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特許拒絶査定不服審判

2022-020750

エンジンシステム

審判番号
2022-020750
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-085579
請求日
2022年12月21日
審決日
2023年08月03日
公報発行日
2023年09月29日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
  • 【請求人】株式会社三井E&S DU
  • 【請求人代理人】弁理士法人青海国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 水野 治彦
  • 審判官 吉村 俊厚
  • 審判官 山本 信平
分類
P18 .121-WY (F02D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2018-85579「エンジンシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和元年10月31日出願公開、特開2019-190403、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年4月26日の出願であって、令和4年5月20日付け(発送日:令和4年5月24日)で拒絶理由が通知され、令和4年7月15日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和4年10月13日付け(発送日:令和4年10月18日付け)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して令和4年12月21日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は以下のとおりである。 (進歩性)この出願の請求項1ないし6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項1ないし3に対して:引用文献1ないし3 ・請求項4ないし6に対して:引用文献1ないし5 <引用文献一覧> 1.特開2016-125417号公報 2.特開2004-278415号公報 3.韓国公開特許第10-2012-0015386号公報 4.特開2003-065121号公報 5.特開2007-077828号公報 第3 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、令和4年7月15日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。 「【請求項1】 吸入流路および排気流路が接続された燃焼室と、 前記排気流路に設けられた排気浄化触媒と、 前記排気流路に配されるタービン、および、前記吸入流路に配されるコンプレッサを有する過給機と、 前記排気流路における前記タービンの上流側と下流側とを接続するバイパス流路と、 前記バイパス流路を開閉するバイパス弁と、 前記排気浄化触媒の温度を検出する検出部と、 前記バイパス弁および前記燃焼室の圧縮比を制御する制御部と、 を備え、 前記制御部は、前記排気浄化触媒の温度が第1閾値未満である場合に、前記バイパス弁を開状態に制御し、前記圧縮比を、シリンダ内の最大燃焼圧力が予め設定されたシリンダ内圧上限値に最も近づく第1の圧縮比に制御し、 前記制御部は、前記排気浄化触媒の温度が前記第1閾値以上である場合に、前記バイパス弁を閉状態に制御し、前記第1の圧縮比を維持する、 エンジンシステム。 【請求項2】 シリンダ内におけるピストンの上死点位置を変更する圧縮比可変機構を有する 請求項1に記載のエンジンシステム。 【請求項3】 前記制御部は、前記排気浄化触媒の温度が前記第1閾値より大きい第2閾値以上である場合に、前記バイパス弁を閉状態に制御し、前記圧縮比を前記第1の圧縮比よりも小さい第2の圧縮比に制御する 請求項1または2に記載のエンジンシステム。 【請求項4】 前記制御部は、前記排気浄化触媒の温度が前記第1閾値未満である場合に、燃料噴射タイミングを第1燃料噴射タイミングよりも遅い第2燃料噴射タイミングに制御し、前記圧縮比を前記第1の圧縮比に制御する 請求項1~3のいずれか1項に記載のエンジンシステム。 【請求項5】 前記制御部は、前記排気浄化触媒の温度が前記第1閾値以上である場合に、前記燃料噴射タイミングを前記第1燃料噴射タイミングに制御し、前記第1の圧縮比を維持する 請求項4に記載のエンジンシステム。 【請求項6】 前記制御部は、前記排気浄化触媒の温度が前記第1閾値未満である場合に、燃料噴射タイミングを第1燃料噴射タイミングよりも遅い第2燃料噴射タイミングに制御し、前記圧縮比を前記第1の圧縮比に制御し、 前記制御部は、前記排気浄化触媒の温度が前記第2閾値以上である場合に、前記燃料噴射タイミングを前記第1燃料噴射タイミングに制御し、前記圧縮比を前記第2の圧縮比に制御する 請求項3に記載のエンジンシステム。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様。)。 (1)「【0001】 本発明は内燃機関に関する。」 (2)「【0017】 吸気ポート8は吸気枝管11を介してサージタンク12に連結され、各吸気枝管11にはそれぞれ対応する吸気ポート8内に向けて燃料を噴射するための燃料噴射弁13が配置される。すなわち、本実施形態の内燃機関はポート噴射式内燃機関である。なお、内燃機関は筒内噴射式内燃機関であってもよく、この場合、燃料噴射弁13は各吸気枝管11に取付けられる代りに各燃焼室5内に配置される。サージタンク12は吸気ダクト14を介してエアクリーナ15に連結され、吸気ダクト14内にはアクチュエータ16によって駆動されるスロットル弁17と例えば熱線を用いた吸入空気量検出器18とが配置される。吸気ポート8、吸気枝管11、サージタンク12及び吸気ダクト14は、空気及び燃料を含む混合気を燃焼室5に導く吸気通路を形成する。 【0018】 また、吸気ダクト14のスロットル弁17と吸入空気量検出器18との間には、過給器28及びインタークーラ29が配置されている。過給器28は、ターボチャージャ又はスーパーチャージャのコンプレッサであり、燃焼室5に供給される空気を過給することができる。過給器28の作動は電磁クラッチ等を使用して制御される。インタークーラ29は、吸気通路において過給器28の下流側に配置され、過給器28により加圧された吸気の温度を低下させることができる。 【0019】 一方、排気ポート10は排気マニホルド19を介して例えば三元触媒20を内蔵した触媒ケーシング22に連結され、排気マニホルド19内には空燃比センサ21が配置される。排気ポート10、排気マニホルド19及び触媒ケーシング22は、燃焼室5における混合気の燃焼によって生じた排気ガスを排出する排気通路を形成する。」 (3)「【0066】 以上をまとめると、本実施形態の内燃機関によれば、無負荷運転中又は軽負荷運転中において、触媒20の暖機中には暖機完了後に比べて点火時期が遅角せしめられると共にバルブオーバーラップ中に混合気が燃焼室を吹き抜ける吹き抜け量が多くなるように過給器28の動作及びバルブオーバーラップ量が制御される。また、燃焼室5に供給される空気の圧力が増大するように過給器28の動作が制御される。このため、排気ガスの後燃えを促進させることができる。加えて、本実施形態の内燃機関によれば、触媒20の暖機中には、暖機完了後に比べて、吸気弁7の閉弁時期が吸気下死点から離れるように制御されると共に、暖機完了後に比べて吸気弁7の閉弁時期を吸気下死点から離したことに伴う実圧縮比の低下が小さくなるように機械圧縮比が増大せしめられる。これにより、過給器28の動作に伴う燃焼トルクの増大を抑制しつつ、燃焼安定性の悪化を抑制することができる。したがって、触媒20の温度を適切に上昇させることができる。」 (4)「【0077】 <触媒暖機処理の制御ルーチン> 以下、図10を参照して、本発明の実施形態における触媒暖機処理の制御ルーチンについて説明する。本実施形態では、ECU30は、機関負荷が予め定められた基準負荷以下である場合、触媒20が活性していないと判定したときには、触媒20が活性していると判定したときに比べて点火時期を遅角させ、触媒20が活性していると判定したときに比べてバルブオーバーラップ中に混合気が燃焼室5を吹き抜ける吹き抜け量が多くなるように過給器28の動作及びバルブオーバーラップ量を制御し、触媒20が活性していると判定したときに比べて燃焼室5に供給される空気の圧力が増大するように過給器28の動作を制御し、触媒20が活性していると判定したときに比べて吸気弁7の閉弁時期を吸気下死点から離れるように制御し、吸気弁7の閉弁時期を吸気下死点から離したことに伴う実圧縮比の低下が小さくなるように触媒20が活性していると判定したときに比べて機械圧縮比を増大させるように制御する。」 (5)「【0081】 ステップS3では、触媒20が活性しているか否かが判定される。この判定は、例えば、触媒20の温度が予め定められた基準温度以上であるか否かを判定することによって行われる。触媒20の温度が予め定められた基準温度以上である場合、触媒20は活性していると判定される。触媒20の温度は、例えば触媒20の上流側の排気通路又は触媒20に設けられた温度センサ(図示せず)によって検出される。触媒20が活性していると判定された場合、ステップS4へと進む。」 上記記載事項からみて、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 〔引用発明〕 「吸気通路により空気及び燃料を含む混合気が導かれ、排気通路により混合気の燃焼によって生じた排気ガスが排出される、燃焼室5と、 前記排気通路を形成する触媒ケーシング22に内蔵された三元触媒20と、 ターボチャージャである過給器28と、 前記三元触媒20の温度を検出する温度センサと、 機械圧縮比を制御するECU30と、 を備え、 ECU30は、触媒20の温度が予め定められた基準温度未満であるか否かを判定することによって触媒20が活性していないと判定したときには、触媒20が活性していると判定したときに比べて点火時期を遅角させ、触媒20が活性していると判定したときに比べてバルブオーバーラップ中に混合気が燃焼室5を吹き抜ける吹き抜け量が多くなるように過給器28の動作及びバルブオーバーラップ量を制御し、触媒20が活性していると判定したときに比べて燃焼室5に供給される空気の圧力が増大するように過給器28の動作を制御し、触媒20が活性していると判定したときに比べて吸気弁7の閉弁時期を吸気下死点から離れるように制御し、吸気弁7の閉弁時期を吸気下死点から離したことに伴う実圧縮比の低下が小さくなるように触媒20が活性していると判定したときに比べて機械圧縮比を増大させるように制御する、 内燃機関。」 2 引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0033】 本実施例では、目標圧縮比は、ECU60のROM内に格納されたマップを用いて決定されている。図3は、運転条件に応じた目標圧縮比を示すマップを模式的に示す説明図である。図示するように、本実施例では、要求トルクが比較的小さい条件では、目標圧縮比は比較的高い値に設定される。また、要求トルクが比較的大きい条件では、目標圧縮比は比較的低い値に設定される。」 (2)「【0037】 A3.運転開始時の圧縮比制御: ところで、エンジンが通常の運転を実行する場合には、浄化装置70は、排気ガス中の有害成分(炭化水素化合物(HC)や窒素酸化物(NOx)など)を効率よく浄化することができる。しかしながら、エンジンの運転開始時(すなわち、冷間始動時)には、排気ガス中の有害成分を浄化するのが困難となる。これは、浄化装置70の暖機には、換言すれば、浄化装置に含まれる触媒が活性温度に到達するまでには、ある程度時間が掛かるためである。なお、触媒の活性温度とは、触媒が酸化還元反応の促進能力を発揮することができる温度を意味している。そこで、本実施例では、運転開始時における圧縮比の設定を工夫することによって、運転開始時のHC排出量およびNOx排出量を低減させている。 【0038】 図4は、運転開始時の圧縮比の制御手順を示すフローチャートである。なお、この処理は、内燃機関が冷間始動する場合に、換言すれば、触媒が活性温度に到達していない場合に実行される。ユーザがイグニションスイッチをスタート位置に設定することによってクランキングが開始されると、ステップS201において、まず、圧縮比が高圧縮比に設定される。具体的には、前回の運転終了時の圧縮比が高圧縮比である場合には、そのままの圧縮比で保たれ、前回の運転終了時の圧縮比が低圧縮比である場合には、高圧縮比に変更される。 【0039】 ステップS202では、クランキング期間終了後の浄化装置70の暖機期間において、要求トルクが所定値以上であるか否かが判断される。なお、要求トルクは、前述のように、アクセル開度センサ62の検出結果を用いて決定される。また、上記の所定値は、車両の走行開始を検出することができるような比較的小さな値に設定されている。 【0040】 要求トルクが所定値以上であると判断されると、ステップS203において、圧縮比が低圧縮比に変更される。一方、要求トルクが所定値未満であると判断されると、ステップS204において、圧縮比は高圧縮比のまま保たれる。 【0041】 ステップS205では、浄化装置70の暖機が終了したか否か、換言すれば、触媒が活性温度に到達したか否かが判断される。本実施例では、触媒温度は、浄化装置70に設けられた温度センサ71の検出結果を用いて決定される。しかしながら、触媒温度は、運転開始から現在までの運転状態に基づいて推定されるようにしてもよい。具体的には、運転開始からの累積吸入空気量に応じた触媒温度を示すマップをROM内に予め準備しておき、このマップを用いて、触媒温度を推定すればよい。なお、累積吸入空気量は、運転開始から現在までの吸気圧センサ56の検出結果を用いて求められる。このように、触媒温度を推定すれば、温度センサを省略することができるという利点がある。 【0042】 浄化装置の暖機が終了したと判断されると、ステップS206では、図3のマップに基づいて、現行の運転条件に応じた圧縮比に設定される。一方、浄化装置の暖機が終了していないと判断されると、ステップS202-S205の処理が繰り返し実行される。」 上記記載事項からみて、引用文献2には次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。 〔引用文献2記載事項〕 「触媒が活性温度に到達していないと判断され、要求トルクが所定値未満であると判断されると、圧縮比は高圧縮比に設定され、触媒が活性温度に到達したと判断され、要求トルクが比較的小さい条件では、圧縮比は比較的高い値に設定されること。」 3 引用文献3 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 [図:0001401495000001.jpg] (当審訳) 「[0048]エンジンが始動した後、初期の低速運転区間やアイドル駆動時センサ(105)、例えば冷却水温センサ等からの情報に基づいて冷間始動状態と判断した電子制御装置(96)は、正圧側及び負圧側ソレノイドバルブ(97)(104)を開放するように作動制御する。 [0049] 両側のバルブ(97)(104)が同時に開放されると、アクチュエータ(90)の圧力室(92)には吸気圧縮機(81)の出口圧力が作用し、負圧室(100)にはサージタンク(102)の負圧この貯蔵真空チャンバ(103)の真空負圧がかかる。これにより、始動初期低速状態であって、前記圧力室(92)にかかる圧力が低くても、前記負圧室(100)に作用する真空圧との相対的圧力差が大きくなり、そのような大きな圧力差により前記ダイヤフラム(91)が戻される。ばね(99)を圧迫しながら下降して作動ロッド(98)を押し下げ、WGV(88)がバルブシート(95)から離間することにより管路が開放されたバイパス通路(87)を介して排ガスを排気タービン(82)を迂回して通過させることになるものであり、これにより熱損失を減らし、触媒が早期に活性化温度に上昇到達するようになり、排ガスの浄化機能が早期に正常化されるのである。」 上記記載事項からみて、引用文献3には次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。 〔引用文献3記載事項〕 「エンジンが始動した後、初期の低速運転区間や冷間始動状態と判断した場合に、WGV(88)がバルブシート(95)から離間することにより管路が開放されたバイパス通路(87)を介して排ガスを排気タービン(82)を迂回して通過させること。」 4 引用文献4 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0063】 C.暖機制御の第1実施例:図5は、暖機制御の第1実施例におけるディーゼルエンジン10の運転状態を示す説明図である。図5の横軸は始動(コールドスタート)からの時間であり、縦軸は、上から順に、エンジン冷却水温、燃料噴射時期、および、EGR率である。時刻t0でエンジンが始動すると、エンジン冷却水温が所定の温度CATonに到達する時刻t1までは、触媒40を暖機するための暖機運転が行われる。また、時刻t1以降は、暖機後の通常の運転が行われる。図5の例では、時刻t1-t2の間は低温燃焼が実行され、時刻t2以降では通常燃焼が行われると仮定している。但し、暖機後の運転状態は、エンジン10の要求負荷に依存して変化するものであり、図5は単なる一例である。 【0064】 暖機期間中においては、燃料噴射は、パイロット噴射とメイン噴射とに分割して行なわれる。パイロット噴射の噴射量は、1燃焼サイクルの全噴射量の約30%に設定されており、メイン噴射の噴射量は約70%に設定されている。また、パイロット噴射の噴射時期は、圧縮上死点TDCの約10°手前(すなわちTDC-約10°)であり、メイン噴射の噴射時期は圧縮上死点TDCの約10°後ろ(すなわちTDC+約10°)に設定されている。なお、本明細書において、「噴射時期」とは噴射開始時期を意味する。暖機期間中における噴射量や噴射時期の設定値の意味については後述する。」 (2)「【0066】 時刻t2以降では通常燃焼が行われる。この通常燃焼の際にも、パイロット噴射とメイン噴射とが行われる。但し、通常燃焼時には、パイロット噴射の噴射量は、1燃焼サイクルの全噴射量の約10%に設定され、メイン噴射の噴射量は約90%に設定される。また、パイロット噴射の噴射時期は、(TDC-約15°)であり、メイン噴射の噴射時期は(TDC+約5°)である。」 上記記載事項からみて、引用文献4には次の事項(以下「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。 〔引用文献4記載事項〕 「エンジン冷却水温が所定の温度CATonに到達する時刻t1までは、触媒40を暖機するための暖機運転が行われ、暖機期間中においては、パイロット噴射の噴射時期は、圧縮上死点TDCの約10°手前(すなわちTDC-約10°)であり、メイン噴射の噴射時期は圧縮上死点TDCの約10°後ろ(すなわちTDC+約10°)に設定されること。」 5 引用文献5 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0046】 次いで、この触媒昇温用の燃料噴射量QINJおよびエンジン回転数NEに応じて、図示しないマップを検索することにより、触媒昇温用の燃料噴射タイミングを算出する。この触媒昇温用の燃料噴射タイミングでは、燃料の噴射開始タイミングが通常時用の噴射開始タイミングよりも遅いタイミングに設定される。これは、燃料の噴射開始タイミングを通常時用の噴射開始タイミングよりも遅く設定すると、排気温度がより高い温度になることで、排気浄化触媒12の活性化を促進できるためである。そして、以上のように算出された触媒昇温用の燃料噴射量QINJおよび燃料噴射タイミングに基づいて、燃料噴射弁4の開弁時間および開弁タイミングを制御する。」 (2)「【0052】 これに加えて、触媒温TCATが所定温度TREFよりも低いときには、前述したように、排気浄化触媒12の活性化を促進するように、触媒昇温用の燃料噴射制御、触媒昇温用の過給圧制御、触媒昇温用のスワール制御、触媒昇温用のEGR制御および触媒昇温用の吸入空気量制御処理がそれぞれ実行されるので、排気浄化触媒12をより迅速に活性化させることができる。その結果、排ガス特性をさらに向上させることができる。」 上記記載事項からみて、引用文献5には次の事項(以下「引用文献5記載事項」という。)が記載されている。 〔引用文献5記載事項〕 「触媒温TCATが所定温度TREFよりも低いときには、燃料の噴射開始タイミングが通常時用の噴射開始タイミングよりも遅いタイミングに設定されること。」 第5 対比及び判断 1 本願発明1について 本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「吸気通路」、「排気通路」、「燃焼室5」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明1における「吸入流路」、「排気流路」、「燃焼室」に相当する。同様に、引用発明における「導かれ」および「排出される」は、本願発明1における「接続された」に相当する。そして、引用発明における「燃焼室5」は、「吸気通路」及び「排気通路」が「接続」されていることにより「吸気通路により空気及び燃料を含む混合気が導かれ、排気通路により混合気の燃焼によって生じた排気ガスが排出される」ものであるから、引用発明における「吸気通路により空気及び燃料を含む混合気が導かれ、排気通路により混合気の燃焼によって生じた排気ガスが排出される、燃焼室5」は、本願発明1における「吸入流路および排気流路が接続された燃焼室」に相当する。 引用発明における「三元触媒20」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明1における「排気浄化触媒」に相当する。そして、引用発明における「三元触媒20」は、「排気通路を形成する触媒ケーシング22に内蔵され」ているから、「排気通路」に「設けられている」といえる。そうすると、引用発明における「前記排気通路を形成する触媒ケーシング22に内蔵された三元触媒20」は、本願発明1における「前記排気流路に設けられた排気浄化触媒」に相当する。 引用発明における「ターボチャージャである過給器28」は、一般的に、ターボチャージャが、排気流路に配されるタービン及び吸入流路に配されるコンプレッサを有するものであることに鑑みれば、本願発明1における「前記排気流路に配されるタービン、および、前記吸入流路に配されるコンプレッサを有する過給機」に相当する。 引用発明における「温度センサ」は、「三元触媒20の温度を検出する」ものであるから、本願発明1における「排気浄化触媒の温度を検出する検出部」に相当する。 引用発明における「機械圧縮比を制御するECU30」は、バイパス弁を制御していないから、本願発明1における「前記バイパス弁および前記燃焼室の圧縮比を制御する制御部」とは、「燃焼室の圧縮比を制御する制御部」という限りにおいて一致している。 引用発明における「ECU30は、触媒20の温度が予め定められた基準温度未満であるか否かを判定することによって触媒20が活性していないと判定したときには、触媒20が活性していると判定したときに比べて点火時期を遅角させ、触媒20が活性していると判定したときに比べてバルブオーバーラップ中に混合気が燃焼室5を吹き抜ける吹き抜け量が多くなるように過給器28の動作及びバルブオーバーラップ量を制御し、触媒20が活性していると判定したときに比べて燃焼室5に供給される空気の圧力が増大するように過給器28の動作を制御し、触媒20が活性していると判定したときに比べて吸気弁7の閉弁時期を吸気下死点から離れるように制御し、吸気弁7の閉弁時期を吸気下死点から離したことに伴う実圧縮比の低下が小さくなるように触媒20が活性していると判定したときに比べて機械圧縮比を増大させるように制御」することは、触媒20が基準温度未満であるとき機械圧縮比を増大させるように制御するものであるから、本願発明1における「前記制御部は、前記排気浄化触媒の温度が第1閾値未満である場合に、前記バイパス弁を開状態に制御し、前記圧縮比を、シリンダ内の最大燃焼圧力が予め設定されたシリンダ内圧上限値に最も近づく第1の圧縮比に制御」することとは、「前記制御部は、前記排気浄化触媒の温度が第1閾値未満である場合に、圧縮比を制御」という限りにおいて一致している。 引用発明における「内燃機関」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明1における「エンジンシステム」に相当する。 したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 〔一致点〕 「吸入流路および排気流路が接続された燃焼室と、 前記排気流路に設けられた排気浄化触媒と、 前記排気流路に配されるタービン、および、前記吸入流路に配されるコンプレッサを有する過給機と、 前記排気浄化触媒の温度を検出する検出部と、 前記燃焼室の圧縮比を制御する制御部と、 を備え、 前記制御部は、前記排気浄化触媒の温度が第1閾値未満である場合に、圧縮比を制御する、 エンジンシステム。」 〔相違点〕 本願発明1は、「前記排気流路における前記タービンの上流側と下流側とを接続するバイパス流路」と「前記バイパス流路を開閉するバイパス弁」とを有し、制御部は、「前記バイパス弁および前記燃焼室の圧縮比を制御する」ものであり、「前記排気浄化触媒の温度が第1閾値未満である場合に、前記バイパス弁を開状態に制御し、前記圧縮比を、シリンダ内の最大燃焼圧力が予め設定されたシリンダ内圧上限値に最も近づく第1の圧縮比に制御し、前記制御部は、前記排気浄化触媒の温度が前記第1閾値以上である場合に、前記バイパス弁を閉状態に制御し、前記第1の圧縮比を維持する」のに対して、引用発明は、バイパス流路及びバイパス弁を備えておらず、ECU30はバイパス弁を制御するものではなく、「触媒20の温度が予め定められた基準温度未満であるか否かを判定することによって触媒20が活性していないと判定したときには、触媒20が活性していると判定したときに比べて点火時期を遅角させ、触媒20が活性していると判定したときに比べてバルブオーバーラップ中に混合気が燃焼室5を吹き抜ける吹き抜け量が多くなるように過給器28の動作及びバルブオーバーラップ量を制御し、触媒20が活性していると判定したときに比べて燃焼室5に供給される空気の圧力が増大するように過給器28の動作を制御し、触媒20が活性していると判定したときに比べて吸気弁7の閉弁時期を吸気下死点から離れるように制御し、吸気弁7の閉弁時期を吸気下死点から離したことに伴う実圧縮比の低下が小さくなるように触媒20が活性していると判定したときに比べて機械圧縮比を増大させるように制御する」点。 上記相違点について検討する。 引用発明は、排気浄化触媒の温度が第1閾値未満である場合に、後燃え促進を目的として、空気の圧力が増大するように過給器28の動作を制御するものであるから、引用文献3記載事項が示すような、バイパス通路(87)を介して排ガスを排気タービン(82)を迂回して通過させる、すなわち空気の圧力を低下させる(過給圧を低下させる)ような制御に係る技術事項を適用する動機付けは見いだせない。 また、引用文献2記載事項、引用文献4記載事項及び引用文献5記載事項は、排気浄化触媒の温度が第1閾値未満である場合のバイパス弁制御を開示ないし示唆するものではない。 さらに、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項は、本願出願前に周知の技術でであるか、当業者が適宜なし得た設計的事項であるとの事情もない。 したがって、本願発明1は、引用発明及び、引用文献2記載事項ないし引用文献5記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本願発明2ないし6について 本願発明2ないし6は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに本願発明2ないし本願発明6で新たに特定される発明特定事項を含むものであるから、本願発明1で述べた理由と同様に、引用発明及び、引用文献2記載事項ないし引用文献5記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-020750

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