商標無効審判
2022-890080
アクネスラボ、アクネズラボ、ラボ
- 審判番号
- 2022-890080
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2021-136470
- 登録番号
- 6540403
- 請求日
- 2022年10月07日
- 審決日
- 2023年08月22日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 アクネスラボ
- 【請求人代理人】松崎 隆
- 【被請求人】ロート製薬 株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 和行
- 審判官 小俣 克巳
- 審判官 石塚 利恵
- 分類
- T111 .251-ZC (W030544) / T111 .252-ZC (W030544) / T111 .253-ZC (W030544) / T111 .23 -ZC (W030544) / T111 .261-ZC (W030544) / T111 .262-ZC (W030544) / T111 .263-ZC (W030544) / T111 .18 -ZC (W030544)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項10号商標法46条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第10号、商標法第3条第1項、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第8号、商標法第4条、商標法第4条第1項第15号、商標法第3条、商標法第46条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6540403号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第6540403号商標の指定商品及び指定役務中、第3類「せっけん類」についての登録を無効とする。
その余の指定商品及び指定役務についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6540403号商標(以下「本件商標」という。)は、「Acnes Labo」の文字と「アクネスラボ」の文字とを上下二段に横書きしてなり、令和3年11月2日に登録出願、第3類「洗濯用漂白剤,口臭用消臭剤,動物用防臭剤,せっけん類,歯磨き,香料,薫料」、第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。),衛生マスク,ばんそうこう,乳幼児用粉乳,サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,乳幼児用飲料,乳幼児用食品,栄養補助用飼料添加物(薬剤に属するものを除く。)」及び第44類「健康に関する指導・助言・情報の提供,美容・理容,入浴施設の提供,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり,リフレクソロジー,巻爪矯正,医療情報の提供,健康診断,栄養の指導」を指定商品及び指定役務として、同4年3月16日に登録査定され、同年4月1日に設定登録されたものである。
第2 使用商標及び引用商標
1 請求人が、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するとして引用する商標は、「アクネスラボ」又は「ACNES LABO」の文字からなり(以下、これらをまとめて「使用商標」という場合がある。)、同人が化粧品等について使用し需要者の間に広く認識されているとするものである。
2 請求人が、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、以下のとおりであり、現に有効に存続しているものである。
登録第4791971号商標(以下「引用商標」という。)
商標の構成:「アクネスラボ」の片仮名と「ACNES LABO」の欧文字を上下二段に表してなるもの
登録出願日:平成15年7月10日
設定登録日:平成16年8月6日
指定商品 :第3類「化粧品」、第21類「化粧用具」及び第42類「化粧品の試験・検査又は研究」
第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標の登録は、商標法第3条第1項柱書の要件を満たさず、同法第4条第1項第8号、同第10号、同第11号及び同第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきである。
2 具体的な理由
(1)本件商標が商標法第3条第1項柱書の要件を満たさないことについて
ア 本件商標の出願の経緯及び先行登録商標との関係について
被請求人は、本件商標の出願時点において、本件商標と同一の商品及び役務を指定し、本件商標と類似の商標(以下「先行登録商標」という。)の商標登録を有していた。先行登録商標は、「Acnes Labo」の欧文字及び「アクネスラボ」の片仮名を二段併記してなる商標であり、明朝体様の書体により表される商標である(登録番号:第6151409号、登録日:2019年6月14日、甲2)。
同一人が、同一の指定商品又は指定役務に係る同一の商標又は標章を出願した場合には、本来的に商標法第3条の趣旨に反するとして拒絶されるものであるが、本件商標と先行登録商標とは書体の差異があるために、同条の拒絶理由を指摘されることなく登録となったものと思料する。
イ 被請求人が本件商標について使用意思がないことについて
請求人が調査した限り、先行登録商標の登録日より現在に至るまで、被請求人が本件商標及び先行登録商標をその指定商品等に使用している事実はない。よって、被請求人は先行登録商標のみならず本件商標についても使用する意思がなく、商標法第3条第1項柱書の要件を満たさない。
なお、請求人は、先行登録商標について不使用取消審判(取消2022-300568)を別途請求している(審決注:当該審判請求については、商標登録原簿の記載によれば、令和4年12月12日に先行登録商標の商標登録を取り消すべき旨の審決が確定し、同5年1月10日にその商標権の登録を抹消する旨の登録がされた。)ところ、本件商標は先行登録商標と同一の商品及び役務を指定するものであり、先行登録商標との差異がその書体であるという点から鑑みると、第三者による不使用取消審判による先行登録商標の取消があっても、同様の商標権を存続させるために本件商標が出願された可能性がある。先行登録商標の登録日より3年経過時点において登録日が設定されるようなタイミングで出願している点も同様の商標権を存続させるために出願したと推察させるものである。
このような使用意思のない出願人による不使用取消審判に備えた類似商標の継続的な出願及び権利化のサイクルは、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標について商標登録を受けることができる」とする商標法第3条柱書に反する行為である。
(2)本件商標が商標法第4条第1項第8号に該当することについて
ア 「アクネスラボ」が請求人の略称として著名であることについて
(ア)請求人について
請求人は、ホルモン療法によるニキビ治療の第一人者の医師(甲3、甲4)の監修のもと、ニキビに効果のある化粧品を開発し、現在にわたり主にニキビに効果のある化粧品等の製造・販売を行っている。請求人は2003年12月3日に会社を設立し、この業界におけるニキビ対策化粧品の第一人者の地位を築き現在に至っている。
株式会社富士経済による「機能性マーケティング要覧2021-2022」によると、市場におけるアクネ対応スキンケアの2020年次の販売金額は314億円である(甲5)。これに対し、2020年1月1日~2020年12月31日の期間中に請求人がそのハウスマークである「アクネスラボ」や、その欧文字表記である「ACNES LABO」を付して製造・販売した化粧品関連商品全ての売上数量は約110万個であり、売上高が約13億円となるため、請求人のシェアは全体の約4%に及ぶと推定される。なお請求人がそのハウスマークである「アクネスラボ」や、その欧文字表記である「ACNES LABO」を付して製造・販売する大人向け商品の売上高は約11億2千万円であり、甲第5号証の<大人向け;メーカーシェア>の2020年次の表と比較すると約20位のメーカーと同等の販売実績を示し、また思春期向けの商品の売上高は約1億8千万円であり、甲第5号証の<10代向け;メーカーシェア>の2020年次の表と比較すると約5位のメーカーと同等以上の販売実績を示す。
(イ)請求人による広告・宣伝活動について
請求人は、会社設立以来多数のメディアにて長年にわたり広告・宣伝活動を行っており、その略称である「アクネスラボ」は、請求人が製造・販売する商品とともに全国誌や地方誌、カタログ等において長年にわたり多数掲載されていることから、請求人を指し示すものとして一般に受け入れられている(甲7)。なお、掲載雑誌のうち、例えばVoce、REAL SIMPLE、Health(日経ヘルス編)などは全国誌であり、またViViやフラウは2011年から、ananは2015年から、電子版として全国的な提供が開始されている(甲8の1、甲8の2)。
また、請求人の略称である「アクネスラボ」又は「ACNES LABO」は、請求人が製造・販売する商品とともに多数の媒体を通したCMで広告・宣伝されていた。例えば、2010年~2015年の間、全国約4,000店舗のドラッグストア店内で繰り返し放映していたコマーシャル動画(甲9の1)、KBC九州朝日放送の深夜番組「Duomo(ドォーモ)」で2010年6月頃に放映された映像(甲9の2)がある。また、Kis-My-Ft2のF氏が登場するテレビCMが2017年10月5日(木)より全国で順次OAされ(甲9の3)、当該テレビCMに加えて、地下通路等における大型交通広告やTVパブリシティヘの掲出などのプロモーション活動を行った(甲9の12)。アクネスラボの美白クリーム及びポイントパッチに関するウェブCM(甲9の4)は、2020年4月から繰り返し放送されていた。アクネスラボのTwitter公式アカウントには、1万人以上のフォロワーがおり(甲9の5)、アクネスラボのInstagram公式アカウントには、1万人以上のフォロワーがいる(甲9の6)。また、TNCテレビ西日本の公式YouTubeチャンネル等においてアクネスラボの商品が紹介され、それぞれの動画が約3万回又は約30万回再生された(甲9の7~甲9の11)。
(ウ)請求人による使用商標の使用について
請求人は、2004年7月以来、多数の化粧品等に対して使用商標を使用して製造・販売しており、これらの商品は、自社ブランド商品及びドラッグストア向け商品を合わせて100以上にものぼる。
請求人は、使用商標が付された化粧品等の商品(甲10の1)について、2004年7月から2022年6月10日の期間において自社ブランド商品を約170万個、ドラッグストア向け商品を約460万個、合計約630万個の販売実績を有しており、売上金額の合計は約37億円となる。
請求人は、使用商標を付したドラッグストア向け化粧品を全国的に販売しており(甲10の2)、現在も全国的な実店舗における販売を継続している(甲10の3、甲10の4)。また自社ブランド商品についても、首都圏を中心に大阪、広島で販売している(甲10の5)。
さらに請求人は、使用商標を付した化粧品等の商品を、大手通販サイトを通じて全国的に販売している(甲10の6~甲10の12)。
また、2011年@cosmeベストコスメ大賞において、「アクネスラボRジェルパック(炭酸ガスパック)」が、角質ケア・マッサージ部門で年間1位を獲得した(甲12の1)。さらに「アクネスラボ薬用クリーム」が、クリーム部門で年間2位を獲得した(甲12の2)。請求人が製造・販売する「夜用ポイントパッチ」は、@cosmeの2020年6月1日~2020年8月31日の集計期間において「その他スキンケアグッズ」の部門で3位にランキングしている(甲12の4)。
請求人が製造・販売する「アクネスラボ 薬用スポッツクリーム」は、雑誌seventeenのJKベストコスメ大賞2020においてニキビスペシャルケア部門で1位を獲得した(甲12の5)。
イ 本件商標が請求人の著名な略称である「アクネスラボ」を含むことについて
本件商標は、「Acnes Labo」の欧文字及び「アクネスラボ」の片仮名を二段併記してなる商標であるから、請求人の著名な略称である「アクネスラボ」を含むものである。
ウ 小括
上述のように、請求人は、会社設立以来現在に至るまで、長年にわたり化粧品の製造及び全国的な販売を継続しており、当該化粧品は上記受賞歴にも示されるように需要者に広く支持されているものである。加えて、請求人は多数のメディア等を介して全国的に広告・宣伝活動を行っており、その略称である「アクネスラボ」は請求人を指し示すものとして一般に受け入れられている。
したがって、本件商標は、請求人の著名な略称である「アクネスラボ」を含むものであり、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(3)本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当することについて
ア 使用商標の周知・著名性について
上述のとおり、請求人は長年にわたり使用商標が付された化粧品等を製造・販売しており、また多数のメディアを通して広告・宣伝活動を行ってきた。使用商標は、請求人の製造・販売する化粧品等を表示するものとして、本件商標の出願時点において需要者の間に広く認識されていた。
イ 使用商標と同一又は類似する標章の使用の有無及び使用状況
使用商標は、いずれの辞書等にも掲載のない、請求人により創作された造語である。検索サイトgoogleにおいて、「アクネスラボ」又は「ACNES LABO」のキーワードを完全一致で検索しても請求人の商品に関する頁しか表示されず、請求人が調査した限り、使用商標と同一又は類似する標章の使用を確認することができない。
ウ 本件商標と使用商標とが類似することについて
本件商標の構成中の片仮名は、欧文字の称呼を表示するものとして看取され、本件商標からは「アクネスラボ」の称呼が生じる。また本件商標からは「ニキビに関する研究所」程の観念を想起させる。
一方、使用商標からも「アクネスラボ」の称呼が生じ、「ニキビに関する研究所」程の観念を想起させる。
本件商標と請求人が使用してきた「アクネスラボ」の商標とを外観において比較すると、欧文字表記の有無において相違し、本件商標と請求人が使用してきた「ACNES LABO」の商標とを外観において比較すると、欧文字が大文字表記であるか小文字表記であるかにおいて相違し、また片仮名表記の有無において相違する。
本件商標と使用商標とは外観において上記相違点を有するが、当該相違点は互いの商標が需要者に混同を生じるおそれがない程度に異なる印象を与えるといえるほどのものではなく、称呼及び観念において一致しており商標は類似する。
エ 指定商品の類似について
(ア)本件商標の第3類「せっけん類」について
本件商標の指定商品中、第3類「せっけん類」に相当する「身体用石けん」と、請求人が製造・販売する「化粧品」とは、商品の製造・販売が同一事業者によって行われている事情があり、さらにそれらの用途、販売部門、及び需要者が一致する。
「化粧品」は「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう」と定義される。ここで「身体用石けん」は、まさに人の身体を清潔にし、皮膚を健やかに保つために身体に塗布して使用されるものであり用途が一致する。
また、販売部門及び需要者が一致することを示す具体例として、「身体用石けん」と「化粧品」の両方の商品とが同一事業者により、同一ブランドとして販売されており、さらに当該ブランドに関するウェブサイトにおいて共に販売されていること、及び実店舗において「身体用石けん」と「化粧品」の両方の商品とが同一ブランドとしてひとまとまりに並列して陳列され、販売されていることが挙げられる(甲13の1~甲13の37)。
さらに「身体用石けん」と「化粧品」の需要者は共に一般消費者であって、その範囲は共通する。
このように同一ブランドとして「身体用石けん」と「化粧品」とが販売されている状況下において、請求人の商標として周知・著名性を有する使用商標が、「石けん」に対して使用された場合、需要者は請求人の商品であると認識するのであり、出所の混同が生じる。特に、近年のEC市場拡大(甲13の38)の事情を鑑みると、各ブランドに関する通販サイト上で出所の混同が生じるおそれについては軽視することはできない。
なお上記では、「身体用石けん」と「化粧品」とが商品として類似することを述べたが、「身体用石けん」を第3類「せっけん類」に包含される「化粧せっけん」と読み替えることもできる。
このように、本件商標が指定する第3類「せっけん類」と請求人が製造・販売する化粧品との間に、同一又は類似の商標を使用すると同一営業主の製造・販売に係る商品と誤認されるおそれがある。
よって、本件商標が指定する第3類「せっけん類」と請求人が製造・販売する「化粧品」とは類似する。
(イ)本件商標の第5類「サプリメント」について
本件商標の指定商品中、第5類「サプリメント」に相当する「美容サプリメント」と、請求人が製造・販売する「化粧品」とは、商品の製造・販売が同一事業者によって行われている事情があり、さらにそれらの用途、販売部門、及び需要者が一致する。
「化粧品」の定義は上記(ア)のとおりであり、「サプリメント」特に「美容サプリメント」は、まさに人の皮膚を健やかに保つために使用される点で用途が一致する。
また、販売部門及び需要者が一致することを示す具体例として、「美容サプリメント」と「化粧品」の両方の商品とが同一事業者により、同一ブランドとして販売されており、さらに当該ブランドに関するウェブサイトにおいて共に販売されていることが挙げられる(甲13の1、甲13の2、甲14)。
さらに、「美容サプリメント」と「化粧品」の需要者は共に一般消費者であって、その範囲は共通する。
このように同一ブランドとして「美容サプリメント」と「化粧品」とが販売されている状況下において、請求人の商標として周知・著名性を有する使用商標が「サプリメント」に対して使用された場合、需要者は請求人の商品であると認識するのであり、出所の混同が生じる。また上述するようにEC市場拡大の事情を鑑みると、各ブランドに関する通販サイト上で出所の混同が生じるおそれについては軽視することはできない。
このように、本件商標が指定する第5類「サプリメント」と請求人が製造・販売する化粧品との間に、同一又は類似の商標を使用すると同一営業主の製造・販売に係る商品と誤認されるおそれがある。
よって、本件商標が指定する第5類「サプリメント」と請求人が製造・販売する「化粧品」とは類似する。
オ 小括
少なくとも本件商標が指定する第3類「せっけん類」及び第5類「サプリメント」については、本件商標は商標法第4条1項第10号に該当する。
(4)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当することについて
本件商標と引用商標とは互いに二段併記の商標であり、片仮名表記が上段にあるか下段にあるか、欧文字表記が全て大文字であるか否かで相違するが、上記外観上の相違点は、両商標が需要者に異なる印象を与えるといえるほどのものではなく、また、上記(3)ウと同様、本件商標と引用商標とは称呼及び観念が一致しているのであり、互いに類似する。
そして、上記(3)エのとおり、本件商標の指定商品中、第3類「せっけん類」及び第5類「サプリメント」については、引用商標の指定商品である第3類「化粧品」と類似する。
よって、少なくとも、本件商標が指定する第3類「せっけん類」及び第5類「サプリメント」については、本件商標は商標法第4条1項第11号に該当する。
(5)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することについて
上記(3)ウのとおり、本件商標と使用商標は類似する。
また、上述のとおり、使用商標は、請求人の製造・販売する化粧品等を表示するものとして、本件商標の出願時点において需要者の間に広く認識されていた。
そして、使用商標は、いずれの辞書等にも掲載のない、請求人により創作された造語であり、高い独創性を有するものである。
さらに、上記(3)エのとおり、本件商標の指定商品中、第3類「せっけん類」及び第5類「サプリメント」については、請求人の製造・販売している「化粧品」と用途や販売する場所、取引者及び需要者が一致し、深い関連性を有する。
よって、本件商標を第3類「せっけん類」及び第5類「サプリメント」に使用した場合には、請求人が製造・販売する化粧品であるかとの出所の混同を生ずるため、商標法第4条1項第15号に該当する。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求に対して、何ら答弁していない。
第5 当審の判断
被請求人は、請求人の主張に対して何ら答弁しておらず、請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係について当事者間に争いがないから、本案について判断する。
1 使用商標の周知性について
(1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
ア 2003年12月に設立された請求人は、ニキビ治療の第一人者の医師(甲3、甲4)の監修のもと、ニキビに効果のある化粧品を開発し、2004年7月以降、使用商標を付した洗顔フォーム、エッセンス、アクネクリーム、ジェルパック等を含むアクネ対応のせっけん類や化粧品(甲9、ほか。以下「使用商品」という。)の製造、販売を行っている。
請求人は、2022年6月24日までに、使用商品を101種類(終売品も含む。)製造、販売したとされ(甲10の1)、それらは京王百貨店や東急ハンズ等における各店舗やドラッグストア(甲10の2~甲10の5)の他、「楽天市場」や「Amazon」等のECサイトを通じて全国的に販売されている(甲10の6~甲10の12)。
そして、株式会社富士経済による「機能性化粧品マーケティング要覧2021-2022」(甲5)によれば、2020年におけるアクネ対応スキンケア市場は314億円であったところ、使用商品の売上高は、2020年は約13億円であり、請求人のシェアは同市場全体の約4%である(請求人の主張)。また、2004年7月ないし2022年6月の期間における使用商品の売上高は、約37億円である(請求人の主張)。
イ 請求人は、2010年ないし2015年の期間に、全国約4,000店舗のドラッグストア店内で、使用商品に係るCM動画を放映していた(請求人の主張)ところ、当該動画において、「アクネスラボ 薬用洗顔フォーム」を含む使用商品が使用方法等とともに紹介された(甲9の1)。
また、2017年10月5日から、タレントのF氏を起用した使用商品に係るテレビCMが全国で順次放送され(甲9の3)、当該テレビCMに加えて、地下通路等における大型交通広告やTVパブリシティヘの掲出などのプロモーション活動も行われた(甲9の12)。2020年4月からは、同F氏のウェブCM(甲9の4)が放送された。
ウ 「Hanako」、「bea’s up」、「FRaU」、「GISELe」、「VoCE」、「日経BPムック 日経ヘルス編」、「GINZA」、「MORE」、「女性セブン」、「an・an」、「Seventeen」、「美的」、「美ST」ほか、2004年10月ないし2021年5月(本件商標の出願前)までの発行に係ると認められる多数の雑誌には、使用商品の紹介記事及び商品の写真が継続的に掲載されている(甲7)。
これらの雑誌では、洗顔フォームをはじめ、エッセンス、アクネクリーム、ジェルパック等の商品について紹介されているところ、当該記事においては、「ACNES LABO」の文字が付された商品のパッケージや商品容器の写真とともに、商品名称として「アクネスラボ」の文字を表示した態様によって、例えば「・・・王子の癒しCMで話題のアクネスラボから「薬用ニキビケアウオッシングフォーム(思春期用)」と「薬用ニキビケアローション(思春期用)」をセットでプレゼント!」などの記載とともに、使用商品が紹介されている。
また、使用商品のうち、「アクネスラボ Rジェルパック」が、「2011年@cosmeベストコスメ大賞」の「角質ケア・マッサージ部門」で第1位を、「アクネスラボ 薬用アクネクリーム」が、同賞の「クリーム部門」で第2位を獲得し(甲12の1、甲12の2)、「アクネスラボ 薬用スポッツクリーム」が、雑誌Seventeenの「JKベストコスメ大賞2020」の「ニキビスペシャルケア部門」で第1位を獲得した(甲12の5、甲7の61)。
さらに、使用商品は、TNCテレビ西日本の公式YouTubeチャンネル等において紹介され(甲9の7~甲9の11)、それぞれの動画が約3万回又は約30万回再生された(請求人の主張)。
(2)以上からすれば、請求人は、本件商標の登録出願前から、使用商標を請求人の製造、販売に係る「せっけん類,化粧品」に使用していること、使用商品を紹介する記事が各種雑誌において継続的に多数掲載されていること、各「ベストコスメ大賞」において使用商品が複数上位にランクインしていること、アクネ対応スキンケア市場における使用商品のシェアが一定割合を占めること、などが認められる。
そうすると、使用商標は、本件商標の登録出願時及び査定時には、請求人の業務に係る使用商品を表示するものとして、アクネ対応商品に関心のある一定の需要者の間に広く認識されていたというのが相当である。
2 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)使用商標の周知性について
上記1のとおり、使用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、請求人の業務に係る使用商品を表示するものとして、アクネ対応商品に関心のある一定の需要者の間に広く認識されていたものである。
(2)本件商標と使用商標の類否について
ア 本件商標は、上記第1のとおり、「Acnes Labo」の文字と「アクネスラボ」の文字とを上下二段に横書きしてなるところ、下段の片仮名は、上段の欧文字の読みを表したと理解されるものであるから、その構成文字に相応して、「アクネスラボ」の称呼を生じるものである。
また、本件商標を構成する上下段の文字は、辞書類に掲載されているものではないものの、「アクネスラボ」又は「ACNES LABO」の文字からなる使用商標が、請求人の業務に係る使用商品を表示するものとして、アクネ対応商品に関心のある一定の需要者の間に広く認識されていることからすると、本件商標は、「請求人(株式会社アクネスラボ)のブランド」としての観念を生じる場合があるものである。
イ 使用商標は、上記第2の1のとおり、「アクネスラボ」又は「ACNES LABO」の文字からなるところ、その構成文字に相応して、それぞれ「アクネスラボ」の称呼を生じ、また、上記アのとおり、これらの文字は、「請求人(株式会社アクネスラボ)のブランド」としての観念を生じる場合があるものである。
ウ 本件商標と使用商標とを比較すると、本件商標の構成中、上段の「Acnes Labo」の文字と、使用商標中「ACNES LABO」の文字は、各単語の語頭以外の文字が大文字で表されているか小文字で表されているかという差異があるものの、つづりを同一とするものであるから、外観上、近似した印象を与えるものである。
また、本件商標の構成中、下段の「アクネスラボ」の文字と、使用商標中「アクネスラボ」の文字は、その構成文字を同一にするものであり、外観上、類似するものである。
そして、両商標は、「アクネスラボ」の称呼を共通にし、「請求人(株式会社アクネスラボ)のブランド」の観念を共通にする場合があるものである。
そうすると、本件商標と使用商標とは、外観において類似又は近似し、称呼を共通にし、観念において共通する場合があるから、両者の外観、称呼及び観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
エ 使用商標に係る使用商品中「洗顔フォーム」は、本件商標の指定商品中の第3類「せっけん類」に包含されるものであるから、両者は同一又は類似の商品である。
オ 以上のとおり、本件商標は、請求人の業務に係る使用商品を表示するものとして、アクネ対応商品に関心のある一定の需要者の間に広く認識されている使用商標と類似する商標であって、その指定商品も使用商標の使用商品に同一又は類似する商品に使用をするものであるから、本件商標の指定商品及び指定役務中、第3類「せっけん類」について、商標法第4条第1項第10号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
使用商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、請求人の業務に係る「せっけん類,化粧品」を表示するものとして、アクネ対応商品に関心のある一定の需要者の間に広く認識されていたものと認められるとしても、提出された証拠からは、それ以外の商品の需要者において広く認識されていたと認めることはできないし、「せっけん類」とその他の商品では、その性質、用途、需要者が異なることなどから、本件商標を、その指定商品及び指定役務中、第3類「せっけん類」以外の商品及び役務に使用しても、これに接する取引者、需要者が使用商標を連想又は想起することはないものと判断するのが相当である。
してみれば、本件商標は、商標権者がこれを「せっけん類」以外の指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者をして使用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(請求人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
そして、本件商標の指定商品及び指定役務中、第3類「せっけん類」については、上記2のとおり、商標法第4条第1項第10号に該当するものであるから、同項第15号の括弧書きの規定により、同項第15号に該当するとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第8号該当性について
請求人が「アクネスラボ」やその欧文字表記である「ACNES LABO」を付して化粧品等を販売し、上記1(2)のとおり、「アクネスラボ」や「ACNES LABO」の文字が、請求人の業務に係る「せっけん類,化粧品」を表示する商標として使用され、認識されていたことは認められるが、提出された証拠からは、該文字が請求人の名称の略称として使用され、認識されていたとは認められないから、「アクネスラボ」の文字が請求人の著名な略称と認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、上記2(2)アのとおり、その構成文字に相応して、「アクネスラボ」の称呼を生じ、「請求人(株式会社アクネスラボ)のブランド」としての観念を生じる場合があるものである。
(2)引用商標について
引用商標は、上記第2の2のとおり、「アクネスラボ」の片仮名と「ACNES LABO」の欧文字を上下二段に表してなるところ、その構成文字に相応して、それぞれ「アクネスラボ」の称呼を生じ、また、上記2(2)アのとおり、これらの文字は、「請求人(株式会社アクネスラボ)のブランド」としての観念を生じる場合があるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とを比較すると、その構成中の「Acnes Labo」及び「ACNES LABO」の欧文字が上段に配されているか下段に配されているか、欧文字の各単語の語頭以外の文字が大文字で表されているか小文字で表されているかという差異があるものの、両者はつづりを同一とするものであり、また、構成中の「アクネスラボ」の文字は、その構成文字を同一にするものであるから、外観上、近似した印象を与えるものである。
そして、両商標は、「アクネスラボ」の称呼を共通にし、「請求人(株式会社アクネスラボ)のブランド」の観念を共通にする場合があるものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観において近似し、称呼を共通にし、観念において共通する場合があるから、両者の外観、称呼及び観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
(4)本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務との類否について
本件商標及び引用商標の指定商品及び指定役務は、上記第1及び上記第2の2のとおりである。
そして、請求人は、本件商標の指定商品及び指定役務中の第3類「せっけん類」に含まれる「身体用石けん」及び第5類「サプリメント」に含まれる「美容サプリメント」と、引用商標の指定商品及び指定役務中の第3類「化粧品」とは同一又は類似する商品であると主張しているので、この点について検討する。
商品の類否の判断は、取引の実情、即ち、商品の生産部門、販売部門、原材料及び品質、用途、需要者の範囲が一致するか否か、完成品と部品との関係にあるか否か等を総合的に考慮して判断をすべきものであり、その類否は、2つの商品に同一又は類似の商標が使用された場合、これに接する取引者、需要者が商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって判断すべきものである。
そこで、商品の類否について判断するに、「身体用石けん」と「化粧品」は、「人の身体を清潔にする」等、一部の用途を共通にする場合があるとしても、「人の身体を美化し、魅力を増し、容貌を変え、毛髪を健やかに保つ」等、「化粧品」の他の用途については、「身体用石けん」と共通にするものではない。また、「美容サプリメント」と「化粧品」は、「人の皮膚を健やかに保つ」等、一部の用途を共通にする場合があるとしても、「人の身体を美化し、魅力を増し、容貌を変え、毛髪を健やかに保つ」等、「化粧品」の他の用途については、「美容サプリメント」と共通にするものではない。
そして、「化粧品」と、「身体用せっけん」及び「美容サプリメント」は、製造・販売事業者や需要者について一致する場合があるとしても、上記のとおり、その用途が異なる場合は、製造・販売事業者や需要者が異なる場合もあり得るものである。
そうすると、「身体用石けん」及び「美容サプリメント」と、「化粧品」は、その用途、製造・販売業者、需要者の一部を共通にする場合があり得るとしても、多くの用途について共通にするものではなく、製造・販売業者や需要者が異なる場合もあり得るものであるから、直ちに類似する商品であるということはできず、同一又は類似の商標を使用しても、これに接する取引者、需要者が商品の出所について誤認、混同を生ずるおそれはないものとみるのが相当である。
(5)まとめ
上記(3)のとおり、本件商標と引用商標とは類似する商標であるとしても、上記(4)のとおり、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務とは類似しない商品及び役務であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
6 商標法第3条第1項柱書に規定する要件を具備するか否かについて
被請求人は、上記第4のとおり、何ら答弁していないものの、商標法第3条第1項柱書の要件を具備するためには、少なくとも本件商標の登録査定(審決)時において、将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標であれば足りると解されることから、たとえ、本件審判の請求時において、被請求人(本件商標権者)による本件商標の使用が確認できないとしても、被請求人が、本件商標の登録査定時において、将来、自己の業務に係る指定商品及び指定役務について本件商標を使用する意思を有していた商標であることを否定することはできない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものとはいえない。
7 むすび
以上のとおり、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、「結論掲記の商品」について、商標法第4条第1項第10号に該当し、その登録は、同項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきである。
しかし、その余の指定商品及び指定役務については、上記3ないし6のとおり、本件商標は本件審判請求の事由には該当せず、商標法第46条第1項の規定によってその登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-890080