商標無効審判
2022-890079
ムートン
- 審判番号
- 2022-890079
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2017-151828
- 登録番号
- 6090508
- 請求日
- 2022年10月07日
- 審決日
- 2024年01月22日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド・ソシエテ・アノニム
- 【請求人代理人】青木 篤
- 【請求人代理人】田島 壽
- 【請求人代理人】平田 学
- 【請求人】グループマン・フォンシエ・アグリコール・デ・ヴィニョーブル・ド・ラ・バロンヌ・フィリピーヌ・ド・ロートシルト
- 【請求人代理人】青木 篤
- 【請求人代理人】田島 壽
- 【請求人代理人】平田 学
- 【被請求人】株式会社 ワルツ
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 大橋 良成
- 審判官 馬場 秀敏
- 分類
- T111 .22 -ZC (W3543) / T111 .23 -ZC (W3543) / T111 .271-ZC (W3543) / T111 .222-ZC (W3543)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項8号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法46条1項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第8号、商標法第4条第1項第19号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6090508号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第6090508号の指定役務中、第35類「全指定役務」及び第43類「飲食物の提供,テイクアウト可能なレストランにおける飲食物の提供,宅配を特長とするレストランにおける飲食物の提供」についての登録を無効とする。
その余の指定役務についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6090508号商標(以下「本件商標」という。)は、「MOUTON」の欧文字を標準文字により表してなり、平成29年11月17日に登録出願、第35類「清涼飲料及び果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,調味料・香辛料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食用油脂の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,乳製品の小売又は卸売りの業務において行われる顧客に対する便益の提供,卵及び加工卵の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食用水産物及び加工水産物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,コーヒー豆の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,豆の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食肉の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食用水産物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,野菜及び果実の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,米穀類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,牛乳の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,茶・コーヒー及びココアの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,乳酸菌を主原料としたカプセル状・錠剤状・粉末状・顆粒状或いは液状の加工食品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,植物抽出物を主原料としたカプセル状・錠剤状・粉末状・顆粒状或いは液状の加工食品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「飲食物の提供,テイクアウト可能なレストランにおける飲食物の提供,宅配を特長とするレストランにおける飲食物の提供,宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,業務用加熱調理機械器具の貸与,業務用調理台の貸与,業務用流し台の貸与,家庭用加熱器(電気式のものを除く。)の貸与,家庭用調理台の貸与,家庭用流し台の貸与,食器の貸与,おしぼりの貸与,タオルの貸与」を指定役務として、同30年9月4日に登録査定、同年10月19日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
本件の無効審判請求人(以下「請求人」という。)が、本件商標の登録の無効の理由に引用する商標は、「Chateau Mouton Rothschild」(シャトー・ムートン・ロートシルト)(審決注:3文字目の「a」にはアクサンシルコンフレックスが付されている。以下同じ。)の欧文字からなるもの(以下「引用商標1」という。)、その略称であると主張する「MOUTON」の欧文字からなるもの(以下「引用商標2」という。)及び「ムートン」の片仮名からなるもの(以下「引用商標3」という。)であり、請求人が「ワイン」(以下「請求人商品」という。)に使用しているというものである。以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめて「引用商標」という場合がある。
第3 請求人の主張
1 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第170号証を提出した。(以下、証拠の表記にあたっては、「甲○」と表記する。)
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標1の著名性
請求人の一人であるバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド・ソシエテ・アノニムは、1933年に創立され、現在ボルドーの5大シャトー(注:「シャトー」とは、ワインを醸造・貯蔵する建物のあるブドウ園もしくはそのブドウ園を所有し、ブドウの栽培や瓶詰めに至るまでワインの製造を行う生産者、醸造所のことを指す。)の一つである引用商標1や「Mouton Cadet」(ムートン・カデ)をはじめとした数々のプレミアムワインを生産し、世界中に輸出している会社である(甲2)。
現在ボルドーの5大シャトーの一つであるということは、取りも直さず、世界で最も優れたフランスワインのうちの一つとして認められているといえる。引用商標1は、甲第3号証ないし甲第33号証で示す、辞書、雑誌、新聞記事、カタログ、ウェブサイト等における記述等から、日本において著名であることは明らかである。
(2)販売並びに宣伝・広告活動
請求人バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド・ソシエテ・アノニムは、「ENOTECA SPA」や「PIEROTH JAPON」をはじめとする日本所在の会社に対し、引用商標1を付した商品を多数販売している(甲14)。また、「Chateau Mouton Rothschild」(シャトー・ムートン・ロートシルト)の公式ウェブサイトを開設し(甲15)、引用商標1を付した商品に関する説明を行うほか、その歴史や醸造所についても解説を行っているのみならず、カタログを頒布するなどして(甲16)、引用商標1の宣伝・広告活動に努めている。さらに、引用商標1を付したワインラベルは、1945年以来、毎年異なる著名アーティストによって描かれていることでも知られている(甲17)。歴代ワインラベルの作品原画展はこれまで世界各国で開催されてきたが、日本においても、1982年6月から8月にかけて、西武美術館(池袋)、高輪アート・フェスティバル、西武軽井沢美術館、西武渋谷美術館にて、順次、ラベルの展覧会が開かれた(甲18)。また、2008年3月にも、歴代ワインラベルの作品原画展が東京・六本木で開催され、1945年以降のヴィンテージ・ラベルの原画約70点が、写真や資料と共に公開された(甲19ないし甲32)。この原画展はワイン業者やワイン専門家を対象としたものではなく、あくまでも一般の需要者を対象としたものである。こうして、請求人は、引用商標1に関して、ラベルの原画展を通じても一般の需要者向けに宣伝・広告活動を行ってきている。
なお、1766年に創立された美術品およびワインを専門に扱うオークションハウスであるクリスティー・マンソン&ウッズ社(イギリス・ロンドン)が保管する記録によると、引用商標1がクリスティーズのワインカタログに初めて掲載されたのは、1834年4月29日であり、それ以降、引用商標1は、クリスティー・マンソン&ウッズ社のオークションハウスで定期的に出品されてきた(甲33)。このことから、引用商標1が、現在よりも185年も前の時点で、フランス国内のみならずフランス国外でも名声を轟かせていたことは明らかである。
以上述べたとおり、引用商標1は、本国フランスのみならず我が国において、本件商標出願前から現在に至るまで周知著名な状態にあるといえる。
(3)引用商標2及び3の著名性
「Chateau」(シャトー)の語はフランス語で城を意味しており、かつて隣接するブドウ畑から収穫してお城のように大きな醸造所でワインを製造していたことから、ブドウの栽培や瓶詰めに至るまでワインの製造を行う生産者のことを意味するようになった(甲125)。そのため、ワインの商標には「Chateau(シャトー)○○○」の如くその構成要素として数多く採択されている。
フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」には、「1853年、シャトー・ブラーヌ=ムートンという名で知られていたワイナリーを、ナタニエル・ド・ロスシルド男爵が競売で落札し、シャトー・ムートン・ロートシルトと改名した。「ロートシルト」は「ロスチャイルド」のドイツ語読みである。」との記述がある(甲35)。
この記述から、「Rothschild(ロートシルト)」は家名であり、「Mouton(ムートン)」が引用商標1の最も重要な部分であることが判る。言い換えれば、引用商標2及び3が自他商品識別力の最も高い構成要素である。
そのため、我が国において、古くから引用商標2及び3が引用商標1の略称として使用されてきた。
以上詳述したごとく、一般消費者が購読ないしは視聴する全国紙、スポーツ紙及び地方紙の新聞並びにワインを題材にした漫画、テレビドラマ、ワインを含んだ酒類に関する書籍、インターネット上の記事、商品カタログ及び本願商標の指定役務の需要者が購読する業界紙等の様々な媒体において、1980年代から今日まで引用商標2及び3が食品分野・飲食分野で引用商標1の略称として頻繁に使用されてきたこと並びに「ラフィット、ムートン、マルゴーといった有名ワイン」「世界に冠たるムートン」「世界最高級の赤ワインを象徴するのは、ボルドーはメドックの一八五五年の格付け第一級である。それはラフィット、そのうち、ラフィット、ラトゥール、マルゴー、ムートン、そしてオーブリオンの五つのシャトーである。」「世界でもっとも有名なワインの“ムートン”は、ポイヤックで育てられるおいしい子羊とは何の関係もない」「フランス・ボルドーの5大シャトーの一つ、ムートンを所有するロートシルト家と・・・・」等のような引用商標2及び3の著名性を直裁に記述したものがある以上、我が国において、本件商標出願前から現在に至るまで引用商標2及び3が引用商標1の略称として一般消費者並びに本件商標の指定役務の需要者である食品業者、レストラン業者及びソムリエ等の間で周知著名であることは明らかである。
仮に、当初、引用商標2及び3を、記事の作成者が任意に略称していたとしても、その後、数多くの者が永年にわたってそのように略称していれば、引用商標1の略称として確立することは経験則上明らかである。
また、そもそも、新聞記事や書籍等のいわゆる印刷物は、その記事及び記載内容の信憑性を担保するために、常に正しい事実を伝えなければならない。しかるに、実際の取引において引用商標1のみならず、引用商標2及び3のみが単独で使用され、その結果、引用商標1の略称としての使用が確立し定着したからこそ、これらの印刷物において引用商標1の略称として引用商標2及び3が表記されたのであって、決して記事作成者の任意に採択された略称ではない。
(4)出所の混同を引き起こすこと
本件商標は、「MOUTON」という欧文字で構成されており、引用商標1の略称として周知著名な引用商標2と同一の商標である。
また、本件商標の自然称呼は「ムートン」であるため、引用商標1の略称として周知著名な引用商標3と称呼及び観念が同一である。そのため、本件商標と引用商標2及び3とは明らかに類似している。
そして、本件商標の指定役務は「清涼飲料及び果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(第35類)、「飲食物の提供」(第43類)等であるところ、引用商標は請求人のワインを示すものとして使用されている。清涼飲料や果実飲料等の非アルコール飲料と、引用商標が使用される請求人商品とでは、「飲み物」である点でその性質が共通している。また、清涼飲料や果実飲料等の非アルコール飲料が、インターネット販売でも、「飲料・お酒」とまとめられた、ソフトドリンクとお酒とで同一のカテゴリー内で同様に販売されたり(甲118~甲121)、スーパーマーケット等の実店舗でもソフトドリンクとアルコール飲料は陳列棚で隣り合って販売されている。このことから、本件商標の35類の役務の対象物と引用商標が使用される商品とでは、「飲み物」である点でその性質は共通し、また、同じ機会に飲用されたり、混ぜて飲用されることも多いことから、関連性の程度が極めて高いことも明らかである。
また、レストラン等における「飲食物の提供」には「清涼飲料の提供」のみならず「ワインの提供」が含まれると考えるのが一般的であるから、本件商標の指定役務と請求人商品とは極めて密接な関連性を有している。
さらに、本件商標と引用商標とでは、取引者及び需要者が、飲料を取り扱う業者や飲食業界に関係を有する業者、レストランを訪れる客等である点において共通している。
したがって、「清涼飲料及び果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」や「飲食物の提供」といった役務における取引者・需要者が本件商標に接した場合は、本件商標が使用された指定役務を請求人の業務に係るものであるその役務の出所について混同するおそれがあるか、あるいは、請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者による役務であると誤認した結果、役務の出所について混同するおそれがあるといわなければならない。そして、役務の出所について混同を生じさせるおそれがある本件商標の登録を認めたことが、商標の使用をする者の業務上の信用を維持し、需要者の利益を保護することを目的とする商標法の目的及び趣旨に反することはいうまでもない。とりわけ、本件商標の指定役務中第43類の「ワインの提供」「フランス産ワイン及びフランス料理を主とする飲食物の提供」に本件商標が使用された場合には直ちに出所の混同を生じるは必定である。
上述したように、引用商標1の構成中の「chateau」(シャトー)の語は、「ワインを醸造・貯蔵する建物のあるブドウ園もしくはそのブドウ園を所有し、ブドウの栽培や瓶詰めに至るまでワインの製造を行う生産者、醸造所」を意味する語であるため、請求人商品との関係において識別力は極めて弱いといえる。また、「Rothschild」の語も、ユダヤ系の姓として著名であり、ありふれた姓として識別力は低いといえる。その結果、引用商標1の構成中「Mouton」の部分は必然的に自他役務識別力が高いものとなり、需要者の注意を強くひくものとなる。そして、引用商標1は、全体で10音を超える商標であるところ、称呼が長い場合、取引の簡易迅速の要請の観点から、その略称が必要となることが多いため、上記の通り識別力の低い「Chateau」や「Rothschild」部分は省略され、その高い識別力にあって需要者の注意を特にひく部分である「Mouton」とのみ簡略化されるのが通常であると考えられる。
そうとすると、引用商標1が、本国フランスのみならず我が国において、本件商標出願前から現在に至るまで周知著名な状態にあることに鑑みると、需要者は、本件商標から請求人の引用商標を直ちに想起・連想し、本件商標の役務の出所について誤認・混同するおそれがあるといわざるを得ない。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであり、登録を認めるべきではない。
3 商標法第4条第1項第8号該当性について
請求人は現在ボルドーの5大シャトーの一つである「Chateau Mouton Rothschild」(シャトー・ムートン・ロートシルト)を有しているが、これまで述べてきたこと及び提出した証拠方法から、引用商標2及び3は、このシャトーの名称の略称としても著名である。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当する。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
ワインの提供等を行うレストラン業者及びソムリエ等を含めた本件商標の指定役務の需要者であれば、「MOUTON」「ムートン」が引用商標1の著名な略称又は請求人の著名な略称であることを当然知り得ていたはずである。そうとすると、本件商標は不正の目的の意図の下で登録されたと断ぜざるを得ない。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
5 商標法第4条第1項第7号該当性について
引用商標は、本件商標出願前から現在まで、本国フランスのみならず我が国を含む世界各国において周知著名な状態にあるといえる。
そうとすると、世界的な周知著名性に基づく顧客吸引力という財産的価値のある引用商標と類似する本件商標を自己の商標として採択使用することは商道徳に反するといわざるをえない。
また、本件商標はフランスの著名なシャトーの略称と同じ称呼であり、このような商標を採択することも商道徳に反するといわざるをえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号の規定に違反して登録されたものである。
6 まとめ
以上より、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同第8号、同項第15号又は同項第19号に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項により、その登録は無効とされるべきである。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の主張に対して何ら答弁していない。
第5 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)請求人の提出した証拠及び同人の主張(当事者間に争いの無い事実)によれば、次の事実が認められる。
ア 引用商標1の周知著名性について
(ア)請求人は、1933年に創立され、現在ボルドーの5大シャトーの一つである引用商標1や「Mouton Cadet」(ムートン・カデ)をはじめとした数々のプレミアムワインを生産し、世界中に輸出している会社である(主張)。
(イ)1993年3月21日株式会社大泉書店発行「ワインものがたり」の写しには、「シャトー・ムートン・ロートシルト」の見出しのもと、「●格付け第1級をめざす執念」の項には、「不断の努力のすえ、ようやくシャトー・ムートン・ロートシルトは格付け第1級を獲得した。1973年のことである。「我第1級となりぬ、かつては第2級なりき。されどムートンは、昔もいまかわらず。」喜びと誇りに満ちた名せりふこのときのもの。」との記載及び「●年ごとに変わるラベルの楽しみ」の項に、「ムートン・ロートシルトを有名にした要素の一つにラベルがある。・・・アーチストは毎年変わるのが原則。1948年マリー・ロランサン、1958年サルバドール・ダリ、1969年ホアン・ミロ、1970年マルク・シャガール、1973年パブロ・ピカソ、1975年アンディ・ウォーホールなど、つねに第一線で活躍しているアーチストが起用されている。」との記載がある(甲2)。
(ウ)weblio辞書における「シャトー・ムートン・ロートシルト」の検索結果の写しには、「シャトー・ムートン・ロートシルト(fr:Chateau mouton rothschild)とは、フランスの有名なシャトー。ボルドーから北西50km、メドックのポーイヤックにある。「ロートシルト」は「ロスチャイルド」のドイツ語読み、フランス語読みは「ロッチルド」。」との記載がある(甲3)。
(エ)小学館ランダムハウス英和大辞典の「Chateau Mouton Rothschild」の項において、「シャトー・ムートン=ロートシルド:フランスBordeaux産の赤ワイン」との記載がある(甲4)。
(オ)1990年3月16日付け日経金融新聞において、「シャトー・ムートン・ロスチャイルド・コレクション(あの企業この人秘蔵の品)」の見出しのもと、「世界中のワイン愛好家垂涎(すいぜん)の逸品である「シャトー・ムートン・ロスチャイルド・コレクション」が展示されているのだ。シャトー・ムートン(小さな丘の上の城の意)は、フィリップ・ロスチャイルド男爵が情熱を傾けて育て上げた、独特の芳香と優れた味わいを持つボルドー・ワインの名品だ。・・・その品質を世界的に信用のあるものとしてきた。」との記載がある(甲6)。
(カ)2013年1月1日株式会社文藝春秋発行「CREA Traveller ベスト・オブ・フランス 美食の祭典」(119頁)の写しには、「シャトー・ムートン・ロートシルト・・・いわずと知れた5大シャトーの一つ。」との記載がある(甲9)。
(キ)「世界最高級ワインの専門店 CORKA-コルカ-」のウェブサイト(第1葉目)には、「「ボルドー5大シャトー」とは、1855年のパリ万国博覧会において、フランスのボルドー・メドック地区の格付けで“第一級”の称号を与えられた4つのシャトー(醸造所)と、1973年に昇格になったシャトー・ムートン・ロスシルド、これら5つの世界トップクラス・シャトーのことを指します。「シャトー・ラフィット」「シャトー・ムートン」「シャトー・ラトゥール」「シャトー・オー・ブリオン」「シャトー・マルゴー」の5つを5大シャトーと呼びますが、各々すべてが強い個性と魅力を持ち合わせながら1級を獲得してからも150年以上のあいだ改良を積み重ね毎年トップレベルのワインを創り続けています。「5大シャトー」というブランドはこれからも世界トップクラスのワインであり続けるのは間違いありません。」の記載、及び第3葉目に「シャトー・ムートン・ロートシルトは1973年に2級から1級に昇格。1855年の公式格付け以降、昇格を果たした唯一のシャトーです。100年以上の歴史をもつ格付けを覆した「奇跡」とも呼べるこのワインの実力は並外れたものがあります。昇格を果たすために畑、醸造方法、熟成方法などに度重なる改良を加えてきました。こうしたシャトースタッフの努力によって出来上がったワインの濃厚で芳醇な味わいと香りは世界中の多くの人々を魅了しています。」との記載がある(甲13)。
(ク)請求人の提出に係る請求書の写しには、「ENOTECA SPA」や「PIEROTH JAPAN」をはじめとする日本所在の会社に対し、「CH.MOUTON ROTHSCHILD」についての取引があったことがうかがえる(主張、甲14)。
(ケ)請求人の公式ウェブサイト(甲15)には、引用商標1の商品それ自体に関する説明のほか、その歴史や醸造所についての解説や、カタログ(甲16)を通じて、引用商標1の宣伝・広告活動をしていることがうかがえる(主張)。
(コ)「MARISOL」と題する雑誌の写しには、「ボルドー「シャトー・ムートン」のワインラベル原画展」の見出しのもと、「ボルドーの5大シャトーのひとつ、「シャトー・ムートン・ロートシルト」、1945年以来、毎年異なる画家にラベルを依頼することでも知られています」との記載がある(甲17)。
(サ)2008年3月9日付け東京読売新聞において、「ピカソも味わい演出 仏ワイン「シャトー・ムートン・ロスシルド」ラベル原画展」の見出しのもと、「世界的に高級なフランスワインとして有名な「シャトー・ムートン・ロスシルド」のワインラベルの原画展が、東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで開かれている。」との記載がある(甲8)。
(シ)歴代ワインラベルの作品原画展はこれまで世界各国で開催され、日本においても、1982年6月から8月にかけて、西武美術館(池袋)、高輪アート・フェスティバル、西武軽井沢美術館、西武渋谷美術館にて、順次、ラベルの展覧会が開催された(主張、甲18)。また、2008年3月にも、歴代ワインラベルの作品原画展が東京・六本木で開催され、1945年以降のヴィンテージ・ラベルの原画約70点が、写真や資料と共に公開されたとされる(主張、甲19~甲32)。そして、これらの原画展は、一般の需要者を対象としたものであり、引用商標1に関して、ラベルの原画展を通じて一般の需要者向けに宣伝・広告活動を行ったとされる(主張)。
(ス)1766年に創立された美術品およびワインを専門に扱うオークションハウスであるクリスティー・マンソン&ウッズ社(イギリス・ロンドン)が保管する記録によると、引用商標1と酷似するワインがクリスティーズのワインカタログに初めて掲載されたのは、1834年4月29日であり、それ以降、引用商標を付したワインは、クリスティー・マンソン&ウッズ社のオークションハウスで定期的に出品されてきたとされる(主張、甲33)。
イ 引用商標2及び3の周知著名性について
(ア)2003年7月21日付け朝日新聞において、「登美の丘:2」の見出しのもと、「仏・ボルドー地方のジロンド川左岸には、五つの1級格付け赤ワイン、「ラフィット」「ラトゥール」「マルゴー」「ムートン」、そして「オー・ブリオン」がある。」との記載がある(甲51)。
(イ)2007年5月11日付けの日本海新聞及び大阪日日新聞において、「ワインで乾杯!(29)」の見出しのもと、「今回はそのワイン畑・カベルネ・ソーヴィニョンが主に栽培されているムートンの畑ですが、敷地内においてわずかなプルーン(すもも)とカシスも栽培しているそうです。公にはされていなかったもののムートン作のリキュールやブランデーがプライベート・ストック用に造られていました。・・・そのマールの出荷本数は当初のムートンによるプレスリリースでは約千本、カシスは約八百本、世界中の愛好家たちが欲しがるだろう一本としてはあまりにも少ない本数です。・・・さすがムートンの逸品だなと感じました。・・・さすが、ムートンというところでしょうか。・・・ムートンが一流たるゆえんは感動と幸せの時間を与えてくれるところですね。」との記載がある(甲40)。
(ウ)2007年3月9日付けの日本海新聞及び大阪日日新聞において、「ワインで乾杯!(25)・・・シャトー・ムートン」の見出しのもと、「男爵のムートンヘの思いは、そのラベルにも書かれており、「一級にはなれないが二級には甘んじられぬ、ムートンはムートンなり」と記載されていました。・・・またラベルには「ムートンは一級になった。かつては二級であったがムートンは不変なり」と一級になったのは当然との言葉を記載しました。・・・イギリス系ロスチャイルド家のムートンは、・・・ワインの世界での商売戦略ではムートン系のほうが押していますね。」との記載がある(甲41)。
(エ)2008年3月15日付け朝日新聞において、「ワイン彩った絵の巨匠たち 60年分のラベル、六本木で展覧会」の見出しのもと、「酒の商売の片棒は担ぎたくない、と断ったが、その夜に友人宅でピカソがラベルを描いたムートンを飲んで、考えを変えた。」との記載がある(甲39)。
(オ)講談社発行「神の雫」(モーニングKC)の漫画本において、2009年1月16日(第12刷)の「第1巻P.130「「ムートン」は古典的なやり方で最初からこ~~~んな大きな樽を使うの」、2005年5月23日(第1刷)の「第2巻P.102、P.108、P.127、P.142、P.144、P.145には、それぞれ、「君はこの数日間そこそこワインの勉強をしてきたらしい・・・だからこのワインが’82年「ムートン」であることは見抜けた」、「あれが「ムートン」であることくらいは雫も気づいておっただろうがほんの数日前初めてワインを口にしたあの若造にこれが’82年の作であることがわかるはずがない」、「ヘェ・・・あの「ムートン」の’00年か」、「だってこの「ムートン」が本当の飲み頃の「いい女」に成長する頃にはこっちがオバーちゃんになっちゃうもんね」、「「ムートン」‘00年」「行こうか-飲み頃の「ムートン」が飲みたくなった」、「ボルドーは全体にいいヴィンテージとは言えないみたいだけどその分「ムートン」にしては近づきやすくて」、2007年4月25日(第4刷)「第6巻P.136~P.137「やっぱり「ムートン」は「ムートン」だ」及び「さすがだよ「ムートン」」「3大シャトーは多くのヴィンテージで「ムートン」や「オー・ブリオン」を上回る評価をされている」との記載がある(甲87)。
(カ)2009年2月24日集英社発行「ソムリエールVOL.9」において、裏表紙には、「そして、“世界で最も邪悪なムートン”「ヒトラーのワイン」の深き謎にカナが挑む!」とあり、第3葉では、本編の189ページ「この年以後ムートンのラベルは毎年著名な画家が一人ずつ描くようになります」、第4葉では、「もう一本のムートンについて」、第5葉では、「……1889年のムートン?」、「それもムートン…!」、第8葉では、「あのムートンの真贋は片瀬とカナちゃんにもわからなかったか」、第9葉では、「つまりリコルクされていない1889年のムートンに錫が使われていることはあり得ない」、第10葉では、「そのムートンが偽物というならなぜ贋作者は1990年以前の鉛シールのムートンを使わなかった それならバレる心配もないではないか!」及び第11葉では、「ドイツ本国からムートンを送れと命令された時には安ワインにムートンのラベルを貼って騙したこともあったそうです」との記載がある(甲88)。
(キ)テレビドラマ「神の雫」(日本テレビ)2009年1月~3月登場人物の台詞には、「Chapter1」の見出しのもと、「「ムートン」の1990年が飲みたくなったな」「(ロベール)この家で初めて「ムートン」を手にした時」「「ムートン」の1985年なら・・・」、「Chapter7」の見出しのもと、「神咲君の生まれ年の「ムートン」。(神咲)これって・・・?」、「2005年の10月からお預かりしております。」及び「Chapter8」の見出しのもと、「1974年あの人の生まれた年だ。」「一青さんの生まれた年の「ムートン」で実りを祝った。」「生まれた年の「ムートン」を用意しておいてくれました。」「やっぱりおいしいな「ムートン」。」との記載がある(甲90)。
(ク)2008年4月10日(第26刷)株式会社幻冬舎発行、弘兼憲史著「知識ゼロからのワイン入門」の125ページには、「1350年に創設されて以来、たびたび所有者が代わったムートンは、1853年にイギリスの実業家ロスチャイルド家の三男に買収された。その2年後に行われた初のシャトー格付けのさい、ムートンは2級にランクされ・・・」との記載がある(甲91)。
(ケ)2005年10月1日株式会社ワイン王国発行「BORDEAUX ボルドー格付シャトー60」の、第1葉目には、「世界でもっとも有名なワインの“ムートン”は、ポイヤックで育てられるおいしい子羊とは何の関係もない。・・・男爵がおこなったこのキャリアの選択は、ムートンの帝国のみならず、ワイン生産地区全体にとっても数々の計算外の結果を生むことになった。」、第2葉目には、「1855年の格付けがおこなわれたとき、ムートンは、格付け1級に選ばれた他のワインと比べて、品質の点でも、販売価格の点でも、遜色のないワインだったのに、主催者側は、最高ランクを与えるに値しないと判断した。・・・たしかに、ムートンはトップにランクされたが、格付け2級のワインのトップにすぎなかった!」との記載がある(甲92)。
(コ)2005年7月31日株式会社早川書房発行、山本博著「ワインの女王ボルドー」(第2葉目)には、「その右にこんもりとした森が見えるが、ここがバロンヌを含めたムートンである。・・・そのうちの一つの辻がムートンの入り口。」及び「特急御三家 ボーイヤックシャトーの説明は、簡単なようで難しい。第一級の栄光の座をしめるのが、ラフィット、ラトゥール、ムートンの特急御三家だが、ここでは三シャトーそれぞれの要約と、関連シャトーをまとめて説明することにする。」との記載がある(甲93)。
(サ)昭和56年12月8日(第1刷)株式会社講談社発行「世界の名酒事典’82-’83」には、「今宵ムートンを語りムートンに酔う 毎年一流画家がラベル絵を描くので有名なCh.ムートン。‘79年は我が堂本尚郎氏。当世酒通男2人、氏を招いて依頼を受けたときの状況や、ムートンの諸〃を肴に、’67~‘76年のムートン10本を飲み干す。ワインの品定めをしながらの放談が楽しい。」との記載がある(甲94)。
(シ)平成12年2月20日(第1刷)株式会社文藝春秋発行、山本博著「フランスワイン愉しいライバル物語」(第1葉目ないし第8葉目)には、第3葉目には、「世界最高級の赤ワインを象徴するのは、ボルドーはメドックの一八五五年の格付け第一級である。それはラフィット、そのうち、ラフィット、ラトゥール、マルゴー、ムートン、そしてオーブリオンの五つのシャトーである。そのうち、ラフィットとムートンは、ロートシルトという文字がその下にハイフンでつながれている。」、第2葉目には、「・・・ムートンは第二級にされてしまったのである。・・・以後「われ一位たり得ず。されど二位たることを潔しとせず。われムートンなり」をモットーに、シャトーの改革に全エネルギーを注ぎこむ。」及び第5葉目には、「・・・まずムートンにかぎらず、一級シャトーは必ずシャトー元詰めをするように呼びかけ、ラベルが中身を裏切らないようにした。・・・現在、ムートンの美術館は、ワインに関する美術品の展示場としては、ルーブルを凌ぐ内容を誇っている。」との記載がある(甲95)。
(ス)2000年3月25日(第8刷)株式会社講談社発行、横山三四郎著「ロスチャイルド家 ユダヤ国際財閥の興亡」には、第1葉目に「一九七三年の格付け改定で、ムートンが加えられたときには世界中のグルメが驚きの声を上げた。ムートンもまたロスチャイルド家のワインである。・・・それになによりも隣接するムートンのブドウ園が、一五年前の一八五三年にロンドン分家が購入してロスチャイルド家のものになっていた。」、第2葉目に「・・・ラフィットやムートンのこうした味わいの秘密はなによりもその土壌にあるといわれる。・・・パリ・ロスチャイルド家が第一級のラフィットを買ったとき、隣のムートンを持つロンドン分家は、一八五五年の格付けで二級とされていたためにいささか自尊心を傷つけられた。・・・次いでフィリップ男爵はムートンの格上げ工作に乗り出した。」との記載がある(甲96)。
(セ)1999年9月27日日経BP社発行「辛口/軽口ワイン辞典」には、「昇格・・・二級のムートンが一級に昇格するには・・・ムートンのオーナーが昇格を後押ししてくれるとは思えない。(98ページ及び99ページ)」、「シラク大統領・・・農業大臣としてムートンのー級昇格を承諾したことで有名」(102ページ)、「「ムートン収集家」ワイン収集の王道がムートンを集めること。」(204ページ)、「「ムートン一九八六年」ロバート・パーカーが100点。ワイン・スペクター誌が98点をつけたのに、初めは値上がりしなかった不思議なムートン。」(同ページ)、「「ムートンのパラドックス」良くないビンテージの方が良いワインより値上がりするムートンの珍現象。」(同ページ)及び「「ムートン方式」有名画家、芸術家に依頼しラベルを毎年変えることで、よくないビンテージのワインもコレクターに買わせる方式。」(204ページ及び205ページ)との記載がある(甲162)。
(ソ)2011年12月28日付け「REUTERS」のウェブサイトの「今年の高級ワイン競争市場は堅調、年末価格低下の見通し」の見出しのもと、「2012年の第1・四半期ではラフィット、ラトゥール、マルゴー、オー・ブリオン、ムートンの価格は変わらないか、下落するとみている。」との記載がある(甲38)。
(タ)2005年3月28日付け日本食糧新聞において、「ローヤル・オブ・ジャパン、「夏のワイン」試飲商談会を開催」の見出しのもと、「「ボルドー一級ムートン・グラステースティング」の八コーナーからなり、目的商材をみつけやすく工夫した。」との記載がある(甲46)。
(チ)2004年10月4日付け日本食糧新聞において、「日本ツーリスト開発、仏ワイン2大産地を巡るツアー参加者募集中」の見出しのもと、「ボルドーではメドック三級シャトー・パルメの垂直テースティングや一級のムートン、ラトゥール、オー・ブリオンを見学。」との記載がある(甲49)。
(ツ)1999年11月22日スポーツニッポンにおいて、「【食堂楽】東京・芝浦「ボンヴァン」」の見出しのもと、「ワインの魅力を知って究めたいワインラバーは、柏谷さん主宰のテースティングジーティー(12月4日開催、料理込みで1万2000円/要予約)に参加しよう。76のムートンなど垂ぜんの銘柄のワインをじっくり飲み比べる会である。」との記載がある(甲55)。
(テ)1999年9月10日付け毎日新聞において、「[旅行情報]ワインカントリーの旅/下 ワイナリーの顔、さまざま /愛知」の見出しのもと、「そこで造られるワインは、フランスとアメリカの“結婚”によって誕生したと言っても過言でない。フランス・ボルドーの5大シャトーの一つ、ムートンを所有するロートシルト家と、ナパを代表するロバートモダンビ・ワイナリーのロバート・モンダビ氏が手を結んで世界に送り出した。」との記載がある(甲56)。
(ト)1998年10月8日付け西日本新聞において、「宮崎県/ニシタチばなし=ワインにこだわり しゃん亭(上)」の見出しのもと、「「しゃん亭」の店内にはフランスワイン、ムートンのラベルが描かれている。」との記載がある(甲57)。
(ナ)1998年7月8日付け北海道新聞において、「<バッカスの微笑み>ソムリエ・(略)されど、ムートンは」の見出しのもと、「ムートンは毎年、著名画家がラベルの絵を描いており、この記念すべき73年はピカソが担当。ラベルには「われ1位なり。かつて2位なりき。されどムートンは変わらず」と書かれています。」との記載がある(甲58)。
(ニ)1998年5月28日付け朝日新聞において、「さんさんネット /福岡」の見出しのもと、「◆フランスワインフェア」の項に「またパリ万博で一級に選ばれたワインの中から、ムートンとオー・ブリオンを本数限定で販売。」の記載がある(甲59)。
(ヌ)2010年3月10日付け読売新聞(オンライン版)において、「ムートン・カデ、80周年記念セット発売」の見出しのもと、「シャトー・ムートン・ロスチャイルドの入門ワインとして、「ムートン」ブランドを世界に広める役割を果たしてきた。」との記載がある(甲75)。
(ネ)2016年9月24日付け週刊ダイヤモンドにおいて、「新日本酒紀行 地域を醸すもの Number 007」の見出しのもと、「また、高級ワイン・ムートンのようにアートラベルを作家に依頼も。」との記載がある(甲166、第3葉目及び第4葉目)。
(ノ)2011年5月18日付けFujiSankeiBusinessiにおいて、「ブーム先行、混乱のワイン投資 知識不足が悪徳商法の温床に」の見出しのもと、「世界的に見ても、ラフィット、ムートン、マルゴーといった有名ワインの人気は高く、国際市場価格も上昇している。」との記載がある(甲166、第9葉目)。
(2)判断
ア 引用商標1について
上記(1)ア(ア)ないし(キ)によれば、引用商標1は、ワインの五大シャトーの一つとして第1級に格付けされるなど、フランス・ボルドー産の高級ワインとして世界的にも周知著名なワインといえる。
また、上記(1)ア(イ)及び(コ)によれば、引用商標1のワインのラベルは、1945年以来、ピカソやシャガールなどの著名な芸術家をはじめ、毎年異なるアーティスト等によって描かれていることでも知られており、我が国においても、各地の美術館などにおいて引用商標1のワインラベルの原画展が開催される(甲18~甲32)など、請求人のカタログの頒布以外にも、当該原画展を通じて一般の需要者向けの宣伝・広告効果をもたらしたことが、請求人提出の各証拠及び請求人の主張からもうかがえる。
イ 引用商標2及び3について
請求人が周知著名であるとする引用商標2は、「MOUTON」の欧文字を書してなり、引用商標3は、「ムートン」の片仮名を書してなるものである。
ところで、引用商標1の構成中「Chateau」(シャトー)の文字は、フランス語で「城」を意味し、請求人商品の「ワイン」との関係においては、「ブドウの栽培や瓶詰めに至るまでワインの製造を行う生産者のこと」を意味する語(甲125)として一般に使用されているものであり、自他商品の識別標識としての機能を有しないか、極めて弱い部分であるといえ、「シャトームートンロートシルト」の称呼自体もやや冗長であるがゆえ、それに続く「Mouton」(ムートン)の文字部分が、後半の「Rothschild」(ロートシルト)の語よりも、印象として記憶に残りやすいものといえる。
(ア)ワインの格付けや五大シャトーを内容とする記載(記事)
請求人提出の各証拠によれば、請求人のワインを表示するものとして、「ムートン」の語が使用されている事実が認められることに加えて、ワインの格付けや五大シャトーを内容とする記載には、例えば「世界でもっとも有名なワインの“ムートン”は、・・・」(甲92)、「世界最高級の赤ワインを象徴するのは、ボルドーはメドックの一八五五年の格付け第一級である。それはラフィット、そのうち、ラフィット、ラトゥール、マルゴー、ムートン、そしてオーブリオンの五つのシャトーである。」(甲95)及び「世界的に見ても、ラフィット、ムートン、マルゴーといった有名ワインの人気は高く・・・」(甲166、9葉目)等のように、「ムートン」の語が、高級ワインを表示するものとして、その周知著名性を直裁に記述する記載(記事)も多く見受けられる。
(イ)ワインを題材にしたテレビドラマや漫画本等
上記(1)イ(キ)にあげたテレビドラマにおいては、引用商標1のワインについて、歴史とともに紹介され、有名な俳優又はタレントによる台詞を通じて、単に「ムートン」と称してそのワインの説明や感想などが述べられている事実(甲90)や上記(1)イ(オ)及び(カ)に挙げた漫画本等においても、「ムートン」と称してそのワインの説明等がなされている。
上記のように、「ムートン」の語をセリフとして繰り返すテレビドラマや漫画本等によって、ワインの愛好家のみならず、必ずしもえうでない一般需要者においても、「ムートン」の文字を目にした、或いは耳にした機会は相当数あったとみるべきであり、その波及効果は全国規模にあって相当程度あったと推認できる。
(ウ)ワインの格付けの際に残した格言
上記(1)ア(イ)並びに(1)イ(ウ)、(シ)及び(ナ)のとおり、ワインの格付けの際に残した格言として、例えば「一級にはなれないが二級には甘んじられぬ、ムートンはムートンなり」(甲41)等のように各種新聞記事やワインに関する書籍や雑誌において、上記格言或いはこれに類する格言が多く引用されており、その中で、「ムートン」の語が単独で使用されていることがうかがえる。
(エ)有名芸術家等によって描かれているワインのラベル
引用商標1は、上記アのとおり、有名な芸術家等によってワインのラベルが描かれていることでも知られているところ、上記(1)イ(エ)、(カ)、(サ)、(ナ)及び(ネ)のとおり、当該請求人ワインのラベルに関する内容として、「ムートン」の語が単独で使用されていることがうかがえる。
(オ)ワイン業界等における「ムートン」の使用
上記(1)イ(チ)、(テ)、(ニ)及び(ヌ)によれば、ワイン業界における商談会、飲食店やワインフェアに関する新聞記事において、「ムートン」の語が単独で使用されていることがうかがえる。
(カ)小括
以上よりすると、請求人ワインを表示する「ムートン」の語は、請求人ワインの格付けに関する内容や同格付けに関する格言及び有名芸術家等によるワインのラベルに関する内容等を主材とした新聞記事、ワインの専門書や雑誌及びテレビドラマや漫画本等の多数のメディアによって取り上げられたこと、さらには、ワイン業界等における当該語の使用例等を踏まえると、フランス・ボルドー産の高級ワインである請求人の著名なワインを認識させるほどに、引用商標1のブランドの略称としての使用が定着し、「ムートン」の語がそれ自体単独で周知著名性を獲得するに至ったと判断するのが相当である。
してみれば、「ムートン」の語からなる引用商標3及びその欧文字表記「MOUTON」からなる引用商標2は、請求人商品を表示するものとして、遅くとも本件商標の登録出願時及び登録査定時には、我が国又は外国の取引者、需要者において、周知著名な商標となっていたといえる。
2 本件商標の指定役務と請求人商品との関連性
本件商標の指定役務は、上記第1のとおりであるところ、その指定役務中には、第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「請求に係る役務1」という。)及び第43類「飲食物の提供」(以下「請求に係る役務2」という。)を含んでなるものである。
(1)請求に係る役務1と請求人商品との関連性
請求に係る役務1と請求人商品とでは、主たる需要者が一般消費者である点を共通にする。また、その対象商品が、消費者が口にする飲食料品である点や、原料として果実を使用する場合がある点、調理において使用される場合など、用途や原材料において共通にする場合が多く、また、清涼飲料や果実飲料等の非アルコール飲料が、インターネット通販においても、「飲料・お酒」と題して、ソフトドリンクとお酒とで同一のカテゴリー内で同様に販売されたり(甲118~甲121)、また、スーパーマーケット等の実店舗でもソフトドリンクとアルコール飲料は陳列棚で近傍して販売されていることの多い取引の実情にあって、取扱い商品の販売場所においても共通性がある。
そうすると、請求に係る役務1と請求人商品とは、需要者の共通性に加えて、取扱い商品の用途、原材料、販売場所等において、両者の関連性の程度は高いといえる。
(2)請求に係る役務2と請求人商品との関連性
請求に係る役務2が提供されるレストラン等においては、ワインが提供されることも少なくないところ、請求に係る役務2と請求人商品とは、その主たる需要者は、ワインを嗜好とする一般消費者である点において共通するものであり、また、請求人商品である「ワイン」は、食事とともに楽しむ飲み物でもあるから、その用途及び目的においても共通にする。
そうすると、請求に係る役務2と請求人商品とは、需要者の共通性に加えて、用途及び目的等において、両者の関連性の程度は高いといえる。
3 本件商標と引用商標の類似性の程度
(1)本件商標について
本件商標は、上記第一のとおり、「MOUTON」の欧文字を書してなるところ、本件商標は、その構成から、「ムートン」の称呼が生じる。そして、「ムートン」の語は、請求に係る役務との関係においては、上記1及び2の認定のとおり、「フランス・ボルドー産の高級ワイン」を直ちに認識させる程、請求人の周知著名な商標といえるから、本件指定役務中、請求人商品と密接な関連性を有する請求に係る役務との関係においては、「フランス・ボルドー産の高級ワイン」の観念が生じるとみるのが相当である。
(2)引用商標について
引用商標1は、「Chateau Mouton Rothschild」の欧文字よりなるところ、該文字は、前記1のとおり、五大シャトーの一つであり、フランス・ホルドー産の世界的にも著名な高級ワインといえるものである。
そして、引用商標2の「MOUTON」及び引用商標3の「ムートン」もまた、上記1(2)イのとおり、周知著名な商標といえるものであり、その構成中の「Mouton」の文字部分が強く支配的な印象を看者に与えるから、引用商標1は、「シャトームートンロートシルト」の一連の称呼のほか、その構成中の「Mouton」の文字部分より「ムートン」の称呼を生じるものであり、「フランス・ボルドー産の高級ワイン」の観念が生じるものある。
また、引用商標2は、「MOUTON」の欧文字を書してなり、引用商標3は、「ムートン」の片仮名よりなるものであり、いずれも「ムートン」の称呼及び「フランス・ボルドー産の高級ワイン」の観念が生じるものある。
(3)本件商標と引用商標との比較について
ア 本件商標と引用商標1との比較について
本件商標と引用商標1とは、全体の外観において相違するものの、請求人商品と密接な関連性を有する請求に係る役務との関係においては、「ムートン」の称呼及び「フランス・ボルドー産の高級ワイン」の観念を共通にするものである。
そうすると、本件商標と引用商標1とは、全体の外観においては相違するものの、請求人商品と密接な関連性を有する請求に係る役務との関係においては、称呼及び観念において共通にする類似の商標とみるべきものである。
イ 本件商標と引用商標2及び3との比較について
本件商標と引用商標2とは、外観においては、文字の種類等において異なるところはなく、「ムートン」の称呼及び「フランス・ボルドー産の高級ワイン」の観念を共通にするものであり、また、本件商標と引用商標3とは、「MOUTON」及び「ムートン」の文字の種類の相違があるものの、文字種を相互に変換して使用することは商取引において一般に行われることからすると、外観においては、一定程度類似し、「ムートン」の称呼及び「フランス・ボルドー産の高級ワイン」の観念を共通にするものである。
そうすると、本件商標と引用商標2とは、外観、称呼及び観念において共通にする同一の商標といえ、本件商標と引用商標3とは、外観において一定程度類似し、称呼及び観念において共通にする類似の商標とみるべきものである。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記3(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、同一又は類似の商標である。
また、上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品である「ワイン」を表示するものとして、世界的にも周知著名であることから、引用商標の周知著名性の程度は高いといえる。
さらに、上記2のとおり、請求に係る役務1と請求人商品とでは、需要者の共通性に加えて、取扱い商品の用途、原材料、販売場所等において、また、請求に係る役務2と請求人商品とでは、需要者の共通性に加えて、用途及び目的において、いずれも、両者の関連性の程度は高いといえる。
以上のとおり、本件商標と引用商標とは同一又は類似の商標であって、本件商標の指定役務中、請求に係る役務1及び2と引用商標の請求人商品との関連性の程度は高く、その需要者を共通にすることからすると、本件商標をその指定役務について使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、引用商標を連想、想起し、その役務が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
5 商標法第4条第1項第8号該当性について
本件商標は、上記1(2)イのとおり、周知著名なワインのブランドの略称として周知著名であるといえるとしても、請求人の名称又は請求人の著名な略称とは認められないものであり、他人の名称又は他人の著名な略称を含む商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものといえない。
6 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記3のとおり、本件商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた引用商標と同一又は類似の商標である。
しかしながら、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、本件商標が不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的)をもって使用されるものであることを具体的に裏付ける証拠の提出はないものであるから、不正の目的をもって使用をするものとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
7 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、上記6のとおり、不正の目的をもって使用するものと認めることはできないものである。
そして、本件商標は、その構成自体が、非道徳的、きょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるようなものではなく、その構成自体がそのようなものではなくとも、それを指定役務に使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものともいえない。
その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標であると認めるに足りる事情は見いだせない。
してみれば、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標に該当するとはいえないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
8 まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定役務中、別掲の役務についての登録は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。
しかしながら、その余の指定役務については、上記のとおり、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第15号及び同項第19号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定によってその登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-890079