商標異議申立
2022-900186
イヒンセーリニン
- 審判番号
- 2022-900186
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2019-069408
- 登録番号
- 6517732
- 請求日
- 2022年05月02日
- 審決日
- 2025年04月24日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】メモリーズ株式会社
- 【権利者代理人】森田 隼明
- 【異議申立人】株式会社 トゥドゥカンパニー
- 【異議申立人代理人】小野尾 勝
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 大橋 良成
- 審判官 馬場 秀敏
- 分類
- T1651.13 -Z (W37)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法3条2項商標法43条の3第2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第2項、商標法第3条、商標法第3条第1項、商標法第3条第1項第6号、商標法第43条の9
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6517732号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6517732号商標の商標登録を取り消す。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6517732号商標(以下「本件商標」という。)は、「遺品整理人」の文字を標準文字で表してなり、令和元年5月16日に登録出願、第37類「住宅内の清掃,ハウスクリーニング,エアコンディショナーの清掃,台所・トイレ・浴室・浴槽・洗面化粧台・押入れ又は下駄箱の清掃,住宅の清掃」を指定役務として、同4年1月14日に登録審決され、同年2月24日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証を提出した。
以下、「甲第○号証」を単に「甲○」と表す場合がある。
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)「遺品整理人」が提供するサービスに関する認定について
「遺品整理人」がサービスを提供する現場は、主として孤独死が発生した住居であることが多く、また、孤独死が発生した現場では、いわゆる遺品の整理のみならず、ハスクリーニング清掃業務(賃住宅の場合は原状回復)等の特殊清掃が必ずセットで必要となる(甲1、甲2)。
また、原査定で列挙されたインターネット情報における5つの使用例は、遺品整理業者が「特殊清掃」のサービスも一括で提供していることを示すものであり、孤独死の現場で対応する「遺品整理人」が提供するサービスは、遺品整理の業務のみならず、特殊清掃も一貰して依頼され、提供するという業界の常識に基づく遺品整理業者のサービスラインナップを示したものである。
このような業界の常識から、本件商標に接した需要者(孤独死された居住者のご遣族や賃貸住宅オーナー、不動産業者等)は、指定役務「住宅内の清掃、ハウスクリーニング」等との関係で、当然、「故人が残した品物を整理する人による住居内の清掃、ハウスクリーニング」との特定の観念を想起する。
つまり、本件商標の識別力を判断するにあたり、「物を片付けた後の清掃」と「遺品整理」の業務を区別して考えることは不当であり、「遺品整理人」の文字は、本件指定役務との関係においては、役務の質を直接的かつ具体的に表示したものである。
(2)申立人による「遺品整理人」の語の使用について
「遣品整理人」の語は、申立人が、創業(2000年)より現在まで、遺品整理及び特殊清掃のサービスの提供に継続して使用しており、雑誌記事、テレビ番組以外にも、大手マスメディア等でたびたび紹介されている事実がある(甲3~甲6)。
また、申立人が現在まで継続して「遺品整理人を使用して、遺品整理及び特殊清掃のサービスを提供している事実がある(甲7、甲8)。
なお、申立人よる使用開始時期は,出願人法人の設立年の平成20年(2008年)(甲9)よりも以前であり,申立人は、「遺品整理人」を使用する先行事業者である。
このように、申立人による使用の事実が多数ある。
(3)申立人による過去出願の審査との公平性について
申立人の登録第5967866号にかかる出願は、当初第37類「一般家庭内の部屋の掃除,ハウスクリーニング」等の役務も含めて指定し出願(甲10)したところ、商標法第3条第1項3号に該当するとの拒絶理由通知をうけた(甲11)。
その後の手続(甲7、甲12)を経て、商標法第3条第1項第3号の規定の趣旨及び取引の実情を鑑みて、「一般家庭内の部屋の掃除,ハウスクリーニング」等の役務との関係で識別力を有しないとした判断は妥当な判断と考え、申立人は、その指示に従い手続補正書を提出し、登録に至ったものである。
したがって、申立人の上記案件の登録の事実は、本件商標が登録される根拠とはなりえず、本件について登録を認めることは、甚だ不当な判断であり、審査の公平性を著しく欠くものであり、申立人の今後の商標使用に関する予測可能性を奪うものでもある。
2 商標審査及び審判の信頼性、信用性について
同一商標について異なる判断がなされた事例(「音楽マンション事件」(事件番号:平成28(行ケ)10191))が存在するが、本件についてこれを踏襲することは、事例が大きく異なることから、決してあってはならない。
具体的には、当該判決は、最初の拒絶出願から12年経過した後に出願された事例であること、使用状況について原告が建設した特定のマンションを示すのみという事例あったのに対し、本件の場合は、同一商標「遺品整理人」についての使用の事実(「遺品整理人」による特殊清掃業務の実情)が、今回の審決より、わずか約4年前に審査された申立人の出願についての上申書やその後も継続して大手マスメディア等でも取り上げられていることから簡単に見つけることが可能であり、その使用状況が拡大している点等、事例が大きく異なるからである。
このように、申立人の出願の審査時よりも、継続的な申立人による使用により、さらに識別力を失っている同一商標に対し登録を認めることは、本件指定役務の業界に多大な混乱をもたらすものでもある。
そして、「同一商標に対し、頻繁に審査結果が変ってしまう状況を今後も招きかねない本件が事例として残ってしまうことは、商標審査及び審判制度の信頼性、信用性を自ら著しく損なうものでもある。
3 まとめ
以上のことから、本件商標は、その指定役務との関係において、役務の質を表示するものであり、商標法第3条第1項第3号に該当するとして、取り消されるべきである。
第3 当審における取消理由の通知(要旨)
当審において、商標権者に対し、別掲に係る証拠を示した上で、「本件商標に係る登録審決の日前及び同日後のいずれにおいても、「遺品整理」の業務には「清掃」の業務も含まれると判断するのが相当であり、本件商標に係る登録審決時においても同様であったというのが合理的である。また、「遺品整理」の業務を行う者を「遺品整理人」と称している者も少なからず見受けられるから、本件商標は、その構成から、容易に「遺品整理をする人」の意味合いを認識させるものであり、「遺品整理」の業務には「清掃」の業務も含まれるといえ、そして、本件商標の指定役務は、上記第1のとおりであり、いずれも「清掃」の範ちゅうに含まれるものであるから、本件商標は、これをその指定役務について使用するときは、これに接する取引者・需要者をして、「遺品整理をする人(遺品整理人)によって提供される役務」であることを表示したもの、すなわち、役務の質を表示したものと認識させるものと判断するのが相当である。よって、本件商標は、その登録審決時において、その指定役務について使用するときは役務の質を表示したものと認識させるにすぎないものであって、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないから、商標法第3条第1項第3号する」旨の取消理由通知を通知し、相当期間を指定して意見を求めた。
第4 商標権者からの意見
商標権者は、前記第3の取消理由に対して、令和5年7月28日付け「意見書」(以下「意見書」という。)を提出し、要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第13号証(枝番号あり。)を提出した。
以下、「乙第○号証」を「乙○」と表す場合がある。
1 「遺品整理」の業務には「清掃」の業務も含まれるとの認定は妥当ではないことについて
申立人の主張は、「遺品整理人」が行う業務は、「遺品整理」の他に「清掃(特殊清掃含む。)」があるという主張にとどまり、「遺品整理」の業務に「清掃(特殊清掃含む。)」が含まれるという主張には至っていない。
このことは、「「遺品整理人」は、遺品整理のみならず、特殊清掃も一貫して対応をおこなうことが通常となっています。」(甲2)及び「孤独死の現場で対応する「遺品整理人」が提供するサービスは、遺品整理の業務のみならず、特殊清掃も一貫して依頼され、提供するという」との申立人の主張からも明らかであり、「遺品整理」の業務に「清掃(特殊清掃含む。)」が含まれるとする合議体の認定には飛躍がある。
2 取消理由に職権調査で提示されたインターネット情報について
(1)別掲1の1で示されたウェブサイトには、明確に「遺品整理後の・・・物を片付けた後の清掃」の記載があり、「物を片付けた後の清掃」は、「遺品整理」の業務には含まれず、「遺品整理後(品整理後)」の業務である。
(2)別掲1の2で示されたウェブサイトには、「遺品の搬出後は、水回りを中心にお部屋の清掃を行います。」の記載があり、実質的には、「お部屋の清掃」は「遺品整理」の業務には含まれず、「遣品整理後(遺品の搬出後)」の業務である。
(3)別掲1の3で示されたウェブサイトには、「搬出後の清掃」の記載があり、これは、実質的には、「遺品整理」後の「清掃」のことであり、「遺品整理」の業務には含まれない。
(4)別掲1の4で示されたウェブサイトには、作業実績の項目に、「遺品整理」と並列に赤「特殊清掃」の記載があり、「遺品整理」の業務とは別に「ゴミ屋敷清掃」及び「特殊清掃」の業務があるため、「ゴミ屋敷清掃」及び「特殊清掃」は「遺品整理」の業務には含まれない。
(5)別掲1の5で示されたウェブサイトには、「整理作業後の清掃」とは、「遺品整理」の後の清掃のことであり、「遺品整理」の業務には含まれない。
(6)別掲2の1で示されたウェブサイトには、「遺品整理後の清掃」と明確に記載されているため、「清掃」は、「遺品整理後」の業務であり、「遺品整理」の業務には含まれない。
(7)別掲2の2で示されたウェブサイトには、「遺品整理とは、故人が大切にしていた品を整理し、故人の暮らしていた家や部屋をきれいにすること。」において、「清掃」は、「遺品整理」の業務に含まれているとはいえない。
(8)別掲2の3で示されたウェブサイトには、「遺品整理とは、亡くなった人の持ち物を整理し部屋をきれいに清掃することです。」においては、「清掃」は、「遺品整理」の業務に含まれている。
(9)別掲2の4で示されたウェブサイトには、「整理作業後は、多くの場合、事業者が簡易清掃を行ってくれますが、・・・」とあり、「整理作業後」とは、「遺品整理」後のことであり、「清掃」は、「遺品整理」の業務には含まれない。
(10)別掲2の5で示されたウェブサイトには、「遺品整理とハウスクリーニングと特殊清掃の違いについて」の記載により、「清掃」は、「遺品整理」の業務には含まれない。
(11)別掲2の6のスポーツ新聞の記事は、「遺品整理人」が「特殊清掃を請け負う時もある。」と解され、「清掃」が、「遺品整理」の業務には含まれるか否かは不明確である。
(12)別掲2の7の日刊紙の記事は、「遺品整理という言葉も、正式な定義があるわけではありません。実際の作業の中心は、部屋の中でお客さんの意向を聞いて、家財道具の整理仕分けをすることです。」の記載からは、「清掃」は、「遺品整理」の業務には含まれない。
(13)別掲2の8の日刊紙の記事は、「◇遺品整理 故人の遺品の要不要を判断し、整理すること。」の記載によると、「清掃」は、「遺品整理」の業務には含まれない。
(14)別掲2の9の日刊紙の記事は、「清掃」が、「遺品整理」の業務には含まれるか否かとは無関係なものである。
(15)別掲2の10の日刊紙の記事は、「一般的に、遺品整理業は、故人の持ち物を、現金や骨董品などの貴重品、仏壇や布団など供養が必要な品、廃棄物、リサイクル品などに分類し、相談の上、遺族に渡したり処分したりする。」との記載によると、「清掃」は、「遺品整理」の業務には含まれない。
(16)小括
「遺品整理」の業務には「清掃」の業務が含まれる場合と含まれない場合とがあり、「遺品整理」の語は、広辞苑にも掲載がないから、当該業界の取引実情により判断すべきである。
そして、インターネット情報には、「遺品整理」の業務には「清掃」の業務が含まれない場合の方が数多くあるのは明らかである。
また、申立人の主張も、「遺品整理」の業務に「清掃(特殊清掃含む。)」が含まれるという主張には至っていない。
したがって、「遺品整理」の業務には「清掃」の業務も含まれるとの審判官の認定は不当であり、一般的、普遍的な取引実情として、「遺品整理」の業務には「清掃」の業務が含まれるとはいえないものである。
仮に、「遺品整理」の業務に「清掃」の業務が含まれる場合の、「清掃」は、本件商標の直接的表示である「遺品整理」の中の細分化された業務として位置付けられるものである。
つまり、「遺品整理」以外の様々な局面で「清掃」の業務は存在する。してみれば、本件商標に接する取引者、需要者は、まず、「遺品整理」を想起するのが自然であり、「遺品整理」を想起した後、「遺品整理」から「清掃」が想起される場合もあるものだから、「清掃」は、本件商標「遺品整理人」との関係では、「遺品整理」を介する間接的表示にとどまる。
そうすると「清掃」は「遺品整理」の業務として紹介されているものではなく、「遺品整理」の業務とは区別されているものと思料する。
そして、「遺品整理人」は、「遺品整理」そのものとの関係で使用されているものである。
したがって、本件商標の指定役務を取り扱う業界において、「遺品整理人」なる語が取引上一般に使用されている事実は存在しない。
本件商標の指定役務である「住宅内の清掃、ハウスクリーニング」等との関係においても、本件商標は、これに接する取引者、需要者に、「故人が残した品物を整理する人による役務」であることを無理なく理解させるというのが自然であるとの、本件登録前の拒絶査定における審査官殿の認定は、妥当性に欠けるものである。
すなわち、本件商標の指定役務との関係においては、役務の質を直接的かつ具体的に表示したものとして直ちに理解されるとはいい難いものである。
3 「遺品整理人」の語が取引上一般に使用されている事実があるとは言えないことについて
申立人は、「遺品整理及び特殊清掃のサービス」との関係で「遺品整理人」の語を申立人が使用している旨主張、申立人の従業員の著書においても「遺品整理人」の語が使用されている旨主張している(甲3、甲4、甲6 ほか)。
さらに、特殊清掃を行う申立人の従業員のユニフォームに「遺品整理人」の語が使用されている旨主張して(甲8)、申立人は、審決における「本件商標の指定役務を取り扱う業界において、「遺品整理人」の文字が、役務の質を直接的に表示するものとして取引上一般に使用されている事実は発見できず」との判断は明らかに不当であると主張している。
しかしながら、申立人の主張をまとめると申立人及び申立人から派生するもの、すなわち、申立人の会社1社が使用していることを主張しているのに過ぎず、さらに、本件商標権者も、「住宅内の清掃、ハウスクリーニング」等との関係で、「遺品整理人」の語を使用していることから、合計2社が「遺品整理人」の語を使用している事実にすぎない。
これに対して、取引上一般に使用されていると認定するためには、少なくとも3社以上の使用の事実が必要であり、このことは、特許庁における過去の商標法第3条第1項第3号の審決例には、6社~9社の使用事実が示されている(乙6、乙7)。
以上の点より、申立人と本件商標権者の合計2社の使用事実だけでは、「住宅内の清掃、ハウスクリーニング」等との関係で「遺品整理人」の文字が役務の質を直接的に表示するものとして取引上一般に使用されている事実があるとはいえない。
4 申立人が主張する過去出願の審査との公平性について
申立人は、過去の自己の事案の審査経緯を挙げ(甲10、甲11)、本件商標の登録を認めるのは、審査の公平性を著しく欠くものあると主張している。
しかしながら、申立人は、指定役務「一般家庭内の部屋の掃除、ハウスクリーニング」等についての審査における判断に対して当該役務の権利化を断念したに過ぎず、審査の公平性を欠くとの主張は妥当ではない。
5 過去における裁判の判断が、本件について当然に踏襲されるべきであることについて
申立人は、いわゆる「音楽マンション事件」(事件番号:平成28(行ケ)10191)の事例の判断が、本件について踏襲されることは、事例が大きく異なることから、決してあってはならないと主張しているが、この主張は的外れである。
申立人は、訴訟の対象と本件についての申立人の使用状況の相違、及び当該商標の審査時期の相違を挙げて、事例が大きく異なると主張するが、上記訴訟の判決は、商標の使用状況等の複数の事情を含めることを当然の前提として、商標法第3条第1項第6号該当性についての判断は、これに対する不服審判請求に係る審決に委ねるべきであると判示するものである。
なお、上記訴訟の事例と本件事例とは、共に識別力欠如であること、審査における判断に対しての不服審判請求に関すること、役務についての文字結合商標であること等、むしろ非常に近接した事例であるから、本件についても、当然に踏襲されるべきである。
そして、申立人は、上記訴訟の事例と異なり、不服審判請求を求めなかったのであるから、本件商標権者が指定役務「住宅内の清掃、ハウスクリーニング」等について不服審判を請求して、同一商標「遺品整理人」について登録審決を得たとしても、商標審査及び審判制度の信頼性、信用性を損なうものではない。
6 本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものではないことについて
上述のごとく、「遺品整理」の業務には「清掃」の業務が含まれない。仮に、含まれるとしても、その場合「清掃」は、本件商標「遺品整理人」との関係では、間接的表示というべきである。
そうすると、本件商標に係る登録審決時点において、拒絶査定不服審判の審決の理由に示されるごとく、本件商標は、外観上まとまりよく一体的に表してなるものであり、本件商標を構成する各語に意味があり、本件商標を構成する「遺品整理人」の文字が、「故人が残した品物を整理する人」の意味合いで使用されている事例が散見されるとしても、その指定役務との関係においては、役務の質を直接的かつ具体的に表示したものとして直ちに理解されるとはいい難く、また、当該業界において、「遺品整理人」の文字が、役務の質を直接的に表示するものとして取引上一般に使用されている事実はないから、その指定役務との関係において、役務の質を表示するものといえず、自他役務を識別する機能を果たし得るというべきものである。
7 本件商標は、使用による特別顕著性を得ていることについて
商標権者は、本件商標をその指定役務との関係で長期間継続的に使用した結果、出所表示機能をもつに至っているため、本件商標は商標法第3条第2項の適用を受けることができるものである。
(1)本件商標権者は、平成20年11月に創業し、役務「住宅内の清掃、ハウスクリーニング」等との関係で、本件商標の使用を開始した。以後、現在に至るまで継続的に一貫して使用し、出所表示機能を持つに至っている。
そして、役務「住宅内の清掃、ハウスクリーニング」等の市場規模の拡大、また、業界誌及びTV番組に取り上げられ話題性を得、さらに、商標権者自身の業界トップクラスの業績の維持及び広告啓蒙活動とも相まって、現在に至るまで出所表示機能を保つ状態を継続維持している。
(2)当該業界の代表的団体の使用証明を入手できた事実
乙第8号証は、当該業界の代表的団体である、「一般社団法人 日本除菌脱臭サービス協会」の「商標使用証明書」である。
当該「商標使用証明書」は、本件商標権者が平成20年11月から現在に至るまで、役務「住宅内の清掃、ハウスクリーニング」等との関係で、本件商標を継続使用してきたことを証明するものである。
(3)TV番組の特集で紹介された事実
ア 2011年1月14日にフジテレビで放送されたTV番組の中で商標権者は、役務「住宅内の清掃、ハウスクリーニング」等との関係で、その映像において、商標権者の社長が「遺品整理人」の表示と共に登場する場面があった(乙9-2)。
イ 2012年11月1日にMBSで放送されたTV番組の中で本件商標権者は、役務「住宅内の清掃、ハウスクリーニング」等との関係で、その映像において、商標権者の会社の看板に「特殊清掃」等営業品目が掲載及び「遺品整理人」の表示があり(乙10-2)、住宅内の清掃の場面(乙10-3、乙10-4)では、「遺品整理人」の表示が確認できる場面があった。
ウ 以上のように、商標権者は、役務「住宅内の清掃、ハウスクリーニング」等との関係で本件商標を使用しており、TV番組を通じて、大々的に宣伝広告されている。
エ 本件商標権者による広告啓蒙活動の事実
本件商標権者は、平成28年8月20日に一般社団法人遺品整理士認定協会が開催したセミナーによる啓蒙広告活動を行っており、当該セミナーで配布した資料(乙11)には、商標権者の社長が「遺品整理人」の表示と共に紹介され(乙11-2)、そのほか「特殊清掃」の表示(乙11-3、乙11-4)や、「ハウスクリーニング」の表示(乙11-5)がある。
本件商標権者は、自らの広告啓蒙活動を通じて、役務「住宅内の清掃、ハウスクリーニング」等との関係で本件商標を使用している。
オ 業界紙に紹介された事実
本件商標権者の社長執筆の「遺品整理人」に関する記事が2015年発行の業界誌「地域ケアリング」(Vol.17,No.5,2015)の記事に掲載されている(乙12,乙13)。
これら以外にも様々な広告宣伝媒体において、本件商標権者は、指定役務との関係で、本件商標「遺品整理人」を使用している。
本件商標権者が指定役務との関係、本件商標「遺品整理人」を長期間継続的に使用してきた結果、取引者、需要者が本件商標権者の業務に係る役務であることを認識することができるに至っているから、特別顕著性を得ており、商標法第3条第2項の適用を受けることができる。
8 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当せず、該当するとしても、商標権者による長期間継続的使用により、使用による特別顕著性を得ており、商標法第3条第2項の適用を受けることができるものである。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号について
(1)商標法第3条第1項第3号に掲げる商標が、商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、指定商品との関係で、その商品の品質、用途等その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品の識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される。
そうすると、本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、登録査定時において、本件商標がその指定商品との関係で、商品の品質、用途等その他の特性を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本件商標がその指定商品に使用された場合に、将来を含め、指定商品の取引者、需要者によって商品の上記特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される(最高裁昭和53年(行ツ)第129号判決、平成27年(行ケ)第10107号判決参照)。
(2)商標法第3条第1項第3号該当性について
本件商標は、上記1のとおり「遺品整理人」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、本件商標登録時審決で示したとおり、これを構成する文字は、それぞれ、「遺品」の文字は「故人が残した品物。」を、「整理」の文字は「乱れた状態にあるものをととのえ、秩序正しくすること。不必要なものを取り除くこと。」を、「人」の文字は「ひと。」を、それぞれ表す語(いずれも出典:広辞苑第七版 岩波書店)であるから、全体として「遺品整理をする人」ほどの意味合いを容易に理解させるものである。
また、別掲1及び別掲2のとおり、「遺品整理」の業務を行う者を「遺品整理人」と称していることも少なからず見受けられ、そのような者が、当該「遺品整理」の業務において、故人の家や部屋をきれいにするなどの「清掃」の業務も含めてサービスの提供がされている実情もうかがえる。
そして、本件商標の指定役務は、上記第1のとおりであり、いずれも「清掃」の範ちゅう(以下「本件指定役務」という。)に含まれるものである。
そうすると、本件商標の構成中の「遺品整理」の文字と本件指定役務とは、それぞれの業務の性質において、密接な関連性を有するものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、これをその指定役務について使用するときは、これに接する取引者・需要者をして、「遺品整理をする人によって提供される清掃業務」であることを表示したもの、すなわち、役務の質を表示したものと認識させるものと判断するのが相当である。
そうすると、本件商標は、本件指定役務について使用するときは役務の質を表示したものと認識させるにすぎないものであって、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。
したがって,本件商標は商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 商標法第3条第2項について
商標権者は、本件商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、商標権者による長期間継続的使用により、使用による特別顕著性を得ており、同条第2項の適用を受けることができるものであると主張しているので、以下、検討する。
(1)「商標法第3条第2項が、同条第1項第3号等所定の商標であっても、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品(役務)であることを認識することができるものについては、商標登録を受けることができるとする趣旨は、特定人が、当該商標を、その者の業務に係る商品(役務)の自他識別標識として、永年の間、他人に使用されることなく、独占排他的に継続使用した実績を有する場合には、当該商品(役務)に係る取引界においては、事実上、当該商標の当該特定人による独占的使用が事実上容認されているといえるので、他の事業者にその使用の機会を開放しておく公益上の要請が乏しくなるとともに、当該商標が、自他商品(役務)識別力を獲得したことにより、商標としての機能を備えるに至ったことによるものと解される」旨判示されている(知的財産高等裁判所、平成18年(行ケ)10450号 平成19年4月10日判決を参照した。)。
また、「商標法は全国一律に適用されるものであって、商標権が全国に効力の及ぶ更新登録可能な排他的な権利であることからすると、出願商標について、商標法3条2項により商標登録が認められるためには、同条第1項第3号に該当する商標が、現実に使用された結果、指定商品又は指定役務の需要者の間で、特定の者の出所表示として我が国において全国的に認識されるに至ったことが必要であるといえる」と判示されている(知的財産高等裁判所、平成28年(行ケ)第10266号 同29年9月27日判決を参照した。)。
(2)商標法第3条第2項該当性について
ア 商標権者による本件使用の実情について
商標権者提出の証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。
(ア)商標権者は、平成20年11月に創業し、役務「住宅内の清掃、ハウスクリーニング」等との関係で、本件商標の使用を開始し、現在に至るまで継続的に一貫して使用している(商標権者の主張)。
(イ)役務「住宅内の清掃、ハウスクリーニング」等の市場規模の拡大、話題性及び商標権者自身の業界トップクラスの業績の維持及び広告啓蒙活動により現在に至るまで出所表示機能を保つ状態を継続維持している(商標権者の主張)。
(ウ)当該業界の代表的団体である、「一般社団法人 日本除菌脱臭サービス協会」の「商標使用証明書」とされる書類には、本件商標権者が平成20年11月から現在に至るまで、役務「住宅内の清掃、ハウスクリーニング」等との関係で、本件商標を継続使用してきたことを証明するとの記載がある(乙8)。
(エ)商標権者は、役務「住宅内の清掃、ハウスクリーニング」等との関係で、2011年1月14日及び2012年11月1日にTV番組の中でその映像において、商標権者の社長と「遺品整理人」の表示又は商標権者の会社の看板に「遺品整理人」の表示が確認できる場面があった(乙9-2、乙10-2、乙10-3、乙10-4)。
(オ)商標権者は、平成28年8月20日に一般社団法人遺品整理士認定協会が開催したセミナーで配布したとされる資料には、商標権者の社長が「遺品整理人」の表示と共に紹介され、「特殊清掃」の表示や「ハウスクリーニング」の表示がある(乙11)。
(カ)2015年発行の業界誌に商標権者の社長執筆の「遺品整理人」に関する記事が掲載されたとされる(乙12,乙13)。
イ 判断
(ア)上記アによれば、商標権者が平成20年(2008年)頃から、本件商標を使い始めたことはうかがえる。
しかしながら、商標権者は、業績の維持及び広告啓蒙活動により現在に至るまで出所表示機能を保つ状態を継続維持していると主張するものの、業界におけるシェア率や、売上高など、一般需要者に広く認識されているとする客観的な証拠の提出はない。
また、テレビ番組で紹介された事実や雑誌の記事として掲載等がされた事実があるとしても、テレビ番組については、わずか2例を示されたにすぎず、その放送内容も番組中の一つのコーナーにおいて、商標権者社長の姿や「遺品整理人」の文言又は商標権者企業の看板等が映像中に流れたことはうかがい知れるものの、番組全体の中で、どの程度の需要者に目にとまり、記憶にとどめられたかを推し量る術はないことから、係る事実をもって、直ちに周知に至っているとは認め難い。
(イ)そのほか、代表的団体による「商標使用証明書」とされる書類においては、商標権者が本件商標を継続して使用し続けているという事実はうかがい知ることができるものの、継続した使用の事実は、特別顕著性を得るに至ったことを認定するための一つの指標にすぎず、当該継続した使用の事実のみをもって、直ちに周知に至っているとは認め難い。
また、遺品整理を行う者の業務には、一連の作業の流れの中で、作業順序としては、最後の仕上げの作業として「住宅内清掃等を行う者」が、存在しているという業界の事情がある。
(ウ)「遺品整理」や「特殊清掃」の語は、項目名として、精緻な内容の使い分け定義があるわけではないが、「清掃業者」や「遺品整理を行う者」等が「亡くなった人に関わる片付け」を行うことを指称する語として使用している事実がある。
そうすると、「遺品整理」の語は、広辞苑を含む一般に広く使用される辞書への掲載がないとしても、使用実情を踏まえれば、取引者・需要者をして、「遺品を整理すること」ほどの意味を容易に認識し、理解するというべきである。
(エ)上記(ア)ないし(エ)の事情を総合すれば、商標権者が2008年から使用していることを考慮しても、本件商標に接する取引者・需要者をして、その使用により自他役務識別力を有するに至ったと認めることはできない。
3 商標権者からの意見について
(1)商標権者は、申立人の主張について、「遺品整理」の業務に「清掃(特殊清掃含む。)」が含まれるという主張には至っていないと主張する。
しかしながら、商標法第43条の9において、登録異議の申立ての審理については、商標権者、登録異議申立人又は参加人が申し立てない理由についても、審理することができるという職権による審理が認められているものである。
(2)商標権者は、仮に「遺品整理」の業務に「清掃」の業務が含まれる場合の「清掃」は、本件商標の直接的表示である「遺品整理」の中の細分化された業務として位置付けられるものであり、「遺品整理」以外の様々な局面で「清掃」の業務は存在するから、「清掃」は、本件商標「遺品整理人」との関係では、「遺品整理」を介する間接的表示にとどまり、「清掃」は「遺品整理」の業務として紹介されているものではなく、「遺品整理」の業務とは区別されているものと主張する。
しかしながら、上記1(2)のとおり、遺品整理の業務と清掃の業務とは、相互に密接な関連性を有するということができ、上記2イ(2)(イ)及び(ウ)の取引の実情のとおり、遺品整理の仕上げ作業で、清掃を行う事業者が存在している実情も含め、両者を、明確に区別しているとはいえない。
(3)商標権者は、本件商標の指定役務を取り扱う業界において、「遺品整理人」なる語が取引上一般に使用されている事実は存在しないと主張する。
しかしながら、少なくとも申立人は「遺品整理人」なる語を遺品整理について使用しており、「遺品整理」と本件商標の指定役務との関係は、密接な関連性をもって取引されているといえ、取引者・需要者において、明確に区別されるものとはいえない実情も踏まえると取引上一般に使用されている事実を否定することにはならない。
(4)商標権者は、本件商標の指定役務である「住宅内の清掃、ハウスクリーニング」等との関係においても、本件商標は役務の質を直接的かつ具体的に表示したものとして直ちに理解されるとはいい難いものであると主張する。
しかしながら、上記2(2)イ(イ)及び(ウ)のとおり、その取引実情からすれば、本件商標は役務の質を直接的かつ具体的に表示したものとして直ちに理解されるというべきである。
(5)商標権者は、取引上一般に使用されていると認定するためには、少なくとも3社以上の使用の事実が必要である旨主張する。
しかしながら、商標法第3条第1項第3号に該当するか否かは,平成12年(行ケ)第76号(「負圧燃焼焼却炉」判決)において、「商標法第3条第1項第3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである」旨判示されているところ、請求人を含む不特定の者が「遺品整理」の語を表示して、当該役務の提供が行われている実情がある。
そうとすれば、本件商標は、これを、本件指定役務である「住宅内の清掃,ハウスクリーニング」等について使用する場合、取引者、需要者は、「遺品整理」の業務を介して行われる「遺品整理をする人によって提供される清掃業務」であることを無理なく理解、認識するものというべきであり、商標権者が主張する、少なくとも3社以上の使用の事実が必要であるとする合理性は見いだせない。
(6)商標権者は、いわゆる「音楽マンション事件」(事件番号:平成28(行ケ)10191)を挙げ、当該訴訟の事例と本件事例とは、共に識別力欠如、不服審判請求及び役務についての文字結合商標であること等、非常に近接した事例であるから、本件についても当然に踏襲されるべきであると主張する。
しかしながら、当該訴訟の対象と本件については、その使用状況、使用期間の長さ、使用者の有無などの点において大きく相違すること、及び当該商標の審査時期の相違があることから、事案が大きく異なるものであり、これを当然に踏襲しなければならい理由はない。
(7)商標権者は、本件商標の登録は、上述のごとく、「遺品整理」の業務には「清掃」の業務が含まれず、仮に含まれるとしても、その場合「清掃」は、本件商標「遺品整理人」との関係では、間接的表示にすぎず、その指定役務との関係において、役務の質を表示するものといえず、自他役務を識別する機能を果たし得るというべきものである旨主張する。
しかしながら、商標法第3条第1項第3号については、取引者・需要者の視点で捉えるべきものであるところ、本件商標は、上記1(1)のとおりであるから、自他役務を識別する機能を果たし得るものとみることはできない。
(8)商標権者は、本件商標は、これをその指定役務との関係で長期間継続的に使用した結果、出所表示機能をもつに至っており、商標法第3条第2項の適用を受けることができると主張する。
しかしながら、商標法第3条第2項の適用該当性については、上記2のとおりであるから、これを認めることはできない。
(9)まとめ
したがって、上記に係る商標権者の主張は、いずれも採用することができない。
4 小括
上述までのとおり、本件商標は、その指定役務との関係において、取引者・需要者が、本件商標に接する場合には、出所表示識別標識と認識することなく、役務の質を表したものと認識するにとどまり、単に役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認識するにすぎないものであるから、商標法3条1項3号に該当する。
また、商標権者による使用実績を踏まえたとしても、本願商標は、商標法3条2項の要件を具備するものということはできないものである。
なお、商標権者は、意見書の「5 意見の内容」の「(1)取消理由通知(決定の予告)の希望の有無」において、「希望する。」と申し出ているところ、本件については決定の予告を行うべき対象案件ではないため、当該希望への対応を行うことはできない。
5 総括
上記のとおり、本件商標は、その指定役務について、商標法第3条第1項第3号に該当するにかかわらず違法に登録されたものである。
また、本件商標はその指定役務について、商標法第3条第2項に規定する要件を具備するものでもないから、本件商標の登録は、同法第43条の3第2項の規定基づいて、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-900186