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商標無効審判

2022-890081

カナデルビヨーエキ、カナデル

審判番号
2022-890081
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2019-159164
登録番号
6417303
請求日
2022年10月11日
審決日
2024年10月29日
公報発行日
2025年03月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】プレミアアンチエイジング 株式会社
  • 【請求人代理人】佐藤 大輔
  • 【請求人代理人】藤本 正紀
  • 【請求人代理人】橘 哲男
  • 【被請求人】ミライラボバイオサイエンス 株式会社
  • 【被請求人代理人】嶋崎 英一郎
審判長/審判官
  • 審判長 大森 友子
  • 審判官 清川 恵子
  • 審判官 白鳥 幹周
分類
T111 .22 -Y (W03) / T111 .25 -Y (W03) / T111 .261-Y (W03) / T111 .262-Y (W03) / T111 .263-Y (W03) / T111 .271-Y (W03)
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第15号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第6417303号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6417303号商標(以下「本件商標」という。)は、「奏でる美容液」の文字を書してなり、令和元年12月4日に登録出願、第3類「美容液,美容液を含浸させた美容用パック」を指定商品として、同3年6月7日に登録査定、同年7月16日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして、引用する登録商標は以下(1)ないし(3)のとおりであり、いずれも、現に有効に存続しているものである(以下、これら3件をまとめていうときは「引用商標」という。)。 1 登録第6227239号(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成31年3月5日に登録出願、第3類「口臭用消臭剤,動物用防臭剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料」を指定商品として、令和2年2月18日に設定登録されたものである。 2 登録第6227240号(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成31年3月5日に登録出願、第3類「口臭用消臭剤,動物用防臭剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料」を指定商品として、令和2年2月18日に設定登録されたものである。 3 登録第6227241号(以下「引用商標3」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成31年3月5日に登録出願、第3類「口臭用消臭剤,動物用防臭剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料」を指定商品として、令和2年2月18日に設定登録されたものである。 第3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第43号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するから、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。 2 商標法第4条第1項第11号該当性 (1)本件商標の要部が「奏でる」の文字部分であること 本件商標は「舞を舞う。楽器を鳴らして音楽を演奏する。」(甲13)の意味を有する「奏でる」の文字部分と「美白、しわの防止や改善、にきび防止、皮膚賦活など明確な機能を備えている付加価値の高い化粧品」(甲14)の意味を有する「美容液」の文字部分とからなる結合商標である。 この点、本件商標構成中の「美容液」の文字部分は、本件指定商品第3類「美容液」そのものを表示するものであり、当該指定商品との関係では普通名称に該当することは明らかである。さらに、同じく第3類「美容液を含浸させた美容用パック」に至っても、前記指定商品は「パック状の美容液」と実質的に同義であるからやはり普通名称に該当するものといい得る。 そのため、本件商標構成中の「美容液」の文字部分は自他商品の識別力が極めて弱いか、又は、完全に欠如するといって差し支えなく、もはや出所識別標識として機能しない文字部分である。 そうすると、本件商標の要部は必然的に「奏でる」の文字部分となり、当該文字部分が、取引者、需要者に対して商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分となるものといわなければならない。 したがって、本件商標の「奏でる」の文字部分と「美容液」の文字部分とが、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとは認められず、本件商標から「奏でる」の文字部分を要部として観察することは当然に許されるものである。 (2)本件商標と引用商標とが称呼上相紛らわしいこと このように、本件商標の要部は「奏でる」の文字部分であることからすると、本件商標よりは「カナデル」の称呼が生じる。これに対して、引用商標1よりも「カナデル」の称呼が生じ、さらに、引用商標2及び3の要部は各々上段に大書された「CANADEL」の文字部分であるから、引用商標2及び3よりも「カナデル」の称呼が生ずる。 そうすると、本件商標と引用商標とは「カナデル」の称呼において共通するため、これらの商標は称呼上相紛らわしいものとなる。 その結果、本件商標と引用商標とは、互いに類似する関係にあるものといわなければならない。 (3)裁判例について 請求人の主張が妥当であることは、裁判例が多数存在することからも首肯できる(甲15~甲19)。これらの裁判例は、いずれも「○○○○+商品等の普通名称」からなる商標Aと「○○○○」からなる商標Bとの類否について互いに類似すると判断されたものであり、請求人の主張に沿うものである。 (4)被請求人側からの予想される反論 ア 被請求人側より、引用商標よりは「カナデル」の称呼が生ずるところ、そのアクセントは頭音の「カ」の部分に位置し、これに対して、本件商標より生ずる「カナデル」の称呼においては、そのアクセントが語頭部分には位置せず、このアクセントの位置が相違することを理由に、これらの商標は称呼上非類似である、との反論が予想される。 しかし、必ずしも引用商標の称呼のアクセントが語頭部分であるとはいえず、請求人に係る商品に接する取引者、需要者の間でアクセントの位置が浸透、定着しているとはいい難い。そのため、本件商標と引用商標とは「カナデル」の称呼においては共通し、依然として称呼上相紛らわしいものである。 イ また、仮に本件商標と引用商標のアクセントの位置が異なるとしても、簡易迅速を尊ぶ現実の取引においては一音一音区切って「カ」「ナ」「デ」「ル」と明瞭に発音する余地はなく、多少のアクセントは伴うことがあったとしても「カナデル」と平坦に称呼するのが取引の実情である。このような取引の実情に鑑みれば、アクセントの位置が称呼全体に与える影響は微弱なものであり、類否判断の際に特段考慮すべき事由ではない。 したがって、本件商標と引用商標とは「カナデル」の称呼においては共通し、称呼上相紛らわしいものといわなければならない。 (5)小括 以上に述べたとおり、本件商標と引用商標とは「カナデル」の称呼において共通するため、これらの商標は称呼上相紛らわしいものである。 この点、本件商標と引用商標とはその外観において相違し、観念については引用商標が造語であることから比較すべくもないが、外観上の差異が称呼の共通性、類似性を凌駕するものではない。また、本件指定商品と引用指定商品中の第3類「化粧品」とは、互いに類似する関係にある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 3 商標法第4条第1項第10号該当性 (1)引用商標が請求人の企画販売に係る製品を表示するものとして周知・著名性を獲得している点 引用商標は、請求人の企画販売に係る製品(以下、引用商標に係る製品を「請求人商品」という。)シリーズを表示するものとして、本件商標の出願時及び査定時の両時において、既に周知・著名性を獲得しており、その周知・著名性は現在においても継続するものである。 ア 請求人について 請求人は、平成21年(2009年)12月に設立され、化粧品・健康食品の開発・企画販売等を業とするものであり(甲20)、請求人商品シリーズの他にも、具体的には、エイジングケアブランド「DUO(デュオ)」、及び「IMMUNO」など複数の自社ブランド製品の開発、輸出入、通信販売、卸売及び小売業務を展開する。その他にもファッションショーやインターネット上の通信販売に力を入れており、これらにトップモデルを登場させるスタイルで売上を伸ばし、2020年にはDUOクレンジングバームシリーズの売上が累計1500万個を突破した実績を持つものである。 さらに、請求人は、その積極的なブランディングプロモーションの一環として著名な俳優やタレントを積極的に起用したTVCMを制作し、そのTVCMは我が国の全国各地の放送局において継続的、かつ、大々的に放送されている。 このような、TVCMや広告掲載などの積極的、かつ、前衛的なブランディングプロモーションの結果、請求人は最終消費者を含む化粧品業界において際立った地位を既に確立しており、今日では周知性はおろか著名性をも優に獲得するものである。 イ 請求人商品「CANADEL」について 数々の請求人の自社ブランド製品の中で、大人世代に向けたエイジングケアブランドとして誕生したのが引用商標を冠した請求人商品「CANADEL」シリーズである。 請求人商品は、平成31年(2019年)4月より販売が開始された化粧用のオールインワンクリームである。主な販売場所は、全国各地の百貨店、スーパー、ドラッグストア、直営店の他、請求人の公式ECサイトなどでも販売されている(甲21)。 ウ 請求人商品はシリーズ製品であること 請求人商品は、顧客の悩み、目的に合わせて使えるように複数の商品により構成されるシリーズ商品となっている(甲22~甲29)。当該シリーズ商品のファミリーネームの位置づけにあるのが「CANADEL(カナデル)」(使用商標)である。 エ 請求人商品が周知・著名性を獲得していること この請求人商品シリーズは、平成31年4月から販売を開始したものであるが、既に相当数の販売本数を誇るものであり、最終消費者や取引者からも高い評判を得ている。そのため、引用商標は、請求人による不断の努力によって現在もなお名声やグッドウィルを形成しつつあり、化粧品業界において、請求人商品シリーズの存在は既に広く知れ渡っている。具体的には、有名な俳優を起用したTVCMを継続的、かつ、大々的に放送している(甲30)。 また、発売当初から近時においても、継続的、かつ、大々的に雑誌やその他のメディアにおいても掲載されていることから(甲31~甲40)、請求人商品は常に注目を浴びる存在であることが認識、理解できる。 さらに、請求人商品は、平成31年(2019年)4月の発売以来着実に売上を伸ばしており、販売開始後3年で年間50億円を上回る売上高を達成している(甲41)。 このように、化粧品業界において非常に高い評価を得ている請求人商品シリーズを冠する引用商標は、少なくとも化粧品業界における取引者、需要者の間においては、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、広く一般に知られており既に周知著名性を優に獲得しているものといわなければならない。 したがって、引用商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の出願時及び査定時の両時において、周知・著名性を獲得しており、その周知・著名性は現在においても継続するものである。 (2)商標及び商品が互いに類似すること 前記2においても述べたように、本件商標と引用商標とは、互いに類似するものであり、また、指定商品についても互いに類似することは明らかである。 (3)小括 以上より、引用商標は、前記のとおり、請求人の業務に係る商品の分野においては、本件商標の出願時及び査定時の両時において、周知・著名性を獲得しており、さらに、本件商標と引用商標とは、互いに類似するものであり、また、指定商品についても互いに類似することは明らかである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 4 商標法第4条第1項第15号該当性 (1)引用商標が周知・著名性を獲得していること 前記3において述べたとおり、引用商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の出願時及び査定時の両時において、周知・著名性を獲得しており、その周知・著名性は現在においても継続するものである。 (2)本件商標と引用商標が同一又は互いに類似すること 前記2で述べたとおり、本件商標と引用商標とは互いに類似することは明らかである。 (3)小括 以上において述べたとおり、本件商標を被請求人の製造販売に係る製品(以下、「被請求人商品」という。)に使用したときに、被請求人商品が請求人の業務に係るシリーズ商品の一つであると誤信されるおそれがある商標のみならず、被請求人商品が請求人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれがあることはもはや明らかである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 5 商標法第4条第1項第19号該当性 (1)引用商標が周知・著名性を獲得していること 前記3で述べたとおり、引用商標は、請求人商品シリーズを表示するものとして、わが国において周知・著名性を獲得し、その周知・著名性は現在においても継続するものである。 (2)本件商標と引用商標が同一又は互いに類似すること 前記2で述べたとおり、本件商標と引用商標とは互いに類似する関係にあることは既に明らかとなっている。 (3)被請求人が不正の目的を有していること このように、引用商標が周知・著名性を獲得している点、引用商標と本件商標とが互いに類似する点を考慮すれば、被請求人が、請求人及び請求人商品が築き上げた高い評価、名声、さらには、グッドウィルにフリーライドする意思があることは明らかである。 すなわち、請求人が請求人商品の販売を開始してから3年の月日が経過する間、請求人が所在する地と近隣の地域に位置する被請求人が、請求人商品に関する高い評価、名声、さらには、グッドウィルを一度も聞いたことがなく、また、目の当たりにしたこともないなどということは、現実の商取引においては到底想定し難い。 むしろ被請求人が、請求人商品の高い評価、名声、グッドウィルを、被請求人自身が企画販売する商品に利用する意思、すなわち、引用商標の周知著名性にフリーライドする意思をもっており、不当な利益を得る目的で本件商標を登録出願したものと理解するのが自然であり、また相当である。そのため、被請求人は、本件商標の登録出願時に「不正の目的」があったものといわなければならない。 (4)小括 以上より、本件商標は、既に周知著名性を獲得した引用商標と同一又は少なくとも互いに類似する商標であって、不正の目的をもって使用するものであることは明らかである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 6 商標法第4条第1項第7号該当性 (1)被請求人は登録出願時に悪意があったこと 引用商標は、本件商標の登録出願時である令和元年12月当時には、既に周知著名性を獲得したものといえ、その周知著名性は現在まで継続している。そのため、引用商標は、我が国の一般的な取引者、需要者の間で広く認知され、深く浸透しているものといえる。それゆえ、被請求人においても、我が国において周知著名性を獲得した引用商標を十分に認識し得たものである。被請求人のみが引用商標を知り得ないとする特別な事情は存在しない。 このように、被請求人が、引用商標の存在を十分に認識し得る状況下において、被請求人は、引用商標と互いに類似する本件商標について登録出願を行っている。そうすると、被請求人は、少なくとも本件商標の登録出願時には悪意があったものと容易に推認し得る。 (2)本件商標が剰窃的な出願であること さらに、前記2のように、本件商標と引用商標とは互いに類似するものであるところ、被請求人が本件商標を採択する必然的、かつ、合理的な理由が見出だせないことからすれば、被請求人が本件商標の採択において偶然に一致したとするのは、極めて不自然であるものといわなければならない。そのため、被請求人は、前記意思を持って劉窃的に本件商標を登録出願し、請求人に無断で登録を得たものと考えざるを得ない。 (3)小括 以上より、本件商標は、登録に至る出願の経緯において著しく社会的妥当性を欠くものであり、この登録を認めることは、商標法の予定する秩序を害するおそれがあることは明らかである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 第4 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を審判事件答弁書において、要旨次のように述べた。 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標は、その構成文字に相応して「カナデルビヨウエキ」の称呼が生じる。 (2)他方、引用商標1は、「CANADEL」の欧文字と「カナデル」の片仮名を二段併記してなるものであり、その構成文字に相応して「カナデル」の称呼が生じる。 引用商標2は、「CANADEL」の欧文字と「PREMIER WHITE」の欧文字を二段併記してなるものであるところ、「CANADEL」の語は「PREMIER WHITE」の語と比較してひときわ大きく表示されており、また、両者を一体として捉えるべき特別な事情もないことから、「カナデル」の称呼が生じる。 引用商標3は、「CANADEL」の欧文字と「PREMIER LIFT」の欧文字を二段併記してなるものであるところ、「CANADEL」の語は「PREMIER LIFT」の語と比較してひときわ大きく表示されており、また、両者を一体として捉えるべき特別な事情もないことから、「カナデル」の称呼が生じる。 (3)本件商標と引用商標とを比較すると、まず、称呼においては、本件商標より生ずる「カナデルビヨウエキ」の称呼と、引用商標より生ずる「カナデル」の称呼は、本件商標の称呼の後半部分における「ビヨウエキ」の音の有無という明確な差を有するものであるから、それぞれを称呼するときは、明瞭に聴別し得るものである。 次に、観念においては、本件商標からは「奏でる」(1.楽器、特に管弦楽器を演奏する、2.舞をまう(「goo辞書」より))、及び「美容液」の観念を想起し得るものであるのに対し、引用商標からは特別な観念は生じないから、両商標は、観念上相紛れるおそれのないものである。 また、外観においては、「美容液」の文字の有無に加え、本件商標は漢字と平仮名で構成されているのに対し、引用商標は欧文字で構成されているという明らかな差異があることから、外観上、判然と区別し得るものである。 したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標である。 (4)ここで、本件商標の構成上の一体性について言及すると、本件商標は、同書、同大、同間隔で、外観上、まとまりよく一体的に構成されており、また、本件商標の全体を一体に「カナデルビヨウエキ」と称呼しても冗長ではなく、十分によどみなく一連に称呼することができることから、外観及び称呼上の強い一体性が認められる。 したがって、本件商標は、その構成文字全体をもって一体不可分のものとして認識し把握されるとみるのが自然である。 仮に本件商標から「美容液」の文字を捨象した「奏でる」の部分のみに着目したとしても、「奏でる」と「CANADEL」は、外観、称呼、観念のいずれにおいても相違する。「奏でる」を称呼するときは、「カナデル」の「デ」の音が高いため、アクセントは「低高」となるのに対し、「CANADEL」の場合は、「カナデル」の「カ」の音が高いため、アクセントは「高低」となる。よって、アクセントの位置は、前者は後半部分、後者は前半部分にあるから、両者はアクセントの位置が真逆の関係にある。そして、アクセントが単語を弁別する上で重要な役割を果たしていることは論ずるまでもなく、そのことは日本語の「柿、牡蠣」、「橋、箸」等の例からも明らかである。このように、「奏でる」と「CANADEL」は、明瞭に聴別し得るものであり、称呼において相紛れるものであるとはいえない。また、外観及び観念については、「奏でる」と「CANADEL」が相違することは明らかである。 したがって、外観、称呼、観念について総合的に判断すると、両者は非類似である。 (5)なお、この点について、請求人は、「○○○○+商品等の普通名称」からなる商標Aと「○○○○」からなる商標Bとが互いに類似すると判断された裁判例が多数存在するとして、5つの当該裁判例を提示し、それにより本件商標と引用商標とが互いに類似するものではないと判断する合理的な理由はない旨の主張を行っている。 しかしながら、そもそも本件商標は「CANADEL美容液」ではなく「奏でる美容液」であり、「CANADEL」の語は本件商標には存在していないのであるから、本件商標と引用商標との関係は、上記の「○○○○+商品等の普通名称」からなる商標Aと「○○○○」からなる商標Bとの関係に相当するものではない。また、商標Aと商標Bが互いに類似すると判断された裁判例が多数存在することの根拠として、わずか5つの裁判例を提示し、それにより商標Aと商標Bが類似することは、あたかも一般的であるかのように述べた上で、本件商標と引用商標の類似性を主張することは、根拠の薄い誇張に基づく詭弁であると言わざるを得ない。 (6)小括 以上のとおり、本件商標は、引用商標とは類似する商標ではないから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とを比較するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第10号該当性について 上記1で述べたように、本件商標と引用商標とは非類似であることから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 3 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について 上記1で述べたように、本件商標と引用商標とは非類似であることから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について 上記1で述べたように、本件商標と引用商標とは非類似であることから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 5 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について 本件商標は、「CANADEL」と同一文字構成を使用しておらず、また、上記1で述べたように、本件商標と引用商標とは非類似であることから、引用商標の剽窃的な出願に係る商標ではない。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 6 その他 本件審判と類似した異議申立ての事例として、過去に異議2021-900359がある。この事例は、請求人によって、本件審判と同一の引用商標に基づいて異議申立てがなされたものであり、最終判断として、本件商標と引用商標は非類似の商標である、として本件商標が維持された事例である。かかる前例からして、本件審判も認められるべきでないことは明らかである。 第5 当審の判断 請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係の有無については、当事者間に争いがなく、また、当審は請求人が本件審判の請求について利害関係を有するものと認める。 以下、本案に入って審理する。 1 引用商標の周知性について (1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次のとおりである。 ア 請求人は、平成21年(2009年)12月に設立され、化粧品・健康食品の企画・開発、販売等を業とするものである(甲20)。 イ 請求人商品「CANADEL」シリーズは、化粧用のオールインワンクリームをはじめとする化粧品であり、平成31年(2019年)4月から販売が開始され、主な販売場所は、全国各地の百貨店、スーパー、ドラッグストア、直営店の他、請求人の公式ECサイトなどである(請求人主張、甲21、甲35~甲40)。 ウ 請求人商品は、発売当初から近時においても、有名俳優を起用したTVCMを放映し(甲30)、雑誌やウェブサイトにおいても掲載されているところ、当該雑誌の掲載日は全て本件商標の登録出願よりも後であり、ウェブサイトでの掲載は、全て請求人商品が2019年4月8日に発売されたことの広告である(甲31~甲40)。 エ 請求人にかかる2022年7月期決算短信(2022年9月13日付け、甲41)には、4葉目の「1 経営成績等の概況」の中に「「カナデル」ブランドは・・・発売後3年で年間売上高50億円」との記載がある。 (2)上記(1)によれば、その周知性については、以下のとおりである。 ア 引用商標(書体や色彩の異なるものを含む。以下同じ。)を付した請求人商品は、2019年4月から、請求人の公式ECサイトなどで発売されていることはうかがえる。 そして、請求人は、請求人商品のTVCMを制作し、放映していることはうかがえるが、具体的な放映地域及び回数などの詳細は明らかではなく、雑誌の掲載は全て本件商標出願時より後である。 また、ウェブサイトでの掲載は、全て請求人商品が2019年4月8日に発売されたことの広告であるから、当該日に請求人商品が発売されたことは認められるものの、これらをもって、引用商標の周知性を認めることはできない。 イ 請求人商品の売上額として「「カナデル」ブランドは・・・発売後3年で年間売上高50億円」との記載はあるものの、当該書証は、本件商標の登録出願日及び登録査定日より後のものである。 そして、他に、引用商標を付した請求人商品の我が国における販売数、シェア等の販売実績、広告宣伝の全体的な状況を具体的客観的に示す主張はなく、その証左は見いだせない。 その他、請求人の提出に係る甲各号証を総合してみても、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の取引者、需要者の間で、申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたと認めるに足りる事実は見いだせない。 ウ したがって、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人又は請求人の業務にかかる商品を表示するものとして、我が国及び外国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。 2 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標 本件商標は、上記第1のとおり、「奏でる美容液」を標準文字で表してなるものである。そして、本件商標構成中「奏でる」の文字は、「楽器、特に管楽器を演奏する。舞をまう。」を意味する語として、「美容液」の文字は、「肌の調子をととのえるために用いる基礎化粧品の一。」を意味する語として(以上「大辞泉 第2版」小学館)、それぞれ一般に広く知られている語であるから、本件商標は、「奏でる」の文字と「美容液」の文字を結合した商標であると認識することができるものである。 そして、それぞれ上記意味を有する「奏でる」「美容液」の文字は一体となって何らかの意味を表すものではないから、当該「奏でる美容液」の文字全体として、一種の造語と理解されるものである。 また、上記意味を有する「美容液」は、本件商標の指定商品が、いずれも「美容液」に関するものであるから、指定商品との関係では、指定商品の商品名を意味するものと捉えられ、その識別力は弱いものといえる。 他方、上記意味を有する「奏でる」の文字は、指定商品との関係で、特段、商品の品質等を表示するものではなく、自他商品の識別力の強い文字といえるから、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として、強く支配的な印象を与えるというべきである。 そうすると、本件商標の「奏でる」の文字部分と「美容液」の文字部分とを、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとは認められず、本件商標から「奏でる」の文字部分を要部として抽出することが許されるというべきである。 そうすると、本件商標からは、その構成文字全体から「カナデルビヨウエキ」の称呼が生じ、観念は生じないという他に、本件商標の要部である「奏でる」の文字(以下「本件商標の要部」という場合がある。)に相応して、単に「カナデル」の称呼及び「楽器、特に管楽器を演奏する。」等の観念を生じるものである。 (2)引用商標 ア 引用商標1は、別掲1のとおり、「CANADEL」の欧文字と「カナデル」の片仮名を2段に横書きしてなるところ、その片仮名部分は欧文字部分の読み仮名に相当すると容易に理解できるものであるものの、当該文字は辞書等に掲載された成語ではない。 したがって、引用商標1は、その構成文字に相応して、「カナデル」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。 イ 引用商標2及び引用商標3 引用商標2及び引用商標3は、別掲2及び別掲3のとおり、「CANADEL」の欧文字を上段に大きく横書きし、その下段に「PREMIER WHITE」又は「PREMIER LIFT」の欧文字を小さく横書きしてなるものである。そして、上段の「CANADEL」の文字部分は、大きく目立つ態様で表され、視覚上、看者に強い印象を与えるものであるから、要部として独立して自他商品の識別標識としての機能を有するといえる。 そうすると、引用商標2及び引用商標3は、「CANADEL」の文字部分(以下、「引用商標2及び引用商標3の要部」という場合がある。)から、「カナデル」の称呼を生じ、上記アと同様に、特定の観念は生じない。 (3)本件商標と引用商標の類否 ア 本件商標と引用商標1を比較すると、上記のとおり、外観においては、両者は、平仮名及び漢字と欧文字及び片仮名とからなるものであるから、構成態様が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。また、本件商標の要部と引用商標1との比較においても、同様に、両者は、平仮名及び漢字と欧文字及び片仮名とからなるものであるから、構成態様が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。 次に、称呼については、本件商標から生じる称呼と引用商標1から生じる称呼は、語尾の構成音又はその有無において差異があるから、聴別は容易である。 また、本件商標の要部と引用商標1との比較においては、「カナデル」の称呼を同一にするものである。 さらに、観念については、本件商標は全体として造語といえるから観念は生じないし、引用商標1も観念を生じないものであるから、観念において比較できない。 また、本件商標の要部と引用商標1との比較においては、本件商標の要部からは「楽器、特に管楽器を演奏する。」等の観念を生じるものであるから、観念を生じない引用商標1とは、観念において相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。 そうすると、本件商標と引用商標1は、「カナデル」の称呼を共通にする場合があるとしても、外観において相紛れるおそれはなく、観念においては比較できない又は相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。 イ 本件商標と引用商標2及び引用商標3を比較すると、上記のとおり、外観においては、両者はそれぞれ、平仮名及び漢字と欧文字からなるものであるから、構成態様が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。 また、本件商標の要部と引用商標2及び引用商標3の要部との比較においても、同様に、両者は、平仮名及び漢字と欧文字からなるものであるから、構成態様が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。 次に、称呼については、本件商標から生じる称呼と引用商標2及び引用商標3の要部から生じる称呼は、語尾の構成音又はその有無において差異があるから、聴別は容易である。 また、本件商標の要部と引用商標2及び引用商標3の要部との比較においては、「カナデル」の称呼を同一にするものである。 さらに、観念については、本件商標は全体として造語といえるから観念は生じないし、引用商標2及び引用商標3の要部も観念を生じないものであるから、観念において比較できない。 また、本件商標の要部と引用商標2及び引用商標3の要部との比較においては、本件商標の要部からは「楽器、特に管楽器を演奏する。」等の観念を生じるものであるから、観念を生じない引用商標2及び引用商標3の要部とは、観念において相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。 そうすると、本件商標と引用商標2及び引用商標3は、「カナデル」の称呼を共通にする場合があるとしても、外観において相紛れるおそれはなく、観念においては比較できない又は相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。 ウ まとめ 以上のとおり、本件商標は、引用商標とは類似する商標ではないから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とを比較するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (4)請求人の主張について 請求人は、本件商標と引用商標とは「カナデル」の称呼を共通するため、これらの商標は称呼上相紛らわしく、外観において相違し、観念については引用商標が造語であることから比較すべくもないが、外観上の差異が称呼の共通性、類似性を凌駕するものではないとして、裁判例などを挙げて主張している(甲15~甲19)。 しかしながら、本件商標と引用商標は、一つの称呼について共通にする場合があるとしても、外観において文字の構成態様が相違すること、観念については比較できないか又は相紛れるおそれがないことからすれば、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれはない非類似の商標というべきである。また、本件商標及び引用商標の指定商品において、取引者、需要者が、専ら商品の称呼のみによって商品を識別し、商品の出所を判別するような実情があるものとは認められず、称呼による識別性が、外観及び観念による識別性を上回るともいえないことから、上記(3)のとおり、本件商標と引用商標は相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。 したがって、請求人のかかる主張は採用できない。 その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。 3 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号該当性について 引用商標は、前記1のとおり、本件商標の登録出願時及び査定時において、請求人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたとは認められず、また、使用商標は引用商標1の欧文字部分並びに引用商標2及び引用商標3の要部と同じつづりからなるものであるから、本件商標と使用商標とは、前記2と同様の理由により、非類似の商標である。 また、請求人は、請求人商品は、平成31年(2019年)4月から発売を開始し、積極的なプロモーションが奏功して、相当数の販売数があり、有名な俳優を起用したTVCMも大々的、継続的に放送している旨述主張しているが、前記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたとは認められないから、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、該商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように連想、想起することはなく、その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するものではない。 4 商標法第4条第1項第19号及び同項第7号について 請求人は、引用商標は請求人商品を表示するものとして我が国において周知著名性を獲得していること及び引用商標と本件商標が類似することを前提として、被請求人が請求人及び請求人商品の高い評価やグッドウィルにフリーライドする意思があることは明らかである旨主張するが、引用商標は、前記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品を表示するものとして我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたとは認められない。また、本件商標と引用商標とは、前記2及び3のとおり、非類似の商標であり、本件商標が、引用商標を連想又は想起させるものではない。 そうすると、本件商標は、引用商標の名声にフリーライドするなど不正の目的をもって使用をするものということはできない。 さらに、本件商標が、その出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号及び同項第7号に該当するものとはいえない。 5 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第10号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-890081

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