意匠無効審判
2022-880004
容器付き菓子
- 審判番号
- 2022-880004
- 法域
- 意匠
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 意願2021-016916
- 登録番号
- 1700664
- 請求日
- 2022年03月16日
- 審決日
- 2024年08月14日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 BMターゲット
- 【請求人代理人】高橋 隆二
- 【請求人代理人】寺島 英輔
- 【請求人代理人】永井 利幸
- 【請求人代理人】藤尾 将之
- 【被請求人】株式会社 GAKU
- 【被請求人代理人】佐川 慎悟
- 【被請求人代理人】太田 清子
- 【被請求人代理人】川野 陽輔
- 【被請求人代理人】江部 陽子
- 【被請求人代理人】大窪 智行
- 審判長/審判官
- 審判長 内藤 弘樹
- 審判官 渡邉 久美
- 審判官 前畑 さおり
- 分類
- D1113.113-Y (A1-1) / D1113.121-Y (A1-1) / D1113.14 -Y (A1-1)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 意匠法第3条、意匠法第3条第1項第3号、意匠法第48条第1項第1号、意匠法第3条第2項、意匠法第3条第1項、意匠法第52条、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の意匠登録第1700664号「容器付き菓子」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件意匠登録第1700664号の意匠(以下「本件登録意匠」という。別紙第1参照。)は、令和3年8月3日に意匠登録出願(意願2021-16916)されたものであって、審査を経て令和3年11月8日に意匠権の設定の登録がなされ、同年11月29日に意匠公報が発行され、その後、当審において、概要、以下の手続を経たものである。
・審判請求書提出 令和4年 3月16日
・手続補正書 令和4年11月25日付け
・手続補正書 令和4年12月28日付け
・審理事項通知 令和5年10月 5日付け
・口頭審理陳述要領書(被請求人)提出 令和5年11月 2日付け
・口頭審理陳述要領書(請求人)提出 令和5年11月17日差出
・口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)提出 令和5年11月24日付け
・口頭審理 令和5年11月30日
第2 請求人の申し立て及び理由の要点
請求人は、請求の趣旨を
「登録第1700664号意匠の登録を無効とする
審判費用は被請求人の負担とする
との審決を求める。」と申し立て、その理由を、おおむね、以下のとおり主張した(「手続補正書」及び「口頭審理陳述要領書」の内容を含む。)。
1 「審判請求書」における主張
請求の理由
(1)手続の経緯
出願 令和3年 8月3日
登録 令和3年11月8日
(2)意匠登録無効の理由の要点
本件登録意匠は、意匠の具体性の要件を満たさないので、意匠法3条1項柱書により意匠登録を受けることができないものである。
また、仮にそうでなくても、本件登録意匠は、いずれも意匠登録出願前にインターネット上において公衆に利用可能となった商品広告写真に掲載された意匠である甲第1号証の意匠(以下「引用意匠1」という。)ないし甲第2号証の意匠(以下「引用意匠2」という。)と類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。
また、仮にそうでなくても、当業者が引用意匠1又は引用意匠2に基づき本件登録意匠を創作することは容易であるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものである。
したがって、本件登録意匠は、意匠法第48条第1項第1号により、無効とすべきものである。
(3)請求人について
請求人は本件意匠に係る物品中の透明容器を製造して顧客たる菓子製造者に販売している。本件無効審判請求は何人も請求ができるものであるが、この度、被請求人は請求人の顧客らに対して侵害警告をし、請求人の経済的利益が実質的に害されているので、本件審判請求を行うものである。
(4)本件意匠登録を無効とすべき理由(理由1)
意匠法3条1項柱書は、意匠が具体的なものであることを登録要件としているところ、本件登録意匠については、出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面から、意匠登録を受ける意匠の具体的な形状が一義的に特定されず、意匠の具体性の要件を満たさないので、無効とすべきものである(意匠審査基準第III部第1章3.1及び3.2)。
本件登録意匠の物品は、透明容器の内部に収容されている積層菓子も、意匠を構成するものとされている。そして、出願当初の願書中、【意匠の説明】には、「朱色で着色された部分以外の部分が、意匠登録を受けようとする部分である、背面図、左側面図及び右側面図は、正面図と同一にあらわれるため省略する。」と記載されている。
しかしながら、容器に充填するムース、生クリームといった半固形状の菓子の層間の境界線が一義的に決定されることは凡そあり得ないから、背面、左側面及び右側面の層状の模様が正面図と同一にあらわれることは凡そあり得ない。正面図に表われる菓子の層間の境界線の両端は、左側面図と右側面図における菓子の層間の境界線の中心線を示すものであるが、その左側面図の境界線の位置(高さ)と右側面図の境界線の位置(高さ)が異なっており、その位置が正面図のものと同一でないことは明らかである。
したがって、【意匠の説明】の上記記載から意匠登録を受ける意匠の具体的な形状は一義的に特定されないから、本件登録意匠は意匠の具体性の要件(意匠法3条1項柱書)を満たさず、無効とすべきである。
なお、仮に意匠の具体性の要件を満たすよう解釈するのであれば、容器に充填するムース、生クリームといった半固形状の菓子の層間の境界線は必ずしも直線的であることを要せず、色彩の相違によって複数色の菓子が層状をなしていることが外観上表れている形態など、層間状態に関して背面図、左側面図及び右側側面図が、正面図と「ほぼ」同一にあらわれるものと解釈すべきである。
(5)本件意匠登録を無効とすべき理由(理由2及び理由3)
本件登録意匠は、甲1号証の意匠と類似し新規性がなく、少なくとも当業者が同号証の意匠に基づいて意匠を創作できたので(創作容易性)、無効とすべきでものである。
ア 本件登録意匠の要旨
本件意匠登録公報の背面図、左側面図及び右側面図はいずれも正面図と同一にあらわれるために省略されている。そして正面図においては、積層されているムース等の層間のいずれの境界においても大きな凹凸があり、各層の各部の厚さも一定ではない。本件意匠に係る物品の性質(内部に収容されたムース、スポンジケーキまたは生クリーム等が積層されている菓子)から見て、背面図、左側面図及び右側面図が正面図と同一であることはあり得ないので、「同一にあらわれる」とは、各層の積層状態が各層の厚みいかんにかかわらず、同一の順序をもって円周方向に維持されている構成と理解される。
本件登録意匠の意匠に係る物品は、透明な容器の内部に収容されてなる菓子であり、カラフルなムース、スポンジケーキまたは生クリーム等を積層してなる菓子であると説明されている。本件登録意匠は、部分意匠として意匠登録を受けたものである。その形態は、「本件意匠図面」記載の図面の朱色で着色された部分以外の部分(以下「本件モノクロ部分」という。)のとおりであり、これを具体的に説明すれば次のとおりである。
本件モノクロ部分は、内部に菓子が複数層に積層されて収容された透明な容器のうち、上部の蓋を除く部分である。
本件モノクロ部分の形態は、以下のとおりである。
(ア)基本的構成態様
a 密封された透明缶状(円筒状)容器の内部に菓子が複数層に
積層されて収容されている。
(イ)具体的構成態様
b 収容された菓子の積層数は6層であり、上下の層にはそれぞれ異なる配色の菓子が収容されている。
c 透明缶状容器の上部5層には稠密性ある菓子が配色ごとに
積層をなし、最下層には稠密性でない菓子が収容されている。
d 6層の菓子の境界は直線的ではなく凹凸があり、不明確である。
e 透明缶状容器の底面は、透明缶状容器の直径の約5分の4程度の直径を有する円形状に形成されている。
イ 甲第1号証の意匠の要旨
引用意匠1は、透明な容器の内部に収容されてなる菓子であり、本件登録意匠に係る物品と同一の物品に関する意匠である。以下の形態を備えている(インスタグラム写真、令和3年7月23日投稿により公開。甲1)。甲1は、正面図に相当する写真しか掲載されていないが、本件登録意匠と同じ意味で背面図、側面図はほぼ同一にあらわれると理解される。透明容器の中央に表示されている「A」と「AMANDA」の文字部分は、模様ではないことは明らかであり、単なる商品ブランドであって専ら情報伝達のためのものであるので、物品の形状等とは評価できない。
(ア)基本的構成態様
la 本件登録意匠と同じである。
(イ)具体的構成態様
lb 本件登録意匠の具体的構成態様bと同じである。
lc 透明缶状容器上部第1層及び第3層には稠密性のない菓子が収容され、その他の層には稠密性ある菓子が配色ごとに積層をなして収容されている。
ld 下部三層間の境界は直線的である。
le 透明缶状容器の底面は、透明缶状容器の直径の約5分の4程度の直径を有する円形状に形成されている。
ウ 本件登録意匠と引用意匠1の形態上の共通点及び相違点
(ア)共通点
・蓋で密封された透明缶状(円筒状)容器の内部に菓子が複数層に積層されて収容されている点(共通点(A))。
・収容された菓子の積層数は6層であり、上下の層にはそれぞれ異なる配色の菓子が収容されている点(共通点(B))。
・透明缶状容器の底面は、透明缶状容器の直径の約5分の4程度の直径を有する円形状に形成されている点(共通点(C))。
・なお、本件登録意匠は、各層の境界が直線的ではなく大きな凹凸があるのに対し、引用意匠1は、下部三層間の境界が直線的であるが、前記のとおり、仮に意匠の具体性の要件を満たすよう解釈するのであれば、容器に充填するムース、生クリームといった半固形状の菓子の層間の境界線は必ずしも直線的であることを要せず、色彩の相違によって複数色の菓子が層状をなしていることが外観上表れている形態と解釈されるべきであるから、層間の境界が直線的か否かの違いは相違点ではなく、むしろ色彩の相違によって複数色の菓子が層状をなしている点を共通点と捉えるべきである(共通点(B)参照)。
(イ)相違点
・収容された菓子の種類と種類ごとの層の場所・数について、本件登録意匠は、透明缶状容器の底部に稠密性のない菓子の層が収容され、その上部に稠密性ある菓子が配色ごとに積層をなして収容されているのに対し、引用意匠1は、透明缶状容器上部第1層及び第3層に稠密性のない菓子の層が収容され、その他の層に稠密性ある菓子が配色ごとに積層をなして収容されている点(相違点(あ))。
エ 本件登録意匠と引用意匠1の類否(理由2)
両意匠に係る物品はいずれも「菓子」であり、デザートとして食用に供せられ、又は贈答に用いられるものである。これらの食用ないし贈答用の菓子の需要者は主に一般消披者であるところ、かかる物品の性質や用途に鑑みれば、看者は、通常、これを正面ないし斜め上方から見る機会が多く、全体的な缶状の容器の形状(特に外観に占める割合が大きい本体部周側面)及び容器の内部に複数色の菓子が収容された形状・模様に着目する(本件で提出する甲1号証の写真を見ても、缶状の透明な容器の形状や容器の内部に複数色の菓子が層状に収容された状態を表示するため、商品の全体を斜め上方から俯敵的に撮影したものが圧倒的に多い。)と考えられる。
そうすると、前記共通点は、透明缶状容器の形状と容器の内部が層状の模様をなすという外観を通じて統一感を感じさせる独特の形態であって、意匠全体における支配的部分を占め、意匠的まとまりを形成し、看者(需要者)の注意を強く惹く構成態様であるというべきである。(なお、層をなす菓子の具体的な色彩は本件登録意匠の権利の範囲外であり、層状の模様をなす点で共通していれば、色彩の相違は問題にならないというべきである。)他方、前記相違点は、いずれも、収容された菓子の種類と種類ごとの層の場所・数といった、両意匠を全体としてみれば、限られた部分、あるいは必ずしも看者(需要者)が着目しない細部における差異にすぎず、これらを総合しても、前記共通点を凌駕するほどの印象を看者に与えるものではない。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品・用途が一致し、形態においてもその美感に訴える意匠的効果としては、前記共通点が生じさせる効果が相違点のそれを凌駕し、意匠全体として需要者に共通の美感を起こさせるから、本件登録意匠は引用意匠1に類似するものというべきである。
オ 引用意匠1に基づく創作容易性について(理由3)
甲第1号証(インスタグラム写真、令和3年7月23日投稿により公知ないし公衆に利用可能となった意匠)、甲第3号証ないし甲第10号証(甲3~甲10:いずれもインスタグラム写真。甲3:令和3年7月10日投稿、甲4:令和3年8月10日投稿、甲5:令和3年7月16日投稿、甲6:令和3年7月12日投稿、甲7:令和2年8月30日投稿、甲8:令和2年7月16日投稿、甲9:令和元年5月14日投稿、甲10:令和元年10月118日投稿。それぞれ、インスタグラムに投稿されることにより公知ないし公衆に利用可能となった意匠である。)は、出願前公知ないし公衆に利用可能となった本件物品に関する意匠であるところ、透明容器内に層状の菓子を収容する場合において、その菓子の種類については、生クリーム、ムース、ゼリー等の稠密性ある菓子とチョコレートクランチ、ナッツ等の稠密性のない菓子を適宜選択して組み合わせ、収容することが広く行われていることがわかる。
具体的には、甲第3号証ないし甲第6号証の意匠は、第1層と第3層にチョコレートクランチないしナッツが収容され、それ以外の層には、ゼリーないし生クリームが収容されている。
前記のとおり、看者(需要者)の注意を強く惹く構成態様は、透明缶状容器の形状と、当該容器の内部に菓子が層状に収容されているという外観を組み合わせた形態であるところ、容器内の層状の菓子の種類の選択とその菓子の配置はありふれた手法としての単なる置き換えないし配置の変更に過ぎず、創作容易であることは明らかである。多数を積層する菓子の性質上、菓子の各層間の境界が不可避的に不明確になることもあるところ、不明確な境界を直線的にすることも軽微な変更に過ぎない。
したがって、本件登録意匠は、当業者が甲第1号証及び甲第3号証ないし甲第10号証の意匠に基づき容易に創作できた(創作容易性)ものである。
(6)本件意匠登録を無効とすべき理由(理由4及び理由5)
本件登録意匠は、甲2号証の意匠と類似し新規性がなく、少なくとも当業者が同号証の意匠に基づいて意匠を創作できたので(創作容易性)、無効とすべきである。
ア 甲第2号証の意匠の要旨
引用意匠2は、透明な容器の内部に収容されてなる菓子であり、以下の形態を備えている(インスタグラム写真、令和2年8月31日投稿。甲2)。
(ア)基本的構成態様
2a 密封された透明缶状(円筒状)容器の内部に菓子が複数層に積層されて収容されている。
(イ)具体的構成態様
2b 収容された菓子の積層数は6層ないし7層であり、上下の層にはそれぞれ異なる配色の菓子が収容されている。
2c 透明缶状容器には稠密性ある菓子が配色ごとに積層をなして収容されている。
2d 6層ないし7層の稠密性ある菓子は、ほぼ均一な厚さで緊密に充填されている。
2e 透明缶状容器の底面は、透明缶状容器の直径の約5分の4程度の直径を有する円形状に形成されている。
イ 本件登録意匠と引用意匠2の形態上の共通点及び相違点
(ア)共通点
・蓋で密封された透明缶状(円筒状)容器の内部に菓子が複数層に積層されて収容されている点(共通点(A))。
・収容された菓子の積層数は6層であり、上下の層にはそれぞれ異なる配色の菓子が収容されている点(共通点(B))。
・透明缶状容器の底面は、透明缶状容器の直径の約5分の4程度の直径を有する円形状に形成されている点(共通点(C))。
(イ)相違点
・収容された菓子の種類と種類ごとの層の場所・数について、本件登録意匠は、透明缶状容器の底部に稠密性のない菓子の層が収容され、その上部に稠密性ある菓子が配色ごとに積層をなして収容されているのに対し、引用意匠2は、透明缶状容器に稠密性ある菓子のみが配色ごとに積層をなして収容されている点(相違点(ア))。
・菓子の層の数について、本件登録意匠は6層であるのに対し、引用意匠2は6層ないし7層である点(相違点(イ))。
ウ 本件登録意匠と引用意匠2の類否(理由4)
両意匠に係る物品はいずれも「菓子」であり、デザートとして食用に供せられ、又は贈答に用いられるものである。これらの食用ないし贈答用の菓子の需要者は主に一般消費者であるところ、かかる物品の性質や用途に鑑みれば、看者は、通常、これを正面ないし斜め上方から見る機会が多く、全体的な缶状の容器の形状(特に外観に占める割合が大きい本体部周側面)及び容器の内部に複数色の菓子が収容された形状・模様に着目する(本件で提出する甲2号証の写真を見ても、缶状の透明な容器の形状や容器の内部に複数色の菓子が層状に収容された状態を表示するため、商品の全体を斜め上方から俯敵的に撮影したものが圧倒的に多い。)と考えられる。
そうすると、前記共通点は、透明缶状容器の形状と容器の内部の層状の模様の外観を通じて統一感を感じさせる独特の形態であって、意匠全体における支配的部分を占め、意匠的まとまりを形成し、看者(需要者)の注意を強く惹く構成態様であるというべきである。(なお、層をなす菓子の具体的な色彩は本件登録意 匠の権利の範囲外であり、層状の模様をなす点で共通していれば、色彩の相違は問題にならないというべきである。)
他方、前記相違点は、いずれも、収容された菓子の種類と種類ごとの層の場所・数、稠密性ある菓子の層の厚みの比率といった、両意匠を全体としてみれば限られた部分、あるいは必ずしも看者(需要者)が着目しない細部における差異にすぎず、これらを総合しても、前記共通点を凌駕するほどの印象を看者に与えるものではない。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品・用途が一致し、形態においてもその美感に訴える意匠的効果としては、前記共通点が生じさせる効果が相違点のそれを凌駕し、意匠全体として需要者に共通の美感を起こさせるから、本件登録意匠は引用意匠2に類似するものというべきである。
エ 引用意匠2に基づく創作容易性について(理由5)
甲第2号証(インスタグラム写真、令和2年8月31日投稿により公知ないし公衆に利用可能となった意匠)、甲第3号証ないし甲第10号証は、出願前公知ないし公衆に利用可能となった本件物品に関する意匠であるところ、透明容器内に層状の菓子を収容する場合において、その菓子の種類については、生クリーム、ムース、ゼリー等の稠密性ある菓子とチョコレートクランチ、ナッツ等の稠密性のない菓子を適宜選択して組み合わせ、又は稠密性ある菓子のみを適宜選択して組み合わせ、収容することが広く行われていることがわかる。
具体的には、甲第7号証ないし甲第10号証の意匠(甲7~甲10:いずれもインスタグラム写真。甲7:令和2年8月30日投稿、甲8:令和2年7月16日投稿、甲9:令和元年5月14日投稿、甲10:令和元年10月18日投稿。それぞれ、インスタグラムに投稿されることにより公知ないし公衆に利用可能となった意匠である。)は、生クリーム、ヨーグルト、フルーツソースなど稠密性ある菓子のみを選択して組み合わせ、缶状透明容器に層状に収容したものである。
前記のとおり、看者(需要者)の注意を強く惹く構成態様は、透明缶状容器の形状と、当該容器の内部に菓子が層状に収容されているという外観を組み合わせた形態であるところ、容器内の層状の菓子の種類の選択(種類の数も含む)とその菓子の配置はありふれた手法としての単なる置き換えないし配置の変更に過ぎず、創作容易であることは明らかである。多数を積層する菓子の性質上、菓子の各層間の境界が不可避的に不明確になることもあるところ、不明確な境界を直線的にすることも軽微な変更に過ぎない。
したがって、本件登録意匠は、当業者が甲第2号証ないし第10号証の意匠に基づき容易に創作できた(創作容易性)ものである。
(7)結論
以上から、本件登録意匠は意匠の具体性の要件(意匠法3条1項柱書)を満たさず、無効とすべきである(理由1)。
仮にそうでなくても、本件登録意匠は、甲1号証の意匠と類似し新規性がなく、少なくとも当業者が同号証の意匠に基づいて意匠を創作できたので(創作容易性)、無効とすべきものである(理由2、理由3)。
また、本件登録意匠は、甲2号証の意匠と類似し新規性がなく、少なくとも当業者が同号証の意匠に基づいて意匠を創作できたので(創作容易性)、無効とすべきものである(理由4、理由5)。
2 「口頭陳述要領書」における主張
陳述の要領
(1)本件審判事件において、被請求人は無効審判請求書に対してなんら答弁していないところ(答弁書提出の意思がないので、直ちに書面審理によって審決をすべき事案である。更に被請求人に対して反論を促すことは、御庁を含めて無駄な資瀕の浪費であると考える。)、この度の特許庁からの陳述要領書の提出の機会をもって初めて反論しているが、その内容は審判請求書の無効理由に対する実質的な反論になっていない。
(2)理由1、理由2に関する被請求人の主張について
被請求人は、本件登録意匠は「透明な容器の内部に、ムース、スポンジケーキ又は生クリーム等を積層してなる菓子」の意匠が具体的に導き出せるというが、請求人が主張する具体性はそのような意匠部分ではなく、透明容器外周に現れる菓子の具体的な模様状態である。意匠図面からは意匠を構成する模様が容器の外観(本件においては円状透明容器の外周)においてどのように観察されるか、すなわち、菓子の積層状態がどのようなものかは具体的に特定できない。意匠の説明では同一に現れるとされる背面図、左側面図、右側面図の状態は同一ではないことは明らかであるので、積層状態の具体的な模様は特定できない。特定できない以上、意匠としても具体性の要件を欠くことは明らかであるし、引用意匠との対比もできない(請求人は対比しているが、それは予備的な無効理由となる。)。なお、被申立人は、理由2の主張において本件登録意匠の形態Cの特定において各層の基準幅が特定されているというが背面や側面の状態が不明であるのでそのようには言えない。又、形態Bの特定においても「稠密性」を有する層があるというが不明である。いずれにしても本件意匠登録の容器形状の表面に現れた模様状態が不特定なので、具体的な構成態様を認識することはできない。
被請求人の引用意匠1の特定は、概要、請求人の主張に沿うが、形態Cに関する記載(3頁下から2行目)についてはは(合議体注:「は」の誤記と認められる。)、主張する数値は正確ではない。
本件登録意匠と引用意匠1との対比(相違点)については、(i)の内、「第5層~第6層はスポンジ状の菓子である点」は否認し(本件登録意匠はスポンジ状か否かは不明)、(ii)、(iii)の各相違点は否認する(本件登録意匠の構成が特定できない。)。
類否の判断は争う。審判請求書に記載した通りである。意匠の重要な構成要素である物品の形状自体においては本件登録意匠と引用意匠1とは相違がなく、単に形状の外観に現れる模様のみが異なるものである。その模様の相違点は美観に訴える意匠的な効果はなく、両者の正面図(写真)のみを見る限り、両者が類似することは明らかである。
(3)理由3に関する被請求人の主張について
創作容易性は審判請求書に記載した通りである。被請求人の主張は失当である。被請求人は、飲み物と菓子を区別して論じているが、形状の外観に現れた模様としては区別することはできず、その区別は意味がない。各証拠の説明文中の記載から飲み物か菓子かの区別を論じているが、視覚を通じて受ける意匠の特定方法としては誤りである。
(4)理由4、理由5に関する被請求人の主張について
被請求人の理由2、理由3に関する主張と同じく、相違点の特定と類似性、創作容易性の主張は誤りである。請求人の主張は、審判請求書に記載したものに尽きる。
3 請求人添付の証拠
甲第1号証 インスタグラム投稿写真(アカウント名sweets_gallery_amanda)
https://www.instagram.com/p/CRpuPuZAv_5/
甲第2号証 インスタグラム投稿写真(アカウント名blessroll_pyeongtaek)
https://www.instagram.com/blessroll_pyeongtaek/抜粋
甲第3号証 インスタグラム投稿写真(アカウント名sweets_gallery_amanda)
https://www.instagram.com/p/CRH45cIgNIn/
甲第4号証 インスタグラム投稿写真(アカウント名sweets_gallery_amanda)
https://www.instagram.com/p/CSAgH4YBEDp/
甲第5号証 インスタグラム投稿写真(アカウント名sweets_gallery_amanda)
https://www.instagram.com/p/CRXscIQgC9I/
甲第6号証 インスタグラム投稿写真(アカウント名sweets_gallery_amanda)
https://www.instagram.com/p/CRNzetbgjac/
甲第7号証 インスタグラム投稿写真(アカウント名blessroll_pyeongtaek)
https://www.instagram.com/blessroll_pyeongtaek/抜粋
甲第8号証 インスタグラム投稿写真(アカウント名blessroll_pyeongtaek)
https://www.instagram.com/blessroll_pyeongtaek/抜粋
甲第9号証 インスタグラム投稿写真(アカウント名blessroll_pyeongtaek)
https://www.instagram.com/blessroll_pyeongtaek/抜粋
甲第10号証インスタグラム投稿写真(アカウント名blessroll_pyeongtaek)https://www.instagram.com/p/B3vnsqgHYzu/?igshid=YmMyMTA2M2Y%3D
翻訳文一覧(証拠の翻訳文)
第3 被請求人の理由の要点
被請求人は、答弁書を提出せず、「口頭審理陳述要領書」及び口頭審理陳述要領書(2)を提出し、おおむね以下のとおり主張した。)。
1 口頭審理陳述要領書における主張
陳述の要領
令和4年3月16日付審判請求書における請求人の主張に対して、被請求人の反論は以下のとおりである。
(1)理由1(意匠法3条1項柱書)について
請求人は、「本件登録意匠については、出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面から、意匠登録を受ける意匠の具体的な形状が一義的に特定されず、意匠の具体性の要件を満たさないので、無効とすべきものである(意匠審査基準第III部第1章3.1及び3.2)」と主張している。
しかしながら、意匠審査基準には、「一義的」という文言は一切記載されておらず、実際には以下のように記載されている。
「■意匠審査基準第III部第1章3.1
意匠として保護されるのは、願書の記載及び願書に添付した図面等を通じて把握される無体の財産としての物品等に関する美的創作であるので、願書の記載及び願書に添付した図面等から、出願された意匠の内容について、具体的に導き出すことができればよく、願書に添付した図面等についてみれば、意匠の創作の内容を特定する上で必要なものが含まれていれば十分であり、また、必ずしも製品設計図面のように意匠の全体について均しく高度な正確性をもって記載されていることが必要となるものではない。」(当審注:下線は、被請求人による。)
上記のとおり、意匠審査基準によれば、意匠の内容が具体的に導き出せるのであれば、図面について高度な正確性は求められていない。
そうすると、本件登録意匠の属する分野における通常の知識に基づけば、本件登録意匠に係る願書の記載および図面等から、透明な容器の内部に、ムース、スポンジケーキまたは生クリーム等を積層してなる菓子という、具体的な一の意匠が導き出せることは明らかである。
よって、請求人が主張する無効理由1には理由がない。
(2)理由2について
(2-1)本件登録意匠の形態について
本件登録意匠は、容器付き菓子に係る部分意匠であって、主に以下の形態を備えている。
基本的構成態様について
(形態A)蓋で密封された透明缶状容器の内部に菓子が配置されている。
具体的構成態様について
(形態B)透明缶状容器の内部には、菓子が層状に配置されており、上部の
4層(第1層~第4層)は稠密性のある菓子であり、下部の2層(第5層~第6層)はスポンジ状の菓子である。
(形態C)各菓子層は、第2層から第5層までの幅がほぼ等しく(以下、当該幅を基準幅という)、第1層の幅は基準幅の約1.5倍であり、第6層の幅は基準幅の約0.5倍である。
(形態D)各菓子層は、第1層から第3層までと第6層は明るく淡い色調で構成され、第4層と第5層が暗く濃い色調で構成されている。
(2-2)甲第1号証(引用意匠1)の認定
引用意匠1は、容器付き菓子に係る意匠であって、以下の形態を備えている。
基本的構成態様について
(形態lA)蓋で密封された透明缶状容器の内部に菓子が収容されている。
具体的構成態様について
(形態1B)透明缶状容器の内部には、菓子が層状に配置されており、第1層および第3層はクランチ状の菓子であり、第2層、第4層~第6層は稠密性のある菓子である。
(形態1C)各菓子層は、第4層から第6層までの幅がほぼ等しく(以下、当該幅を基準幅という)、第1層および第3層の幅は基準幅の約0.5倍であり、第2層の幅は基準幅の約2倍である。
(形態lD)各菓子層は、第2層と第5層が明るく淡い色調で構成され、第
1層、第3層、第4層、第6層が暗く濃い色調で構成されている。
(2-3)本件登録意匠と引用意匠1との対比
(2-3-1)形態の共通点について
本件登録意匠と引用意匠1とは、基本的構成態様において、蓋で密封された透明缶状容器の内部に菓子が収容されている形態において共通する。
(2-3-2)形態の差異点について
一方、本件登録意匠と引用意匠1とを比較すると、以下の差異点(i)~(iii)が存在する。
(i)引用意匠1では、第1層および第3層がクランチ状の菓子であり、第2層、第4層~第6層は稠密性のある菓子であるのに対し、本件登録意匠では、第1層~第4層が稠密性のある菓子であり、第5層~第6層はスポンジ状の菓子である点。
(ii)引用意匠1では、各菓子層は、第4層から第6層までの幅(基準幅)がほぼ等しく、第1層および第3層の幅は基準幅の約0.5倍であり、第2層の幅は基準幅の約2倍であるのに対し、本件登録意匠では、各菓子層は、第2層から第5層までの幅(基準幅)がほぼ等しく、第1層の幅は基準幅の約15倍であり、第6層の幅は基準幅の約0.5倍である点。
(iii)引用意匠1では、各菓子層は、第2層と第5層が明るく淡い色調で構成され、第1層、第3層、第4層、第6層が暗く濃い色調で構成されているのに対し、本件登録意匠では、各菓子層は、第1層から第3層までと第6層は明るく淡い色調で構成され、第4層と第5層が暗く濃い色調で構成されている点。
(2-4)本件登録意匠と引用意匠1との類否判断
(2-4-1)共通点が類否判断に及ぼす影響
本件登録意匠と引用意匠1とは、基本的な構成態様において共通している。
しかしながら、基本的構成態様における上記共通点は、容器付き菓子に関する物品分野において、ごく普通に見られるありふれた態様であり、取引者や需要者にとって、注意を惹く部分ではないため、意匠の要部にはなり得ないものといえる。
よって、上記共通点が意匠全体の類否判断に与える影響は、極めて小さいものであるか、あるいは捨象して評価すべきものである。
(2-4-2)差異点が類否判断に及ぼす影響
一方、本件登録意匠や引用意匠1のような容器付き菓子に係る意匠においては、具体的構成態様における上記差異点(i)~(iii)が、販売される際や手に取った際に取引者や需要者の目に入ってくる部分であるから、最も観察されやすく注意を惹く部分であり、意匠の要部となり得るものである。
(2-4-3)差異点(i)について
上記差異点(i)で指摘した菓子の相違は、容器付き菓子が流通する場面、店頭や自動販売機等で陳列される場面および食される場面のいずれにおいても、需要者や取引者の目に最も付き易く観察され易い差異点といえる。
具体的には、本件登録意匠では、第1層~第4層にムースや生クリーム等の稠密性が高い稟子が充填されており、第5層~第6層にはスポンジ状の菓子が配置されている。
このため、本件登録意匠は、透明缶状容器の内部にほぼ隙間なく菓子がびっしりと詰め込まれている外観を呈し、横向きや逆さにしても菓子の配置が崩れにくそうという視覚的印象を与える。
特に、容器付き菓子は、菓子の美味しさのみならず、見た目の可愛らしさやSNS等での「映え」で評価されることが多い物品である。
このため、透明缶状容器の内部における菓子の崩れにくさは極めて重要な関心事であり、その意味でも需要者や取引者に大きな安心感を印象づける。
これに対し、引用意匠1では、第1層および第3層において、クランチ状の菓子がまばらに配置されている。
このため、引用意匠1は、第1層および第3居が隙間だらけでスカスカな空間層を備えることで、横向きや逆さにすると、菓子の配置が簡単に崩れてしまいそうという不安感を与える外観となっている。
よって、上記差異点(i)は、需要者や取引者に対して全く異なる美感を起こさせるため、意匠の類否判断に与える影響は極めて大きいものといえる。
(2-4-4)差異点(ii)について
上記差異点(ii)で指摘した各層の幅の相違についても、上記差異点(i)と同様、容器付き菓子が流通する場面、店頭や自動販売機等で陳列される場面および食される場面のいずれにおいても、需要者や取引者の目に最も付き易く観察され易い差異点といえる。
具体的には、本件登録意匠では、第2層から第5層までの幅(基準幅)がほぼ等しく、第1層のみが基準幅の約1.5倍で、第6層のみが基準幅の約0.5倍となっている。
このため、本件登録意匠は、各菓子層が適度な層幅を確保しながらバランスよく充填されており、均整のとれた視覚的印象を与える。
これに対し、引用意匠1では、第4層から第6層までの幅(基準幅)がほぼ等しいものの、第2層が基準幅の約2倍もの幅を占めている一方、その上下に隣接する第1層および第3層が基準幅の約0.5倍の層幅しかない。
すなわち、とりわけ需要者や取引者の目に付き易い上部の菓子層が、アンバランスな層福で構成されており、特に第2層の存在感が上下の第1層および第3層によって強調されているため、頭でっかちな視覚的印象を与える。
よって、上記差異点(ii)は、需要者や取引者に対して全く異なる美感を起こさせるため、意匠の類否判断に与える影響は大きいものといえる。
(2-4-5)差異点(iii)について
上記差異点(iii)で指摘した各層の幅の相違についても、上記差異点(i)、(ii)と同様、容器付き菓子が流通する場面、店頭や自動販売機等で陳列される場面および食される場面のいずれにおいても、需要者や取引者の目に最も付き易く観察され易い差異点といえる。
そして、上述したとおり、本件登録意匠と引用意匠1とでは、各菓子層の明度、濃淡の色調配列が全く異なっていることから、両意匠は明らかに異なる視覚的印象を与える。
(2-5)小括
以上より、本件登録意匠と引用意匠1とを意匠全体として上記共通点および上記差異点(i)~(iii)を総合的に観察した場合、両意匠の形態における上記差異点(i)~(iii)は、上記共通点を遥かに凌駕し、需要者及び取引者に対して全く異なる美感を起こさせるものである。
よって、本件登録意匠は、引用意匠1に類似するものではないから、請求人の理由2には理由がない。
(3)理由3について
請求人は、甲第1号証、甲第3号証~甲第10号証を引用し、「透明容器内に層状の菓子を収容する場合において、その菓子の種類については、生クリーム、ムース、ゼリー等の稠密性ある菓子とチョコレートクランチ、ナッツ等の稠密性のない菓子を適宜選択して組み合わせ、又は稠密性ある菓子のみを適宜選択して組み合わせ、収容することが広く行われていることがわかる」と主張する。
しかしながら、甲第3号証~甲第6号証は、甲第1号証と同じ「スイーツギャラリーアマンダ」という店の同一商品である。
また、甲第7号証~甲第9号証は、各画像に付された説明文から明らかなとおり、いずれも飲み物であって、そもそも菓子ではない。
具体的には、令和4年12月28日付翻訳文一覧にもある通り、甲第7号証には、「桃ジュース」、「マスカットエード」、「虹スムージー」との記載があり、甲第8号証には「蜂蜜イチゴジュース」との記載がある。
ここで、「エード」とは、「果汁から作った甘味飲料(広辞苑第七版)」であり、「スムージー」とは、「凍らせた果物・野菜などを牛乳・ヨーグルトとともにミキサーで攪拌してとろりとさせた冷たい飲物(広辞苑第七版)」であるかから、いずれも飲料である。
また、甲第9号証には、「ご注文時にすぐに作り始めた飲み物は40分以内にお届けできます!!」、「苦労している先生のために特別な飲み物を一杯ずついかがですか」と、「飲み物」であることが明記されている。
さらに、甲第10号証は、現在アクセス不能な状態であり、真偽を確認することができない。
そうすると、「透明容器内に層状の菓子を収容する場合において、その菓子の種類については、生クリーム、ムース、ゼリー等の稠密性ある菓子とチョコレートクランチ、ナッツ等の稠密性のない菓子を適宜選択して組み合わせ、又は稠密性ある菓子のみを適宜選択して組み合わせ、収容すること」を示す証拠は実質的に一つ(甲第1号証のみ)しかないため、少なくとも「広く行われている」という請求人の主張は失当である。
仮に「広く行われている」としても、この種の容器付き菓子は、容器内部における具材の位置・大きさ・範囲という様々な構成要素が組み合わされてできるものである。
そして、その組み合わせ態様については、造形上、多様な創意工夫の余地があるところであって、構成各部の態様を具体的に決定し、構成各部をどのように関連づけ、配置し、それらの結合により、全体の形態についてどのように具体化するかの選択および創意工夫は多様に存在するものであるから、その組み合わせの具体的な構成態様が、意匠全体の印象に大きな影響を与え、需要者の関心を抱かせ、注意を惹くところと言える。
特に、本件登録意匠は透明缶状容器内という、製造上および衛生上の問題を解決しつつ、さらにデザイン上も厳しい制約条件の下で、如何にして需要者の購買意欲をそそる美観(綺麗、かわいい、美味しそう)を呈することができるか、という難題を解決すべく創作された意匠といえる。
そうすると、本件登録意匠に係る具体的な構成態様は、甲第1号証および甲第3号証~甲第10号証に表されているものではなく、ましてや、この種の物品分野において従来見られないものであるから、新規で独創性のある着想によるものと言うべきである。
よって、本件登録意匠は、当業者であっても甲第1号証および甲第3号証~甲第10号証に基づいて容易に創作できたものではないから、請求人の理由3には理由がない。
(4)理由4について
請求人は、引用意匠2の内容物を「菓子」と認定しているが失当である。
甲第2号証には、「虹スムージー」との記載があるため、甲第7号証~甲第9号証と同様、飲み物であって、そもそも菓子ではない。
仮に、菓子であったとしても、本件登録意匠と引用意匠2とで形態を対比すると、蓋で密封された透明缶状容器の内部に菓子が収容されている、という点しか共通点がない。
一方、本件登録意匠と引用意匠2とでは、まず、パッと見で真っ先に視認される透明缶状容器のサイズ感が全く異なる。
透明缶状容器の直径に対する高さ比で比較すると、本件登録意匠が約1.7であるのに対し、引用意匠2は約2.6もある。
このように歴然とした形態の差があるにも関わらず、この点を請求人が認定しないのは意図的であると言わざるを得ない。
また、請求人は、引用意匠2の具体的構成態様2bとして、「積層数は6層ないし7層」と認定している。
しかしながら、そもそも飲料が故に各層の境界線が極めて曖昧な上、仮に色が異なる内容物を「層」としてカウントすると、9層ないし10層程度が確認され、本件登録意匠の6層とは大幅に異なる。
さらに、請求人は、引用意匠2の具体的構成態様2eとして、「透明缶状容器の底面は、透明缶状容器の直径の約5分の4程度の直径を有する円形状に形成されている」と認定し、本件登録意匠との共通点(C)として挙げている。
しかしながら、引用意匠2に係る透明缶状容器の底面を確認する証拠が存在しない以上、上記認定は失当である。
さらに、引用意匠2の各層は、第1層、第3層および最下層の白い層以外は暗く濃い色調であるため全体的に重苦しい印象を与えるのに対し、本件登録意匠を構成する各層は、全体の半分以上(第1層から第3層と第6層)が明るく淡い色調でポップな印象を与えるため、色調配列から受ける印象も明らかに異なる。
以上の通り、引用意匠2の内容物が仮に菓子であったとしても、本件登録意匠と引用意匠2とを意匠全体として上記共通点および上記差異点を総合的に観察した場合、両意匠の形態における上記差異点は、上記共通点を遥かに凌駕し、需要者及び取引者に対して全く異なる美感を起こさせるものである。
よって、本件登録意匠は、引用意匠2に類似するものではないから、請求人の理由4には理由がない。
(5)理由5について
請求人は、甲第2号証~甲第10号証を引用し、「透明容器内に層状の菓子を収容する場合において、その菓子の種類については、生クリーム、ムース、ゼリー等の稠密性ある菓子とチョコレートクランチ、ナッツ等の稠密性のない菓子を適宜選択して組み合わせ、又は稠密性ある菓子のみを適宜選択して組み合わせ、収容することが広く行われていることがわかる」と主張する。
しかしながら、上記(3)で上述したとおり、当該事実を示す証拠は実質的に一つしかないため、少なくとも「広く行われている」という請求人の主張は失当である。
また、請求人は、甲第7号証~甲第10号証を引用し、「生クリーム、ヨーグルト、フルーツソースなど稠密性ある菓子のみ選択して組み合わせ、缶状透明容器に層状に収容したものである」と主張している。
しかしながら、上記(3)で上述したとおり、甲第7号証~甲第9号証は、いずれも飲み物であって、そもそも菓子ではない。
また、甲第10号証は、現在アクセス不能な状態であり、真偽を確認することができない。
よって、「生クリーム、ヨーグルト、フルーツソースなど稠密性ある菓子のみを選択して組み合わせ、缶状透明容器に層状に収容したもの」を示す証拠は一つも存在しない。
仮に、甲第7号証~甲第9号証が菓子であったとしても、この種の容器付き菓子は、容器内部における具材の位置・大きさ・範囲という様々な構成要素が組み合わされてできるものである。
そして、その組み合わせ態様については、造形上、多様な創意工夫の余地があるところであって、構成各部の態様を具体的に決定し、構成各部をどのように関連づけ、配置し、それらの結合により、全体の形態についてどのように具体化するかの選択および創意工夫は多様に存在するものであるから、その組み合わせの具体的な構成態様が、意匠全体の印象に大きな影響を与え、需要者の関心を抱かせ、注意を惹くところと言える。
特に、本件登録意匠は透明缶状容器内という、製造上および衛生上の問題を解決しつつ、さらにデザイン上も厳しい制約条件の下で、如何にして需要者の購買意欲をそそる美観(当審注:「感」の誤記と認められる。)(綺麗、かわいい、美味しそう)を呈することができるか、という難題を解決すべく創作された意匠といえる。
そうすると、本件登録意匠に係る具体的な構成態様は、甲第2号証~甲第10号証に表されているものではなく、ましてや、この種の物品分野において従来見られないものであるから、新規で独創性のある着想によるものと言うべきである。
よって、本件登録意匠は、当業者であっても甲第2号証~甲第10号証に基づいて容易に創作できたものではないから、請求人の理由5には理由がない。
(6)結論
以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法3条1項柱書の要件を満たしているから、請求人が主張する無効理由1には理由がない。
また、本件登録意匠は、甲第1号証または甲第2号証に係る各意匠と類似せず新規性があるから、請求人が主張する無効理由2、4には理由がない。
さらに、本件登録意匠は、甲第1号証または甲第2号証に係る各意匠に基づいて容易に創作できたものでもないから、請求人が主張する無効理由3、5には理由がない。
よって、本件無効審判の請求は成り立たないものである。
2「口頭審理陳述要領書(2)」における主張
(1)陳述の要領
令和5年11月15日付口頭審理陳述要領書に対して、以下のとおり反論する。
(2)(前記第2の2(2))について
(2-1)請求人は「(積層状態の具体的な態様が)特定できない以上、意匠としても具体性の要件を欠くことは明らかであるし、引用意匠との対比もできない」と主張している。
しかしながら、「予備的な無効理由」であろうとなかろうと、審判請求書において、請求人が本件登録意匠と引用意匠とを対比している以上、具体的な一の意匠が特定されていることに変わりは無い。
(2-2)被請求人は、「形態Bの特定においても「稠密性」を有する層があるというが不明である」と主張しているが、審判請求書において、被請求人は、本件登録意匠の具体的構成態様cとして、「透明缶状容器の上部5層には稠密性ある策子が配色ごとに積層をなし」と自ら認定している。
(2-3)請求人は、引用意匠1の形態1Cに関し、「主張する数値は正確ではない」と主張しているが、請求人が正確と考える数値は一切示されていない。
(2-4)被請求人は、「意匠の重要な構成要素である物品の形状自体においては本件登録意匠と引用意匠1とは相違がなく、単に形状の外観に現れる模様のみが異なるものである」と、あたかも模様は形状よりも重要でないかのような主張をしている。
しかしながら、意匠の構成要素間の関係について、意匠審歪基準には、形状及び模様が類否判断に与える影響の大きさについては、先行意匠群との関係で定まる旨が明記されており、一律に形状が模様よりも重要とは限らない。
また、そもそも透明容器の内部に収容された菓子からは、模様のみならず、ムース、スポンジケーキまたは生クリーム等の菓子が層状に配置されているという形状や、グレーの濃淡によって色調が特定される。
(3)(前記第2の2(3))について
請求人は「被請求人は、飲み物と菓子を区別して論じているが、形状の外観に現れた模様としては区別することはできず、その区別は意味がない」と主張する。
しかしながら、意匠は物品の形態であるところ、仮に形態が同一であっても、物品が非類似であれば、意匠も非類似となるため、物品が「容器付き菓子」であるか、「容器付き飲料」であるかを特定し、区別(類否判断)する意味は当然に存在する。
第4 口頭審理
当審は、本件審判について、令和5年11月30日に口頭審理を行った。
審判長は、本件審判において請求人が主張する本件登録意匠の登録の無効理由について、後記第5の2のとおりとし、甲第1号証から甲第10号証について取り調べた。(令和5年11月30日付け「第1回口頭審理調書」)
第5 当審の判断
1 本件登録意匠
本件登録意匠は、物品の部分について、意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、願書の記載及び願書に添付された図面代用写真によれば、意匠に係る物品を「容器付き菓子」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)を願書の記載及び願書に添付された図面代用写真に表されたとおりとしたものであり、当該意匠登録を受けようとする部分(以下「本件意匠部分」という。)を「朱色で着色された部分以外の部分が、意匠登録を受けようとする部分である。」とし、意匠に係る物品の説明を「本物品は、透明な容器の内部に収容されてなる菓子である。本物品は、販売状態を示す参考図に示すように、カラフルなムース、スポンジケーキまたは生クリーム等を積層してなる菓子である。」とし、意匠の説明を「背面図、左側面図及び右側面図は正面図と同一にあらわれるため省略する。」としたものである(別紙第1参照)。
(1)意匠に係る物品
本件登録意匠の意匠に係る物品は「容器付き菓子」である。
(2)本件意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
本件意匠部分は、菓子の形態を保持し、食器ともなる容器部と、嗜好品として食される菓子部からなり、片手で持てる大きさであって、上面の縁部(以下「上縁部」という。)以外の面を除いた全体にわたる位置及び範囲である。
(3)本件意匠部分の形態
本件意匠部分の形態は、具体的には以下のとおりである。
基本的構成態様
ア 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、菓子層を複数層積層して封入し、上縁部以外の容器面を透明としたものである。
具体的態様
イ 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端周縁部は弧状に面取りし、底面は中央にむけて緩やかな凹部を形成し、外縁寄りに円形溝を形成している。
ウ 菓子層は、全部で6層であって、上から、菓子第1層から菓子第6層(以下菓子各層を「第(番号)層」という。)とし、第1層から第5層はきめの細かい素材を充填し、第6層は粗めのざらつきのある素材を封入し、各層は、全体をおおむね均一な縦幅(厚み)に形成している。
エ 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約3:2であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを99として、上から、約3.5:21.5:15.5:15.5:18:18:7である。
オ 全体は明暗調子で現されており、上から順に、上縁部は金属様光沢を帯びた中間明暗調子、第1層及び第2層が、中間明暗調子であって、第3層が明調子、第4層及び第5層が暗調子、第6層が明調子であり、菓子層について、明調子の層は、第3層が第6層より僅かに明るく、中間明暗調子の層は、第2層が第1層より僅かに明るく、暗調子の層は、第5層が第4層より暗い。また、菓子層全体の階調は、上から半ばまで中間明暗調子から明調子へと推移し、半ばから下方へ向けて明調子で暗調子2層を挟んで隣接したコントラストを形成している。
2 無効理由の要点
請求人が主張する本件登録意匠の登録の無効理由は、以下の5つである。
(1)本件登録意匠は、具体的な形態が特定せず、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しないものであるから無効とされるべきであるとするものである(以下、この無効理由を「無効理由1」という。)。
(2)本件登録意匠は、その出願前に公然知られた意匠である、甲第1号証の意匠(以下「引用意匠1」という。)に類似するので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、無効とされるべきであるとするものである(以下、この無効理由を「無効理由2」という。)。
(3)本件登録意匠は、引用意匠1及び甲第3号証から甲第10号証の意匠に基づいて、当業者が容易に創作することができた意匠であるので、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるから、無効とされるべきであるとするものである(以下、この無効理由を「無効理由3」という。)。
(4)本件登録意匠は、その出願前に公然知られた意匠である、甲第2号証の意匠(以下「引用意匠2」という。)に類似するので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、無効とされるべきであるとするものである(以下、この無効理由を「無効理由4」という。)。
(5)本件登録意匠は、引用意匠2及び甲第3号証から甲第10号証の意匠に基づいて、当業者が容易に創作することができた意匠であるので、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるから、無効とされるべきであるとするものである(以下、この無効理由を「無効理由5」という。)。
3 無効理由の判断
以下、甲第1号証の意匠から甲第10号証の意匠は、本件登録意匠の向きと合わせて認定を行い、また、意匠に係る物品の表記は、ハングル表記のものは、便宜上、和訳を用いる。
(1)無効理由1について
本件登録意匠が、具体的な形状が特定せず、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しないものであるか否かについて検討し、判断する。
具体的な形状が特定したものとして、意匠法第3条第1項柱書に規定に該当する意匠であるためには、願書の記載及び願書に添付した図面等から、出願された意匠の内容について、具体的に導き出すことできればよいと解されるところ、大阪地裁昭和63年12月22日判決昭和59年(ワ)第6494号において「願書及び添付図面の記載内容並びに当該意匠に係る物品の形状を総合的に勘案し、当該意匠の創作者が意図した意匠の具体的な構成がどのようなものであつたかを当業者の立場から合理的、客観的に判断し、・・・具体的に構成された統一性ある意匠を想定しうる場合には、・・・合理的に想定される意匠をもって当該登録意匠の内容をなすものと認めるのが相当である。」とあり、「合理的に想定される意匠」とは、必ずしも製品設計図面のように意匠の全体について均しく高度な正確性をもって記載されていることを要するのではなく、願書の記載及び願書に添付した図面等によって、その意匠に係る物品分野において、その物品の形態等を十分に特定し得る程度に表せていれば良いといえる。
そこで、本件登録意匠について検討すると、本願の意匠に係る物品は、前記1(1)のとおり、本件意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲については、前記1(2)のとおり明らかであり、形態についても、本件登録意匠の「意匠の説明」は「背面図、左側面図及び右側面図は正面図と同一にあらわれる」と記載しているが、上述の判決事例のとおり、意匠登録出願の図面等は、必ずしも製品設計図面のように意匠の全体について均しく高度な正確性をもって記載されていることを要するものではなく、「具体的に構成された統一性ある意匠を想定」できればよいところ、本件登録意匠についても、願書に添付の図面代用写真から、その意匠の属する分野における通常の知識に基づけば、本件意匠部分の各菓子層がおおむね均一な厚みの層をそれぞれ形成して積層されていると認め得るものであって、その形態については、前記1(3)に記載のとおりであるから、「容器付き菓子」の当該意匠登録を受けようとする部分の形態として、一の意匠を特定し得るものである。
以上のとおり、本件登録意匠は、意匠が特定できるものと認められ、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当するものである。
したがって、無効理由1によって、本件登録意匠の登録を、意匠法第48条第1項第1号に該当し、同項柱書の規定により、無効とすべき理由はない。
(2)無効理由2について
本件登録意匠は、引用意匠1(甲第1号証の意匠)に類似し、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するか否かについて検討し、判断する。
引用意匠1の意匠に係る物品は「缶ケーキ」であり、甲第1号証の掲載画像には3つの同様の「缶ケーキ」が現れているから、右端の「缶ケーキ」を引用意匠1として、形態を認定する。また、本件意匠部分と対比の対象とする引用意匠1の部分を「引用部分1」とする。
ア 引用意匠1(甲第1号証(別紙第2参照))
インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 sweets_gallery_amanda)に掲載。
掲載URL:https://www.instagram.com/p/CRpuPuZAv_5/
インターネット掲載日:令和3年(2021年)7月23日
(ア)意匠に係る物品
引用意匠1の意匠に係る物品は「缶ケーキ」である。
(イ)引用部分1の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
引用部分1は、菓子の形態を保持し、食器ともなる容器部と、嗜好品として食される菓子部からなり、片手で持てる大きさであって、上面の上縁部以外の面を除いた全体にわたる位置及び範囲である。
(ウ)引用部分1の形態
基本的構成態様
A 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、菓子層を複数層積層して封入し、上縁部以外の容器面を透明としたものである。
具体的態様
B 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端周縁部は弧状に面取りし、底面は不明である。
C 菓子層は、全部で6層であって、上から、第1層及び第3層は、粗めの礫状の素材が中央から周囲にむけて広がり、容器内壁までは達していないばらつきのある態様であって、第2層は、きめの細かい素材を充填し、上側は、略平坦で、下側は不規則に垂れて、厚みを不均一に形成し、第4層から第6層は、各々、きめの細かい素材を充填し、おおむね均一な厚みの層を形成している。
D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約3:2であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを99として、上から、約6:13.5:25:8:17.5:16.5:12.5である。
E 全体は色彩が現されており、上縁部は金属色(銀色)(中間明暗調子)で、第1層、第3層は、ムラのある茶色(暗調子)で、第2層及び第5層は略白色(明調子)で、第4層は明るいオレンジ色(中間明暗調子)で、第6層は朱色(暗調子)であり、菓子層全体の階調は、第4層を除いて、上からほぼ互い違いに明調子と暗調子が隣接したコントラストを形成している。
F 容器上の中央やや下寄りに、大きくAと、下に小さく横方向にAMANDA等の文字列を配している。
イ 引用意匠1が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて
引用意匠1については、前記アのとおり、インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 sweets_gallery_amanda)に掲載された「缶ケーキ」であって、その掲載内容中で掲載日として、「2021年7月23日」とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。
したがって、引用意匠1については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。
ウ 本件登録意匠と引用意匠1の対比
本件登録意匠については、前記1に記載のとおり、引用意匠1は前記アに記載のとおりである。
(ア)物品について
本件登録意匠は「容器付き菓子」で、引用意匠1は「缶ケーキ」であって、表記は相違するが、共に容器内に菓子を封入したものであるから、本件登録意匠と引用意匠1(本項目において、以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、同一である。
(イ)本件部分と引用部分1の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲について
本件部分と引用部分1(本項目において、以下「両部分」という。)は、菓子の形態を保持し、食器ともなる容器部と、嗜好品として食される菓子部から成り、片手で持てる大きさであって、縁部以外の開口面にあたる上面を除いた全体にわたる位置及び範囲であるから両部分の、用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は同一である。
(ウ)両部分の形態について
A 共通点
基本的構成態様について
(A)全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、菓子層を複数層積層して封入し、上縁部以外の容器面を透明としたものである点、
具体的態様について
(B)容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端周縁部は弧状に面取りしたものである点、
(C)菓子層は、全部で6層であって、第4層、第5層は、きめの細かい素材を充填し、おおむね均一な厚みの層を形成している点、
(D)全体の縦横の長さ比率は、約3:2である点、
(E)全体に明暗調子(色彩の明暗を含む。)が現れ、上縁部が金属光沢のある中間明暗調子である点
が共通する。
B 相違点
具体的態様について
(A)本件意匠部分は明暗調子のみのものであって、引用部分2は色彩が現れている点、
(B)上縁部の厚み比率について、部分全体の縦方向長さを約99として(以下、当項目において、本件意匠部分及び引用部分1の部分全体の縦方向長さは約99とする。)、本件意匠部分は約3.5であるのに対し、引用部分1は、約6である点、
(C-1)本件意匠部分の菓子層について、第1層は、きめの細かい素材を充填しておおむね均一な厚みの層を形成し、厚み比率について約21.5で、中間明暗調子であるのに対し、引用部分1は、粗めの礫状の素材が中央から周囲にむけて広がり、容器内壁までは達していないばらつきのある態様であって、厚み比率について約13.5で、暗調子でムラのある茶色である点、
(C-2)本件意匠部分の第2層は、おおむね均一な厚みの層を形成し、厚み比率について約15.5で、中間明暗調子であるのに対し、引用部分1は、上側は略平坦で、下側は不規則に垂れて、不均一な厚みに形成した態様であって、厚み比率について約25で、明調子で略白色である点、
(C-3)本件意匠部分の第3層は、きめの細かい素材を充填しておおむね均一な厚みの層を形成し、厚み比率について約15.5で、明調子であるのに対し、引用部分1は、粗めの礫状の素材が中央から周囲にむけて広がり、容器内壁までは達していないばらつきのある態様であって、厚み比率について約8で、暗調子でムラのある茶色である点、
(C-4)本件意匠部分の第4層は、厚み比率について約18で、暗調子であるのに対し、引用部分1は、厚み比率について約17.5で、中間明暗調子で明るいオレンジ色である点、
(C-5)本件意匠部分の第5層は、厚み比率について約18で、暗調子であるのに対し、引用部分1は、厚み比率について約16.5で、明調子で略白色である点、
(C-6)本件意匠部分の第6層は、粗めのざらつきのある素材で形成し、厚み比率について約7で、明調子であるのに対し、引用部分1は、きめの細かい素材を充填して形成し、厚み比率について約12.5で、暗調子で朱色である点、
(D)菓子層全体の階調について、本件意匠部分は、上から半ばまで中間明暗調子から明調子へと推移し、半ばから下方へ向けて明調子で暗調子2層を挟んで隣接したコントラストを形成しているのに対し、引用部分1は、第4層を除いて上からほぼ互い違いに明調子と暗調子の隣接するコントラストを形成している点、
(E)本件意匠部分は、底面は中央にむけて緩やかな凹部を形成し、外縁寄りに円形溝を形成しているのに対し、引用部分1の底面の態様は不明である点、
(F)引用部分1は、容器上の中央やや下寄りに、大きく「A」と、下に小さく横方向に「AMANDA」等の文字列を配しているのに対し、本件意匠部分は、配していない点、
で相違する。
エ 本件登録意匠と引用意匠1が類似するか否かの判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。
本件意匠部分及び引用部分1(本項目において、以下「両部分」という)の形態については、以下のとおり評価する。
(ア)共通点の評価
基本的構成態様としてあげた共通点(A)は、両部分の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであり、具体的態様としてあげた共通点(B)及び共通点(D)は、この種の容器付き菓子の物品分野において、飲料缶様の略有底円筒状の容器を採用した事による、自明ともいうべき態様の共通点であるから両部分の類否判断に与える影響は小さく、共通点(C)についてもこの種の容器付き菓子の物品分野において、ごく普通に見られる形態であるから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。そして、共通点(E)の上縁部が金属光沢のある中間明暗調子である点については、この種の容器付き菓子の物品分野において、ごく普通の態様であり、全体に明暗調子が現れたものである点は、図面代用写真及び画像で現されたものの、当然の態様であるといえるから、両部分の類否判断に与える影響は微弱である。
よって、共通点(A)から共通点(E)は、類否判断に与える影響がいずれも小さいものであって、共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても、両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
(イ)相違点の評価
これに対して、両部分の各相違点を見ると、本件登録意匠に係る物品である「容器付き菓子」は、菓子の購入者などを主な需要者とし、容器を食器として、スプーンなどを用いて食すものであるから、需要者は、食べやすさはもちろん、各菓子層の味わいの相違や食感などに関心を持ち、外観から観察される各層の色調や層の厚さによる量のバランスや素材感などを注目するところ、まず、相違点(C-1)から相違点(C-6)については、各菓子層の具体的態様の相違点、すなわち各菓子層の形態、層の縦方向長さ(厚さ)及び明暗調子の相違であって、両部分各層の縦方向長さ比率(厚み)及び明暗調子は、各々相違している上、特に、相違点(C-1)及び相違点(C-3)の両部分第1層及び第3層の素材や層の態様の相違は、本件意匠部分は、きめの細かい素材が容器内径いっぱい充填した態様から、詰まった、なめらかな視覚的印象を与えるのに対し、引用部分1は、容器内壁まで達さず、粗く礫状でばらつきのある態様から、まばらでゴツゴツした固い視覚的印象を与えるから、需要者に両部分は別異のものであるとの印象を与え、相違点(C-6)の第6層の素材感の相違も相まって、これらが両部分の類否判断に与える影響は極めて大きい。次に、相違点(D)の菓子層全体の階調については、上から半ばまでを中間明暗調子から明調子への穏やかなグラデーションとし、半ばから下方へ向けて明調子で暗調子2層を挟んで隣接した強いコントラスト(明、暗、暗、明)を形成した本件意匠部分と、第4層を除いて、明調子と暗調子をほぼ交互に配し、明調子と暗調子の強いコントラストを第4層より上部(暗、明、暗)と下部(明、暗)にバランス良く配した、引用意匠1とでは、部分全体の明暗調子の印象も明らかに異なるものであって、この点も両部分の類否判断に与える影響は極めて大きい。そして、相違点(A)の明暗調子のみで表したものか色彩を現したものかの点は、出願に際し、色彩を表さない図面代用写真としたものか、実製品の色彩が現れた画像であるかの相違であって、双方ともにありふれた態様であって、相違点(B)の上縁部の厚み比率の相違についても、さほど需要者も注目しない上縁部の厚み比率の多少の相違であり、相違点(E)は、底面側の目につかない部分の、この種容器付き菓子の物品分野において、よく見られる形態の有無の相違であって、これらの両部分の類否判断に与える影響は小さく、相違点(F)の引用部分1が容器上の中央やや下寄りに、大きく「A」と、下に小さく横方向に「AMANDA」等の文字列を配しているのに対し、本件意匠部分は、配していない点は、実製品に店名や商品名のロゴなどの文字を施すことは、ごく普通に行われており、これらの文字列等の有無が両部分の類否判断に与える影響は小さい。
そうすると、相違点(A)、相違点(B)相違点(E)及び相違点(F)が両部分の類否判断に与える影響は小さく、相違点(C-1)から相違点(C-6)及び相違点(D)は両部分の類否判断に与える影響が極めて大きく、総合すると、相違点が総じて両部分類否判断に与える影響は大きく、共通点は両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対し、相違点は、共通点を凌駕して、両部分を別異のものと印象づけるものであるから本件意匠部分が引用部分1に類似するということはできない。
オ 小括
以上のとおり、両部分の相違点が共通点を凌駕し、両部分は類似するものではない。
そうすると、前記イのとおり、引用意匠1は本件登録意匠の出願前に公然知られたものであると認められ、意匠に係る物品も同一であって、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲についても同一であるが、形態について、両部分は類似しないから、本件登録意匠は、引用意匠1に類似する意匠ということはできない。
したがって、無効理由2によって、本件登録意匠の登録を、意匠法第48条第1項第1号に該当し同項柱書の規定によって、無効とすべき理由はない。
(3)無効理由3について
本件登録意匠が、引用意匠1及び甲第3号証から甲第10号証の意匠に基づいて、本件登録意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合について容易に創作することができたものであるか否かについて検討し、判断する。
本件登録意匠は、前記1に記載のとおりであって、引用意匠1は、前記(2)ア(ア)から(ウ)のとおり、甲第3号証から甲第10号証の意匠は以下のとおりである。
ア 甲第3号証(別紙第4参照)
甲第3号証の意匠(以下「甲3意匠」という。)
インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 sweets_gallery_amanda)に掲載。
掲載URL:https://www.instagram.com/p/CRH45cIgNIn/
インターネット掲載日:令和3年(2021年)7月10日
(ア)意匠に係る物品
甲3意匠の意匠に係る物品は「缶ケーキ」である。
(イ)甲3意匠の形態
基本的構成態様
A 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、プルタブ型の蓋付きの上縁部を形成して、菓子層を複数層積層して封入し、蓋付きの上縁部以外の容器面を透明としたものである。
具体的態様
B 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端周縁部は弧状に面取りし、底面は不明である。
C 菓子層は、全部で6層であって、上から、第1層及び第3層は、粗めの礫状の素材が中央から周囲にむけて広がり、容器内壁までは達していないばらつきのある態様であって、第2層は、きめの細かい素材を充填し、上側は、略平坦で、下側は不規則に垂れて、厚みを不均一に形成し、第4層から第6層は、各々、きめの細かい素材を充填し、おおむね均一な厚みの層を形成している。
D 縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約3:2であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、約6.5:7.5:22:8.5:18.5:6.5:29.5である。
E 全体は色彩が現されており、上縁部は金属色(銀色)で(中間明暗調子)、第1層、第3層はムラのある茶色(暗調子)が現れ、第2層及び第6層は略白色(明調子)で、第4層はムラのある黄みがかった赤色で(暗めの中間明暗調子)で、第5層はくすんだ濃い桃色(暗調子)であり、暗調子の層では、第1層、第3層が第5層より暗い。菓子層全体の階調は、第4層を除いて、上からほぼ互い違いに明調子と暗調子が隣接したコントラストを形成している。
(ウ)甲3意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて
甲3意匠については、前記のとおり、インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 sweets_gallery_amanda)に掲載された「缶ケーキ」であって、その掲載内容中で掲載日として、2021年7月10日」とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。
よって、甲3意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。
イ 甲第4号証(別紙第5参照)
甲第4号証の意匠(以下「甲4意匠」という。)
インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 sweets_gallery_amanda)に掲載。
掲載URL:https://www.instagram.com/p/CSAgH4YBEDp/
インターネット掲載日:令和3年(2021年)8月1日
(ア)意匠に係る物品
甲4意匠の意匠に係る物品は「缶ケーキ」である。
(イ)甲4意匠の形態
基本的構成態様
A 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、プルタブ型の蓋付きの上縁部を形成して、菓子層を複数層積層して封入し、蓋付きの上縁部以外の容器面を透明としたものである。
具体的態様
B 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端周縁部は弧状に面取りし、底面は不明である。
C 菓子層は、全部で6層であって、上から、第1層及び第3層は、粗めの礫状の素材が中央から周囲にむけて広がり、容器内壁までは達していないばらつきのある態様であって、第2層は、きめの細かい素材を充填し、上側は、略平坦で、下側は不規則に垂れて、厚みを不均一に形成し、第4層から第6層は、各々、きめの細かい素材を充填し、おおむね均一な厚みの層を形成している。
D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約3:2であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを99として、上から、約5.5:9:22.5:9:20:17:16である。
E 全体は色彩が現されており、上縁部は金属色(銀色)(中間明暗調子)で、第1層、第3層はムラのある茶色(暗調子)で、第2層及び第5層は略白色(明調子)で、第4層は濃いオレンジ色(暗めの中間明暗調子)で、第6層は赤色(暗調子)であり、菓子層全体の階調は、第4層を除いて、上からほぼ互い違いに明調子と暗調子が隣接したコントラストを形成している。
F 容器上の右側、中央やや下寄りに、大きく「A」と、下に小さく横方向に文字列を配している。
(ウ)甲4意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて
甲4意匠については、前記のとおり、インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 sweets_gallery_amanda)に掲載された「缶ケーキ」であって、その掲載内容中で掲載日として、2021年8月1日」とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。
よって、甲4意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。
ウ 甲第5号証(別紙第6参照)
甲第5号証の意匠(以下「甲5意匠」という。)
インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 sweets_gallery_amanda)に掲載。
掲載URL: https://www.instagram.com/p/CRXscIQgC9I/
インターネット掲載日:令和3年(2021年)7月16日
(ア)意匠に係る物品
甲5意匠の意匠に係る物品は「缶ケーキ」である。
(イ)甲5意匠の形態
基本的構成態様
A 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、プルタブ型の蓋付きの上縁部を形成して、菓子層を複数層積層して封入し、蓋付きの上縁部以外の容器面を透明としたものである。
具体的態様
B 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端周縁部は弧状に面取りし、底面は不明である。
C 菓子層は、全部で6層であって、上から、第1層及び第3層は、粗めの礫状の素材が中央から周囲にむけて広がり、容器内壁までは達していないばらつきのある態様であって、第2層は、きめの細かい素材を充填し、上側は、略平坦で、下側は不規則に垂れて、厚みを不均一に形成し、第4層から第6層は、各々、きめの細かい素材を充填し、おおむね均一な厚みの層を形成している。
D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約3:2であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを99として、上から、約6:13.5:25:8:17.5:16.5:12.5である。
E 全体は色彩が現されており、上縁部は金属色(銀色)(中間明暗調子)で、第1層及び第3層はムラのある明るめの茶色(暗めの中間明暗調子)で、第2層及び第6層が略白色(明調子)で、第4層はムラのある黄味がかった赤色(暗めの中間明暗調子)で、第5層はくすんだ濃い桃色(中間明暗調子)であり、暗めの中間明暗調子の層のうち、第1層及び第3層よりも第4層が暗い。菓子層全体の階調は、第5層を除き、上からほぼ互い違いに暗めの中間明暗調子と明調子を配し、明調子と暗めの中間明暗調子が隣接したコントラストが現れている。
(ウ)甲5意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて
甲5意匠については、前記のとおり、インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 sweets_gallery_amanda)に掲載された「缶ケーキ」であって、その掲載内容中で掲載日として、2021年7月16日」とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。
よって、甲5意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。
エ 甲第6号証(別紙第7参照)
甲第6号証の意匠(以下「甲6意匠」という。)
インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 sweets_gallery_amanda)に掲載。
掲載URL:https://www.instagram.com/p/CRNzetbgjac/
インターネット掲載日:令和3年(2021年)7月12日
(ア)意匠に係る物品
甲6意匠の意匠に係る物品は「缶ケーキ」である。
(イ)甲6意匠の形態
基本的構成態様
A 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、プルタブ型の蓋付きの上縁部を形成して、菓子層を複数層積層して封入し、蓋付きの上縁部以外の容器面を透明としたものである。
具体的態様
B 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端周縁部は弧状に面取りし、底面は不明である。
C 菓子層は、全部で5層であって、上から、第1層及び第3層は、粗めの礫状の素材が中央から周囲にむけて広がり、容器内壁までは達していないばらつきのある態様であって、第2層は、きめの細かい素材を充填し、上側は、略平坦で、下側は不規則に垂れて、厚みを不均一に形成し、第4層及び第5層は、各々、きめの細かい素材を充填し、おおむね均一な厚みの層を形成している。
D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約3:2であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを99として、上から、約8.5:9.5:17.5:15.5:21:27である。
E 全体は色彩が現されており、上縁部は金属色(銀色)(中間明暗調子)で、第1層、第3層は、ムラのある茶色(暗調子)で、第2層及び第5層は略白色(明調子)で、第4層はムラのあるくすんだ桃色(暗い中間明暗調子)で、第4層内にさらに層があるかは判然としない。菓子層全体の階調は、第4層を除いて、明調子と暗調子が隣接したコントラストを形成している。
(ウ)甲6意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて
甲6意匠については、前記エのとおり、インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 sweets_gallery_amanda)に掲載された「缶ケーキ」であって、その掲載内容中で掲載日として、2021年7月12日」とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。
よって、甲6意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。
オ 甲第7号証(別紙第8参照)
甲第7号証の意匠(以下「甲7意匠」という。)
インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 blessroll_pyeongtaek)の左から1つめに掲載。
掲載URL:https://www.instagram.com/blessroll_pyeongtaek/から抜粋。
インターネット掲載日:令和2年(2020年)8月30日
(ア)意匠に係る物品
甲7意匠のインスタグラムは韓国のアカウントであり、当該記事は、ハングル表記であって、その記載を和訳すると「虹スムージー」とある。スムージーとは一般的に凍らせた果物や野菜をミキサーでジュースにした飲料等を指すが、飲料即液体であるならば、液体部分は、固有の形態等を有していないものとして、意匠法上の物品とは認められないところ、本件において、甲7意匠を見る限り、ある程度、形態を持続的に保つものとも認められるから、甲7意匠の意匠に係る物品を仮に「缶入り菓子」とする。
(イ)甲7意匠の形態
基本的構成態様
A 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、プルタブ型の蓋付きの上縁部を形成して、菓子層を複数層積層して封入し、蓋付きの上縁部以外の容器面を透明としたものである。
具体的態様
B 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端周縁部は弧状に面取りし、底面は不明である。
C 菓子層は、全部で9層であって、各々、きめの細かい素材を充填し、上下面は不規則に波打ち、不均一な厚みの層を形成している。
D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約2:1であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを132として、約5.5:10.5:13.5:6:27.5:8.5:20:15.5:14.5:10.5である。
E 全体は色彩が現されており、上縁部は金属色(銀色)(中間明暗調子)で、第1層、第3層、第5層、第7層及び第9層は、略白色(明調子)で、第3層には第2層が被さり、略白色に黄緑色がまだらになっており、第2層は暗点の混じる黄緑色(中間明暗調子)で、第4層は明るいオレンジ色(中間明暗調子)で、第6層は赤紫色(暗調子)、第8層は赤色(暗調子)であり、菓子層について、中間明暗調子の層は、第4層が第2層より僅かに明るく、暗調子の層は、第6層が第8層より暗い。菓子層全体の階調は、上から互い違いに明調子と中間明暗調子もしくは暗調子を配し、下方に明調子と暗調子の隣接したコントラストを形成している。
F 容器上の中央やや下寄りに、大きく「B」と、下に小さく横方向に「cafe BlessRoll」等の文字列を配し、周囲を大きく二重の円で囲っている。
(ウ)甲7意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて
甲7意匠については、前記のとおり、インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 blessroll_pyeongtaek)に掲載されたものであって、その掲載内容中で掲載日として、2020年8月30日とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。
よって、甲7意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。
カ 甲第8号証(別紙第9参照)
甲第8号証の意匠(以下「甲8意匠」という。)
インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 blessroll_pyeongtaek)に右から1つめに掲載された缶入りの食品の意匠。
掲載URL:https://www.instagram.com/blessroll_pyeongtaek/から抜粋。
インターネット掲載日:令和2年(2020年)7月16日
(ア)意匠に係る物品
甲8意匠のインスタグラムは韓国のアカウントであり、当該記事は、ハングル表記であって、その和訳に当該缶入りの製品に相当するとおぼしき記載はない。ただし、同種とおぼしき製品を掲載した前記甲7意匠を参照し、本件において、甲8意匠を見る限り、ある程度、形態を持続的に保つものとも認められることから、甲8意匠の意匠に係る物品を仮に「缶入り菓子」として以下に認定する。
(イ)甲8意匠の形態
基本的構成態様
A 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、プルタブ型の蓋付きの上縁部を形成して、菓子層を複数層積層して封入し、蓋付きの上縁部以外の容器面を透明としたものである。
具体的態様
B 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端周縁部は弧状に面取りし、底面は不明である。
C 菓子層は、全部で9層であって、各々、きめの細かい素材を充填し、上下面は不規則に波打ち、不均一な厚みの層を形成している。
D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は約2:1であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを132として、約4:12:10:27:17:21:16:4:11:10である。
E 全体は色彩が現されており、上縁部は金属色(銀色)(中間明暗調子)で、第1層、第3層、第5層、第7層及び第9層は、略白色(明調子)で、第7層には第6層が被さり、略白色に赤紫色がまだらになっており、第2層は暗点の混じる黄緑色(中間明暗調子)で、第4層は明るいオレンジ色(中間明暗調子)で、第6層は赤紫色(暗調子)で、第8層は赤色(暗調子)であり、菓子層について、中間明暗調子の層は、第4層が第2層より僅かに明るく、暗調子の層は、第6層が第8層より暗い。菓子層全体の階調は、上から互い違いに明調子と中間明暗調子もしくは暗調子を配し、下方に明調子と暗調子の隣接したコントラストを形成している。(第5層目と第6層目、第8層目と第9層目が顕著)
F 容器上の中央やや下寄りに、大きく「B」と、下に小さく横方向に「cafe BlessRoll」等の文字列を配し、周囲を大きく二重の円で囲っている。
(ウ)甲8意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて
甲8意匠については、前記のとおり、インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 blessroll_pyeongtaek)に掲載されたものであって、その掲載内容中で掲載日として、2020年7月16日とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。
よって、甲8意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。
キ 甲第9号証(別紙第10参照)
甲第9号証の意匠(以下「甲9意匠」という。)
インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 blessroll_pyeongtaek)に右から1つめに掲載された缶入りの食品の意匠。
掲載URL:https://www.instagram.com/blessroll_pyeongtaek/から抜粋。
インターネット掲載日:令和1年(2019年)5月14日
(ア)意匠に係る物品
甲9意匠のインスタグラムは韓国のアカウントであり、当該記事は、ハングル表記であって、その和訳に当該缶入りの製品に相当するとおぼしき記載はない。ただし、同種とおぼしき製品を掲載した前記甲7意匠を参照し、本件において、甲9意匠を見る限り、ある程度、形態を持続的に保つものとも認められることから、甲9意匠の意匠に係る物品を仮に「缶入り菓子」として以下に認定する。
(イ)甲9意匠の形態
基本的構成態様
A 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、菓子層を複数層積層して封入し、上縁部以外の容器面を透明としたものである。
具体的態様
B 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端側は丸みを帯びた略逆等脚台形状のブロック様の凸部を複数個形成し、底面は不明である。
C 菓子層は、全部で9層であって、各々、きめの細かい素材を充填し、上下面は不規則に波打ち、不均一な厚みの層を形成している。
D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約4.5:2であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを151として、約3:12:10:27:17:21:16:4:11:10である。
E 全体は色彩が現されており、上縁部は金属色(銀色)(中間明暗調子)で、第1層、第3層、第5層、第7層及び第9層は、略白色(明調子)で、第2層はムラのある黄緑色(中間明暗調子)で、第4層は黄色で(中間明暗調子)、第6層は赤紫色(暗調子)で、第8層は赤色(暗調子)であり、菓子層について、中間明暗調子の層は、第4層が第2層より僅かに明るく、暗調子の層は、第6層が第8層より暗い。菓子層全体の階調は、上から互い違いに明調子と中間明暗調子もしくは暗調子を配し、下方に明調子と暗調子の隣接したコントラストを形成している。
F 容器上の中央やや下寄りに、大きく「B」と、下に小さく横方向に「cafe BlessRoll」等の文字列を配し、周囲を大きく二重の円で囲っている。
(ウ)甲9意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて
甲9意匠については、前記のとおり、インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 blessroll_pyeongtaek)に掲載されたものであって、その掲載内容中で掲載日として、2019年5月14日とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。
よって、甲9意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。
ク 甲第10号証(別紙第11参照)
甲第10号証の意匠(以下「甲10意匠」という。)
インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 gossinecake)に掲載。
掲載URL:https://www.instagram.com/p/B3vnsqgHYzu/?igshid=YmMyMTA2M2Y%3D
インターネット掲載日:令和1年(2019年)10月18日
(ア)意匠に係る物品
甲10意匠の意匠に係る物品は「缶ケーキ」である。
(イ)甲10意匠の形態
基本的構成態様
A 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器にプルタブ型の蓋付きの上縁部を形成して、菓子層を複数層積層して封入し、蓋付きの上縁部以外の容器面を透明としたものである。
具体的態様
B 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端側は丸みを帯びた略逆等脚台形状のブロック様の凸部を複数個形成し、底面は不明である。
C 菓子層は、全部で10層であって、正面図から、第1層は、細かくざらついた素材を薄く容器内壁手前まで配した態様であって、第2層、第4層、第6層、第8層及び第10層は、各々、きめの細かい素材を充填し、上下面は不規則に波打ち、不均一な厚みの層を形成し第3層、第5層、第7層やや粗めの素材を充填して不均一な厚みの層を形成し、第9層はやや粗めの素材を充填してほぼ均一な厚みの層を形成したものである。
D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は、約6.5:4であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、約5.5:1:16:10.5:17:5.5:10.5:7.5:14.5:6.5:12.5である。
E 全体は色彩が現されており、上縁部は金属色(銀色)(中間明暗調子)で、第1層は、略焦げ茶色(暗調子)で、第2層、第4層、第6層、第8層及び第10層が略白色(明調子)で、第3層、第5層、第7層及び第9層は略ムラのある茶色(暗調子)に現れている。暗調子の層のうち、第1層が最も暗く、菓子層全体の階調は、上から互い違いに明調子と暗調子の隣接したコントラストを形成している。
F 容器上の中央やや下寄りに、大きくピンクのハートと短円柱形、下に小さく横方向にハングル文字を配し、周囲を大きく緑色の草花柄で円形状に囲っている。
(ウ)甲10意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて
甲10意匠については、前記のとおり、インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 gossinecake)に掲載された「缶ケーキ」であって、その掲載内容中で掲載日として、「2019年10月18日」とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。
よって、甲10意匠については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。
ケ 創作非容易性の判断
まず、本件意匠部分の形態のうち、透明な略有底円筒状の容器に、複数の菓子層を積層して封入したものとすることは、容器付き菓子の物品分野において、ごく普通というべき形態であって、次に、容器の上縁寄り上方の周面を中胴より一周り小径に絞って形成し、上縁部は巻き締めて側面視で短く立設し、下端側角部は丸みを帯びた飲料缶様としたものも格別特徴的な形態とはいえず、ごく普通に見受けられるものであり、全体を明暗調子のみから成るものとし、ロゴなど文字を設けないものとすることも、特段の創作を要するものではなく、6層の菓子層から成るものとすることも、「容器付き菓子」の物品分野における当業者においては、格別の困難を要さず、公然知られた意匠などに基づいて、容易に創作することができたものと認められる(例えば、公然知られた形態の参考例として、後記、甲3意匠から甲5意匠)。
そして、各菓子層の態様について見ると、おおむね均一な厚みの菓子層を形成すること、きめの細かい素材を用いて、種々の明暗調子の菓子層を形成することも、様々な菓子層を積層して形成する菓子類(複数の素材を重ねて作成する、ケーキやグラススイーツや冷菓など)において、ありふれた手法といい得るから、当業者においては、想到するのに困難を要したということはできず、各層の縦方向の長さ比率に若干の変更を加えることも、また、当業者であれば、容易に想到できるものと認められる。
しかしながら、本件意匠部分の具体的な各層の構成態様である、上から半ばまで中間明暗調子が明調子へと推移する穏やかなグラデーションを形成し、半ばから下方へ向けて明調子で暗調子2層を挟んで隣接した強いコントラストが第3層と第4層及び第5層と第6層に現れた態様(明、暗、暗、明)、及び第6層もしくは、最下層に粗めのざらつきのある素材から成る明調子の層を設けたものは、甲3意匠から甲10意匠のいずれにも現れていない。
そうすると、引用部分1の形態に基づいて、明暗調子のみから成るものとし、ロゴなど文字を設けず、各層の形態をきめの細かい素材を用いておおむね均一な厚みのものとし、各層の縦方向長さに多少の変更を加えるなどしても、上記態様が現されていないこれらの意匠から本件意匠部分の形態を具体的に創出することは、極めて困難であると言わざるを得ず、上記、本件意匠部分のような形態とすることが、ありふれた手法であるとする証拠もない。
したがって、引用部分1及び甲3意匠から甲10意匠の形態を組み合わせて、本件意匠部分の形態が容易に創作できたということはできない。
コ 小括
以上のとおり、本件登録意匠が、引用部分1に基づいて甲3意匠から甲10意匠に見られる公知形態に基づいて容易に創作することができた意匠とはいえず、意匠法第3条第2項に該当するということはできない。
したがって、無効理由3によって、本件登録意匠の登録を、意匠法第48条第1項第1号に該当し、同項の規定によって、無効とすべき理由はない。
(4)無効理由4について
本件登録意匠は、引用意匠2(甲第2号証の意匠)に類似し、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するか否かについて検討し、判断する。
甲第2号証の掲載画像には2つの同様の製品(が現れているから、最も左のものを引用意匠2として、形態等を認定する。また、本件意匠部分と対比の対象とする引用意匠2の部分を「引用部分2」とする。
具体的には以下のとおりである。
ア 引用意匠2(甲第2号証(別紙第3参照))
インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 blessroll_pyeongtaek)に掲載。
掲載URL:https://www.instagram.com/blessroll_pyeongtaek/
インターネット掲載日:令和2年(2020年)8月31日
(ア)意匠に係る物品
引用意匠2の掲載されたインスタグラムは韓国のアカウントであり、当該記事は、ハングル表記であって、その和訳に当該缶入りの食品に相当するとおぼしき記載はない。ただし、同種とおぼしき製品を掲載した甲第7号証の記載には「虹スムージー」との記載がある。
スムージーとは一般的に凍らせた果物や野菜をミキサーでジュースにした飲料を指すが、飲料即液体であるならば、液体部分は、固有の形態等を有していないものとして、意匠法上の物品とは認められない。
しかしながら、本件において、引用意匠2を見る限り、ある程度、形態を持続的に保つものとも認められるから、引用意匠2の意匠に係る物品を仮に「缶入り菓子」として以下に認定する。
(イ)引用部分2の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
引用部分2は、菓子の形態を保持し、食器ともなる容器部と、嗜好品として食される菓子部からなり、片手で持てる大きさであって、上面の上縁部以外の面を除いた全体にわたる位置及び範囲である。
本件登録意匠は、引用意匠2に類似し、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するか否かについて検討し、判断する。
また、本件意匠部分と対比の対象とする引用部分2の部分を「引用部分2」とする。
(ウ)引用部分2の形態
基本的構成態様
A 全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、菓子層を複数層積層して封入し、上縁部以外の容器面を透明としたものである。
具体的態様
B 容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端周縁部は弧状に面取りし、底面は不明である。
C 菓子層は、全部で9層であって、第1層は下側が不規則に波打ち、第2層から第8層までは、上下面が不規則に波打ち、第9層は略均一な厚みの層を形成して、きめの細かい素材を充填して成るものである。
D 全体の縦(高さ)横(径)の長さ比率は約2:1であって、上縁部及び各菓子層の縦方向長さ(厚み)の比率は、全体の高さを132として、約6.5:13:13:10.5:32:13:20:13:20:20である。
E 意匠全体は色彩が現されており、上縁部は金属色(銀色)(中間明暗調子)で、第1層、第3層、第5層、第7層及び第9層は、略白色(明調子)で、第2層がムラのある黄緑色(中間明暗調子)で、第4層は黄色で(中間明暗調子)、第6層は赤紫色(暗調子)で、第8層は赤色(暗調子)であり、菓子層について、中間明暗調子の層は、第4層が第2層より僅かに明るく、暗調子の層は、第6層が第8層より暗い。菓子層全体の階調は、上から互い違いに明調子と中間明暗調子もしくは暗調子を配し、下方(第5層から第9層)に交互に明調子と暗調子の隣接したコントラストを形成している。
F 容器上の中央やや下寄りに、大きく「B」と、下に小さく横方向に「cafe BlessRoll」等と文字列を配し、周囲を大きく二重の円で囲っている。
イ 引用部分2が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて
引用部分2については、前記アのとおり、インターネット上で動画や写真などを投稿するコミュニティサイトであるインスタグラム(アカウント名 blessroll_pyeongtaek)に掲載されたものであって、その掲載内容中で掲載日として、2020年8月31日」とされており、この記載によって、少なくとも当該掲載年月日には記事の投稿が行われたと認められる。
よって、引用部分2については、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであると認められる。
ウ 本件登録意匠と引用意匠2の対比
本件登録意匠については、前記1に記載のとおり、引用意匠2については、前記アのとおりである。
(ア)物品について
本件登録意匠は「容器付き菓子」であって、引用意匠2は「缶入り菓子」であって、表記は相違するが、共に容器内に菓子を封入したものであるから、本件登録意匠と引用意匠2(本項目において、以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、同一である。
(イ)本件部分と引用部分2の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲について
本件部分と引用部分2(本項目において、以下「両部分」という。)は、菓子の形態を保持し、食器ともなる容器部と、嗜好品として食される菓子部から成り、長めであるが片手で持てる大きさであって、縁部以外の開口面にあたる上面を除いた全体に亘る位置及び範囲であるから両部分の、用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は同一である。
(ウ)両部分の形態について
A 共通点
基本的構成態様について
(A)全体は、飲料缶様の略有底円筒状の容器に、複数の菓子層を積層して封入し、縁部以外の容器面を透明としたものである点、
具体的態様について
(B)容器の上端寄りの周面を中胴より一周り小径に絞ってさじ面状に形成し、上縁部は巻き締めて短く立設し、下端周縁部は弧状に面取りしたものである点、
(C)菓子層は、複数層亘り、きめの細かい素材を充填したものである点、
(D)全体に明暗調子が現れており、上縁部が金属光沢のある中間明暗調子である点、
(E)菓子層の第2層が中間明暗調子であって、第3層が明調子であり、最下層が明調子のものである点、
で共通する。
B 相違点
具体的態様について
(A)本件意匠部分は明暗調子のみのものであって、引用部分2は色彩が現れている点、
(B)本件意匠部分は、全体の縦横の長さ比率は、約3:2で菓子層は6層であるのに対し、引用部分2は約2:1であって、引用意匠2の方が本願意匠部分の約1.33倍、縦長のものであり、菓子層は9層である点、
(C)上縁部の厚み比率について、部分全体の縦方向長さを約99として(以下、当項目において、本件意匠部分の部分全体の縦方向長さは約99とする。)、本件意匠部分は約3.5であるのに対し、引用部分2は部分全体の縦方向長さを約132として(引用意匠2の方が本願意匠部分の約1.33倍であるから、以下、当項目において、引用部分2の部分全体の縦方向長さは約132とする。)、約5.5である点、
(D-1)本件意匠部分の菓子層について、第1層は、おおむね均一な厚みの層を形成し、厚み比率について約21.5で、中間明暗調子であるのに対し、引用部分2は、下側が不規則に波打ちつつ、不均一な厚みの層を形成し、厚み比率について約11で、明調子で略白色である点、
(D-2)本件意匠部分の第2層は、おおむね均一な厚みの層を形成し、厚み比率について約15.5で、中間明暗調子であるのに対し、引用部分2は、上側は略平坦で、不均一な厚みに形成した態様であって、厚み比率について約11で、中間明暗調子でムラのある黄緑色である点、
(D-3)本件意匠部分の第3層は、おおむね均一な厚みの層を形成し、厚み比率について約15.5で、明調子であるのに対し、引用部分2は、不規則に波打ちつつ、不均一な厚みの層を形成し、厚み比率について約8.5で、明調子で略白色である点、
(D-4)本件意匠部分の第4層は、おおむね均一な厚みの層を形成し、厚み比率について約18で、暗調子であるのに対し、引用部分2は、不規則に波打ちつつ、不均一な厚みの層を形成し、厚み比率について約26で、中間明暗調子で明るいオレンジ色である点、
(D-5)本件意匠部分の第5層は、おおむね均一な厚みの層を形成し、厚み比率について約18で、暗調子であるのに対し、引用部分2は、不規則に波打ちつつ、不均一な厚みの層を形成し、厚み比率について約11で、明調子で略白色である点、
(D-6)本件意匠部分の第6層は、粗めのざらつきのある素材でおおむね均一な厚みの層を形成し、厚み比率について約7で、明調子であるのに対し、引用部分2は、きめの細かい素材を充填して不規則に波打ちつつ、不均一な厚みの層を形成し、厚み比率について約16で、暗調子で赤紫色である点、
(E)菓子層全体の階調について、本件意匠部分は、上から半ばまで中間明暗調子から明調子へと推移し、半ばから下方へ向けて明調子で暗調子2層を挟んで隣接したコントラストを形成しているのに対し、引用部分2は、第4層を除いて上からほぼ互い違いに明調子と暗調子の隣接するコントラストを形成している点、
(F)本件意匠部分は、底面は中央にむけて緩やかな凹部を形成し、外縁寄りに円形溝を形成しているのに対し、引用部分2の底面は現れておらず、その態様は不明である点、
(G)引用部分2は、容器上の中央やや下寄りに、大きく「B」と、下に小さく横方向に「cafe BlessRoll」等と文字列を配し、周囲を大きく二重の円で囲っているのに対し、本件意匠部分は、文字や図形などは配していない点、
で相違する。
エ 本件登録意匠と引用意匠2が類似するか否かの判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。
本件意匠部分及び引用部分2(本項目において、以下「両部分」という)の形態については、以下のとおり評価する。
(ア)共通点の評価
基本的構成態様としてあげた共通点(A)は、両部分の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであり、具体的態様としてあげた共通点(B)は、この種の容器付き菓子の物品分野において、飲料缶様の略有底円筒状の容器を採用した事による、自明ともいうべき態様の共通点であるから両部分の類否判断に与える影響は小さく、共通点(C)及び(E)は、この種の容器付き菓子の物品分野においてごく普通に見られる態様であって、後述の各菓子層の態様の相違がある中での部分的な共通点にすぎず、両部分の類否判断に与える影響は小さい。そして、共通点(D)の上縁部が金属光沢のある中間明暗調子である点については、この種の容器付き菓子の物品分野において、ごく普通の態様であり、全体に明暗調子が現れたものである点は、図面代用写真及び画像で現されたものの、当然の態様であるといえるから、両部分の類否判断に与える影響は微弱である。
よって、共通点(A)から共通点(E)は、類否判断に与える影響がいずれも小さいものであって、共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても、両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
(イ)相違点の評価
これに対して、両部分の各相違点を見ると、本件登録意匠に係る物品である「容器付き菓子」は、菓子の購入者などを主な需要者とし、容器を食器として用いて食すものであるから、需要者は、食べやすさはもちろん、各菓子層の味わいの相違や食感などに関心を持ち、外観から観察される各層の色調や層の厚さによる量のバランスや素材感などを注目するところ、相違点(B)は、容器付き菓子自体の縦方向の大きさの相違に関するものであって、飲料缶としては、よく見受けられる大きさであるとしても、容器付き菓子の物品分野においては1.33倍の高さの相違は、内容物の食べやすさ等にも影響を及ぼすから、需要者の関心を引くものであり、菓子層について、6層のものであるか、9層のものであるかは、一見して明らかな相違でもあるから、両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。相違点(D-1)から(D-6)については、各菓子層の具体的態様の相違点、すなわち各菓子層の形態、層の縦方向長さ(厚さ)及び明暗調子の相違であって、両部分各層の縦方向長さ比率(厚み)は、各々相違し、各層の態様の一致するものはなく、おおむね均一な厚みの層を形成したものか、不規則に波打ちつつ、不均一な厚みの層を形成したものかの点についても一見して看取できる相違であって、相違点(D-6)の第6層の素材感の相違も相まって、これらが両部分の類否判断に与える影響は極めて大きく、相違点(E)の菓子層全体の階調について上から半ばまでを中間明暗調子から明調子への穏やかなグラデーションとし、半ばから下の層に明調子で暗調子2層を挟んで隣接した強いコントラスト(明、暗、暗、明)を形成した本件意匠部分と、明調子と中間明暗調子及び暗調子を交互に配し、明調子と暗調子の隣接した強いコントラストを下寄りの第5層から第9層にかけて交互に(明、暗、明、暗、明)配した引用意匠2とでは、部分全体の明暗調子の印象も明らかに異なるものであって、これらが両部分の類否判断に与える影響は極めて大きい。そして、相違点(A)の明暗調子のみで表したものか色彩を現したものかの点は、出願に際し、色彩を表さない図面代用写真としたものか、実製品の色彩が現れた画像であるかの相違であり、双方ともにありふれた態様であって、相違点(C)は、さほど需要者も注目しない上縁部の厚み比率の多少の相違であり、相違点(F)は、底面側の目につかない部分の、この種容器付き菓子の物品分野において、よく見られる形態の有無の相違であって、これらの両部分の類否判断に与える影響は小さく、相違点(G)の引用部分2が容器上の中央やや下寄りに、大きく「B」と、下に小さく横方向に「cafe BlessRoll」等と文字を配し、周囲を大きく二重の円で囲っているのに対し、本件意匠部分は、配していない点は、実製品に店名や商品名のロゴなどの文字を施すことは、ごく普通に行われており、配していない点は、実製品に店名や商品名のロゴなどの文字を施すことは、ごく普通に行われており、これらの文字列等の有無が両部分の類否判断に与える影響は小さい。
そうすると、相違点(A)、相違点(C)、相違点(F)及び相違点(G)が両部分の類否判断に与える影響は小さいとしても、相違点(B)の両部分の類否判断に与える影響は大きく、相違点(D-1)から(D-6)及び相違点(E)は両部分の類否判断に与える影響が極めて大きく、総合すると、相違点が総じて両部分類否判断に与える影響は大きく、共通点は両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対し、相違点は、共通点を凌駕して、両部分を別異のものと印象づけるものであるから本件意匠部分が引用部分2に類似するということはできない。
オ 小括
以上のとおり、両部分の相違点が共通点を凌駕し、両部分は類似するものではない。
そうすると、前記イのとおり、引用意匠2は本件登録意匠の出願前に公然知られたものであると認められ、意匠に係る物品も同一であって、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲についても同一であるが、形態について、両部分は類似しないから、本件登録意匠は、引用意匠2に類似する意匠ということはできない。
したがって、無効理由4によって、本件登録意匠の登録を、意匠法第48条第1項第1号に該当し同項柱書の規定によって、無効とすべき理由はない。
(5)無効理由5について
本件登録意匠が引用意匠2及び甲3意匠から甲10意匠に基づき、当業者が、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合について容易に創作することができたものであるか否かについて検討し、判断する。
本件登録意匠は、前記1に記載のとおり、引用意匠2は、前記(2)ア(ア)から(ウ)に記載のとおり、甲3意匠から甲10意匠は、(3)アからクのとおりである。
ア 創作非容易性の判断
まず、本件意匠部分の形態のうち、透明な略有底円筒状の容器に、複数の菓子層を積層して封入したものとすることは、容器付き菓子の物品分野において、ごく普通というべき形態であって、次に、上縁寄り上方の周面を中胴より一周り小径に絞って形成し、上縁部は巻き締めて側面視で短く立設し、下端側角部は丸みを帯びた飲料缶様のものも格別特徴的な形態とはいえず、ごく普通に見受けられるものであり、明暗調子のみから成るものとし、ロゴなど文字を設けないものとすることも、特段の創作を要するものではなく、6層の菓子層から成るものとすることも、「容器付き菓子」の物品分野における当業者においては、格別の困難を要さず、公然知られた意匠などに基づいて、容易に創作することができたものと認められる(例えば、公然知られた形態の参考例として、前記、甲1意匠(引用意匠1)、甲3意匠から甲5意匠)。
そして、各菓子層の態様について見ると、おおむね均一な厚みの菓子層を形成すること、きめの細かい素材を用いて、種々の明暗調子の菓子層を形成することも、様々な菓子層を積層して形成する菓子類(複数の素材を重ねて作成する、ケーキやグラススイーツや冷菓など)において、ありふれた手法といい得るから、当業者においては、想到するのに困難を要したということはできず、各層の縦方向の長さ比率に若干の変更を加えることも、また、当業者であれば、容易に想到できるものと認められる。
しかしながら、本件意匠部分の具体的な各層の構成態様である、上から半ばまで中間明暗調子が明調子へと推移する穏やかなグラデーションを形成し、半ばから下の層に明調子で暗調子2層を挟んで隣接した強いコントラストが第3層と第4層及び第5層と第6層に現れた態様(明、暗、暗、明)、及び第6層もしくは、最下層に粗めのざらつきのある素材から成る明調子の層を設けたものは、甲3意匠から甲10意匠のいずれにも現れていない。
そうすると、引用部分2の形態に基づいて、たとえ、全体の縦横長さ比率を3:2のものとし、明暗調子のみから成るものとし、ロゴなど文字を設けず、菓子層を甲3意匠から甲5意匠のように6層から成るものとし、各層の形態を略均一な厚みのものとし、各層の縦方向長さに多少の変更を加えるなどしても、上記態様が現されていないこれらの意匠から本件意匠部分の形態を具体的に創出することは、極めて困難であると言わざるを得ず、本件意匠部分のこのような形態とすることが、ありふれた手法であるとする証拠もない。
したがって、引用部分2及び甲3意匠から甲10意匠の形態を組み合わせて、本件意匠部分の形態が容易に創作できたということはできない。
イ 小括
以上のとおり、本件登録意匠が、引用部分2に基づいて甲3意匠から甲10意匠に見られる公知形態に基づいて容易に創作することができた意匠とはいえず、意匠法第3条第2項に該当するということはできないから、したがって、無効理由5によって、本件登録意匠の登録を、意匠法第48条第1項第1号に該当し、同項の規定によって、無効とすべき理由はない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1から無効理由5に係る理由によっては、本件登録意匠の登録は無効とすることはできない。
審判に関する費用については、意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-880004