商標異議申立
2022-900138
ランビエール、ランビエ、ランビア
- 審判番号
- 2022-900138
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2021-064187
- 登録番号
- 6505009
- 請求日
- 2022年04月04日
- 審決日
- 2023年02月21日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】深▲セン▼市海普拉斯科技有限公司
- 【権利者代理人】原田 貴史
- 【異議申立人】アンテルパルファン エスアー
- 【異議申立人代理人】田中 克郎
- 【異議申立人代理人】稲葉 良幸
- 【異議申立人代理人】佐藤 俊司
- 【異議申立人代理人】池田 万美
- 【異議申立人代理人】橋 沙耶香
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 淳
- 審判官 小俣 克巳
- 審判官 石塚 利恵
- 分類
- T1651.271-Y (W03)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第15号、商標法第43条の4第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6505009号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6505009号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6505009号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和3年5月26日に登録出願、第3類「足用人造軽石,身体用精油,化粧用の毛髪のトリートメント剤(医療用のものを除く。),ヘアコンディショナー,アイライナーペンシル,マッサージ用オイル及びローション,ネイルチップ,顔及び身体の手入れ用ローション,化粧用接着剤,つけまつ毛,つけまつ毛用接着剤」を指定商品として、同4年1月5日に登録査定され、同月27日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下、それらをまとめていうときは、「引用商標」という。)、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
(1)登録第2190323号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 「LANVIN」の欧文字を横書きしてなるもの
指定商品 第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料」
登録出願日 昭和62年2月19日
設定登録日 平成元年11月28日
書換登録日 平成22年1月6日
(2)登録第1854940号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 「LANVIN」の欧文字と「ランバン」の片仮名を2段に横書きしてなるもの
指定商品 第3類「せっけん類,歯みがき,化粧品,香料類」
登録出願日 昭和58年12月13日
設定登録日 昭和61年4月23日
書換登録日 平成18年9月27日
(3)登録第522100号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 別掲2のとおり
指定商品 第3類「香料類(薫料・香精・天然じゃ香・芳香油を除く。),吸香,におい袋,香水類,フケ取り香水,香油,おしろい,ヘアーローション,化粧品(化粧用染料・化粧用顔料を除く。)」
登録出願日 昭和31年10月23日
設定登録日 昭和33年6月12日
書換登録日 平成21年8月12日
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の3第2項によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第216号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、申立人は、登録異議申立書について補正できる期間(理由補充期間。商標法第43条の4第2項。)経過後に、上申書をもって甲第217号証を提出した。
(1)引用商標の周知性について
ア 「LANVIN」について
ファッションブランド「LANVIN」は、1889年にフランスのデザイナー「ジャンヌ・ランバン」が創業した、現存するフランス最古のクチュールメゾンである。当初、帽子店として開業したが、1890年に親子服の専門店へと転換した。その後、本格的にレディースウェアにも参入し、リボンなどをモチーフにしたドレスが注目を集め、また、透明感のある深いブルーは「ランバン・ブルー」と呼ばれ、「LANVIN」のアイコンカラーになっている。1925年には香水部門を、1926年には紳士服部門を設立し、同年、ジャンヌ・ランバンは、女性で初めて、文化・科学・産業・商業・創作活動などの分野における民間人の「卓越した功績」を表彰する、レジオン・ドヌール賞を受賞した(甲5、甲6)。
「LANVIN」は、現在は香水、レディース・メンズウェア、ハンドバッグ、ベルトのほか、アクセサリー等の宝飾品、時計などのデザイン・企画及びこれらの商品の製造販売を業とするトータル・ファッション・メーカーであり、いずれの商品についても引用商標に含まれる「LANVIN」商標を使用し、当該「LANVIN」の表示は、同ブランドのハウスマークとなっている(なお、引用商標の商標権については、申立人の完全子会社であるアンテルパルファン スイス エス アー エール エルが有しており、香水以外の商品についてはJEANNE LANVIN SAの日本におけるマスターライセンシーである伊藤忠商事株式会社が引用商標以外の商標権を有している。)。申立人の業務に係る商品を含め、「LANVIN」ブランドの商品は、いずれも洗練された高品質の商品として、極めて高い知名度を有しており、申立人の長年の継続的努力によって、世界の一流品としての極めて高い信用が日本においても形成されているものである。
(ア)「LANVIN」の香水について
上記のとおり、「LANVIN」の香水部門は1925年に設立されたところ(甲5)、申立人は、「LANVIN」の創業者から当該部門を譲り受け、現在の同部門のオーナーとなっている(甲7、甲8)。なお、商標権の管理上、引用商標に係る商標権については、申立人の完全子会社が保有している(甲2~甲4、甲160)。日本においては、ブルーベル・ジャパン株式会社がその香水の卸しを行っている(甲8)。
申立人は、「LANVIN」ブランドの商品として、「エクラ・ドゥ・アルページュ」「マリーミー!」「ME」等をはじめとする香水のほか、その香りを使用したボディローション、ヘアミスト等を、引用商標を付して展開しており(甲9、甲10、甲208)、なかでも、1927年に発表された「アルページュ」はヒットアイテムとなったほか、2014年には、「エクラ・ドゥ・アルページュ」が日本最大のコスメサイト「アットコスメ」において殿堂入りを果たすなど(甲11)、「LANVIN」の香水等は、同ブランドの代表的な製品となっている。
「LANVIN」の香水等は、上記のブルーベル・ジャパン株式会社が運営する大手香水ショップ「L’ATELIER DES PARFUMS」や、大手有名百貨店等の30店舗で販売されているほか、これらの公式オンラインストア、アットコスメ公式オンラインストア等でも販売されている(甲12、甲13)。
(イ)「LANVIN」のファッション関連商品について
「LANVIN」ブランドのうち、香水部門以外の部門(レディース・メンズウェア、ハンドバッグ、靴、ベルト、アクセサリー等)については、現在、JEANNE LANVIN SAがオーナーであり(甲14)、コロネット株式会社が日本における国内正規販売代理店となっている(甲15)。
「LANVIN」ブランドは、様々なファッション関連商品を、「LANVIN」商標を付して幅広く展開している(甲38~甲74)。
また、上記のコロネット株式会社の親会社である伊藤忠商事株式会社において、引用商標以外にも、ファッション関連商品を指定商品とする「LANVIN」に係る商標権を保有する(甲16~甲25)など、「LANVIN」ブランドの権利保護に努めている。
(ウ)「LANVIN en Bleu」「LANVIN COLLECTION」について
伊藤忠商事株式会社は、JEANNE LANVIN SAの日本におけるマスターライセンシーとして、「LANVIN」ブランドの日本向けセカンドラインである「LANVIN en Bleu」及び「LANVIN COLLECTION」を展開している(甲26~甲29)。「LANVIN en Bleu」及び「LANVIN COLLECTION」においても、「LANVIN」商標を付した様々なファッション関連商品が展開されており(甲133、甲135~甲137、甲174、甲175、甲207)、多数の大手有名百貨店や商業施設等で販売されているほか、これらの公式オンラインストア等でも販売されている(甲30、甲31)。「LANVIN」ブランドのグループの中でも、特に「LANVIN en Bleu」は、厳しい市況においても事業規模が伸びており、それを含めた「LANVIN」ブランドは、日本においても、ますますその存在感を増している(甲188)。
(エ)小括
以上のとおり、「LANVIN」ブランドは、引用商標に含まれる「LANVIN」をハウスマークとして使用し、香水、レディース・メンズウェア等のファッション関連商品を幅広く展開しているものである。
イ 広告宣伝
(ア)各種刊行物
上記アのとおり、「LANVIN」ブランドは、香水をはじめ、ファッション関連商品を幅広く展開しているところ、これらの商品は、多数の刊行物において紹介されており、なかでも「世界の一流品大図鑑」「The 一流品」などで毎年のように取り上げられてきた(甲32~甲96)。かかる刊行物において、「LANVIN」ブランドは、オートクチュールメゾンにとどまらず、香水ブランドとしても名声を得ていることが明らかである。
また、「LANVIN」ブランドの商品は、25 ans、CanCam、Maquia、With、an anなどの多数の有名誌やネット記事、大手百貨店のオンライン記事等でも紹介されたり(甲11、甲97~甲138)、有名誌の付録として取り扱われ(甲98、甲138~甲l43)、ムック本も販売されるなど(甲144)、現在に至るまで、絶えず注目され続けているといえる。
さらに、「LANVIN」は、そのアーティスティック・ディレクターのアルベール・エルバスが手掛けた、「LANVIN」パリ本店のショーウィンドウの作品集「LANVIN I LOVE YOU」を発売するなど(甲145)、自らも「LANVIN」に関する発信を行っている。
(イ)有名人を起用した広告宣伝・有名人による着用等
「LANVIN」ブランドは、その広告宣伝にあたり、トップモデルやトップ女優等を「LANVIN」の顔として起用し、その知名度を高めている。
例えば、「LANVIN」は、2013年から2015年の2年にわたり、イギリスのサッカークラブチームのアーセナルF.C.とオフィシャル・テーラーのパートナーシップ契約を締結し、同チームの公式スーツを提供した。当該スーツは、同チームの監督、選手等に着用され、話題となった(甲146)。
また、2014年には、超売れっ子モデルといわれるエディ・キャンベルを「LANVIN」の顔として起用した(甲147、甲148)。さらに、2021年春夏コレクションには、「元祖インフルエンサー」としても知られるパリス・ヒルトンを起用した(甲149)。
日本においても、「LANVIN en Bleu」のブランドアンバサダーとして、俳優、アーティストとして活躍している北村匠海を迎えた(甲150、甲151)。
以上のとおり、「LANVIN」ブランドにおいては、知名度の高い有名人を、ブランドのキャンペーンやブランドアンバサダー等として起用することにより、ブランドの知名度の一層の向上・維持を図っている。
その他にも、注目の集まるイベント等で知名度の高い有名人により「LANVIN」ブランドの商品が着用され、注目を集めている(甲152~甲156)。
(ウ)イベント、プロジェクト等について
「LANVIN」は、数多くのイベント等も通じて、ブランドの広告宣伝を行っている。
例えば、2009年には、「LANVIN」の創業120周年を記念して、両国国技館で2010年春夏ウィメンズ・メンズコレクションを開催し、ウィメンズコレクションのファーストルックには、日本を代表するモデル・冨永愛を起用したほか(甲157)、120周年限定商品として香水「ジャンヌ・ランバン」等を発売した(甲158、甲159)。
また、2014年には、125周年記念イベントとして、パリ市モード美術館において、大回顧展を開催し、世間から大きく脚光を浴びた(甲5)。その他にも、「LANVIN」の公式ウェブサイトやSNSの公式アカウント等を通じて、「LANVIN」の歴史に関するアーカイブ資料を公開したり(甲161)、パリの「LANVIN」本社等を手掛けた室内装飾家アルマン・アルベール・ラトゥーが手掛けた商品も販売した(甲162)。
さらに、創業130周年を迎えた2019年には、東京・表参道において、「LANVIN en Bleu」の期間限定ブティックをオープンし、130周年記念アイテムも販売した(甲163~甲165)。
このようなブランドのアニバーサリーイヤー以外にも、イベント、アートエキシビジョン、大手百貨店におけるポップアップストアの開催、SNSを通じたキャンペーンなど、様々な企画・イベント等を開催し、「LANVIN」ブランドの知名度の向上、維持に努めている(甲11、甲166~甲171)。
(エ)他ブランドとのコラボレーション
「LANVIN」は、様々なファッションブランドとのコラボレーションも積極的に行っている。
例えば、2010年に「H&M」とコラボレーションしたほか(甲172)、ハロー・キティや「CONVERSE」等とのコラボレーション商品を販売するなどし(甲120、甲173~甲180)、注目を集めている。
(オ)SNSにおける情報発信
「LANVIN」は、Instagram、Twitter、Facebook、YouTube等の各種SNSを通じた商品情報等の発信、キャンペーンの実施等に努めており、例えば、インスタグラムにおける「LANVIN」の公式アカウントのフォロワー数は545万人以上にものぼる(甲11、甲181~甲187)。また、「LANVIN」は、自ら情報発信等を行うのみならず、フォロワー数の多いインフルエンサーによっても、「LANVIN」の商品・キャンペーン情報等が数多く発信されている(甲11)。
ウ 「LANVIN」のランク・販売拠点数等について
上記のとおり、「LANVIN」は、香水をはじめとする商品の販売や宣伝広告を幅広く継続的に行った結果、長期にわたり順調な売上げを維持しており、他ブランドの同種商品の中でも常に高い地位を保っている。
例えば、フランスの市場調査会社であるBeaute Research社(異議決定注:「Beaute」の語尾の「e」にはアクサンテギュが付されている。)の「Japan-Fragrances Sell-in Selective Distribution Report-Full Year 2021」における報告によると、全94の女性用香水ブランドにおける「LANVIN」の香水の売上げのランク及び販売拠点数は、2015年が5位、971拠点、2016年が6位、971拠点、2017年が9位、1007拠点、2018年が10位、1015拠点、2019年が12位、1265拠点、2020年が11位、1263拠点、2021年が12位、1250拠点であった。
このランキングの対象となっている香水ブランドは、シャネル、クリスチャンディオール、クロエ、ゲラン、イヴ・サンローラン等を含む世界の著名な香水ブランド全94ブランドであり、7年以上にわたり、安定して常に上位15位以内をキープしていることからすれば、日本においても「LANVIN」が継続して高い評価を受けており、著名であることは明らかである。なお、2015年に比べて2021年のランクが下がっているのは、香水ブランドの数が増えたことが原因にすぎず、94ブランド中12位をキープし続けていることが高い周知性を獲得していることの表れである。
また、日本における「LANVIN」の香水以外のファッション関連商品に関するライセンス事業も堅調に推移しており、特に、「LANVIN en Bleu」は、2018年上期の事業規模が同期実績よりも2桁伸びている(甲188)。このように、「LANVIN en Bleu」を含めた「LANVIN」ブランドは、日本においても、ますますその存在感を増している。
エ 辞典ヘの掲載
「LANVIN」ブランドは、上記のとおり、長年にわたり香水をはじめ、ファッション関連商品を広く販売し、広告宣伝を積極的に行ってきた結果、引用商標に含まれる「LANVIN」は、そのブランド名及び創業者であるジャンヌ・ランバンの名として世界中で周知著名となり、日本においても、「トレンド日米表現辞典<第3版>」「コンサイスカタカナ語辞典 第4版」「現代用語の基礎知識 カタカナ外来語ABC略語辞典 第6版」及び「広辞苑 第7版」に掲載される(甲189)など、周知となっていることは明らかである。
オ 審決例等
引用商標に含まれる「LANVIN」「ランバン」等が周知・著名であることは、特許庁においても、審決(昭和62年審判第14414号(甲190)、昭和63年審判第11735号(甲191))において、昭和50年代半ばの時点で既に周知著名性が認められており、その後も、上記のとおり、商品の販売、広告宣伝等により、本件商標の出願時点はもちろん、現在に至るまで、その周知著名性は維持されているものである。
カ 「LANVIN」商標の周知著名性の継続
以上のとおり、「LANVIN」商標は本件商標の出願時点までに周知著名となるに至ったところ、かかる周知著名性は、本件商標の出願後も、現在に至るまで、その出願前と同様に、「LANVIN」の商品が継続して販売され続け、有名誌等での紹介、広告での有名人の起用、他の有名ブランドとのコラボレーション、インフルエンサーによる情報発信等の様々な方法で広告宣伝されており(甲97、甲192~甲204)、現在においても継続している。このことは、「LANVIN en Bleu」及び「LANVIN COLLECTION」の2021年におけるECサイトによる販売が、前年同期比で約30%も増加していることにも裏付けられている(甲205)。
キ 小括
以上より、「LANVIN」ブランドからは、香水をはじめ、ファッション関連商品を広く販売しており、多数の有名誌等でも紹介されているとともに、広告・キャンペーン等への有名人の起用、様々なイベント等の開催、他のブランドとのコラボレーション、SNSにおける情報発信等を通じて、引用商標に含まれる「LANVIN」は、我が国で周知著名になったといえる。このことは、複数の辞典に「LANVIN」が掲載されていることや、昭和50年代半ばの時点において、既に特許庁により「LANVIN」等の周知著名性が認められていることからも明らかである。
そして、本件商標の出願後も、「LANVIN」の商品が継続して販売されるのみならず、多様な方法で広告宣伝が行われ、結果として売上げも好調であること等からすれば、「LANIVIN」商標は、現在においても周知著名であることもまた、明らかである。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
最高裁判決(平成10(行ヒ)85号)が示した基準に照らし合わせ、本号該当性について、以下、詳述する。
ア 本件商標と他人の表示との類似性の程度
上記最高裁判例に関する「最高裁判所判例解説」(法曹時報第54巻第6号187頁参照)を踏まえ、以下、本件商標と引用商標との類似性の程度を検討する。
(ア)本件商標について
本件商標は、「Lanvier」の欧文字を筆記体で横一列に書し、末尾に羽様の図形を付した構成からなる。本件商標からは、「ランビア」「ランビエ」「ランビエール」等の称呼が生じる。本件商標は、辞書等に掲載されていない一種の造語と認められるため、特定の観念は生じないものである。
(イ)引用商標について
引用商標1は、欧文字「LANVIN」の構成よりなり、引用商標2は、欧文字の「LANVIN」を上段に、片仮名の「ランバン」を下段に組み合わせた構成からなり、引用商標3は母娘が両手を繋いでいる図形の下に欧文字「LANVIN」を、さらにその下に「Parfums」を配してなり、引用商標いずれも、欧文字「LANVIN」を含んでいる。
また、上記(1)のとおり、引用商標は、申立人を含む「LANVIN」ブランドを示すものとして周知著名となっていることからすると、引用商標からは、そのブランド名である「ランバン」との称呼が生じ、ファッションブランド「LANVIN」の観念が生じるというべきである。
(ウ)本件商標と引用商標の類似性の程度
本件商標「Lanvier」は、その構成の7文字中5文字が引用商標に含まれる「LANVIN」と同一の欧文字であり、さらに、当該5文字は、需要者が本件商標に接した際に最初に目にする語頭に配置され、需要者に対して強い印象を与えるものである。したがって、本件商標と引用商標の外観には、相当程度の類似性があるといえる。
また、上記(ア)のとおり、本件商標からは「ランビア」「ランビエ」等の称呼が生じるのに対し、引用商標からは「ランバン」の称呼が生じるものであり、本件商標から生じる称呼の4音中2音が引用商標の称呼と同一であって、さらに、かかる2音は、需要者に対してより強い印象を与える語頭に位置するものである。また、本件商標の3音目は「ビ」であるところ、引用商標の3音目の「バ」とは子音が同一であり、需要者に似通った印象を与える音である。したがって、本件商標と引用商標の称呼についても、一定程度の類似性があるといえる。
なお、上記のとおり、本件商標からは特定の観念は生じない一方、引用商標からは「「LANVIN」ブランド」という観念が生じるものであり、観念において比較することはできない。
したがって、本件商標と引用商標の外観には相当程度の類似性があり、称呼も一定程度の類似性が認められることからすれば、本件商標と引用商標は相当程度類似するものといえる。
イ 引用商標の著名性及び独創性について
引用商標は、上記(1)のとおり、申立人の商品を含む「LANVIN」ブランドの業務に係る商品に使用されるハウスマークであって、我が国にとどまらず、世界的な著名性を有している。また、申立人の創業者であるジャンヌ・ランバンの氏名に由来する商標であり、特定の意味合いを有するものではないことから、創造標章であることは明白であり、引用商標の独創性は極めて高いといえる。
ウ 本件商標の指定商品と申立人を含む「LANVIN」ブランドの業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性
引用商標が周知著名性を獲得している香水をはじめとするファッション関連商品は、ファッションを楽しむことを目的として、身だしなみを整える等の性質を有するものであり、なかでも香水については、化粧品等とともに使用され、化粧品等とともに化粧用ポーチ等に保管するといった性質を有するものである。
他方、本件商標の指定商品も、ファッションを楽しむことを目的として、広く身だしなみを整えるファッション関連商品であり、特に、アイライナーペンシル、ネイルチップ、化粧用接着剤、つけまつ毛、つけまつ毛用接着剤、顔及び身体の手入れ用ローション等については、化粧品として、香水等とともに使用され、化粧用ポーチ等に保管する性質を有するものといえる。
このように、両商品は、共通の目的及び性質を有し、極めて密接な関連性を有するものであり、その取引者・需要者は、いずれも主として一般の女性であり、需要者も共通するといえる。
エ 取引の実情
(ア)化粧品、ボディケア製品、ヘアケア製品等における本件商標及び引用商標の使用態様
本件商標が、その指定商品に使用された場合、小さく付されることが多いと考えられる。この場合において、本件商標と引用商標を離隔的観察した場合、本件商標と引用商標にかかる「LANVIN」との間に相当程度の類似性があることも鑑みると、これに接した需要者においては、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
(イ)「LANVIN」ブランドの商品において、筆記体の「Lanvin」という標章を使用していること
「LANVIN」ブランドは、その事業の展開にあたり、引用商標のみならず、「LANVIN」の頭文字「L」を大文字とし、それ以外を小文字として、筆記体で書した標章を、ファッション関連商品に使用して多数販売したり、有名誌の付録に使用しており(甲198、甲206、甲207)、需要者としては、引用商標のみならず、当該標章についても、申立人を含む「LANVIN」ブランドの業務に係る商品を示す表示であると認識する可能性が高いといえる。
そして、かかる標章と本件商標は、いずれも「Lanvi」までの欧文字が大文字・小文字であるか否かを含めて同一であるうえ、当該標章と本件商標の相違点である語尾の「er」と「n」についても、筆記体で書されると、その山なりの部分やはらいの部分が酷似しており、その違いの判別は困難であって、実際に、筆記体で当該標章と本件商標を記すと、全体としての雰囲気も酷似するものである。そうだとすると、本件商標に接した需要者においては、なおのこと、申立人を含む「LANVIN」ブランドの業務に係る商品であるとの誤認混同を生じさせるおそれがあるというべきである。
(ウ)香水ブランドを有するファッションブランドによる他の商品の展開
ファッション業界においては、香水ブランドが化粧品、ボディケア製品、ヘアケア製品等を展開したり、反対に、化粧品ブランドが香水等を展開し、また、香水とそれ以外のファッション関連商品を関連付けて展開し、イメージの共通性を植え付ける戦略が強化されている。特に、外資系企業のファッションブランドにおいては、かかる展開が一般化している(甲9、甲10、甲208~甲215)ことからすると、引用商標と類似する本件商標が、その指定商品に使用された場合には、需要者において、その出所について誤認混同を生じるおそれが高いというべきである。
(エ)商標法第4条第1項第15号に該当すると判断した審決例等
本件商標は、「LANVIN」の文字がそのまま包含されているものではないが、審決例等においては、本件と同様に引用商標がそのまま包含されていないものであっても、商標「Zarbleu」と標章「ZARA」に一定の類似性を認めたうえで、本号該当性を認めている(甲216)。
(3)まとめ
以上のとおり、引用商標は、香水をはじめとするファッション関連商品の分野において周知著名性を獲得した独創性の高い商標であり、これと相当程度類似する本件商標を、同じくファッション関連商品に属し、需要者も共通にするその指定商品に使用した場合、本件商標及び引用商標の使用態様や、「LANVIN」ブランドから筆記体で「Lanvin」と書した標章を使用した商品が多数販売されていること、香水ブランドを有する他のファッションブランドから香水のみならず化粧品、ボディケア製品、ヘアケア製品等も展開されていること等も併せ鑑みると、本件商標に接した取引者・需要者は、あたかも申立人を含む「LANVIN」ブランド、若しくは同ブランドと何等かの関係がある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるといえる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標等の周知性の程度
(ア)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人の業務に係る「LANVIN」又は「ランバン」の文字を使用した商品(香水、衣料品など)(以下「申立人商品」という。)は、我が国において、遅くとも昭和51年から継続して販売されていること、申立人商品は昭和53年から平成19年まで、ほぼ毎年のように雑誌「世界の一流品大図鑑」や「THE 一流品」に掲載されていたこと(甲10、甲34~甲96、甲98他)、昭和59年10月前には商標「LANVIN」及び「ランバン」は著名になっていた旨判断した特許庁の審決があること(甲191)、平成10年、平成26年及び令和3年に発行された辞書類に「ランバン(LANVIN)」がブランド名であることが掲載されていること(甲189の1~3)などが認められる。
また、申立人商品は、近年、全国の百貨店や商業施設等で販売されていること(甲30、甲31)、多数の雑誌やネット記事などで紹介等されていること(甲97、甲99~甲115、他)、各種SNSを通じ広告宣伝等されていること(甲181~187)などがうかがえる。
しかしながら、申立人商品の我が国における売上高、シェアなど販売実績を示す証左は見いだせない。
(イ)上記(ア)のとおり、申立人商品は遅くとも昭和51年から継続して販売され、昭和53年から平成19年まで、ほぼ毎年のように雑誌「世界の一流品大図鑑」などに掲載されていたことなどが認められ、近年においても、全国で販売され、多数の雑誌などで紹介等されていることなどがうかがえることからすれば、申立人商品は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、需要者の間に相当程度知られていたということができる。
しかしながら、近年における申立人商品の販売場所、紹介記事、広告宣伝については、それを示す証左に例えばURLの表示がないなどから、その事実を認めることが困難であり、また、申立人商品の販売実績(特に近年のもの。)を示す証左も見いだせないから、申立人商品及びそれに使用されている「LANVIN」又は「ランバン」の各文字(以下、両者をあわせて「使用商標」という。)は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品として及び同商品を表示するものとして、いずれも需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
なお、申立人は、フランスの市場調査会社の報告によるものとして、申立人商品は2015年ないし2021年において、我が国における女性用香水ブランド94のうち売上ランクが5位ないし12位であり、販売拠点数が971ないし1265であった旨主張しているが、それを裏付ける証左は見いだせないから、かかる主張を採用することはできない。また、申立人は、引用商標に含まれる「LANVIN」の周知・著名性を証するものとして過去の異議決定(甲191)を提出しているが、引用商標等の周知・著名性については、本件商標の登録出願時及び査定時又は審決時における実情に基づいて判断すべきものであるから、それをもって上記判断が左右されるものではない。
(ウ)上記のとおり、使用商標は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認められないものである。
そうすると、「LANVIN」や「ランバン」の文字からなる引用商標1及び2は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、本件商標の指定商品の需要者の間に広く認識されていたものと認められないというのが合理的である。
さらに、引用商標3はその指定商品について使用されている事実が確認できないものであることをあわせみれば、引用商標及び使用商標は、いずれも本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないといわなければならない。
イ 商標の類似性の程度
(ア)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、「Lanvier」の欧文字を筆記体で表し、語尾の「r」の文字に翼のような図形を付してなるものであり、該文字に相応し「ランビエール」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
(イ)引用商標
引用商標1は上記2(1)のとおり「LANVIN」の欧文字からなるものであり、引用商標2は上記2(2)のとおり「LANVIN」の欧文字と「ランバン」の片仮名を2段に横書きしてなるものであるところ、いずれもそれらの構成文字に相応して「ランバン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
引用商標3は、別掲2のとおり、大人と子供と思われる図形の下に点線と太い直線を表し、その下に大きな「LANVIN」の文字とやや小さな「Parfums」の文字を表してなるものであり、該文字に相応し「ランバンパフューム」又は「ランバン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
(ウ)本件商標と引用商標の比較
本件商標と引用商標を比較すると、上記(ア)及び(イ)のとおりの両者の外観は、構成態様が明らかに異なり、明確に区別し得る。なお、両商標の欧文字「Lanvier」と「LANVIN」のつづりの比較においても、両者は語尾部の「er」と「N」の差異により、明確に区別し得るといえる。
次に、称呼については、本件商標から生じる「ランビエール」の称呼と引用商標から生じる「ランバン」又は「ランバンパフューム」の称呼を比較すると、「ランビエール」と「ランバン」とは、後半部における「ビエール」と「バン」の音の差異により、また、「ランビエール」と「ランバンパフューム」とは、明らかに構成音数、語調語感が異なり、いずれもそれらを一連に称呼しても、明瞭に聴別し得る。
さらに、観念においては、本件商標と引用商標はいずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において明らかに異なるものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
ウ 混同のおそれ
上記アのとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認められないものであり、上記イのとおり、本件商標は、引用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものであるから、本件商標の指定商品と申立人商品との関連性の程度、需要者の共通性などを考慮しても、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、使用商標との関係を含め、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(2)むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-900138