商標取消審判
2022-301071
イチラク、イチガク、ヒトラク
- 審判番号
- 2022-301071
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2015-113900
- 登録番号
- 5840444
- 請求日
- 2022年12月09日
- 審決日
- 2023年12月26日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】水原 博久
- 【被請求人】李 成洙
- 【被請求人代理人】弁理士法人安倍・下田国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 大森 友子
- 審判官 相崎 裕恒
- 分類
- T131 .1 -Y (W43) / T131 .11 -Y (W43)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第1項、商標法第2条第3項第8号、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5840444号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5840444号商標(以下「本件商標」という。)は、「一楽」の文字を標準文字で表してなり、平成27年11月19日に登録出願され、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、同28年4月8日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和4年12月26日であり、その請求の登録前3年以内の同元年12月26日から同4年12月25日までの期間を以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の商標登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)店舗の外観の写真(乙1)は、本件商標権者が本件商標を使用して指定役務を行っていることの証明として不十分である。食品衛生許可証(乙2)からは、現時点で許可が取り消されていないことは不明であり、仮に現時点で許可が取り消されていないとしても、本件商標権者が実際に飲食店を営業していることの証明になり得ない。納品書若しくは領収書(乙3~乙5)は、購入した食材と飲食店で提供される料理との関係が示されておらず、これが飲食店で提供される料理の原材料であるか否かは客観的に明らかになっていない。
(2)インターネットの検索エンジンで本件商標権者の店舗名を検索すると、「閉業」の情報が出てくる(甲3)。また、山口県を中心としたラーメンを紹介する個人のブログにおいて2019年2月20日に本件商標権者の店舗が紹介されていたが、その記事に対する同月21日付けのコメントに、すでに営業していない旨がある(甲4)。このように、インターネット上において本件商標権者の店舗が閉業しているとの情報が記載されていることから、本件商標権者が現在実際に飲食店を営業していることは、信憑性に欠けると思料する。
(3)店舗の看板には毛筆体で「ラーメン 一楽」と記載されている一方、本件商標は標準文字の「一楽」であって、両者は商標や書体が異なるから、看板に記されている文字は、本件商標と社会通念上同一とはいえない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由及び審尋に対する回答を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第5号証を提出している。
1 答弁書
本件商標権者は、少なくとも令和4年9月から同年11月末までの間に「一楽」を用いて、飲食物である豚骨ラーメンを主とする飲食物の提供を行っており、店舗の外観の写真(乙1)によれば、本件商標権者の店舗の入り口に「ラーメン一楽」の表記がなされた看板を設置していることが示されている。食品衛生許可証(乙2)によれば、下関保健所長は、本件商標権者に対し、令和3年1月21日から同8年3月31日まで、山口県下関市豊前田町二丁目の店舗所在地において、屋号「一楽」にて、飲食店営業の許可を与えていることが示されている。また、株式会社伊藤精肉店発行の納品書兼領収書(乙3)、山根製麺発行の領収書(乙4)、ゴトウ青果発行の領収書(乙5)から、令和4年9月から同年11月の本件商標権者に対するラーメンの原材料の購入が示されている。
2 審尋に対する回答
(1)被請求人代理人は、被請求人である本件商標権者への審判請求に対する通知が令和5年1月4日に届き、同月16日に本件商標権者の営業地を訪問して打ち合わせを行ったときに店舗の外観の写真(乙1)の現状を撮影した。通知から訪問までの期間の12日間に、甲第4号証掲載の店舗外観のように再現することは常識的に考えても困難であり、甲第4号証を含め合理的に勘案すると、少なくとも2019年(平成31年)2月20日以降、継続的に看板が掲げられていたと判断すべきである。
(2)株式会社伊藤精肉店発行の納品書兼領収書(乙3)に記載の「グリ骨」、「セ骨」、「丸骨」は、豚骨ラーメンのスープの原料であることが一般的に知られており、「豚ミンチ」は餃子の材料である。山根製麺発行の領収書(乙4)の「ラーメン」はラーメンの麺を示し、「ギョーザ」は餃子の皮を示すものである。ゴトウ青果発行の領収書(乙5)は、購入したものが示されていないが、ネギやニラ等、ラーメンの薬味やトッピング、餃子の餡の材料に用いられる野菜を購入したものである。「ラーメン一楽」はその名前のとおりラーメンを提供するところであることから、ラーメンと餃子を提供していることが明らかである。
(3)インターネットで本件商標権者の店舗名を検索すると「閉業」の情報が出てくる点(甲3)について、経営的理由により「牛骨ラーメン」の提供を取りやめており、「牛骨ラーメン一楽」は営業を行っていないため、この表記がなされているものと考えられる。
ブログの、本件商標権者の店舗が営業していない旨のコメント(甲4)については、本件商標権者以外の第三者がコメントしているものであり、修正する術をもたない。記述があることは認めるものの、当該記述は誤っている。
(4)本件商標権者は、コロナウイルス感染症の拡大などにより営業時間を短縮して、金曜日及び土曜日の午後7時から午前0時まで、店舗所在地において営業している。店舗所在地のある地域は歓楽街であり、営業を継続できるだけの利益は確保できているが、当該地域での営業のため、飲食を行ったものに対して領収書を発行する必要性がなく、領収書の提出はできない。
第4 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)本件商標権者は、その商標原簿に登録された住所である山口県下関市豊前田町2丁目1番21号において、「一楽」の名称により飲食店営業を行う者であり、令和3年1月19日に、同年1月21日から同8年3月31日までの「飲食店営業(一般食堂)」に係る下関市下関保健所長からの食品衛生許可を得た(乙2)。以下、この食品衛生許可に係る本件商標権者の店舗を「本件店舗」といい、上記住所を「本件店舗所在地」という。
(2)インターネットの検索エンジンGoogleを用いた「牛骨ラーメン 一楽」の2023年3月15日現在における検索結果には、「牛骨ラーメン 一楽」について、その所在地が本件店舗所在地であって、「閉業」した旨を示す情報が表示される(甲3)。
また、同年3月8日現在における「つけものいしのラーメンブログ」と題するブログの2019年2月20日の記事には、「牛骨ラーメン 一楽」の店舗(以下「旧店舗」という。)の入り口の写真(以下甲4写真という。)が掲載されており、さらにこの記事に対して一楽がすでに営業していない旨のコメントが付されている(乙4)。
甲4写真には、旧店舗の入り口について、下記ア~ウが示されている。
ア 店舗入り口の上方に、略長砲弾型の独特の形状であって、「牛骨ラーメン一楽」の黒字の文字が表示された木製看板が掲示されており、また、その木製看板のさらに上方に、黄色の背景に「牛骨ラーメン」の文字とラーメンや牛の絵が表示された長方形の看板が掲示されている。
イ 店舗入り口の三枚のガラス戸のそれぞれの中央部分に、黄色の背景に「牛骨ラーメン」の文字、ラーメンや牛の絵が表示されている。
ウ イのガラス戸の左側に、縦二段の黄色の背景の看板が掲示されている。上段の看板には、「一楽名物」「牛骨ラーメン」等の文字と、ラーメンの絵が表示され、下段の看板には、「ギョーザセット」及び「チャーシューセット」の文字とそれぞれの文字の横にギョーザセット」及び「チャーシューセット」を示す絵が表示され、さらに、下側に複数の牛の絵が表示されている。
(3)令和5年1月16日現在の本件店舗の入り口の様子を示す写真(以下「乙1写真」という。)には、下記ア~ウが示されている。
ア 店舗入り口の上方に、略長砲弾型の独特の形状であって、「ラーメン一楽」の黒字の文字(別掲のとおり。以下「使用商標」という。)が表示された木製看板が掲示されている。
なお、木製看板の使用商標の前側には、「牛骨」の文字を消去した形跡が認められる。
イ 店舗入り口の三枚のガラス戸のそれぞれの中央部分に、黄色の背景に「豚骨ラーメン」の文字やラーメンの絵が表示されている。
ウ イのガラス戸の左側に、縦二段の黄色の背景の看板が掲示されている。上段の看板には、「豚骨ラーメン」の文字と、ラーメンの絵が表示され、下段の看板には、「ギョーザセット」及び「チャーシューセット」の文字とそれぞれの文字の横にギョーザセット」及び「チャーシューセット」を示す絵が表示されている。
(4)株式会社伊藤精肉店は、令和4年9月3日、同月20日、同月28日、同年10月3日、同月8日、同月31日、同年11月15日、同月29日に、「一楽」に対し、グリ骨やセ骨をそれぞれ数十キログラム単位で納品し、同年9月28日、同年10月31日、同年11月25日には、豚ミンチ3600円分を納品し、代金を領収した(乙3)。
山根製麺は、2022年9月から11月にかけて、「一楽」に対し、ラーメンの麺と餃子の皮を複数回納品し、これらに対する代金を同年9月12日、同月27日、同月30日、同年10月4日、同月13日、同月24日、同年11月1日、同月15日、同月30日に領収した(乙4)。
ゴトウ青果は、令和4年9月から11月にかけて、「一楽」に対し、商品を複数回納品し、これらに対する代金を同年9月1日(2回)、同月17日、同年10月3日、同月8日、同月31日、同年11月1日、同月25日、同月29日に領収した(乙5)。
(5)上記(2)及び(3)によれば、旧店舗と本件店舗とは、旧店舗において「牛骨ラーメン」と表示されていた箇所に本件店舗では「豚骨ラーメン」と表示され、牛の絵が旧店舗にあるものの本件店舗にはない等の違いはあるものの、いずれも本件店舗所在地の同一の建物において、略砲弾型の独特の形状の木製看板が店舗入り口の上方に掲示され、三枚のガラス戸の中央部分の黄色の表示とその左型に縦二段の黄色の看板が掲示されているものとなっており、両者は、全体として似た体裁の外観の店舗であるといえる。さらに、本件店舗の木製看板には、「牛骨」の文字を消去した形跡があり、旧店舗の木製看板と本件店舗の木製看板は、いずれも略砲弾型の独特の形状のものであることから、本件店舗の木製看板は、旧店舗の木製看板の「牛骨ラーメン一楽」のうちの「牛骨」の文字を消去したものであると推認される。
そして、本件商標権者が経営的理由により「牛骨ラーメン」の提供を取りやめ「牛骨ラーメン一楽」は営業を行っていない旨の被請求人の主張(上記第3の2(3))と上記1(1)の食品衛生許可が令和3年であるのに対し、本件商標に係る商標登録出願は平成27年であることをも踏まえれば、本件商標権者は、旧店舗において牛骨ラーメンを提供し、その際本件商標を含む「牛骨ラーメン一楽」の木製看板を掲示して牛骨ラーメンの提供をしていたものの、その後、牛骨ラーメンの提供を終了したものと認められる。
そして、上記(1)のとおり、本件商標権者は、令和3年1月に本件店舗に係る食品衛生許可を得ており、上記(4)のとおり、同4年9月から同年11月までにグリ骨やセ骨(いずれも豚骨ラーメンの原料となることが明らかである。)をそれぞれ数十キログラム単位での納品を受け、ラーメンの麺等の納品も受けており、さらには、本件店舗の入り口に「ギョーザセット」の表示がなされ、同4年9月から同年11月までに「豚ミンチ」等の納品も受けていることから、本件商標権者は、同3年1月に食品衛生許可を得て旧店舗と似た体裁の本件店舗における営業を行っており、少なくとも同4年9月から同年11月の期間に、本件店舗において、納品された原料を用いて豚骨ラーメンと餃子(以下「豚骨ラーメン等」という。)を提供し、その際、本件店舗の入り口に、使用商標(「ラーメン一楽」)が表示された木製看板を掲示していたものと推認される。
2 上記1において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商標について
上記1のとおり、本件商標は、「一楽」の文字を標準文字で表してなるものである。
これに対し、使用商標の「ラーメン一楽」の構成中「ラーメン」の文字は、指定役務に係る飲食物の種類を示すものであって、自他役務の識別標識としての機能を有しないことから、使用商標の構成中、自他役務の識別標識としての機能を有する部分は「一楽」の文字の部分であり、当該文字は本件商標と書体にのみに変更を加えた同一の文字からなるものである。
よって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一のものである。
(2)使用者について
上記1(5)のとおり、本件店舗の入り口に使用商標が表示された木製看板を掲示したのは、本件商標権者である。
よって、使用者は、本件商標権者である。
(3)使用役務について
上記1(5)のとおり、本件商標権者は、使用商標が表示された木製看板を掲示した本件店舗において飲食物である豚骨ラーメン等の提供(以下「使用役務」という。)を行ったものと推認される。
そして、使用役務は、本件商標の指定役務である、第43類の「飲食物の提供」の範ちゅうの役務である。
(4)使用時期及び使用場所について
上記1(5)のとおり、本件商標権者は、令和4年9月ないし同年11月に、使用商標が表示された木製看板を掲示した本件店舗において使用役務を提供したものと推認されるところ、当該令和4年9月ないし同年11月は、要証期間に含まれる。
また、本件店舗の所在地は、日本国内であることが明らかである。
(5)使用行為について
以上によれば、本件商標権者は、要証期間において、本件商標の指定役務の範ちゅうの役務である使用役務を提供するとともに、使用役務の提供に係る本件店舗の入り口に本件商標と社会通念上同一の商標を表示する木製看板を掲示したものであり、この木製看板は、本件商標の指定役務に関する広告に該当するといえる。
してみると、本件商標権者は、要証期間において、本件商標の指定役務に関する広告に本件商標と社会通念上同一の商標を表示したものを展示する行為を行ったものであり、この行為は、商標法第2条第3項第8号の使用行為に該当する。
3 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者が請求に係る本件商標の指定役務について本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)を使用していたことを証明したということができる。
したがって、本件商標の商標登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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