商標無効審判
2022-890028
ディオールブ
- 審判番号
- 2022-890028
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2019-166644
- 登録番号
- 6305075
- 請求日
- 2022年04月25日
- 審決日
- 2024年01月05日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 請求成立(無効)
- 当事者
- 【請求人】クリスチャン ディオール クチュール
- 【請求人代理人】田中 克郎
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】佐藤 俊司
- 【請求人代理人】池田 万美
- 【請求人代理人】橋 沙耶香
- 【被請求人】李嘉松
- 審判長/審判官
- 審判長 豊田 純一
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 小田 昌子
- 分類
- T111 .23 -Z (W25) / T111 .261-Z (W25) / T111 .262-Z (W25) / T111 .263-Z (W25) / T111 .271-Z (W25) / T111 .222-Z (W25)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項8号商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法46条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第8号、商標法第4条第1項第19号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6305075号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第6305075号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6305075号商標(以下「本件商標」という。)は、「DIORLV」の文字を標準文字で表してなり、令和元年12月25日に登録出願、第25類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同2年10月9日に登録査定され、同月16日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、引用する商標は、以下の1ないし12の登録商標(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)であり、引用商標の商標権は、現に有効に存続しているものである。
なお、請求人が本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は、以下の1ないし4の登録商標(以下「11号引用商標」という。)である。
1 登録第4492095号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様:別掲1のとおり
指定商品:第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日:平成12年9月18日
設定登録日:平成13年7月19日
2 登録第号667468商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様:別掲2のとおり
指定商品:第6類,第14類,第18類,第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日:昭和38年8月26日
設定登録日:昭和40年2月15日
書換登録日:平成18年2月8日
3 登録第669412号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様:別掲2のとおり
指定商品:第14類,第18類,第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日:昭和38年8月26日
設定登録日:昭和40年3月5日
書換登録日:平成18年3月1日
4 登録第838094号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様:別掲3のとおり
指定商品:第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日:昭和39年3月13日
設定登録日:昭和44年11月18日
書換登録日:平成22年8月4日
5 登録第858578号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様:別掲3のとおり
指定商品:第9類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:昭和39年3月13日
設定登録日:昭和45年5月30日
書換登録日:平成23年1月26日
6 登録第4013844号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の態様:別掲1のとおり
指定商品:第18類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:平成6年6月10日
設定登録日:平成9年6月20日
なお、引用商標6については第24類に属する商標登録原簿に記載の商品について防護標章登録されている。
7 登録第688094号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の態様:別掲3のとおり
指定商品:第14類、第16類、第20類、第21類、第24類及び第27類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:昭和39年3月13日
設定登録日:昭和40年10月25日
書換登録日:平成18年2月22日
8 登録第4013843号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の態様:別掲1のとおり
指定商品:第14類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:平成6年6月10日
設定登録日:平成9年6月20日
9 登録第1415962号商標(以下「引用商標9」という。)
商標の態様:別掲3のとおり
指定商品:第2類、第16類及び第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:昭和51年7月5日
設定登録日:昭和55年4月30日
書換登録日:平成23年1月19日
10 国際登録第951058号商標(以下「引用商標10」という。)
商標の態様:別掲1のとおり
指定商品:第9類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品
国際登録出願日:2007年8月24日
優先権主張:2007年3月23日(France)
設定登録日:平成21年8月28日
11 登録第1996398号商標(以下「引用商標11」という。)
商標の態様:別掲3のとおり
指定商品:第4類、第6類、第8類、第11類、第16類、第20類、第21類、第24類、第26類、第27類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:昭和60年7月10日
設定登録日:昭和62年11月20日
書換登録日:平成20年7月30日
12 登録第4022600号商標(以下「引用商標12」という。)
商標の態様:別掲1のとおり
指定商品:第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:平成6年6月10日
設定登録日:平成9年7月4日
第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第58号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
なお、証拠の記載にあたっては、以下、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する場合がある。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第46条第1項第1号によって無効とされるべきである。
2 具体的な理由
(1)請求人及び引用商標の著名性について
請求人は、フランスの著名なファッションデザイナー「Christian Dior(クリスチャン ディオール)」(以下「ディオール氏」という。)を創始者とするフランス国法人であり、1947年にクチュールメゾンを創設し、以後一貫して「女性に喜びと優雅さ、美を再発見してもらうこと」(甲14)にこだわり続けている。
2017年に、著名な高級ブランドを取り扱う企業グループとして知られる「LVMH(ルイ ヴィトン モエ ヘネシー)グループ」の傘下となった後も、そのグループの幅広い販売網と宣伝により、我が国を含めた世界各国において広く知られる極めて知名度の高いブランド力を維持し続けている。
ディオール氏は、1935年から服飾デザインを始め、1946年に小さなブティックを開店、1947年に第1回コレクションを発表、その作品群は「ニュールック」と呼ばれ、一躍モード界で名を知られた。
その後、1954年に「Yライン」、1956年に「Aライン」などの新しいスタイルを次々に発表し、モード界に大きな影響を与えたことから、「モード界の王様」とまでいわれた。
ディオール氏はドレスのみならずファッション関連商品を幅広く手がけ、また、当初から商品を世界に輸出することで「大ディオール帝国」を築き上げた。
1957年にディオール氏が急逝した後も、イヴ・サンローラン、マルク・ボアン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノ等が主任デザイナーとなることにより、「私は店を永続する」というディオール氏の遺志は受け継がれ、現在も世界的ファッションハウスとして発展しつづけている。
請求人の取扱いに係る商品は、「婦人服、紳士服、シューズ、ベルト、ジュエリー、眼鏡、腕時計、万年筆、ライター」など、服飾関係を主として幅広い分野に及び、これら請求人による商品は、請求人の長年の継続的な努力によって、いずれも洗練された高品質の商品であり、世界の超一流品として極めて高い信用が形成されているものである。
このことは、請求人の売上高をみれば明らかである。
すなわち、請求人は、2017年にLVMHの傘下となったが、同年度の請求人の世界全体での売上高は20億ユーロ(約2,380億円)となっており、この額は、LVMHのファッション部門において、「Louis Vuitton」(ルイ・ヴィトン)に次ぐ売上高となっている(甲15)。
そして、我が国においても、請求人に係る各種商品は、洗練された高品質の商品として一般需要者間に広く認識されており、請求人の長年の継続的な努力によって、世界の超一流品としての極めて高い信用が形成されている。
また、近年では、請求人のブランドや商品については、「DIOR」という請求人の略称を用いて事業を行い、宣伝活動を行っている。
その努力の結果、「Christian Dior Couture」の略称としての「DIOR」及びその称呼「ディオール」もまた、「Christian Dior Couture」と同様に、請求人の製造販売する商品を意味するものとして、需要者・取引者らの間で広く知られるに至っている。
このことは、我が国において出版された各種刊行物やウェブサイトにおいて、ディオール氏がデザインした婦人服を製造・販売するブランド「Christian Dior」及び請求人が、「DIOR」(ディオール)と略称されていることからも明らかである(甲16~甲41)。
このように著名な引用商標「DIOR」は、請求人ブランドを象徴する最も重要なハウスマークとして、設立以降現在に至るまで、ほぼすべてのあらゆる商品、すなわち本件商標の指定商品に係る被服、バッグ、シューズ、時計等ファッション全般の商品に使用されている。
さらに、このような「Dior」の著名性については、引用商標6について防護標章登録第1号が登録され、日本国周知・著名商標リストにおいて掲載されていることからも、明らかである(甲6、甲42)。
加えて、婦人服等のファッション関連商品についての「Dior」の著名性については、審査・審決例においても認定されている(甲43~甲50、甲53、甲57の40)。
以上のことから、本件商標の登録出願時には、登録商標である「DIOR」の文字は、すでに「Christian Dior」の著名な略称であり、また、請求人が自らのブランドとして「婦人服、紳士服、シューズ、ベルト、ジュエリー、眼鏡、腕時計、万年筆、ライター」等(以下「請求人商品」という。)のファッションに関係する商品に使用する商標として、極めて広く知られるに至っていた商標であり、現在もその著名性は維持されている。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標と引用商標との類否について、最高裁判決(平成19年(行ヒ)第223号等)が示した基本的原則や商標審査基準等に従い、検討する。
ア 本件商標について
(ア)本件商標は、その構成中の「DIOR」の文字が要部として、取引者・需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えること
本件商標は、「DIORLV」の文字を標準文字で表してなり、「DIOR」の文字と「LV」の文字の結合からなる商標として理解されるものである。
そして、本件商標の構成中の「DIOR」の文字が要部として、取引者・需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるというべきである。
a 全体から一定の称呼、観念は生じないこと
本件商標の構成中「DIOR」の文字は、著名性を獲得した引用商標と同一の構成文字からなり、また、本件商標の構成中「LV」の文字も、ブランド「Louis Vuitton」を示す表示として知られているといえる。
そうすると、本件商標に接した需要者は、本件商標を「DIOR」の文字と「LV」の文字の結合からなる商標であると捉えると理解するのが自然である。
そして、本件商標の構成中「DIOR」の文字については、その著名性も相まって「ディオール」とスムーズに発音できるのに対し、「LV」の文字については、子音のアルファベットが連続して並んでいる場合にはアルファベットどおりに発音することが一般的であることを踏まえれば、「DIOR」の文字のスムーズな発音とは相反し、「エルブイ」というアルファベットどおりの発音となり、スムーズな発音が失われるといえる。
そうすると、本件商標は、全体をよどみなく一連に称呼し得えない。
なお、異議2020-900352決定においては、本件商標は、一種の造語として認識され、「ディオールブ」の称呼を生ずる旨判断されている(甲53)。
しかし、「DIOR」の著名性及び「LV」の認知度に鑑みれば、本件商標に接した需要者としては、本件商標を、全体として単なる一種の造語と認識するとは考えられず、「DIOR」の文字と「LV」の文字に分離して捉えるのが自然である。
そして、「DIOR」の文字を「ディオール」、「LV」の文字を「エルブイ」と称呼するのが自然であることも踏まえると、「DIOR」の著名性及び「LV」の認知度を考慮せずに、本件商標を単なる一種の造語として、その全体から「ディオールブ」と称呼すると考えることには無理があるといえる。
また、本件商標は、「DIOR」の文字と「LV」の文字の結合であると捉えるのが自然であり、全体から一定の観念を生じるものではなく、本件商標に関する異議決定からも明らかである(甲53)。
以上より、本件商標の構成全体からは、一定の称呼、観念は生じず、むしろ、「DIOR」の著名性及び「LV」の認知度に鑑みれば、本件商標は「DIOR」の文字と「LV」の文字に分離して認識すると考えるのが自然である。
b 本件商標の構成中「DIOR」の文字が分離されて支配的な印象を与えること
本件商標は「DIOR」の文字と「LV」の文字を結合した商標と認められるところ、本件商標は、その構成中「DIOR」の文字が分離されて、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるといえる。
すなわち、「DIOR」の文字は、本件商標の語頭に置かれ、取引者及び需要者が本件商標に接した場合に最初に目にする位置に配置されており、また、本件商標「DIORLV」の6文字中4文字という大部分を占めている。
さらに、「DIOR」の文字の表示自体が、請求人の業務に係るファッション関連の商品を表示するものとして、及び請求人の略称としても、外国及び我が国の需要者の間に広く認識され、極めて高い識別力を有しており、請求人の最も象徴的なハウスマークである(甲53)。
他方、本件商標の構成中の「LV」の文字は、本件商標の語尾に配置され、本件商標「DIORLV」の6文字中後半の2文字にしかあたらず、本件商標に接した取引者及び需要者に与える印象は、その語頭に置かれている「DIOR」の文字よりも薄い。
以上からすれば、本件商標は、その語頭に、請求人の最も象徴的なハウスマークである著名な「DIOR」の文字が含まれ、本件商標の大部分を占めている一方、「LV」の文字は、本件商標の語尾に付加されているにすぎず、本件商標の構成中、たとえ「DIOR」の文字と「LV」の文字との間にスペースがなくとも、「DIOR」の文字が分離して着目され、取引者・需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部となるというべきである。
c 要部観察をした審判決例等
上記のような判断は、過去の審判決例からもより一層明らかなものとなる。
すなわち、甲第51号証として提出する審判決例は、二語以上からなる商標の構成部分のうち(それが、たとえスペースのない態様で表されているものであっても)、周知著名商標部分が独立して取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部であって、そこから周知著名商標部分のみの称呼をも生ずることを前提として、かかる要部たる周知著名商標部分を抽出して他の商標との類否判断をした結果、両商標が類似するとしたものである。
このような審判決例に鑑みるならば、本件商標においても、その構成中周知著名な「DIOR」の文字をその要部とし、「DIOR」の文字と引用商標との類否判断を行うべきであり、その場合、両者は共通の称呼「ディオール」及び著名な請求人の引用商標にかかる「DIOR」ブランドという共通の観念を生じさせるものであるから、互いに類似することは明らかである。
なお、審査基準でも、「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め原則としてその他人の登録商標と類似するものとする」とされている。
以上より、本件商標においては、要部たる「DIOR」の文字が他の商標との類否判断の対象となるというべきである。
(イ)本件商標の外観・称呼・観念
本件商標は、その構成中の「DIOR」の文字が出所表示標識として強い印象を与えるから、「DIOR」の文字より「ディオール」の称呼が生じ、かつ、請求人の引用商標にかかる請求人商品の商標として周知著名な「DIOR」の観念をも生ずる。
イ 11号引用商標について
引用商標1は、欧文字「Dior」の構成よりなり、引用商標2及び引用商標3は、「DIOR」の欧文字よりなり、引用商標4は、欧文字「Dior」と片仮名「ディオール」の2段の構成よりなることから、いずれも「ディオール」の称呼を生じ、かつ、請求人の周知著名なブランドである「ディオール」の観念が生じる。
ウ 本件商標と11号引用商標の称呼・観念・外観の類否
本件商標は、その構成中の「DIOR」の文字が要部となり、そこから「ディオール」の称呼を生じ、請求人が請求人商品に使用して周知著名となった「ディオール」との観念が生じる。
したがって、本件商標と11号引用商標は称呼及び観念において類似するものである。
また、本件商標の指定商品は、11号引用商標の指定商品と同一又は類似する。
エ 小括
上記ウのとおり、本件商標は、11号引用商標と類似する商標であり、また、11号引用商標の指定商品と同一又は類似の商品について使用する商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
最高裁判決(平成10年(行ヒ)第85号)が示した基準に照らし合わせた場合、本件商標に接した取引者・需要者は、あたかも請求人若しくは請求人と何等かの関係がある者の業務に係る商品であるかのごとく商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
ア 引用商標の著名性及び独創性
引用商標は請求人が請求人商品に使用する商標として、本件商標の登録出願日までには、我が国の取引者・需要者の間で著名となっている。
また、引用商標を構成する「DIOR」の文字及び「ディオール」の片仮名は、請求人の創業者であるディオール氏の姓に由来するものであり、本件商標の指定商品を含むファッション関連商品の品質を表示するものでないから、造語の一種であることは明らかであり、独創性の程度も高い。
イ 本件商標と引用商標との類似性の程度
商標法第4条第1項第15号は、同じく混同防止規定の趣旨に出た同項第10号ないし第14号の規定と異なり「類似」を法文上の要件からあえて外すことにより、個別具体的な状況下で出所の混同のおそれがあると認められる商標の登録をより広く排除する趣旨に出たものである。
そうすると、商標法第4条第1項第15号の該当性を考慮するにあたって「類似性の程度」を他の判断基準よりも過度に重視すべきではない。
平成12年7月11日の最高裁判例の判示においても「類似」ではなく「類似性の程度」とされて様々な判断基準の一つと位置づけているのであって、仮に本件商標が商標法第4条第1項第11号の意味で類似しない場合であっても、直ちに同項第15号該当性が否定されるべきではない。
したがって、商標法第4条第1項第15号は、商標が同一又は類似で、商品、役務が非類似である場合のみならず、商標が非類似で、商品、役務が同一又は類似である場合、商標が非類似で商品、役務が非類似である場合の各類型において適用され得るものであって、仮に同項第11号の意味で商標が非類似であるとしても、引用商標が著名である等のため広義の混同のおそれがある場合に同項第15号に該当することがある。
以上を踏まえて、本件商標と引用商標との類似性の程度を検討すると、引用商標は、「DIOR」の文字又は「ディオール」の片仮名よりなるため、その構成文字に相応して「ディオール」の称呼が生じ、請求人商品についての著名なブランドである「ディオール」との観念が生じる。
他方、本件商標は、「DIORLV」の文字を標準文字で表した態様よりなるが、「DIOR」の文字が要部となり、「ディオール」の称呼が生じ、かつ、引用商標に係る請求人商品の商標として周知著名な「DIOR」の観念が生じる。
したがって、本件商標は、引用商標と称呼・観念において類似する。
また、仮に、本件商標が引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号における類似とまではいえないとしても、極めて強い出所識別機能を有する「DIOR」の文字が共通するのであり、本件商標を全体としてみても、その構成文字6文字中前半の4文字が引用商標とつづりを同じくするものであるから、その類似性の程度は極めて高い。
このことを前提として、出所混同のおそれの存否を判断しなければならない。
ウ 本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性
本件商標は、請求人が使用し著名性を有する引用商標に係る指定商品である請求人商品と同一又は類似する第25類の商品について使用される商標であるから、商品の性質、用途及び目的並びに商品の取引者及び需要者において互いに共通性が高い。
さらに、本件商標が、その指定商品である下着のタグ、帽子や履物のワンポイント、ベルトのバックル等に使用された場合、小さく付されることが多いこと、及び、本件商標が周知著名な引用商標にかかる「DIOR」の文字を含んだ商標であることから、実際の取引実情においても、両商標を離隔的観察した場合に、需要者等が商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
エ 取引の実情等
周知著名な商標をその構成中に含む場合には、混同を生ずるおそれが認められているところ、このことは、以下の取引の実情に照らした場合、本件においても混同を生ずるおそれがある。
すなわち、本件商標は、「DIOR」の文字に「LV」の文字が付加された構成であるところ、「DIOR」の文字は、請求人の創設者の略称ないし社名の一部であり、請求人のハウスマークといえる。
また、「LV」の文字は、ブランド「Louis Vuitton」の頭文字からなり、同ブランドの商品等には、同ブランドを示す表示として、「L」と「V」から構成されるロゴが使用されており、取引者及び需要者においても、「LV」という表記が「Louis Vuitton」に係る商品を示す表示、及び訴外ルイ・ヴィトンの略称として知られるに至っている。
また、請求人と、ブランド「Louis Vuitton」を擁する訴外ルイ・ヴィトンが、いずれもLVMHという同一グループに所属しており、これもまた我が国においては広く知られているところである。
これらに加え、本件商標は全体としては何らの意味も有しないことも併せ鑑みると、本件商標に接した需要者としては、本件商標を「DIOR」の文字と「LV」の文字が結合した商標であると認識すると考えるのが自然であり、本件商標がその指定商品に使用された場合には、当該需要者としては、「DIOR」の文字が示す請求人と、「LV」の文字が示す訴外ルイ・ヴィトンを擁するLVMHグループと密接な営業上の関係にある営業主の業務に係る商品であると誤認するおそれが極めて高い。
オ 周知・著名商標をその構成中に含む商標についての異議決定・審判決例
審判決例においても、他人の周知著名な商標をその構成中に含む商標については、当該他人の業務に係る商品等と混同を生じるおそれがあるとして、商標法第4条第1項第15号に該当するとの判断が定着している(甲57)。
そうすると、本件においても、本件商標に接した取引者・需要者としては、本件商標の構成中の「DIOR」の文字に着目し、著名な引用商標を連想又は想起し、本件商標に係る商品が請求人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
さらにいえば、本件商標が「DIOR」の文字と「Louis Vuitton」の略称として知られている「LV」の文字の結合であることを考慮すると、より一層、本件商標について、請求人が属するLVMHグループと何等かの関係を有するものと認識されるおそれが高い。
カ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標との称呼及び観念上の類似性、引用商標が周知著名性を獲得していること、「DIOR」商標の独創性の高さ、請求人が著名性を獲得しているファッション分野に関して本件商標が指定商品としている点等の取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断した場合、本件商標に接した取引者・需要者は、あたかも請求人若しくは請求人と何等かの関係がある者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 引用商標の著名性
引用商標は、請求人の業務及び請求人商品等について使用された結果、「DIOR」のつづり及び「ディオール」の称呼のもと、全国的に高い著名性を有する商標であるから、商標法第4条第1項第19号に規定する「他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」に該当するものである。
イ 本件商標と引用商標の類似性
本件商標と引用商標は、互いに類似する商標である。
ウ 本件商標権者の「不正の目的」
商標法第4条第1項第19号における「不正の目的をもって使用するもの」とは、具体的には「日本国内で全国的に著名な商標と同一又は類似の商標について、出所混同のおそれまではなくとも出所表示機能を稀釈化させ、その名声を毀損させる目的をもって商標出願する場合」や、「その他日本国内又は外国で周知な商標について信義則に反する不正の目的で出願する場合」等が該当する。
そして、引用商標は、請求人による長年にわたる努力の積み重ねの結果、取引者・需要者間において広く知られ、高い名声・信用・評判を獲得するに至っており、本件商標の登録出願時には、引用商標はすでに請求人の業務に係る商品に使用される商標として極めて広く知られていた著名商標であり、「DIOR(ディオール)」といえば請求人が製造販売する世界的に有名なファッションブランドの「DIOR」との観念が一義的に生じるものである。
一方、本件商標について、その要部は、かかる著名な引用商標の「DIOR」と同一の称呼が生じ、その指定商品は、請求人の「DIOR」が著名性を獲得した請求人商品と極めて密接な関連を有する商品である。
また、「DIOR」の文字以外の部分である「LV」の文字は、請求人が所属するLVMH傘下の著名なブランドの一つである「LouisVuitton」の略称として知られており、「LV」の文字がこれ以外に何らかの意味を有するとは認められない。
世界的に著名な請求人の引用商標である「DIOR」と「LouisVuitton」の略称として知られる「LV」の文字を組み合わせる特段の理由はないことも併せ鑑みると、本件商標権者が著名な引用商標を知らず、偶然に著名な引用商標と同一のつづり及び同一の称呼を生じる文字を含む本件商標を登録出願したとは考え難く、「DIOR」の文字に、LVMHグループのブランドの略称である「LV」の文字を付加することで、引用商標の有する高い名声・信用・評判にフリーライドする目的で登録出願、使用されていることは明らかである。
したがって、被請求人が本件商標を不正の目的で使用するものであることは明らかである。
エ 先の審決例
先の審決例において、他人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていた商標と同一又は類似性の高い商標を、当該広く知られていることを十分に知りながら登録出願し登録を受けた商標は、自己の利益を得るために登録出願した不正の目的に基づくものであると認定している(甲58)。
オ 小括
以上のとおり、引用商標に係る「DIOR」の文字及び「ディオール」の片仮名は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品の「DIOR」の商品として世界的に著名な商標となっており、本件商標は、引用商標に代表される商標「DIOR」の文字及び「ディオール」の片仮名に類似するものであって、「DIOR」の著名性に便乗し、「DIOR」の文字を含む本件商標の独占排他的使用を得ようとする不正の目的に基づいて登録出願し登録されたものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第8号該当性について
商標法第4条第1項第8号における「著名な略称」については、判例(最高裁判決 平成16年(行ヒ)第343号)において「人の名称等の略称が8号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断するについても、常に、問題とされた商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは相当でなく、その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべきものということができる。」と判示されているところ、「DIOR」の文字は、我が国の一般的な辞書や雑誌等において、請求人の略称として掲載されていることから、請求人の略称として一般的に受け入れられ、本号における「著名な略称」に該当する。
そして、本件商標は、「DIORLV」の文字を標準文字で表してなるところ、請求人の著名な略称「DIOR」と同じつづり字「DIOR」が前半部分に表示されていることから、「DIOR」の文字と「LV」の文字の2語からなる結合商標であると理解されるというべきである。
そして、本件商標の構成前半部分の「DIOR」の文字は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には既に、我が国において一般的に著名となっている請求人の略称「DIOR」と同一のつづり字からなり、特に、本件商標に係る指定商品と請求人商品は需要者や取引者の面で共通性が極めて高いことを考慮すると、需要者が請求人を想起・連想する。
そうすると、本件商標が「DIORLV」の文字を一体的に表示しているとしても、需要者は、前半部分の「DIOR」の文字を認識し、ひいては請求人の略称を連想する。
また、過去の判決や審決(甲52)における判断と同様に、本件商標は、請求人の「著名な略称を含む商標」と解されるべきである。
したがって、本件商標は、「他人の著名な略称を含む商標」と解するのが妥当であり、かつ、請求人の承諾を受けないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当する。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の主張に対し何ら答弁していない。
第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがなく、また、当審も請求人は、本件審判の請求適格を有するものと判断するので、以下、本案に入って審理する。
1 請求人及び商標「Dior」等の周知著名性について
請求人は、引用商標などが著名である旨主張しているが、同人提出の証拠及び同人の主張の全趣旨から、商標「Dior」、「DIOR」、「ディオール」及び標章「Dior」が周知著名である旨主張しているものと認め、以下検討する。
(1)請求人の提出に係る甲各号証、同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 請求人は、ファッションデザイナーであるディオール氏を創始者とするフランス国法人であり、1947年に創設され、2017年に「LVMH(ルイ ヴィトン モエ ヘネシー)グループ」の傘下となった(甲14、甲15)。
イ 2017年度の世界全体での売上高は20億ユーロ(約2,380億円)となっており、LVMHのファッション部門において、Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)に次ぐ売上高である(甲15)。
ウ 2018年1月12日発行の「広辞苑(第7版)」において、「ディオール【Christian Dior】」の項に、「フランスの服飾デザイナー。1947年、ニュールックと呼ばれるシルエットを発表して成功。第二次大戦後のファッション界をリードした。」の記載がある(甲16)。
エ 2002年11月1日発行の「コンサイスカタカナ語辞典(第2版)」において、「ディオール」の項に、「フランスの服飾デザイナー.1947年夏、画商から転じて、ニュールックと称しロングスカートのモードをもって服飾界に登場.以後、Hライン、Aライン、Yラインなど数多くのモードを発表。」の記載がある(甲17)。
オ 1989年2月10日発行の「コンサイス外国人名事典<改訂版>」において、「ディオール Dior」の項に、「フランスの服飾デザイナー。・・・1935 デザイナーに転向、・・・第2次世界大戦後の世界のモード界をリード。」の記載がある(甲18)。
カ 1992年10月15日発行の「(新版)フェアチャイルド ファッション辞典」において、「Dior,Christian」の項に、「フランスのデザイナー。・・・ディオールの名はファッション業界の内外にひろく知れわたった。48年から51年にかけて、商品ラインは香水、スカーフ、靴下類、毛皮製品、手袋、男もののネクタイ、若い女性を対象にした低価格のドレス「ミス・ディオール」Miss Diorまでひろがり、国際的な巨大企業に成長した.」の記載がある(甲19)。
キ 1991年10月22日発行の「新・田中千代 服飾事典」には、「クリスチャン・ディオール[Christian Dior]」の項に、「1950年からディオール店の組織は多角経営となり、1947年に初めて出された香水「ミス・ディオール」、1956年の「ディオリッシモ」はもちろんネクタイ、シャツ、スカーフ、靴から、子ども服のデザインなど拡大化がはかられている。オート・クチュールでもディオールやカルダンなどが、子ども服のデザインをはじめた。」の記載がある(甲20)。
ク 世界の一流ブランドを紹介する各種刊行物(甲21~甲31)や、ファッション業界のニュースを扱うウェブサイト(甲32~甲36)において、「Dior(ディオール)」又は「Christian Dior(クリスチャン ディオール)」が取り上げられている。
ケ 請求人の創設70周年の2017年には、「DIOR」の創業70周年を迎えるイベントが行われた(甲37~甲40)。
コ 2019年には、「DIOR(ディオール)」が百貨店の伊勢丹への出店20周年を記念して伊勢丹新宿店で、「〈ディオール〉が伊勢丹新宿店をジャック!」として「DIOR」が掲げられ「DIOR」に関する商品等で埋め尽くされた(甲41)。
(2)上記(1)よりすれば、請求人は、ファッションデザイナーであるディオール氏によって、1947年に創設されたフランス国の法人であり、70年以上にわたり、「婦人服、紳士服」等を始め、各種ファッション関連商品に使用され、世界の一流ブランドを紹介する各種刊行物等にも「Dior(ディオール)」が取り上げられている等の事情からして、商標「Dior」、「DIOR」及び「ディオール」(以下「使用商標」という。)は、請求人商品であるファッション関連商品を表示するものとして、本件商標の登録出願の日前から、我が国及び外国の需要者の間に広く認識され、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものといえる。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、「DIORLV」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同書、同大、等間隔でまとまりよく一体に表されているものの、その構成中の「DIOR」の文字は、上記1のとおり、請求人が請求人商品(ファッション関連商品)を表示するものとして、本件商標の登録出願の日前から、我が国及び外国の需要者の間に広く認識される商標であると認められる。
そして、本件商標の指定商品は、ファッション関連商品であることからすると、本件商標に接する需要者・取引者は、請求人の周知著名なブランド名である「DIOR」の文字に着目すると容易に判断し得るものである。
そうすると、本件商標は、その構成中の「DIOR」の文字が、強く支配的な印象を与えるものであり、11号引用商標との類否を判断するに当たって、「DIOR」の文字を本件商標の要部として抽出し、これを11号引用商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して「ディオールエルブイ」の称呼が生じるほか、その構成中の「DIOR」の文字に相応して「ディオール」の称呼が生じ、ファッション関連商品のブランド名の観念が生じるものである。
(2)11号引用商標について
引用商標1は、別掲1のとおり「Dior」の欧文字よりなり、引用商標2及び引用商標3は、別掲2のとおり「”DIOR”」よりなり、引用商標4は、別掲3のとおり「Dior」の欧文字と「ディオール」の片仮名を2段に併記してなるものである。
そして、11号引用商標は、構成文字の全部又は一部を使用商標と共通にすることから、各種ファッション関連商品を表示する商標として、我が国及び外国における取引者、需要者の間に広く認識されているものである。
したがって、11号引用商標は、いずれも、その構成文字に相応して、「ディオール」の称呼が生じ、ファッション関連商品のブランド名の観念が生じるものである。
(3)本件商標の構成中の「DIOR」と11号引用商標の類否について
本件商標の構成中の「DIOR」の文字(以下「本件商標の要部」という。)と引用商標の類否について検討すると、外観においては、本件商標の要部と引用商標1の「Dior」の文字は、そのつづりを同じくし、本件商標の要部と引用商標2及び引用商標3の「”DIOR”」は、「“」及び「”」の有無において相違するものの欧文字「DIOR」を共通にし、本件商標の要部と引用商標4の構成中の「Dior」は、そのつづりを同じくすることから、本件商標の要部と引用商標は、外観において類似する。
また、本件商標の要部と11号引用商標は、いずれも「ディオール」の称呼及びファッション関連商品のブランド名の観念を同一にするものである。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念を共通する類似の商標である。
(4)本件商標の指定商品と11号引用商標に係る指定商品の類否について
本件商標の指定商品は、11号引用商標の指定商品と同一又は類似する商品である。
(5)小括
以上のとおり、本件商標と11号引用商標は類似の商標であり、本件商標の指定商品は11号引用商標に係る指定商品と同一又は類似するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
商標法第4条第1項第15号は、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第10号から前号までに掲げるものを除く。)」と規定されているところ、上記2のとおり、本件商標は、その指定商品について、同項第11号が適用されるものであるから、同項第15号の該当性については判断しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
商標法第4条第1項第19号該当性は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
しかしながら、請求人は、本件商標権者が、本件商標を請求人及び商標「Dior」等の名声・信用・評判にフリーライドするなど不正の目的をもって使用をするものであることを客観的な証拠をもって証明しておらず、また、請求人が提出した証拠からは、本件商標権者が不正の目的をもって本件商標を登録出願し、登録を受けたと認めるに足りる具体的事実を見いだすことはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第8号該当性について
本件商標の要部である「DIOR」は、ファッション関連商品のブランド名を表したものと認識し得るとしても、請求人が提出した全証拠を確認しても、「DIOR」の文字が請求人の著名な略称を表示したものとは認めることができない。
そうすると、本件商標は、その構成中に、他人の著名な略称を含む商標と認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第15号及び同項第19号に該当しないとしても、同項第11号に該当するものであり、その登録は、同項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とするべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-890028