商標無効審判
2022-890058
ジュリアスタートオプティカルエンタープライズ、ジュリアスタート、ジュリアス、タート、オプティカルエンタープライズ
- 審判番号
- 2022-890058
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2021-005413
- 登録番号
- 6466795
- 請求日
- 2022年07月15日
- 審決日
- 2023年09月15日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】タート オプティカル エンタープライゼズ エルエルシー
- 【請求人代理人】深井 俊至
- 【被請求人】株式会社 The LIGHT
- 【被請求人代理人】林 栄二
- 【被請求人代理人】篠田 貴子
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 小松 里美
- 審判官 渡邉 あおい
- 分類
- T111 .261-Y (W09) / T111 .262-Y (W09) / T111 .263-Y (W09) / T111 .271-Y (W09)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法46条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号、商標法第46条第1項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6466795号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6466795号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、令和3年1月19日に登録出願、第9類「眼鏡フレーム,眼鏡,眼鏡の部品及び附属品,眼鏡用つる,眼鏡用レンズ,サングラス」を指定商品として、同年10月19日に登録査定され、同年11月5日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
請求人が引用する登録第5427549号商標(以下「引用商標」という。)は、「TART」の欧文字を標準文字で表してなり、平成23年1月18日に登録出願、第9類「眼鏡,眼鏡の部品及び附属品」を指定商品として、同年7月22日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。
第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第57号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当し、その登録は商標法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
2 具体的な理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標の類似性について
(ア)本件商標は、「JULIUS」と「TART」と「OPTICAL」と「ENTERPRISE」を四段書きにし、「TART」を、「JULIUS」、「OPTICAL」、「ENTERPRISE」よりも大きく表示したものである。四段書きであるので、「JULIUS」(ジュリアス)、「TART」(タート)、「OPTICAL」(オプテイカル)、「ENTERPRISE」(エンタープライズ)の各部分は、分離して観察できる。「TART」は、「JULIUS」、「OPTICAL」、「ENTERPRISE」よりも大きく表示されているので、「TART」の部分は特に分離して観察できる。
「OPTICAL」は、「目の」、「視力の」、「視覚の」、「視力を助ける」、「光学(上)の」などの意味である(甲8、甲9)。本件商標の指定商品及び引用商標の指定商品との関係において、「OPTICAL」の部分は、商品の種類、用途ないし機能を示すにすぎず、識別力がないか少なくとも識別力がほとんどない。
「ENTERPRISE」は、「事業」、「企業」、「会社」などの意味である(甲8、甲9)。企業、会社ないし事業者がその事業に商標を使用するのであるから、「ENTERPRISE」の部分は、識別力がないか少なくとも識別力がほとんどない。
(イ)本件商標の「TART」の部分及び引用商標「TART」は、本件商標の指定商品の分野(眼鏡関係分野)においては、1948年にアメリカ合衆国ニューヨーク州で設立された「Tart Optical Enterprises,Inc.(タート オプティカル エンタープライゼズ インク)」(以下「タート社」という。)の創立者であり眼鏡フレームの伝説的職人である「Julius Tart(ジュリアス・タート)」氏(以下「タート氏」という。)(甲4、甲10)又はタート社を想起させる。
請求人は、タート社の正当な承継者であり、「TART」ブランドの保有者である(甲5~甲7、甲10、甲20~甲25、甲47、甲48、甲56、甲57)。
請求人の名称は、「Tart Optical Enterprises,LLC」(タート オプティカル エンタープライゼズ エルエルシー)である。2017年に、請求人は権利保有会社となり、タート氏の「Tart Optical Enterprises,Inc.」と同じ名称の「Tart Optical Enterprises,Inc.」を事業会社とし、以降は、同社が「TART」ブランドの眼鏡関係商品を製造、販売している(甲47)。タート氏又はタート社の正当な承継人である請求人とその事業会社がその名称に「Tart」を冠して、「TART」ブランドの眼鏡関係商品を製造、販売しているのである。
なお、「Optical」及び「Enterprises」は、上記(ア)のとおり、識別力がないか少なくとも識別力がほとんどない。
日本を含む世界において、請求人の「TART」ブランドの眼鏡関係商品(眼鏡,眼鏡の部品及び附属品)が、請求人又はそのライセンシーによって、製造、販売され、映画スターを含む著名人にも使用され(甲10~甲19、甲26~甲46)、眼鏡関係商品において「TART」は世界的に知られてきたブランドである。
一方、被請求人は、同人のウェブページ(甲4)において、同人を「JULIUS TART OPTICAL」と称して、「JULIUS TART OPTICALは1950年代初頭に創業したタート・オプティカル・エンタープライズ社の創立者であるタ―ト氏の意思を継ぐブランドとして同氏の甥のリチャード・タート氏と共に新規に創設したブランドです。リチャード氏はタート・オプティカル社のファクトリーやマーケティングに関わった実績を持ち、数多くの資料を保有し、唯一ジュリアス氏の意思を継ぐ存在となります。」のように述べている。
リチャード・タートがタート氏の甥であることは正しいが、リチャード氏と被請求人のいずれも、タート氏又はタート社から何らタート社のブランド(「TART」を含む。)ないし権利(眼鏡事業の資料に関する権利を含む。)を取得しておらず、被請求人がタート社を承継しているかのような上記記載は全くの虚偽である(甲47)。
被請求人の代表者であるオガラトーマス(甲3)は、請求人の「TART」ブランドの眼鏡事業に関心があるかのように装い、2015年に請求人に接触し請求人と話をした事実があり、請求人が「TART」ブランドの眼鏡事業を行ってきたことについて知っていた(甲47、甲49)。
被請求人は、同人が製造、販売する眼鏡商品に「TART」を使用し(「TART」の部分を大きく目立つように表示。甲4、甲51~甲55)、「JULIUS TART OPTICAL」と称し、被請求人がタート氏又はタート社を承継するかのような説明をし(甲4)、被請求人の商品がタート社の存したニューヨーク州ニューヨークで製造されたかのような虚偽の表示をし(甲47、甲50)、被請求人があたかもタート氏又はタート社を承継しているかのように需要者を誤認させている。
本件商標の「TART」の部分及び引用商標「TART」は、タート社の創立者であるタート氏又はタート社を想起させる。
本件商標の「JULIUS」「TART」の部分は、タート社の創立者であるタート氏又はタート社を想起させることは明らかである。
「JULIUS TART」は、タート社の創立者の氏名である。人を呼ぶとき、その姓(ラースト・ネーム)で呼ぶことが極めて多いことからも分かるように、その姓の部分が重要である。「Julius」(ジュリアス)は、欧米系の人のファースト・ネームとして特別なものではなく、一般に男性のファースト・ネームであり(甲7)、この部分はそれほど注意をひかない。タート氏が創立したタート社もタート氏のラースト・ネームを冠した名称「Tart Optical Enterprises,Inc.」である。
被請求人が、タート社の創立者であるタート氏の氏名(JULIUS TART)を本件商標中に入れたことは明らかである。
本件商標において、「TART」は、「JULIUS」、「OPTICAL」、「ENTERPRISE」よりも大きく表示されている。
さらに、上記のとおり、被請求人は、「JULIUS TART OPTICAL」の中の「TART」の部分を強調して、被請求人商品の広告、宣伝をしている(甲4、甲51~甲55)。被請求人自身も「TART」が主要部分であると認識しており、需要者も「TART」の部分が主要部分であると認識する。
(ウ)以上のとおり、本件商標中、「TART」(タート)の部分が要部である。
(エ)引用商標は、「TART」(タート)である。
本件商標と引用商標とは、「TART」の部分が同一(実質同一を含む。以下繰り返さない。)又は少なくとも類似である。
本件商標と引用商標とは、「TART」の部分において、外観、称呼、観念が同一又は少なくとも類似である。
したがって、本件商標と引用商標とは類似する。
イ 商品の類似性について
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一(少なくとも類似)であることは明らかである。
ウ 小括
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
上記(1)の予備的主張とするものである。
ア 本件商標と引用商標の類似性について
上記(1)アに記載のとおりである。
イ 商品の類似性について
上記(1)イに記載のとおりである。
ウ 本件商標は請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標であること
上記のとおり、「TART」は、眼鏡関係分野においては、タート氏又はタート社を想起させる。請求人は、タート社の正当な承継者であり、「TART」ブランドの保有者で、日本を含む世界において、請求人の「TART」ブランドの眼鏡関係商品が、請求人又はそのライセンシーによって、製造、販売され、映画スターを含む著名人にも使用され(甲10~甲19、甲26~甲46)、眼鏡関係商品において「TART」は世界的に知られてきたブランドである。
一方、上記のとおり、被請求人は、タート氏又はタート社から何らタート社のブランドないし権利(眼鏡事業の資料に関する権利を含む。)を取得していないにもかわらず、同人が製造、販売する眼鏡商品に「TART」を使用し(「TART」の部分を大きく目立つように表示。甲4、甲51~甲55)、「JULIUS TART OPTICAL」と称し、被請求人がタート氏又はタート社を承継するかのような説明をし(甲4)、被請求人があたかもタート氏又はタート社を承継又はライセンスを受けているかのように需要者を誤認させている(甲47)。
本件商標においても、「TART」は、「JULIUS」、「OPTICAL」、「ENTERPRISE」よりも大きく表示されている。
以上により、被請求人が、本件商標をその指定商品に使用すると、需要者は、被請求人の商品が、タート社の正当な承継人である請求人の商品と混同を生ずるおそれ(ライセンスを受けているとの誤認を生ずるおそれを含む。)がある。
エ 小括
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標と引用商標との対比
商標の類否判断については、最高裁判決(昭和39年(行ツ)第110号、平成19年(行ヒ)第223号)において判示されている。
そこで、本件商標と引用商標との類否について検討すると、本件商標は、「JULIUS TART OPTICAL ENTERPRISE」の欧文字を四段に横書きしてなるところ、構成文字全てが同じ書体で外観上まとまりよく一体的に表されていると共に、それぞれの文字部分の中心が揃うように配されていることから、本件商標は「TART」の文字部分のみが分離独立して認識されるものではなく、むしろ全体が一体的な商標としてのみ認識されるべきものである。
また、本件商標の全体より自然に生ずる「ジュリアスタートオプテイカルエンタープライズ」なる称呼は、多少冗長であるものの、語呂が良く一気一連に淀みなく発音されることからすると、称呼上においても、本件商標が「TART」とそれ以外の文字部分に分離して認識されなければならないとする特段の事情は存在しない。
この点、請求人は、本件商標構成中の「JULIUS」の文字部分は欧米人男性のよくあるファースト・ネームであるから看者の注意をひかないこと、さらに、本件商標構成中の「OPTICAL」と「ENTERPRISE」の文字部分は識別力がないか、ほとんどないことを理由として、本件商標からは「TART」の文字部分のみが分離して認識され、そこから「タート」の称呼が生じると主張する。
しかしながら、上述のとおり、本件商標の各文字部分は同じ書体で表されていると共に、各文字部分の中心が揃うように全体が極めてまとまりよく表されていることから、「TART」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているということはできない。
また、「JULIUS」の文字が自他商品を識別する機能を果たし得ることは、様々な商品について、「JULIUS」の文字からなる商標が登録されていることからも明らかである(乙1)。
加えて、「OPTICAL」の文字が、「視力[視覚]の、視力を助ける、光学(上)の、光を利用した、光学式の」等の意味を有する英単語であるとしても(甲9)、「眼鏡」を表すものとして一般に用いられている言葉ではないから、本件商標に係る指定商品「眼鏡,眼鏡フレーム」等との関係において、一般的、普遍的な文字であるとはいえず、自他商品を識別する機能がないということはできない。
同様に、「ENTERPRISE」の文字が、「(新しい)企業、会社、(困難な大規模の)(新しいものを生み出すための)事業、プロジェクト、企て、起業、企業活動、事業経営のやり方、進取の気性、積極性、チャレンジ精神」等の意味を有する英単語であるとしても(甲9)、「株式会社」や「有限会社」等の会社の形態を表すものとして一般に用いられている言葉ではないから、一般的、普遍的な文字であるとはいえず、自他商品を識別する機能がないということはできない。
仮に、本件商標より「タート」の称呼が生じるとするならば、極めてまとまりよく表されてなる本件商標を「JULIUS」、「TART」、「OPTICAL」及び「ENTERPRISE」の文字部分に分離して認識し、かつ、「JULIUS」の文字部分は欧米人男性のよくあるファースト・ネームであるから看者の注意をひく部分ではないと認識し、「OPTICAL」の文字が「視力の」等の意味を有する英単語であり、「ENTERPRISE」の文字が「(新しい)企業、会社」等の意味を有する英単語であると認識したうえで、「JULIUS」の文字部分は欧米人男性のよくあるファーストネームであるから看者の注意をひく部分ではないと認識し、さらに、「OPTICAL」の文字が本件指定商品との関係で自他商品識別力がないか、ほとんどない、「ENTERPRISE」の文字が自他商品の識別標識としての機能を有するものではないと理解し、その結果、残りの「TART」の文字部分のみが自他商品識別力を発揮する文字であると認識し、該文字に照応する「タート」の称呼が本件商標から生じると判断する必要があるが、簡易迅速を旨とする実際の商取引において、このような迂遠な思考プロセスを経たうえで「TART」の文字部分のみが取引に資されるとは到底考えられない。
よって、本件商標は全体で一体としてのみ認識され、その全体より「ジュリアスタートオプテイカルエンタープライズ」の称呼のみが生じるものである。
以上より、本件商標と引用商標は、称呼はもちろんのこと、外観及び観念においても明らかに異なるものであるから、両者は互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。
2 引用商標について
請求人は、1948年にアメリカ合衆国で設立された「Tart Optical Enterprises,Inc.」(タート社)の正当な承継者であると主張する。
しかしながら、被請求人の知る限り、請求人はタート社の正当な承継者ではない。請求人は、米国において、タート社の所有する登録商標「TART」が更新されなかったことを奇貨として、米国で商標「TART」を登録し、あたかもタート社の承継者であるかのごとく、「TART」の名のもとに眼鏡関連商品を販売してきたにすぎない。
また、請求人は、被請求人ウェブサイトにおいて、被請求人がタート社を承継しているかのような虚偽の記載をしていると主張するが、請求人は、タート社の創立者であるジュリアス・タート氏の唯一の遺族である甥のリチャード・タート氏と、リチャード氏が被請求人商品のデザイン、製造、マーケティングに協力し、ブランドアンバサダーを務めることを旨とする契約を2016年に締結したうえで(乙2)、我が国において、一貫して誠実にビジネスを行っている。
一方、請求人は、甲第10号証ないし甲第46号証を提出し、引用商標の周知性を立証しようと試みているものと思われる。
しかしながら、甲第10号証、甲第13号証ないし甲第19号証は請求人のウェブページの写し、甲第12号証のほとんどは請求人のフェイスブックの写しと思われるところ、請求人のウェブページ、フェイスブックは、すべて英語で表示、投稿されており、我が国における取引者、需要者において、請求人のウェブページ、フェイスブックに物理的にアクセスすることは可能であるとしても、英語のみで表示、投稿されている以上、我が国における引用商標の使用ということはできない。
乙第3号証は、甲第12号証の1の3頁、6頁、7頁、11頁に係る請求人のフェイスブックが、英語で投稿されていることを示すものである。そして、甲第12号証に係る請求人フェイスブックの写しは、英語による投稿を日本語に機械翻訳したものを印刷したものであることは、これらの写しのすべてに、「翻訳を非表示。この翻訳の評価」と表示されていることからも裏付けられる。
さらに、甲第12号証に係る請求人フェイスブックの投稿コメントが不自然な日本語であること(例として、甲第12号証の1の7頁「サングラス,誰か?」、同11頁「日光のデミアンバー」)からも、甲第12号証が英語によるフェイスブックの投稿を、日本語に機械翻訳したものを印刷したにすぎないものであることが容易に推認できる。
加えて、請求人は、我が国における請求人商品の販売数、売上高、宣伝広告物(販促物)、宣伝広告費等を一切明らかにしていない。
また、甲第11号証は、オンラインショッピングサイトの写し、甲第32号証ないし甲第37号証は、眼鏡販売店等のウェブサイトやブログ、広告代理店のウェブページの写しと思われるところ、これらに表示されている眼鏡が請求人の商品であるかを確認することはできず、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、引用商標が請求人の業務に係る商品を表すものとして取引者、需要者の間に広く認識されていた事実を何ら証明するものではない。
さらに、甲第12号証の10(1頁~31頁)、甲第26号証ないし甲第31号証は、雑誌の写しであると思われるところ、眼鏡の紹介や、眼鏡に関連する記事(漫画)が掲載されていることはうかがえるものの、これらで紹介されている眼鏡についても、請求人の商品であるかを確認することはできず、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、引用商標が請求人の業務に係る商品を表すものとして取引者、需要者の間に広く認識されていた事実を何ら証明するものではない。
甲第38号証ないし甲第46号証は、日本在住の個人や眼鏡販売店等が請求人から商品を輸入していたことはうかがえるもの、これらをもって、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、引用商標が請求人の業務に係る商品を表すものとして取引者、需要者の間に広く認識されていた事実が立証されているとは到底いえない。なお、甲第39号証の42頁及び46頁のインボイス、甲第41号証12頁のインボイスの出荷先は、それぞれ米国のミシガン州、バージニア州、ニューヨーク州となっており、甲第41号証の8頁は韓国に居住する個人からの問合せメールである。
また、商品箱写真(甲20)、請求人が米国特許商標庁に提出した商品箱・保護ケースの写真(甲21、甲22)、米国特許商標庁のデータベースの写し(甲23)、写真の撮影日を示すとするプロパティ画面(甲24、甲25)に至っては、これらをもって、どのような事実を立証しようとしているのか不明であるが、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、引用商標が請求人の業務に係る商品を表すものとして取引者、需要者の間に広く認識されていた事実が立証されているとは到底いえない。
3 商標法第4条第1項第11号違反について
上記1のとおり、本件商標は、引用商標と類似するものではないことから、引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
4 商標法第4条第1項第15号違反について
上記2で述べたとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、請求人の業務に係る商品を表すものとして取引者、需要者の間に広く認識されていたものではないと共に、本件商標と引用商標は非類似の商標であって別異の商標であることから、本件商標をその指定商品に使用しても、その出所について混同を生ずるおそれはない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
5 むすび
以上、詳述したとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものではない。
第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがなく、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。
以下、本案に入って審理する。
1 商標「TART」の周知性について
(1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、米国カリフォルニア州ウッドランド・ヒルズに所在する請求人及びその関連会社「Tart Optical Enterprises,Inc.」(タート社)(以下、両者をあわせて「請求人等」という。)は、米国において、商標「TART」を使用した「眼鏡、眼鏡フレーム」(以下「請求人等商品」という。)を遅くとも2009年頃から販売等していたこと(甲10、甲12~甲19、甲38)、請求人は米国において2017年10月に商標「TART」について、指定商品を「第9類 眼鏡」などとする商標登録を受けていること(甲23)及び請求人等は2009年頃から2017年まで毎年、請求人等商品を含む商品を我が国に個別に輸出していたこと(甲38~甲46)、並びに、我が国において、商標「TART」を使用した「眼鏡、眼鏡フレーム」(以下「使用商品」という。)が販売されていること(甲11)及び2012年4月以降、雑誌やウェブページに使用商品を紹介等する記事が18回程度掲載されていること(甲26~甲36)が認められる。
しかしながら、請求人等商品の我が国における販売数、売上高、シェアなど販売実績、広告宣伝の全体的な状況を具体的、客観的に示す主張はなく、その証左は見いだせない。
なお、使用商品が我が国において販売されていたり、雑誌に紹介等されているとしても、これが請求人等の業務に係る商品であることは確認できない。
(2)上記(1)のとおり、請求人等は、米国において請求人等商品を遅くとも2009年頃から販売等しており、2009年頃から2017年まで毎年、請求人等商品を含む商品を個別に我が国に輸出したことなどが認められるものの、我が国における請求人等商品の販売実績を全体的に示す証拠はない。
また、雑誌やウェブページにおける使用証拠の紹介もさほど頻繁とはいえず、その他、我が国の取引者、需要者において、請求人等商品の認知度が高いことを認めるに足りる証左は見いだせないから、請求人等商品及びそれに使用されている商標「TART」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人又は請求人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
したがって、「TART」の文字からなる引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人又は請求人等の業務に係る商品(眼鏡、眼鏡フレーム)を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものとはいえない。
なお、請求人等は2009年頃から2017年まで請求人等商品を含む商品を我が国に輸出しているが、その数量は僅か660個程度(甲38~甲46)であり、仮に、それら商品の全てが請求人等商品であって、我が国で販売されたとしても、上記判断を左右するほどの数量とは認められないし、さらに、2017年以降本件商標の登録出願時及び登録査定時における請求人等商品を我が国に輸出した実績を示す証左も見いだせない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
ア 本件商標は、別掲のとおり、「JULIUS」、「TART」、「OPTICAL」及び「ENTERPRISE」の欧文字を四段に横書きしてなるところ、これらの構成文字全体としては、辞書等に載録されている語ではなく、また、特定の意味合いを有するものとして認識されているというような事情も見いだせないものであるから、一種の造語として認識されるものである。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応し「ジュリアスタートオプティカルエンタープライズ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
イ なお、請求人は、本件商標はその構成中「TART」を他の文字よりも大きく表示されている、「TART」は世界的に知られてきたブランドである、「JULIUS」は欧米系の男性のファースト・ネームでありそれほど注意をひかない、「OPTICAL」の部分は「目の」などの意味であり、「ENTERPRISE」の部分は「事業」などの意味であるから、いずれも本件商標の指定商品との関係において識別力がないか、ほとんどない、などとして、本件商標は「TART」の部分が要部である旨主張している。
しかしながら、引用商標「TART」は、上記1のとおり、請求人又は請求人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであるから、本件商標の構成中「TART」の部分が、取引者、需要者に商品の出所識別標識として支配的な印象を与えるものではない。また、請求人提出の証拠によっては「JULIUS」の文字の識別力が弱いというべき事情は見いだせないし、「OPTICAL」は「目の」などの意味及び「ENTERPRISE」は「事業」などの意味を有する英語であるとしても、いずれも一般になじみのある英語ではないことから、これらの文字が指定商品との関係で識別力がないとまではいえない。
加えて、本件商標は、その構成中「TART」の文字が他の文字よりもやや大きく表示されているとしても、全体の文字構成は、同じ書体で、等間隔に、まとまりよく一体的に表されていること、及び本件商標から生じる「ジュリアスタートオプティカルエンタープライズ」の称呼も、やや冗長ではあるものの、よどみなく一連に称呼し得るものであることをあわせ考慮すれば、本件商標に接する取引者、需要者をして、その構成文字全体をもって一体不可分のものとして認識、把握されるものとみるのが相当である。
また他に、本件商標は、その構成中「TART」の文字部分を分離抽出し他の商標と比較検討すべきとする事情は見いだせない。
したがって、請求人のかかる主張は採用できない。
(2)引用商標
引用商標は、上記第2のとおり「TART」の欧文字を標準文字で表してなり、該文字に相応し「タート」の称呼を生じるものである。そして、観念については、該文字(語)は「すっぱい、タルト(果物、ジャムなどの甘いものが入った丸いパイ)」などの意味を有する英単語であるが、我が国で親しまれた語とはいえないから、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
(3)本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標の類否を検討すると、外観においては、本件商標と引用商標とは、構成文字の書体、構成文字数など構成態様が明らかに異なり、容易に区別し得るものであって、相紛れるおそれのないものである。
次に、本件商標から生じる「ジュリアスタートオプティカルエンタープライズ」の称呼と引用商標から生じる「タート」の称呼を比較すると、両者は構成音、構成音数が明らかに異なるものであるから、相紛れるおそれのないものである。
さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
(4)小括
以上のとおり、本件商標は引用商標と非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記1のとおり、引用商標は、請求人又は請求人等の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記2のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であって別異の商標であるから、類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(請求人又は請求人等)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-890058