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特許拒絶査定不服審判

2022-020992

リサイクルされたおよび再生可能な有機材料の精製

審判番号
2022-020992
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-502417
請求日
2022年12月23日
審決日
2025年03月25日
公報発行日
2025年09月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
  • 【請求人代理人】弁理士法人朝日奈特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 関根 裕
  • 審判官 瀬下 浩一
  • 審判官 門前 浩一
分類
P18 .121-Z (C10G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-502417「リサイクルされたおよび再生可能な有機材料の精製」拒絶査定不服審判事件〔令和2年1月30日国際公開、WO2020/020769、令和3年11月11日特許出願公表、特表2021-530596〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和元年(2019年)7月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年7月20日 フィンランド(FI))を国際出願日とする出願であって、令和3年3月15日に特許協力条約第34条補正の翻訳文が提出され、令和4年2月22日付けで拒絶理由が通知され、同年8月1日に意見書の提出と共に誤訳訂正書が提出され、同年同月9日付けで拒絶査定され(謄本発送は8月23日)、その後、同年12月23日に審判請求がされると同時に手続補正がされたものである。 以下、前記優先権主張の日である2018年7月20日を「本件優先日」という。 第2 令和4年12月23日にされた手続補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年12月23日提出の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 (1)本件補正前の請求項1 本件補正前の令和4年8月1日に提出された誤訳訂正書により補正された請求項1の記載は次のとおりである。 「再生可能な有機材料(10)を精製するための方法であって、前記再生可能な有機材料は、20ppmより多いClを含み、前記方法は、以下の工程(a)で提供される前の再生可能な有機材料の塩素含有量の50%より少ない量を含む精製された水素化された、再生可能な有機材料(61)を得るために、 (a)再生可能な有機材料(10)を提供する工程、 (b)前記再生可能な有機材料(10)を、工程(a)で提供される前の前記再生可能な有機材料の塩素含有量の50%より少ない量を含む精製された再生可能な有機材料(31、51))を得るために、前記再生可能な有機材料をアルカリ金属水酸化物(30)の水性溶液の存在下、200~300℃の温度で加熱(20、40)する工程(b1)によって、精製する工程、および (c)水素化処理触媒の存在下で、前記精製された再生可能な有機材料を水素化処理する(60)工程 を含む方法。」 (2)本件補正後の請求項1 本件補正後の請求項1の記載は次のとおりである。本件補正による補正箇所に下線を付した。 「再生可能な有機材料(10)を精製するための方法であって、前記再生可能な有機材料が、廃棄物プラスティック熱分解オイル(WPPO)、廃タイヤ熱分解オイル(ELTPO)、および/または使用済み潤滑油(ULO)であり、かつ、20ppmより多いClを含み、前記方法は、以下の工程(a)で提供される前の再生可能な有機材料の塩素含有量の50%より少ない量を含む精製された水素化された、再生可能な有機材料(61)を得るために、 (a)再生可能な有機材料(10)を提供する工程、 (b)前記再生可能な有機材料(10)を、工程(a)で提供される前の前記再生可能な有機材料の塩素含有量の50%より少ない量を含む精製された再生可能な有機材料(31、51))を得るために、前記再生可能な有機材料をアルカリ金属水酸化物(30)の水性溶液の存在下、200~300℃の温度で、0.1~10.0mol/Lの前記水性のアルカリ金属水酸化物の濃度で、加熱(20、40)する工程(b1)によって、精製する工程、および (c)水素化処理触媒の存在下で、前記精製された再生可能な有機材料を水素化処理する(60)工程 を含む方法。」 2 本件補正の目的 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「再生可能な有機材料」を特定の材料に限定するとともに、「アルカリ金属水酸化物の濃度」の特定を追加するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3 独立特許要件の判断 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、前記1(2)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 原査定の拒絶の理由で引用された本件優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2007-224196号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。 「【請求項1】 処理対象オイルと、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の少なくとも一方を含有する反応水とを、所定割合で混合するオイル反応水混合手段と、 このオイル反応水混合液をハロゲン離脱処理圧力で脱塩反応容器に供給する高圧供給手段と、 予めハロゲン離脱処理温度に維持された空間内を、前記オイル反応水混合液が前記ハロゲン離脱処理圧力で所定滞留時間の間滞留する空間形状を備える前記脱塩反応容器と、 前記脱塩反応容器に対して前記ハロゲン離脱処理温度に維持する為の熱エネルギーを供給する熱供給手段と、 前記脱塩反応容器で脱塩処理されたオイル反応水混合体を冷却して、脱塩再生オイルを回収する冷却型油分回収部と、 を備える廃油の燃料資源化装置。 【請求項2】 さらに、前記冷却型油分回収部で回収された脱塩再生オイルを前記熱供給手段の燃料に使用する請求項1に記載の廃油の燃料資源化装置。 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の廃油の燃料資源化装置において、 さらに、処理対象オイルに含有される金属の切粉や金属粉末を除去する金属除去手段を有し、 この金属成分が除去された処理対象オイルを前記オイル反応水混合手段に供給することを特徴とする廃油の燃料資源化装置。 【請求項4】 処理対象オイルとアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の水溶液とを所定割合で混合し、 このオイル反応水混合液をハロゲン離脱処理圧力で脱塩反応容器に供給し、 前記オイル反応水混合液をハロゲン離脱処理温度に昇温し、 予めハロゲン離脱処理温度に維持された脱塩反応容器内を、前記オイル反応水混合液が前記ハロゲン離脱処理圧力で所定滞留時間の間滞留し、 前記脱塩反応容器で脱塩処理されたオイル反応水混合体を冷却して、脱塩再生オイルを回収する、 各工程を有する廃油の燃料資源化方法。」 「【0001】 この発明は、機械加工における切削加工や研削加工に用いられる切削油や、内燃機関のように回転運動や往復運動を行なう機械部品間での摩擦抵抗を低減するオイル等の再生処理に用いて好適な、廃油の燃料資源化装置及び方法に関する。 【背景技術】 【0002】 使用済みオイルは、例えば機械加工における切削加工や研削加工に用いられる切削油の使用後や、内燃機関のように回転運動や往復運動を行なう機械部品間での摩擦抵抗を低減するオイルの交換において発生する。ここで、切削油では刃物の寿命を延ばすために、塩素のようなハロゲン化合物が混入されている場合が多い。また、オイルの場合も機械部品の寿命を延ばすために、ハロゲン化合物が混入されている場合が多い。 【0003】 そこで、現在において切削油やオイルの処理業者においては、使用済みオイルを燃料として再利用したり、あるいは廃棄物として焼却処理している。使用済みオイルの塩素混入比率は、例えば2000ppm程度である。このような高濃度の塩素を含有した使用済みオイルは、塩分を含む重油も燃料として使用可能なハロゲン対策を施した施設、例えば火力発電所、製紙工場、セメント工場、染物工場等で、燃料として用いることができる。 ・・・ 【0005】 そこで、ハロゲン対策を施していない一般の燃焼施設で利用可能となる程度に、使用済みオイルから塩素などのハロゲン元素を除去することが考えられる。例えば、包装容器リサイクル協会の設定している炭化水素油の塩素含有率基準(例えば100ppm)まで、使用済みオイルの塩素含有率を低減させることが考えられる。しかし、容器リサイクル協会の規制対象とするプラスチック廃棄物から抽出される炭化水素油と比較すると、使用済みオイルは機械工場や自動車整備工場等の事業者から排出される関係で、事業者の責任において廃棄物処理されていたのが実情である。 ・・・ 【0011】 本発明は、上述した課題を解決するもので、ハロゲン系元素を含む使用済みオイルであっても、比較的低い圧力・温度の反応容器を用いて処理でき、しかも脱塩再生オイルの塩素含有率が低い廃油の燃料資源化装置及び方法を提供することを目的とする。」 「【0019】 図1は本発明の第1の実施の形態としての廃油の燃料資源化装置を説明する機能ブロック図である。図において、廃油の燃料資源化装置は、主要な構成要素としてオイル反応水混合手段10、高圧供給手段20、脱塩反応容器30、熱供給手段40、冷却型油分回収部50を備えている。さらに、脱塩再生オイル貯蔵部60、金属除去手段13を含むと良い。 【0020】 オイル反応水混合手段10では、処理対象オイルとアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の水溶液とが所定割合で混合される。アルカリ金属類には、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等がある。また、アルカリ土類金属類には、例えばマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等がある。アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の化合物には、水酸化物、酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、塩基性炭酸塩、脂肪酸塩、リン酸塩、リン酸水素酸塩等がある。所定割合は、例えばアルカリ金属化合物としての0.05Nないし0.5NのNaOH水溶液を、処理対象オイル1重量に対して2重量ないし0.50重量用いるように定める。ここでアルカリ金属化合物の濃度を示すのに用いているNは、1リットル当たり1グラム当量のアルカリ金属化合物が水溶液中に存在することを示す規定濃度で、モル濃度(mol/m3)が計量法上の対応概念となっている。特に好ましいNaOH水溶液の濃度は、0.2Nないし0.4N(=mol/リットル)であり、処理対象オイル1重量に対する使用量は1重量ないし0.50重量である。 【0021】 ここで、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の水溶液を処理対象オイルに所定割合で混合すると、水のみを処理対象オイルと混合する場合に比較して、より低いハロゲン離脱処理温度とハロゲン離脱処理圧力でハロゲン離脱処理が行える。水の場合のハロゲン離脱処理反応は、典型的には水の臨界定数である、臨界温度374.2℃、臨界圧力22.12MPa付近で行う必要がある。水の場合のハロゲン離脱処理反応は、超臨界条件下で行う場合であって、例えば内容積4.0cm3の反応器を使用した回分式反応の場合、処理対象オイルの体積を無視すると、水1g使用時における水の分圧は、例えば375℃では22MPaにほぼ等しくなり、425℃では33MPaになる。従って、脱塩反応容器30でのハロゲン離脱処理温度とハロゲン離脱処理圧力を低く維持しながら、所望のハロゲン離脱処理を確保するには、水のみではなくアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の水溶液を処理対象オイルに所定割合で混合するのが望ましい。 【0022】 高圧供給手段20は、このオイル反応水混合液をハロゲン離脱処理圧力で脱塩反応容器30に供給する。脱塩反応容器30は、予めハロゲン離脱処理温度に維持された空間内を、オイル反応水混合液がハロゲン離脱処理圧力で所定滞留時間の間滞留する空間形状を備えている。脱塩反応容器30では、改質反応としてのハロゲン離脱処理反応条件として、塩素を含有する処理対象オイルを密閉容器としての脱塩反応容器30中、少なくとも250℃以上でpHが7以上のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の水溶液(反応水)と接触させて、処理対象オイル中の塩素を反応水と反応させる。すなわち典型的な操業条件では、アルカリ金属としての0.2Nないし0.4NのNaOH水溶液を処理対象オイル1重量に対して1重量ないし0.50重量用いる場合に、ハロゲン離脱処理温度は250℃ないし375℃、ハロゲン離脱処理圧力は8MPaないし20MPa(80気圧~200気圧)、好ましくは10MPaないし15MPa(100気圧~150気圧)、滞留時間は3分ないし15分程度とする。特に好ましくは、ハロゲン離脱処理温度325℃、ハロゲン離脱処理圧力14MPaないし14.5MPa、滞留時間は10分とすると、ハロゲン離脱処理反応がほぼ完全に進行した状態に至る。 【0023】 一般に、ハロゲン離脱処理温度とハロゲン離脱処理圧力を高くすると、滞留時間を短くすると共にアルカリ金属化合物の混合割合を低くでき、逆にハロゲン離脱処理温度とハロゲン離脱処理圧力を低くすると、滞留時間を長くすると共にアルカリ金属化合物の混合割合を高めることで、一定のハロゲン離脱処理が行える。そこで、脱塩反応容器30の容量を大きくしてハロゲン離脱処理温度とハロゲン離脱処理圧力を高くすると、滞留時間を短くできるので、単位容量当りのハロゲン離脱処理能力が高まる。他方、同じ脱塩反応容器30の容量でも、ハロゲン離脱処理温度とハロゲン離脱処理圧力を低くすると、高圧供給手段20と熱供給手段40の能力を抑えることができ、単位処理対象オイル当りのエネルギー消費が少なくてすむ。そこで、必要とされる処理対象オイル能力が定まると、操業費用と設備コストの総コストが最適化されるように、ハロゲン離脱処理温度・ハロゲン離脱処理圧力・滞留時間並びに反応水の混合割合を設計する。」 「【0026】 脱塩再生オイル貯蔵部60は、冷却型油分回収部50で回収された脱塩再生オイルを貯蔵する。ここでは、脱塩再生オイル貯蔵部60に貯蔵された脱塩再生オイルは、熱供給手段40での燃料使用に適する重質ナフサ・軽油・重油成分が含まれる。したがって、脱塩反応容器の加熱用の燃料として脱塩再生オイルを利用する構成とすると、脱塩再生オイルの運搬費用が発生せずに再利用が円滑に進むと共に、運転コストの削減に寄与する。 【0027】 オイル精製部70は、脱塩再生オイル貯蔵部60に貯蔵された脱塩再生オイルを精製する施設である。ここで、精製とは、成分の沸点の差を利用して蒸留することをいい、石油製品では液化石油ガス、ガソリン、ナフサ、灯油、ジェット燃料油、軽油、潤滑油ベースオイル、重油、アスファルト等がある。石油精製では、蒸留プロセスとして常圧蒸留、減圧蒸留などがあり、化学反応を伴うプロセスには水素化脱硫、接触改質、接触分解などがある。例えば、軽質ナフサ(例えば沸点30℃~100℃)、重質ナフサ(例えば沸点100℃~200℃)、軽油(例えば沸点180℃~350℃)、重油(例えば沸点300℃以上)がある。オイル精製部70は、石油化学プラントとして建設されるもので、設備投資額が高額になるため、大規模の脱塩再生オイル貯蔵部60が建設される場合に付設するとよい。」 「【0040】 このように構成された装置の動作を説明する。図3は、本発明の廃油の燃料資源化方法を説明するフローチャートで、ここでは廃油の高度化リサイクル方法として表示してある。まず、処理対象オイルに含有される金属の切粉や金属粉末を、金属除去手段13によって除去する(S102)。そして、処理対象オイルとアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物(例えばNaOH)の水溶液とを所定割合で混合し(S104)、オイル反応水混合タンク18に貯蔵する。この所定割合は、脱塩反応容器でのハロゲン離脱処理圧力・ハロゲン離脱処理温度・滞留時間に応じて、必要とするハロゲン離脱処理が行える値に定める。 【0041】 このオイル反応水混合液を、高圧ポンプ22を用いてハロゲン離脱処理圧力で脱塩反応容器30に供給する(S106)。オイル反応水混合液は、脱塩反応容器30に設けられた媒体過熱用管路37でハロゲン離脱処理温度近くに昇温される(S108)。次にハロゲン離脱処理圧力・ハロゲン離脱処理温度に保持された内部シェル38でのオイル反応水混合液の滞留時間を確保する(S110)。これにより、オイル反応水混合液におけるハロゲン離脱処理反応が促進される。 【0042】 そして、冷却器51と油水分離機53を用いて、脱塩処理されたオイル反応水混合体を冷却する(S112)。そして、オイル循環タンク57によって再利用可能な脱塩再生オイルを回収する(S114)。この際に、脱塩再生オイルに含まれる水分を除去するのがよい。そして、油分貯蔵タンク61において、脱塩再生オイルをバーナー45の燃料として使用し、余剰の脱塩再生オイルについては貯油タンク62に貯蔵する(S116)。そして、貯油タンク62に貯蔵された脱塩再生オイルは、各種の燃料や石油化学用原料として再利用できる(S118)。この再利用は、従前は焼却処理されていた処理対象オイルを脱塩再生オイルとして再利用するものなので、二酸化炭素の発生削減に寄与する。 【0043】 なお、上記実施の形態においては、処理対象オイルとアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物(例えばNaOH)の水溶液とを所定割合で混合して、水のみと比較してハロゲン離脱処理圧力とハロゲン離脱処理温度を低く保持しながら、滞留時間を調整して必要とするハロゲン離脱処理を行う場合を示している。しかし、処理対象オイルに含まれる油分には多様な組み合わせが存在しており、また脱塩反応容器の操業条件の最適値も原油価格や電力価格の変動に応じて変動する。そこで、別途、総合計装管理システムを設けて、操業費用と設備コストの総コストが最適化されるように、ハロゲン離脱処理温度・ハロゲン離脱処理圧力・滞留時間並びに反応水の混合割合を随時調節できるようにしてもよい。」 「【図1】 [図:0001426156000001.jpg] 」 「【図3】 [図:0001426156000002.jpg] 」 イ 引用文献2 原査定の拒絶の理由で引用された本件優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2003-34794号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 「【請求項10】 廃プラスチックを熱分解及び/又は接触分解して得られた分解油を密閉容器中、250℃以上で水と接触させるか、又は200℃以上でpHが7以上のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の水溶液と接触させて、前記油中の塩素及び窒素を水又は前記水溶液と反応させ、反応後、油と水相を液液分離することを特徴とする、該分解油の改質方法。」 「【0002】 【従来の技術】現在の廃プラスチック分解油化方法による分解生成油は原料廃プラスチックの種類に応じて、例えば、50~1000ppm程度の有機塩素又は/及び無機塩素と800~2000ppm程度の有機窒素又は/及び無機窒素が含まれており、これらは燃焼時にHClやダイオキシン及びNOXを発生させる原因となる。従って、同分解油を脱塩素、脱窒素する技術の開発は重要な課題となっている。・・・」 「【0016】実施例1 原料の廃プラスチック熱分解油として、新潟プラスチック油化センター:歴世礦油(株)製分留塔中段油[A重油相当留分。元素分析値(w%) C:86.5、H:11.8、O:0.2、N:0.115、S:0.0043、Cl:62ppm(無機Cl:8ppm,有機Cl:54ppm)]を用いた。反応は、外径1/2吋,肉厚2mm,長さ6.7cmのSUS316製管の両端をcap型ユニオンで密閉した封管(内容積4.0cm3)(回分式反応器)を用い、N2雰囲気下、温度:室温~425℃(坩堝炉)、反応時間15-60分で実施した。反応原料組成は熱分解油1.0g+水又はアルカリ水溶液1.0gとした。反応終了後、内容物をエチルエーテルと水で洗浄・抽出し、油相と水相を分離した。油相は無水Na2SO4で乾燥後、室温でエーテルを減圧留去して生成油を得、元素分析法で残留窒素濃度を決定した。水相は0.025mol/L H2SO4で中和後、イオンクロマトグラフ法で塩化物イオン濃度を測定し、生成油中の残留塩素濃度を決定した。 【0017】(1)水による燃料油(廃プラスチック熱分解油)の改質(温度の影響) 結果を表1及び図2に示す。但し、反応時間は何れも30分である。 【0018】 【表1】 [図:0001426156000003.jpg] ・・・ 【0033】(7)燃料油の改質に及ぼすアルカリ濃度の影響 結果を表7に示す。但し、反応温度:300℃、反応時間:30分。 【0034】 【表7】 [図:0001426156000004.jpg] 【0035】表7から明らかな如く、アルカリ濃度は、0.05Nよりも0.10N、0.10Nよりも0.20Nと、高いほど明らかによい結果がでている。」 「【0036】実施例2 原料として、実施例1と同じ廃プラスチック熱分解油を用い、反応器として、流通式充填層管型反応器[外径1/2吋,肉厚2mm,長さ16.7cmのSUS316製管(内容積10.0cm3)の内部に3mmラシヒリングを充填したものを1本(内容積6.2cm3 )又は2本(内容積11.6cm3)を直列に接続したもの]を使用して、改質反応を実施した。 ・・・ 【0040】(2)燃料油の改質に及ぼす反応温度の影響 結果を表9及び図7に示す。但し、反応原料供給比:水又は水溶液/燃料油=1/1(w/w)、反応管内流体線速度:6.07cm/min、反応圧力:4.5MPa(250℃),6.5MPa(275℃),9.0MPa(300℃),12.5MPa(325℃)。 【0041】 【表9】 [図:0001426156000005.jpg] 【0042】但し、図7中、△はH2O(滞留時間2.75分)の、○は0.05N NaOH(2.75分)の、□は0.05N NaOH(5.50分)の、◇は0.10N NaOH(5.50分)の場合の結果をそれぞれ示す。表9及び図7から明らかな如く、流通式反応の場合も、反応温度は高いほど、また、アルカリ濃度も高いほど明らかによい結果が得られることが判る。更に、回分式反応における反応時間に相当する滞留時間も当然のことながら長い方がよい結果が得られている。」 「【図7】 [図:0001426156000006.jpg] 」 ウ 引用文献6 原査定の拒絶の理由で引用された本件優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開2015/087938号(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。 「[請求項1] 多孔性酸化物からなる担体と、該担体に担持されたニッケルおよびモリブデンとを含む水素化分解処理用触媒であって、 該水素化分解処理用触媒は水素還元化処理されてなり、 ニッケル酸化物(NiO)換算の前記ニッケルの含有量(X)とモリブデン酸化物(MoO3)換算の前記モリブデンの含有量(Y)との合計に対するニッケル酸化物(NiO)換算の前記ニッケルの含有量(X)の質量比率(X/(X+Y))が0.5以上0.9以下である、水素化分解処理用触媒。 ・・・ [請求項7] 請求項1~6のいずれか1項に記載の水素化分解処理用触媒を使用して、脂肪酸、脂肪酸エステルおよびアルキルフェノール類から選ばれる少なくとも1種以上を含む植物油脂、動物油脂および/または石炭液化油から炭化水素を製造する炭化水素の製造方法。」 「[0002] 軽油燃料およびジェット燃料などにバイオマス原料を利用することは二酸化炭素の排出量削減において極めて有効である。しかし、バイオマス原料を利用して製造した軽油燃料およびジェット燃料などは酸素分を含有し、その酸素分が内燃機関に悪影響を及ぼすことが懸念されている。・・・」 エ 引用文献7 原査定の拒絶の理由で引用された本件優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2011-515539号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。 「【0002】 ディーゼル燃料や航空燃料の需要が世界的に増大するにつれて、これらの燃料を製造する上で原油以外の供給源に対する関心が益々高まってきている。このような供給源の1つが、再生可能供給原料と呼ばれているものである。これらの再生可能供給原料としては、コーン油、菜種油、キャノーラ油、大豆油、および藻油等の植物油;非食用タロー等の動物性脂肪;魚油;ならびに、黄色油脂、褐色油脂、および下水スラッジ等の種々の廃棄物流れ;などがあるが、これらに限定されない。これらの供給原料の一般的な特徴は、トリグリセリドと遊離脂肪酸(FFA)で構成されているという点である。これら化合物のどちらも、8~24個の炭素原子を有する脂肪族炭素鎖を含有する。トリグリセリドまたはFFA中の脂肪族炭素鎖はさらに、モノ不飽和、ジ不飽和、またはポリ不飽和の場合がある。再生可能供給源からのグリセリドの一部は、トリグリセリドの代わりに、あるいはトリグリセリドに加えて、モノグリセリドまたはジグリセリドの場合がある。」 「【0004】 本明細書に記載されているのは、ディーゼル燃料沸点範囲生成物と航空燃料沸点範囲生成物を生成させるために、再生可能供給原料を水素化、脱酸素、異性化、および選択的に水素化分解する1つ以上の工程を含む方法である。水素化処理触媒の存在下で水素雰囲気において再生可能供給原料を単に水素化および脱酸素すると、供給原料の脂肪酸組成物と同等か、または該脂肪酸組成物よりやや短い鎖長を有する直鎖パラフィンが得られる。多くの供給原料の場合、このアプローチでは、ディーゼル燃料に対する一般的な規格には適合するが、航空燃料に対する規格には適合しない燃料が得られる。選択的水素化分解反応は、より低い分子量の生成物をできるだけ抑えつつ、航空燃料沸点範囲のパラフィンに対する選択性を高めるように炭素鎖長を短くする。リサイクル炭化水素と供給原料との体積比は0.1:1~8:1の範囲であり、水素の溶解性を増大させ、且つ反応混合物中の反応熱をより均一に分散させるメカニズムをもたらす。リサイクルの結果として、実施態様によっては、より小さな反応器体積を、それほど過剰ではない水素を、より低い操作圧力を、またはこれらの任意の組み合わせを使用できるようになるであろう。 【0005】 異性化・選択的水素化分解触媒の性能は、異性化ゾーンおよび選択的水素化分解ゾーンへの供給物から少なくとも二酸化炭素を除去することによって改良される。酸素含有分子(水、二酸化炭素、および他の炭素酸化物を含む)が存在すると、異性化触媒の不活性化を引き起こすことがある。二酸化炭素、一酸化炭素、および水等の酸素含有分子は、必要に応じて精留ゾーンを収容する選択的高温高圧水素ストリッパーを使用して除去される。」 「【0008】 前述のように、本発明は、再生可能供給原料(例えば、植物や動物を起源とする供給原料)から、2つの炭化水素流れ(ディーゼル燃料沸点範囲生成物と航空燃料沸点範囲生成物)を製造するための方法に関する。再生可能供給原料という用語は、原油から得られるもの以外の供給原料を含むように意図されている。この種類の供給原料を表わすのに使用されている他の用語がバイオ再生可能油脂である。本発明において使用できる再生可能供給原料は、グリセリドと遊離脂肪酸(FFA)とを含む再生可能供給原料のすべてを含む。グリセリドのほとんどはトリグリセリドであるが、モノグリセリドやジグリセリドが存在していて、同様に処理されることがある。これらの処理に適した他の種類の化合物は、脂肪酸メチルエステル(FAME)や脂肪酸エチルエステル(FAEE)等の脂肪酸アルキルエステル(FAAE)である。これら再生可能供給原料の例としては、キャノーラ油、コーン油、豆油(soy oils)、菜種油(rapeseed oil)、大豆油(soybean oil)、菜種油(colza oil)、タル油、ヒマワリ油、麻実油、オリーブ油、アマニ油、ヤシ油、ヒマシ油、落花生油、パーム油、からし油、綿実油、カメリナ油、ジャトロファ油、ハマナ油、タロー、イエローグリースとブラウングリース、ラード、鯨油、乳脂肪(fats in milk)、魚油、藻油、および下水スラッジ等があるが、これらに限定されない。一般的な植物性脂肪または動物性脂肪のグリセリドとFFAは、8~24個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素鎖をその構造中に含有し、油脂の大部分は、16個と18個の炭素原子を有する脂肪酸を高濃度にて含有する。再生可能供給原料と石油由来炭化水素との混合物またはコフィード(co-feeds)も、供給原料として使用することができる。特に上記供給原料と組み合わせてコフィード成分として使用することができる他の供給原料成分としては、使用済みモーターオイルと工業用潤滑油;使用済みパラフィンワックス;石炭ガス化から誘導される液体;バイオマス;下流にて液化工程(例えばフィッシャートロプシュ技術)が施される天然ガス;廃プラスチック(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、および低密度ポリエチレン)の解重合、熱分解、または化学分解から誘導される液体;ならびに、石油化学プロセスや化学プロセスからの副生物として生成する他の合成油;などがある。上記供給原料の混合物も、コフィード成分として使用することができる。コフィード成分を使用することの1つの利点は、石油ベースのプロセスもしくは他のプロセスからの廃棄物であると見なされているものが、最新のプロセスに対する有用なコフィード成分に変換されることである。」 4 引用文献1を主引用例とした検討 (1)引用文献1に記載された発明 引用文献1の図3に着目し、同【0001】~【0004】、【0005】及び【0022】の記載を参酌すると、次の発明(以下「引用発明1」という。)が認定できる。 「廃油の高度化リサイクル方法であって、 処理対象オイルに含有される金属の切粉や金属粉末を除去するステップと、 処理対象オイルとアルカリ金属化合物水溶液とを所定割合で混合するステップと、 このオイル反応水混合液をハロゲン脱離処理圧力で脱塩反応容器に供給するステップと、 オイル反応水混合液が媒体過熱用管路37内でハロゲン脱離処理温度近くに昇温されるステップと、 ハロゲン脱離処理圧力・ハロゲン脱離処理温度に維持された空間内でオイル反応水混合液が所定滞留時間の間滞留するステップと、 脱塩処理されたオイル反応水混合体を冷却するステップと、 脱塩再生オイルを回収するステップと、 脱塩再生オイルを油分貯蔵タンクに貯蔵し、バーナーの燃料として使用するステップと、 余剰の脱塩再生オイルは貯油タンク62に貯蔵するステップとを有する方法であって、 前記廃油及び処理対象オイルは、機械加工における切削加工や研削加工に用いられる切削油の使用後や、内燃機関のように回転運動や往復運動を行なう機械部品間でも摩擦を低減するオイルの交換において発生する使用済みオイルであって、当該使用済みオイルの塩素混入比率は、例えば2000ppm程度であり、ハロゲン対策を施していない一般の燃焼施設で利用となる程度に使用済みオイルから塩素などのハロゲン元素を除去するには、例えば、包装容器リサイクル協会の設定している炭化水素油の塩素含有率基準(例えば100ppm)まで、使用済みオイルの塩素含有率を低減させることが考えられるものであり、 前記処理対象オイルとアルカリ金属化合物水溶液とを所定割合で混合するステップ~ハロゲン脱離処理圧力・ハロゲン脱離処理温度に維持された空間内でオイル反応水混合液が所定滞留時間の間滞留するステップは、典型的な操業条件では、アルカリ金属としての0.2Nないし0.4NのNaOH水溶液を処理対象オイル1重量に対して1重量ないし0.50重量用いる場合に、ハロゲン離脱処理温度は250℃ないし375℃、ハロゲン離脱処理圧力は8MPaないし20MPa(80気圧~200気圧)、好ましくは10MPaないし15MPa(100気圧~150気圧)、滞留時間は3分ないし15分程度とする。特に好ましくは、ハロゲン離脱処理温度325℃、ハロゲン離脱処理圧力14MPaないし14.5MPa、滞留時間は10分とすると、ハロゲン離脱処理反応がほぼ完全に進行した状態に至るものである、 廃油の高度化リサイクル方法。」 (2)対比 ア まず、本件補正発明の「再生可能な有機材料(10)」、「精製された再生可能な有機材料(31、51))」及び「精製された水素化された、再生可能な有機材料(61)」の関係は、本件明細書の【0069】~【0071】の記載からみて、「再生可能な有機材料(10)」→精製(塩素含有量を低減)→「精製された再生可能な有機材料(31、51)」→水素化→「精製された水素化された、再生可能な有機材料(61)」の関係にある。 本件補正発明の「再生可能な有機材料(10)」とは、「再生可能な有機材料のフィード(10)」、すなわち供給原料を意味するものであって、本件補正発明の記載及び本件明細書の【0035】の記載からみて、「使用済み潤滑油(ULO)」を含む概念である。これに対し、引用発明1の「廃油」及び「処理対象オイル」は、「機械加工における切削加工や研削加工に用いられる切削油の使用後や、内燃機関のように回転運動や往復運動を行なう機械部品間でも摩擦を低減するオイルの交換において発生するもの」であるから、本件補正発明における「再生可能な有機材料(10)」であって、「使用済み潤滑油(ULO)」にも相当する。 イ 引用発明1の「廃油の高度化リサイクル方法」は、廃油に含まれる2000ppm程度の塩素を、100ppm程度まで減少させることが想定されているから、引用発明1は、本件補正発明の「20ppmより多いClを含み、前記方法は、以下の工程(a)で提供される前の再生可能な有機材料の塩素含有量の50%より少ない量を含む精製された」「再生可能な有機材料」「を得るために」「精製する工程」を備えるものである。 ウ 引用発明1の「処理対象オイルに含有される金属の切粉や金属粉末を除去するステップ」は、その前提として、処理対象オイルが装置に供給されることが明らかであるから、引用発明1は、本件補正発明における「(a)再生可能な有機材料(10)を提供する工程」を備えるものである。 エ 引用発明1の「前記処理対象オイルとアルカリ金属化合物水溶液とを所定割合で混合するステップ~ハロゲン脱離処理圧力・ハロゲン脱離処理温度に維持された空間内でオイル反応水混合液が所定滞留時間の間滞留するステップ」は、「典型的な操業条件では、アルカリ金属としての0.2Nないし0.4NのNaOH水溶液を処理対象オイル1重量に対して1重量ないし0.50重量用いる場合に、ハロゲン離脱処理温度は250℃ないし375℃(特に好ましくは325℃)、ハロゲン離脱処理圧力は8MPaないし20MPa」で処理されるのであるから、引用発明1は、本件補正発明における「前記再生可能な有機材料をアルカリ金属水酸化物(30)の水性溶液の存在下、」所定の「アルカリ金属水酸化物の濃度で、加熱(20、40)する工程(b1)によって、精製する工程」を備えるものである。 (3)一致点、相違点 ア そうすると、本件補正発明と引用発明1とは、次の点で一致する。 「再生可能な有機材料(10)を精製するための方法であって、前記再生可能な有機材料が、廃棄物プラスティック熱分解オイル(WPPO)、廃タイヤ熱分解オイル(ELTPO)、および/または使用済み潤滑油(ULO)であり、かつ、20ppmより多いClを含み、前記方法は、以下の工程(a)で提供される前の再生可能な有機材料の塩素含有量の50%より少ない量を含む精製された、再生可能な有機材料を得るために、 (a)再生可能な有機材料(10)を提供する工程、 (b)前記再生可能な有機材料(10)を、工程(a)で提供される前の前記再生可能な有機材料の塩素含有量の50%より少ない量を含む精製された再生可能な有機材料(31、51)を得るために、前記再生可能な有機材料をアルカリ金属水酸化物(30)の水性溶液の存在下、 加熱(20、40)する工程(b1)によって、精製する工程 を含む方法。」 イ 相違点 本件補正発明と引用発明1との相違点は、次の2点である。 (ア)相違点1-1 前記(b)の工程が、本件補正発明においては、「200~300℃の温度で、0.1~10.0mol/Lの前記水性のアルカリ金属水酸化物の濃度で、加熱」と特定されているのに対して、引用発明1においては、「アルカリ金属としての0.2Nないし0.4NのNaOH水溶液を処理対象オイル1重量に対して1重量ないし0.50重量用いる場合に、ハロゲン離脱処理温度は250℃ないし375℃(特に好ましくは325℃)」である点。 (イ)相違点1-2 本件補正発明においては、「(c)水素化処理触媒の存在下で、前記精製された再生可能な有機材料を水素化処理する(60)工程」を含むのに対して、引用発明1においては含まれていない点。 (4)相違点についての判断 ア 相違点1-1について まず、引用発明1の「0.2ないし0.4NのNaOH水溶液」について、引用文献1の【0020】には「0.2Nないし0.4N(=mol/リットル)」と記載され、また、N(規定)は、溶液1Lに含まれる酸や塩基をグラム当量で示した濃度であって、モル濃度に、酸や塩基の価数をかけたものであることが技術常識であるから、「0.2ないし0.4NのNaOH水溶液」をmol/Lに換算すると、「0.2ないし0.4mol/LのNaOH水溶液」と同義である。 そうすると、引用発明のアルカリ金属水酸化物の濃度は、本件補正発明の「0.1~10.0mol/L」の範囲に含まれるものである。 また、引用発明1の「ハロゲン離脱処理温度」について、前記3(2)アに摘記した引用文献1の段落【0023】には「一般に、ハロゲン離脱処理温度とハロゲン離脱処理圧力を高くすると、滞留時間を短くすると共にアルカリ金属化合物の混合割合を低くでき、逆にハロゲン離脱処理温度とハロゲン離脱処理圧力を低くすると、滞留時間を長くすると共にアルカリ金属化合物の混合割合を高めることで、一定のハロゲン離脱処理が行える。・・・他方、同じ脱塩反応容器30の容量でも、ハロゲン離脱処理温度とハロゲン離脱処理圧力を低くすると、高圧供給手段20と熱供給手段40の能力を抑えることができ、単位処理対象オイル当りのエネルギー消費が少なくてすむ。そこで、必要とされる処理対象オイル能力が定まると、操業費用と設備コストの総コストが最適化されるように、ハロゲン離脱処理温度・ハロゲン離脱処理圧力・滞留時間並びに反応水の混合割合を設計する。」と記載されており、引用発明1において、「ハロゲン離脱処理温度」は、250~375℃の温度の範囲で、操業費用や設備コストを考慮しながら、最適設計されるものとされている。また、前記3(2)イに摘記したした引用文献2の段落【0041】【表9】からみて、250~300℃の範囲において、脱塩素が起こることは技術常識であるといえる。そうすると、引用発明1において、「ハロゲン離脱処理温度」を250~300℃程度に調整することには特段の困難性はないし、その効果についても、当業者の予測の域を出るものではない。 したがって、相違点1-1は当業者が容易に想到しうる事項であるといえる。 イ 相違点1-2について 引用発明1を認定した引用文献1の【0026】、【0027】及び【図1】には「脱塩再生オイル貯蔵部60」の後段に「オイル精製部70」を設けること、及び「オイル精製部70は、脱塩再生オイル貯蔵部60に貯蔵された脱塩再生オイルを精製する施設である。・・・石油精製では、蒸留プロセスとして常圧蒸留、減圧蒸留などがあり、化学反応を伴うプロセスには水素化脱硫、接触改質、接触分解などがある。」と記載されている。そうすると、引用発明1の「余剰の脱塩再生オイルは貯油タンク62に貯蔵するステップ」の後段において、水素化脱硫のような水素化処理を行うことは当然に想定されることであって、その際に水素化処理触媒を用いることは技術常識であるから、相違点1-2は当業者が必要に応じてなし得ることである。 (5)請求人の主張に対して 請求人は、審判請求書において、「引用文献1に記載のアルカリ金属水酸化物の最大濃度は、引用文献1の記載から0.4Nであることが理解できます。これは、本願発明の0.1~10.0mol/Lという濃度よりも10倍以上低い濃度です。」と主張する。しかしながら、前記(4)アで検討したとおり、1N=1mol/Lであるから、相違があると主張することがそもそも失当である。なお、引用文献1の段落【0020】には、モル濃度(mol/m3)という記載もあるが、これが正しいとすると、mol/1000Lとなって、定義と一致しないから、この記載は、(mol/dm3)の誤記であることは明らかである。 また、請求人は「本願発明の方法の条件は、引用文献記載の条件と比較してより穏やかな条件であります。・・・例えば本願発明の実施例における温度は240℃であり、これは、引用文献1に記載の好ましい温度(少なくとも325℃)よりも顕著に低い温度であります。次に、圧力は・・・本願発明の方法においては、圧力は調整されたり制御されたりする必要は全くありません・・・」とも主張する。しかしながら、本件補正発明1において、圧力の条件は特定されていないし、また、前記(4)イで検討したとおり、引用発明1における好ましい温度は、経済性等を考慮すれば低く設定すべきことも理解できるのであるから、引用発明1において、250~300℃程度に調整することを妨げる事情は存在しない。 (6)小括 そうすると、相違点1-1及び相違点1-2のいずれも当業者が容易に想到し得ることであるので、本件補正発明は引用発明1及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。 5 引用文献2を主引用例とした検討 (1)引用発明2 ア 引用文献2の段落0016以下に記載された実施例1(多数の実施例を包含)は、包括して、また、引用文献2の請求項10の記載からみて、次のように表現できる。 「原料の廃プラスチック熱分解油として、分留塔中段油[A重油相当留分。元素分析値(w%) C:86.5、H:11.8、O:0.2、N:0.115、S:0.0043、Cl:62ppm(無機Cl:8ppm,有機Cl:54ppm)]を用いた分解油の改質方法であって、SUS製の管内で、反応原料組成は熱分解油1.0g+水又はアルカリ水溶液1.0gとし、N2雰囲気下、温度:室温~425℃(坩堝炉)、反応時間15-60分反応させ、反応終了後、内容物をエチルエーテルと水で洗浄・抽出し、油相と水相を分離する、分解油の改質方法。」 イ ここで、引用文献2の段落0033~0034に記載された例の表7の最下段に記載された実施例1に包含される1例について、アルカリの種類や反応条件の数値などを前記アの発明に当てはめると次のような発明(以下「引用発明2」という。)が認定できる。 「原料の廃プラスチック熱分解油として、分留塔中段油[A重油相当留分。元素分析値(w%) C:86.5、H:11.8、O:0.2、N:0.115、S:0.0043、Cl:62ppm(無機Cl:8ppm,有機Cl:54ppm)]を用いた分解油の改質方法であって、SUS製の管内で、反応原料組成は熱分解油1.0g+0.20NのNaOH水溶液1.0gとし、N2雰囲気下、温度:300℃(坩堝炉)、反応時間30分反応させ、反応終了後、内容物をエチルエーテルと水で洗浄・抽出し、油相(生成油塩素含有量0ppm)と水相を分離する、分解油の改質方法。」 (2)対比 ア 引用発明2における「廃プラスチック熱分解油」は、本件補正発明における「再生可能な有機材料」であり、かつ、「廃棄物プラスティック熱分解オイル(WPPO)」に相当し、また、引用発明2の「廃プラスチック熱分解油」は、62ppmのClを有するから、本件補正発明の「20ppmより多いClを含み」を充足する。 イ 引用発明2における「改質方法」は、本件補正発明における「精製するための方法」に相当する。 ウ 引用発明2における0.20N(=0.20mol/L)のNaOH水溶液は、本件発明1における「0.1~10.0mol/Lの前記水性のアルカリ金属水酸化物の濃度」に相当し、引用発明2における塩素は、処理によって、62ppmから0ppmに減少しているから、本件補正発明における「工程(a)で提供される前の前記再生可能な有機材料の塩素含有量の50%より少ない量を含む精製された再生可能な有機材料(31、51))を得る」を充足するものである。 エ 引用発明2における「温度:300℃(坩堝炉)」は、SUS製の管を坩堝炉に入れたものと解されるから、SUS製の管の内部も300℃であるといえるから、本件補正発明の「200~300℃の温度で」を充足する。 (3)一致点、相違点 ア 以上から、本件補正発明と引用発明2とは次の点で一致する。 「再生可能な有機材料(10)を精製するための方法であって、前記再生可能な有機材料が、廃棄物プラスティック熱分解オイル(WPPO)、廃タイヤ熱分解オイル(ELTPO)、および/または使用済み潤滑油(ULO)であり、かつ、20ppmより多いClを含み、前記方法は、以下の工程(a)で提供される前の再生可能な有機材料の塩素含有量の50%より少ない量を含む精製された、再生可能な有機材料を得るために、 (a)再生可能な有機材料(10)を提供する工程、 (b)前記再生可能な有機材料(10)を、工程(a)で提供される前の前記再生可能な有機材料の塩素含有量の50%より少ない量を含む精製された再生可能な有機材料(31、51))を得るために、前記再生可能な有機材料をアルカリ金属水酸化物(30)の水性溶液の存在下、200~300℃の温度で、0.1~10.0mol/Lの前記水性のアルカリ金属水酸化物の濃度で、加熱(20、40)する工程(b1)によって、精製する工程 を含む方法。」 イ 本件補正発明と引用発明2とは次の点で相違する。 <相違点2> 本件補正発明においては、「(c)水素化処理触媒の存在下で、前記精製された再生可能な有機材料を水素化処理する(60)工程」を含むのに対して、引用発明2においては含まれていない点。 (4)相違点についての判断 ア 廃油の水素化処理について、バイオ原料が含まれる場合に、例えば前記3(2)エに摘記した引用文献7の段落【0008】等で示唆されるように、水素化処理が必要となることは明らかであるから、引用発明2において得られたオイルをバイオマスと混合した場合に、水素化処理工程を追加することにより、相違点2は当業者が必要に応じてなし得ることに過ぎない。 イ また、引用発明2における「原料の廃プラスチック熱分解油」には、酸素が0.2ppm含まれており、例えば前記3(2)ウに摘記した引用文献6の段落[0002]等で示唆されるように、酸素分が内燃機関に影響することを防ぐために、水素化処理を行おうとすることも当業者が容易に想到しうることといえる。また、水素化処理を行う際に水素化処理触媒の存在下で行う必要があることは技術常識である。 ウ したがって、本件補正発明は、引用発明2並びに引用文献6及び引用文献7に記載された技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6 小括 前記4、5において検討したように、本件補正発明は、独立特許要件を満たさないから、本件補正は不適法であり、本件補正は却下すべきものである。 第3 本件発明についての検討 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~24に係る発明は、令和4年8月1日にされた誤訳訂正により補正された特許請求の範囲の請求項1~24に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。 2 原査定の概要 令和4年8月9日付けの拒絶査定(以下「原査定」という。)は、次の理由を含むものである。 本願発明は、本願の優先日前に頒布された引用文献1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2、6、7及びその記載事項は、前記第2の[理由]3(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]で検討した本件補正発明から、「再生可能な有機材料」の種類及び「アルカリ金属水酸化物の濃度」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]に記載したとおり、引用文献1又は引用文献2、及び、技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-020992

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