商標異議申立
2022-900053
ガンツー、ガンニ、ガン、ジイエイエヌ
- 審判番号
- 2022-900053
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2021-049700
- 登録番号
- 6495157
- 請求日
- 2022年02月17日
- 審決日
- 2023年04月27日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】安克創新有限公司
- 【権利者代理人】TRY国際弁理士法人
- 【異議申立人】ヂァオ ズオチュン
- 【異議申立人代理人】村井 康司
- 【異議申立人代理人】魯 佳瑛
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 和行
- 審判官 小俣 克巳
- 審判官 石塚 利恵
- 分類
- T1651.16 -Z (W09)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項6号商標法43条の3第2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第6号、商標法第3条第1項第3号、商標法第4条第1項第16号、商標法第4条第1項第7号、商標法第3条、商標法第3条第1項第5号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6495157号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6495157号商標の商標登録を取り消す。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6495157号商標(以下「本件商標」という。)は、「GaN II」の文字を標準文字で表してなり、令和3年4月22日に登録出願、第9類「充電器,スマートフォン用充電器,ワイヤレス充電器,太陽電池式充電器,携帯可能な充電器,蓄電池用充電器,電子たばこ用充電器,電池用充電器,USB接続方式の充電器,電気プラグ,電気ソケット,ケーブル,USBケーブル,コンピュータ用ケーブル,データ同期用ケーブル,データ送信用ケーブル,光ファイバーケーブル,通信ケーブル,電子信号用ケーブル,ネットワーク用通信ケーブル,電池」を指定商品として、同年12月24日に登録査定、同4年1月5日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第16号及び同項第7号に該当し、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第21号証を提出した(なお、令和4年5月18日付け手続補正書の2頁に記載の「商標法第3条第1項第6号」の記載は、誤記と認める。)。
1 商標法第3条1項第3号該当性について
本件商標は、「GaN II」の文字を標準文字で左横書きしてなる態様であるところ、「GaN」の文字は、「Gallium nitride」の略称であることが最も一般的であることが、複数の英単語の略語検索サイトに掲載されている(甲2~甲4)。つまり、「GaN」は、「ガリウム(Ga)」と「窒素(N)」を組み合わせた窒化物(窒化ガリウム)の略称であり、窒化ガリウムは、「Gallium nitride」とも呼ばれる(甲5、甲6)。なお、本件商標の「GaN」が、窒化ガリウム又はGallium nitrideを表すことは、本件商標権者の日本法人が、自社ホームページにおける商品説明に当たり「・・・GaN(窒化ガリウム)搭載USB充電器・・・」、「・・・次世代パワー半導体素材「GaN(窒化ガリウム)」等と記載してることからも明らかである(甲7、甲8)。
GaNは、特に研究開発競争が激化しているエレクトロニクス業界においてシリコントランジスタ(半導体)の代替品等として、かなり以前より注目されている素材である。
例えば、本件商標の出願日(令和3年(2021年)4月22日)以前の平成27年(2015年)10月には「GaN研究コンソーシアム」が発足しており、その団体は令和元年(2019年)10月1日にはGaNコンソーシアムとして生まれ変わり、産学官による研究が行われている素材である(甲9、甲10)。その具体的な活動としては、さらなる省エネ等がある(甲11)。
上述のコンソーシアムに加えて、本件商標の出願日(令和3年(2021年)4月22日)以前より特にエレクトロニクス分野において研究がなされ、その成果が発表されている。特に、電源等に使用するメリットについても記載が数多く見受けられる(甲12~甲16)。
また、GaNを採用した充電器は、これまでに商品化が進んでおり、市場において本件商標権者の商品以外にも広く流通していることは、「GaN(窒化ガリウム)とは、メリット・デメリットやおすすめ充電器を紹介」、「GaN(窒化ガリウム)充電器のおすすめ11選。コンパクトで素早く充電可能」、「GaN(窒化ガリウム)の充電池・充電器の人気売れ筋ランキング」といった商品紹介サイトでも数多く紹介されており(甲17、甲18)、商品が比較されていることからも明らかである。
このように、GaNが窒化ガリウムを使用した商品であるとともに、その素材から生じる品質を表す語となっていることも明らかである。
また、本件商標は、「GaN」とともにローマ数字「II」を伴っている。しかし、数字は、原則、「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章」に該当する(特許庁商標審査基準 第3条第1項第5号)とされている。つまり、ローマ数字「II」は単独では商標としての自他商品識別標識として認識できないものであり、本件商標が使用による顕著性を獲得している事実は見受けられない。
一般に、「II」は、「次世代」やその製品等の連続シリーズであることを示す語として一般に広く使用されている。例えば、本件商標権者は、「Anker’s second-gen GaN chargers are smaller and more efficient」と宣伝している。また、本件商標権者の日本法人は、商品のホームページにおいて、製品のポイントとして「・・・GaN(窒化ガリウム)搭載USB充電器が第二世代に進化・・・」、「・・・次世代パワー半導体素材「GaN」の力をさらに引き出す・・・」と「II」が次世代を表すにすぎないことを明示している(甲19、甲20)。
なお、中国のガジェットメーカーであるBaseus社は、「GaN」を使用している充電器を説明するにあたり「GaN」と数字を組み合わせて「GaN2」商品の説明に使用しており、中国の総合家電メーカーであるXiaomi社も同様に「GaN2」を使用している(甲21)。
以上のとおり、本件商標は、指定商品に係る原材料又は性質を表す「GaN」と自社商品識別標識として機能しない「II」を組み合わせた語にすぎない。また、この種の組合せは広く一般に使用されていることから、本件商標を指定商品について使用しても、これに接する需要者、取引者は、単にその商品が「GaNを使用した商品」又は「GaNの特徴を生かした商品」であることを認識するにすぎず、自他商品識別標識として認識できないものである。
そして、本件商標は、取引に際し必要適切な表現として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、広く一般的に使用される標章であるから、商標として自他商品識別機能を果たし得ないものである。
してみれば、本件商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当する。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 商標法第4条第1項第16号該当性について
上述のとおり、本件商標は、「GaNを使用した商品」として需要者、取引者に認識され、指定商品との関係において、指定商品の品質を表示する語として広く一般に使用されているものであるから、これを「GaNを使用していない商品」以外の商品について使用するときは、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
万一、本件商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しないとした場合であっても、エレクトロニクス業界において注目されている素材の略称に、数字を追加したことのみをもって商標登録を認めることは、社会的妥当性を欠くものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
第3 当審における取消理由
当審において、本件商標権者に対し、「本件商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである」旨の取消理由を、令和4年12月13日付けで通知し、相当の期間を指定して意見を求めた。
第4 本件商標権者の意見
前記第3の取消理由の通知に対し、本件商標権者は、何ら意見を述べていない。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第6号該当性について
(1)本件商標は、前記第1のとおり、「GaN II」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中前半の「GaN」の文字部分と後半の「II」の文字部分を、1文字分のスペースを介して配してなるものであるから、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものということはできない。
そして、申立人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア ガリウム(元素記号は「Ga」)と窒素(元素記号は「N」)を組み合わせた窒化物「窒化ガリウム」(別称「ガリウムナイトライド(gallium nitride)」)の組成式は「GaN」であり(甲5、甲6)、複数の英語の略語検索サイトにおいて、「GaN」の文字は「gallium nitride」の略称であると記載されている(甲2~甲4)。
イ 1993年に高輝度青色LED(発光ダイオード)が開発された際に、素子に使用されたことで一躍注目を集めた窒化ガリウムは、高い耐久性を持つ超高効率デバイスの実現を可能とする素材である。従来のシリコン製半導体に代えて、窒化ガリウムを使用したデバイスやシステムが普及することにより、大幅な消費電力の削減につながることから、環境負荷の軽減が期待されている。そのため、省エネルギーを実現する高輝度・高出力レーザーや、高効率照明、新世代ディスプレイへの応用のほか、次世代高速通信(5G)やポスト5G通信、パワー半導体など、様々な分野での応用が見込まれている(甲12、甲15)。
ウ 世界中で研究開発競争が激化するパワーエレクトロニクス(電力用半導体素子を利用して、電力変換や制御を行う技術の総称)分野において、窒化ガリウムの優れた特性を生かした応用分野の開拓を積極的に行うべく、我が国において、2015年10月に、産学官のオールジャパン体制「GaN研究コンソーシアム」が発足、2019年10月には、「一般社団法人GaNコンソーシアム」へ移行した。当該団体は、省エネルギー社会の実現を目指し、窒化ガリウムの可能性を最大限に引き出し、パワーデバイス、光エネルギー、電波エネルギーに関する様々な用途への応用に取り組むことを掲げている(甲9~甲11)。
エ 遅くとも2009年以降の窒化ガリウムに係る研究において、当該素材を電源等に使用することのメリットについても言及されているところ(甲13~甲16)、近年、窒化ガリウムを採用した充電器は、エネルギー効率が高く、小型軽量ながら高出力の商品として人気が上昇しており、各製造メーカーの「GaN(窒化ガリウム)充電器(充電池)」が「おすすめ11選」や「人気売れ筋ランキング」において紹介されている。これらの商品中には、本件商標の出願日(2021年4月22日)以前から発売されているものも数多く存在する(甲17、甲18)。
オ 上記アないしエの証拠において、「GaN」の文字は、窒化ガリウムを表すものとして一般に広く使用されている。
カ 本件商標権者の日本法人は、自社ウェブサイトの商品説明において、「独自技術「Anker GaN II」を採用・・・GaN(窒化ガリウム)搭載USB充電器が第二世代に進化。」、「「Anker GaN II」は・・・次世代パワー半導体素材「GaN(窒化ガリウム)」の力をさらに引き出したAnkerの独自技術です。」等と記載している(甲7、甲8、甲19、甲20。なお、甲20は甲8と同一内容である。)。
(2)上記(1)の認定事実によれば、本件商標の構成中、「GaN」の文字は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、「窒化ガリウム」を意味する語として、本件商標の指定商品に係る分野において認識され、一般に広く使用されていたというべきであるから、「GaN」の文字をその指定商品に使用したとしても、商品の原材料を表したものとして認識、理解されるにすぎない。
また、本件商標の構成中、ローマ数字の「II」は、それのみでは、「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章」(商標法第3条第1項第5号参照)といわざるを得ないものである。
してみれば、本件商標は、商品の原材料として認識される「GaN」の文字と、ありふれたローマ数字の「II」との間に1文字分のスペースを空けて、標準文字で表したにすぎないものであって、本件商標を、窒化ガリウムを原材料とする商品に使用する場合には、自他商品の識別標識としては認識され得ず、商標としての機能を果たし得ないものであるから、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
なお、申立人は、本件商標が商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第16号及び同第7号に該当するとの理由を挙げているところ、上記のとおり、本件商標は、同法第3条第1項第6号に該当するというのが相当であるから、同法第43条の9第1項により、上記条項を適用すべきものとした。
2 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-900053