商標無効審判
2022-890003
ライオンラグズ、ライオン
- 審判番号
- 2022-890003
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2020-116497
- 登録番号
- 6431144
- 請求日
- 2022年01月19日
- 審決日
- 2023年01月23日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 ライオンラグス
- 【請求人代理人】弁理士法人英知国際特許商標事務所
- 【被請求人】株式会社 ライオン事務器
- 【被請求人代理人】中村 祥二
- 審判長/審判官
- 審判長 大森 友子
- 審判官 岩崎 安子
- 審判官 馬場 秀敏
- 分類
- T111 .22 -Y (W27353743) / T111 .222-Y (W27353743) / T111 .25 -Y (W27353743)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項10号商標法4条1項19号商標法46条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第10号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6431144号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6431144号商標(以下「本件商標」という。)は、「LION RUGS」の欧文字を横書きした構成からなる商標であり、令和2年9月18日に登録出願、第27類「じゅうたん」、第35類「じゅうたんの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」、第37類「じゅうたんのクリーニング,じゅうたんの修理」及び第43類「じゅうたんの貸与」を指定商品及び指定役務として、同3年7月13日に登録査定され、同年8月19日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
本件審判請求人(以下「請求人」という。)が、本件商標の登録の無効の理由において、引用する商標(以下「引用商標」という。)は、「LIONRUGS」の欧文字を横書きした構成からなるものであり、請求人が、自己の業務である「ペルシャ絨毯の輸入販売・修理・鑑定」に使用しているというものである。
第3 請求人の主張
請求人は、本件商標についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
2 請求人の利益について
請求人は、「LIONRUGS」の文字からなる商願2020-124606の出願人であり、本件商標を引用され、拒絶査定を受け、現在査定不服審判請求中であること、及び、被請求人より、本件商標の登録後に使用料を請求及び請求人による使用商標の使用について管理する旨の文書を受け取っており、今後、請求人が事業を安心して継続するために極めて不利益となることが明らかであるため、本件無効審判請求をすることについて利害関係を有するものである。
3 具体的理由について
(1)引用商標の著名性について
請求人は、1888年に請求人の代表取締役社長の曾祖父が、イラン・イスラム共和国(以下「イラン」と略称する。)において、故郷の絨毯を製造職人から直接買い付け、首都テヘランのバザールの絨毯問屋に卸したり、富裕層の家に売りに行くなどして「手織りペルシャ絨毯」の事業を開始した。また、請求人の代表取締役社長の父は、1965年18歳の時に絨毯業界に入り、絨毯制作の全ての工程(色の染色・デザイン・織り・洗い・仕上げ)を研究するためにイラン全国の絨毯工房を訪ね、1976年頃よりヨーロッパ・アメリカ・日本向けの絨毯の輸出に携わり現在に至っている。
2011年4月、請求人の代表取締役社長は、浅草に手織りペルシャ絨毯の店舗を開き、引用商標を、店舗やインターネットのホームページ等に使用している。
請求人はイランで130年の歴史を持つペルシャ絨毯の4代目が事業を引き継いでおり、引用商標も日本国において2011年4月より10年以上にわたり継続使用している。そして、2020年7月7日、青山店がオープンした際には、当時のイラン大使もお祝いに駆けつけてくれたことからも請求人の事業がイランにおいても相当程度知られ、期待されていることが理解できる。
請求人の取り扱いに係る「手織りペルシャ絨毯」は、一般には羨望の的ともいえる高価な商品であり、一般に広く知られているとまではいえないが、近年、請求人及び引用商標が人気テレビ番組等で紹介され、またデパートの催事などでも取り扱われ、一般にも広く認識されるようになっている状況がある(甲3~甲15)。
以上のとおり、請求人及び引用商標は、ペルシャ絨毯の輸入販売に長年使用され、本件商標の商標出願日及び登録査定時において既にイラン及び日本国内において相当程度知られていたものといえる。
(2)商標法第4条第1項第7号について
商標法第4条第1項第7号は、公序良俗に反する商標の登録を拒絶する規定と解されるところ、同号は、商標自体が矯激卑猥の商標に限らず、その出願の過程において信義誠実の原則に反して登録を受けた商標や、他人の商標を剽窃したような商標等も該当するものと解される。
この点、被請求人は、2020年9月18日付けの請求人宛ての書簡において、「請求人が「LIONRUGS」及び「ライオンラグス」の文字を使用し商品の販売及びサービスを提供しているところ、被請求人の取り扱う敷物と出所の誤認、混同の懸念があること、請求人の出願商標が被請求人の登録商標「LION」「ライオン」等と類似することを理由に拒絶されていることを理由として、契約を通じて誤認・混同が生じることのない関係を維持できれば良い。」などと述べている。その後、請求人の代理人弁護士が被請求人と面会をしたところ、「ライオン」の名称の使用料として10年200万円の使用料を請求され、また、本件商標についても先の書簡の送付と同日2020年9月18日に出願していたものである。
なお、被請求人は、自社の商標管理として常に他社の商標出願をチェックし、かかる対応を行っていることも判明している。
さらに、被請求人は、先の2020年9月18日付けの請求人宛て書簡において、請求人の事業である「手織りペルシャ絨毯」と被請求人の取り扱う「敷物」とは同一又は類似の商品であるから出所の誤認、混同の懸念があると主張する。
しかしながら、被請求人が取り扱う「敷物」は事務用品としての敷物であり、インターネットで検索しても表示されるのは、ほとんどが「デスクマット」であり、唯一、室内マットが検索されるにすぎず、当該室内用マットも検索のカテゴリーから事務用品との関連が深いものといえることから、請求人の事業である「手織りペルシャ絨毯」と被請求人の取り扱う「敷物」とは、取引者、需要者、流通販売過程も全く異なる商品であるといえるから出所の誤認、混同の懸念が生じるおそれはないものといえる。
さらに、本件商標の指定商品及び指定役務は、被請求人が取り扱う事務用の敷物について使用及び将来にわたって使用する蓋然性も認められない役務である。一方、請求人の事業に係る手織りペルシャ絨毯は、手入れによって百年以上も使用できる商品であることから、クリーニング、修理等は必要なメンテナンスである。
そうとすれば、被請求人は、請求人の事業にとって不可欠な役務及びその店名である「LIONRUGS」について、請求人が未だ登録していないことを奇貨として出願、登録したものといえる。
以上のとおり、被請求人は、請求人の事業を妨害及び使用許諾契約を結び使用料を取得するといった不正の目的をもって請求人に通知すると同時に出願・登録をしたとみるのが相当である。このようなことは商道徳に反し信義誠実の原則に反する行為といわざるを得ない。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に違反して登録を受けたものというべきである。
(3)商標法第4条第1項第10号について
請求人は、高級絨毯である「ペルシャ絨毯」を輸入販売する者であり、引用商標は、請求人が長年、イラン国及び日本国内で「ペルシャ絨毯の輸入販売・修理・鑑定」に使用する周知商標である。本件商標は、「LION RUGS」の欧文字を横書きしたものであり、これより「ライオンラグス」の称呼を生じ、引用商標と同一又は類似のものである。
さらに、本件商標の指定商品及び指定役務は、請求人が長年、イラン国及び日本国内で行っている事業である「ペルシャ絨毯の輸入販売・修理・鑑定」と同一又は類似の商品又は役務である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
(4)商標法第4条第1項第19号について
商標法第4条第1項第19号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用するもの」と規定されており、需要者の認識については、取引形態が特殊な商品については特定な市場においてのみ流通する商品又は提供される役務であることも十分考廊して判断するとされている。
そうとすれば、引用商標が使用される「高級な手織りペルシャ絨毯」の取引の実情を考慮すれば、イランでの開業から130年間及び日本国内でも10年以上にわたって事業を継続してきた請求人、及び引用商標の著名性は認められるべきである。
特に、引用商標は、イラン及び日本において長年にわたり手織りペルシャ絨毯の輸入、販売を行ってきた結果、テレビ番組や新聞記事にも掲載され、本件商標の商標出願時及び登録査定時には手織りペルシャ絨毯の需要者、取引者及びインテリア等に興味のある者においては広く知られていたものといえる。
また、被請求人は、本件商標の出願後に同日付けで請求人に書面を送付しており、本件商標の使用許諾の見返りに使用料を要求するといった不正目的をもって、出願、登録を得たものといえる。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に違反して登録を受けたものというべきである。
4 結語
以上のとおりであるから、本件商標の登録は無効とされるべきものである。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第14号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)被請求人について
被請求人は、1792年(寛政4年)に今津屋の屋号のもとに大阪心斎橋で始めた筆墨商にはじまり、1921年(大正10年)に株式会社福井商店として設立され、1980年(昭和55年)にその商号を株式会社ライオン事務器に改めた株式会社である(乙1)。
(2)被請求人が使用する商標「LION」について
被請求人による「ライオン(LION)」に関わる商標の使用は、明治10年代に遡る(乙3~5)。
登録商標については、1895年(明治28年)にライオンの図形商標を取得し、1899年(明治32年)に「LION」、1902年(明治35年)に「ライオン」の文字について商標登録を受けた(乙4)。
その後、現在の社標としても用いられている「(ライオン図形)/LION」の商標について、1930年(昭和5年)に商標登録を受け(登録第213080号商標:乙6の1、2)、以来、被請求人は、「LION」や「ライオン」を被請求人の中心的な商標として事業に使用するとともに、「LION」や「ライオン」の文字を含む商標について、必要に応じて商標登録を行ってきた(乙7)。
被請求人は、上記の登録第213080号商標「(ライオン図形)/LION」について防護標章登録を受けている(乙8の1、2)。さらに、J-PlatPatの「日本国周知・著名商標」に登録第1565592号商標「ライオン」が掲載されるに至っている(乙9の1、2)。
また、被請求人は、日本国内に限らず、外国においても「LION」に関連する商標を登録している(乙10)。
(3)請求人による商標の使用と商標出願
被請求人は2019年3月頃、請求人が「LION」の文字が単独で把握される態様で、商標「LION」を使用していることを発見した(乙11)。そして、請求人の商標登録の状況を調査したところ、請求人が、2018年3月19日に出願した商標「LIONRUGS」(商願2018-31935:乙12)が、被請求人の登録商標と類似することを理由に拒絶理由通知を受け、その後、拒絶査定不服審判においても、同様に被請求人の登録商標と類似するとの判断がなされ、拒絶が確定したことが判明した(不服2019-4106:乙13)。
(4)被請求人による書簡の送付と商標出願
このような状況において、被請求人としては、被請求人の商標登録に係る指定商品と同一又は類似の商品について、請求人が商標「LION」を使用すると、商品の出所の混同や被請求人商標の希釈化が生じる可能性があり、少なくとも、「LION」の文字が単独で把握される態様での請求人による商標「LION」の使用は好ましくないと考え、2020年9月18日に、請求人に書簡を送付した(請求人提出の令和4年2月25日付け手続補正書に掲載されている書簡)。
そして、結合商標に係る審査は、時代によってその判断基準が異なるところ、将来的に請求人や被請求人以外の第三者が「LIONRUGS」の文字について商標登録を受ける可能性もあることから、そのようなリスクを避けるために、被請求人は本件商標を出願した。
(5)商標法第4条第1項第7号について
ここで、請求人は、令和4年2月25日付け手続補正書において、商標法第4条第1項第7号に該当する商標について、「出願の過程において信義誠実の原則に反して登録を受けた商標や、他人の商標をひょう窃した様な商標等も該当する」旨述べており、裁判例(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号、平成18年9月20日判決言渡)における類型である「(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」に、本件商標が該当すると述べているものと考えられる。
そこで本件商標が上記(e)の類型に該当するか検討する。
まず、被請求人は、「LION」や「ライオン」を、100年以上、被請求人の中心的な商標として使用し、国内外でその信用の維持・管理に努めてきた。
「LION」や「ライオン」の文字については、文具や家具、インテリアの分野において、被請求人が商標権を保有しており、請求人による「LIONRUGS」の出願(乙12)は、被請求人の商標登録を理由に拒絶された。
このことは、請求人による「LION」や「LIONRUGS」の使用は、被請求人の商標権を侵害する可能性があるということをも意味する。このような状況で、被請求人が、「LION」の文字が単独で把握される態様で商標「LION」を使用する者に対して、その使用について、お互いに混同が生じないよう話し合いの機会を設けようとするのはごく自然の対応である。
そして、請求人はそもそも「LION」や「LIONRUGS」について商標登録を受けることができず、一方で、被請求人の商標権と抵触する可能性のある商標を使用しているのであるから、請求人による「LIONRUGS」の使用に一定の理解を示し、お互いに混同の生じない範囲での安全な商標の使用に資する本件商標登録及び被請求人の対応は、むしろ商標法の予定する秩序に合致するものである。
また、請求人が、使用料を要求された、と主張する点については、使用料というよりも、むしろ、本件対応に係る実費の負担をお願いする意図であり、例として伝えた金額として、内容次第で掛かる可能性のある最大限の費用を口頭で伝えたにすぎない。
そうすると、被請求人による本件商標の出願は、その経緯に社会的相当性を欠くものがあるとはいえず、登録を認めたとしても商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合には該当しない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(6)商標法第4条第1項第10号について
請求人は、広告等を根拠に、請求人が使用する引用商標がイラン及び日本国内において相当程度知られていたと主張している。
しかしながら、引用商標が使用された商品・役務についての売上高、市場シェアなどの販売・売上実績は明らかではない。また、広告等にしても、年に数回程度で、その発行部数等の詳細も明らかではないから、引用商標について、客観的な事実として周知性が認められるとはいえず、引用商標が、請求人の商品及び役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(7)商標法第4条第1項第19号について
上記(6)のとおり、引用商標が使用された商品・役務についての売上高、市場シェアなどの販売・売上実績は明らかではない。また、広告等にしても、年に数回程度で、その発行部数等の詳細も明らかではない。
そうすると、引用商標について、客観的な事実として周知性が認められるとはいえず、引用商標が、請求人の商品及び役務を表示するものとして、日本国内又は外国の需要者の間に広く認識されていたとは認められない。
また、上記(4)、(5)のとおり、本件商標は、不正の目的をもって使用するものにも該当しない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
2 まとめ
上記に述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第19号に該当するものではない。
第5 当審の判断
1 利害関係の有無について
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、被請求人はこれについて争っておらず、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。
2 引用商標の周知性について
(1)請求人提出の証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
請求人は、「1888年に請求人の代表取締役社長の曾祖父が、イランにおいて、「手織りペルシャ絨毯」の事業を開始し、請求人の代表取締役社長の父は、1965年18歳の時に絨毯業界に入り、1976年頃よりヨーロッパ・アメリカ・日本向けの絨毯の輸出に携わり現在に至っている旨、そして、2011年4月、請求人の代表取締役社長は、浅草に手織りペルシャ絨毯の店舗を開き、引用商標を、店舗やインターネットのホームページ等に使用している旨、さらに、請求人は、イランで130年の歴史を持つペルシャ絨毯の4代目が事業を引き継いでおり、引用商標も日本国において2011年4月より10年以上にわたり継続使用している旨主張しているが、請求人による引用商標の実際の使用開始日を裏付ける具体的な証拠は見いだせない。
さらに、請求人は、請求人の取り扱いに係る「手織りペルシャ絨毯」は、一般には羨望の的ともいえる高価な商品であり、一般に広く知られているとまではいえないが、近年、請求人及び引用商標が人気テレビ番組等で紹介され、またデパートの催事などでも取り扱われ、一般にも広く認識されるようになっている状況がある旨主張し、甲第3号証ないし甲第15号証を提出している。
しかしながら、請求人提出の証拠からは、「Lion Rugs」、「ライオンラグス」の文字(語)が、ペルシャ絨毯専門店の店名として使用されており、当該店舗にて、ペルシャ絨毯の販売、メンテナンスが行われていることは認められるものの(甲3~甲12)、引用商標がテレビ番組でどのように使用された状態で放送されたのか、その具体的な内容は不明である上、当該番組の視聴率等も明らかではなく、また、引用商標を使用した請求人の業務に係る役務(ペルシャ絨毯の輸入販売・修理・鑑定)の売上(提供)実績、市場占有率等を具体的に明らかにする証拠の提出はない。
そして、請求人提出の各証拠をみても、「東京白金台ショールーム20周年記念カタログ」(西村貿易株式会社作成:甲3)は、その頒布の時期、場所、数量等が確認できず、雑誌の記事(甲4~甲9)にしても、当該雑誌の種類は数種類に限られ、それぞれの発行部数等も不明である。さらに、「第7回 広島イラン愛と平和の映画祭2020」及び「第8回 広島イラン愛と平和の映画祭2021」と題するパンフレット(甲10、甲11)は、その頒布の時期、場所、数量等が確認できず、「日経リヴァイブ REVIVE 2021 4」(甲12)における店舗紹介の記事は、「ライオンラグス LIONRUGS 青山店」が複数の他社の店舗と一緒に掲載されているものであり、「世界の心 イラン(vol 2、4及び5)」と題するパンフレット(甲13~甲15)は、その頒布の場所、範囲、数量等が確認できない。
また、引用商標を使用した請求人の業務に係る役務に関する宣伝広告の費用、規模等も明らかではない。
そして、職権をもって調査するも、引用商標が請求人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国において広く認識されているというべき事情を見いだすことはできない。
以上を総合勘案すると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る役務を表示するものとして我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものということはできない。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
本件商標と引用商標は、それぞれ上記第1及び第2の構成からなり、その構成文字が同一であるから、外観において類似し、同一の称呼を生じ、観念において相違はないものといえる。
したがって、本件商標と引用商標とは、類似する。
そして、本件商標の指定商品及び役務は、引用商標を使用した請求人の業務に係る役務(ペルシャ絨毯の販売・修理)と類似する。
しかしながら、引用商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(請求人)の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記3のとおり、本件商標と引用商標とは、類似するものである。
しかしながら、本件商標が商標法第4条第1項第19号に当たるというためには、その登録出願の時においても引用商標が需要者の間に広く認識されていたことを要するところ(同条第3項)、これを認めることができないことは上記2に説示したとおりである。
したがって、被請求人に不正の目的があったか否かについて判断するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第7号該当性について
商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は、商標登録を受けることができないと規定され、これに該当する商標には、「(a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。」と判示されているところである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号 平成18年9月20日判決参照)。
これを本件についてみるに、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様ではないことは明らかである。
また、本件商標をその指定商品及び指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということもできず、他の法律によってその使用が禁止されているものでもない。
さらに、申立人が提出した証拠及び主張を考慮しても、本件商標の登録出願の経緯が、社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に当たるということもできない。
加えて、申立人が提出した証拠及び主張からは、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合に当たるということもできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
6 むすび
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第19号のいずれにも違反して登録されたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
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