商標異議申立
2022-900020
ザマイクロニードル、マイクロニードル
- 審判番号
- 2022-900020
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2019-091804
- 登録番号
- 6465749
- 請求日
- 2022年01月21日
- 審決日
- 2022年09月07日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】横山製薬株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人深見特許事務所
- 【異議申立人】株式会社 北の達人コーポレーション
- 【異議申立人代理人】弁理士法人大島・西村・宮永商標特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 小松 里美
- 審判官 荻野 瑞樹
- 審判官 小林 裕子
- 分類
- T1651.13 -Y (W03)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6465749号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6465749号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6465749号商標(以下「本件商標」という。)は、「THEマイクロニードル」の文字を標準文字で表してなり、令和元年7月2日に登録出願、第3類「マイクロニードル技術を利用したシート状の化粧品,マイクロニードル技術を利用した化粧品」を指定商品として、同3年9月28日に登録審決、同年11月4日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第19号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
(1)「マイクロニードル」について
薬物の経皮吸収方法については、エレクトロポレーション法、イオントフォレシス法、ソノフォレシス法等の技術が考案されてきたが、マイクロニードル法もそのうちの一つである(甲2)。当該技術はその名の通り「マイクロ(1000分の1ミリメートル)サイズのニードル(針)」を利用するものであり、角質層に小さな孔をあけて物質の経皮送達効率を上げるものである。これは1976年GerstelとPlaceによって発表されたものであり、概念としての歴史は古い(甲2、甲3の1)。製造技術の困難性から費用対効果の面が問題となり研究開発は停滞していたものの、1990年代の電子工業の発展により微細加工技術が容易になったことで開発は進み、2008年には日本から世界初のマイクロニードル化粧品を製品化・上市となった(甲2、甲3)。
商品形態は「微細な針を皮膚に貼付して薬剤を吸収させる」ものであることからシート状であることが推測されるが、辞書の採録や、世界初のマイクロニードル化粧品を製品化した会社のウェブサイトにおける「剣山のように配列させたパッチ状のヒアルロン酸マイクロニードルが角質層に浸透して溶解し、そのまま肌に留まる・・・」との記載から「パッチ状」が一般的であることがわかる(甲3の2)。現在、マイクロニードル化粧品は数多くの商品が販売されており、需要者にとっても特段珍しいものではない(甲4~甲11)。中でも、2016年に販売が開始された申立人ブランドのマイクロニードルパッチ化粧品は、2020年には売上高48億5000万円で世界ナンバーワンの売り上げを達成し、マイクロニードル化粧品市場でシェアナンバーワンである(甲12、甲13)。当該記録は2020年度にギネス世界記録に認定され、続く2021年にも認定された(甲12、甲14)。
2008年の製品化から現在に至るまで、マイクロニードル技術を利用した化粧品は数多く販売されているが、ウェブサイトで確認できた本件商標にかかる商品も同じ種類の商品であり、かかる指定商品も「マイクロニードル」技術を利用したものである(甲15)。
そうすると、本件商標の「マイクロニードル」部分は薬物の経皮吸収方法としてのマイクロニードル技術を理解させるものであり、かかる分野においてそれ以外の解釈はあり得ない。
(2)本件商標について
本件商標「THEマイクロニードル」の構成は文字種に違いを有するものであり、欧文字「THE」と片仮名「マイクロニードル」の結合であることが容易に理解される。本件商標の欧文字部分と片仮名部分は文字種が異なるために、一体性がなく、一連の造語と看取されにくく、「マイクロニードル」部分のみが分離して看取される。よって、需要者の「マイクロニードル」の認知としては、外観上「THE」の有無に影響されず、「THE」が付加されていても単に「マイクロニードル」と認知されることに変わりがない。
「THE」は英語の定冠詞であって、特定の事物・事象を意味するものではなく、後に続く語を誇称するものとして用いられるものである。そのため、外観上と同じく、観念上も商標構成中の「THE」の有無によってその意味合いが変わるものではない。つまり、本件商標は「マイクロニードル」に定冠詞「THE」を付けたにすぎず、普通に用いられる態様の域を脱しないものであり、たとえ外観上及び観念上の差異が需要者に認識されるとしても、全体として「マイクロニードル」の語を誇称したものと理解されるにすぎない。そして、「マイクロニードル」の語は上記のとおり、薬物の経皮吸収方法としてのマイクロニードル技術を意味することから、本件商標は商品の製造方法又は品質の特徴を表したものと認識するにすぎず、商標としての自他商品識別機能を果たし得ないものである。
したがって、本件商品の需要者にとっては「THE」の有無によってその意味合いが変わるものではないところ、本件商標の構成全体での使用の有無にかかわらず、「マイクロニードル技術」を認識させるものであることから、本件商標は商標としての自他商品識別機能を果たし得ないものであり、仮に需要者が「THE」を認知する場合であっても、同類の中で最も優れたものという意味に理解される場合があるところ更に独占不適応であるから、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものである。
3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本件商標は、「THEマイクロニードル」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、「THE」の欧文字と「マイクロニードル」の片仮名とで文字種が異なるものの、同じ大きさ及び等しい間隔で表されていることから、視覚上、一体的にまとまりのあるものとして看取されるとみるのが自然であり、その構成文字全体から生じる「ザマイクロニードル」の称呼も、格別冗長なものではなく、無理なく一連に称呼できるものである。
そして、その構成中の「THE」の文字が英語の定冠詞であって、また、「マイクロニードル」の文字が、申立人が提出した証拠によれば、その指定商品との関係において、「マイクロメートルサイズの微小針を用いて角質層に微少孔をあけることで物質の経皮送達効率を向上させる技術、又はそのような技術を用いて微小針状に成形した美容成分」(甲2~甲9ほか)を表す語として使用されていることがうかがえるとしても、これらを一連に表示した本件商標が、申立人が主張するように、単に「マイクロニードル」を認識させるもの、又は「マイクロニードル」を誇称したものと直ちに認識させるものであるとはいい難い。
また、本件商標の指定商品を取り扱う業界において、マイクロニードルを利用したパッチ状又はシート状等の化粧品(申立人に係る商品を含む。)が取引されている実情が見受けられる(甲3~甲9、甲11~甲14)としても、申立人の提出に係る証拠及び職権による調査によっては、本件商標の登録審決時に、「THEマイクロニードル」の文字が、本件商標の指定商品を取り扱う業界において、その指定商品について、商品の品質等を表示するものとして取引上一般に使用されている事実を発見することができず、その他、本件商標に接する取引者、需要者が、当該文字を商品の品質等を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。
そうすると、本件商標は、その構成全体をもって一体的に把握される、特定の意味を有しない一種の造語であると判断するのが相当である。
してみれば、本件商標をその指定商品に使用しても、商品の品質等を直接的、かつ、具体的に表示するものということはできないから、本件商標は、自他商品の識別標識としての機能を果たし得る商標といわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものではない。
(2)申立人の主張について
申立人は、「THE(The) ○○」の構成からなる、又は当該文字を構成中に有する商標に係る審決例(甲16、甲17、甲19)や、商標法第3条第1項第3号に係る東京高裁判決(甲18)を例に挙げ、本件商標は、商標権として独占を認めるべきではなく、本件商標をその指定商品について使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たさないものである旨主張している。
しかしながら、商標が自他商品の識別標識としての機能を果たすか否かの判断は、当該商標について、判断時の取引の実情等を勘案しつつ、個別具体的に判断されるべきものであるところ、申立人の挙げた事例と本件商標とは、使用する商品が異なり、商標の構成態様等の点においても異なるものであるから、その事例を直ちに本件商標に適用して、本件商標が自他商品の識別標識としての機能を果たさないと判断することは適切とはいえない。
また、本件商標が商標権として独占を認めるべき商標ではないこと、あるいは、本件商標が自他商品の識別標識としての機能を果たさない商標であることを認めるに足りる具体的な事実を示す証拠の提出はなく、申立人の当該主張は採用することはできない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものではなく、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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