商標無効審判
2022-890022
ラナ
- 審判番号
- 2022-890022
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2021-062258
- 登録番号
- 6456639
- 請求日
- 2022年03月30日
- 審決日
- 2023年12月15日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パスティフィチオ ラーナ エス.ピー.エー.
- 【請求人代理人】小暮 理恵子
- 【請求人代理人】行田 朋弘
- 【被請求人】株式会社 ケイアンドオー
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 和行
- 審判官 板谷 玲子
- 審判官 須田 亮一
- 分類
- T111 .261-Y (W43) / T111 .262-Y (W43) / T111 .263-Y (W43) / T111 .264-Y (W43) / T111 .271-Y (W43) / T111 .222-Y (W43)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法46条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第19号、商標法第46条、商標法第47条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6456639号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6456639号商標(以下「本件商標」という。)は,「Rana」の欧文字を標準文字で表してなり,令和3年5月21日に登録出願,第43類「飲食物の提供」を指定役務として,同年10月5日に登録査定,同月14日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
1 請求人が,本件商標の登録の無効の理由において,商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する国際登録第860884号商標(以下「引用商標1」という。)は,「LA TRATTORIA DI GIOVANNI RANA MAESTRO PASTAIO」の欧文字を書してなり,2005年4月15日にItalyにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,2005年(平成17年)6月10日に国際商標登録出願,第43類「Services for providing food and drink; temporary accommodations.」を指定役務として,平成18年10月6日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
2 請求人が本件商標の登録の無効の理由において,商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する登録商標は,請求人の全主張により次の(1)ないし(4)のとおりであると当合議体で認める。なお,いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4387333号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成 RANA(標準文字)
指定商品 第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,調味料,香辛料,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,酒かす」
登録出願日 平成11年3月23日
設定登録日 平成12年5月26日
(2)登録第5940361号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成 別掲1のとおり
指定商品 第29類「肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,主に食肉,魚,家禽肉又は野菜からなる冷凍惣菜,肉・魚・家禽肉又は野菜からなる包装済みの惣菜,主に食肉,魚,家禽肉又は野菜からなる惣菜,だんご状に加工したじゃがいも,カレー・シチュー又はスープのもと」,第30類「主にパスタや米からなる冷凍食品,包装された調理済みパスタ又は米飯,パスタや米からなる惣菜,ピザ,パン,パスタ,詰め物をしたパスタ,ラビオリ,穀物をもとにしたダンプリング,調味料及び香辛料,ソース,サラダ用ソース,パスタソース,主に肉,魚,甲殻類及び貝類,野菜及び/又はチーズからなる調味料及び香辛料」
登録出願日 平成28年7月22日
設定登録日 平成29年4月14日
(3)登録第5940362号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成 GIOVANNI RANA(標準文字)
指定商品 第29類「肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,主に食肉,魚,家禽肉又は野菜からなる冷凍惣菜,肉・魚・家禽肉又は野菜からなる包装済みの惣菜,主に食肉,魚,家禽肉又は野菜からなる惣菜,だんご状に加工したじゃがいも,カレー・シチュー又はスープのもと」,第30類「主にパスタや米からなる冷凍食品,包装された調理済みパスタ又は米飯,パスタや米からなる惣菜,ピザ,パン,パスタ,詰め物をしたパスタ,ラビオリ,穀物をもとにしたダンプリング,調味料及び香辛料,ソース,サラダ用ソース,パスタソース,主に肉,魚,甲殻類及び貝類,野菜及び/又はチーズからなる調味料及び香辛料」
登録出願日 平成28年7月22日
設定登録日 平成29年4月14日
(4)国際登録第1438471号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成 別掲2のとおり
指定商品 第29類「Potato-based dumplings.」,第30類「Wholemeal pasta; fresh pasta; puff pastry; deep frozen pasta; pasta containing stuffings; pasta-based prepared meals; rice-based prepared meals; pasta sauce; ready-made dishes containing pasta; macaroni with cheese; dried and fresh pastas, noodles and dumplings; frozen meals consisting primarily of pasta; gnocchi; fish-based dumplings; flour-based gnocchi; tortellini; dumplings; ravioli; flour-based dumplings; meat gravies; pasta sauce; mixes for preparing sauces; baked confectionary; ready-made sauces; dressings for salad; tomato sauce; lasagne; frozen dough; frozen pastries; pasta containing stuffings; frozen pastry stuffed with meat and vegetables; pastries consisting of vegetables and fish.」
国際登録出願日(事後指定) 2019年(令和元年)5月7日
設定登録日 令和3年5月21日
第3 請求人の主張
請求人は,本件商標についての登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第29号証(枝番号を含む。以下,枝番号のすべてを示すときは,枝番号を省略する。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,商標法第4条第1項第11号,同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから,同法第46条第1項第1号により,無効にすべきものである。
2 請求人について
請求人は,1962年3月にジョバンニ・ラーナ氏によって設立されたイタリアの法人で,各種パスタ製品を製造販売している(甲3,甲4)。
同社の製品は,イタリア国内外において流通・販売されており,日本にも輸入され,一般のスーパーストア等で入手できる。また,同社は,イタリア国内外において複数のイタリアンレストランを運営している。なお,社名中の「パスティフィチオ」は「パスタ工場」の意味なので(甲5),社名全体としては「ラーナパスタ工場株式会社」のような意味となる。
同社は,各種パスタ製品をイタリア国外に広く輸出し販売したり,レストランを展開したりしている関係上,世界各国において商標「RANA」等を出願し登録している(甲6)。
3 商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標1は,同一の役務「飲食物の提供」を指定しており,指定役務において抵触している。
引用商標1は,「LA TRATTORIA DI GIOVANNI RANA MAESTRO PASTAIO」であるところ,「LA TRATTORIA DI」は「~のトラットリア(大衆向けの家庭的なレストラン)」(甲7)を,「MAESTRO PASTAIO」は「パスタ名人」を意味する(甲8)。「GIOVANNI RANA」は,請求人の創業者の氏名「ジョバンニ・ラーナ」であるので,商標全体として「パスタ名人ジョバンニ・ラーナのトラットリア」を意味する。そして,役務「飲食物の提供」との関係では,引用商標1の商標中「LA TRATTORIA DI」と「MAESTRO PASTAIO」の部分はレストラン(飲食物の提供場所)の種類や提供する料理を理解させるため,識別力が弱いといえる。よって,引用商標1の要部は「GIOVANNI RANA」,又は「GIOVANNI」や「RANA」と考えられる。
そこで,本件商標「Rana」を引用商標1の要部である「RANA」と比較すると,大文字と小文字の構成に違いはあるものの構成文字自体は共通しており,生じる称呼「ラーナ」又は「ラナ」が同一である。観念については「Rana」という名字か,あるいは,日本におけるイタリア語の浸透度を考えると,格別の意味を有しない造語と理解されると思料する。
よって,本件商標と引用商標1とは,外観及び称呼において類似であり,観念において比較し得ないため,互いに類似する商標である。また,指定役務も同一である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
4 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標2,引用商標3及び引用商標5の周知度
請求人と日本の需要者との関わりについては,特に,引用商標2,引用商標3及び引用商標5を付した各種パスタ製品が全国的に販売されていることが挙げられる。
具体的には,生パスタ製品やパスタソース製品の包装に引用商標3が直接付されたり,同製品が店頭で販売される際には,引用商標2や引用商標3が商品表示や店頭POP,店内ポスターに目立つ形で表されていたりしている(甲9~甲11)。
請求人に係る商品は,株式会社日本アクセスやカーギルジャパン合同会社を通じて日本へ輸入され(甲12),イオングループの店舗であるイオンスタイル(総合スーパー),イオン(スーパー)などや同グループの関連会社であるダイエー(スーパー)などにおいて広く販売されている。スーパーの店頭では試食販売や,季節に合わせたキャンペーンが適宜行われており,試食販売用ブースや販売員のエプロンや帽子,配布用パンフレット,置き看板などに引用商標3が目立つ形で使用されている(甲9~甲11)。
イオングループやその関連会社の運営するスーパーは全国にあるため,請求人に係る引用商標2及び引用商標3が使用された商品は全国的に流通し,販売されているといえる。例えば,本件商標権者が所在する北海道札幌市においても,イオン札幌桑園店,イオン札幌麻生店,イオン札幌栄町店など複数店舗がある。
なお,日本での店頭販売にあたって請求人は,同社の製品が適切な形で,また,同社のブランドの維持や需要者の印象に残るような販売方法についてかなり気を払っている。日本の販売店舗を実際に見て回ってレポートする同社関係者がおり,請求人は日本の各店舗の店頭の様子や製品の売れ行きを把握し,自社製品の商品陳列や試食の実施などの販売方法の検討や,競合他社の商品に関する観察を行っている。また,季節に合わせたキャンペーン(クリスマスや母の日等に関連したもの)に関しても,実施状況や効果について検討している(甲13)。
スーパーでの店頭販売のほか,請求人の製品は,オンラインでも広く販売されている。オンラインで販売されている生パスタ製品やパスタソース製品には主に引用商標5が用いられている。店頭販売と異なりキロ単位での大容量製品が多いところ,これらのシンプルなパッケージの正面側に目立つように引用商標5が付されている(甲14)。
これらの請求人に係る商品は,株式会社ノルレェイク・インターナショナルなどにより輸入され,楽天やYahoo!JAPANショッピングなどの各種ウェブサイトを通して販売されている。なお,資料として,請求人が株式会社ノルレェイク・インターナショナルに対して発行したインボイス写しを提出する(甲15)。両企業間に商品の売買があった事が確認でき,この取引書類にも引用商標3が付されている。
請求人の製品は店頭販売やオンライン販売を通じて広く販売されているため,需要者のブログなどにも同製品を食べた事や興味がある事についての言及が見られる。また,販売者側からもそのブログにおいて請求人の製品を紹介しているものもある。これらより,引用商標2,引用商標3及び引用商標5を使用した商品が需要者の間で浸透している様子が見て取れる(甲16)。
全国的な店舗での販売とオンライン販売により,引用商標2,引用商標3及び引用商標5が使用された請求人の商品は,数多くの需要者に現実に見られ,購入され,食されていると推認できる。よって,引用商標2,引用商標3及び引用商標5は需要者において広く知られるに至っているものと思料する。
(2)造語よりなるものであるか又は構成上顕著な特徴を有するか
引用商標2「RANA」と,引用商標3及び引用商標5の要部である「RANA」は,請求人の設立者ジョバンニ・ラーナ(Giovanni Rana)氏の名字に由来する。なお,ラーナ氏と請求人はイタリア出身であるところ,イタリア語で「rana」は,「蛙」を意味する(甲17)。
ただ,一般の日本の需要者におけるイタリア語の理解度は高くないため,「RANA」は造語と理解されるものと考える。
(3)ハウスマークであるか
引用商標2「RANA」は,平易な書体で請求人を示す際に使用されている商標であり,ハウスマークである。
また,引用商標3「Giovanni Rana\RANA」は,商品・取引書類・広告・ウェブサイト・レストラン店舗など請求人に係る事業全般において請求人を示すために広く用いられている商標であり,ハウスマークである。
(4)多角経営の可能性
請求人は,各種パスタ製品を製造販売するほか,日本には店舗がないものの複数のレストランを運営している。
2012年に米国ニューヨークと英国ロンドンにレストランを開いたほか(現在は閉店),現時点で,イタリア国内に直営店(トラットリア及びリストランテの形態)が18軒,間接的な運営店が5軒,ドイツに請求人の現地法人(RANA GmbH Germany)による直営店が1軒ある。
このような実情は,請求人が食品の製造販売以外の事業,たとえば日本における「飲食物の提供」役務を行う可能性を示すものと思料する。
(5)商品と役務間の関連性
本件商標の指定役務「飲食物の提供」と,引用商標2,引用商標3及び引用商標5に係る指定商品である食品類(パスタ,ラビオリ,詰め物をしたパスタ,パスタソース等)は関係が深いと考える。
たとえば,ラーメン,洋食,カレー,イタリア料理,中華料理などの分野における評判のよい有名店が食品メーカーとコラボレーションして同店の名前を冠した製品が生み出されるということがある。多くの店舗を運営する外食産業の企業が同人の店舗(ブランド)名を冠した製品を販売することもある(甲25)。また,餃子のように,実店舗では茄でたり焼いたりしたものを供しつつ,最終調理前の半製品を冷凍で全国発送などといったこともよく行われる。逆に,食品メーカーが自社商品の魅力を伝えたいとの目的や食材の可能性を広げたいとの意図などから,レストランやカフェなどの飲食店を運営する例も知られている。
よって,「飲食物の提供」役務と食品の間には密接な関連性がある。
(6)商品等の需要者の共通性その他の取引の実情
本件商標に係る役務「飲食物の提供」の需要者は,外食をしたい一般の人々が広く該当する。引用商標2,引用商標3及び引用商標5に係る第29類や第30類の商品の需要者もまた広く一般の人々であるため,これらの商標が使用される商品等の需要者は共通するといえる。
(7)小括
本件商標と引用商標2,引用商標3及び引用商標5は類似しており,該引用商標は周知である。「RANA」は,イタリア語由来であるため日本では造語と認識されるものであり,引用商標2及び引用商標3は請求人のハウスマークである。
さらに,請求人には多角経営の可能性(特にレストラン経営の可能性)があり,本件商標の役務と引用商標2,引用商標3及び引用商標5の商品の間には密接な関連性があり,その需要者も共通する。
したがって,本件商標は,請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標であるから,商標法第4条第1項第15号に該当する。
5 商標法第4条第1項第19号について
(1)外国の需要者の間に広く認識されている商標
請求人は,1962年の創業以降,着実に成長し,現在ではイタリアにおいて生パスタ製品の売上実績1位となっている。また,ヨーロッパ各国においても生パスタ市場でのシェアは高く,スペイン41%,ドイツ21%,フランス35%,スイス13%,スウェーデン17%,ポルトガル68%,イギリス10%であり,これらの全ての国においてシェア第1位とのことである。従業員数は約3500人,ヨーロッパと米国に合わせて8つの工場があり,各種パスタ製品を供給している。請求人の売上の地域別割合は,イタリア国内とヨーロッパ,米国でそれぞれ約3分の1ずつとなっているとのことである(甲14の1,甲25)。
2020年のパスタ業界の世界ランキングに関する情報によると,請求人は日清製粉グループに次いで世界第4位とのことであり,「生パスタに強く,アメリカではレストラン展開もしています」と説明されている(甲18の1)。また,世界の生パスタ市場に関する各種の調査レポートにおいて,同業界の主要メーカーとして請求人の名前が挙げられている(甲18の2~4)。
また,「Food Community News」の2021年2月8日付けのウェブ記事によると,「2012年に始まった米国での経験は,ヴェローナの会社を多国籍企業へと変貌させた。RANAが米国に参入してからわずか6年で,米国における生パスタのカテゴリー全体が年間30%の成長を遂げた。この成功を証明するように,2018年には・・・米国市場で最も大きな成長を遂げている企業トップ5の1つとしてRANAを挙げている」(甲19)。
在イタリア邦人のブログ等においても,請求人は有名パスタメーカーであり,その商品は手に入りやすい,簡単調理の美味しい商品である,という旨の言及が散見され(甲20),請求人の製品がイタリアの食生活にいかに浸透しているかがうかがえる。また,ヨーロッパ各国と並んで請求人製品が広まっている米国についても同様に,ウェブ記事(甲21)などでその浸透ぶりを見ることができる。
さらに,先にも少し触れたように,請求人は現在,イタリア国内において創業者「GIOVANNI RANA」の名(引用商標4に対応)を冠するトラットリア(大衆的な雰囲気の家庭的なレストラン)の直営店舗を17軒,間接的に運営する店舗を5軒有する。これらは,ローマやミラノなどのショッピングモール内などに所在している(甲22)。また,請求人の本拠地であるヴェローナでは,「リストランテ・ファミリア・ラーナ」(Ristrante Famiglia Rana)という高級路線のレストランを運営している。イタリア国外については,ドイツのベルリンに同人の現地法人が運営するトラットリアが1軒ある(甲23)。かつては,英国ロンドン,ルクセンブルグ,米国ニューヨークにも同人のレストランがあった(甲24)。
前記の実績や評判に鑑みると,請求人の引用商標2をはじめとして,引用商標1ないし引用商標5は,請求人の各種パスタ製品及びレストラン事業に関して,イタリア国内外において周知となっているものと思料する。
(2)不正の目的
引用商標1ないし引用商標5,特に引用商標2及び引用商標3は,一以上の外国において周知な商標であり,本件商標はこれらの商標と同一又は類似である。また,引用商標に係る「RANA」は,イタリア語を知らない需要者には造語と認識されるものと考えられる。
また,請求人は日本の市場にもすでに進出しており,上述のとおり引用商標2,引用商標3及び引用商標5を付した各種パスタ製品が全国的に販売されている。この結果,イタリア本国やヨーロッパ各国,米国のみならず日本における需要者の間でも,引用商標や「RANA」の名は広く知られるに至っているものと思料する。
よって,本件商標は,不正の目的をもって使用するものと推認できる。
(3)小括
本件商標は,請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとしてイタリア国内外における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的をもって使用をするものといえる。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。
6 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第11号
両商標を対比すると,本件商標は欧文字「Rana」を標準文字で書したものであり,引用商標1は欧文字「LA TRATTORIA DI GIOVANNI RANA MAESRTRO PASTAIO」を平易な書体で横書きにしてなるものである。
両商標はともに第43類「飲食物の提供」を指定しているところ,引用商標1中の「TRATTORIA」は,親しまれた日本語の音訳「トラットリア」が意味するように「気軽に入れる,比較的小さくて大衆的なイタリア料理店」(甲26)を理解させる。この語の前後の「LA」と「DI」はそれぞれ英語における「THE」や「OF」のように冠詞と前置詞である。冠詞や前置詞であること(又はそのように認識されること)や,ローマ字2字という短さから,引用商標1に接した需要者等からは「LA」と「DI」部分は捨象して認識されやすいと考えられる。一方,「MAESRTRO」も,親しまれた日本語の音訳「マエストロ」が示す「巨匠」や何らかの技能に優れた「巨匠○○氏」(甲27)を理解させる。
引用商標1は,全体として「パスタ名人ジョバンニ・ラーナのトラットリア」を意味する。イタリア語に明るくない需要者等でも,引用商標1から指定商品(審決注:「指定役務」の誤記と認める。)との関係で識別力の弱い「LA」「TRATTORIA」「DI」「MAESTRO(PASTAIO)」を抜いて「GIOVANNI」や「RANA」の部分を要部として認識しうるものと思料する。さらに,イタリア料理に係る「飲食物の提供」との関係でイタリア語を考慮するならば,「LA TRATTORIA DI」(~のトラットリア(イタリア料理店))部分と「MAESRTRO PASTAIO」(パスタ名人,パスタの巨匠)部分の識別力が弱いため,やはり「GIOVANNI」および「RANA」部分が要部ということになる。
引用商標1は,その指定商品との関係で,「RANA」部分のみが独立して称呼され,商標として機能し得るものである。その場合,本件商標「Rana」と構成文字を共通にし,称呼「ラーナ」において同一である。観念については,イタリア語に明るくない需要者等においては比較し得ず,イタリア語を考慮する場合には「蛙」や名字「ラーナ」という意味を共通にするため,両商標は同一又は類似といえる。よって,本件商標は,引用商標1に類似する商標であって,商標法第4条第1項第11号に該当する商標である。
(2)商標法第4条第1項第15号
答弁書では,スーパーマーケット11店舗の食品に係る担当者にヒアリング調査を行った結果を元に引用商標2ないし5は周知ではないと結論付けられている。
しかしながら,調査人数が少なく地域的にも偏りがあることから,11店舗の担当者11名の見解は,引用商標2ないし5の周知性を否定するのに十分なものではないと思料する。
周知性に関連して,今回売上と販売数量に関するデータを提出する(甲28)。また,甲第9号証ないし甲第13号証等に示された請求人 製品の販売以降もコンスタントに日本向けの商品販売が続けられていることを示すため,日本の販売代理店である株式会社ノルウェレイク・インターナショナル宛て等のインボイスのサンプルを提出する(甲29)。
第4 被請求人の答弁
被請求人は,本件審判の請求は却下すべき,又は結論同旨の審決を求める,と答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証を提出した。
1 本件審判の請求を却下すべきである。
本件商標は,第43類の飲食物の提供に関するものであり,請求人は現在日本国内でレストランの経営を行なっていないため損害がない。
請求人のレストラン事業は,イタリア国内が主であり,イタリア国外は往来自由であり通貨統合圏であるEU内のドイツ1店舗に限られる。過去に進出した英国,米国からはすでに撤退している。請求人の60年にもわたる事業期間において人口14億人を超える巨大市場である中国や他アジア諸国にもレストランを展開しておらず,今後日本で事業を行う予定があるとは推察できない。
つまり,請求人は,利害関係がなく,請求人適格を満たさない。
2 商標法第4条第1項第11号について
引用商標1と本件商標は,同じ第43類であるが,全39文字で構成される引用商標1と本件商標は,僅か4文字が一致するのみであり,同一でも類似でもない。
仮に,請求人が主張するようにGIOVANNI RANAが要部であるとしても,12文字中4文字が一致するのみであり,同一でも類似でもない。
本件商標は,イタリア語辞書で示されるとおり,カエルを意味するものであり造語ではない(甲17)。当社ではカエルのロゴマークとともに店舗内外での告知に使用している。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人の引用商標2ないし引用商標5は日本国内において周知ではない。
本件審判の請求書並びに甲第9号証ないし甲第13号証にて,請求人は北海道から兵庫までのスーパーマーケット11店舗を示し「全国的に流通し,販売されている」とした。
被請求人は,この11店舗全てに2022年5月16日に訪問又は電話による調査(乙1)を行った。結果,請求人が主張するRANAブランドの生パスタ等何らかの商品を取り扱う店舗は0件であり現時点で全国的に流通,販売の事実はない。
甲第9号証ないし甲第13号証は,2015年から2016年の短期間に集中した古い情報であり,過去一時的に販売された可能性を示すにすぎず,店内POPやポスター,キャンペーン物品への引用商標3又は引用商標5の使用を主張しているが,これは販売するスーパーマーケット若しくは輸入した日本の商社が作成したものと考えるのが自然であり,請求人自らの商標の使用を表していない。
引用商標3又は引用商標5を使用した商品はインターネット販売にて購入できるが,日本では世界中のあらゆる食材が同様の方法で調達可能であり,日本の需要者に周知であるとはいえない。
被請求人の調査(乙1)では,生パスタを取り扱う大手スーパーの販売担当者11人全員が「RANAを知らない」と答えた。業界の専門職にさえ知名度が無いものは一般需要者の知名度も低いと推察できる。
(2)本件商標は,前記2に記載のとおり,カエルを意味するものであり造語ではない。一方で請求人は日本の需要者にはイタリア語が造語と理解されることを繰り返し主張している。造語と理解されるならば日本の需要者が引用商標3ないし引用商標5のように長文又は図形との組み合わせの中でRANAの4文字だけを要部と認定できるものではない。
(3)被請求人は,アメリカ合衆国の代表食であるハンバーガーが主要商品であり,請求人の主要商品であるイタリアの代表食パスタとは商品における関連性がなく,需要者も共通しない。またレストランでサービスとともに提供されるハンバーガーと,購入後に持ち帰った上で調理の必要がある生パスタ食材では提供者,提供方法,販売形態が異なる。
つまり,引用商標2ないし引用商標5は日本の需要者に広く知られるものではなく,商品自体の関連性がなく,提供者や提供方法が異なり,需要者の共通性もないため混同のおそれはなく,商標法第4条第1項第15号にかかる本件審判の請求は成り立たない。
4 商標法第4条第1項第19号について
(1)不正の目的がないこと。
被請求人は,2011年4月1日より,ハンバーガーを主要商品とするレストランを経営し本件商標を使用している。パスタ等の取り扱いは創業以来11年間なく,また今後の予定もない。
被請求人は,カエルのロゴマークとともに店舗内外の看板,メニュー,ウェブサイト等に使用している。創業準備として様々なハンバーガーを試作する中で外観がカエルに似たハンバーガーが出来たことから,店舗名称をラテン語,イタリア語及びスペイン語でカエルを表すRanaとしたものであり造語ではない。
創業者の氏名を表す引用商標とはその意味,用法が異なる。
被請求人は,本件商標の売却や代理店契約を他者に要求していない。また外国の権利者の国内参入を阻止しようとしている事実もない。
(2)小括
以上のとおり,被請求人には商標法第4条第1項第19号にかかる不正の目的はなく本件審判の請求は成り立たない。
第5 当審の判断
1 利害関係
本件審理に関し,当事者間に利害関係についての争いがあるので,まず,この点について判断する。
商標法第46条に規定する商標登録の無効審判を請求し得る者は,法律上の利益を有することを要するものと解されるところ,請求人は本件商標が,請求人の所有する引用商標1と類似の商標と認識していることは,前記第3の3のとおりであるから,本件商標の商標登録を無効とする審判を請求することは正当な権利行使であって,これについての法律上の利益を有するというべきであり,すなわち,請求人は,本件審判の請求をするにつき利害関係を有するというべきである。
そして,本件審判は,除斥期間内(商標法第47条)に請求されたものであって,その請求を却下すべき理由はない。
したがって,本件審判を却下することはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は,前記第1のとおり,「Rana」の文字を標準文字で表してなるところ,当該文字は一般に知られている語とはいい難いものであるから,その構成文字に相応して,「ラナ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標1
ア 引用商標1は,前記第2の1のとおり,「LA TRATTORIA DI GIOVANNI RANA MAESTRO PASTAIO」の欧文字を書してなるところ,その構成中,「LA TRATTORIA DI」の文字が「大衆向けの家庭的なレストラン」の意味を,また「MAESTRO PASTAIO」の文字が「パスタ名人」の意味を有するイタリア語であるとしても,我が国におけるイタリア語の普及度からすると,これらは一般に広く知られている語とはいい難く,引用商標1の全ての構成文字が同じ大きさの同じ書体の文字で表されており,視覚上まとまりよく一体的に看取されるものであることも相まって,構成全体をもって不可分一体の商標として把握されるものというのが相当である。
その他に,引用商標1の中間に位置する「RANA」の欧文字のみに着目して取引されるとする特段の事情は見いだせない。
そうすると,引用商標1は,その全体の構成文字に相応して「ラトラットリアジョバンニラナマエストロパスタイオ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
イ 請求人は,「イタリア語に明るくない需要者等でも,引用商標1から指定役務との関係で識別力の弱い「LA」「TRATTORIA」「DI」「MAESTRO(PASTAIO)」を抜いて「GIOVANNI」や「RANA」の部分を要部として認識し得る。その場合,さらに,イタリア料理に係る「飲食物の提供」との関係でイタリア語を考慮するならば,「LA TRATTORIA DI」(~のトラットリア(イタリア料理店))部分と「MAESRTRO PASTAIO」(パスタ名人,パスタの巨匠)部分の識別力が弱いため,やはり「GIOVANNI」および「RANA」部分が要部ということになる。」旨を主張しているが,需要者が,「LA」「TRATTORIA」「DI」「MAESTRO(PASTAIO)」の各文字について,その意味まで知っているとする根拠は不明であって,需要者に,これらの文字の意味まで知られているというべき事情は見いだせないから,「GIOVANNI」及び「RANA」部分が要部ということはできない。
なお,仮に,需要者が「LA」「TRATTORIA」「DI」「MAESTRO(PASTAIO)」の各文字の意味を認識した上で,引用商標1において自他役務の識別標識としての機能を発揮し得る要部として「GIOVANNI RANA」の文字部分を把握する場合があったとしても,当該文字部分から更に「GIOVANNI」の文字部分を捨象し,「RANA」の文字部分のみを要部として把握するとする事情は見当たらない。
したがって,請求人の上記主張は採用できない。
(3)本件商標と引用商標1の類否
引用商標1は,その構成文字中に「RANA」の欧文字を有するとしても,前記(2)のとおり,「RANA」の欧文字のみに着目して取引されるとはいえない。
そうすると,本件商標と引用商標1とは,全体の文字数において明らかに相違するから,外観において区別でき,称呼においても,音数が明らかに相違するから聴別でき,相紛れるおそれはない。また,両者は,特定の観念を生じないから,観念において比較することはできない。
してみれば,本件商標と引用商標1とは,観念において比較することができないとしても,称呼及び外観において相紛れるおそれのないものであるから,外観,称呼及び観念によって,取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,役務の出所について誤認,混同を生ずるおそれのないものであって,非類似の商標と判断するのが相当である。
(4)本件商標の指定役務と引用商標1の指定役務との類否
本件商標の指定役務「飲食物の提供」と,引用商標1の指定役務中「Services for providing food and drink」とは,同一又は類似するものである。
(5)小括
以上からすると,本件商標と引用商標1の指定役務が同一又は類似するとしても,本件商標と引用商標1とは,類似する商標とはいえないから,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標2ないし5の周知性
ア 請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば,以下のとおりである。
(ア)2015年及び2016年に撮影したとする店舗写真(甲9~甲11)にある,生パスタ製品やパスタソース製品の包装,販売員のエプロン,店頭POP及び店内ポスターには,引用商標3が表示され,商品の価格表示には,引用商標2が付されている(甲9~甲11)が,その撮影日,撮影場所等について客観的に確認できる証左がない。
(イ)請求人から株式会社ノルレェイク インターナショナル宛ての引用商標3が付されているインボイス(甲15,甲29)によれば,2016年ないし2022年にゴルゴンゾーラ等についての取引があることが認められる。
そして,「楽天」や「Yahoo!ショッピング」のウェブサイトとされるものには,ラビオリ(ゴルゴンゾーラ)や生パスタの包装袋に引用商標5が表示されている(甲14)。しかしながら,これらのウェブサイトの掲載日は確認できない。
また,甲第14号証の1には,引用商標5とともに,「イタリアナンバー1 生パスタメーカー」の表示の下,「RANAに関する数字」として,販売額(2017)820億円,販売量(2017)14万トンとの記載及び「ヨーロッパ各国でのRANAのフレッシュパスタ市場におけるシェア」として,イギリス10%,フランス35%,ポルトガル65%,スペイン41%,スウェーデン17%,ドイツ21%,スイス13%,イタリア36%の記載がある。
さらに,甲第28号証によれば,我が国における「RANA」ブランドの請求人の商品の2016年ないし2022年の売上げは約127万円ないし4678万円,売上数量は約960kg(約3900袋)ないし約7万250kg(約51万3000袋)であったとされるが,当該証拠の作成者や作成時期は不明であることに加え,これらの裏付けとなる証拠の提出はない。また,これらが事実であるとしても,その多寡を判断するための証拠の提出がないから引用商標2ないし引用商標5の周知性を立証する証拠としては不十分なものである。
(ウ)市川コルトンプラザ,妙典及び南砂町,西大島,東大島,津田沼等における販売店に関する請求人関係者による2016年5月の報告メールの写しとされるもの(甲13の1及び2)及び2016年の母の日に関するイオン及びダイエーの販売促進活動に関する請求人内部の資料とされるもの(甲13の3)には,引用商標3が表示された商品や店内広告の写真,試食の実施状況の写真等が掲載されている。
(エ)請求人の製品は,販売店や需要者のブログなどにおいて,「RANAトルテローニリコッタ&スピナッチ」(2019年11月4日付け),「RANA社ラビオリ」(2020年1月13日付け),「RANAラビオリで【ラビオリ(ガーリックトマト)】」(2020年5月31日付け)等と表示され,引用商標3又は引用商標5が包装袋に表示された商品の写真が掲載されている(甲16)。
(オ)「パスタ・スパゲティ業界の世界市場シェアの分析」というタイトルのウェブサイトの記事とされるもの(2022年1月11日付け,甲18の1)には,2020年度の売上高を分子とし,業界の市場規模を分母として,パスタ業界の2020年の市場シェアを簡易に試算すると,「ジョバンニラナ」は4位に位置し,世界市場シェアは,5.22%であると記載されている。
(カ)調査・発行会社を「Global Info Research」とし,発行日を2020年10月とする「パスタ・ソースの世界市場2020:メーカー別,地域別,種類・用途別」というタイトルの,ウェブサイトの記事とされるもの(甲18の3)には,「【レポートの概要】」の見出しの下,パスタ・ソースの世界市場を調査対象にした「メーカー情報」として記載された17メーカーの中に「Giovanni Rana」の記載がある。
(キ)「市場調査レポート 生パスタの世界市場-考察と予測(2027年まで)」(2021年4月8日 QYResearch発行)というタイトルの,ウェブサイトの記事とされるもの(甲18の4)には,「第11章 企業プロファイル」の項に「Giovanni Rana」の記載がある。
イ 以上からすると,我が国において,引用商標2,引用商標3又は引用商標5を表示した商品が,2016年頃に店頭で販売され,ブログで紹介されている商品も見うけられるほか,2016年ないし2022年の日本への輸出に際し,インボイスに引用商標3が付されているものの,当該インボイスに係る商品に付された商標は明らかでなく,その他,広告宣伝活動の詳細は不明である。
そして,請求人の商品は,2017年におけるヨーロッパでの生パスタ市場では,高いシェアを占めている国もあるとしても,その状況が本件商標の登録出願時及び登録査定時まで継続しているかは確認できない。また,世界におけるパスタ業界において,「Giovanni Rana(ジョバンニラナ)」の2020年における世界市場シェアが4位であって,メーカーとしての「Giovanni Rana(ジョバンニラナ)」がある程度知られているとしても,外国及び我が国における引用商標2ないし引用商標5を使用した商品についての売上高,市場シェアは確認できない。
そうすると,引用商標2,引用商標3又は引用商標5が使用された請求人の業務に係る商品が,外国及び我が国において販売された実績があることは認め得るとしても,引用商標2ないし引用商標5が使用された請求人の業務に係る商品(以下「請求人商品」という。)の我が国及び外国における周知性の度合いを客観的に判断するための資料,すなわち,請求人商品の売上高,市場シェア並びに広告宣伝の方法及び回数などの状況を具体的に示す証拠は見いだすことはできない。
してみれば,請求人の提出に係る証拠からは,引用商標2ないし引用商標5が,請求人の業務に係る商品について使用する商標として,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国及び外国の取引者,需要者の間に広く認識されていたとは認めることができない。
(2)本件商標と引用商標2ないし引用商標5との類似性の程度について
ア 本件商標
本件商標は,前記第1のとおり,「Rana」の欧文字を標準文字で表してなるところ,当該文字は一般に知られている語とはいい難いものであるから,その構成文字から,「ラナ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標2ないし引用商標5
(ア)引用商標2は,前記第2の2(1)のとおり,「RANA」の欧文字を標準文字で表してなるところ,当該文字は一般に知られている語とはいい難いものであるから,その構成文字に相応して「ラナ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
(イ)引用商標4は,前記第2の2(3)のとおり,「GIOVANNI RANA」の欧文字を書してなるところ,いずれの構成文字も同じ書体,同じ大きさで表されており,外観上まとまりよく一体的に看取されるものであって,当該文字全体から生じる称呼も格別冗長とはいえないから,当該文字は構成全体をもって不可分一体の商標として把握されるものである。そして,当該文字は一般に知られている語とはいい難いものであるから,引用商標4はその構成文字に相応して「ジョバンニラナ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
(ウ)引用商標3及び引用商標5は,別掲1及び別掲2のとおりの構成からなり,いずれも台形様又は二重の円輪郭線内に大きく白抜き又は黒色で表された「RANA」の欧文字を有するものであるから,大きく表された「RANA」の欧文字に相応して「ラナ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないというべきである。
ウ 以上からすると,本件商標は,「Rana」の欧文字からなり,他方,引用商標2は,「RANA」の欧文字からなるものであって,引用商標3及び引用商標5は,大きく表した「RANA」の欧文字を有するものであるところ,これらは,特定の観念を生じない。そして,大文字と小文字からなるものであるか大文字のみからなるものであるかの違いはあるとしても,「RANA(Rana)」の文字のつづりを同一にし,いずれも「ラナ」の同一の称呼を生じるものである。
そうすると,本件商標と引用商標2,引用商標3及び引用商標5とは,類似性の程度が高いものである。
また,本件商標は「Rana」の欧文字からなり,引用商標4は「GIOVANNI RANA」の欧文字からなるところ,本件商標と引用商標4とは,文字数及び音数において明らかな相違があり,外観及び称呼において相紛れるおそれはないというべきであるから,両者の類似性の程度は低いものである。
(3)本件商標の指定役務と請求人の業務に係る商品との関連性について
本件商標の指定役務は,「飲食物の提供」であり,請求人の業務に係る商品は,パスタやパスタソースであるところ,特にイタリア料理においては,パスタやパスタソースはその材料として使用されるから,需要者を共通にし,関連性があるというべきである。
(4)出所の混同のおそれについて
ア 本件商標と引用商標2,引用商標3及び引用商標5について
前記(2)のとおり,本件商標と引用商標2,引用商標3及び引用商標5とは類似性の程度が高いものであるものの,前記(1)のとおり,引用商標2,引用商標3及び引用商標5は,請求人の業務に係る商品について使用する商標として,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたとは認めることができないものである。そうすると,前記(3)のとおり,本件商標の指定役務と請求人の業務に係る商品との関連性があることを踏まえても,本件商標に接する取引者,需要者が,請求人の業務に係る引用商標2,引用商標3及び引用商標5を連想又は想起するものということはできない。
イ 本件商標と引用商標4について
前記(2)のとおり,本件商標は,引用商標4とは類似性の程度が低いものであって,前記アと同様の事情(商標の周知性並びに商品及び役務の関連性)を総合勘案すれば,本件商標に接する取引者,需要者が,請求人の業務に係る引用商標4を連想又は想起するものということはできない。
ウ 小括
以上から,本件商標は,本件商標権者が,これをその指定役務について使用しても,取引者,需要者が,引用商標2ないし引用商標5を連想又は想起することはなく,その役務が他人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
そのほか,本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
(4)小括
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
本号は,「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的(不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
そして,前記3(1)のとおり,引用商標2ないし引用商標5が,請求人の業務に係る商品について使用する商標として,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたとは認めることができないから,本件商標は,商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない
また,申立人が提出した証拠からは,本件商標権者が本件商標を不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではないから,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効とすることはできない。
よって,結論のとおり審決する
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-890022