商標取消審判
2022-300225
ワッシュー、ワシュ
- 審判番号
- 2022-300225
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願1986-012742
- 登録番号
- 2082416
- 請求日
- 2022年03月10日
- 審決日
- 2024年04月23日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】中原 貴之
- 【被請求人】ドーバー洋酒貿易 株式会社
- 【被請求人代理人】弁理士法人栄光事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 大森 友子
- 審判官 小俣 克巳
- 審判官 石塚 利恵
- 分類
- T131 .1 -Y (X33)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第1項、商標法第2条第3項第8号、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第2082416号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第2082416号商標(以下「本件商標」という。)は、「WASHU」の欧文字を横書きした構成よりなり、昭和61年2月10日に登録出願、第28類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同63年10月26日に設定登録され、その後、平成22年4月7日に指定商品を第33類「洋酒,果実酒」に書換登録され、現に有効に存続するものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和4年(2022年)3月24日であり、この登録前3年以内の期間である平成31年(2019年)3月24日から令和4年(2022年)3月23日までを以下「要証期間」という場合がある。
第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り決す、審判費用は、被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、審判請求書とともに甲第1号証及び甲第2号証、弁駁書とともに甲第3号証ないし甲第6号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁について
被請求人は、商標権者(被請求人)が本件商標をリキュールにつき使用している事実を主張し、それら事実を基礎付けるために乙第3号証及び乙第4号証の各号証を提出しているが、これら証拠方法は、本件商標の使用の事実を証明するものではない。
(1)乙第3号証の示す事実は、商標としての使用ではない。
ア 乙第3号証の示す商標権者ウェブサイトの存在時期は不明である。
イ 乙第3号証の示す商標権者ウェブサイト上の「WASHU LIQUEUR」の表示は、その外観および当該ページ全体の構成からみて、上段に記載された「和酒リキュール」のローマ字表記であって、当該日本語表記と一体をなすものとして「和酒を原料とした」あるいは「和風素材を用いた」リキュールといったほどの意味合いの、商品の範ちゅう(カテゴリー)を示す表記ないし表題にすぎず、「WASHU」部分が商標として使用されているとはいえない。
ウ 「和酒を原料とした」あるいは「和風素材を用いた」リキュールといった一定の範ちゅうを示す「和酒リキュール」なるフレーズは、福城屋酒店等、第三者のウェブサイトでも使用されている(甲3)。
エ さらに、商願2018-120871号に対する拒絶理由通知(拒絶査定確定)も、「「ドーバーオンラインショップ」のウェブサイトにおいて・・・「和酒リキュール」の文字の下段に、「WASHU LIQUEUR」の記載がある」と認定し、やはり「WASHU LIQUEUR」の表記を一連不可分のフレーズとして評価し、無論、これが商標としての使用であるとは認定していない(甲4)。
(2)乙第4号証の示す事実も、商標としての使用ではない。
ア 乙第4号証の示す商標権者の広告上の「JAPANESE LIQUEUR“WASHU”/DEDICATED TO PROFESSIONALS」なる表記も、「プロの方々専用の日本製リカーであるWASHUです」といった意味合いのフレーズであって、その外観および当該箇所全体の構成からみて、商標権者の商品の説明ないしキャッチコピーにすぎず、やはり「WASHU」部分が商標として使用されているとはいえない。
イ そもそも「WASHU」は、酒類に属する商品との関係においては「和酒」を推認させ、特に「和酒」の文字や清酒等の和酒の画像と同一面上に表示された場合、上記商願2018-120871号に対する拒絶理由通知が正当に指摘したとおり、「「WASHU」の文字は、「日本在来の醸造法によってかもした酒。清酒、どぶろくなど。日本酒。洋酒に対していう。」の意味を有する「和酒」(精選版日本国語大辞典 株式会社小学館)をローマ字で表したもの」と認められてきた。
ところが最近では、従来は和酒の範ちゅうには属さないとされたウイスキー(洋酒)やワイン(果実酒)等の中でも、特に日本製のものが世界的に高く評価されるようになり(甲5)、それに伴って、「WASHU」の概念も、もともとの意味である「日本在来の醸造法によってかもした清酒、どぶろく、焼酎、等の洋酒と対比される概念の酒類」から、広く「日本製の酒類」ないし「日本由来の酒類」といった意味合いを有する語に変容してきており、かかる意味合いの語として国の内外で広く用いられている(甲6)。
ウ かかる「WASHU」の意味合いの変容という文脈のもとでは、乙第4号証の示す広告上の「JAPANESE LIQUEUR“WASHU”/DEDICATED TO PROFESSIONALS」なるフレーズをもって、本件商標としての使用であると認定することは、なおのこと社会通念に反することになり、到底認められない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
1 使用の方法及び商品について
商標権者は、洋酒の販売を事業内容とするが、自社開発した洋酒の製造・販売も行っている(乙2)。その事業の一環として、商標権者は、「WASHU LIQUEUR」と称した商品「リキュール」の製造及び販売を行っており、商標権者ウェブサイト内において、リキュール「WASHU LIQUEUR」を展示し、商品写真や価格・商品情報とともに、商標「WASHU LIQUEUR」を使用している(乙3)。
また、2021年(令和3年)6月9日に、「第66回菓業青年会九州ブロック/第22回全菓連青年部九州ブロック 佐賀大会」という全国菓子工業組合連合会が主催する会員向けに講演や懇親会等を行うイベントが開催された。
商標権者は、2021年(令和3年)6月9日付け開催の当該イベントのプログラム中の広告掲載頁において、リキュール「WASHU」を告知し、商品写真とともに商標「WASHU」を使用している(乙4)。
よって、商標権者は本件商標を商品「リキュール」に関する広告に付して頒布し、又はこれらを内容とする情報に付して電磁的方法により提供しているものであり、これは商標法第2条第3項第8号に規定されている商標の使用に該当する。
なお、「特許庁類似商品・役務審査基準」によると、商品「リキュール」は、第33類「洋酒」に属する商品であり、よって、商品「リキュール」への商標の使用は、第33類「洋酒」についての使用である。
2 使用の時期について
乙第3号証には日付の記載はないが、乙第4号証をみると、上述のとおり、商標権者は、2021年(令和3年)6月9日付開催のイベント「第66回菓業青年会九州ブロック/第22回全菓連青年部九州ブロック 佐賀大会」のプログラム中の広告掲載頁において、リキュール「WASHU」を告知し、商品写真とともに商標「WASHU」を使用している(乙4)。
よって、商標権者が要証期間内に商標「WASHU」を商品「リキュール」に使用していたことは明らかである。
3 使用商標と登録商標の同一性について
乙第4号証のパンフレット内の広告掲載頁において商標権者が使用している商標は「WASHU」であり、登録商標と同一である。
また、乙第3号証の商標権者ウェブサイト内において商標権者が使用している商標は「WASHU LIQUEUR」であり、「WASHU」の文字が「LIQUEUR」の文字とともに使用されている。
この「LIQUEUR」の文字は「リキュール」を英語で表したものであり、商品「リキュール」に使用した場合には、商品の一般的名称を示したにすぎず、商標としての出所識別力を有さない。
つまり、このような使用態様は本件商標「WASHU」と同一の商標の使用と言える。
4 まとめ
以上のとおり、要証期間内において、商標権者は、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標を第33類「洋酒」に属する商品「リキュール」に使用している。
第4 当審の判断
1 事実認定
被請求人の主張及び同人の提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)本件商標の商標権者
乙第1号証は、本件商標の商標登録原簿であり、商標権者として「ドーバー洋酒貿易株式会社」の記載がある。
(2)商標権者のウェブサイト
乙第2号証及び乙第3号証は、印刷日が2022年(令和4年)5月24日のウェブサイトの写しであり、以下の記載がある。
ア ウェブサイトの左上に、別掲1のとおりの「DOVER」の欧文字のロゴの表記がある(乙2、乙3)。
イ ウェブサイトの見出しとして「会社概要・沿革|会社案内|Dover‐洋酒のドーバー(公式)‐」の記載があり、輸入貿易・販売部門として「ドーバー洋酒貿易株式会社」の名称、その事業内容として「ドーバーブランドの洋酒及び直輸入洋酒の販売」の記載がある(乙2)。
ウ ウェブサイトの見出しが「和酒リキュール‐ドーバーオンラインショップ」の「和酒リキュール/WASHU LIQUEUR」の項目に、瓶の容器に入った商品(「ドーバー和酒 桜」、「ドーバー和酒 生姜」等。)がその内容量及び金額とともに多数掲載されており、これらの商品の写真の中には、商品ラベルに「桜」、「生姜」、「柚子」、「紫蘇」、「抹茶」、「栗」及び「葡萄」の記載があるものが含まれているところ、これらの商品は「リキュール」と認められる(乙3)。
(3)乙第4号証は、「第66回菓業青年会九州ブロック/第22回全菓連 青年部九州ブロック 佐賀大会」と称するイベントのプログラムの抜粋とするものであり、該広告掲載頁(51頁:本件の証拠では2葉目)の右上において、別掲2のとおりの広告(以下「プログラムの広告」という。)が掲載されている。
ア プログラムの広告の左上には、色彩は異なるものの別掲1と同様の態様の「DOVER」の欧文字のロゴの表記がある。
イ プログラムの広告の上部に2段(横書き)で「JAPANESE LIQUEUR “WASHU”」(以下「使用商標」という場合がある。)及び「DEDICATED TO PROFESSONALS」の表示がある。
ウ プログラムの広告の左部に3列(縦書き)で「日本の繊細な心が育んだ」、「我が国初の和素材リキュール」、「ドーバー「和酒」をご紹介します。」の記載がある。
エ プログラムの広告には、瓶からなる商品(以下「使用商品」という場合がある。)が7本並んで写っている写真が掲載されており、使用商品のラベルには「桜」、「生姜」、「柚子」、「紫蘇」、「抹茶」、「栗」及び「葡萄」の記載がある。
なお、これらの商品は、その商品が入った商品の瓶の形状及び商品ラベルの記載の文字から、上記(2)ウの商標権者のウェブサイトで販売している商品と同一のものと認めて差し支えない。
オ イベントのプログラムの1葉目の下部に、「佐賀大会」、「2021.06.09」、「令和3年6月 佐賀県菓業青年会」の記載がある。
カ 上記アないしオからすれば、乙第4号証は、「佐賀県菓業青年会」が主催し、2021年(令和3年)6月9日に開催された「第66回菓業青年会九州ブロック/第22回全菓連青年部九州ブロック 佐賀大会」と称するイベントのプログラムの抜粋の写しと認められる。
2 上記1で認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商品
上記1(3)エのプログラムの広告に掲載されている商品(使用商品)は、該プログラムの広告内に「JAPANESE LIQUEUR」の記載があること、「我が国初の和素材リキュール」の記載があること、及び上記1(2)ウの商標権者のウェブサイトで販売されている商品と同一であることからすれば、「リキュール」と認められる。
そうすると、使用商品は「リキュール」であり、本件商標の指定商品中「洋酒」の範ちゅうに含まれる商品であると認められる。
(2)本件商標と使用商標の社会通念上の同一性について
プログラムの広告の上部に横書きで「JAPANESE LIQUEUR“WASHU”」(使用商標)の表示があるところ、該文字中「JAPANESE LIQUEUR」の文字は、「日本のリキュール」を認識させるものであって、使用商品「リキュール」との関係においては、商品の製造、販売場所を表したものと認識されるものであるから、自他商品の識別標識として機能しないもの又はその機能が極めて弱いものといえる。
一方、該文字中「WASHU」の欧文字は、その前後に、「文中で、会話や他よりの引用などであることを示すためにつける符号。」(「大辞泉 増補・新装版 株式会社小学館」)である「“”」(以下「引用符」という。)が付されていることからしても、該「WASHU」の欧文字が独立して看取されるとみるのが自然である。
そうすると、使用商標の構成中、自他商品を識別する標識として機能する部分は「WASHU」の文字部分にあるというべきである。
他方、本件商標は「WASHU」の欧文字を横書きしてなるものである。
そして、本件商標と使用商標の構成中、自他商品を識別する標識として機能する「WASHU」の文字についてみるに、両者は「WASHU」の欧文字のつづりを同一にするものであるから社会通念上同一といえる。
してみると、使用商標は、当該「WASHU」の文字に、商品の製造場所、販売場所を付加したにすぎないものから、本件商標と使用商標は、社会通念上同一の商標と認められる。
(3)使用商標の使用者
商標権者のウェブサイトの上部には、別掲1のとおり「DOVER」の欧文字のロゴの表記があるところ、これは商標権者の名称が「ドーバー洋酒貿易株式会社」であり、また、上記商標権者のウェブサイトのサイト名として「Dover」の欧文字が使用されていることからしても、商標権者の名称の略称を、欧文字のロゴで表記したものと理解するのが自然である。
そして、プログラムの広告には、広告の掲載者が記載されていないとしても、左上に「DOVER」の欧文字のロゴの表記があるところ、これは上記商標権者のウェブサイトの上部に表記されている別掲1の「DOVER」の欧文字のロゴと色彩は異なるもののその書体も同一であること、及びプログラムの広告に掲載されている商品が、商標権者のウェブサイトで販売されている商品と同一のものであることからすれば、プログラムの広告を掲載したのは商標権者であるとみて差し支えない。
そうすると、使用商標の使用者は商標権者であると認められる。
(4)使用地域及び使用期間
プログラムの表紙の記載からすれば、「2021年(令和3年)6月9日」に佐賀県において開催された上記1(3)カのイベントにおいて頒布されたものと認められ、この日付は要証期間内である。
(5)請求人の主張
請求人は、乙第3号証の商標権者のウェブサイトの存在時期は不明である旨主張している。
商標権者のウェブサイトの写しには「2022/05/24」の記載があるところ、これは該ウェブサイトの印刷日と推認できるものであり、少なくとも当該印刷日には、商標権者のウェブサイトが存在していたものである。
そして、当該印刷日が要証期間外であるとしても、当該商標権者のウェブサイトは、プログラムの広告(要証期間のもの。)に掲載されている使用商品が商標権者の販売に係る商品として実際に存在している蓋然性を裏付けるものとして採用したものであり、商標権者のウェブサイトの存在時期や印刷日を使用の証拠とするものではなく、その他の証拠とあわせて、上記(1)ないし(4)のとおり、提出された全証拠を総合的に勘案し本件商標の使用を判断したものである。
したがって、請求人の主張は採用することはできない。
(6)小括
以上によれば、本件商標の商標権者は、日本国内において本件商標と
社会通念上同一の使用商標を、「洋酒」の範ちゅうの商品「リキュール」の広告に付して使用し、その広告を要証期間内に頒布したこと(商標法第2条第3項第8号)が認められる。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求前継続して3年以内に、日本国内において、商標権者が、本件商標の指定商品中「洋酒」の範ちゅうに属する「リキュール」ついて、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものと認められる。
したがって、本件商標の請求に係る商品に係る登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
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