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商標無効審判

2022-890052

ドローンサッカー

審判番号
2022-890052
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2017-032979
登録番号
5983929
請求日
2022年07月05日
審決日
2023年06月15日
公報発行日
2023年08月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】一般社団法人 日本ドローンサッカー協会
  • 【請求人代理人】金山 義信
  • 【請求人代理人】田仲 剛
  • 【被請求人】AOSテクノロジーズ 株式会社
  • 【被請求人代理人】林 栄二
審判長/審判官
  • 審判長 旦 克昌
  • 審判官 大橋 良成
  • 審判官 馬場 秀敏
分類
T112 .13 -Y (W41) / T112 .272-Y (W41)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法3条1項3号商標法4条1項16号商標法46条1項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第3条第1項第3号、商標法第4条第1項第16号、商標法第4条第1項、商標法第46条第1項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第5983929号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第5983929号商標(以下「本件商標」という。)は、「ドローンサッカー」の文字を標準文字で表してなり、平成29年3月13日に登録出願、「技芸・スポーツ又は知識の教授,スポーツの興行の企画・運営又は開催,無人航空機を使用した競技の企画・運営又は開催,カメラを搭載したドローン(おもちゃを除く。)を使用した競技の企画・運営又は開催,民間用ドローンを使用した競技の企画・運営又は開催,ドローン(おもちゃ)・ラジオコントロールおもちゃ・模型おもちゃ用ラジオコントロール受信機及び送信機を使用した競技の企画・運営又は開催」を含む第41類及び第9類、第12類、第28類、第37類及び第39類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年9月13日に登録査定、同月29日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、「本件商標の指定商品及び指定役務中、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,スポーツの興行の企画・運営又は開催,無人航空機を使用した競技の企画・運営又は開催,カメラを搭載したドローン(おもちゃを除く。)を使用した競技の企画・運営又は開催,民間用ドローンを使用した競技の企画・運営又は開催,ドローン(おもちゃ)・ラジオコントロールおもちゃ・模型おもちゃ用ラジオコントロール受信機及び送信機を使用した競技の企画・運営又は開催」(以下「請求に係る指定役務」という。)の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。 1 無効事由 本件商標は、その指定商品及び指定役務中、請求に係る指定役務について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。 2 無効原因 (1)「ドローンサッカー」の自他商品・自他役務の識別力について 「ドローンサッカー」とは、韓国発祥の競技であって、内部にドローンを格納した球状のプラスチックフレーム(ドローンボールと称される。)を使用し、ドローンボールを専用ケージ内のフィールドの両サイドの空中に設置したリング状のゴールに入れることで、その得点を争う競技であり、その競技名である(甲1、甲2)。 そして、競技の名称は、商品・役務を流通過程に置く場合に必要な表示であるから何人も使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものだから一私人に独占を認めるのは妥当ではなく、また、多くの場合すでに一般的に使用がされあるいは将来必ず一般的に使用がされるものであるから、これらのものに自他商品・自他役務の識別力を認めることができないという理由により、商標法第3条第1項第3号に該当する。 (2)裁判例について 中国発祥のスポーツ競技の名称にかかる商標権について、「登録査定時に、中国において、本件運動を指すスポーツの名称として一般的に用いられていたものであって、日本においても、本件運動は、中国生まれのスポーツとして、同一の名称で知られていたものと認められ、その役務の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであるというべきである。」と判示した裁判がある(知的財産高等裁判所平成21年11月26日判決(平成21年(行ケ)第10075号))。 前記裁判例は、商標法第3条第1項第3号に該当する要件として、「登録査定時に、中国において、本件運動を指すスポーツの名称として一般的に用いられていたもの」であり、「日本においても、本件運動は、中国生まれのスポーツの名称として知られていたもの」との要件をあげ、これを満たすことにより商標法第3条第1項第3号に該当すると判示している。 本件商標についても、本件登録商標の登録査定時(平成29年9月13日)に韓国において「ドローンサッカー」が競技名として広く知られ、かつ、我が国においても韓国生まれの競技として「ドローンサッカー」という名称で知られており上記要件を満たす事を以下に詳述する。 (3)本件商標が登録査定時に韓国において本件競技を指す競技の名称として一般的に用いられていたこと ア ドローンサッカー誕生の経緯 ドローンサッカーの歴史は、2016年(平成28年)4月のドローンサッカーボールの試作から始まり、2017年(平成29年)2月には、全州市ドローンサッカー選手団創立式が開催され、同月の2017国際スポーツレジャー産業展(SPOEX)で広く公表され、その後、全国でチームが発足し、リーグ、大会が開催される等、本件登録商標の登録査定時(平成29年9月13日)よりも前の時点で、韓国において競技名として一般に広く知られるものとなっていた(甲3)。 イ 競技名として知られていること 韓国のウェブサイト「インターネットブランチ」で、本件商標の登録査定時よりも前の2017年(平成29年)8月3日付で、新たな競技である「ドローンサッカー」について「ドローンサッカー/サッカーの固定観念を破って新しい視点に触れたドローンサッカーは、私たちが知っているサッカーの概念を超えた新概念未来スポーツといえる。ドローンサッカーを世界で初めて開発したのは韓国である。世界ドローン市場でドローンを活用したスポーツ産業はレーシングしか試されていなかったため、ドローンサッカーは非常に画期的な産業である。ドローンサッカーを共同開発したカムティック総合技術院と全州市がー山キンテックスで世界初の公式第1回全州市長杯全国ドローンサッカー大会を行った。」と紹介されていた(甲4)。 なお、当該記事は、韓国特許登録10-2102539号公報のフロントページにおいて引用された先行技術文献として、公開日付入りで記載されているから、韓国においてドローンに関する技術に携わる者の多くが当該記事を目にする機会があったといえる(甲5)。 ウ 小括 上記から、本件商標の登録査定時(平成29年9月13日)時点において、以下の事実が明らかである。 (ア)本件商標の登録査定時以前から、「ドローンサッカー」にかかる選手団の創立、国際的な展示会での紹介(平成29年2月)がなされ、特許の審査において引用されるような一般的なネットメディアにおいて、競技名として「ドローンサッカー」が紹介されてきた(甲3~甲5)。 (イ)本件商標の査定年月日の10か月以上も前の平成28(2016)年11月4日に、我が国において、情報の発信メディアを通じて、「ドローンサッカー」競技の簡単な説明とともに、「韓ー中3Dプリンティングドローン産業博覧会2016」にて開催された「大韓ドローン振興協会」と「全州ドローンサッカー模範団」による「ドローンサッカー」の模擬試合の様子をYouTube動画付きで紹介している(甲6)。 (ウ)「大韓ドローンサッカー協会」ウェブサイト(https://dronesoccer.or.kr/)における「ドローンサッカー紹介」ページ(甲7)からは、韓国語、英語、中国語、及び日本語版の「ドローンサッカー規定集」(甲8)をダウンロードすることができる。そして、日本語版の「ドローンサッカー規定集」の奥付には、当該規定集が、本件商標の登録査定日(平成29(2017)年9月13日)よりも前の平成29(2017)年5月1日に発行されたことが記されている(甲8の4)。 我が国において「ドローンサッカー規定集」の需要が皆無であれば、日本向けの規定集が韓国で作成されることはないから、この事実は、本件商標の登録査定日よりも前の平成29(2017)年5月1日には、我が国でも「ドローンサッカー規定集」の需要があった(すなわち、韓国発祥の新しい競技である「ドローンサッカー」が我が国でも知られていた)ことを示している。 (エ)日本語ウェブサイト「DRONE」の2017年6月30日付の記事で競技「ドローンサッカー」について紹介(甲9)された。当該ウェブサイトは、日本で唯一ドローンについての本格的な解説記事や情報を発信するメディアであり、ドローンに関心・興味を持つ者の多くが当該サイトを訪れることから、日本人のドローンに関心・興味を持つ者の多くが当該記事を目にしたといえる。 (オ)英国の公共放送として世界的に著名な「British Broadcasting Corporation(BBC)」の日本語版ニュースサイトの管理・運営者である「BBCグローバルニュースジャパン」は、平成29(2017)年6月30日に、「ドローンサッカー」競技の簡単な説明とともに、韓国において世界初の「ドローンサッカー」公式大会が開催された旨を伝える記事を動画付きで公開した(甲10)。 上記(ア)から(エ)の事実も加味すれば、遅くとも上記BBCの記事が公開された頃(平成29(2017)年6月30日頃)には、我が国において「ドローンサッカー」が韓国発祥の新しい競技の名称として知られていたことは明らかである。 エ 商標法第3条第1項第3号に該当するものであること 上記(2)のとおり、知的財産高等裁判所は、スポーツ競技の名称にかかる商標権について、指定役務の一部については、その役務の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる標章であって、自他商品識別力を欠き商標としての機能を果たし得ないものであり、商標法第3条第1項第3号の無効理由を有すると判示している。 そして、ウでも述べたとおり、「ドローンサッカー」は、本件登録商標の登録査定時(平成29年9月13日)に韓国において本件競技を指す競技の名称として一般的に用いられていたうえに、エで述べたとおり、日本においても本件競技が韓国生まれの競技として「ドローンサッカー」という名称で知られていたことから、その指定役務中「ドローンサッカーの指導に関する技芸・スポーツ又は知識の教授,ドローンサッカーの興行の企画・運営又は開催,ドローンサッカー競技の企画・運営又は開催」については、その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる標章であって、自他役務識別力を欠き商標としての機能を果たし得ないものであるから、本件商標は商標法第3条第1項第3号に該当する。 オ 商標法第4条第1項第16号に該当するものであること 上記(2)のとおり、知的財産高等裁判所は、スポーツ競技の名称にかかる商標権について、指定役務の一部については、当該競技以外を内容とする役務に使用する場合は役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号の無効理由を有すると判示している。 前述のとおり、本件商標「ドローンサッカー」は、登録査定の際、すでに韓国発祥の新しい競技の名称として広く知られたものだったから、本件商標をその指定役務中、ドローンサッカー以外の請求に係る指定役務に使用する場合、役務の質の誤認を生ずるおそれがあることは明らかであるから本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当する。 第3 被請求人の答弁 1 答弁の趣旨 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。 2 答弁の理由 (1)本件無効事由の判断の基準時について 請求人が無効事由として掲げる商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の適用判断の基準時は、査定または審決の時である(昭和46年9月9日東京高昭和45年(行ケ)第5号、最三小平成16年6月8日判決(裁判集民事214号373頁))。 (2)ドローンサッカーの自他商品・自他役務の識別力について 請求人は、甲第1号証及び第2号証を根拠に、「ドローンサッカー」は競技の名称であるから、商標法第3条第1項第3号に該当すると主張している。 しかし、当該各証拠の作成者である、「一般社団法人ドローンサッカー協会」は、2019年2月に発足した団体であり(甲1)、「一般社団法人日本ドローンサッカー連盟」は、2021年4月30日に発足した団体である(甲2)から、これらウェブサイトは、本件商標の査定時である2017年9月13日には存在しなかったものであること明らかである。 したがって、本件商標の査定時に存在しなかったウェブサイトを根拠に、「ドローンサッカー」は競技の名称であるとして、本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとする請求人の主張は、明らかに失当といわざるを得ないものである。 (3)裁判例について 請求人は、知財高裁平成21年11月26日の判決(平成21年(行ケ)第10075号)を引用しているが、本件商標とは、事案を異にするものであり、本件商標が無効事由に該当しないことを左右するものではない。 (4)「ドローンサッカー」が韓国において競技の名称として一般的に用いられていた旨の主張について ア 甲第3号証について 甲第3号証は、2020年8月28日発行のものであり、本件商標の登録査定時より前に、韓国内で「ドローンサッカー」を知らしめたものということはできない。 同号証の日本語訳と請求人の主張によれば、請求人主張の競技には当然必須であろうボールの開発や、競技場の開発が完了したのは2016年10月、規定集の配布は同年11月とされており、本件商標の登録査定時である2017年9月までの期間は1年にも満たない期間である。 さらに、請求人が世界初と主張する「第1回全州市長杯」なる初めての大会の開催に至っては、2017年6月の開催とされており、本件商標の登録査定時である2017年9月までの期間は数か月に過ぎない。 これらの状況を踏まえると、登録査定時より前の時点で、韓国において「ドローンサッカー」が競技名として一般に広く知られるものとなっていたとは到底考え難い。 イ 甲第4号証について 甲第4号証は、韓国のウェブサイト「インターネットブランチ」の写しとされているが、当該ウェブサイトが如何なる者が作成し、韓国内でどの程度の者に閲覧されているのかは定かでない。 同号証には、2017年8月3日を表すと思われる文字が記載されてはいるが、この日付が原稿の作成日を表しているのか、当該ウェブサイトの公表日を表しているのかなど、如何なる日付であるのかは証明されていない。 2017年8月というと、本件商標の登録査定時の約1か月前に過ぎない。 さらに、その記述内容は、競技のイロハを説明するものであり、それは、むしろ、その時点で、「ドローンサッカー」の文字だけでは、競技のイロハさえ理解できない者が多数いるであろうことをうかがわせると考えられるといえる。 また、請求人は、同号証には「末来スポーツヘの大きな産業であることは間違いない。」、「非常に画期的な産業である。」と記述されていると主張してもいるが、如何なる素姓の者が如何なる情報を根拠に作成したのか全く不明であって、その記載のまま評価することもできない。 ウ 甲第5号証について 甲第5号証は、韓国の特許公報の写しであり、請求人は、「審査官により引用された先行技術文献として、公開日付入りで記載されているから、韓国においてドローンに関する技術に携わる者の多くが上記記事を目にする機会があったといえる。」と主張している。 しかし、同号証の日本語訳によるならば、出願日は2018年9月20日、公開日に至っては、2020年3月30日とされているから、本件商標の登録査定時である2017年9月以降の特許公報であって、本件商標の登録査定時前には誰も目にすることはできない。 エ 小括 以上のとおり、請求人が発祥の地とする韓国においてさえ、競技には当然必須であろうボールの開発や、競技場の開発、規制集の配布が本件商標の登録査定時である2017年9月までに1年にも満たない期間であり、さらに、「第1回全州市長杯」なる初めての大会の開催に至っては、本件商標の登録査定時の数か月前に実施されたに過ぎず、本件商標の登録査定時前のメディアの類も、如何なる者が作成したのかさえ不明なウェブサイト1件にとどまるものであるから、甲第3号証ないし第5号証をもって、登録査定時より前の時点で、韓国において「ドローンサッカー」が競技名として一般に広く知られるものとなっていたということはできない。 (5)日本においても、「ドローンサッカー」が韓国生まれの競技の名称として知られていた旨の請求人の主張について 請求人は、本件商標の登録査定時に、日本においても、「ドローンサッカー」が韓国生まれの競技の名称として知られていたと主張している(甲6~甲10)。 先ず、請求人は、甲第6号証について、本件商標の登録査定時の10か月以上も前に、テクノロジーに関する情報発信メディア「ロボティア」が日本に「ドローンサッカー」を紹介していると主張しているが、当該ウェブサイトが如何なる者が作成し、日本国内でどの程度の者に閲覧されているのかは定かでない。そもそも、甲第6号証の作成時期とされる2016年11月4日の時点では、上記(4)のとおり、発祥の地とされる韓国においてさえ、競技に必須であろうボールの開発や、競技場の開発が完了したばかりの時期であり、この情報がその時期に日本における需要者に注目されていたとは到底考え難い。 次に、請求人は、「大韓ドローンサッカー協会」のウェブサイト(甲7)からは、韓国語、英語、中国語、日本語版の「ドローンサッカー規定集」(甲8)をダウンロードできる旨主張している。しかし、甲第7号証の「大韓ドローンサッカー協会」のウェブサイトの作成時期は、2022年6月27日とされ、本件商標の査定時に当該ウェブサイトが存在したことは証明されていないから、本件商標の査定時にそのウェブサイトから日本語版の「ドローンサッカー規定集」がダウンロードできたということができない。そして、仮に、ダウンロードできたと仮定しても、日本語版の「ドローンサッカー規定集」がどの程度ダウンロードされ、日本の需要者の手に「ドローンサッカー規定集」が渡ったのか否か、渡ったとしてもその量はどの程度なのかは明らかになっていない。特に、甲第8号証の4の最後のページをみると、「本の規定集は非売品で販売されないです。」との記述があり、「ドローンサッカー規定集」の入手が日本の需要者も韓国のウェブサイトにアクセスして、ダウンロードするしか方法がなかったものと推測されるから、当該ダウンロードの状況は日本において知られているか否かを判断する上でも重要であると思料されるところ、肝心な点が明らかにされていない。加えて、「ドローンサッカー規定集」(甲8)の表紙の日付は、一番早い日付の日本語版であっても、2017年11月1日で、本件商標の査定時以降となっており、本件商標の査定時には、第8号証の「ドローンサッカー規定集」は入手できなかったものと考えられる。 なお、請求人は、奥付の日付を基準に本件商標の査定時より前と主張しているが、奥付の日付から入手できたことは明らかになっていない。 また、請求人は、甲第7号証及び甲第8号証を提出して、遅くとも、甲第8号証のウェブサイトの記事が公開された2017年6月30日頃には、我が国において「ドローンサッカー」が韓国発祥の競技の名称として知られていたと主張している。しかし、甲第7号証及び甲第8号証の作成時期とされる2017年6月30日の時点では、上記(4)のとおり、発祥の地とされる韓国においてさえ、競技に必須であろうボールの開発や、競技場の開発が完了したばかりの時期であり、その時期に、既に日本における需要者には広く知られていたとは到底考え難い。 そもそも、商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、日本における需要者が「ドローンサッカー」を品質表示として認識する状況に至っていなければならないのであって、単に、数件のウェブサイトの記事に「ドローンサッカー」の文字が表示されていたことをもって、日本における需要者が「ドローンサッカー」を品質表示として認識していたということはできない。 そして、被請求人代理人が「ドローンサッカー」の文字について、念のため本件商標の登録査定の発送日の2017年9月15日より前までを対象期間として、日経テレコンの記事検索をしてみたところ、1件もヒットすることがなかった(乙3)。 したがって、本件商標の登録査定時に、日本において「ドローンサッカー」が韓国生まれの競技の名称として知られていたということはできない。 (6)本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものである旨の請求人の主張について 請求人は、知財高裁平成21年11月26日の判決(平成21年(行ケ)第10075号)を引用し、本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当すると主張している。 しかし、以上のとおり、本件商標の登録査定時より前の時点で、韓国において「ドローンサッカー」が競技名として一般に広く知られるものとなっていたということはできないし、しかも、日本において「ドローンサッカー」が韓国生まれの競技の名称として知られていたということもできないから、日本における需要者が「ドローンサッカー」を品質表示として認識するということはできない。 したがって、本件商標と上述の判決とは事案を異にするものであり、本件商標を商標法第3条第1項第3号に該当するということはできないから、同法第46条第1項第1号によって本件商標の登録を無効にすることはできない。 (7)本件商標が商標法第4条第1項16号に該当すべきものである旨の請求人の主張について 請求人は、上記(6)で示した知財高裁判決を引用し、本件商標が商標法第4条第1項第16号に該当すると主張している。 しかし、上記(6)の理由のとおり、品質表示として認識するということはできないのであるから、品質の誤認を生じさせるおそれもない。 したがって、本件商標と上述の判決とは事案を異にするものであり、本件商標を商標法第4条第1項第16号に該当するということはできないから、同法第46条第1項第1号によって本件商標の登録を無効にすることはできない。 (8)むすび 以上のとおり、本件商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号のいずれにも該当しないこと明らかであるから、商標法第46条第1項第1号によって本件商標の登録を無効にすることはできない。 第4 当審の判断 1 利害関係について 請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがないものであり、請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認められるから、本案に入って審理する。 2 商標法第3条第1項第3号該当性 商標法第3条第1項第3号として掲げる商標が、商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として、何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである(最高判昭和54年4月10日[昭和53年(行ツ)第129号]第3小法廷判決・判例時報927号233頁参照)。 そこで、以上の観点により、本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かを検討する。 (1)本件商標は、自他商品・役務識別力を欠く商標であるか否かについて ア 本件商標は、「ドローンサッカー」の文字を標準文字で表してなるところ、当事者の主張及び提出された証拠によれば、以下の事実がある。 (ア)「ドローンサッカー」とは、韓国発祥の競技の競技名であること(甲1、甲2)。 (イ)当該競技は、ドローンサッカーボールの試作(2016年(平成28年)4月頃)から始まり、全州市ドローンサッカー選手団創立式が開催(2017年(平成29年)2月)され、その後、韓国内でチームが発足し、リーグ、大会が開催されていること(甲3)。 (ウ)上記大会について、韓国のウェブサイト「インターネットブランチ」で、2017年(平成29年)8月3日付で、新たな競技であること、当該競技を世界で初めて開発したのは韓国であること及び韓国において、世界初のドローンサッカー大会が開かれた事が紹介されたこと(甲4)。 (エ)平成28(2016)年11月4日に、我が国において、情報の発信メディアを通じて、「ドローンサッカー」競技の簡単な説明とともに、「韓ー中3Dプリンティングドローン産業博覧会2016」にて開催された「ドローンサッカー」の模擬試合の様子をYouTube動画付きで紹介したこと(甲6)。 (オ)「大韓ドローンサッカー協会」ウェブサイト(https://dronesoccer.or.kr/)における「ドローンサッカー紹介」ページ(甲7)からは、日本語版を含む複数の言語による「ドローンサッカー規定集」(甲8)をダウンロードすることができた可能性があり、日本語の規定集には、本件商標の登録査定日(平成29(2017)年9月13日)よりも前の平成29(2017)年5月1日に発行されたことが記されていること(甲8の4)。 (カ)日本語ウェブサイト「DRONE」の2017年6月30日付の記事で競技「ドローンサッカー」について紹介されたこと(甲9)。 (キ)英国の公共放送として世界的に著名な「British Broadcasting Corporation(BBC)」の日本語版ニュースサイトの管理・運営者である「BBCグローバルニュースジャパン」が、平成29(2017)年6月30日に、当該競技の簡単な説明とともに、韓国において世界初の公式大会が開催された旨を伝える記事を動画付きで公開したこと(甲10)。 イ 上記アにより、次のことがうかがえる。 (ア)「ドローンサッカー」とは、2016年(平成28年)4月頃から開発が始まり、我が国においても、情報発信メディアを通じて、同年11月頃には、当該競技について、競技の簡単な説明と模擬試合の様子がYouTube動画付きで紹介され(甲6)、韓国発祥のドローンを用いた競技の競技名として使われ出したことはうかがえる(甲1、甲2、甲3)。 (イ)我が国のウェブサイト及び英国メディアにおける、2017年(平成29年)6月30日付の記事から、同月28日に、韓国において世界初の大会が開催されたことはうかがえる(甲9、甲10)。 (ウ)韓国のインターネットメディアの1つにおいて、遅くとも、2017年(平成29年)8月3日付で、当該競技の存在と世界初の大会について紹介されたことはうかがえる(甲4)。 (エ)当該競技の普及に携わる「一般社団法人ドローンサッカー協会」は2019年2月発足(乙1)、「一般社団法人日本ドローンサッカー連盟」は2019年11月発足(乙2)した。 ウ 判断 (ア)世界初の大会開催時期 上記イ(イ)よりすれば、2017年(平成29年)6月28日に、韓国において、当該競技の初の世界大会が行われたが、それは、本件商標の登録査定の日を基準にみても、わずかに、およそ2ヶ月半前という極めて直前の時期に開催されたに過ぎない。 (イ)競技名としての普及の程度 そして、上記認定事実よりすれば、2017年(平成29年)6月28日に、韓国において初の世界大会が開催されたことはうかがえるとしても、上記aのとおり、韓国における初の世界大会は、査定時の極めて直前の時期に開催されたに過ぎないものであり、また、当該大会によって、「ドローンサッカー」が我が国に広く普及したとする客観的な証拠も見受けられない。 そうすると、本件商標の登録査定時に、我が国において、「ドローンサッカー」が、いかなるものであり、また、スポーツの名称として一般に認識されるに至っていたことを客観的に認めることができるほどの、普及実績がみられないというべきである。 (ウ)小括 以上よりすれば、本件商標を、その指定商品及び指定役務中、請求に係る指定役務に使用しても、当該競技名として認識されるに至っていたと認め難いから、役務の質を表示するものとはいえないというべきである。 したがって、本件商標は、自他役務識別力を欠く商標とはいえない。 (2)本件商標は、取引に際し必要適切な表示として、何人もその使用を欲するものであるか否かについて 本件商標「ドローンサッカー」の文字が、登録査定時において、競技としては成立していたとしても、当該スポーツの名称として認識されるに至っていたと認めがたかったことは、上記に述べたとおりであり、係る使用状況において、本件商標は、取引に際し必要適切な表示として、何人もその使用を欲するものとはいえなかったとみるべきである。 (3)以上のとおりであるから、本件商標は、本件請求の役務との関係において、役務の質を表すものとはいえないから、請求に係る役務について使用しても、商標法第3条第1項第3号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第16号について 本件商標は、「ドローンサッカー」の文字を標準文字で表してなるところ、上記2のとおり、請求に係る役務に使用しても、役務の質を表すものと認識されないものである。 そうとすれば、「ドローンサッカー」という競技以外の競技に使用しても役務の質の誤認を生ずるおそれはない。 したがって、本件商標は、本件請求の役務との関係において、役務の質の誤認を生じるおそれのある商標ではなく、商標法第4条第1項第16号に該当しない。 4 請求人の主張 (1)被請求人は、本件商標の出願前に、韓国において、「ドローンサッカー」という、ドローンを使用したサッカーを模した競技が、韓国において考案され、本件商標の登録査定時においては、すでに、世界初の大会も開催されたこと、それに先駆け、我が国においても、メディアを通じて、その存在を知る機会があり、競技の名称に止まる本件商標は、請求に係る役務について使用しても自他役務識別機能を発揮しないと主張する。 しかしながら、報道されたとするメディアの閲覧者数など不明であり、また、我が国において、当該競技の普及に携わる「一般社団法人ドローンサッカー協会」は2019年2月発足(乙1)、「一般社団法人日本ドローンサッカー連盟」は2019年11月発足(乙2)したものであり、本件の登録設定後であり、これらの団体による普及活動は、先に発足した協会ですら、少なくとも、本件の登録設定後、1年4ヶ月以上後のこととなる。 さらに、本件登録査定の発送日の2017年(平成29年)9月15日より前までの期間について、我が国の新聞記事の商業データベースで「ドローンサッカー」のキーワードで検索を行っても、掲載された記事は見当たらない(乙3)。また、職権にて、さらに期間を区切って、現在に至るまでを調査しても、我が国における最初の新聞記事掲載は、別掲1に記載のとおり、2019年10月27日付けの朝日新聞に、茨城県高萩市で開催された国内初となる大会が16チームの参加で行われたこと」を内容とする記事であり、これ以前に、国内の新聞記事には、記事掲載が見当たらない。 そして、2020年9月1日付けの西部読売新聞には、別掲2に記載のとおり、連盟への取材記事として、「韓国には200から300チームがあるが、国内競技人口は、まだ数十人」との記事が掲載されている。 以上よりすると、当該競技の普及に携わる団体の発足した時期やその普及活動の程度、さらには、本件商標の登録査定時を1年ほど経過した2020年9月ですら、我が国におけるドローンサッカーの競技人口はわずかであったことをも考慮すれば、少なくとも我が国において、本件登録査定時において、競技の存在及び、競技名としての認知度は、わずかであったと推認される。 そうとすれば、請求人提出の証拠をもって、「ドローンサッカー」の語が当該競技の名称として認識されていたこと、すなわち、請求に係る役務の内容表示であると認識されていたということはできない。 (2)請求人は、競技の草創期から、日本語版の規定集(ルール解説書)がインターネットを通じて、日本国内にいても入手可能の状態でありその存在はニーズがあったからであって、我が国おいても、「ドローンサッカー」という競技として、知られていたと主張する。 しかしながら、日本語版の規定集が本件登録査定時にどのように提供され、実際にどの程度の地域、人数がそれを入手し、競技の名前として認知していたかを推し量る客観的な資料はない。 そうとすれば、請求人提出の証拠をもって、「ドローンサッカー」の語が当該競技の名称として認識されていたこと、すなわち、請求に係る役務の内容表示であると認識されていたということはできない。 したがって、請求人の主張を採用することはできない。 (3)請求人は、外国発祥の競技名であっても、我が国において、役務の質を表示するにすぎないものとした過去の判決例を挙げて、本件商標は商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない旨主張する。 しかしながら、本件商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるかどうかの判断は、商標の構成等に基づき、個別具体的に判断されるものであるところ、請求人の挙げた判決は、当該競技が考案され、普及されてから、当該訴訟で争われた登録商標の登録査定の時期までが本件に比べ、数年という単位で長いものであり、需要者の認識の程度等において事情を異にするものであって、同一に論ずることはできない。 したがって、請求人の主張は採用することができない。 (4)その他の請求人の主張及び証拠をもってしても、当審の判断を左右することはできない。 5 まとめ 以上によれば、本件商標の登録は、本件請求役務との関係について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-890052

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