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商標無効審判

2022-890038

審判番号
2022-890038
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2020-137664
登録番号
6387056
請求日
2022年05月13日
審決日
2023年05月08日
公報発行日
2023年08月25日
結論
却下
当事者
  • 【請求人】アシフ メマン
  • 【請求人代理人】砂川 惠一
  • 【被請求人】合同会社 DELHI MAHAL GROUP
  • 【被請求人代理人】大澤 豊
  • 【被請求人代理人】大沼 加寿子
審判長/審判官
  • 審判長 矢澤 一幸
  • 審判官 豊田 純一
  • 審判官 杉本 克治
分類
T111 .02 -X (W34)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法56条1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第7号、商標法第56条第1項、特許法第135条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第6387056号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6387056号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和2年10月26日に登録出願、第34類「たばこ」を指定商品として、同3年3月12日に登録査定、同年5月11日に設定登録されたものである。 第2 請求人が引用する商標 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当するとして引用するインド商標登録出願第4705809号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおり構成よりなり、2020年10月16日に登録出願、第34類「Tobacco and tobacco substitutes; Cigarettes and cigars; Electronic cigarettes and oral vaporizers for smokers; Smorkers’articles; Matches」を指定商品とするものであり、引用商標の権利者(以下「引用商標権者」という。)は、「RSPL LIMITED」である。 第3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を、審判請求書において要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。 なお、以下、証拠の表示については、「甲第○号証」を「甲○」、「乙第○号証」を「乙○」のように、簡略して表記する場合がある。 1 無効理由 本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。 2 具体的理由 (1)本件商標が、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と類似することについて 本件商標は時計の文字盤が向かって右に、ヒンディー語で「時計」を意味するGHADIをデーヴァナーガリー文字で書いたものが向かって左に配置されている。 それに対して引用商標は、時計の文字盤の右下にかぶさるようにGHADIのデーヴァナーガリー文字で書いたものが配置されている。 本件商標と引用商標は、やや位置関係が異なるのみで、外観は類似し、称呼と観念は同一である。 したがって、両商標は、全体として類似するものである。 (2)本件商標が、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標であることについて 甲第2号証には、引用商標が本件商標の登録出願前にインドで登録されていることが記載されており、周知となっているものと考えられる。 (3)不正の目的について 引用商標権者が本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)に商標権の取得を許諾し、独占販売を認める特段の事情は見当たらないので、我が国に本件商標を登録出願した行為は、引用商標権者の許可を得ていないものと推認される。 その上で、甲第3号証に示すように、本件商標権者は、本件商標に係る商品の販売中止、商品回収などを「HIRA HALAL FOODS」(以下「HIRA HALAL FOODS社」という。)に対して要求している。 これは、従来、本件商標に係る商品の販売を行ってきた請求人に成り代わって不当な利益を得る目的の行為であり、また、請求人に損害を与える目的の行為である。 (4)商標法第4条第1項第19号の該当性について 本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするものに該当する。 (5)国際信義違反について 販売中止等の要求の対象となっている商品は「噛みタバコ」である。 現在の我が国のタバコの需要者にとっては、なじみの薄いタバコであるが、愛好者は多くの国に存在しており、日本国内の需要もほとんどは国内在住の外国人によるものである。 そのような商品の流通を、引用商標権者が我が国において商標権を取得していないことを奇貨として、本件商標の商標権(以下「本件商標権」という。)を取得し、従来の流通ルートを妨害して不正の利益を得る目的の行為を行うことは、国際信義に反し我が国全体のイメージを損なう可能性があり、著しく公序良俗に反するものである。 (6)商標法第4条第1項第7号の該当性について 本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当する。 (7)利害関係について 請求人は、通知書(甲3)における被通知者である「HIRA HALAL FOODS社」の経営者であり、本件商標に係る商品の販売中止等を要求されているので、利害関係人である。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を、令和4年8月3日付け審判事件答弁書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。 1 商標法第4条第1項第19号について (1)引用商標の周知性について 請求人は、インドで登録されている引用商標が、商標法第4条第1項第19号に規定の「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」であると主張している。 ところで、引用商標が商標法第4条第1項第19号に規定の「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」に該当するためには、我が国又は外国においていわゆる周知になっていることが要件とされる。 請求人はこの点について、「引用商標が本件商標の登録出願前にインドで登録されていることが記載されており、周知となっているものと考えられる」と主張している。 確かに、インド商標法では先願主義と使用主義とを並存して採用しており、使用を開始している場合は願書に使用開始日を記載する。 しかし、使用を開始していない場合は、「proposed to be used(使用予定)」と記載することになっている。 引用商標の出願データには、「proposed to be used」の記載があり(乙2)、少なくとも、引用商標の登録出願時には使用を開始していなかったことが分かる。 つまり、甲第2号証によって証明されている事実は、引用商標が2020年10月16日に登録出願され、現在登録されているという事実のみである。 よって、引用商標の実際の使用開始日がいつであるのか、あるいは、インド国内でどの程度使用をされているのかについては一切不明であるから、引用商標がインド国内において周知な商標であることは、一切証明されていない。 したがって、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれの時点においても、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」には該当しない。 (2)本件商標と引用商標の類否について 引用商標は、商標法第4条第1項第19号に規定の「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」ではないのであるから、本件商標は同項第19号に該当するものではないことは明らかであるが、念のため、両商標の類否についても意見を述べる。 本件商標は、時計の図形(ア部)が左側、赤色で塗りつぶされている隅丸長方形(イ部)が右側に配置され、青色系のまだらな模様の背景(ウ部)、ア部の下側部分に黄色の半円状の図形(エ部)、イ部の中には黄色で大きく書かれた文字(オ部)、その下に黄色でやや小さく書かれた文字(力部)で構成される。 また、ア部、イ部、エ部、オ部、力部はいずれも半透明であるため、背景であるウ部がやや透けて見えており、黄色部分、赤色部分共に、背景の青系の色味と混ざったような色となっており、ウ部の背景を介して全ての構成要素が一連一体で分離不可能なものとして表されている。 一方、引用商標は、黄色の時計(A部)とその下側に重ねるように赤茶色の文字(B部)で構成されており、こちらも黄色と赤茶色がA部とB部で共通して用いられ、さらにA部とB部が重ねて描かれることで、一連一体で分離不可能なものとして表されている。 両商標の外観は上述したとおりであるが、まず、商標を構成する各要素の数が全く異なっている。 そして、本件商標は横方向に長い商標であるが、引用商標は縦方向に長い商標である。 また、本件商標は青みがかった黄色と赤色、及びピンク色(背景色にちりばめられている)で構成されているのに対し、引用商標は、黄色と赤茶色で構成されており、色味が全く異なる。 さらに細部の相違点をみていくと、本件商標のア部の時計は月桂樹を模した葉で三重の円が囲まれており、その中にローマ数字で数字が表されている時計盤が描かれている。 これに対し、引用商標のA部には、月桂樹の葉や三重の円は存在しておらず、赤茶色の円の中に算用数字で描かれた時計盤が表示されている。 また、時計盤が示している時刻も異なるものである。 つまり、ア部とA部の描かれている時計の図形は、全く異なるものである。 さらに、本件商標に存在するエ部は、引用商標には存在しない。 また、本件商標のイ部のような赤色の長方形も引用商標には存在しない。 次に文字部分であるが、本件商標のオ部に書かれているのはヒンディー語で「時計」を意味する語であり、この点は引用商標のB部も同じである。 ただし、本件商標のオ部の文字の書体はAraya Unicode Fontといわれるものであるのに対し、引用商標のB部の文字はBirynai Unicode Fontといわれるものであり、書体が全く異なる。参考として、ヒンディー語のフォントのサイトを対比させた書面を提出する(乙4)。 しかも、時計の図形に対し「時計」の文字を付しているのであるから、図形部分の説明的な文字であるにすぎない。 また、本件商標の力部は「印」を意味するヒンディー語であるが、かかる言葉は引用商標には存在しない。 そして、引用商標ではB部(時計の文字)はA部(時計の図形)の下側に重なった状態となるように描かれており、そして、それらが黄色の枠で囲まれていることから、時計と一体成型されている。 これに対し、本件商標では時計と文字とがそれぞれ左右に配置されている。 以上のとおり、本件商標と引用商標とは多数の差異が存在する、全く異なる商標であり、出所の混同を生じ得ない非類似の商標であることは明らかである。 (3)不正目的について 被請求人は、2012年5月5日にはインドのニューデリーのデザイン会社との間で本件商標のロゴについての契約をしており(乙5)、同月12日には、当該デザイン会社からそのロゴを納品されている(乙6)。 なお、乙第5号証の契約書にはサインがないが、契約文に2012年5月5日に本契約が発効し、その場合、同月12日は被請求人に本契約に基づくサービスが提供されるとの記載があり、実際に同日に被請求人にロゴが納品されている(乙6)。 したがって、引用商標の登録出願時である2020年10月16日より約8年前から、既に本件商標を使用しているのであるから、不正の目的がないことは明らかである。 (3)まとめ 引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれにおいても、商標法第4条第1項第19号に規定される「外国における需要者の間に広く認識されている商標」に該当せず、また、被請求人が本件商標の商標権を取得するに当たっては不正の目的も存在していない。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第7号について (1)請求人は、引用商標権者が我が国において商標権を取得していないことを奇貨として、本件商標の商標権を取得した旨主張しているが、被請求人は、引用商標の登録出願日である2020年10月16日よりも約8年前にインドのニューデリーのデザイン会社との間で本件商標のロゴについての契約をし、当該デザイン会社からそのロゴを納品されている(乙5、乙6)のであり、公序良俗に反するものでないことは明らかである。 また、本件商標と引用商標とは出所の混同を生じる余地のない非類似の商標である。 非類似の商標について登録をし、本件商標を付した商品「タバコ」についての販売中止の通告を行うことは、国際信義上、いかなる問題も生じるものではない。 (2)請求人は、本件商標権者による本件商標を付した商品の販売中止等の要求の対象となっている商品は「噛みタバコ」であり、現在の我が国のタバコの需要者にとってはなじみの薄いタバコではあるが、愛好者は多くの国に存在しており、日本国内の需要もほとんどは国内在住の外国人によるものである旨主張している。 しかしながら、かかる主張を裏付ける証拠は一切提出されておらず、何ら根拠のない主張である。 (3)請求人は、「従来の流通ルートを妨害して」と主張するが、日本国内のタバコ愛好者にとっては入手可能であるか否かが問題であって、流通ルートが異なることは関係がない。「従来の流通ルート」が変更となって困るのは、当該流通ルートに関わっていた輸入業者、販売業者のみであるが、これは市場競争に関する問題であって、国際信義の問題ではない。 (4)以上より、本件商標権は公序良俗に反して取得されたものではないから、本件商標は、その登録査定時において、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 3 利害関係人 請求人は、本件商標権者が「HIRA HALAL FOODS社」に送付した通告書(甲3)を提出し、その経営者であるから利害関係人である旨主張している。 しかしながら、当該通告書においては経営者の名前は記載されておらず、請求人が「HIRA HALAL FOODS社」の経営者であることを証明する書面も提出されていない。 また、請求人と引用商標権者との関係も不明である。 以上より、請求人は、利害関係人とは認められない。 第5 当審の判断 1 本件審理に関し、当事者間において利害関係について争いがあるので、以下、検討する。 (1)請求人が本件審判事件の利害関係人であるか否かについて ア 請求人が本件審判事件の利害関係人であるか否かについては、請求人が、本件商標と同一又は類似である商標を商品「たばこ」について、使用していた又は使用している者と認めることができるか否か、当該商品について、製造、販売する権利を有しているか否か、当該商品を製造、販売することについての計画を有しているか否か、本件商標の存在により商品の出所の混同による不利益を被る可能性を有する者であるか否か、本件商標と同一又は類似である商標を当該に将来使用する可能性を有する者であるか否か、本件商標の専用使用権者、通常使用権者であるか否か及び本件商標権について訴訟関係にある者、又は訴訟関係にあった者若しくは警告を受けた者であるか否かについて判断し、これらのうち1つでも該当する場合は、請求人は本件審判事件の利害関係人と判断すべきである。 イ 請求人は、請求人が本件商標と同一又は類似である商標を商品「たばこ」について使用していた又は使用していること、当該商品について、製造、販売する権利を有していること、当該商品を製造、販売することについての計画を有していることについて、何ら証明していない。 そうすると、請求人は、本件商標の存在により商品の出所の混同による不利益を被る可能性を有する者であるとは認められず、また、請求人が本件商標と同一又は類似である商標を当該商品に将来使用する可能性を有する者であるとは認められない。 ウ 請求人は、本件商標権者が「HIRA HALAL FOODS社」に送付した通告書(甲3)を提出し、請求人は同社の経営者であるから利害関係人である旨主張しているが、請求人が同社の経営者であると判断し得る証拠は提出していないことから、請求人が本件商標権について警告を受けた者とは認められない。 エ 請求人は、同者と引用商標権者である「RSPL LIMITED」との関係性についても何ら証明していない。 オ 本件商標の商標登録原簿を確認しても、請求人は、本件商標の専用使用権者又は通常使用権者とは認められない。 また、請求人は、本件商標権について訴訟関係にある者、又は訴訟関係にあった者とは認められない。 カ 上記イのとおり、請求人は、本件商標と同一又は類似である商標を商品「たばこ」について使用していた又は使用していること、当該商品について、製造、販売する権利を有していること、当該商品を製造、販売することについての計画を有していることについて何ら証明していないことから、請求人は、本件商標の存在により商品の出所の混同による不利益を被る可能性を有する者であるとは認められず、また、本件商標と同一又は類似である商標を当該商品に将来使用する可能性を有する者であるとは認めらない。 また、上記ウのとおり、請求人が本件商標権について警告を受けた者とは認められず、上記エのとおり、請求人と引用商標権者との関係も明確ではない。 さらに、上記オのとおり、請求人は、本件商標の専用使用権者又は通常使用権者とは認められず、本件商標権について訴訟関係にある者、又は訴訟関係にあった者とは認められない。 そうすると、請求人は、本件審判事件における利害関係人とは認められないと判断するのが相当である。 (2)当審においてした審尋 審判長は、令和5年1月27日付け審尋において、請求人が提出した全証拠を確認するも、請求人が「HIRA HALAL FOODS社」の経営者であることが確認することができないこと及び引用商標権者と請求人との関係は明らかではないことから、請求人が本件審判事件の利害関係人であることに疑義がある旨通知したが、請求人は、これに対し何ら回答していない。 (3)まとめ 以上からすると、請求人は、本件商標の登録を無効とすることにつき、何らかの利益を有する者であるとは認められない以上、請求人が本件審判を請求する法律上正当な利益を有する者と認めることはできない。 2 結論 以上のとおり、本件審判の請求は、審判請求の利益を有しない者の請求に係る不適法な審判の請求であって、その補正をすることができないものであるから、商標法第56条第1項の規定により準用される特許法第135条の規定によって、却下されるべきである。 よって、結論のとおり審決する。

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