商標異議申立
2022-900025
アブソルートサンキン
- 審判番号
- 2022-900025
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2021-072588
- 登録番号
- 6493054
- 請求日
- 2022年01月26日
- 審決日
- 2023年02月13日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三金工業株式会社
- 【権利者代理人】簗田 真也
- 【権利者代理人】渡辺 翔
- 【異議申立人】デンツプライ シロナ インコーポレーテッド
- 【異議申立人代理人】田中 克郎
- 【異議申立人代理人】佐藤 俊司
- 【異議申立人代理人】山口 現
- 【異議申立人代理人】村瀬 純一
- 審判長/審判官
- 審判長 小松 里美
- 審判官 森山 啓
- 審判官 小林 裕子
- 分類
- T1651.22 -Y (W10) / T1651.262-Y (W10) / T1651.271-Y (W10) / T1651.222-Y (W10)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第19号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6493054号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6493054号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6493054号商標(以下「本件商標」という。)は「アブソルート三金」の文字を標準文字で表してなり、令和3年6月11日に登録出願、第10類「医療用機械器具,歯列矯正器具,医療用手袋,矯正機械器具」を指定商品として、同年11月8日に登録査定、同年12月28日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標(以下、まとめていうときは「引用商標」という。)は次のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第3102237号(以下「引用商標1」という。)
商標 「Sankin」及び「サンキン」の文字の二段書き(別掲)
指定商品 第5類「消化器官用薬剤,外皮用薬剤,血液用剤,診断用薬剤,歯科用材料,衛生マスク,絆創膏」
登録出願日 平成4年12月10日
設定登録日 平成7年11月30日
(2)登録第4048984号商標(以下「引用商標2」という。)
商標 「Sankin」及び「サンキン」の文字の二段書き(別掲)
指定商品 第10類「医療用機械器具(診断用機械器具・治療用機械器具・歯科用機械器具・医療用X線装置を含む),医療用手袋」
登録出願日 平成4年12月10日
設定登録日 平成9年8月29日
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第59号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。なお、甲12の5は、欠番である。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 引用商標の周知・著名性について
申立人は、その前身である「三金電化研究所」の1920年代の創業に始まり、1948年(昭和23年)に「三金工業株式会社」として設立、2002年(平成14年)に「デンツプライ三金株式会社」に商号変更し、さらに2017年(平成29年)に現在の名称「デンツプライシロナ株式会社」(以下「デンツプライシロナ社」という。)に商号変更したが(甲5~甲7)、この間、100年近くにわたり会社名には「三金」が使用されてきた。また、申立人は、歯科材料・歯科用医療機器の製造販売に従事し(甲8)、日本経済新聞、日経産業新聞、北海道新聞において紹介されているとおり、申立人は、日本における歯科用材料の総合大手三社となるに至るなどして、歯科材料・歯科器材における大手企業として認知されている(甲10~甲12の1)。
申立人が、現在の名称に変更する直前の2016年の1年間だけでも「日歯広報」「日本歯科新聞」「デンタルタイムズ21」「歯界展望」「日本学校歯科医会会報」「日本歯科評論」「歯科技エ」「日本歯科保存学会雑誌」「矯正臨床ジャーナル」「歯科医療経済」「日本包括歯科臨床学会抄録」「日本歯科技工学会雑誌」「ザ・クインテッセンス」「新聞クイント」「小児歯科臨床」等の歯科業界紙中心に65の媒体に広告を出稿し(甲8の5)、これまで申立人が製造販売してきた歯科用材料又は歯科用医療機器の名称においても、「三金」、その片仮名表記「サンキン」、欧文字表記「Sankin」が多数使用されている結果(甲8の1~4、甲9)、「三金」、「サンキン」及び「Sankin」の表示はいずれも、申立人の販売する歯科用材料・歯科用医療機器等を示すものとして、また、これらを製造販売する申立人の名称を示すものとして、日本国内において周知著名となっている。
よって、引用商標は、遅くとも、本件商標の登録出願時までには、日本国内において周知・著名な標章となっていたといえる。
イ 本件商標と引用商標の類似性
(ア)結合商標の類否判断
本件においては、「三金」、「サンキン」及び「Sankin」の文字が、需要者の間に広く認識されており、著名性を獲得しているから、本件商標と引用商標の類否判断の際には、「三金」、「サンキン」及び「Sankin」が有するこの著名性を考慮すべきである。
(イ) 本件商標について
本件商標は、横書きの標準文字で片仮名の「アブソルート」と漢字の「三金」とを配置した構成からなる。
そして、本件商標の構成文字中、「三金」の文字は、上述のとおり申立人の販売する歯科用材料・歯科用医療機器等を示すものとして、また、これらを製造販売する申立人の名称を示すものとして、日本国内において周知著名な「三金」の文字と同一である一方で、本件商標の構成中「アブソルート」なる語は、「絶対の、完全な」を意味する英単語「Absolute」の称呼の片仮名の表記であり、「英検準2級以上」「高校2年以上の水準」とされる日本人に馴染みの深い英単語であって(甲3の2)、後に続く単語の特性を表す誇称表示の一種として古くから一般に使用されている語であり、自他商品等識別力が弱い単語であると考えられるので、「三金」の部分と比して自他商品等識別力が極めて弱いものといわざるを得ない。そして、簡易迅速を旨とする取引の実際において、取引者・需要者は、著名な略称「三金」の部分に強く印象付けられることから、本件商標中「三金」の部分を適宜抽出し、「三金」の文字部分のみを捉えて取引されることも十分に想定される。
したがって、本件商標の要部は「三金」の部分であるといえる。
(ウ) 引用商標について
引用商標は、いずれも横書きした「Sankin」の欧文字及び「サンキン」の片仮名を上下二段で併記した構成からなる商標であり、本件商標の登録出願前に出願され、それぞれ商標権として設定登録された。
(エ) 本件商標と引用商標との類否
本件商標の要部は「三金」の漢字で構成され、「サンキン」の称呼が生じる。引用商標の片仮名部分「サンキン」は、欧文字部分「Sankin」のローマ字読みを表したものであるので、引用商標からは「サンキン」の称呼が生じるといえる。よって、本件商標と引用商標は、称呼上同一であるといえる。
本件商標の要部「三金」及び引用商標を構成する「Sankin」又は「サンキン」については、上記(1)アのとおり、申立人が、1920年代に創業し、創業以降、社名に使用してきた「三金」の漢字表記、欧文字表記又は片仮名表記であり、申立人が製造販売してきた歯科用材料又は歯科用医療機器の名称においても、多数使用されているので、「三金」「Sankin」又は「サンキン」からは、申立人の販売する歯科用材料・歯科用医療機器等を示すものとして、また、これらを製造販売する申立人の名称を示すものとして、日本国内において周知著名となっている「三金」の観念が生じるので、本件商標及び引用商標は、観念上同一であるといえる。
以上より、本件商標は、引用商標とは、称呼及び親念が同一であるから、本件商標は引用商標と類似し、また、本件商標に係る指定商品である第10類「医療用機械器具,歯列矯正器具,医療用手袋,矯正機械器具」は、引用商標2に係る指定商品である第10類「医療用機械器具(診断用機械器具・治療用機械器具・歯科用機械器具・医療用X線装置を含む),医療用手袋」と同一又は類似である。
したがって、本件商標は、引用商標2と類似する商標であり、また、本件商標は、引用商標2に係る指定商品と同一又は類似である商品について使用する商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 出所混同の生ずるおそれについて
本件商標に接した取引者・需要者は、本件商標の要部「三金」から申立人の「三金」「Sankin」「サンキン」ブランド商品を想起・連想し、本件商標を使用した商品が、あたかも申立人の業務に係る商品であるかの如く認識して取引にあたり、商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
イ 本件商標と引用商標の類似性の程度
上記(1)イのとおり、本件商標は、引用商標とは、称呼及び観念が同一であるから、本件商標は引用商標と類似する。
ウ 申立人の「三金」「Sankin」「サンキン」ブランドの周知著名性
上記(1)アのとおり、申立人は、100年近くにわたり会社名に「三金」の文字を使用してきており、また、申立人は、歯科材料・歯科用医療機器の製造販売に従事し、同分野における大手企業として認知されており、これまで申立人が製造販売してきた歯科用材料又は歯科用医療機器の名称においても、「三金」、その片仮名表記「サンキン」、欧文字表記「Sankin」が多数使用されている結果(甲8、甲9)、当該表示はいずれも、申立人の販売する歯科用材料・歯科用医療機器等を示すものとして、また、これらを製造販売する申立人の名称を示すものとして、日本国内において周知著名となっている(甲10~甲12)。
よって、「Sankin」及び「サンキン」の構成からなる引用商標は、本件商標の登録出願日の時点で、申立人の商標として、日本国内において周知著名となっていたといえる。
エ 引用商標の独創性の程度
引用商標の独創性の程度について、「三金」、「サンキン」及び「Sankin」は、辞書に掲載されている語ではなく、造語の一種であり、上述のとおり、申立人の前身を含めて1920年代の創業以降、2017年に現在の社名に変更するまで、社名に含まれていた「三金」の文字の欧文字及び片仮名表記であり、申立人が製造販売してきた歯科用材料又は歯科用医療機器の名称に使用されているものである。
したがって、引用商標は、独創性を有するものである。
オ 本件商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との関連性の程度、取引者・需要者の共通性等
引用商標が周知著名性を獲得した商品は、歯科用材料及び歯科用医療機器であるのに対し、本件商標の指定商品は、歯科用材料並びに歯科用医療機器又は医療用品との関連性が極めて強い商品である。
また、歯科用材料及び歯科用医療機器と本件商標の指定商品は、いずれも歯科医療従事者並びに歯科医療患者、又は医療従事者及び医療患者という需要者層を共通にするものである。
カ その他考慮すべき特別な事情
本件商標権者は、令和2年12月28日に設立され、登記された目的によると、歯科の精密鋳造製品の製造・販売等をその目的に含む歯科用材料及び歯科用医療機器メーカーであるが(甲12の4)、既述した引用商標の全国的な周知著名性にかんがみると歯科用材料及び歯科用医療機器メーカーである本件商標権者が引用商標を知らないということは全くあり得ないものである。
さらに、本件商標権者の代表取締役はA氏であるところ(甲12の4)、A氏は、申立人の歯科矯正製品等の製造工場(那須工場)の事業買収について入札に参加し、2020年11月6日付けで入札に参加する意向を表明する「Memorandum of Understandings」(覚書)と題する書面(甲12の6)を申立人及び申立人の関連会社デンツプライシロナ株式会社と締結したという経緯がある。
当該書面において、「本覚書は、那須工場の全事業を承継する際の詳細を明示的に確認するためのものである」旨述べられている。
その後、本件商標権者は、本件商標以外にも、「Sankin」及び「サンキン」について出願している(甲12の2、甲12の3)。
以上の状況を考慮すると、本件商標権者は、申立人の「三金」、「サンキン」及び「Sankin」の周知著名性を承知の上で、さらに、本件商標権者の代表取締役A氏が申立人の歯科矯正製品等の製造工場(那須工場)の事業買収への入札に参加した2020年11月6日以降に本件商標について登録出願し、登録を受け、他にも「Sankin」及び「サンキン」について登録出願したものであり、引用商標の周知著名性へのただ乗りや希釈化を意図したものであることは疑いの余地はない。
なお、本件商標権者の代表取締役A氏は上記入札に参加したのみで落札には至っておらず、本件商標権者及び同社の代表取締役A氏は、申立人と何ら資本関係、事業提携その他一切の関係性がなく、本件商標の使用について許諾を得た者でもないことを念のため付言しておく。
キ 過去の異議決定・審判決例
過去の異議決定・審判決例において、周知著名な商標をその構成中に含む商標について、商標法第4条第1項第15号に該当するとの判断が定着している(甲14~甲54)。
ク 小括
以上のとおり、引用商標は、申立人が使用してきた名称及び業務に係る「三金」「Sankin」「サンキン」ブランド商品を表すものとして全国的に周知著名な商標であること、本件商標は、引用商標と類似する「三金」の文字を要部とする商標として、引用商標と高い類似性を有すること、「三金」「Sankin」「サンキン」が独創性の高い商標であること、本件商標の指定商品は、引用商標が周知著名性を獲得した商品と関連性が高いものであり、需要者の範囲も一致するものであることから、本件商標は取引者・需要者にとって引用商標と極めて強い関連性を持って認識されること、さらには、商標権者が、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者・需要者は、申立人の「三金」「Sankin」「サンキン」ブランド商品を想起・連想し、あたかも申立人が取り扱う業務に係る商品であるかの如く認識して取引にあたると考えられるため、その出所について混同を生ずるおそれがあることは明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号について
ア 本件商標権者の「不正の目的」
同号にいう「不正の目的」とは、競争関係とは無関係に、公正な取引秩序に違反するような目的をいい、必ずしも取引を巡る対立構造を前提とする(審決注:この後に「ものではないと解される。この点、本願商標の指定商品は、」といった文言が抜けているものと考えられる。)「医療用機械器具,歯列矯正器具,医療用手袋,矯正機械器具」であるところ、これらの商品が歯科用材料並びに歯科用医療機器、又は医療用品との関連性が強い商品であることは、既述したとおりであり、かつ、顕著な事実である。
また、「三金(Sankin・サンキン)」が、申立人が使用してきた名称及び業務に係る三金(Sankin・サンキン)ブランド商品を表すものとして日本において周知著名であることからすれば、上記指定商品について使用するものとして本件商標を登録出願した本件商標権者が、「三金」の語からなる本件商標を、申立人の業務に係る「三金」と無関係に偶然採用したとは到底考えられない。そして、上記のとおり、本件商標権者の代表取締役A氏が申立人の歯科矯正製品等の製造工場(那須工場)の事業買収への入札に参加した2020年11月6日以降、本件商標について登録出願し、登録を受け、他にも登録出願しており、本件商標権者は、申立人の「三金」、「サンキン」及び「Sankin」の周知著名性を知らないはずはなく、申立人の業務に係る「三金(Sankin・サンキン)」の周知著名性に便乗する意思をもって採択したであろうことは、容易に想像されるところである。
そうとすれば、本件商標権者は、日本において周知著名な「三金(Sankin・サンキン)」を自己の商標として出願・使用する目的をもって出願したものといえ、本件商標は、本件商標権者の不正の目的によって出願されたものである。
イ 過去の審決
特許庁においても、他人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていた商標と同一又は類似性の高い商標を、不正の利益を得る目的及び高い名声・信用・評判にフリーライドする目的で出願し登録を受けた商標は、不正の目的に基づくものであると多くの審決(甲55~甲59)が認定している。
ウ 小括
以上のとおり、「三金」「Sankin」「サンキン」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の使用してきた社名及び申立人が製造販売してきた歯科用材料又は歯科用医療機器として日本において周知著名な商標となっており、本件商標は、引用商標に代表される商標「三金(Sankin・サンキン)」と同一又は類似するものであって、本件商標権者が、「三金」「Sankin」「サンキン」の周知著名性に便乗し、「三金」の文字を含む本件商標の独占排他的使用を得ようとする不正の目的に基づいて出願し登録されたものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第7号について
上記(1)アのとおり、引用商標は、申立人の販売する歯科用材料・歯科用医療機器等を示すものとして、また、これらを製造販売する申立人の名称を示すものとして、日本国内において周知著名となっている。
また、本件商標は、引用商標とは、称呼及び観念が同一であるから、引用商標と類似する。
以上の事実関係に照らせば、上述したとおり、本件商標権者は、歯科の精密鋳造製品の製造・販売等をその目的に含む歯科用材料及び歯科用医療機器メーカーであること(甲12の4)、既述した引用商標の全国的な周知著名性、本件商標権者が歯科用材料及び歯科用医療機器メーカーであることを考慮すると、本件商標権者が、「三金」の語を含む本件商標を、申立人の業務に係る「三金」「Sankin」「サンキン」と無関係に偶然採用したとは到底考えられない。そして、上記(2)カのとおり、本件商標権者の代表取締役A氏が申立人の歯科矯正製品等の製造工場(那須工場)の事業買収への入札に参加した2020年11月6日以降、本件商標について出願し、登録を受け、その他にも出願したという経緯があるのであって(甲12の3)、本件商標権者は、申立人の「三金」、「サンキン」及び「Sankin」の周知著名性を知らないはずはなく、むしろ、その周知著名性に便乗する意思をもって採択したものであると考えられる。
よって、本件商標に接する取引者、需要者に引用商標を連想、想起せしめ、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗りする不正な目的で採択・出願し登録を受けたことは明らかであり、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある。
そして、このような商標登録の維持を許せば、申立人の名称及び申立人の販売する歯科用材料・歯科用医療機器の販売展開が、本件商標の存在によって不当に脅かされ商標法の予定する秩序に反するものとなる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
4 当審の判断
(1)引用商標及び「三金」、「サンキン」、「SANKIN(Sankin)」の文字の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査によれば、引用商標の商標権者であるデンツプライシロナ社は、「三金電化研究所」(1920年代)の創業に始まり、1948年(昭和23年)に「三金工業株式会社」として設立、2002年(平成14年)に「デンツプライ三金株式会社」に商号変更、その後、2017年(平成29年)に「デンツプライシロナ株式会社」に商号変更(甲5~甲7)した、主に歯科材料、歯科用医療機器の製造販売をする企業であること、商号変更前のデンツプライ三金株式会社は、「歯科用根管充填固状材料」「アパタイト系根管充填材」「ポリカーボクラウン」のリーフレット(甲8の1~4)に「SANKIN」「サンキン」の標章を使用したこと、また、デンツプライシロナ社は、「歯科材料」「歯科用ステンレス鋼線」「歯科用暫間被覆冠成形品」のカタログ(甲9)において、「三金顎骨固定用歯牙結紮線」「三金ネット(義歯床材料)」「三金補強芯」「サンキンポリカーボクラウン」「サンキンアルミキャップ」などと商品の名称に「三金」「サンキン」の文字を冠して使用したことが認められる。
イ 上記アのとおり、引用商標の商標権者(デンツプライシロナ社)は、自身の販売する商品「歯科材料、歯科器材」について、「三金」「サンキン」の文字を冠して使用し、また、商号変更前のデンツプライ三金株式会社において「SANKIN」「サンキン」の標章を使用したことが認められるものの、引用商標がそれらの指定商品について使用されていると認め得る証左、及び「三金」「サンキン」「SANKIN」の文字が商標として使用された商品についての我が国における売上高、シェアなど販売実績等を裏付ける証左は見いだせない。
また、デンツプライシロナ社の代表取締役は、令和4年3月31日付け陳述書(甲8の5)において、2016年に「デンツプライ三金株式会社」名義で歯科業界紙65誌に広告を行っているなどと主張するものの、それらの掲載内容及び発行部数等を裏付ける証左は見いだせない。
そうすると、引用商標及び「三金」、「サンキン」、「SANKIN(Sankin)」の文字(以下「引用商標等」という。)は、本件商標の登録出願の日前及び登録査定時において、他人(引用商標の商標権者)の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないと判断するのが相当である。
加えて、外国における引用商標等が使用された商品の売上高、シェアなど販売実績等を示す主張、証左はないから、引用商標等は、他人(引用商標の商標権者)の業務に係る商品を表示するものとして外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることもできない。
したがって、引用商標等は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標の商標権者(デンツプライシロナ社)の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり、「アブソルート三金」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同じ大きさをもって等間隔に、視覚上まとまりよく一体的に表されており、構成文字に相応して生じる「アブソルートサンキン」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものである。
また、本件商標の構成中「アブソルート」の文字が「絶対の、完全な」の意味を有する英語「absolute」の称呼の片仮名表記であるとしても、本件商標の指定商品の品質等を表すなど出所識別標識としての機能を欠くものともいい難い。
さらに、上記(1)のとおり、本件商標の構成中「三金」の文字が、引用商標の商標権者の取扱いに係る商品を表すものとして、需要者の間に広く認識されている商標と認めることはできないものであって、他に「三金」の文字部分が取引者、需要者に対し、商品及び役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもの、又はそれ以外の文字部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないものと認めるに足る事情は見いだせない。
そうすると、本件商標「アブソルート三金」は、その構成文字全体が一体不可分のものとして認識、把握されるものであるから、「アブソルートサンキン」の称呼のみを生じるものであり、また、当該文字は辞書等に載録されている語ではなく、特定の意味合いを有するものとして認識されているという事情も見いだせないものであるから、一種の造語として認識され、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
イ 引用商標
引用商標は、別掲のとおり、「Sankin」の欧文字と「サンキン」の片仮名を上下二段に横書きしてなるところ、構成中の下段の「サンキン」の片仮名が、上段の「Sankin」の欧文字の読みを特定したものと無理なく認識し得るから、「サンキン」の称呼のみを生じ、いずれも辞書等に掲載されていない造語と認められ、特定の観念を生じないものというのが自然である。
そうとすれば、引用商標は、その構成文字に相応し、「サンキン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標の類否を検討するに、本件商標は、上記1のとおり、「アブソルート三金」の文字を表してなるのに対し、引用商標は、別掲のとおり、「Sankin」の欧文字と「サンキン」の片仮名を上下二段に横書きしてなるものであるから、その構成文字及び構成態様において顕著な差異を有し、外観上明確に区別できるものである。
そして、本件商標から生じる「アブソルートサンキン」の称呼と引用商標から生じる「サンキン」の称呼とは、構成音数及び音構成において明らかに相違するものであるから、両称呼は、語調、語感が異なり、互いに紛れるおそれはない。
さらに、本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上比較することはできない。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから、両商標の外観、称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標2の指定商品が類似するとしても、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものとはいえない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標等は、引用商標の商標権者の業務に係る商品を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
また、本件商標は、上記(2)のとおり、「アブソルート三金」の構成文字全体が一体不可分のものとして認識、把握されるものであるから、引用商標等(引用商標及び「三金」、「サンキン」、「SANKIN(Sankin)」の文字)とは文字数や構成文字が異なり、外観上明らかに区別し得るものである。そして、本件商標から生じる「アブソルートサンキン」の称呼と、引用商標等からそれぞれ生じる「サンキン」の称呼とは、構成音数及び音構成に顕著な差異を有するから、明らかに聴別し得る。さらに、両者はともに特定の観念を生じないものであるから、観念において相紛れるおそれはない。
よって、本件商標と引用商標等とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、その類似性の程度は高いものとはいえない。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標等を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(引用商標の商標権者)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が他人の業務に係る商品と混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものといえない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標等は、上記(1)のとおり、引用商標の商標権者の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、本件商標は、上記(2)のとおり、引用商標等とは相紛れるおそれのない非類似の商標であって、引用商標等を連想又は想起させることのないものである。
さらに、申立人提出の証拠によっては、本件商標が引用商標等の出所識別機能を希釈化させる又はその信用、名声、顧客吸引力を毀損させるなど不正の目的をもって使用するものというべき事情は見いだせない。
そうすると、本件商標は、引用商標等の信用、名声などにただ乗りする、毀損する、あるいは出所識別機能を希釈化するなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものといえない。
(5)商標法第4条第1項第7号該当性について
商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は商標登録をすることができないとしているところ、同号は、商標自体の性質に着目したものとなっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については、同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること、商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである(平成14年(行ケ)第616号)。
申立人は、「商標権者は、申立人の「三金」、「サンキン」及び「Sankin」の周知著名性を知らないはずはなく、むしろ、その周知著名性に便乗する意思をもって採択したものであると考えられる。よって、本件商標に接する取引者、需要者に引用商標を連想、想起せしめ、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で採択・出願し登録を受けたことは明らかであり、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある。」旨主張しているが、引用商標等は、上述のとおり、引用商標の商標権者の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものということができない。
また、申立人が提出した全証拠を勘案しても、本件商標が引用商標等に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗りする不正な目的で採択・出願されたものであるとすべき具体的事情を証明するところはなく、不正の目的をもって使用するものであると認めることもできないものである。
そして、申立人が提出した証拠からは、その出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠く等の事実は見当たらず、本件商標をその指定商品について使用することが、社会の一般道徳観念に反し、商取引の秩序を乱すものともいえない。
さらに、本件商標は、その構成自体が、非道徳的、きょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるようなものではなく、その構成自体がそのようなものではなくとも、それを指定商品に使用することが社会公共の利益に反し社会の一般的道徳観念に反するものともいえない。
その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標であると認めるに足りる事情は見いだせない。
してみると、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標に該当するとまではいえないものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものといえない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-900025