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商標無効審判

2022-890040

パラデル

審判番号
2022-890040
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2018-144368
登録番号
6313008
請求日
2022年05月23日
審決日
2022年12月19日
公報発行日
2023年03月31日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】吉本興業ホールディングス 株式会社
  • 【請求人代理人】田中 克郎
  • 【請求人代理人】水戸 重之
  • 【請求人代理人】佐藤 俊司
  • 【請求人代理人】山口 現
  • 【請求人代理人】平 龍大
  • 【被請求人】網頭 和
審判長/審判官
  • 審判長 大森 友子
  • 審判官 岩崎 安子
  • 審判官 清川 恵子
分類
T111 .18 -Z (W3541) / T111 .22 -Z (W3541) / T111 .222-Z (W3541) / T111 .25 -Z (W3541) / T111 .271-Z (W3541)
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第3条第1項、商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第15号、商標法第3条、商標法第46条第1項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第6313008号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 登録第6313008号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6313008号商標(以下「本件商標」という。)は、「パラデル」の片仮名を標準文字で表してなり、平成30年11月9日に登録出願、第35類「広告業,広告用ビデオの制作,販売促進のための企画及び実行の代理,販売を目的とした各種通信媒体による商品の紹介」及び第41類「技芸・スポーツまたは知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作」を指定役務として、令和2年9月28日に登録審決され、同年11月6日に設定登録されたものである。 第2 使用商標 請求人がマネジメントしている者(以下「A氏」という。)が、パラパラ漫画を主とするアニメーション動画(以下「A氏の動画」という。)の名称として平成30年2月頃から現在に至るまで使用しているとする「パラデル漫画」の文字からなるものである(以下「使用商標」という。)。 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第33号証を提出した。 1 請求の理由について 本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。 2 請求人について 請求人は、使用商標を所有・管理している。また、請求人は、現在、「パラデル漫画」に係る登録出願(商願2020-143665)を行い(甲4)、本件商標を引用する拒絶理由通知を受けていることから、本件商標の存在により、請求人は、登録及び利用を妨げられる地位にある。 したがって、請求人は無効審判請求につき利害関係を有する。 3 商標法第3条第1項柱書の違反について (1)被請求人が、本件商標を一切使用していないこと Google検索において、本件商標「パラデル」の語句と、被請求人の氏名とが含まれるものを検索しても、被請求人の商品又は役務を示すものは何らヒットしない(甲13)。 (2)被請求人による今後の使用の蓋然性が認められないこと 被請求人は、自ら単独で「パラデル漫画」といえるような動画を制作する能力は全く有していないため、これと類似である本件商標を被請求人が今後自らの商品又は役務として使用することは、現実的にあり得ない。 (3)小括 以上のように、被請求人は、本件商標の登録出願後、本件商標を全く使用していないうえ、A氏の作品と同様の作品を制作する能力を全く有していないことからすれば、今後使用する蓋然性が合理的に認められないことも明らかである。 したがって、本件商標は、被請求人が「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」ではなく、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。 4 商標法第4条第1項第7号について (1)被請求人による取下げ書の偽造及びA氏に無断での取下行為 A氏は、当時、知人の被請求人と相談し、標準文字で「パラデル」からなる商標を、本件商標の指定役務と同じ役務を指定役務として、本件商標の出願に先行する平成30年2月26日に商標登録出願したが(商願2018-28043)(甲3 以下「A氏先行出願」という。)、被請求人により偽造された出願取下げ書(以下「先行出願取下書」という。)により、同年9月7日にA氏に無断で取り下げられてしまった(甲15)。 しかし、先行出願取下書は、被請求人が偽造し、A氏に無断で提出されたものであり(甲16)、A氏は、この取下行為に同意したことはないし、同意することはあり得ない(甲18~20)。 (2)被請求人自身、自らが先行出願取下書を提出したことを認めていること 本件商標の出願に係る拒絶理由の通知に対して被請求人が提出した令和元年11月27日付けの意見書において、被請求人は、先行出願取下書を作成し提出したのが被請求人自身であることを認めている(甲17 意見書2ページ目末尾)。なお、被請求人はこの点について、当該意見書で、「A氏の了解を得て」提出した旨述べている。 (3)先行出願取下書の連絡先として、被請求人の連絡先が記載されていること A氏先行出願に係る願書の【電話番号】にはA氏の電話番号が記載されているのに対し、先行出願取下書の【連絡先】に記載されている電話番号は、A氏の電話番号とは異なっている。当該電話番号の契約者は、被請求人が当時勤務していた企業(甲22)であることが判明した。 この点は、被請求人が手続を代行したA氏先行出願に係る願書においてA氏本人の電話番号を記載したことと整合性を欠き、また、被請求人勤務先貸与の携帯電話番号を記載する理由はない。 (4)被請求人はA氏による使用商標の使用及び作品の発信による事業展開を妨害する意図を有することが明らかであること 上記(1)のとおり、被請求人は、A氏が、使用商標をA氏の動画に使用していくことを知っていたにもかかわらず、A氏による使用商標の利用を妨害することを意図して、A氏先行出願を取下げるとともに、本件商標の出願を行ったものである(甲30)。 (5)小括 以上述べたとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する。 5 商標法第4条第1項第10号について (1)使用商標の周知(著名)性 ア 使用商標はテレビその他各種媒体にて取り上げられている(甲5~12)。 (ア)テレビ番組での紹介 A氏の動画は、本件商標の出願時点までに、朝の情報番組(「スッキリ」)やゴールデン帯の番組(「YOUは何しに日本へ?」)、また、TBSテレビ「なかい君の学ぶスイッチ」(甲5)、テレビ神奈川の神奈川県広報番組「カナフルTV」(甲7、8)、テレビ東京の「青春高校3年C組」(甲9)といった地上波のテレビ番組で紹介されるに至った。 (イ)Twitterでの418万回の視聴回数の獲得 Twitterにおいて、平成29年7月21日、A氏の動画を投稿したところ、7.5万リツイートを獲得し(甲31)、視聴回数は、418万回にも及んだ。 (ウ)有名雑貨店のフリーペーパーでの紹介 A氏は、ヴィレッジヴァンガード(株式会社ヴィレッジヴァンガードコーポレーショングループ)が発行する公式フリーペーパー「VVMagazine」の平成30年10月発行の第52号にて掲載(紹介)された(甲32)。 (エ)YouTubeの動画再生 A氏は、本件商標の出願時点までにYouTubeにA氏の動画を3本投稿し、それぞれ、約103万回、約2万回、約2.1万回、の再生回数を得ている。YouTubeにおけるA氏の投稿動画は、明らかに著名な部類に入るものである(甲33)。 イ 小括 以上のとおり、使用商標は、A氏の提供する役務を示すものとして、取引者、需要者において広く認識されていたものである。 (2)本件商標と使用商標の類似性及び本件商標の指定役務と使用商標の使用役務の同一・類似性 ア 本件商標と使用商標の類否について 本件商標は「パラデル」、使用商標は「パラデル漫画」の文字からなるところ、「漫画」の有無において相違する。しかし、両商標に含まれる「パラデル」の語は造語であって、創作性が高い語である一方、「漫画」の語はその内容表示的な語であることからすれば、使用商標は「パラデル」のみ単独でも識別力を発揮する要部というべきであり、両商標のいずれにおいて「パラデル」の称呼が生じる。 さらに、使用商標はA氏の動画の名称として周知・著名であることから、両商標からは、A氏の動画である「パラデル漫画」の観念が生じる。 したがって、本件商標と使用商標とは、外観、称呼、観念のいずれにおいても共通する類似の商標というべきものである。 イ 本件商標の指定役務と使用商標の使用役務との類否 A氏及び請求人は、使用商標をA氏の動画の名称として使用するところ、A氏の動画に関連する役務(以下「使用役務」という。)は、本件商標の指定役務と同一であるか、少なくとも類似の役務に該当する。 ウ まとめ 以上の事実によれば、使用商標は、本件商標の出願時点で、A氏の動画作品を示すものとして広く知られるに至っており、さらには、本件商標の登録審決日においても継続してその周知・著名性を維持していたと推認できるものである。そして、本件商標は、使用商標と類似であり、その役務とも同一又は類似のものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 6 商標法第4条第1項第15号について (1)本件商標と使用商標の同一性 本件商標と使用商標が類似であることは、上記5(2)アで述べたとおりである。 (2)使用商標の周知(著名)性 使用商標がA氏の提供する役務を示すものとして、取引者、需要者において広く認識されていたものであることは、上記5(1)のとおりである。 (3)使用商標の独創性の程度 使用商標は、「パラパラ漫画からキャラが飛びデル」というA氏の動画の内容を端的に表現し、かつ従来例をみないものであり、また、「デル」の部分は、描かれたキャラクターが飛び出てくるかのように観察者に推察させるものである。したがって、使用商標は極めて独創的であるといえる。 (4)本件商標の指定役務とA氏の業務に係る役務等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度、取引者及び需要者の共通性 本件商標の指定役務及び使用商標の使用役務は、いずれも、同一又は類似であって、役務間の高い関連性、取引者及び需要者の共通性がみられる。 (5)小括 以上の事実を総合して、取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準とすれば、本件商標は、A氏の動画及び役務と混同を生ずるおそれがある商標であることは明らかである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 7 商標法第4条第1項第19号について (1)本件商標と使用商標の同一性及び本件商標の指定役務と使用商標の使用役務の同一・類似性 上記5(2)で述べたとおり、本件商標と使用商標は類似であり、本件商標の指定役務と使用商標の使用役務も同一である。 (2)使用商標の周知性(出願時及び査定時) 使用商標がA氏の提供する役務を示すものとして、取引者、需要者において広く認識されていたものであることは、上記5(1)のとおりである。 (3)不正の目的について 被請求人は、使用商標が、請求人及びA氏による動画作品を示す商標として使用されていたことを知りつくしながら、A氏に無断でA氏先行出願を取下げ、直ちに使用商標と類似の商標を出願・登録した。さらに、被請求人は、本件商標が登録される以前から、A氏及びA氏による使用商標の使用の妨害を試みているのであり、A氏に損害を与える目的、すなわち、不正の目的をもって本件商標を使用するものである。 (4)小括 以上からすれば、本件商標は、A氏の著名商標である使用商標を、不正の目的で使用するものであり、商標法第4条第1項第19号に該当する。 8 むすび 以上の理由により、本件商標の登録は、無効にされるべきものである。 第4 被請求人の主張について 被請求人は何ら答弁していない。 第5 当審の判断 1 利害関係について 請求人は、「パラデル漫画」に係る登録出願(商願2020-143665)をしているところ(甲4)、本件商標を引用する拒絶理由通知を受けているため利害関係を有すると主張するも、被請求人は何ら答弁していないものであるから、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。 2 商標法第3条第1項柱書該当性について (1)商標法第3条第1項柱書の趣旨について 商標法第3条第1項柱書は、商標登録要件として、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」であることを規定するところ、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標、あるいは将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される(知財高裁平成24年(行ケ)第10019号同年5月31日判決参照)。 (2)商標法第3条第1項柱書の要件を具備するかについて 被請求人は、上記第4のとおり、何ら答弁していないものの、上記判決からすると、商標法第3条第1項柱書の要件を具備するためには、少なくとも本件商標の登録査定(審決)時において、将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標であれば足りると解されることから、たとえ、本件審判の請求時において、被請求人(本件商標権者)による本件商標の使用が確認できず、また、使用の蓋然性がみられないといったような事情がうかがえるとしても、それらを理由に、被請求人が、本件商標の登録審決時において、将来、自己の業務に係る指定役務について本件商標を使用する意思を有していた商標であることを否定することはできない。 したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものとはいえない。 3 使用商標の周知性について (1)請求人が提出した証拠及び同人の主張からすれば以下のとおりである。 ア A氏は、A氏の動画(パラパラ漫画を主とするアニメーション動画)の名称について、使用商標を使用していることが認められる(甲5~12)。 イ A氏の動画は、本件商標の登録出願日までに、4本程度のテレビ番組で紹介されたほか(甲5、7~9)、よしもと西梅田劇場や自動車メーカーのラグビーチームのPR動画の制作を依頼され(甲10、12)、YouTubeにも掲載された(甲11)。 ウ A氏の動画は、平成29年にTwitterで418万回視聴され7.5万件のリツイートがあった(甲31)。 エ ヴィレッジヴァンガード(雑貨店)が発行する公式フリーペーパー(平成30年10月発行)にA氏の紹介記事が掲載された(甲32)。 オ A氏の動画は、本件商標の登録出願日時点で、平成30年にYouTubeにアップロードした3本が、それぞれ約103万回、約2万回、約2.1万回再生されたとする(請求人主張)。 (2)上記(1)からすれば、A氏がA氏の動画の名称として使用商標を使用していることは認められる。 しかしながら、本件商標の登録出願時前に、A氏の動画がテレビ番組で紹介された回数は、4回程であり、企業のPR動画としての依頼は2回にすぎないうえに、うち1回はA氏が所属する請求人からのものであり、また、雑貨店のフリーペーパーにA氏が紹介された回数も1回でしかなく、いずれも決して多い回数とはいえない。また、TwitterにおけるA氏の動画の再生回数やリツイートの数は、それを通じて、A氏の動画の周知性に具体的にいかなる影響を及ぼしていたのかは不明である。さらに、YouTubeにアップロードしたA氏の動画3本に係る再生回数を客観的に裏付ける証拠は見あたらない。 そして、本件商標の登録審決時における、A氏の動画の周知性を裏付ける証拠は皆無であるうえに、A氏の動画の提供に係る実績(提供による収入額等)は明らかにされていない。 以上を総合すると、A氏の動画に使用している使用商標は、本件商標の登録出願時及び登録審決時において、A氏の業務に係る役務(パラパラ漫画を主とするアニメーション動画の作成及び提供)を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 4 商標法第4条第1項第10号該当性について (1)使用商標の周知性 使用商標は、上記3のとおり、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。 (2)本件商標と使用商標の類否について ア 本件商標 本件商標は、「パラデル」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応して「パラデル」の称呼を生ずること明らかであり、当該文字は、一般の辞書等に載録がなく、また、上記3のとおり、需要者の間に広く認識されていたものと認めることもできず、直ちに何らかの意味合いを理解させるものでもないから、これより特定の観念は生じない。 イ 使用商標 使用商標は、「パラデル漫画」の文字よりなるところ、その構成文字は、証拠からすると、同書同大同間隔で表されており、いずれかの文字が強い印象を与えるような態様ではなく、まとまりよく表されているものである。また、その構成文字全体に相応して生じる「パラデルマンガ」の称呼は、よどみなく一連に称呼し得るものである。 そして、「パラデル漫画」の文字は、上記3のとおり、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできず、全体として特定の観念は生じないものの、かかる構成からすれば、これを一体のものとして捉えるとみるのが自然であるから、これに接する取引者、需要者は、構成中の「漫画」の文字を使用役務の質として認識するというよりはむしろ、その構成全体をもって看取、把握するものと判断するのが相当である。 そうすると、使用商標は、「パラデルマンガ」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。 なお、提出された証拠から、「パラデル漫画」が単に「パラデル」と認識されている事実は見いだせない。 ウ 類否 上記ア及びイのとおり、本件商標と使用商標とは、観念において比較することができないものの、外観における文字数及び称呼における音数の相違から区別することができるものであるから、これらを総合して勘案すれば、両者は相紛れるおそれのない類似しない商標というべきである。 (3)小括 上記(1)のとおり、使用商標は需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできず、また、上記(2)のとおり、本件商標と使用商標とは類似しない商標であるから、本件商標の指定役務と使用商標に係るA氏の業務に係る役務の類否について検討するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)使用商標の周知性 使用商標は、上記3のとおり、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。 (2)本件商標と使用商標の類似性の程度 本件商標と使用商標とは、上記4のとおり、類似しない商標であって、共通性を見いだすことはできないものであるから、「パラデル」の文字を含むことを考慮しても、両者の類似性の程度は低いというべきである。 (3)出所の混同のおそれ 以上(1)及び(2)を踏まえ、本件商標の指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、その商標権者がこれをその指定役務に使用しても、取引者、需要者をして使用商標を連想又は想起することはなく、その役務が他人(A氏)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者(請求人)の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 (4)小括 したがって、本件商標は、商標第4条第1項第15号に該当しない。 6 商標法第4条第1項第19号該当性について 使用商標は、上記3のとおり、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものであって、外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることもできないことは明らかである。また、本件商標と使用商標とは、上記4のとおり、類似しない商標である。 そうすると、本件商標は、不正の目的について判断するまでもなく商標法第4条第1項第19号に該当しない。 7 商標法第4条第1項第7号該当性について (1)商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は商標登録を受けることができない旨規定するところ、ここでいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号、平成18年9月20日判決言渡)。 (2)請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおり認めることができる。 ア 被請求人は、本件商標の審査段階における令和元年11月27日付け意見書(甲17)において、A氏の動画に「パラデル漫画」、「パラデル」という名称をつけることをA氏に提案した旨、A氏先行出願(甲3 商願2018-28043 商標「パラデル」)に係る手続きは自分が行った旨述べていることなどからすれば、「パラデル」の文字が、A氏の動画に使用されることを十分に認識していたものと認めることができる(甲17)。 イ また、被請求人は、上記アの意見書において、A氏先行出願の取下げは、A氏の承諾を得て、自分が行った旨述べているが、被請求人は、A氏先行出願に係る願書にはA氏の連絡先を記載していたにもかかわらず(甲4)、当該取下書(先行出願取下書)には、A氏の連絡先とは異なる被請求人の連絡先、それも被請求人の携帯番号でもない、当時の勤務先とされる電話番号(甲22)を記載していることからすれば、当該行為は、整合性を欠くうえに、A氏の承諾を得ていたと述べたことに鑑みても不自然な行為であるといわざるを得ない。 以上からすると、被請求人は、A氏の承諾を得ずに無断でA氏先行出願の取下げを行ったものと推認することができる。 ウ そして、被請求人は、上記イのA氏先行出願を取下げた約2月後に本件商標「パラデル」を出願し、登録を受けている(甲1、2)。 (3)判断 以上(1)及び(2)を踏まえると、被請求人は、「パラデル」の文字が、A氏の動画に使用されることを十分に認識したうえで、A氏に無断で先行出願の取下げを行い、その存在を排斥することにより、結果として、それが商標登録されていないことを奇貨として、A氏及びそのマネジメント会社である請求人の業務を妨害する目的をもって本件商標を登録出願したものと判断するのが相当である。 そうすると、本件商標は、その出願の経緯、目的に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが法の予定する秩序に反するものとして到底認容できない場合に当たるものとして「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。 8 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第3条柱書、同法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当しないものの、同項第7号に該当するものである。 したがって、本件商標は、商標法第46条第1項第1号により、その登録は無効にされるべきである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-890040

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