商標無効審判
2022-890018
グランクラブ、グラン
- 審判番号
- 2022-890018
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2018-115249
- 登録番号
- 6186629
- 請求日
- 2022年03月17日
- 審決日
- 2022年12月14日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ハイアット インターナショナル コーポレーション
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】中村 稔
- 【請求人代理人】井滝 裕敬
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】藤倉 大作
- 【被請求人】株式会社 メモリードウェルネス
- 【被請求人代理人】羽鳥 亘
- 【被請求人代理人】柿原 希望
- 審判長/審判官
- 審判長 矢澤 一幸
- 審判官 杉本 克治
- 審判官 山田 啓之
- 分類
- T112 .261-Y (W4344) / T112 .262-Y (W4344) / T112 .263-Y (W4344)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法46条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第46条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6186629号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6186629号商標(以下「本件商標」という。)は、「GRAN CLUB」の文字を標準文字で表してなり、平成30年9月13日に登録出願、第43類「飲食物の提供,宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,会議室の貸与,展示施設の貸与」及び第44類「美容,理容,入浴施設の提供」(以下「請求に係る役務」という。)を含む第43類及び第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、令和元年9月5日に登録査定、同年10月4日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
請求人が、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第4604602号商標(以下「引用商標」という。)は、「GRAND CLUB」の文字を標準文字で表してなり、平成13年8月7日に登録出願、「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,美容,理容,入浴施設の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与」を含む第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同14年9月13日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。
第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定役務中、請求に係る役務についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第210号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 利害関係について
本件商標は、請求人の使用・登録に係る引用商標に類似するものである。また、本件商標の指定役務は、請求人の引用商標の使用に係る役務そのもの、あるいは、それに類似する又は関連性の強い役務を指定しているところ、本件商標の使用は、請求人が提供する役務との関係で混同を生じる可能性が高く、請求人としては、そのような事態を極めて懸念・憂慮しており、ゆえに本件商標の登録を到底看過することはできず、本件無効審判の請求に及んだ。
以上のとおり、本件商標の使用及び登録は、請求人の役務と、混同を生ずるおそれが大であることから、請求人は、本件無効審判の請求に及んだものである。
したがって、請求人が本件無効審判を請求することについて、利害関係があることは明白である。
2 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性
(1)称呼及び観念上の類似性(相紛らわしさ)
本件商標からは、そのローマ字読みに従い「グランクラブ」の称呼が生じる。一方、引用商標からは「グランドクラブ」という称呼が生ずるところ、両商標は、称呼上、中間に位置する「D(ド)」の一音の有無の差異しかない。中間音の有無の差異というのは、埋没して聴取しづらいものであって、「グランドクラブ」と「グランクラブ」の両称呼は非常に相紛らわしいといわざるを得ない。
よって、時と場所を異にして本件商標の「グランクラブ」の称呼に接した際、これを引用商標の称呼「グランドクラブ」と聞き誤るおそれがあることは明らかである。
したがって、これら称呼は類似関係にあり、ゆえに、本件商標と引用商標は称呼において類似する。
加えて、引用商標からは、「グランドクラブ」という称呼のほかにも「グランクラブ」の称呼も生ずるから、両商標は称呼上同一となる場合がある。
すなわち、「GRAND」は、「壮大な、雄大な、気品のある、偉大な、最高の」等を意味する英単語として、我が国において広く親しまれているものであり、英単語の発音として「グランド」と称呼されるものであるが、我が国においては「GRAND」を「グラン」と称呼されることが少なくない実情が存在する。
まず、「GRAND」は、英単語「GRAND」と同様の意味を有するフランス語の単語でもあるところ、フランス語では、単語の語尾の子音を発音しないため、「グラン」と称呼される。日本国内においてもフランス語由来の外来語やそれを使用した商標というのは多数存在するが、例えば、「GRAND PRIX(グランプリ)」は自動車レースや映画や芸能分野の「大賞」の意味で片仮名語として我が国国民の間で親しまれるに至っているし(甲3)、また、フランス共和国にある「GRAND PLACE(グランパレ)」は我が国の観光客やビジネス客が多く訪れるパリ市中心部にある施設として、これらの者の間では知られるに至っているといえる(甲4、甲5)。
これらに加えて、「GRAND MAISON」の語が「グランメゾン」の片仮名を当てて使用されていたり(甲6)、「GRAND MARCHE」の語が「グランマルシェ」の片仮名を当てて使用されていたりする事実もある(甲7)。これらの例からは、「GRAND」が、「グラン」の称呼をもって一般的に使用されたり認識されたりしていることを容易にうかがい知ることができる。
また、フランス語に限らず、英語においても「GRAND」は、他の単語を修飾して結合した場合において、その単語の頭文字が子音である場合には(つまり、「GRAND」の「D」の後に続く音が子音である場合には)、「グラン」と発音される。例えば、英語では祖母のことを「グランマ(Grand-Ma)」と、祖父のことを「グランパ(Grand-Pa)」と称することが日本でもよく知られているが、「GRAND」の「D」の音が省略される端的な例である(甲8~甲10)。
以上のような「GRAND」の発音方法から、日本においても、欧文字からなるブランド名に含まれる「GRAND」の語を、「グラン」と呼称するものが多数存在する(甲11~甲95)。
さらに、出願・登録商標に関しては、片仮名のルビは振られていないにもかかわらず、参考情報として、商標の構成要素の「GRAND」に対して「グラン」が称呼情報として記載されているものがある(甲96~甲169)。
この例に倣って、引用商標に対しても「グランクラブ」の称呼情報が与えられていれば、本件商標の審査においても引用商標の存在を理由に拒絶査定がなされていたものと確信するが、引用商標には「グランクラブ」の称呼が付されていなかったため、本件商標の審査において引用商標の存在が看過されてしまったものと思量する。
ところで、請求人は、世界的に著名なホテルグループを運営する者であり、本件商標もホテル事業に関連性の強い役務を多数指定しているところ、ホテル事業分野の取引実情をみても、「GRAND」を「グラン」との呼称で使用している事業者が多数存在する(甲172~甲193)。
以上述べてきたとおり、日本では「GRAND」は「グラン」と呼称されることが一般的に行われており、とりわけ、ホテル事業分野ではそのような用例が多数に上る取引実情を踏まえると、引用商標は、本来的に、「グランドクラブ」のみならず、「グランクラブ」と称呼される可能性がある。他方、「GRAND」が「グラン」と称呼されるという一般的・恒常的な取引実情の下においては、需要者は、本件商標から生ずる称呼「グランクラブ」に接した際に、本件商標を「GRAND CLUB」というように観念する可能性が高く、ゆえに引用商標との間で誤認するおそれがある。この点例えば、市場で使用されている「GRAN ●●」という商標について調べてみると、「GRAND」、「グランド」(あるいは英語「GRAND」に相当するイタリア語「Grande」)と他の語を結合した造語である、と説明するものが多く存在している(甲194~甲210号)。
以上のような実情に照らしても、需要者は、「グランクラブ」という称呼に接すれば、「偉大なクラブ」のような意味合いを観念する可能性があり、「GRAN CLUB」という外観に接しても、需要者は「GRAND」と「CLUB」を組み合わせたもの、というように観念する可能性があり、本願商標と引用商標とは、称呼のみならず、観念においても非常に相紛らわしい。
(2)外観上の類似性(相紛らわしさ)
本件商標と引用商標とは、本件商標が中間に「D」の欧文字を有しているという点でのみしか相違しておらず、一見して相紛らわしい。とりわけ、「GRAND」が商標の一部として使用される場合に、「D」を省略して「GRAN」というように表示されることが多々見受けられる実情は、両商標が外観上見誤られる可能性を高めることになる。
(3)小括
本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの要素においても相紛れるおそれのある類似商標であることは明らかである。
(4)商品・役務の類似性
本件商標の指定役務中、請求に係る役務は、引用商標の指定役務と同一である。
(5)まとめ
以上のとおり、本件商標は引用商標と類似であって、その指定役務は引用商標の指定役務と同一であるから、本件商標は引用商標との関係で商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 結語
以上詳述したとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、その登録は、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきものである。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第69号証を提出した。
1 利害関係について
本件商標と引用商標は非類似であるとともに、被請求人と請求人の業種も異なっており、さらには請求人の引用商標の使用形態から考慮しても、本件商標の使用及び登録は、請求人が提供する役務との関係で混同を生じるおそれはない。
被請求人は、本件商標をスパ、フィットネスジム、カフェ、カルチャースクール、エステや整体などを含む、会員制複合施設の名称として使用している(乙1)。そのため、被請求人の需要者は運動施設利用者である。
一方、請求人はホテルの経営を行っており、引用商標を系列ホテルである「グランドハイアット東京」のクラブラウンジの名称ないしはそのサービスの名称として使用している(乙2)。そのため、需要者はホテルの宿泊者である。そして、請求人は、「GRAND」をそのホテルの名称にも含まれているように「グランド」と称呼しており、引用商標を「グランドクラブ」と称呼して使用している(乙2)。
引用商標と本件商標は非類似であり、両者の使用態様を比較して考慮しても誤認混同を生じるおそれはない。
また、両者の需要者が異なっており、取引の実情から考慮しても混同を生じることはないため、本件無効審判を請求することについて、利害関係はないことは明白である。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、外観として、中間に空白を空けた欧文字8字の「GRAN CLUB」から構成され、「グランクラブ」の称呼が生じる。
観念として、「GRAN」は英語で「おばあちゃん」の意味があり(乙3)、「CLUB」は「同好会」の意味で一般的に用いられている「クラブ」の意味があるので(乙4)、「おばあちゃんのクラブ」の観念が生じる。また、近年「高齢者のインフルエンサー」を意味する「granfluencer」という造語が海外メディアを通じて使用されるようになった状況を考慮すると(乙5)、「GRAN」の部分からは「高齢者」の観念を生じさせ、本件商標からは「シニア世代のクラブ」の観念を生じさせる。
被請求人は、コンセプトとして「人生の第二章を彩る新たなライフスタイルを提案」し、シニア世代をターゲットとしているため、本件商標はまさしく被請求人のコンセプトを体現する観念を生じさせるものである(乙1)。
また、市場において使用されている「GRAN ●●」の例が、仮に「GRAND」と他の語を結合した造語であったとしても、「造語」である以上、特段意味を持たないこともあるし、その造語の持つ観念が「GRAND」が持つ観念と同一であるわけではない。むしろ「GRAN」の英単語自体が持つ意味で判断する方が自然である。
そのため、本件商標からは、「おばあちゃんのクラブ」あるいは「シニア世代のクラブ」という観念が生じるというべきであり、「偉大なクラブ」の観念は生じない。
(2)引用商標について
引用商標は欧文字9字の「GRAND CLUB」からなり、「グランドクラブ」の称呼が生じる。
請求人は、フランス語では語尾を発音しないので「GRAND」の語尾を省略し「グランクラブ」の称呼も生じる旨主張し、「GRAND」が「グラン」の称呼をもって一般的に使用され認識されている例を列挙している。
しかしながら、当該例は一見してフランス語であると認識できるものであるし、フランス語を語源としたり、フランスに所在する施設やフランスの文化と関係が深い用語については、「GRAND」が「グラン」とフランス語読みされる例があったとしても、日本ではフランス語が一般的に認知されているとはいえない。むしろ「GRAND」が日本人にとってなじみ深い英語であることを考慮すると、需要者が「GRAND」の欧文字に接した際には、圧倒的に英語読みの「グランド」の称呼をもって一般的に把握されると考えるのが自然である。
また、請求人は、英語でも他の単語を修飾して結合した場合において、その単語の頭文字が子音である場合には、「グラン」と発音されると主張する。
しかしながら、そもそも英語の正確な発音を片仮名で表現するのは困難であるし、ネイティブの発音に近い読み方を片仮名で表記しているわけではない。当該欧文字に接した需要者が一般的にどのように称呼するか、という観点で判断するのが一般的であり、リダクションまで考慮して呼称することが通常行われているとはいい難い。そのため、需要者が「GRAND」の欧文字に接した際には、英語読みの「グランド」の称呼をもって一般的に把握されると考えるのが自然である。
請求人は、多数の「GRAND」を「グラン」と称呼させている登録商標を証拠として提出している。
しかしながら、一般的に日本においてはフランス語よりも英語の方がなじみ深く、「GRAND」も一般的に非常によく用いられる単語であるから、大抵の需要者は「GRAND」に接した際、「グランド」と発音すると考えるのが自然である。そのため、「グラン」と確実に需要者に読んでもらうようにするために「グラン」と商標中に併記していると推測される。
請求人は、片仮名のルビが振られていないのにもかかわらず商標の称呼情報に「グラン」が記載されている例を列挙している。
しかしながら、「J-PlatPat」の当該称呼情報は検索のための参考情報にすぎず、実際にその商標から当該称呼が生じるとして判断されたものでもなく、当該称呼により取引されているとは限らない不確定なものである。
仮に請求人の主張するように「GRAND」を「グラン」と称呼させるとするなら、後半の「CLUB」もフランス語読みすると考えるのが自然である。後半の「CLUB」はフランス語読みすると「クルブ」となる(乙8、乙9)。「GRAND」を「グラン」とフランス語読みする方が自然だと考える需要者であれば、後半の「CLUB」もフランス語読みした「クルブ」と称呼すると考えられるため、引用商標は「グランクルブ」と称呼されることになる。仮に請求人が主張するように、引用商標から「グランクラブ」の称呼が生じるためには、前半はフランス語読み、後半を英語読みしなければならないから、引用商標から「グランクラブ」の称呼が生じると考えるのは非常に不自然であり、あり得ない。
さらに、実際、請求人が使用しているのも「グランドクラブ」である(乙2)。そのため、取引の実情を考慮しても「グランクラブ」の称呼は生じない。
引用商標から生じる観念としては、英語の「GRAND」が「壮大な、偉大な」等という意味があることから、「偉大なクラブ」という観念が生じる。請求人は、引用商標をクラブラウンジの名称ないしはそのサービスの名称として使用しているため(乙2)、通常のサービスよりランクが上で素晴らしいサービスを受けられることを強調する名称として、まさにコンセプトとぴったり適合した観念であるといえる。
(3)本件商標と引用商標の類否
ア 称呼上の非類似
本件商標は「グランクラブ」の称呼が生じるのに対し、引用商標は「グランドクラブ」の称呼のみが生じる。
中間に位置する「ド」の音の有無が相違点である。この「ド」の音は比較的強く発音される濁音であって、明瞭に聴覚されるものであるから、当該「ド」の音の有無が称呼全体に及ぼす影響は大きい。両者をそれぞれ一連に称呼するときは、その語調、語感が異なり、互いに聴別できるものである。
イ 観念上の非類似
本件商標は「おばあちゃんのクラブ」あるいは「シニア世代のクラブ」の観念を生じさせるが、引用商標は「偉大なクラブ」という観念が生じる。そのため、観念上も非類似である。
なお、請求人は、本件商標は「GRAND」、「グランド」と他の語を結合した造語である旨主張し、本件商標から「偉大なクラブ」という観念が生じる旨主張しているが、被請求人はコンセプトとして「人生の第二章を彩る新たなライフスタイルを提案」し、シニア世代をターゲットとして、本件商標をネーミングしたものである。この観念はまさしく被請求人のコンセプトを体現する観念を生じさせるものであって、「偉大なクラブ」という観念は生じない。むしろ近年はシニア世代に関する造語に「gran●●」が使用されていることを考慮すると(乙5)、本件商標から「おばあちゃんのクラブ」あるいは「シニア世代のクラブ」の観念を生じさせることは明白である。
一方、引用商標からは高貴なイメージの「偉大なクラブ」という観念のみが生じ、「おばあちゃんのクラブ」あるいは「シニア世代のクラブ」といった観念が生じることはないから、両者の観念は非類似であり、互いに紛れることはない。
ウ 外観上の非類似
本件商標は欧文字8字で構成されるが、引用商標は欧文字9文字で構成される。両者とも後半の「CLUB」の前には空白が設けられており、前半の「D」の有無は明確に識別できる。そのため、需要者が見誤る恐れのない商標である。
3 結論
本件商標と引用商標は、外観、称呼、観念を総合的に考慮しても非類似であり、取引の実情を考慮しても互いに紛れることのない商標である。
本件商標は、商標法第4条第1項第11号の無効理由に該当することはなく、その登録は維持されるべきである。
第5 当審の判断
1 利害関係について
請求人の主張及び被請求人の提出に係る証拠(乙2)によれば、請求人は、ホテルを運営していることが認められ、また、本件商標の指定役務中、請求に係る役務は、ホテルに関連する役務である。
そうすると、本件商標に係る商標権の存否は、請求人の商標選択において影響を与える可能性があるといえる。
したがって、請求人は、本件審判の請求をすることについて利害関係を有しているというべきである。
2 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「GRAN CLUB」の文字を標準文字で表してなるものであり、その構成文字に相応して「グランクラブ」の称呼を生じる。
また、たとえ「GRAN」が「おばあちゃん」を意味する語であり(乙3)、「CLUB」が「クラブ」を意味する語であるとしても(乙4)、「GRAN CLUB」の語が特定の意味を有するものとして一般に親しまれているとはいえないから、本件商標からは特定の観念を生じないというのが相当である。
(2)引用商標について
引用商標は、前記第2のとおり、「GRAND CLUB」の文字を標準文字で表してなるものであり、その構成文字に相応して「グランドクラブ」の称呼を生じる。
また、たとえ「GRAND」が「偉大な」等を意味する語であり、「CLUB」が「クラブ」を意味する語であるとしても(乙4)、「GRAND CLUB」の語が特定の意味を有するものとして一般に親しまれているとはいえないから、引用商標からは特定の観念を生じないというのが相当である。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とを比較すると、外観においては、両者は、中間における「D」の文字の有無の差異を有し、他の文字を共通にするものの、当該「D」の文字はスペースの前に位置していることにより、その文字の有無を明確に認識できるものであるから、相紛れるおそれはない。
次に、称呼においては、本件商標から生じる「グランクラブ」の称呼と、引用商標から生じる「グランドクラブ」の称呼とは、中間における「ド」の音の有無の差異を有し、他の音を共通にする。
しかしながら、当該「ド」の音は比較的強く発音される音であることからすると、たとえ当該音が中間に位置しているとしても、6音又は7音という比較的短い構成音全体に与える影響は小さくなく、両者をそれぞれ一連に称呼したとしても、その音調、音感が異なり、相紛れるおそれはない。
さらに、本件商標と引用商標とは、いずれも特定の観念を生じないから、観念においては比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標との外観、称呼、観念等によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、全体的に考察すれば、たとえ観念において比較できないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれのない両者は、役務の出所につき誤認混同を生じさせるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、たとえ引用商標の指定役務中に請求に係る役務と同一又は類似する役務が含まれているとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、引用商標からは「グランドクラブ」の称呼のほか、「グランクラブ」の称呼をも生じる旨主張している。
請求人の提出に係る証拠によれば、「Grand Prix」を「グランプリ」(甲3)、「Grand Palais」を「グラン・パレ」(甲4)、「Grand Maison」を「グランメゾン」(甲6)、「Grand Marche」を「グランマルシェ」(甲7)などのように、「Grand」の語を「グラン」と発音又は片仮名表記されることがあること、「Grand(GRAND)」の文字部分に「グラン」の片仮名を併記した登録商標が多数存在すること(甲11~甲95)、特許情報プラットフォーム「J-Plat Pat」において、「Grand(GRAND)」の文字を含む商標について、当該文字部分に「グラン」の称呼(参考情報)が付与されている登録商標が多数存在すること(甲96~甲169)、ホテル事業の分野において、ホテルの名称中における「Grand(GRAND)」の文字部分を「グラン」と表記しているホテルが多数存在すること(甲172~甲193)、「Gran(GRAN)」の文字を含んだ商標について、「Grand」又は「Grande」と他の語を結合した造語である旨が説明されているものが存在すること(甲194~甲210)がそれぞれ認められる。
しかしながら、たとえこれらが認められるとしても、我が国においてはフランス語は英語ほどに一般に親しまれているものではないこと、「GRAND CLUB」の語が「グランクラブ」と読まれる又は片仮名表記されるものとして一般に親しまれているものではないこと、引用商標は「GRAND CLUB」の欧文字のみからなるものであって、「グランクラブ」の片仮名が併記されているものではないこと、「GRAND」は「偉大な」等を意味する英単語であって、「グランド」の片仮名語としても表される比較的平易な語であることからすると、「GRAND CLUB」の文字からなる引用商標は、「グランドクラブ」の称呼のみを生じるとみるのが自然というべきである。
なお、請求人が主張する特許情報プラットフォーム「J-Plat Pat」における称呼については、あくまでも検索のための参考情報にすぎないものであり、付与されている称呼が生じるとは必ずしもいえないものである。
(2)請求人は、引用商標から生じる「グランクラブ」の称呼に接すれば、需要者は、「偉大なクラブ」のような意味合いを観念する可能性がある旨主張している。
しかしながら、前記(1)のとおり、引用商標は、「グランドクラブ」の称呼のみを生じるとみるのが自然というべきであるから、請求人の当該主張は、その前提において採用できない。
4 まとめ
以上により、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではなく、その登録は、同項の規定に違反してされたものではない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第46条第1項により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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