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商標無効審判

2022-890067

サンソーニューカ

審判番号
2022-890067
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2003-083100
登録番号
4776699
請求日
2022年08月10日
審決日
2025年04月02日
公報発行日
2025年07月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】正林 真之
  • 【請求人代理人】林 栄二
  • 【請求人代理人】小菅 一弘
  • 【被請求人】株式会社 アオイ
  • 【被請求人代理人】瀧野 文雄
  • 【被請求人代理人】江成 文恵
  • 【被請求人代理人】加藤 智子
  • 【被請求人代理人】赤岩 美紀
  • 【被請求人代理人】今井 貴子
審判長/審判官
  • 審判長 大橋 良成
  • 審判官 渡邉 あおい
  • 審判官 杉本 克治
分類
T111 .272-Y (Y03) / T111 .6 -Y (Y03)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法4条1項16号商標法46条1項6号
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第16号、商標法第46条第1項第6号、商標法第4条第1項第11号、商標法第3条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第4776699号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第4776699号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり、縦と横の比率が不ぞろいな4つの黒地四角形を横に並べ、当該4つの四角形の内部に、それぞれ「三」、「相」、「乳」及び「化」の白抜き文字を1字ずつ表した構成からなり、平成15年9月25日に登録出願、第3類「せっけん類,化粧品,香料類」を指定商品として、同16年5月14日に登録査定、同年6月4日に設定登録され、その後、同26年4月15日及び令和6年5月21日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。 そして、本件商標は、平成29年12月28日に商標登録の一部取消審判(取消2018-300002、同2018-300003、同2018-300005、同2018-300006及び2018-300007)が請求され、その指定商品中、第3類「せっけん類(界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造したせっけん類を除く。)」、同「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造したせっけん類」、同「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」、同「香料類(界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した香料類を除く。)」及び同「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した香料類」について、それぞれ、その登録を取り消す旨の審決がされ、同30年10月5日にその確定審決の登録がされたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第7号証(枝番号を含む。)を提出した。 なお、証拠の表示については、「甲第○号証」を「甲○」のように、簡略して表記する場合があり、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略して記載する。 1 無効理由 本件商標は、少なくとも、商標登録がされた後において、その登録商標が商標法第4条第1項第16号に掲げる商標に該当するものとなっているので、同法第46条第1項第6号により、登録を無効にすべきものである。 2 無効原因 本件商標は、4つの黒塗りした四角形状の図形を、各図形の間に僅かに間隔を空けながら、横一列に配置し、その各図形の中に、1文字ずつ「三」、「相」、「乳」及び「化」の文字を白抜き状に表示してなる構成からなる。 そして、本件商標は、本件商標についてなされた不使用取消審判、取消2018-300002の審決において「登録第4776699号商標の指定商品中、第3類「せっけん類(界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造したせっけん類を除く。)」についての商標登録を取り消す。」旨、取消2018-300003の審決において「登録第4776699号商標の指定商品中、第3類「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造したせっけん類」についての商標登録を取り消す。」旨、取消2018-300005の審決において「登録第4776699号商標の指定商品中、第3類「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」についての商標登録を取り消す。」旨、取消2018-300006の審決において「登録第4776699号商標の指定商品中、第3類「香料類(界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した香料類を除く。)」についての商標登録を取り消す。」旨、取消2018-300007の審決において「登録第4776699号商標の指定商品中、第3類「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した香料類」についての商標登録を取り消す。」とされ、それぞれの審決が確定している。 このため、本件商標の指定商品として残っているのは、「化粧品(界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品を除く。)」となるから、実質的には、指定商品は、界面活性剤を使用した乳化の技術を用いて製造した化粧品に限定されていることとなる。 しかし、本件商標の構成中にある「三相乳化」の文字は、界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術を意味するものとして普通に使用されているものである(甲2、甲3)。 そして、本件商標の指定商品が含まれる化粧品の分野では、「乳化」は、「クリームや乳液、リキッドファンデーション、ヘアコンディショナーなどの化粧品には、水や保湿剤のように水に溶ける成分と油分とを同時に配合することが求められることから、乳化技術は欠かすことのできない技術」(甲4)である。 このため、「三相乳化」の文字は、化粧品との関係では、商品の生産の方法等の特徴を表示するものであり、本件商標においても、「三相乳化」の文字部分は、単独では、商品の出所の識別標識としては機能し得ないものであり、本件商標が商標登録されたのも、図形部分と結合されたものであったからと思料される。 このことは、「三相乳化」の文字の登録出願(出願番号:平成10-14956)が商標法第3条第1項と同法第4条第1項第16号によって拒絶されている(甲5)ことからもうかがわれる。 すなわち、本件商標は、「三相乳化」の文字部分をもって、商品の出所の識別標識として機能するものではなく、その構成全体をもって、はじめて商品の出所の識別標識として機能し得るものである。 そうすると、本件商標は、界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術を意味するものとして普通に使用され、取引者、需要者に理解されている「三相乳化」の文字部分を含んでなるにもかかわらず、その指定商品として残っているのは、取消2018-300002、取消2018-300003、取消2018-300005、取消2018-300006及び取消2018-300007の審決(以下「本件取消審決」という。)が確定した段階では、「化粧品(界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品を除く。)」であり、実質的には、界面活性剤を使用した乳化の技術を用いて製造した化粧品のみであるから、取引者、需要者をして、あたかも、その商品が界面活性剤を使用しない乳化の技術を用いて製造した化粧品であるかのごとく、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。 したがって、本件商標は、商標登録がされた後、本件取消審決が確定した段階においては、その指定商品の全てとの関係で、登録商標が商標法第4条第1項第16号に掲げる商標に該当する。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、令和4年10月21日付け答弁書(以下「答弁書」という。)において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。 1 本件商標の指定商品について 請求人は、本件商標に係る取消審判である、取消2018-300002、取消2018-300003、取消2018-300005、取消2018-300006及び取消2018-300007の各確定審決を示して、本件商標の指定商品として残っているのは、「化粧品(界面活性剤を使用せず、その代りに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品を除く。)」となるから、実質的には、指定商品は、界面活性剤を使用した乳化の技術を用いて製造した化粧品に限定されていることとなると主張している。 確かに、本件商標の商標登録原簿(甲1の1)の記載からも明らかなとおり、本件商標の指定商品は、「化粧品(界面活性剤を使用せず、その代りに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品を除く。)」であって、この本件商標の指定商品の記載内容を解釈すると、原則として「化粧品」であるが、例外的に「界面活性剤を使用せず、その代りに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」は該当しないと解釈するのが自然である。 してみると、本件商標の指定商品は、例外的に「界面活性剤を使用せず、その代りに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」を除いた「化粧品」に該当するのであり、当該「化粧品」には、「界面活性剤を使用しておらず、親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品以外の化粧品」や「界面活性剤を使用した化粧品」、さらには「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増すための一般的な化粧品」などが含まれると解釈するのが自然である。 これに対して、請求人は、本件商標の指定商品は、実質的には、「界面活性剤を使用した乳化の技術を用いて製造した化粧品」に限定されていると主張しており、本件商標の指定商品を恣意的・限定的に解釈しているといわざるを得ない。 そして、請求人は、本件商標は界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術を意味するものとして普通に使用され、取引者、需要者に理解されている「三相乳化」の文字部分を含んでいるにもかかわらず、上記したように、恣意的・限定的に解釈した指定商品のみ、すなわち「界面活性剤を使用した乳化の技術を用いて製造した化粧品」のみに使用しているから、本件商標は、取引者、需要者をして、あたかもその商品が界面活性剤を使用しない乳化の技術を用いて製造した化粧品であるかのごとく、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあり、その指定商品の全てとの関係で、商標法第46条第1項第6号の無効理由に該当すると主張している。 しかしながら、上記したように、本件商標の指定商品は、原則として「化粧品」であるが、例外的に「界面活性剤を使用せず、その代りに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」は該当しないと解釈すべきであり、上記した請求人の本件商標の指定商品の解釈は間違った判断であるといわざるを得ず、この間違った指定商品の解釈を前提とした無効理由に該当するとの判断も間違ったものといわざるを得ない。 よって、本件商標は、商標登録がされた後において、その登録商標が商標法第4条第1項第16号に掲げる商標に該当するものではない。 2 「三相乳化」の文字について 請求人は、「三相乳化」の文字は、界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術を意味するものとして普通に使用されているものであると主張する(甲2~甲5)。 しかしながら、請求人の提出した証拠資料だけでは、「三相乳化」に関して、一般需要者、取引者が詳しい技術的内容まで理解しているか、はなはだ疑問であるといわざるを得ない。 すなわち、ウィキペディアの記事(甲2の1)には、「三相乳化」が神奈川大学の技術であるとは記載されているが、日本大学も同様の特許を取得しているなど、「三相乳化」がどのような技術であるかについて具体的に記載されているわけではない。 また、甲第2号証の2ないし甲第3号証の8は、ほとんどが神奈川大学の技術紹介だけであり、「三相乳化」がどのような技術であるかについて具体的に記載されているわけではなく、甲第4号証は、資生堂による乳化技術の紹介記事だけであり、当該記事中には「三相乳化」という文字は一切使用されていない。 さらに、甲第5号証の三相乳化の識別性欠如の認定は、平成10年当時の審査の判断であり、またその当時には、上記した神奈川大学の技術は存在していない。 このように、請求人が提出した上記証拠資料は、一部の研究者のみが知り得る商品知識についての記載であり、上記証拠資料では、現在においても「三相乳化」に関して、一般需要者、取引者が詳しい技術的内容まで理解しているものとはいえない。 また、上記取消2018-300004号の取消審判事件の確定審決(審決日:令和3年3月29日、乙1)においては、「しかしながら、請求人が提出した証左をみても「三相乳化」という技術についての説明は様々であって、明確な定義がされているとはいえないものであり、「三相乳化」についての明確な定義がない以上、「三相乳化の技術を用いて製造した化粧品」が「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」であると認めることはできない。」と認定されている。 してみると、上記審決日から僅か1年程度しかたっていない現在においても、「三相乳化」については、明確な定義を有するものではなく、一般需要者、取引者が詳しい技術的内容まで理解しているものとはいえない。 請求人は、本件商標は界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術を意味するものとして普通に使用され、取引者、需要者に理解されている「三相乳化」の文字部分を含んでいるにもかかわらず、本件商標の指定商品は、界面活性剤を使用した乳化の技術を用いて製造した化粧品のみであるから、本件商標は、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあり、その指定商品の全てとの関係で、商標法第46条第1項第6号の無効理由に該当すると主張しているが、そもそも現在においても「三相乳化」に関して、明確な定義がなく、一般需要者、取引者が詳しい技術的内容まで理解しているものとはいえないので、請求人の、「三相乳化」の文字が界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術を意味するものとして普通に使用され、取引者、需要者に理解されているとの前提での本件商標が無効理由に該当するとの判断は間違ったものといわざるを得ない。 よって、本件商標は、商標登録がされた後において、その登録商標が商標法第4条第1項第16号に掲げる商標に該当するものとなっているものではないので、その登録を無効にすべきものではない。 3 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標登録がされた後において、その登録商標が商標法第4条第1項第16号に掲げる商標に該当するものとなっているものではない。 第4 当審における審尋 審判長は、令和5年6月22日付け審尋において、請求人に対し、以下の1及び2についての合議体の暫定的見解並びに当該見解に対する請求人の主張を立証する証拠を求め、さらに、答弁書の主張に対し意見があれば述べるよう、相当の期間を指定した。 1 請求人は、本件無効審判の請求をすることについて、利害関係を有する者であることにつき、審判請求書において何ら主張をしていないため、請求人が本件無効審判を請求することについて疑義がある。 2 「三相乳化」の文字について 請求人は、本件商標の構成中の「三相乳化」の文字は界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術を意味するものとして普通に使用されている旨を主張し、その事実を明らかにする証拠(甲2、甲3)を提出しているが、請求人の提出した上記証拠は、そのほとんどが「神奈川大学」に関する記事であって、当該証拠からは、「三相乳化」の文字が、本件商標の指定商品に係る「化粧品」を取り扱う分野において、界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術を表すものとして、当該商品の取引者、需要者の間で、広く理解され、認識されていることについての請求人の主張に疑義があり、かつ、本件商標を、その指定商品に使用するときには、これが、あたかも、界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術を用いて製造した化粧品であるかのごとく、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあることについての請求人の主張に疑義がある。 第5 審尋に対する請求人の回答 請求人は、上記審尋に対して、令和5年8月14日付け回答書(以下「回答書」という。)において、要旨以下のとおり回答し、甲第6号証ないし甲第7号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 請求人の利害関係について 請求人は、「三想乳化」(商願2021-155845)の商標登録出願人であり、令和4年3月7日付けで、本件商標を引用商標として商標法第4条第1項第11号に該当するとの拒絶理由通知書を受けている。 そして、本件審判請求は、その拒絶理由の解消を目的にしたものであるから、請求人は、本件商標を無効とすることに関して利害関係を有している者である。 2 請求人が提出した証拠のほとんどが「神奈川大学」に関する記事であるとの指摘について (1)審尋においては、「請求人が提出した証拠(甲2、甲3)は、そのほとんどが「神奈川大学」に関する記事であり、当該証拠は、「三相乳化」の文字が、本件商標の指定商品中の「化粧品」を取り扱う分野において、界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術を表すものとして、当該商品の取引者、需要者の間で、広く理解され、認識されていることを証明しているとはいえない」と述べているところ、そもそも、本件商標の指定商品として残っている第3類「化粧品(界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品を除く。)」に関連する「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術」は神奈川大学が発明した特許技術(当該技術に関して神奈川大学は多数の特許を有しているが、参考までにそのうちの3件の特許に関する特許公報を甲第6号証として提出する。)であり、その乳化技術の紹介や利用した商品を紹介するウェブサイト記事や新聞記事に「神奈川大学」の名称が記載されていても何ら不思議ではないし、それをもって、「三相乳化」の文字が界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術を表すものであることが否定されるべき理由とはならない。 特に、「神奈川大学」は、産学連携を推進する観点から、当該特許のライセンスなども進めている(甲2、甲3、甲7)ことを踏まえるならば、なおさらといえる。 (2)重要なのは、「神奈川大学」の名称が記載されているか否かでなく、請求人が提出した証拠にあるとおり、「三相乳化」の文字が生産方法や技術を表すものとして使用されている点にある。 例えば、先般、請求人が提出した甲第2号証の2には、「三相乳化法は、従来の乳化方法に欠かせない界面活性剤の代わりに、柔らかい親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した新しい乳化方法です。」と、甲第2号証の3には、「三相乳化技術は、従来用いられてきた界面活性剤の科学的作用でなく、柔らかい親水性ナノ粒子の物理的作用(ファンデルワールス引力)を利用した新しい乳化技術です。」と、甲第2号証の4には、「三相乳化は、界面活性剤を使用しない乳化方法です。その代わりに、柔らかい親水性ナノ粒子の物理的作用力(ファンデルワールス引力)を利用して物質を乳化させます。」と、甲第3号証の1には、「界面活性剤の代わりに親水性ナノ粒子を利用した乳化技術「三相乳化法」を採用。」と、甲第3号証の3には、「界面活性剤を使わずに水と油を混ぜ合わせる「三相乳化技術」を使った化粧品ブランド「プラウドブルー」のラインアップに加える。」といった具合に、いずれも生産方法や技術を表すものとして使用されている。 (3)また、審尋では「界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術を表すものとして、当該商品の取引者、需要者の間で、広く理解され、認識されていることを証明しているとはいえない」とされているので、請求人は、「三相乳化」の文字が界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術や方法を意味するものとして普通に使用されていることを証明するために、甲第7号証を提出する。 当該証拠は、日経テレコンの新聞記事検索において、本件商標に対する取消2018-300004以外の取消審判の審決がすべて確定した平成30年9月以降の新聞記事を「三相乳化」、「界面活性剤」、「化粧品」を検索キーとして検索して得られた全新聞記事の写しであり、それによれば、「三相乳化」の文字が上記(2)で述べたのと同様に、生産方法や技術を表すものとして使用されていることが分かる。 検索の期間を平成30年9月以降に限定し、検索キーとして「三相乳化」、「界面活性剤」及び「化粧品」の3つの単語を選んでも、このように多数の新聞記事がヒットするのであり、しかも、これらの記事は、その記載をみても明らかなとおり、いずれも、界面活性剤を使用していないとの記事となっており、「三相乳化」が界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術を表すものとして、当該商品の取引者、需要者の間で、広く理解され、認識されていること明らかである。 3 答弁書の主張に対する意見について (1)本件商標の指定商品に関する被請求人の主張について 被請求人は、本件商標の指定商品について、「「界面活性剤を使用しておらず、親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品以外の化粧品」や、「界面活性剤を使用した化粧品」、さらには、「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増すための一般的な化粧品」などが含まれると解釈するのが自然です」(答弁書3頁12行目~18行目)と主張している。 しかし、本件商標の指定商品については、審尋においても説明されているとおり、その商標登録原簿(甲1の1)の第一表示部の表示番号17番ないし21番に、それぞれの商品についての登録を取り消すとの審判の確定登録がなされており、取り消されずに残っているのは、第22番の審判の「不成立」の確定登録がなされた取消2018-300004に係る請求に係る指定商品である「第3類 化粧品(界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品を除く)」だけである。 すなわち、「化粧品」の中でも、「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」については、商標登録原簿(甲1の1)の第一表示部の表示番号19番(取消2018-300005の確定登録)のとおり、商標登録が取り消されているのである。 それにもかかわらず、被請求人が「「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増すための一般的な化粧品」などが含まれると解釈するのが自然です」と主張しているのは、被請求人は、当事者でありながら、取消2018-300005の登録取消しの確定登録の推移を無視し、そもそも、請求人は取消2018-300005の審決に対して、出訴することなく受け入れたにもかかわらず、あたかも取消2018-300005によって登録が取り消された指定商品がなかったかのごとき主張であり、本件商標の指定商品の範囲を正しく理解していない。 請求人は、取消2018-300005の登録取消しの確定登録によって、「化粧品」から「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」についての登録が取り消されたことを踏まえ、本件審判請求時点での本件商標の指定商品が、実質的には、界面活性剤を使用した乳化の技術を用いて製造した化粧品に限定されていることになると主張したのであって、何ら、恣意的、限定的に解しているものではないから、上記の請求人(合議体注「被請求人」)の主張は、失当といわざるを得ない。 (2)「三相乳化」に関する取引者、需要者による認識に関する被請求人の主張について ア 被請求人は、答弁書の「(2)「三相乳化」の文字について」(答弁書4頁11行目~5頁29行目)において、まず、「甲第2号証の2ないし甲第3号証の8は、ほとんどが神奈川大学の技術紹介だけであり、「三相乳化」がどのような技術であるのかについて具体的に記載されているわけではありません。」、「請求人の提出した証拠資料だけでは、「三相乳化」に関して、一般需要者、取引者が詳しい技術内容まで理解しているか、はなはだ疑問であるといわざるを得ません。」、「請求人が提出した上記証拠資料は、一部の研究者のみが知り得る商品知識についての記載であり、上記証拠資料では、現在においても「三相乳化」に関して、一般需要者、取引者が詳しい技術内容まで理解しているものとはいえない」と主張している。 また、被請求人は、取消2018-300004の確定審決を挙げて、「請求人が提出した証左をみても「三相乳化」という技術についての説明は様々であって、明確な定義がされているとはいえないものであり、「三相乳化」についての明確な定義がない以上、「三相乳化の技術を用いて製造した化粧品」が「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」であると認めることはできない。」と認定されています。」と述べて、「「三相乳化」に関して、明確な定義がなく、一般需要者、取引者が詳しい技術内容まで理解しているとはいえないと思料されるので、請求人の、「三相乳化」の文字が界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術を意味するものとして普通に使用され、取引者、需要者に理解されているとの前提での本件商標が無効理由に該当するとの判断は間違ったものといわざるを得ません。」とも主張している。 イ しかし、請求人が提出した甲第2号証、甲第3号証及び甲第7号証は、いずれも、インターネット上のウェブサイトの記事や、一般紙や業界紙を含む新聞記事の写しであり、一部の研究者のみが目にする研究書などではないのであるから、請求人が提出した証拠資料が一部の研究者のみに係るものであるとの被請求人の主張は全く失当であり、化粧品を取り扱う事業者や、一般消費者も目にすることができるものである。 また、神奈川大学の記載があるとしても、上記2で述べたとおり、当該乳化技術が「神奈川大学」の特許発明であることからすれば、その技術の紹介に「神奈川大学」の名称が記載されていても何ら不思議ではないし、それをもって、「三相乳化」の文字が界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術を表すものであることが否定されるべき理由とはならない。 重要なのは、「三相乳化」の文字が生産方法や技術を表すものとして使用されている点にあるのであって、このことは、請求人提出の証拠によって明らかである。 そして、請求人が提出した甲第2号証、甲第3号証及び甲第7号証を加えてみると、いずれも「三相乳化」が界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術を表すものとしていることから、請求人の「「三相乳化」の文字が界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術を意味するものとして普通に使用され、取引者、需要者に理解されている」との主張に、何ら誤りはない。 また、本件の無効理由は、品質誤認という公益上の理由であることを踏まえれば、もちろん、一部の取引者、需要者であっても品質誤認のおそれがあるならば、そのような商標を保護すべき理由はないのであるから、登録を無効とすべきといえる。 そして、本件商標の指定商品の取引者や需要者は、単に一般消費者に限定されるわけではなく、その中には、化粧品を取り扱う卸売業者や小売業者などの事業者も含まれている。 そうすると、考慮すべき、本件商標の指定商品の取引者や需要者は、一般消費者のみでなく、化粧品に関するより専門的な知識を有する化粧品を取り扱う卸売業者や小売業者などの事業者をも基準に判断する必要があるから、かかる観点においても、一般需要者、取引者が詳しい技術内容まで理解しているものとはいえないとの被請求人の主張は失当といわざるを得ない。 加えて、被請求人が挙げる取消2018-300004の確定審決は、不使用取消審判に関するものであり、品質誤認を理由とする本件無効審判とは、適用する条文や要件、提出されている証拠方法などすべて異なるものであり、その審決の一文を挙げても、事案を異にするものであって、本件審理に何ら影響を与えるものではない。 付言するならば、取消2018―300004の審決取消訴訟(令和3年(行ケ)第10061号)の判決の骨子は、商標権者の使用に係る商品が審判請求に係る商品に当たることの立証責任が被請求人側にあるか否かに関するものであって、「三相乳化」の定義に関する部分を判断したものでもない。 このため、取消2018-300004の審決の一文を根拠に、「三相乳化」について明確な定義がなく、一般需要者、取引者が技術内容を理解できないとし、本件商標が無効理由に該当すべきとする請求人の主張を間違ったものとする被請求人の主張こそが失当である。 4 まとめ 以上のとおりであるから、本件商標は、商標登録がされた後、商標登録原簿(甲1の1)の第一表示部の表示番号17番ないし21番に、それぞれの商品についての登録を取り消すとの審判の審決の確定があった後には、その残された指定商品の全てとの関係で、商標法第4条第1項第16号に掲げる商標に該当するものとなっているので、同法第46条第1項第6号により、登録を無効にすべきものである。 第6 当審の判断 請求人は、本件商標につき、商標登録がされた後において、その登録が商標法第4条第1項第16号に掲げる商標に該当するものとなっていることを理由に、同法第46条第1項第6号に基づく商標登録の無効の審判を請求している。 1 請求の利益について 審尋において、請求人は本件無効審判の請求をすることについて、利害関係を有する者であることにつき、審判請求書において何ら主張をしていないため、請求人が本件無効審判を請求することについて疑義がある旨を通知した。 これに対し、請求人は、商標「三想乳化」(商願2021-155845)の登録出願人であり、令和4年3月7日付けで本件商標を引用商標として商標法第4条第1項第11号に該当するとの拒絶理由通知書を受けているものであって、本件審判請求は、その拒絶理由の解消を目的にしたものであるから、請求人は、本件商標を無効とすることに関して利害関係を有している者である旨主張する。 そうとすれば、請求人が「三想乳化」の文字を含む商標を登録出願し、拒絶の理由が通知されている以上、請求人は、本件審判の請求をすることについて法律上の利益を有するものと解するのが相当である。 したがって、本件審判の請求は、その請求を不適法なものとして却下することはできない。 2 商標登録後における商標法第4条第1項第16号該当性(商標法第46条第1項第6号)について (1)本件商標について 本件商標は、別掲のとおり、4つの黒塗りした四角形状の図形を、各図形の間に僅かに間隔を空けながら、横一列に配置し、その各図形の中に、1文字ずつ「三」、「相」、「乳」及び「化」の文字を白抜き状に表示してなる構成からなるものである。 (2)本件商標の指定商品について 本件商標の指定商品は、第3類「せっけん類,化粧品,香料類」を指定商品として、設定登録されたところ、平成29年12月28日に、商標権の一部取消審判(取消2018-300002、取消2018-300003、取消2018-300005、取消2018-300006及び取消2018-300007の5件の審判事件)が請求され、審理の結果、同30年7月31日又は同年8月1日に、本件商標の指定商品の一部について取り消す旨の審決がされたもので、いずれも同年10月5日に審判の確定登録がなされた結果、本件商標はその指定商品中、第3類「せっけん類(界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造したせっけん類を除く。)」、同「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造したせっけん類」、同「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」、同「香料類(界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した香料類を除く。)」及び同「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した香料類」の商品が、それぞれ取り消されたものである。 以上から、上記した商標権の一部取消審判事件によって、本件商標の指定商品は、設定登録時の指定商品から「せっけん類,香料類」及び「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」について取り消され、現在では、「化粧品」のうち「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」を除いた商品、すなわち、第3類「化粧品、ただし、界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品を除く。」であるといえる。 ところで、上記審判事件の確定登録後の、本件商標の指定商品についてみると、当該指定商品は、界面活性剤を使用せずに製造される化粧品であって、かつ、界面活性剤の代わりに「親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術」を用いて製造される化粧品が、製法、原材料、用途等が多様な「化粧品」の中から除かれているものであるといえるところ、界面活性剤を使用せずに製造される化粧品については、以下に挙げるように、「界面活性剤を使用しないものであって、親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術以外の技術による乳化」にかかる商品が、当該商品の分野において扱われていることが認められる。 ア 「資生堂」のウェブサイトには、「巨大な粒子を安定化、リピッドシェル乳化」の見出しの下、「一般的には、乳化粒子を巨大化すると分離や合一などが起こり安定化は難しいことですが、界面活性剤を用いず、粒子の外側に固形油分の殻(シェル)を作ることでこれを解決しました。」(甲4)の記載がある。 イ 「信州大学工学部物質化学科」のウェブサイト(https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/engineering/chair/chem005/Index.htm)には、「企業の方へ 研究シーズはこちら 研究シーズ動画」の見出しの下、「乳化剤を使用しない乳化技術~エフィ~」とあり、これのリンク先には「乳化剤を使用しない乳化技術~エフィ~」の見出しの下、「油と水は互いに混ざり合わないことから、油と水を混合するためには、一般に、界面活性剤などの乳化剤が使用される。本出展では、界面活性剤などの乳化剤を一切使用しない乳化技術(エフィ)について紹介する。」(職権調査:https://www.youtube.com/watch?v=pnEDV2CT_IM&t=16s)の記載がある。 ウ 「PR TIMES」のウェブサイトには、「油分・水分を自在に混ぜる新乳化技術「コアコロナ乳化」を開発 株式会社資生堂 2017年10月20日」の見出しの下、「資生堂は、これまでの乳化で一般的に用いられている界面活性剤を使うことなく、さまざまな種類の油と水を自由な配合比率で自在に混ぜることができる全く新しい乳化技術「コアコロナ乳化」を開発しました(図)。」(職権調査:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000977.000005794.html)の記載がある。 エ 「フェース」のウェブサイトには、「界面活性剤なしでも水と油は混ざる?」の見出しの下、「実は、界面活性剤を使わなくても水と油を混ぜる方法があります。水とゲル化剤でつくる「ゲル製剤」(ゲルはドイツ語で英語ではジェル)や、「高圧乳化」など界面活性剤を使わず機械的に乳化させる方法などが代表例ですが、化粧品で最もポピュラーなのは「ゲル製剤」です。」(職権調査:https://www.lamellar.jp/about/no_surfactant.html#:~:text=実は、界面活性剤を,なのは「ゲル製剤」です。)の記載がある。 オ 「美容科学ラボ」のウェブサイトには、「”乳化=界面活性剤”の概念を捨てる!界面活性剤を使用しない乳化方法について」の見出しの下、「乳化剤を使わない乳化技術では、凝集のきっかけとなるオストワルド・ライプニングを制御しようという技術です。」(職権調査:https://rikei-biyouka.com/2017/10/column-8/#:~:text=乳化剤を使わない乳化技術では、凝集のきっかけ,てくれることはありません。)の記載がある。 カ 「エーセンドネット」のウェブサイトには、「エーセンドネットのセラミド美容液も合成界面活性剤や乳化剤を一切使わない無添加化粧品です。」(職権調査:https://www.a-send.net)の記載がある。 これらの実情からすると、上記審判事件の確定登録後の、本件商標の指定商品には、化粧品であって、界面活性剤を使用せずに、親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術以外の界面活性剤を使用しないで乳化をさせる技術により製造された化粧品」が包含されているというべきである。 (3)「三相乳化」の文字について ア 「三相乳化」の構成中「乳化」の文字について (ア)「乳化の技術は、食品、医薬品、化粧品、燃料とさまざまな場所で使われています。」(甲2の4)や、「食品や化粧品をはじめ、医薬品、燃料など、私たちの生活の中で様々に活用されている「乳化」という技術。実は、「乳化」の技術にもいろいろな種類があるのをご存知でしたか?」(甲2の7)、「クリームや乳液、リキッドファンデーション、ヘアコンディショナーなどの化粧品には、水や保湿剤のように水に溶ける成分と油分とを同時配合することが求められることから、乳化技術は欠かすことのできない技術です。」(甲4)との記載がある。 (イ)化粧品を製造する際に使用される「乳化」の技術名としては、「リピッドシェル乳化」、「たんぱく質ゲル乳化」、「寒天ゲル乳化」、「新高分子乳化」、「液晶乳化」、「SMT乳化」、「アミノ酸ゲル乳化」、「B&Sゲル乳化」、「SGS乳化」、「TSポリマー乳化」、「マルチプル乳化」などが認められ(甲4の2葉目上段の表)、これらの中には界面活性剤を用いない乳化技術(甲4には「安定的に保つ「リピッドシェル乳化法」を確立・・・安定化は非常に難しいことですが、界面活性剤を用いず、粒子の外側に固形油分の殻(シェル)を作る」の記載がある。)などがある。 イ 「三相乳化」の使用状況について (ア)インターネット記事 a 「ウィキペディア」のウェブサイトには、「三相乳化(神奈川大学)」の見出しの下、「三相乳化(神奈川大学)(さんそうにゅうか)とは、従来、産業界などでエマルション(乳化)方法に使用されていた界面活性剤を使用せず、ファンデルワールス力を利用して乳化する技術のことである。」との記載が(甲2の1)、「卓越した研究 神奈川大学技術とマッチング」のウェブサイトには、「001 界面活性剤を使わない環境に優しい乳化」の見出しの下、「“三相乳化法”は、従来の乳化方法に欠かせない界面活性剤の代わりに、柔らかい親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した新しい乳化方法です。」との記載(甲2の2)が、それぞれ認められ、そのほか、「三相乳化」、「三相乳化技術」及び「三相乳化法」が神奈川大学の技術(特許技術)であることが表示されているウェブサイトが認められる(甲2の3~甲2の7)。 b 「三相乳化(神奈川大学)(さんそうにゅうか)とは、・・・神奈川大学の・・教授が発明し、神奈川大学が特許(特許第3855203号『乳化分散剤及びこれを用いた乳化分散方法並びに乳化物』)を含む3特許を取得した。」(甲2の1)、「三相乳化技術とコラボいただける企業・機関を求めます。」(甲2の2)、「三相乳化は2006年に特許を取ったまだ新しい技術。」(甲2の4)、「三相乳化法とは、神奈川大学の田嶋先生が開発された特許技術で、界面活性剤をしない乳化法・・・こちらは特許技術のため誰でも使用することができる訳ではありません。」との記載がある。 (イ)新聞記事 a 「日経ヘルス」(2022/3/14)には、「トレンドフォーカスーBEAUTYー光変換、へバリン、泡・・・肌を守り美しく見せる最新UVケアコスメ」の見出しの下、「・・・薬用UVジェル。界面活性剤の代わりに親水性のナノ粒子を利用した新しい乳化技術「三相乳化法」を採用。」との記載(甲3の1)、「日刊工業新聞」(2021/6/4)には、「神奈川大、SDGsでホテルと連携 界面活性剤フリー化粧品提供」の見出しの下、「プラウドブルーは界面活性剤を使わずに水と油を混ぜ合わせる同大の「三相乳化技術」を使った化粧品。」との記載(甲3の2)、「日経MJ(流通新聞)」(2017/4/5)には、「ココカラファイン、PB日焼け止め、潤い成分アップ。」の見出しの下、「神奈川大学が持つ特許技術「三相乳化法」を活用した界面活性剤を使わない日焼け止めとして、2015年3月に発売。」との記載(甲3の6)が、それぞれ認められる。 b 「三相乳化」が神奈川大学の技術(特許技術)であることが表示されている記事情報、ウェブサイトなどが認められる(甲3、甲7)。 (4)判断 ア 請求人は、本件商標の構成中「三相乳化」の文字が、界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術を意味するものとして普通に使用されている旨を主張しているところ、上記(3)からすると、「三相乳化」の構成文字中「乳化」の文字は、「乳濁液に界面活性物質を加えてかきまぜ、これを安定に保つ操作。」であり(「広辞苑 第7版」株式会社岩波書店)、「化粧品」を製造する際に広く用いられる技術であるといい得る。 イ 一方、「三相乳化」は、神奈川大学によって開発された、従来の乳化方法に欠かせない界面活性剤の代わりに、柔らかい親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した新しい乳化方法であって、本件商標の指定商品を含む「化粧品」を扱う分野においては、化粧品の製造過程で用いられる技術のうち、「乳化技術」の名称の一であることがうかがえる。 ウ しかし、「化粧品」を扱う分野において、「三相乳化」が、化粧品の製造過程で用いられる技術のうち「乳化技術」の名称の一であることについて掲載、紹介されている媒体は、新聞・雑誌・ウェブサイトの情報等の記事であるところ、それらは、当該商品の取引者(製造者、販売者等)が主たる購読層や対象といい得る、専門紙(誌)、企業のウェブサイトにおける技術紹介のサイト、プレスリリース記事などにおけるものが多数である。 また、本件商標の指定商品を含む「化粧品」を扱う分野における主たる需要者といえるものは、一般消費者であるところ、当該消費者が、「化粧品」に関する情報を入手する際に使用(購読や閲覧)する、化粧品との関連が強い「美容」や「ファッション」の分野の一般紙・雑誌やウェブサイト、広告などにおいて、「三相乳化」を紹介した記事等は、ごく僅かといえる。 エ そうすると、「三相乳化」の構成文字中「乳化」の文字は、「乳濁液に界面活性物質を加えてかきまぜ、これを安定に保つ操作。」を意味する語(前掲広辞苑)であり、少なくとも「化粧品」の分野においては、化粧品を製造する際に用いられる技術の名称として一般に使用されているものであることからすれば、化粧品の取引者、需要者においては、「乳化」の意味合いは相当程度知られているといい得る。 しかしながら、本願商標の構成中「三相乳化」の文字は、本件商標の指定商品を含む「化粧品」を扱う分野においては、化粧品を製造する際に用いられる何らかの乳化技術の名称を表しているといい得る場合があるとしても、請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によっては、化粧品の一般需要者をして、当該「三相乳化」の文字より直ちに「界面活性剤を使用しないで製造される乳化技術」を理解させ、これを化粧品に使用したときには、「界面活性剤を使用しない乳化技術で製造される化粧品」であると認識させ、理解させるものであるとはいい難い。 オ そうとすれば、「三相乳化」は、これを「化粧品(界面活性剤を使用せず、その代りに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品を除く。)」に使用しても、これに接する需要者が、その商品の製造方法等を正確に理解し、認識するものとはいえず、当該商標が表示していると通常理解される品質がいかなるものなのかを特定することはできないものというのが相当である。 そうである以上、「三相乳化」は、商品(化粧品(界面活性剤を使用せず、その代りに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品を除く。))の品質の誤認を生ずるおそれがある商標ということはできない。 カ したがって、本件商標は、その商標登録がされた後において、商標法第4条第1項第16号に該当するものになっているということはできない。 (5)請求人の主張について ア 請求人は、回答書において、「「三相乳化」の文字が界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術や方法を意味するものとして普通に使用されていることを証明する」として、本件商標に対する取消審判の審決が全て確定した平成30年9月以降の新聞記事を、「三相乳化」、「界面活性剤」及び「化粧品」を検索キーとして、検索して得られた全新聞記事の写し(甲7)を提出し、検索キーとして「三相乳化」、「界面活性剤」及び「化粧品」の3つの単語を選んでも、多数の新聞記事がヒットし、しかも、これらの記事は、いずれも、界面活性剤を使用していないとの記事になっており、「三相乳化」が界面活性剤を使用しない方法による乳化の技術を表すものとして、当該商品の取引者、需要者の間で、広く理解されている旨主張する。 しかしながら、これらの記事は、「三相乳化」に関する神奈川大学、あるいは同大学からの技術の供与を受けた化粧品の製造者、販売者に関する記事が多数であって、かつ、これらの記事が掲載されているメディアは、いわゆる専門紙、業界紙、若しくはプレスリリースの記事であって、これらによって当該商品の需要者のうち主たる需要者である一般消費者にとっては、容易に認識させる媒体とはいい難いことから、一般消費者の認識、理解がどのようなものとなっているのかについては、需要者の認識や理解を具体的に示した証拠が認められないことから、これを評価することができない。 イ 請求人は、回答書において、取消2018-300005の登録取消しの確定登録によって、「化粧品」から「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」についての登録が取り消されたことを踏まえ、実質的には、指定商品は、界面活性剤を使用した乳化の技術を用いて製造した化粧品に限定されることになる旨主張する。 確かに、本件商標の商標登録原簿をみてみると、その第一表示部の表示番号17番ないし22番には、「審判の確定登録」が記録されており、当該表示番号の19番には、「登録第4776699号商標の指定商品中、第3類「界面活性剤を使用せず,その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」についての商標登録を取り消す。」と登録されている。 そこで、本件商標の指定商品について検討すると、当該商標登録原簿の表示番号19番によって取り消された商品は、化粧品のうち、界面活性剤を使用しないものであること、合わせて、界面活性剤の代わりに「親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術」を製造過程において用いた化粧品であることのそれぞれの要件を備えた化粧品であるといい得る。 ところで、上記(2)において挙げた本件商標の指定商品である化粧品に係る分野における界面活性剤の使用に関する実情や、上記(3)ア(イ)に記載の実情に示されているとおり、化粧品においては、界面活性剤を化粧品の製造過程で使用しないで乳化させる技術がそれぞれ異なる技術による化粧品が認められることからしても、本件商標の指定商品は、上記取消審判の確定登録から認められる「界面活性剤を使用せず、界面活性剤の代わりに「親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術」を用いて製造される化粧品」に限って、「化粧品」から除かれている。 してみると、取消2018-300005の商標権の一部取消し審判事件の確定登録によって取り消された「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」は、商品「化粧品」のうち、「界面活性剤を使用しないで製造される化粧品」に包含される商品であるといい得るが、必ずしも、製造技術等において同種の商品ということはできず、「親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術以外の乳化技術によって、界面活性剤を使用せずに製造される化粧品」とは別異のものというべきである(下線は、便宜上、合議体が付与した。)。 そうすると、上記(2)のとおり、本件商標に係る一部取消審判の審決の確定登録をもって、本件商標の指定商品の一部が取り消されているとしても、当該確定登録後の指定商品は、界面活性剤を使用した乳化の技術を用いて製造した化粧品に限定されるものではない。 仮に、本件商標の指定商品が、界面活性剤を使用した乳化の技術を用いて製造した化粧品に限定されるとしても、本件商標は、その商標登録がされた後において、その登録が商標法第4条第1項第16号に掲げる商標に該当するものとなっているものではないことは、上記(4)のとおりであって、その判断を左右するものではない。 ウ その他、請求人の主張は採用することができない。 3 むすび 以上のとおり、本件商標は、その商標登録がされた後において、商標法第4条第1項第16号に該当するものとなっているものと認められないから、同法第46条第1項第6号により、その登録を無効にすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-890067

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