商標取消審判
2022-300121
パワーコイン、パワー、コイン
- 審判番号
- 2022-300121
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2016-130659
- 登録番号
- 5950820
- 請求日
- 2022年02月09日
- 審決日
- 2025年08月28日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】株式会社 パワーエックス
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】田中 克郎
- 【請求人代理人】北島 隆次
- 【請求人代理人】石田 昌彦
- 【請求人代理人】中河 香一郎
- 【被請求人】株式会社 エヌティーアイ
- 審判長/審判官
- 審判長 小林 正和
- 審判官 杉本 克治
- 審判官 渡邉 あおい
- 分類
- T132 .1 -Z (W36)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第3号、商標法第2条第3項第8号、商標法第50条第2項、商標法第50条第1項、商標法第2条第3項第7号、商標法第2条第3号、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5950820号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第5950820号商標の指定役務中、第36類「全指定役務」についての商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5950820号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成28年11月8日に登録出願、第35類「トレーディングスタンプの発行」及び第36類「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定着物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,信用購入あっせん,前払式証票の発行,ガス料金又は電気料金の徴収の代行,商品代金の徴収の代行,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引,外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券先渡取引・有価証券店頭指数等先渡取引・有価証券店頭オプション取引若しくは有価証券店頭指数等スワップ取引又はこれらの取引の媒介・取次ぎ若しくは代理,有価証券等清算取次ぎ,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,商品市場における先物取引の受託,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出」を指定役務として、同29年6月2日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、令和4年2月25日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の平成31年(2019年)2月25日から令和4年(2022年)2月24日までを、以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書、令和4年8月5日付け答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年9月30日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」(「乙第○号証」)を「甲○」(「乙○」)のように簡略して記載する場合があり、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略して記載する場合がある。
2 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、第36類の全指定役務(以下「本件請求役務」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
3 答弁書に対する弁駁
(1)商標法第2条第3項第3号、同項第4号及び同項第7号の使用について
被請求人は、答弁書において、本願商標を商標法第2条第3項第3号、同項第4号及び同項第7号に係る態様で使用した旨述べているが、具体的な使用態様が一切述べられていないほか、使用を示す証拠も提出していない。
商標法第2条第3項第3号及び同項第4号では、「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」が必要となるところ、本件においてはそのような「物」の存在は答弁書上示されておらず、証拠の提出もない。
また、「標章を付する行為」及び「標章を付したものを用いて役務を提供する行為」についても、答弁書では具体的に述べられておらず、証拠の提出もない。
商標法第2条第3項第7号は、まず「電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供」が必要となるところ、本件においてはそのような「映像面」の存在は答弁書で示されておらず、証拠の提出もない。また、当該「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」が必要となるところ、本件においてはそのような「標章を表示」した旨、「役務を提供した」旨のいずれも答弁書に示されておらず、証拠の提出もない。
したがって、商標法第2条第3項第3号、同項第4号及び同項第7号に係る本件商標の使用は認められない。
(2)商標法第2条第3項第8号の使用について
ア 本件商標の使用態様が明らかでないこと
被請求人は、本件商標に係る指定役務につき、「Power Coin(パワーコイン)(乙1)は、SATOと同じく地域通貨です。」、「Power Coin(パワーコイン)を含む地域通貨であるSATO」といった説明をするものの、具体的に本件商標に係る役務はどのような役務なのか、また、地域通貨であるSATOとPower Coin(パワーコイン)はどのような関係があるのか、明らかとはいえない。また、被請求人は、本件商標に係る指定役務を列挙した上で、「指定役務の少なくともいずれかについて使用された」と述べるものの、ここでも、被請求人は、本件商標に係る役務がどのような役務なのか、それが指定役務のうちいずれの役務に該当するのかを明らかにしていないため、本件商標の使用態様は不明確といわざるを得ない。
したがって、このような記載からは、被請求人による本件商標の使用は立証されていないといわざるを得ない。
イ 実証実験は「使用」(商標法第50条第2項本文)に該当しないこと
商標は、使用の継続により信用が化体するものであるところ、実証実験等の単なる実験段階ではいまだ需要者が十分に商標を認識するものではないから、信用が化体するものではない。また、不使用取消審判の趣旨は、空権化し保護に値しない商標権を排除することで、第三者の商標選択の余地を確保する点にあるところ、実際の使用の前段階である実験をしているにすぎず信用が化体していない商標は保護に値せず、同趣旨からも排除すべきものといえる。
したがって、単なる実験段階における商標の使用は商標法第50条第2項本文における「使用」とはいえないというべきである。
被請求人は、令和3年11月20日に金沢大学と七尾商工会議所と共同で、「SATO」なる地域通貨の実証事件を行った旨述べ、また、その意味するところは明らかではないものの、「Power Coin」は「SATO」を構成する一要素である旨述べている。
しかし、仮に「Power Coin」が「SATO」を構成する何らかの要素であるとしても、「SATO」はあくまで実証実験が行われたにすぎず、「使用されることを意図している」(乙1)段階にとどまる。すなわち、実際の使用はいまだ一度も行われておらず、あくまで将来的に通貨として使用されることを目指しているにすぎない。
仮に、実験であっても実際の使用と同視できる程度に準備が進んでいる場合や、非常に長期にわたって広い範囲で実験がなされたなどの特別な事情がある場合は、「使用」と解釈する余地もあり得るものの、本件では僅か一日の実証実験が行われたにとどまる。本件では、乙第1号証の頒布がなされたことの立証自体も不十分であるが、仮にその頒布がなされていたとしても、実験段階における資料の頒布であるから「使用」には該当しない。
また、不使用取消審判の趣旨は、空権化し保護に値しない商標権を排除することで第三者の商標選択の余地を確保する点にあるが、登録後既に5年以上が経過しているにもかかわらず、実験段階での使用にとどまるような本件商標には、信用の化体がなく、このような商標を過度に保護することは、商標法の趣旨にももとるものである。
したがって、被請求人による、商標法第2条第3項第8号に係る本件商標の使用は認められない。
ウ 乙第1号証が頒布されたことの立証がなされていないこと
被請求人は、本件商標を商標法第2条第3項第8号に係る態様で使用したことの証拠として、乙第1号証を提出している。
しかしながら、いつ、誰に向けて、何部、どのような態様で頒布されたのか等の具体的事実が一切立証されておらず、乙第1号証が実際に頒布されたことの立証はなされていないといわざるを得ない。
したがって、この点からも、被請求人による商標法第2条第3項第8号に係る本件商標の使用は立証されていないといえる。
エ 小括
以上のとおり、本件審判では本件商標の使用態様が明らかでないこと、実証実験は「使用」(商標法第50条第2項本文)に該当しないこと、また、乙第1号証の頒布も立証されていないことから、商標法第2条第3項第8号の使用は認められない。
(3)乙第2号証-1ないし乙第2号証-5について
被請求人が提出した乙第2号証については、立証の趣旨が明らかではない。
仮に、商標法第2条第3項第8号の使用を意図したものであるとしても、株式会社ネクストマジックを発行者とし、被請求人を名宛人とする請求書が同号に該当するものではないことは明らかである。また、乙第2号証は、その他同法同項各号のいずれの態様の使用をも立証するものではない。
したがって、これらの証拠が、被請求人による本件商標の使用を立証する証拠とはなり得ない。
第3 被請求人の答弁書における主張及び審尋に対する回答
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない旨の審決を求め、答弁書及び令和4年10月25日付け審尋に対する同年11月22日付け回答書(以下「回答書」という。)において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)被請求人は、要証期間である令和3年5月より11月にかけて、金沢大学及び七尾商工会議所と共同で、石川県七尾市において、エネルギー機能を表象する貨幣であるPower Coin(パワーコイン)を内包する地域通貨「SATO」を七尾市内の商店等で使用する実証実験を同年11月20日に行った(乙1,乙3、乙4)。
(2)上記実証実験において、被請求人がPower Coin(パワーコイン)という本件商標を用いたことは、以下の点から明らかである。
まず、SATO(サト)は1サト=1円の電子通貨によって実現された地域通貨である(乙3,乙4)。そして、SATOに内包されるものであり、価値を貨幣として表象するものであるPower Coin(パワーコイン)(乙1)は、SATOと同じく地域通貨である。
上記実証実験では、Power Coin(パワーコイン)を含む地域通貨であるSATOが、被請求人が制作したコンピュータシステムから、実証実験の参加者である金沢大学学生及び商工会議所有志が持つスマートフォン等の携帯機器に対して発行され、その後決済に利用された。
(3)被請求人が、Power Coin(パワーコイン)を含む地域通貨であるSATOを発行することができ、それを用いた決済をも行うことのできるコンピュータシステムを制作したことは、乙第2号証からも明らかである。Power Coin(パワーコイン)を含む地域通貨であるSATOが、被請求人が制作したコンピュータシステムから発行され、決済に用いられたという事実は、本件商標が「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定着物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,信用購入あっせん,前払式証票の発行,ガス料金又は電気料金の徴収の代行,商品代金の徴収の代行,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引,外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券先渡取引・有価証券店頭指数等先渡取引・有価証券店頭オプション取引若しくは有価証券店頭指数等スワップ取引又はこれらの取引の媒介・取次ぎ若しくは代理,有価証券等清算取次ぎ,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,商品市場における先物取引の受託,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出」という指定役務の少なくともいずれかについて使用されたことを意味している。ここでいう使用は、商標法第2条第3項第3号、同項第4号又は同項第7号に該当するものである。
(4)なお、被請求人は、令和3年11月20日に、プレス・ブリーフィング資料(乙1)を配布して、金沢大学及び七尾商工会議所と共同で記者会見を行った。その中に、「株式会社エヌティーアイの提供する」、「Power Coin(R)(パワーコイン(R))」(審決注:「(R)」は「R」の丸付き文字である。以下同じ。))という文字が「(R)」の記号と共に明記されている。これによっても、本件商標の使用がなされている。ここでいう使用は、商標法第2条第3項第8号に該当するものである。
(5)商標法第2条第3項第3号、同項第4号又は同項第7号による本件商標の使用については、上述の実証実験の主体が金沢大学、七尾商工会議所及び被請求人であったので、こちらについては本件商標を使用した主体は被請求人であったということになり、また、同項第8号による本件商標の使用も、記者会見を行った主体に被請求人が含まれるので、本件商標を使用した主体は被請求人であったということになる。
2 回答書における主張
上記1記載の実証実験において、被請求人がPower Coin(パワーコイン)という本件商標を用いたことは、以下の点から明らかである。
まず、SATO(サト)は1サト=1円の電子通貨によって実現された地域通貨である(乙3,乙4)。そして、SATOに内包されるものであり、価値を貨幣として表象するものであるPower Coin(パワーコイン)(乙1)は、SATOと同じく地域通貨である。
地域通貨は一般的に前払式証票として扱われており、その発行は「前払式証票の発行」であると一般に認められている(乙5)。
上記実証実験では、Power Coin(パワーコイン)を含む地域通貨であるSATOが、被請求人が制作したコンピュータシステムから、実証実験の参加者である金沢大学学生及び商工会議所有志が持つスマートフォン等の携帯機器に対して発行され、その後決済に利用された。
Power Coin(パワーコイン)を含む地域通貨であるSATOが、被請求人が制作したコンピュータシステムから発行され、決済に用いられたという事実は、本件商標が、少なくとも「前払式証票の発行」という指定役務の少なくともいずれかについて使用されたことを意味している。ここでいう使用は、商標法第2条第3項第3号、同項第4号又は同項第7号に該当するものである。
被請求人は、令和3年11月20日に、プレス・ブリーフィング資料(乙1)を配布して、金沢大学及び七尾商工会議所と共同で記者会見を行ったが、プレス・ブリーフィングの際、七尾商工会議所における本地域通貨実証実験責任者から、商工会議所がPower Coin(パワーコイン)又はSATOについて、前払式証書として発行され、実験においては商工会議所が立て替えて前払し、実行する旨の説明があった。
上記プレス・ブリーフィングに基づいて本実証実験の内容は北陸朝日放送株式会社が石川県を対象として行うテレビジョン放送事業である北陸HAB放送にて特集ニュースとして放送され、その動画は、北陸HAB放送のホームページから既に削除されているが、このニュースに興味を持ったウクライナ人によってウクライナ語に翻訳されたものがYouTubeにおいて視聴できる。これにより、上記プレス・ブリーフィングのみならず、本実証実験が間違いなく行われたことが明らかである。なお、動画中の情報セキュリティ研究所のN氏は被請求人代表取締役と同一人物である。
この動画の1分45秒からの部分に「この取組は、世界農業遺産に認定されている能登の里山、里海の保全を目的に、環境保全活動や祭りの再生など地域への貢献も貨幣価値に換算し、地元に還元する仕組みです。」というナレーションが入っている。「Power Coin(R)(パワーコイン(R))」は、地位への貢献活動を貨幣価値に換算した地域通貨「SATO」、つまり、前払式証票の一例であり、具体的には電力等のエネルギーを供給することと引換に発行される地域通貨である。それが実証実験で利用されたか否かを論じるまでもなく、「Power Coin(R)(パワーコイン(R))」なる前払式証票についての商標が、上記プレス・ブリーフィングで使用されたことには疑いの余地がない。
以上より、「Power Coin(R)(パワーコイン(R))」という商標についての広告(商標法第2条第3項第8号による広告)は、地域通貨であり、第36類に含まれる「前払式証票の発行」の役務について行われていたことが明らかである。
第4 当審の判断
1 不使用取消審判について
商標法第50条第1項の規定に基づく商標登録の取消しの審判が請求された場合には、同条第2項において、その審判の請求の登録前3年以内(要証期間)に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにした場合を除いて、商標権者は、その指定役務に係る商標登録の取消しを免れないとされている。
2 被請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
(1)乙第1号証は、「世界初のデジタル貨幣を用いた地域通貨実証実験」と題する書面であり、1頁の左上部に「プレス・ブリーフィング資料」、右上部に「金沢大学、七尾商工会議所、株式会社エヌティーアイ」、表題部の右下に「2021年11月20日」、その下部には「この暗号通貨を活用した地域通貨SATOの発想は、2021年2月12日には、金沢大学松島大輔研究室と大林重治・七尾商工会議所会頭との間で」との記載、並びに、2頁の下部には「一方「SATO」は、里山里海の創出価値として、特に、株式会社エヌティーアイの提供する太陽由来のエネルギーを貨幣として表象するPower Coin(R)(パワーコイン(R))とCO2の吸収(排出権)を貨幣として表象するCO2 Coin TM(CO2コインTM)を、基本機能として内包することで、その価値をこの地域特有の持続可能なものとして、半永久的に使用されることを意図している。」との記載がある。
(2)乙第2号証は、「御請求書」と題する書面であり、乙2-1は作成日が2021年6月30日、乙2-2は作成日が同年7月31日、乙2-3は作成日が同年8月31日、乙2-4は作成日が同年9月30日、乙2-5は作成日が同年10月31日であるところ、当該請求書のいずれもが、発行名義が「株式会社ネクストマジック」、その名宛人が「株式会社エヌティーアイ」であり、かつ、「件名」が「SATOデモシステムの構築等」となっている。
また、「品目名」の欄には、乙2-1の項目「1-2」に「上流設計:Power Coin(R)(パワーコイン(R))」と、乙2-2ないし乙2-5の項目「1-2」に「機能開発:Power Coin(R)(パワーコイン(R))」との記載がある。
(3)乙第3号証は、中日新聞のウェブサイトの写しであり、「里山里海守る地域通貨 金大と七尾商議所「サト」実証実験 2021年11月21日」の見出しの下、「サトは、暗号技術を用いた電子通貨。」等の記載があるものの、本件商標及び被請求人の名称の記載は認められない。
(4)乙第4号証は、日本商工会議所のウェブサイトの写しであり、「セレクト地域短信 地域通貨「SATO」検証 貢献活動が貨幣価値に 2022/2/7」の見出しの下、「七尾商工会議所(石川県)と金沢大学は、能登の地域通貨「SATO(サト)」の導入を目指し、昨年11月20日に七尾市中心市街地で実証実験を実施した。」等の記載があるものの、本件商標及び被請求人の名称の記載は認められない。
(5)乙第5号証は、千葉県木更津市、兵庫県尼崎市及び東京都渋谷区に関する電子地域通貨(地域通貨)に関する記事や規約を掲載したウェブサイトの写しであり、「前払式支払手段」の記載は認められるものの、本件商標及び被請求人の名称の記載は認められない。
(6)乙第6号証は、YouTube登録の動画のスクリーンショットと主張するものであって、画像部分には「SATO」及び「情報セキュリティ研究所」とその代表理事の氏名の記載、並びに画像以外の部分において「プレスリリース後の説明会」、「前払された金額に合わせて証票SATOを受け取った。」及び「SATOを実際にお店で使用した。」との記載が認められるものの、本件商標及び被請求人の名称の記載は認められない。
3 判断
上記2において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
被請求人は、答弁書及び回答書において、「SATOに内包されるものであり、価値を貨幣として表象するものであるPower Coin(パワーコイン)(乙1)は、SATOと同じく地域通貨」である旨述べるものの、「SATO」と称する地域通貨に内包されるということが、本件請求役務の提供にあたり、具体的に、どのように役務の提供を受ける者の利用に供する物に本件商標を付する行為、あるいは、その提供を受ける者の利用に供する物に本件商標を付したものを用いて役務を提供する行為、が行われたのかは、具体的に述べられておらず、その使用を示す証拠の提出も認められない。
乙第1号証において、「株式会社エヌティーアイの提供する太陽由来のエネルギーを貨幣として表象するPower Coin(R)(パワーコイン(R))」との記載があり、これが商標権者の名称並びに本件商標を構成する「Power Coin」の欧文字及び「パワーコイン」の片仮名であるということはできるものの、本件請求役務である「前払式証票の発行」を含む全指定役務のいずれかの役務について、本件商標を使用(商標法第2条第3項第3号、同項第4号、同項第7号及び同項第8号による本件商標の使用)するものかは、当該記載からは明らかとはいえず、本件商標を本件請求役務に使用したものと認めることはできない。
また、令和3年11月20日に、七尾市内で行われた実証実験は、暗号通貨を使った地域通貨である「SATO」と称する前払式証票の発行の手段による電子通貨と呼ばれるものについての実証実験であるとしても(乙3)、その実証実験において使用されたものは「SATO」(サト)であって、本件商標が使用されたことは確認できず、さらに、「実証実験」が「新開発の製品・技術などを、実際の場面で使用し、実用化に向けての問題点を検証すること。」(「大辞泉 第2版」株式会社小学館発行)を意味することからしても、実証実験における使用は、実際の商取引の場において使用されるものでないことは明らかであって、商標法上の使用に当たるものとはいえない。
よって、被請求人の提出した全証拠を参照しても、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が、要証期間に、日本国内において、本件商標(社会通念上同一と認められるものを含む。)を本件審判請求に係る指定役務について使用したことを認めるに足る証拠は見いだせない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人が提出した証拠によっては、被請求人は、要証期間に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を、本件審判請求に係る指定役務について、商標法第2条第3号各号に規定する態様で使用する行為を行ったことを証明したということはできない。
また、被請求人は、本件請求役務について、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の本件請求役務についての登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-300121