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商標無効審判

2022-890013

ボンドガールビイジイ、ボンドガール、ボンド、ガール、ビイジイ

審判番号
2022-890013
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2019-122392
登録番号
6267785
請求日
2022年02月28日
審決日
2022年11月18日
公報発行日
2023年07月28日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】ダンジャック・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
  • 【請求人代理人】山崎 行造
  • 【請求人代理人】西川 巌
  • 【請求人代理人】赤松 利昭
  • 【請求人代理人】内藤 忠雄
  • 【請求人代理人】今井 千裕
  • 【請求人代理人】朴 志恩
  • 【被請求人】トランスメディア 株式会社
審判長/審判官
  • 審判長 森山 啓
  • 審判官 小林 裕子
  • 審判官 荻野 瑞樹
分類
T111 .22 -Z (W08)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法4条1項7号商標法46条1項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第7号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第6267785号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 登録第6267785号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6267785号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、令和元年9月4日に登録出願、第8類「はさみ類,刀剣,手動工具,スプーン,フォーク」を指定商品として、同2年6月4日に登録査定、同年7月9日に設定登録されたものである。 第2 引用標章 請求人が、本件商標の登録の無効の理由として引用する標章は、「BOND GIRL」の欧文字を横書きしてなる標章(以下「引用標章1」という。)及び「ボンドガール」の片仮名を横書きしてなる標章(以下「引用標章2」という。)であり、請求人が使用・管理する映画作品007シリーズに登場する女性キャラクターの名称・標章として、世界中で著名であると主張するものである。 なお、上記の引用標章1及び引用標章2をまとめていうときは、以下、「引用標章」という。 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第74号証を提出した。 以下、証拠の表記については、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。 1 請求の理由の要点 本件商標は、「BOND」及び「GIRL」の文字を含み、世界的に人気の高い、映画作品007シリーズ(以下「007シリーズ」という。)に登場する女性キャラクターたちの名称である「BOND GIRL」あるいは「ボンドガール」を容易に想起させるものである。 「BOND GIRL」あるいは「ボンドガール」は、請求人が使用・管理する名称・標章として世界中で著名であるにもかかわらず、これらと何らの関係を有しない者が、その指定商品に関して最先の商標出願を行った結果、特定の指定商品との関係で当該商標を独占的に使用できるようになり、請求人による使用を排除できる結果となることは、商標登録の更新が容易に認められており、その権利を半永久的に継続することも可能であることから、公正な取引秩序の維持に反するものであり、かかる商標を登録することは、国際信義に反し、公序良俗を害するおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 2 本件商標の登録を無効とすべき理由 (1)請求人 請求人は、米国のメトロ・ゴールドウィン・メイヤー社(以下「MGM社」という。)とともに007シリーズの著作権を共同所有しており、この映画に関する世界的な商品化権を管理している企業である。 したがって、引用標章との間で出所の混同を生ずるおそれのある他人の商標、引用標章に化体した名声、信用、顧客吸引力にただ乗りし、不正の目的をもって出願された他人の商標及び請求人が使用・管理する著名な名称・標章に化体した名声や信用に故なく便乗する他人の使用等を排除することにつき利害関係を有する者である。 (2)007シリーズ 「007」は、スパイ小説家のイアン・フレミングによる長編「カジノ・ロワイヤル」の中で生み出されたイギリス秘密情報部員ジェームズ・ボンド(以下単に「ボンド」という場合がある。)のコード名である。このジェームズ・ボンドを主人公とした小説はシリーズ化され多数の作品が出版されている。 また、当該小説シリーズが1962年に映画化されたのを契機として、ジェームズ・ボンドを主人公とした映画がこの58年の間に24作品が制作されている。これらの映画シリーズは世界中で公開され人気を博し、それらすべての作品が極めて高い興行成績を残しており、これらの一連の映画作品は、もっとも成功した映画シリーズであるということができる(甲3~甲5)。 さらに、2020年11月20日(審決注:当初の公開予定日。当審における職権調査によれば、2021年10月1日に公開。)に、007シリーズ第25作目である最新作「007/No Time To Die」が我が国においても公開され、現時点での興行収入は26億円以上、観客動員数は180万人以上を記録している(甲6)。 (3)BOND GIRL(ボンドガール) 「BOND GIRL(ボンドガール)」は、007シリーズに登場するボンドの相手役となる女性キャラクター(以下、「女性キャラクター」という。)、あるいはその女性キャラクターを演じる女優たちを呼称するために創作された造語である。女性キャラクターたちはボンドの敵となり得るし、また、ボンドと行動を共にすることもある。ボンドガールはボンドと共に、あるいは単独で、雑誌をはじめとする様々なメディア、映画の試写会、関連イベントなどに登場することが多く、その容姿、キャラクターなどの圧倒的な魅力から、ボンドと同等あるいはそれ以上に注目を浴びている。 (4)ボンドガールの紹介記事等 007シリーズの新作が公開されるたびに、多くの雑誌で007特集が組まれ、ボンドガールについても様々な雑誌で取り上げられている。ボンドガールの関連記事は非常に多いため、2003年「007/ダイ・アナザー・デイ」以降、「007/カジノ・ロワイヤル(2006年)」、「007/慰めの報酬(2009年)、「007/スカイフォール(2012年)」及び「007/スペクター(2015年)」の記事の一部を証拠として提出する(甲8~甲30)。 上記証拠によれば、ボンドガールは007シリーズの象徴として同シリーズに鮮やかな彩りを与え、時代の空気を反映し、時代と共に進化し続けてきたことから007ファンには常に新鮮であり、007シリーズという、稀にみる成功を収めた映画シリーズにおいて欠くべからざる存在であり、シリーズ成功の功労者であったといっても過言ではない。 (5)ボンドガールの各種イベントヘの参加、関連イベントの開催 新作映画の宣伝のため、ボンドガールはプレミア試写会をはじめとする各種イベントに参加している。また、新作映画公開時には、様々なボンドガール関連イベントも開催されている(甲17、甲22、甲29、甲31~甲42)。 (6)007シリーズの二次利用 流通メディアの発達に伴い、映画・映像作品については、映画館で上映されるだけでなく、DVDやテレビ等の様々なメディアを通して二次利用されるのが通例になっているが、007シリーズもその例外ではなく、映画館で上映後、DVDの制作(甲43)や、テレビ放送など作品の二次利用が行われている(甲44~甲48)。これら映画以外の媒体を通じて、007シリーズ及びその華たる「ボンドガール」がお茶の間にも広くかつ深く浸透している。 (7)小括 以上のとおり、「BOND GIRL(ボンドガール)」は1962年の映画公開時より50年余りの間007シリーズの華としてスクリーンに登場し、ボンドと共に活躍してきた。ボンドガールについては雑誌等のメディアで多数取り上げられており、新作映画公開時の各種イベントヘの登場により、「BOND GIRL」及び「ボンドガール」の名称・標章は、遅くとも本件商標の登録出願時(令和元年(2019年)9月4日)において、これらの名称・標章に接する者が、007シリーズの登場人物である女性キャラクターたちを直ちに想起させる程に著名なものとなっていたこと、さらに、その著名性は2015年の「007/スペクター」の公開及び本年(審決注:「昨年」の誤記と認める。)公開された新作「007/No Time To Die」に関するプロモーション活動などを通じて、今日に至るまで引き続き維持されている。 (8)ボンドガールについてのライセンス 一般に周知・著名な映画やテレビやその登場人物については、正当権利者の許諾の下に各種商品化が行われることは珍しくない。人気のあるキャラクターを自己の商品に利用することで、その購買力を著しく高められるからである。ボンドガールは有名な映画シリーズの人気キャラクターであることから、その名称・標章及び肖像の使用についてのライセンスが多くの会社に許諾されている(甲8、甲49~甲63)。 (9)プロダクト・プレイスメント 近年の映画製作においては映画に商品を提供してその付加価値を高める、いわゆる「プロダクト・プレイスメント」といわれる広告手法が採用されることが多い。映画作品の中で企業の商品が映し出されば企業側にとっては良い宣伝となる。一方、映画製作者側にとっても映画製作費用を調達することができるというメリットがある。 また、映画作品のタイトルや登場人物、関連する標章等とともに商品の宣伝・販売を行えば、それらの顧客吸引力を利用して高い宣伝効果・経済効果を得ることも期待できる。007シリーズは、その広告効果の高さから、多くのスポンサーにとって商品を提供したい「夢の作品」といわれ(GQ JAPAN 2015年12月号(甲29))、同誌には、「プロダクト・プレイスメントにみる/ボンドの巨大スポンサービジネス」というタイトルで、ボンドが身につけるもの、ボンドが飲むもの、ボンドが乗るものなどが紹介されているほか、日刊スポーツのオンライン記事(2015年11月10日)にも、「今度のボンドはどの商品を使う?『007』広告効果」という記事が掲載されている(甲64)。007シリーズは作品が公開されるたびに登場する商品が話題となり、大規模なタイアップキャンペーンなども行われるだけに、その広告効果もかなり大きいようである。 さらに、007シリーズにおいて、ボンドガールにもタイアップが行われている(甲8、甲39、甲49~甲54、甲65~甲69)。 なお、映画「007シリーズ」は、1962年以降、25作品が公開されており、その間新作が公開されるたびに様々な企業とのタイアップキャンペーンが長期間にわたり実施され、幅広い範囲の商品化が行われてきた。「ボンドガール」とのタイアップは単なる単発の映画のタイアップと比較し、各段に大きな宣伝効果・経済効果がある。 上述した名称・標章及び肖像のライセンスや映画作品におけるタイアップを通じて、「BOND GIRL」及び「ボンドガール」の名称・標章は、強い顧客吸引力を獲得した商業的価値の高いものとなっている。 (10)商標の登録 請求人は、莫大な費用と時間を投じて「BOND GIRL」含む商標「BOND GIRL 007」を日本を含む39か国で、「BOND GIRL」と女性のシルエットの結合商標を欧州で、「BOND GIRL」及び「ボンドガール」を二段に併記した商標を日本で、それぞれ登録し、「BOND GIRL(ボンドガール)」に表象された業務上の信用の維持に努めている(甲70)。 3 本件商標と引用標章 (1)本件商標と引用標章の類否 本件商標は、上下二段に書された「BOND」及び「GIRL」の欧文字及びその右横に白抜き文字で書された「BG」の欧文字からなるものである(甲2)。本件商標を構成する「BOND」及び「GIRL」の文字部分は、同じ書体、同じ大きさの文字でまとまりよく書されているのに対し、「BG」の文字部分は白抜き文字で書されたアルファベット二文字であることから商品の品番等又は「BOND GIRL」の頭文字を表したものと理解され得るものである。したがって、本件商標からは、「BOND」及び「GIRL」の文字部分に相応して「ボンドガール」の称呼及び007シリーズの女性キャラクターたちの名称である「ボンドガール」の観念が生ずるものである。 引用標章1は「BOND GIRL」、引用標章2は「ボンドガール」よりなる。両引用標章からは「ボンドガール」という一連の称呼と007シリーズの女性キャラクターの名称である「ボンドガール」の観念が生ずる。 本件商標と引用標章1は、ともに「BOND」及び「GIRL」からなる同一文字より構成され、外観において近似する。両商標からは「ボンドガール」という一連の称呼と007シリーズの女性キャラクターたちの名称である「ボンドガール」の観念が生ずるので、両商標は称呼及び観念が同一である。したがって、本件商標と引用標章1は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても同一又は近似する商標といえる。 本件商標と引用標章2は、外観は相違するものの、両商標からは「ボンドガール」という一連の称呼と007シリーズの女性キャラクターたちの名称である「ボンドガール」の観念が生ずるので、両商標は称呼及び観念が同一である。したがって、本件商標と引用標章2は、称呼及び観念が同一であるから、類似する商標である。 (2)本件商標の使用 本件商標は、被請求人の代表者であるT氏が同じく代表を務める関連会社のサイバーダイン株式会社によって、コンパクトマルチツールに使用され、当該商品は通信販売等により現に販売されている(甲71、甲72)。当該商品を紹介するウェブサイト(甲71)においては、以下のような記載が見受けられる。 「世界で最も有名なスパイにしてタフガイのシンボル、英国情報部MI-6のジェームズ・ボンド。その小説や映画に登場するボンドガールは、敵の女スパイやボンドの支援者となるタフな女性。そのリスペクトと共に、彼らが身につけ携行しそうな機能的かつスタイリッシュなグッズを提案します。」 「ボンドガールシリーズ第一弾 16機能を搭載したコンパクトマルチツール『BGスパイギア』」 上記の記載からも、被請求人が引用標章の周知性や顧客吸引力に便乗して、本件商標を使用及び登録出願したことは明らかである。 4 商標法第4条第1項第7号が適用されるべき点について 上述したとおり、本件商標は007シリーズの女性キャラクターたちの名称として著名である「BOND GIRL」を容易に認識させるものであり、「BOND GIRL」の語からは、007シリーズの女性キャラクター以外の観念が想起されることはない。したがって、被請求人が本件商標を偶然に採択したものとは考え難い。 また、請求人は、ネイル製品、化粧品をはじめ、人形、カード、カレンダー等を取り扱うメーカーに、引用標章に係るライセンスを許諾していたことからすれば、「BOND GIRL」の語が一定の顧客吸引力を獲得しており、高い商業価値を有していたことは明らかである。 そして、請求人は、我が国を含む世界各国において、引用標章に係る商標を登録し、メーカーに対してはライセンス契約によりその使用を許諾するなど、その商業的な価値の維持管理にも努めてきた。 このような状況の中で、請求人と関わりのない第三者が、最先の商標出願を行った結果、特定の指定商品との関係で当該商標を独占的に使用できるようになり、請求人による使用を排除できる結果となることは、その権利を半永久的に継続することも可能であることなどを考慮すると、公正な取引秩序の維持の観点からみても相当とはいい難い。 被請求人は、引用標章の世界的な知名度、顧客吸引力及び商業的価値の維持に何ら関わってきたものではないから、本件商標の指定商品との関係においてではあっても「BOND/GIRL」の語の使用の独占を許すことは相当ではなく、公正な取引秩序を乱し、ひいては国際信義にも反するものといわざるを得ず、本件商標は公序良俗を害するおそれがある商標に該当すると判断すべきものである。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものである。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、何ら答弁していない。 第5 当審の判断 請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係について争いがないから、本案について判断する。 1 請求人の主張及び提出に係る証拠並びに職権調査によれば、以下の事実を認めることができる。 (1)請求人について 請求人は、米国のMGM社とともに007シリーズの著作権を共同所有しており、この映画に関する世界的な商品化権を管理している企業であって、「BOND GIRL」を含む商標「BOND GIRL 007」を、日本を含む39か国で、「BOND GIRL」と女性のシルエットの図形との結合商標を欧州で、「BOND GIRL」及び「ボンドガール」を二段に併記した商標を日本で、それぞれ登録を受けている(甲70)。 (2)引用標章について ア 映画「007シリーズ」 スパイ小説家のイアン・フレミングによる長編「カジノ・ロワイヤル」の中で生み出されたイギリス秘密情報部員ジェームズ・ボンドを主人公とした小説はシリーズ化され、多数の作品が出版されている。また、当該小説シリーズが1962年に映画化されたのを契機として、ジェームズ・ボンドを主人公とした映画である007シリーズが、2019年までに24作品が制作されている。これらの映画「007シリーズ」は世界中で公開され人気を博し、それら全ての作品が極めて高い興行成績を残している(甲3~甲5)。 さらに、職権調査によれば、2021年(令和3年)10月1日に、007シリーズ第25作目である最新作「007/No Time To Die」が我が国においても公開された。 イ BOND GIRL(ボンドガール) 「BOND GIRL(ボンドガール)」は、007シリーズに登場するボンドの相手役となる女性キャラクター、あるいはその女性キャラクターを演じる女優たちを呼称するために創作された造語であり、女性キャラクターたちはボンドの敵となり得るし、また、ボンドと行動を共にすることもある。 ウ 「BOND GIRL(ボンドガール)」に関する記事(平成15年以降) BOND GIRL(ボンドガール)については、「フラウ 2003年(平成15年)1月14日号」、「SCREEN 2003年(平成15年)4月号」、「キネマ旬報 2006年(平成18年)12月上旬特別号」、「日経エンタテインメント 2006年(平成18年)12月号」、「映画『CASINO ROYALE』パンフレット(発行日:2006年(平成18年)12月1日)」、「SCREEN 2009年(平成21年)1月号」、「キネマ旬報 2009年(平成21年)1月下旬号」、「SCREEN 2009年(平成21年)3月号」の付録である「007/慰めの報酬&ジェームズ・ボンド大百科」、「ぴあ 2009年(平成21年)2月5日号」、「Pen 2009年(平成21年)1月1日・15日新年合併号」、「週刊文春 2012年(平成24年)11月1日号」、「SCREEN 2012年(平成24年)11月号」、「NewsWeek(ニューズウィーク日本版) 2012年(平成24年)11月14日号」、「週刊エコノミスト 2012年(平成24年)11月27日号」、「SCREEN 2013年(平成25年)1月号」、「MAGAZINE HOUSE MOOK/007 COMPLETE GUIDE(発行日:2013年(平成25年)1月10日)」、「GQ JAPAN 2012年(平成24年)12月号」、「MEN’S CLUB 2013年(平成25年)2月号」、「キネマ旬報 2015年(平成27年)12月上旬号」、「Pen 2015年(平成27年)12月15日号」、「キネマ旬報 2015年(平成27年)12月下旬号」、「GQ JAPAN 2015年(平成27年)12月号」、「SCREEN 2016年(平成28年)1月号」等の専門誌や雑誌に、ボンドガールを演じた女優のインタビューや写真とともに、ボンドガール及びその変遷や存在感などについての紹介記事が掲載されている(甲8~甲30)。 エ 「BOND GIRL(ボンドガール)」に関するイベント 2008年(平成20年)10月29日にオデオン・レスター・スクエア(ロンドン)で「慰めの報酬」のロイヤルプレミアが開催、2008年(平成20年)11月23日に東京・オメガブティック青山で「オメガ シーマスタープラネットオーシャン007限定モデル」発売イベントが開催、「007 慰めの報酬」公開イベントとして、2009年(平成21年)1月12日から2月15日まで、「TRIAL TO 007」が開催、2012年(平成24年)10月23日に「007 スカイフォール」のロイヤルプレミア(ロンドン)、10月25日にパリプレミア、10月26日にローマプレミアが開催、2012年(平成24年)11月19日から12月7日まで、有楽町の阪急メンズ東京で、「ウインターダンディズム~007WEEK~」が開催、2015年(平成27年)11月16日に六本木ヒルズで「TOKYO BOND GIRL COLLECTION」が開催され、各イベントには、ボンドガールを演じた女優らが登場するなどした(甲17、甲22、甲31~甲41)。 オ 映画「007シリーズ」の二次利用 「007シリーズ」は、映画館で上映後、DVDの制作や、テレビ放送(2010年(平成22年)3月からWOWOWで全22作品を一挙放送、2015年(平成27年)1月から2016年(同28年)6月まで、BSジャパンの金曜名画座で22作品を放送、BS-TBS、映画専門チャンネルで24作品及び番外品2作品を放送、テレビ東京が20作品を放送)などの、作品の二次利用が行われている(甲43~甲48)。 カ 「BOND GIRL(ボンドガール)」に関するライセンス許諾 請求人は、ネイル製品トップメーカーであるO・P・I(アメリカ合衆国カリフォルニア州)、エイボン化粧品(AVON)(アメリカ合衆国ニューヨーク州)、バービー人形で有名なマテル(Mattel)(アメリカ合衆国カリフォルニア州)、カードメーカーのカルタムンディ(Cartamundi)(ベルギー)、トレーディングカードのメーカーであるリッテンハウス(Rittenhouse)(アメリカ合衆国ペンシルバニア州)、写真集などアート系の本を出版するテヌース(Te Neues)(ドイツ)及びRevlon(レブロン)等に、ボンドガールに係るライセンスを許諾しており、各メーカーは、ボンドガールをイメージした商品の販売、ボンドガールの肖像や「BOND GIRL」の文字の使用、イメージキャラクターとしてのボンドガールを演じた女優の起用等、許諾されたライセンスを活用していることがうかがわれる(甲8、甲49~甲63)。 キ 「BOND GIRL(ボンドガール)」に関するプロダクト・プレイスメント 映画「007シリーズ」は、上記アのとおり、1962年以降、25作品が公開され、その間新作が公開されるたびに様々な企業とのタイアップキャンペーンが長期間にわたり実施され、幅広い範囲の商品化が行われてきた(甲29、甲64)。 ボンドガールに対してもタイアップは行われており、例えば、「007/スカイフォール」(2012年公開)でボンドガールを演じたベレニス・マーロウは劇中でオメガの「デビルプレステージ」を着用した(甲39)。 また、「007/慰めの報酬」(2008年公開)でボンドガールを演じたオルガ・キュリレンコは、来日イベントで、オメガと007シリーズの6本目のコラボ作品を記念して誕生した限定モデルの発表を行った(甲31)。 ジュエリーメーカーのスワロフスキーも、007シリーズとタイアップを行っており、ボンドガールを演ずる女優にスワロフスキーのジュエリーを提供してきた。同社は、スカイフォール公開時、007シリーズ50周年を記念したコレクションを、世界1,000店のショップで販売した(甲65、甲66)。 「O.P.I.」、「エイボン」、「レブロン」も007シリーズとタイアップし、限定商品を販売した(甲8、甲49~甲54)。 最新作「007/No Time To Die」では、スイスの高級時計及び宝飾品のブランドである、ショパールがオフィシャルパートナーとなり、「ボンドガール」としてパロマ役を演じるアナ・デ・アルマスが、同メゾンのハイジェリー「グリーン カーペット コレクション」から3つの作品をまとい、スクリーンに登場、また、今回のコラボにより「ハッピーハート-ゴールデンハート」と称されたジュエリーコレクションも発表された(甲67)。 オメガは最新作でも007シリーズとタイアップしており、マネー・ペニーを演じたナオミ・ハリス及びノーミを演じたラシャーナ・リンチは、オメガの時計をプロモートするための活動も行っている(甲68、甲69)。 (3)引用標章の著名性について 上記認定事実からすれば、映画「007シリーズ」は、1962年(昭和37年)以降、25作品が制作され、我が国を含め世界各国において公開され、いずれも高い興行成績を残していることから、世界中に広く知られた映画作品であるということができる。 そして、作品中の主人公ジェームズ・ボンドの相手役となる女性キャラクターは、「BOND GIRL(ボンドガール)」として、各種雑誌に紹介され、各作品の公開時期に合わせた宣伝を兼ねたイベントにおいても注目されていることが認められる。 また、請求人は、ネイル製品、化粧品を始め、人形、カード、カレンダー等を取り扱うメーカーに、引用標章に係るライセンスを許諾しており、各メーカーは、「BOND GIRL(ボンドガール)」の顧客吸引力を商品の販売促進に活用していることがうかがわれる。 そうすると、引用標章は、映画「007シリーズ」に登場する女性キャラクターの名称として、世界的な知名度を有するに至っているものであり、当該「007シリーズ」は、1962年(昭和37年)より永年にわたり、途切れることなく制作されており、直近では2021年(令和3年)10月に、007シリーズ第25作目である最新作映画が公開されたことからすれば、その知名度は、本件商標の登録査定時はもとより、現在も継続しているといえる。 (4)被請求人による本件商標の使用について 本件商標は、被請求人の代表者であるT氏が同じく代表を務める関連会社のサイバーダイン株式会社によって、コンパクトマルチツールに使用され、当該商品は通信販売等により現に販売されている(甲71、甲72)。当該商品を紹介するウェブサイト(甲71)においては、「世界で最も有名なスパイにしてタフガイのシンボル、英国情報部MI-6のジェームズ・ボンド。その小説や映画に登場するボンドガールは、敵の女スパイやボンドの支援者となるタフな女性。そのリスペクトと共に、彼らが身につけ携行しそうな機能的かつスタイリッシュなグッズを提案します。」及び「ボンドガールシリーズ第一弾 16機能を搭載したコンパクトマルチツール『BGスパイギア』」などの記載がある。 2 商標法第4条第1項第7号の該当性について 本件商標は、別掲のとおり、「BOND」及び「GIRL」の欧文字を、同じ書体、同じ大きさの文字で上下二段にまとまりよく書してなり、その右側には、左側の「BOND GIRL」の頭文字を表したものと容易に理解され得る「BG」の欧文字を、白抜き文字で書してなる構成よりなるものである。 そして、上記1のとおり、引用標章は、映画「007シリーズ」に登場する女性キャラクターの名称として、本件商標の登録査定時には、広く認識されていたことを認めることができる。 また、上記1のとおり、請求人は、ネイル製品、化粧品を始め、人形、カード、カレンダー等を取り扱うメーカーに、引用標章に係るライセンスを許諾していたことからすれば、「BOND GIRL(ボンドガール)」の語が一定の顧客吸引力を有していたことも認めることができる。 さらに、「BOND GIRL(ボンドガール)」は、1962年公開の作品「007 ドクター・ノオ(原題:Dr.No)」以降、一貫して「007シリーズ」に登場する女性キャラクターとして描写されており、「BOND GIRL(ボンドガール)」の語からは、他の観念を想起するものとは認められない。 そして、請求人は、米国のMGM社とともに映画作品007シリーズの著作権を共同所有しており、この映画に関する世界的な商品化権を管理し、我が国を含む世界各国において引用標章に係る商標を登録したり、メーカーに対してはライセンス契約によりその使用を許諾するなど、その商業的な価値の維持管理にも努めてきたものとみることができる。 このような状況の中で、被請求人は、被請求人の代表者が同じく代表を務める関連会社を通じて、本件商標をコンパクトマルチツールと称する商品について使用しており、当該商品について、「世界で最も有名なスパイにしてタフガイのシンボル、英国情報部MI-6のジェームズ・ボンド。その小説や映画に登場するボンドガールは、敵の女スパイやボンドの支援者となるタフな女性。そのリスペクトと共に、彼らが身につけ携行しそうな機能的かつスタイリッシュなグッズを提案します。」及び「ボンドガールシリーズ第一弾 16機能を搭載したコンパクトマルチツール『BGスパイギア』」などの説明とともに、通信販売等により現に販売していることからすれば、本件商標の採択にあたり、引用標章の周知性や顧客吸引力に便乗して、不正の利益を得ようとする目的をもって、本件商標を登録出願したことは明らかといわざるを得ないから、請求人と関わりのない第三者である被請求人が最先の商標出願を行い、商標登録を受けた結果、特定の指定商品との関係で当該商標を独占的に使用できるようになり、請求人による使用を排除できるようになることは、その権利を半永久的に継続することも可能であることなども考慮すると、公正な取引秩序の維持の観点からみても相当とはいい難い。 また、被請求人は、引用標章の世界的な知名度、顧客吸引力及び商業的価値の維持に何ら関わってきたものではないから、本件商標の指定商品との関係においてではあっても「BOND GIRL(ボンドガール)」の語の使用の独占を認めることは相当ではなく、本件商標の登録は、公正な取引秩序を乱し、公序良俗を害するものというのが相当である。 したがって、構成中に「BOND GIRL」の文字を有する本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 3 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであり、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とするべきである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-890013

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