに、申立人の広告は多くの賞を受賞している(甲36~甲38)。
以上のような広告活動の結果、申立人の広告接触度は高く、また、良い広告活動をしている企業として広く認識されている(甲39~甲43)。
(3)申立人の防護標章登録について
申立人は、登録第3027307号(引用商標3)の防護標章登録第1号(甲44)を受けており、著名商標として認定されている。
(4)周知・著名性の認定に関する審決・取消決定例
審決例からみても、申立人の商標「KAO」「Kao」が周知・著名性を有することは顕著な事実である(甲45~甲47)。
(5)また、特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」の「日本国周知・著名商標検索」によれば、引用商標2の「KAO」及び引用商標3の「Kao」等が周知・著名商標として検索される(甲48)。
(6)以上述べたとおり、申立人は「せっけん類,化粧品,香料,消臭芳香剤,おむつ,生理用品」等、様々な商品について取り扱っており、「KAO」「Kao」は申立人の略称及びハウスマークとして長年使用されている。申立人は毎年多額の広告費を投じており、取引者・需要者の広告接触度や評価も高い。
さらには、「Kao」の防護標章登録の存在や審決・異議決定でその周知・著名性が認められていた点を勘案すると、「KAO」「Kao」は本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品等を表示するものとして、我が国の取引者・需要者の間において周知・著名になっていたというべきである。
(7)「KAO」「kao」に係るインターネット検索の事実実験
インターネット検索においてローマ文字大文字の「KAO」の検索結果及び小文字の「kao」の文字の検索結果として、申立人に関連する情報が表示される事実を確認する事実実験を行い、公正証書を作成した(甲49の1)。当該事実実験によれば、インターネット検索エンジン「YAHOO!JAPAN」、「Google」、「MSNサーチ」のいずれにおいても、「KAO」、「kao」の文字の検索結果として申立人に関連するものが上位にあがってくることがわかる。
「KAO」「kao」の文字は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において花王株式会社(Kao Corporation)の略称を示すものとして周知・著名であり、申立人の業務内容を示す商標として取引者・需要者に広く認識されるものとなっている(甲49、甲50)。
3 本件商標と引用商標との類否について
「Kao」「KAO」は、申立人である花王株式会社(Kao Corporation)の略称を示すものとして周知・著名であると共に、申立人の業務内容を示す商標として取引者・需要者に広く認識されている周知・著名商標である。
したがって、本件商標は、そもそも語頭部分(前半部分)に申立人の周知・著名商標「Kao」を含み、後半部に「おかしみ、おもしろみ、楽しみ」を意味する一般的な英語である「fun」(甲51)からなるものであるから、前半部分と後半部分とのウェイトが異なり、前半部分の「Kao」部分が分離抽出されるものである。
そうであるとすると、本件商標は、「カオーファン」の称呼の他に、前半部分の「Kao」から「カオー」単独の称呼が生ずるものである。
他方、引用商標は、「Kao」及び「KAO」の文字からなり、「カオー」の称呼が生ずる。
したがって、本件商標と引用商標とは称呼が同一であり、取引者・需要者をして誤認混同が生ずる程に相紛らわしく類似する商標として判断されるものである。
また、申立人は、「楽しさ」を重視した商品や取り組みを提供している(甲52~甲58)から、本件商標「Kaofun」は「花王(Kao)の提供するおもしろいものや楽しいこと(fun)」等を想起させるものであり、本件商標と引用商標は、取引者・需要者をして誤認混同を生ずるおそれのある類似する商標である。
4 出所の混同について
(1)申立人による「マスク」の販売について
申立人は、申立人のブランドの一つ「めぐりズム」より「マスク」を販売している(甲16の1の1)。当該商品は、「品名 マスク(商品名:めぐりズム蒸気でホットうるおいマスク)」、「対象 風邪・せきの飛沫等」とあり、本件商標の指定商品「衛生マスク」等と同一又は極めて近似する商品である(甲16の1の2)。
(2)「衛生マスク」の取引実情について
殺菌効果のあるハンドソープや手指用消毒剤、除菌シート(甲14の1)や抗菌効果のある衣類・布・空間消臭スプレー(甲12の1)は、商品「衛生マスク」と共に新型コロナウイルス予防対策商品として同一の場所で販売されているという取引実情がある(甲60の1~7)。
しかして、これらの商品は需要者・売り場を同一にするという点で、密接な関係がある商品であって、「ハンドソープ」、「手指消毒剤」、「除菌スプレー」の出所表示として周知・著名な引用商標を含む本件商標「Kaofun」を「衛生マスク」を含む本件商標の指定商品に使用する場合、需要者・取引者間において出所の混同が生ずるおそれがある。
5 本件商標の取消理由について
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、その構成中に申立人の周知・著名な商標「Kao」を含むから、特許庁の商標審査基準から判断して、「他人の登録商標と類似」する商標である。
本件商標は、そもそも語頭部分(前半部分)に申立人の周知・著名な「Kao」を含み、後半部に「おかしみ、おもしろみ、楽しみ」を意味する一般的な英語である「fun」からなるものであるから、前半部分「Kao」と後半部分「fun」とのウェイトが異なるものであり、前半部分の「Kao」部分が取引者・需要者間において注視され、分離抽出されるものである。
そうであるとすると、本件商標は、前半部分の「Kao」から「カオー」単独の称呼が生ずるものであるから、引用商標から生ずる「カオー」と同一の称呼が生ずるものであり、類似する商標といわねばならない。
そして、本件商標は引用商標1及び引用商標2の指定商品と同一又は類似する商品を指定するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
申立人の商標「Kao」「KAO」は申立人の造語であり、申立人の業務に係る商品・役務を表示するものとして、取引者・需要者間に周知・著名である。申立人は、多種多様な商品の製造販売及びこれに付随するサービスを行っており、広範囲な経営を行っている。また、「Kao」が周知・著名性を獲得している商品と本件商標の指定商品とは、需要者・供給者・販売店舗等を共通にする、密接に関係がある商品である。
したがって、本件商標は、他人(申立人)の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第10号について
「Kao」「KAO」が申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に需要者の間に周知・著名商標であり、引用商標は、本件商標の指定商品との関係においても商標法第4条第1項第10号において要求される周知性の要件を十分に満たしている。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第8号について
「Kao」の文字は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において周知・著名であり、花王株式会社(Kao Corporation)の略称を示すものとして取引者・需要者に広く認識されている。
本件商標は、他人(申立人)の著名な略称である「Kao」を含む商標であって、申立人の承諾を得ているものではないため、商標法第4条第1項第8号に該当する。
本件商標は、構成中の「Kao」が容易に分離抽出されるものであって、本件商標の構成中の「Kao」部分が申立人の名称等として客観的に把握され、申立人を想起・連想させるものであることは明らかである。
6 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第10号及び同項第8号に該当するため取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知・著名性等について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 申立人について
申立人は、1940年5月に設立された生活者向けのコンシューマープロダクツ事業及び産業界向けのケミカル事業を行う法人であり、資本金854億円、従業員数8,508人(連結対象会社合計3万3507人)(甲5の1・3・6)、本社を含めた国内事業場を4か所、工場10か所、研究所4か所、研修所1か所を有し(甲5の2)、申立人のグループ会社は国内に9社存在し、海外においては、アジア・オセアニア地域に30社、北米・中南米地域に8社、ヨーロッパ・アフリカ地域に26社を有している(甲5の3~5)。
そして、申立人の事業のうち、コンシューマープロダクツ事業では、「ハイジーン&リビングケア事業」、「化粧品事業」、「ヘルス&ビューティケア事業」、「ライフケア事業」の4つの事業分野を主に展開し、これらにケミカル事業も加えた、2021年12月期における申立人の売上高は、1兆4188億円であった(甲5の6)。また、申立人の海外におけるグループ会社の英文社名には、「Kao(China)Holding Co.,Ltd.」、「Kao Corporation Shanghai」、「Kao(HongKong)Ltd.」、「Kao Industrial(Thailand)Co.,Ltd.」、「Kao Australia Pty.Limited」、「Kao Canada Inc.」、「Kao USA Inc.」等のように語頭に「Kao」の文字が付されているものもある(甲5の3~5)。
イ 申立人に係る商標について
(ア)本件商標の登録査定後の申立人のホームページの写し(2022年6月9日出力)(甲5)には、その上部中央に引用商標1及び引用商標3と似通った書体でデザイン化した「Kao」の文字(以下「Kaoロゴ」という。)が表示されている。
(イ)申立人は、2009年から花王グループを表すロゴを「Kaoロゴ」としつつ、日本及びアジアのコンシューマープロダクツ事業とケミカル事業のロゴは「Kaoロゴ」と擬人化した月の図形とからなる商標とした。その後、申立人は、2021年に花王グループを表すすべてのロゴ(日本及びアジアのコンシューマープロダクツ事業とケミカル事業のロゴを含む。)を「Kaoロゴ」に統一した(甲10の3)。
(ウ)申立人は、洗剤の「アタック」、洗顔料等の「ビオレ」、布製品や空間用の消臭剤の「リセッシュ」、入浴剤の「バブ」、おむつ等の「メリーズ」、生理用品の「ロリエ」等、各種のブランドを保有しており、申立人はこれらの商品に「Kaoロゴ」と擬人化した月の図形とからなる商標を付して販売している(甲11~甲19)。
これらの商品には、「Kaoロゴ」のみの表示もあるが、上記(イ)によれば、日本及びアジアのコンシューマープロダクツ事業等のロゴは「Kaoロゴ」と擬人化した月の図形とからなる商標としていたものであって、花王グループを表すすべてのロゴを「Kaoロゴ」のみに統一したのは、2021年のことであり、現在までの間に「Kao」又は「KAO」の文字が単独で、需要者の間に広く知られていたと認め得るような証拠は見いだせない。
(エ)申立人は、引用商標3を原登録商標とする、第1類ないし第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務について防護標章登録を受けている(甲44)。
(2)上記(1)によれば、申立人は、自社のホームページや申立人の業務に係る各種商品に「Kaoロゴ」を使用していることが認められるものの、その多くは、擬人化した月の図形とともに使用されているものであって、該ロゴが単独で使用されているものはそれ程多くはない。そして、引用商標3を原登録商標とする防護標章登録が存在していることから、「Kaoロゴ」が申立人の商標としてある程度知られていることがうかがえるとしても、これが単独で日本及びアジアのコンシューマープロダクツ事業とケミカル事業のロゴに使用開始されたのは2021年以降のことであって、それ程長い期間ではなく、引用商標を使用した申立人の業務に係る商品についての販売数量、売上高、市場シェアなどの販売実績等、その周知性を客観的に判断するに足る具体的な証拠の提出はないから、本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標の周知性の程度を推し量ることはできない。
そのほか、申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても、引用商標又は「Kao」若しくは「KAO」の文字が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間で、申立人の業務に係る商品を表示するもの、又は申立人の名称の略称として広く認識されていたと認めるに足りる事実は見いだせない。
したがって、申立人から提出された証拠によっては、引用商標が、我が国において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知性を獲得していたとは認めることができないものであり、かつ、「Kao」又は「KAO」の文字が申立人の著名な略称ということもできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「Kaofun」の文字を標準文字により表してなるところ、その構成文字は、同じ書体、同じ大きさ、等間隔で表されており、外観上まとまりよく一体的に構成されているものである。また、当該文字は、辞書等に掲載のないものであって、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として理解されるものである。
そして、特定の語義を有しない欧文字からなる商標については、我が国において広く親しまれているローマ字読み又は英語風の発音をもって称呼されるのが一般的といえるから、本件商標からは「カオフン」及び「カオファン」の称呼を生じるものとみるのが相当であって、その称呼は、格別冗長なものではなく、無理なく一連に称呼し得るものである。
また、上記1(2)のとおり、「Kao」又は「KAO」の文字は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものであり、他に本件商標の構成中「Kao」の文字部分が、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足りる事情も見いだせない。
してみれば、本件商標は、その上記構成及び称呼からすれば、これに接する需要者が、殊更に「Kao」の文字部分に着目することはなく、本件商標の構成全体をもって、特定の観念を生じない一体不可分の造語を表したものとして認識し、把握するというのが自然である。
そうすると、本件商標は、その構成文字全体に相応して「カオフン」及び「カオファン」の一連の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
なお、申立人は、過去の審決例を挙げ、本件商標からは、前半部分の「Kao」の文字が分離観察される旨主張しているが、本件商標は、外観上まとまりよく一連一体に表されているものであり、かかる構成態様から「Kao」の文字部分のみを分離抽出して認識・把握される事情もないことは、上記のとおりである。
したがって、本件商標から、「Kao」の文字部分が分離抽出されることを前提とする申立人の主張は、採用することができない。
(2)引用商標1及び引用商標2について
引用商標1は、別掲1のとおり、デザイン化した「Kao」の欧文字を横書きした構成からなり、引用商標2は、上記第2の2のとおり、「KAO」の文字を標準文字により表したものであるところ、これらの文字は一般的な辞書等に掲載がないものであって、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として理解されるものである。
そして、特定の語義を有しない欧文字からなる商標については、上記(1)と同様に、我が国において広く親しまれているローマ字読み又は英語風の発音をもって称呼されるのが一般的といえるから、引用商標1及び引用商標2は、その構成文字に相応して「カオ」の称呼を生じるものである。
したがって、引用商標1及び引用商標2は、「カオ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用商標1及び引用商標2との類否について
本件商標と引用商標1及び引用商標2とを比較すると、まず外観において、本件商標の構成中「Kao」の文字が当該各引用商標のつづりと共通するとしても、両者は、「fun」の文字の有無という明らかな差異があることから、いずれも判然と区別し得るものである。
そして、称呼においては、本件商標から生じる「カオフン」及び「カオファン」の称呼と、引用商標1及び引用商標2から生じる「カオ」の称呼とは、後半部における「フン」又は「ファン」の音の有無という明らかな差異を有し、4音と2音という比較的短い音構成において、該差異音が称呼全体に与える影響は大きいから、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、いずれも明瞭に聴別し得るものである。
また、観念においては、本件商標と引用商標1及び引用商標2は、いずれも特定の観念は生じないものであるから比較することはできない。
したがって、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、観念において比較できないとしても、外観においては判然と区別し得るものであり、称呼においても明瞭に聴別し得るものであるから、これらが需要者に与える印象、記憶、連想等を総合してみれば、これらの商標は、いずれも相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。
以上のとおり、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、非類似の商標であるから、引用商標1及び引用商標2の指定商品に、本件商標の指定商品と同一又は類似する商品を含むとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
引用商標は、上記1(2)のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。また、上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であり、引用商標1と同一の態様といい得る引用商標3もまた、本件商標とは非類似の商標といえる。
したがって、本件商標は、その指定商品と申立人の業務に係る商品との類否について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記1(2)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものであり、また、上記3のとおり、本件商標と引用商標とは、いずれも非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品とが関連性を有する場合があるとしても、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、需要者が引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第8号該当性について
「Kao」又は「KAO」の文字は、上記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の名称の略称として著名となっていたと認めることはできない。
そうすると、本件商標は、その構成中に「Kao」の文字を含むとしても、その部分が申立人の略称として把握されることはないから、他人の著名な略称を含む商標であるとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号、同項第10号、同項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-900208