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商標無効審判

2022-890095

タイショーヤゲン、タイショーヤッケン、タイショーヤクケン

審判番号
2022-890095
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2019-167395
登録番号
6414450
請求日
2022年12月27日
審決日
2023年12月26日
公報発行日
2024年07月26日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】大正製薬 株式会社
  • 【請求人代理人】田中 伸一郎
  • 【請求人代理人】中村 稔
  • 【請求人代理人】井滝 裕敬
  • 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
  • 【請求人代理人】藤倉 大作
  • 【請求人代理人】相良 由里子
  • 【請求人代理人】北原 絵梨子
  • 【請求人代理人】竹下 薫
  • 【被請求人】株式会社 本吉
審判長/審判官
  • 審判長 高野 和行
  • 審判官 大森 友子
  • 審判官 板谷 玲子
分類
T112 .271-Z (W05)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法4条1項15号商標法46条1項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第15号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第6414450号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 登録第6414450号の指定商品中、第5類「薬剤,サプリメント,ビタミン剤,アミノ酸剤,滋養強壮変質剤,栄養補助食品,食物繊維」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6414450号商標(以下「本件商標」という。)は、「大正薬研」の文字を標準文字で表してなり、令和元年12月26日に登録出願、第5類「薬剤,医療用油紙,医療用接着テープ,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,綿棒,歯科用材料,おむつ,おむつカバー,はえ取り紙,防虫紙,乳幼児用粉乳,サプリメント,ビタミン剤,アミノ酸剤,滋養強壮変質剤,栄養補助食品,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,乳幼児用飲料,乳幼児用食品,栄養補助用飼料添加物(薬剤に属するものを除く。),動物用サプリメント(薬剤に属するものを除く。),人工受精用精液,食物繊維」を指定商品として、同2年11月12日に登録査定、同3年7月12日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 本件商標の無効の理由において、引用する商標は「大正製薬」の文字を書してなり(以下「引用商標」という。)、請求人の創業した1912年(大正元年)から現在にいたるまで、請求人が同人の業務に係る医薬品及び栄養補助食品、並びに、化粧品・スキンケア商品及び飲食料品等(以下「請求人商品」という。)の表示として、かつ請求人の商号の略称及び請求人が中心となって構成される企業グループ全体を象徴する商標として使用し、需要者の間に広く認識されていると主張するものである。 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第159号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その指定商品中、第5類「薬剤,サプリメント,ビタミン剤,アミノ酸剤,滋養強壮変質剤,栄養補助食品,食物繊維」(以下「請求に係る商品」という。)についての登録を無効にすべきものである。 2 利害関係について 本件商標は、請求人商品の表示として、かつ、請求人の商号の略称及び請求人が中心となって構成される企業グループである大正製薬グループ(以下「大正製薬グループ」という場合がある。)全体を象徴する商標(ハウスマーク)として著名に至っている引用商標と相紛らわしい商標であり、かつ、請求に係る商品は、いずれも、請求人商品と共通するか、または、請求人商品と関連性の非常に高い商品であるから、本件商標がこれらの商品について使用された場合、取引者又は需要者をして、請求人商品と出所混同を生ずるおそれが極めて高い。 よって、請求人が本件無効審判を請求することについて利害関係を有する。 3 本件登録を無効とすべき理由 (1)請求人の歴史及び事業活動等 請求人は、100年以上の歴史を誇る日本を代表する製薬会社である。請求人は、処方せんがなくとも薬局やドラックストアで購入できる医薬品(以下「OTC医薬品」という。)の分野でトップシェアを誇り、セルフメディケーション事業(OTC医薬品の製造販売)と医薬事業(医療用医薬品の製造販売)を両輪としながら、医薬品を中心に、特定保健用食品、栄養補助食品、食品、ヘアケア用品その他の化粧品、オーラルケア用品等の各種商品を国内外にわたり多角的に展開している(甲2~甲6)。 請求人は、大正元年(1912年)10月に設立された、大正製薬所に遡る(甲7)。大正製薬所は、その後、昭和3年(1928年)5月に株式会社大正製薬所に改組し、終戦後の昭和23年(1948年)5月に、その商号を大正製薬株式会社へと改称した(甲8)。 請求人の事業は、医薬品(甲8)を中核としながらも、食品、飲料、ヘアケア商品、デンタルケア商品その他各種日用品の分野へと年を追うごとに多角化している。平成23年(2011年)10月には、持株会社として大正製薬ホールディングス株式会社が設立され、これを機に、請求人は、同社の完全子会社となった。 以後、請求人は大正製薬ホールディングス株式会社の主要子会社として大正製薬グループの中核を担う存在である。現在大正製薬グループには、国内に10社のグループ会社、海外に17社ものグループ会社を有し、グループ連結での従業員数は9,134人にものぼる(甲5、甲6、甲9)。 請求人商品は、広く一般大衆を対象に販売され、全国的に流通し、地域や性別、年齢層に関わらず幅広い需要者層において親しまれている。大正製薬グループ各社は、衣料品等、多岐にわたる一般消費者向け商品の製造販売を行っており、その存在もまた、医薬品及び栄養補助食品等の商品分野を中心に、化粧品・スキンケア商品及び飲食料品等の取引者及び需要者間において良く知られるに至っている。 (2)請求人の商号の略称又はハウスマークとしての引用商標の著名性 ア 売上高等 大正製薬グループの過去5年における年間売上高は、2016年度ないし2021年度に261,551百万円ないし290,135百万という規模であり(グループ連結、甲10~甲15)、そのうち、セルフメディケーション事業(OTC医薬品の他、栄養補助食品や化粧品・スキンケア商品、飲食料品等の事業も含む。)に限定しても、2021年度ないし2016年度には180,123百万円ないし226,878百万円という実績を持つ(グループ連結、甲10~甲15)。これらの事実からも、請求人が請求人商品の分野において日本国内において大規模な事業展開をしていることは自明である。 イ 宣伝広告活動 請求人は、請求人商品について、時代に合わせて様々な宣伝広告媒体を活用し、全国的規模で継続的に宣伝広告活動を行ってきた。 (ア)マスメディアを通じた宣伝広告活動 請求人の主力商品群の一つであるOTC医薬品は、一般大衆を対象に販売されるものであるため、当該商品の宣伝広告活動についても、新聞・雑誌広告、テレビ(テレビ番組への協賛、テレビコマーシャルの放映)等、一般大衆が容易にアクセス可能なマスメディア媒体を中心に行われてきた(甲16~甲25)。 請求人の打ち出すコマーシャル、ポスター及びプロモーションキャンペーンは、そのコンテンツ自体についても高い評価を受けており、数々の広告賞やアワードの受賞歴がある(甲27~甲30)。そのほかにも、例えば国内の人気コマーシャルソングが収録されたCDにおいても請求人商品のテレビコマーシャルで流れるテーマソングが収録される等、請求人の打ち出す宣伝広告が、一般大衆から高い注目と人気を集め続けてきたことがうかがえる(甲31~甲33)。 (イ)オンラインでの宣伝広告活動 請求人は、請求人商品のうち主力商品群については商品ブランド毎に独自のウェブサイト(ブランドサイト)を作成し、商品の紹介や関連情報の提供といったプロモーション活動を精力的に行っている(甲34)。 また、動画投稿サイト「Youtube」における請求人の公式チャンネルでは、現在放映中の最新テレビコマーシャルやプロモーション動画を公開しているが、当該公式チャンネルの登録者数は2.01万人にものぼり、当該公式チャンネルに掲載された最新の「リポビタン」シリーズのブランドコマーシャルを例にとっても、その再生回数は236万回を超える(2022年12月2日時点、甲35、甲36)。 近年においては、インターネット上で会員向けのポイントプログラムの展開を行ったり(甲37)、SNSサービスを介した情報提供及びプロモーションを行う等(甲38~甲43)、オンラインでの宣伝広告活動も精力的に展開している。 (ウ)スポーツ振興 請求人は、スポーツの発展が人々の健全なカラダと心の育成につながるとの考えの下、スポーツ文化の発展を支えるべく、ラグビー、野球及びテニスの分野でスポーツ振興に携わっており、日本代表チームや関連団体等への協賛やスポンサーシップの提供等を行っている(甲44~甲50)。当該活動を通じて請求人商品の広告宣伝活動・販促活動が、様々な媒体・販売ルートを通じ大規模に行われた(甲51~甲63)。 (エ)その他 令和2年(2020年)には、若年層に向けた新たな広告宣伝戦略を展開して全国的に話題を集めた(甲65~甲67)。また、教育の現場においても、各大学にて産学連携プロジェクトを実施するなど、請求人は、製薬会社でありながらも、スポーツ振興や文化普及活動を通じ、日本国民の心身両面にわたる健康づくり及び豊かな生活の実現に貢献してきた(甲68~甲70)。 (オ)以上のとおり、請求人は様々な宣伝広告媒体を通じ、請求人商品につき、全国的規模でかつ継続的に宣伝広告活動を行ってきた。そして、引用商標は、請求人の商号の略称かつハウスマークとして、請求人商品のパッケージや宣伝広告において継続的に表示されてきた他(甲20~甲25、甲37~甲41、甲76~甲77 ほか)、各種宣伝広告活動を通じ大正製薬グループ全体を象徴する商標としても使用されてきたのであり(甲72、甲73、甲105、甲151~甲159 ほか)、このような請求人の多大なる営業努力の結果、引用商標が、性別や年齢層を問わず、広く一般大衆の目に触れ記憶されるに至っていることは想像に難くない。 ウ 異議決定における引用商標の著名性の認定 引用商標が請求人商品との関係で著名に至っていることは特許庁においても顕著な事実である(異議2021-900361号、甲71)。 エ 小括 以上のとおり、引用商標は、請求人商品の表示として、かつ、請求人の商号の略称及び大正製薬グループ全体を象徴する商標(ハウスマーク)として、請求人が長きに渡って全国的規模で継続的に使用してきた商標である。 そして、請求人による長期間にわたる精力的な宣伝・広告活動と、商標登録による重畳的保護といった企業努力の積み重ねの結果、引用商標は、本件商標の登録出願日よりもはるか前から著名性を獲得し、また、本件商標の登録査定時並びに現在に至ってもその著名性は継続し、市場において強い識別力と顧客吸引力を発揮し続けているのである。 (3)請求人が「大正」を冠したブランディングを行っていること 前記(2)の通り、引用商標は、本件商標の指定商品中、特に、請求に係る商品の取引者及び需要者を中心に、請求人商品の出所表示として広く認識されているものであるが、請求人及び大正製薬グループでは、引用商標と共に「大正」を冠したブランディングを行ってきた。 大正製薬グループは、請求人の他、医薬品、医薬部外品、栄養補助食品、食品及び化粧品・スキンケア商品等の企画、製造及び販売等やその物流を担う複数の子会社から構成される企業グループであるところ、当該グループの持株会社である「大正製薬ホールディングス株式会社」、及びその主要子会社である請求人の他にも、商号に「大正」を含む法人が複数存在し、「大正」を、グループ全体で使用する共通の出所表示として用いてきた(甲5)。また、請求人の海外グループ会社の名称においても、「大正」の語を冠した商号を使用している(甲6)。 また、請求人は、「大正」の商標を、請求人商品の出所表示としても継続的に使用してきた(甲72~甲103)。 これらの商品の包装箱や取引書類等には、出所表示として「大正」の商標が顕著に表示されており、これらの商品の取引にあたり、「大正」の商標が、請求人を指称する表示かつ各商品の出所表示として取引者及び需要者の目に触れ、請求人と強く結びつけて記憶されている。 その他にも、請求人は、「大正」の商標と請求人とを関連付けて使用し、ブランディングを行ってきたという経緯がある(甲106、甲107)。そして、これを背景として、「大正」を冠した表示は、請求人の主力商品分野である医薬品及び栄養補助食品等をはじめとする請求人商品等の分野においては特に請求人又は請求人商品と強く結びついて認識されるに至っている。 (4)請求人の研究開発活動について 請求人は、昭和49年(1974年)には自社の総合研究所を設置し、以来、研究開発力の強化に努めてきた(甲8)。今日では研究開発費として20,251百万円もの額を投資しており(令和3年(2021年)3月末時点グループ連結、甲10)、ニュースメディア「AnswersNew」に掲載された「国内製薬会社 研究開発費ランキング」においては、国内で14位に位置付けられている(甲108)。また、各種学会等での発表実績も多く、国内外の製薬会社、研究機関との共同研究も積極的に実践し多角的な研究に取り組んでおり(甲109~甲118)その研究結果が話題になるなど(甲125)、その研究開発力は高い評価を得ている(甲119~甲121)。 また、請求人はウェブサイトを通じて、自社の総合研究所に所属する研究員のインタビューを掲載し、研究成果を積極的に発信している(甲122~甲124)。 これらのことからも、請求人は、特に請求人商品の取引者及び需要者間では、研究開発に力を入れている企業であるとの企業イメージが醸成されている。 (5)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当すること ア 引用商標の著名性 前記(2)の事実から、引用商標が我が国において全国的に広く知られるに至っていること、そして、請求人の事業活動並びに引用商標の使用実績及び経緯等を考慮すれば、本件商標の指定商品中、特に請求に係る商品の分野においては、殊更、引用商標が著名に至っていることは明らかである。 引用商標は、請求人商品の表示として、かつ、請求人の商号の略称及び大正製薬グループ全体を象徴する商標(ハウスマーク)として、請求人及びその関係会社(以下、これらを「請求人等」という場合がある。)が継続的かつ独占的に使用してきた唯一無二の商標であり、特に、請求人商品と性質を共通にし、高い関連性を有する請求に係る商品の分野においては、請求人等と一対一の関係で関連づけられ結びつく商標である。 また、請求人の主力事業分野でもある請求人商品との関係でいえば、著名な引用商標はもとより、「大正」を冠した標章についても、同様に、請求人等と強い結びつきをもって理解されるというべきである。 この点、請求に係る商品に含まれる「医薬品」との関係で例を挙げると、国内の主要医薬品メーカーが所属する任意団体等においてその所属企業・団体でその商号又は名称に「大正」を含む会社は請求人のみである点(甲126~甲128)、また、「医薬品」を指定商品に含む国内の商標登録の状況をみても、「大正」の文字のみからなる、又は、「大正」の文字を構成中に含む商標は、本件商標を除き、いずれも請求人により登録されていることからも裏付けられる(甲129)。 これらの事実に鑑みれば、少なくとも「医薬品」の分野においては、「大正」を冠した又はこれを含む商標の使用は請求人の独占状態にあるというべきであり、請求人による永年の使用の結果、取引者及び需要者においても、請求人との強い結びつきをもつ唯一無二の表示として理解されるに至っているというべきである。 イ 本件商標と引用商標とが外観及び観念上相紛らわしいものであること 本件商標と引用商標とは、(ア)漢字四字で構成されている点、(イ)「大正」を語頭に冠した文字構成である点、(ウ)「大正」と「薬」の各文字が、「大正」が前、「薬」が後という順序で配されている点で共通する。さらに、四字の構成文字中、「大」、「正」、「薬」の三文字が共通しており、かつ、これらの文字の順序も共通することから、本件商標と引用商標の外観は極めて相紛らわしく、また、本件商標と引用商標とは、取引者又は需要者の記憶に最も残りやすい語頭部において「大正」の2文字が共通することから、本件商標に接した者が簡易迅速を尊ぶ商取引においてこれを引用商標と見誤ることは十分に起こりうるといえる。さらに、前記の通り、引用商標が請求に係る商品の分野で高い著名性を有すること、請求人が永年「大正」を冠したブランディングを行ってきたこと、請求に係る商品のうち「医薬品」の取引分野においては「大正」を冠した又はこれを含む商標が請求人と強い結びつきをもって理解されることからすれば、引用商標と同じく、「大正」と「薬」の各文字を順に組み込み、漢字四字で構成された本件商標に接した者が、本件商標から著名な引用商標を連想・想起する蓋然性は極めて高い。 また、本件商標は、「大正」及び「薬」の各文字に「研」の文字を組み合わせた構成からなるところ、「研」の文字は、「研究所」の略称として他の語と組み合わせて使用されている実情がある(甲130~甲132)。 このような名称が一般的に用いられていることからすれば、本件商標に接した取引者及び需要者は、本件商標の「大正」及び「薬」の文字から請求人又は著名な引用商標を連想・想起すると共に、本件商標の構成文字全体をもって「大正製薬株式会社の研究所又は研究機関」の如き意味を理解すると考えられる。したがって、本件商標は、外観のみならず観念においても引用商標と紛らわしい印象を取引者・需要者に与えるものである。 ウ 請求に係る商品と請求人商品との関連性の程度、取引者及び需要者の共通性 請求に係る商品は、引用商標が著名に至っている請求人商品と商品の性質、用途又は目的、取引経路、取引者及び需要者の層において共通している。請求人は、医薬品(甲83、甲78、甲89、甲91 ほか)、サプリメント(甲92~甲95 ほか)、栄養補給を目的としたドリンク剤や滋養強壮剤(甲134~甲138 ほか)、栄養補助食品(甲139~甲142 ほか)といった商品分野で特に精力的に商品展開を行っており、請求人のこれらの商品は、人々の健康増進を目的として一般大衆を対象に主にドラッグストア等で取引される商品であり、これらの商品の目的及び性質、取引の経路や販売場所、取引者及び需要者は、請求に係る商品といずれも共通するものである。 エ 需要者の認識及び取引の実情 以上の点に加え、請求に係る商品の取引実情並びにこれらの商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準とした場合、本件商標に接した者が、そこから請求人又は著名な引用商標を連想・想起し、本件商標が使用された商品があたかも請求人又は請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある事業者により提供される商品であるかの如く、その出所につき混同を生じるおそれは一層高い。 また、近年では、請求に係る商品についてもオンラインでの商品取引が活発に行われている実情があることから、従前以上に簡易迅速な取引がなされているという状況があり(甲143)、取引にあたっての需要者の注意力も自ずと低くなる。 そして、医薬品はその容器に、最少でも計14項目もの情報を記載することが義務づけられている(甲144)ところ、医薬品の購入者(需要者)は、短い時間で多くの情報を目にし、商品の識別を行うことになる。 さらに、OTC医薬品の取引においては、信頼出来る製造業者(製薬メーカー)により製造されているかという点は商品の選択にあたり非常に重要な判断要素となる。また、OTC医薬品の需要者は、時に商品名よりも、商品パッケージ上に小さく付記的に表示された製造業者(製薬メーカー)のハウスマーク(甲145~甲148 ほか)を目印に商品の取引を行う機会も多い。 このような取引実情を考慮すると、本件商標が、OTC医薬品のパッケージの前面における製造業者(製薬メーカー)のハウスマークの表示のように小さく付記的に表示された場合、需要者は、引用商標の著名性とも相まって、本件商標を、引用商標であるかの如く見誤るおそれは極めて高い。 しかも、OTC医薬品に関しては、その需要者は、子供から高齢者まであらゆる世代が含まれ、時に罹患中に急を要して商品の購入がなされることも珍しくないから、商品の取引は、必ずしも高い注意力をもってなされるとは限らない。したがって、本件商標の表示態様如何によっては、本件商標を著名な引用商標と結びつけ、本件商標が使用された商品があたかも請求人により製造販売される商品であるかの如く、その出所につき誤認混同が生じるおそれは一層高い。 オ 本件商標が請求人商品と混同を生じさせるおそれがあること 引用商標は請求人商品の表示として、かつ、請求人の商号の略称及び大正製薬グループ全体を象徴する商標(ハウスマーク)として全国的に知られる著名商標である。 そして、請求に係る商品が請求人商品と性質を共通にし、高い関連性を有することからすれば、請求に係る商品の取引者及び需要者間においても引用商標は、著名性を獲得するに至っていることは自明である。 また、本件商標は外観及び観念において引用商標と相紛らわしく、本件商標が請求に係る商品に使用された場合に取引者又は需要者をして容易に請求人を連想・想起させうるものであること、商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力や前述の商品の取引の実情等も考慮すれば、本件商標をその指定商品、特に、請求に係る商品について使用した場合に、取引者及び需要者は、本件商標から著名な引用商標を連想し、本件商標が請求人又は請求人と経済的若しくは組織的に関係がある事業者により提供される商品であるかの如く、商品の出所につき誤認混同が生じるおそれは極めて高い。 よって、本件商標は、他人である請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれのある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。 第4 被請求人の主張 被請求人は、前記第3の請求人の主張に対し、何ら答弁するところがない。 第5 当審の判断 請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係について争いがないから、本案について判断する。 1 請求人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 (1)「大正製薬」の文字(引用商標)は、請求人の前身である大正製薬所(以下、請求人の前身を含めて「請求人」という。)の創業者によって、大正元年(1912年)に請求人の名称として採択されたものであり(甲7)、創業時から、請求人の商号の一部として、また、請求人の業務に係る商品の出所表示として継続的に使用されてきたものであり、平成23年(2011年)の持株会社制度に移行後も、請求人及び持株会社(大正製薬ホールディングス)等によって、引き続き使用されている(甲8、甲11 ほか)。 (2)請求人は、医療用医薬品の開発販売からなる「医薬事業」と、OTC医薬品、栄養補助食品、化粧品・スキンケア商品及び飲食料品といった各種商品の製造販売からなる「セルフメディケーション事業」の2つの事業を主軸として事業展開を行っている(甲2~甲4、甲11)。 (3)請求人の業務に係るOTC医薬品には、ドリンク剤の「リポビタンD」、総合感冒薬の「パブロン」、毛髪用剤・育毛剤の「リアップ」等、多くのヒット商品・ロングセラー商品が存在しており、引用商標は、これらの製品を含む請求人商品のパッケージや広告宣伝媒体において共通して使用されている(甲11、甲12、甲21~甲25 ほか)。 (4)請求人は、主にOTC医薬品について、少なくとも、昭和29年(1954年)から新聞広告を行い、昭和36年(1961年)からはポスターによる広告、昭和37年(1962年)からはテレビCMによる広告を行っており、本件商標の登録出願時(令和元年12月26日)及び登録査定時(令和2年11月12日)には、これらに加え、インターネットを通じた広告等、様々な宣伝広告媒体を通じて全国的規模で宣伝広告活動を行っているところ、これらの広告には、引用商標が共通して表示(使用)されている(甲16~甲20、甲35、甲38~甲41)。 請求人は、「リポビタンD」の広告を徐々に世間に浸透させたとして「広告効果賞2019」の特別賞を受賞している(甲28)。 動画投稿サイト「Youtube」における請求人の公式チャンネルでは、現在放映中の最新テレビコマーシャルやプロモーション動画を公開しているところ、令和3年(2021年)10月12日現在の当該公式チャンネルの登録者数は、2.01万人であることから、本件商標の登録査定時においても相当数の登録があったものと推認できる(甲35)。 請求人は、スポーツのチームや関連団体への協賛やスポンサーシップの提供等のスポーツ振興や大学における産学連携プロジェクト等の文化普及活動を通じてOTC医薬品等の広告宣伝活動も行っており、当該プロジェクト等の広告活動にも引用商標が使用されている(甲52~甲63)。 (5)大正製薬グループの過去5年における年間売上高は、平成28年(2016年)度に290,135百万円、平成29年(2017年)度に279,773百万円、平成30年(2018年)度に280,092百万円、令和元年(2019年)度に261,551百万円、令和2年(2020年)度に288,527百万円であり、そのうち、セルフメディケーション事業(OTC医薬品の他、栄養補助食品や化粧品・スキンケア商品、飲食料品等の事業も含む。)の年間売上高は、平成28年(2016年)度は180,722百万円、平成29年(2017年)度は179,992百万円、平成30年(2018年)度は183,996百万円、令和元年(2019年)度は180,123百万円、令和2年(2020年)度は220,027百万円であった(甲10~甲15)。 また、請求人の国内OTC医薬品の市場シェアは令和元年(2019年)度で13.3%、令和2年(2020年)度には12.7%でいずれも第1位である(甲11、甲12)。 (6)大正製薬グループは、持株会社である大正製薬ホールディングス株式会社、大正製薬株式会社(請求人)を含む国内14社、海外27社の合計41社の法人から形成されており、これらの法人のうち少なくとも18社は、「大正」を含む名称からなる(令和2年(2020年)6月30日現在。甲11)。 (7)請求人商品には、「タウリン散98%「大正」」、「大正漢方胃腸薬」、「大正口内炎チュアブル」、「大正ユーグレナ」等「大正」のみの文字を冠した商品名のOTC医療薬を含む薬剤、サプリメント等の商品が多数存在する(甲72~甲88、甲90、甲92~甲101) (8)請求人は薬剤等の研究開発も行っており、昭和49年(1974年)に総合研究所を設置している(甲8、甲108、甲109、甲111~甲113、甲115、甲119~甲121)。 2 引用商標の周知性について 前記1(1)ないし(5)の事実によると、「大正製薬」の文字からなる引用商標は、大正元年(1912年)より請求人の名称及び商号の一部として使用されており、現在においても使用されていること、請求人は引用商標を請求人商品や広告宣伝媒体に使用しているが、請求人商品のうち、OTC医薬品には、需要者によく知られたヒット商品、ロングセラー商品が存在していること、請求人は請求人商品の広告を少なくとも昭和29年(1954年)より行っており、現在は様々な媒体を通じ主にOTC医薬品の広告を行っていること、請求人を含む大正製薬グループの過去5年の売上高は、年に2千600億円以上であり、OTC医薬品を含むセルフメディケーションの分野においても、年に1千790億以上であること、請求人の国内OTC医薬品の市場シェアは令和元年(2019年)度及び令和2年(2020年)度において第1位であったことが認められる。 そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時はもとより現在においても請求人の業務に係る薬剤(特にOTC医療薬)を表す商標として、我が国の需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。 3 商品の関連性の程度、取引者及び需要者の共通性 請求に係る商品中、「薬剤,ビタミン剤,アミノ酸剤,滋養強壮変質剤」は、引用商標が広く認識されるに至った商品(薬剤(OTC医薬品))と同一又は類似の商品と認められる。 また、請求に係る商品中、「サプリメント,栄養補助食品,食物繊維」はいわゆる栄養補助食品(サプリメント)であるところ、栄養補助食品と、薬剤中のビタミン剤、アミノ酸剤、滋養強壮変質剤とは、その原材料、用途、販売店舗、販売方法が共通しており、需要者の範囲においてもある程度の共通性を有しているといえる。請求人においても、薬剤(OTC医薬品)のほかにも栄養補助食品(サプリメント)の製造販売も行っている(甲92~甲98、甲101~甲103)。 これらのことからすれば、請求に係る商品と薬剤とは、同一若しくは類似の商品又は商品間の関連性が高く、取引者、需要者にも共通性がある商品といえる。 4 本件商標と引用商標の類似性 本件商標と引用商標とは語頭の「大正」の文字を共通にし、語尾の「薬研」と「製薬」の文字に差異を有するところ、本件商標の構成中の「薬研」の文字は、その「薬」と「研」の漢字の意味より、「薬の研究」ほどの観念を生じるものであって、請求に係る商品の分野においては、「大正」の文字に比して、看者に強い印象を与える文字とはいえない。 また、引用商標の構成中の「製薬」の文字も、「医薬品を製造すること。製造した薬剤。」(広辞苑第七版)の意味を有する広く知られた文字であって、請求人の製造に係る薬剤との関係においては「大正」の文字に比して、看者に強い印象を与える文字とはいえない。 そうすると、本件商標と引用商標とは、共通する「大正」の文字部分において、看者に強い印象を与えるものであるから、両者は一定程度の類似性を有するものといえる。 5 出所の混同のおそれ 前記4のとおり本件商標と引用商標とは看者に強い印象を与える「大正」の文字部分が共通することから、一定程度の類似性を有するものといえるところ、前記1(6)のとおり、当該「大正」の文字は、請求人が中核企業となる、大正製薬グループに属する企業のうち、半数近くを占める18社において、企業の名称に有している文字である。 また、前記1(7)のとおり、請求人商品には、名称に「大正」の文字を冠した商品(OTC医療薬を含む薬剤、栄養補助食品(サプリメント)等)が多数存在する。 さらに、前記4のとおり、本件商標の構成中の「薬研」の文字からは「薬の研究」ほどの観念が生じるところ、前記1(8)のとおり、請求人は薬剤等の研究開発を行っている。 そして、引用商標が、請求人の業務に係る薬剤(OTC医療薬)を表す商標として、我が国の需要者の間に広く認識されていること及び請求に係る商品と引用商標が周知に至った薬剤(OTC医療薬)との関連性の程度が高く、需要者の共通性も合わせ考慮すると、請求に係る商品に本件商標を使用したときには、これに接する需要者、取引者は、本件商標と引用商標に共通の文字である「大正」の文字をとらえて、当該商品が請求人又は請求人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係若しくは同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれがあるものといわざるを得ない。 したがって、本件商標は、その指定商品中、請求に係る商品について商標法第4条第1項第15号に該当する。 5 むすび 以上のとおり、本件商標は、その指定商品中、請求に係る商品について商標法第4条第1項第15号に該当するものであり、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その指定商品中、結論掲記の指定商品についての登録を無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-890095

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