2022-020706
多層基板および電子機器
- 審判番号
- 2022-020706
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-101339外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年12月21日
- 審決日
- 2023年12月04日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社村田製作所
- 【請求人代理人】弁理士法人 楓国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 17項目
第1 手続の経緯
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本願は、2018年(平成30年)1月22日(優先権主張 平成29年1月27日)を国際出願日とする特願2018-564540号の一部を令和2年6月11日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
の補正の却下の決定、拒絶査定
第2 原査定の概要
原査定(令和4年9月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-6に係る発明は、以下の引用文献1-3、5、6に基づいて、本願請求項7-12に係る発明は、以下の引用文献1-6に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2006-351647号公報
2.特開平11-163539号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2004-247616号公報(周知技術を示す文献)
4.国際公開第2014/115607号
5.特開2009-141233号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2013-239511号公報(周知技術を示す文献)
第3 本願発明
本願請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、令和4年12月21日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、11は以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】複数の絶縁基材層を積層してなる積層体と、前記複数の絶縁基材層に形成される、第1信号線、第2信号線、第1グランド導体、第2グランド導体及び第3グランド導体と、前記第1信号線と同じ層に位置する第3信号線と、続きを表示(全18行)を備え、前記第1信号線と、前記第1グランド導体と、前記第2グランド導体と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第1信号線および前記第1グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第1信号線および前記第2グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、を含んで第1伝送線路が構成され、前記第2信号線と、前記第2グランド導体と、前記第3グランド導体と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第2信号線および前記第2グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第2信号線および前記第3グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、を含んで第2伝送線路が構成され、前記第3信号線と、前記第1グランド導体と、前記第2グランド導体と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第3信号線および前記第1グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第3信号線および前記第2グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、を含んで第3伝送線路が構成され、前記第2信号線は、前記第1信号線とは異なる層に形成され、積層方向から視て前記第1信号線に並走する部分を有し、前記第1グランド導体、前記第2グランド導体および前記第3グランド導体は、層間接続導体により接続され、前記第3グランド導体は、前記第1信号線と同じ層、または前記第1信号線と前記第2信号線との間に位置する層に配置され、前記第1伝送線路は、アナログ信号を伝送する線路であり、前記第2伝送線路は、デジタル信号を伝送する線路であり、前記第3伝送線路は、アナログ信号を伝送する線路であり、前記第2信号線が2本の信号線を含み、前記2本の信号線は、同じ層に位置しており、前記2本の信号線の間にはグランド導体が存在しない区間が存在し、前記2本の信号線は、前記積層方向に直交する方向において、前記第1信号線と前記第3信号線との間に位置する、多層基板。」
「 【請求項11】第1回路と、第2回路と、多層基板と、を備える電子機器であって、前記第1回路と前記第2回路とは、前記多層基板を介して接続され、前記多層基板は、続きを表示(全21行)複数の絶縁基材層を積層してなる積層体と、前記複数の絶縁基材層に形成される、第1信号線、第2信号線、第1グランド導体、第2グランド導体、第3グランド導体及び層間接続導体と、前記第1信号線と同じ層に位置する第3信号線と、を有し、前記第1信号線と、前記第1グランド導体と、前記第2グランド導体と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第1信号線および前記第1グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第1信号線および前記第2グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、を含んで第1伝送線路が構成され、前記第2信号線と、前記第2グランド導体と、前記第3グランド導体と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第2信号線および前記第2グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第2信号線および前記第3グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、を含んで第2伝送線路が構成され、前記第3信号線と、前記第1グランド導体と、前記第2グランド導体と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第3信号線および前記第1グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第3信号線および前記第2グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、を含んで第3伝送線路が構成され、前記第2信号線は、前記第1信号線とは異なる層に形成され、積層方向から視て前記第1信号線に並走する部分を有し、前記第1グランド導体、前記第2グランド導体および前記第3グランド導体は、前記層間接続導体により接続され、前記第3グランド導体は、前記第1信号線と同じ層、または前記第1信号線と前記第2信号線との間に位置する層に配置され、前記第1伝送線路は、アナログ信号を伝送する線路であり、前記第2伝送線路は、デジタル信号を伝送する線路であり、前記第3伝送線路は、アナログ信号を伝送する線路であり、前記第2信号線が2本の信号線を含み、前記2本の信号線は、同じ層に位置しており、前記2本の信号線の間にはグランド導体が存在しない区間が存在する、前記2本の信号線は、前記積層方向に直交する方向において、前記第1信号線と前記第3信号線との間に位置する、電子機器。」
また、本願発明2-10は、本願発明1を減縮した発明である。
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1及び引用発明
(1) 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。
「【技術分野】【0001】本発明は配線基板に関し,特に特性インピーダンス制御を実現する配線基板構造に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】【0006】絶縁体の誘電率は特性インピーダンスだけでなく,信号の伝播遅延時間にも影響を及ぼし,伝播遅延時間を短縮するには誘電率を小さくする必要がある。またコストの観点からも絶縁体の材質には制約が加えられる。これらの条件のために特性インピーダンスの制御のためだけに,所望の誘電率を有する絶縁体を用いることができないことが多い。【0007】信号配線の配線幅にも制約がある。特性インピーダンスを下げるために配線幅を広くすると限られた配線領域に占める配線の割合が増してしまう。限られた配線領域に配線数を維持して幅が広い配線を配置する場合,配線間の間隔が狭くなることでクロストークノイズが大きくなってしまう。特性インピーダンスを高くするために配線を細くすると,配線断面積が小さくなるため導体損失が大きくなり伝送特性が低下する。また配線基板の製造上の制約から配線幅を極端に広くしたり狭めたりすることはできない。【0008】絶縁層厚は配線基板の仕上がり寸法にも直接影響するため製品設計上の制約がある。また配線幅と同様に配線基板の製造上の制約があり,自由に設定できないことが多い。例えば市販の絶縁体材料は数種類のシート厚の材料に限られており,その絶縁体シートを重ねる枚数で絶縁層厚をコントロールしている。このためシート厚よりも薄い絶縁層厚を実現することは困難であるなど,絶縁層厚のコントロールに一定の制約がつく。【0009】従って,前記の誘電率や配線幅,絶縁層厚の制約を受けないで特性インピーダンスを設定できる配線構造が求められていた。」
「【図1】[図:0001405552000001.jpg]」
「【0017】以下に本発明の実施例を図1及び図2により説明する。図1は本発明の配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図例であり,図2は信号線の信号伝達方向の側面から見た断面図例である。【0018】図1において,本発明の並列導体を信号線10,11,12に示す。これらの信号線は絶縁体13によって並列導体間の距離および形状を保持している。信号線10,12は2本の並列導体からなる信号線であり,信号線11は3本の並列導体からなる信号線である。図1では上記並列本数のケースのみ示したが,これらの並列本数は任意に増減することができる。続きを表示(全14行)【0019】信号線10の上下層の片側に絶縁体13を介して電源もしくはグランド層14を配置することで,信号線10に対してのマイクロストリップライン構造を構成する。【0020】信号線11,12の上下層に絶縁体13を介して電源もしくはグランド層14を配置することで,信号線11,12に対してのストリップライン構造を構成する。【0021】信号線15は配線幅を信号線10よりも幅広にすることで,信号線10よりも低いインピーダンスを実現する。同様に信号線16は2本並列の片側1本の配線幅を信号線12よりも幅広にすることで信号線12よりも低いインピーダンスを実現する。信号線15や16とは逆に配線幅を狭めることで信号線10や12よりも高いインピーダンスを実現することも可能である。このように配線幅を任意に増減することによって,並列本数によるインピーダンス制御では段階的なインピーダンスにしか制御できない点を補正する。【0022】信号線17,18は電気的に接続された並列導体がない従来の単線のマイクロストリップラインとストリップラインを示す。図1のように信号線17で示す単線のマイクロストリップラインと,並列配線で構成される信号線10,15のマイクロストリップラインを混在すること,また信号線18で示す単線のストリップラインと,並列配線で構成される信号線11,12,16のストリップラインを混在することで,従来の単線による特性インピーダンスと並列導体による特性インピーダンスの両方を実現し,複数の信号伝送の形式に応じた最適の特性を有する配線を実現することができる。【0023】信号線19および電源グランド層14-2は,絶縁層が薄く上下並列導体がなくても必要な特性インピーダンスが実現できる場合に,配線基板の体積あたりの信号線数を増やして配線効率を上げるために配置することができる。」
ここで、引用文献1に記載されている事項について検討する。
上記【0017】-【0023】及び【図1】の記載から、引用文献1には、
「絶縁体13と、前記絶縁体13に形成される、信号線18、信号線19の2本の信号線のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の信号線、グランド層14の2つの層のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において上側の層、グランド層14の2つの層のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の層、グランド層14-2と、前記信号線18と同じ層に位置する信号線16の2本の信号線のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の信号線と、を備え、前記信号線19の2本の信号線のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の信号線は、前記信号線18とは異なる層に形成され、積層方向から視て前記信号線18に並走する部分を有し、前記グランド層14-2は、前記信号線18と同じ層に配置されること」が記載されていると認められる。
(2) 引用発明
したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「絶縁体13と、前記絶縁体13に形成される、信号線18、信号線19の2本の信号線のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の信号線、グランド層14の2つの層のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において上側の層、グランド層14の2つの層のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の層、グランド層14-2と、前記信号線18と同じ層に位置する信号線16の2本の信号線のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の信号線と、を備え、前記信号線19の2本の信号線のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の信号線は、前記信号線18とは異なる層に形成され、積層方向から視て前記信号線18に並走する部分を有し、前記グランド層14-2は、前記信号線18と同じ層に配置され、信号線19および電源グランド層14-2は,絶縁層が薄く上下並列導体がなくても必要な特性インピーダンスが実現できる場合に,配置する、配線基板。」
2 引用文献2-6について
(1) 引用文献2
引用文献2には、以下の記載がある。
「【図4】[図:0001405552000002.jpg]【図5】[図:0001405552000003.jpg]」
「【0031】次に、図4および図5に本発明の多層配線基板の実施の形態の他の例を示す。【0032】図4は図1と同様の断面図であり、図5(a)は図2と同様の断面図、図5(b)はその平面図である。【0033】これらの図において、I1およびI2はそれぞれ第1の絶縁層および第2の絶縁層であり、G1およびG2は第1のグランド配線および第2のグランド配線、S1およびS2は第1の信号配線および第2の信号配線である。またGL1は第1の絶縁層I1の下に少なくとも各グランド配線G1・G2および各信号配線S1・S2の配線領域をカバーするように積層された第1のグランド層であり、I3は第2の絶縁層I2の上に積層された第3の絶縁層であり、GL2は第3の絶縁層I3の上面に第1のグランド層GL1と同様に少なくとも各グランド配線G1・G2および各信号配線S1・S2の配線領域をカバーするように形成された第2のグランド層である。また、Tはスルーホール導体であり、例えば第1のグランド層GL1と第1のグランド配線G1と第2のグランド配線G2と第2のグランド層GL2とを各絶縁層I1~I3を貫通して電気的に接続し、あるいは第1のグランド配線G1と第1のグランド層GL1と、第2のグランド配線G2と第2のグランド層GL2と等を電気的に接続している。Bは第2の絶縁層I2の表面に形成された各配線または各配線に電気的に接続された接続パッドPと半導体素子Cの電極とを接続するためのバンプ電極である。そして、I0はその上面にこのような構成の各層を積層して多層配線基板の支持基板として機能するベース絶縁層であり、多層配線基板の仕様に応じて、例えばアルミナセラミックス基板等が採用される。」
(2) 引用文献3
引用文献3には、以下の記載がある。
「【図5】[図:0001405552000004.jpg]」
「【0003】図5は、従来例1のフレキシブル基板に係る断面の一部を示す図である。図5に示すように、従来のフレキシブル基板は、デジタル信号ライン2と、アナログ信号ライン3と、グラウンドライン4と、接着層5a、5bと、絶縁層1a、1bとで構成され、グラウンドライン4は左右の各信号ラインの略中間に形成されている。【0004】このような構成においては、各信号ライン2、3は、グラウンドライン4によって分割されているため、クロストークノイズを低減させることが可能である。更に、デジタル信号ライン2とアナログ信号ライン3は中間部のグラウンドライン4により分割されているため、デジタル信号のノイズがアナログ信号に干渉することも最小限となっている。」
「【図6】[図:0001405552000005.jpg]」
「【0008】また、図6には従来例2のフレキシブル基板の構成が示されている。図6においては、信号ライン2、3及びグラウンドライン4の隣接層にグラウンド層6(シールド)を設けている。この様なマイクロストリップ構造とすることで、更なるクロストークノイズ及び不要輻射ノイズの低減化を図っていた。」
(3) 引用文献4
引用文献4には、以下の記載がある。
「[図2][図:0001405552000006.jpg]」
「[0048] 図2に示すように、主伝送線路10は、誘電体素体110、基準グランド導体20A,20B、補助グランド導体30A,30B、信号導体40A,40Bを備える。」
「[0051] 補助グランド導体30A,30Bは、誘電体素体110の他方端面(平板面)言い換えれば第2誘電体層112の露出面に形成されている。補助グランド導体30A,30Bは長尺状であり、誘電体素体110の長尺方向と同じ方向に伸延する形状からなる。補助グランド導体30A,30Bは、幅方向に空隙300をもって配置されている。補助グランド導体30Aは誘電体素体110を介して基準グランド導体20Aに対向する。補助グランド導体30Bは誘電体素体110を介して基準グランド導体20Bに対向する。補助グランド導体30A,30Bも、導電性が高い材料、例えば銅(Cu)等からなる。[0052] 補助グランド導体30Aは、長尺導体31A,32Aとブリッジ導体33Aとを備える。長尺導体31A,32Aとは、誘電体素体110の長手方向に沿って延びる長尺状である。長尺導体31A,32Aは、誘電体素体110の幅方向に沿って、所定の間隔をおいて形成されている。[0053] ブリッジ導体33Aは、誘電体素体110の幅方向に伸延する形状からなる。ブリッジ導体33Aは、誘電体素体110の長手方向に沿って間隔をおいて、複数形成されている。これにより、平板面に直交する方向から見て(厚み方向に沿って見て)、ブリッジ導体33A間には、開口部34Aが形成される。[0054] このように、補助グランド導体30Aは、長手方向に延びる梯子形状からなる。[0055] 補助グランド導体30Bは、長尺導体31B,32Bとブリッジ導体33Bとを備える。長尺導体31B,32Bとは、誘電体素体110の長手方向に沿って延びる長尺状である。長尺導体31B,32Bは、誘電体素体110の幅方向に沿って、所定の間隔をおいて形成されている。[0056] ブリッジ導体33Bは、誘電体素体110の幅方向に伸延する形状からなる。ブリッジ導体33Bは、誘電体素体110の長手方向に沿って間隔をおいて、複数形成されている。これにより、平板面に直交する方向から見て(厚み方向に沿って見て)、ブリッジ導体33B間には、開口部34Bが形成される。[0057] このように、補助グランド導体30Bは、長手方向に延びる梯子形状からなる。[0058] なお、補助グランド導体30A,30Bのブリッジ導体33A,33Bの伝送方向の間隔は、使用帯域内において輻射ノイズが発生しないように設計される。[0059] 補助グランド導体30A,30Bは、シールドとしても機能するグランド導体である。また、補助グランド導体30A,30Bは、前記の通り、例えば、主伝送線路10の特性インピーダンスが50Ωとなるように最終的な調整を行うために配置されている。[0060] 補助グランド導体30Aは、誘電体素体110の厚み方向を貫通する厚み方向接続導体50を介して基準グランド導体20Aに接続されている。補助グランド導体30Bは、厚み方向を貫通する厚み方向接続導体50を介して基準グランド導体20Bに接続されている。厚み方向接続導体50は、複数箇所に形成されている。」
(4) 引用文献5
引用文献5には、以下の記載がある。
「【図6】[図:0001405552000007.jpg]」
「【0010】また、高周波伝送では差動配線が広く用いられている。これについて、図6を用いて説明する。【0011】図6はストリップライン構造の差動配線の信号の伝搬方向と垂直な面での断面構造であり、内層の信号層に並んで配置された信号配線10-1および10-2が、誘電体層30a及び31aを介して上下を電源グラウンド層20-1、20-2で挟まれた構造となっている。このような構造の差動配線では該信号配線10-1、10-2で1ビットの信号を構成する方式を用いる。具体的には、該隣接信号線10-1、10-2に逆極性の信号を通し、受信側で電圧差を識別する。この方式は外部からのコモンノイズに強く、電源揺れを引き起こしにくいという特長を持つ。」
(5) 引用文献6
引用文献6には、以下の記載がある。
「【図1】[図:0001405552000008.jpg]」
「【0019】実施の形態1.図1は、一般的な従来の多層基板における、高速信号でよく用いられるペア配線を示す斜視図および断面図である。図1(a)は、ストリップライン構造を示し、図1(b)は、マイクロストリップ構造を示している。また、これらの構造は、半導体チップの再配線層においても形成できる。【0020】図1において、この多層基板は、基板の誘電体材料1、GND層またはその層内に設けられたGNDプレーン20(以下、代表して「GNDプレーン20」と称する)、および配線層30から構成されている。配線層30は、差動信号の正相信号配線および逆相信号配線となる配線301、302を有している。ここで、GNDプレーン20は、穴のない完全なプレーンであっても、多層構造形成時の制約等からメッシュ構造となっていてもかまわない。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「絶縁体13」は、本願発明1の「複数の絶縁基材層を積層してなる積層体」と、「絶縁体」である点で共通する。
イ 上記アを踏まえると、引用発明の「前記絶縁体13に形成される」ことは、本願発明1の「前記複数の絶縁基材層に形成される」ことと、「絶縁体に形成される」点で共通する。
ウ 引用発明の「信号線18」、「信号線19の2本の信号線のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の信号線」、「グランド層14の2つの層のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において上側の層」、「グランド層14の2つの層のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の層」、「グランド層14-2」、「前記信号線18と同じ層に位置する信号線16の2本の信号線のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の信号線」は、それぞれ、本願発明1の「第1信号線」、「第2信号線」、「第1グランド導体」、「第2グランド導体」、「第3グランド導体」、「前記第1信号線と同じ層に位置する第3信号線」に相当する。
エ 上記ア、ウを踏まえると、引用発明の「信号線18」と、「グランド層14の2つの層のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において上側の層」と、「グランド層14の2つの層のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の層」と、「絶縁体13」と、を備える構成は、本願発明1の「前記第1信号線と、前記第1グランド導体と、前記第2グランド導体と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第1信号線および前記第1グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第1信号線および前記第2グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、を含んで第1伝送線路が構成され」ることと、「前記第1信号線と、前記第1グランド導体と、前記第2グランド導体と、絶縁体と、を含んで第1伝送線路が構成され」る点で共通する。
オ 上記ア、ウを踏まえると、引用発明の「信号線19の2本の信号線のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の信号線」と、「グランド層14の2つの層のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の層」と、「グランド層14-2」と、「絶縁体13」と、を備える構成は、本願発明1の「前記第2信号線と、前記第2グランド導体と、前記第3グランド導体と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第2信号線および前記第2グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第2信号線および前記第3グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、を含んで第2伝送線路が構成され」ることと、「前記第2信号線と、前記第2グランド導体と、前記第3グランド導体と、絶縁体と、を含んで第2伝送線路が構成され」る点で共通する。
カ 上記ア、ウを踏まえると、引用発明の「信号線16の2本の信号線のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の信号線」と、「グランド層14の2つの層のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において上側の層」と、「グランド層14の2つの層のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の層」と、「絶縁体13」と、を備える構成は、本願発明1の「前記第3信号線と、前記第1グランド導体と、前記第2グランド導体と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第3信号線および前記第1グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第3信号線および前記第2グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、を含んで第3伝送線路が構成され」ることと、「前記第3信号線と、前記第1グランド導体と、前記第2グランド導体と、絶縁体と、を含んで第3伝送線路が構成され」る点で共通する。
キ 上記ウを踏まえると、引用発明の「前記信号線19の2本の信号線のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の信号線は、前記信号線18とは異なる層に形成され、積層方向から視て前記信号線18に並走する部分を有」することは、本願発明1の「前記第2信号線は、前記第1信号線とは異なる層に形成され、積層方向から視て前記第1信号線に並走する部分を有」することに相当する。
ク 上記ウを踏まえると、引用発明の「前記グランド層14-2は、前記信号線18と同じ層に配置される」ことは、本願発明1の「前記第3グランド導体は、前記第1信号線と同じ層」「に配置され」ることに相当する。
ケ 引用発明の「配線基板」は、「絶縁体13と、前記絶縁体13によって保持される、信号線18、信号線19の2本の信号線のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の信号線、グランド層14の2つの層のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において上側の層、グランド層14の2つの層のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の層、グランド層14-2と、前記信号線18と同じ層に位置する信号線16の2本の信号線のうち配線基板を信号線の信号伝達方向から見た断面図において下側の信号線と、を備え」るから、多層からなることは明らかであり、本願発明1の「多層基板」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「絶縁体と、前記絶縁体に形成される、第1信号線、第2信号線、第1グランド導体、第2グランド導体及び第3グランド導体と、前記第1信号線と同じ層に位置する第3信号線と、を備え、前記第1信号線と、前記第1グランド導体と、前記第2グランド導体と、絶縁体と、を含んで第1伝送線路が構成され、前記第2信号線と、前記第2グランド導体と、前記第3グランド導体と、絶縁体と、を含んで第2伝送線路が構成され、前記第3信号線と、前記第1グランド導体と、前記第2グランド導体と、絶縁体と、を含んで第3伝送線路が構成され、前記第2信号線は、前記第1信号線とは異なる層に形成され、積層方向から視て前記第1信号線に並走する部分を有し、前記第3グランド導体は、前記第1信号線と同じ層に配置される、多層基板。」
(相違点1)
本願発明1が「複数の絶縁基材層を積層してなる積層体と、前記複数の絶縁基材層に形成される、第1信号線、第2信号線、第1グランド導体、第2グランド導体及び第3グランド導体と」を備えるのに対し、引用発明の「絶縁体13」が複数の絶縁基材層を積層してなる積層体である構成については特定されておらず、また、「第1信号線、第2信号線、第1グランド導体、第2グランド導体、第3グランド導体」が複数の絶縁基材層に形成される構成についても特定されていない点。
(相違点2)
本願発明1が「前記第1信号線と、前記第1グランド導体と、前記第2グランド導体と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第1信号線および前記第1グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第1信号線および前記第2グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、を含んで第1伝送線路」を構成するのに対し、引用発明は、「第1信号線」と、「第1グランド導体」と、「第2グランド導体」と、「絶縁体13」と、を含んで「第1伝送線路」を構成するものの、当該「第1伝送線路」の「絶縁体13」が、「前記複数の絶縁基材層のうち前記第1信号線および前記第1グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第1信号線および前記第2グランド導体で挟まれる絶縁基材層」を含むことについては特定されていない点。
(相違点3)
本願発明1が「前記第2信号線と、前記第2グランド導体と、前記第3グランド導体と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第2信号線および前記第2グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第2信号線および前記第3グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、を含んで第2伝送線路」を構成するのに対し、引用発明は、「第2信号線」と、「第2グランド導体」と、「第3グランド導体」と、「絶縁体13」と、を含んで「第2伝送線路」を構成するものの、当該「第2伝送線路」の「絶縁体13」が、「前記複数の絶縁基材層のうち前記第2信号線および前記第2グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第2信号線および前記第3グランド導体で挟まれる絶縁基材層」を含むことについては特定されていない点。
(相違点4)
本願発明1が「前記第3信号線と、前記第1グランド導体と、前記第2グランド導体と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第3信号線および前記第1グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第3信号線および前記第2グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、を含んで第3伝送線路」を構成するのに対し、引用発明は、「第3信号線」と、「第1グランド導体」と、「第2グランド導体」と、「絶縁体13」と、を含んで「第3伝送線路」を構成するものの、当該「第3伝送線路」の「絶縁体13」が、「前記複数の絶縁基材層のうち前記第3信号線および前記第1グランド導体で挟まれる絶縁基材層と、前記複数の絶縁基材層のうち前記第3信号線および前記第2グランド導体で挟まれる絶縁基材層」を含むことについては特定されていない点。
(相違点5)
本願発明1の「前記第1グランド導体、前記第2グランド導体および前記第3グランド導体は、層間接続導体により接続され」るのに対し、引用発明の「第1グランド導体、第2グランド導体、第3グランド導体」が層間接続導体により接続されることについては特定されていない点。
(相違点6)
本願発明1の「前記第1伝送線路は、アナログ信号を伝送する線路であ」るのに対し、引用発明の「第1信号線」の伝送する信号がアナログ信号であることについては特定されていない点。
(相違点7)
本願発明1の「前記第2伝送線路は、デジタル信号を伝送する線路であ」るのに対し、引用発明の「第2信号線」の伝送する信号がデジタル信号であることについては特定されていない点。
(相違点8)
本願発明1の「第3伝送線路は、アナログ信号を伝送する線路であ」るのに対し、引用発明の「第3信号線」の伝送する信号がアナログ信号であることについては特定されていない点。
(相違点9)
本願発明1の「前記第2信号線が2本の信号線を含み、前記2本の信号線は、同じ層に位置しており、前記2本の信号線の間にはグランド導体が存在しない区間が存在」するのに対し、引用発明の「第2信号線」がこのような構成を備えることについては特定されていない点。
(相違点10)
本願発明1の「前記2本の信号線は、前記積層方向に直交する方向において、前記第1信号線と前記第3信号線との間に位置する」のに対し、引用発明の「第2信号線」についてこのような構成を備えることについては特定されていない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、「第2伝送線路」に関して相互に関連する、相違点7、9についてまとめて検討する。
例えば、引用文献3に記載されているように、信号線においてデジタル信号を伝送すること自体は、本願の優先日前に周知技術であり、また、例えば、引用文献5、6に記載されているように、ある信号線が、2本の信号線を含み、前記2本の信号線は、同じ層に位置しており、前記2本の信号線の間にはグランド導体が存在しない区間が存在すること自体は、本願の優先日前に周知技術である。
しかしながら、引用発明は、「第2信号線および第3グランド導体は,絶縁層が薄く上下並列導体がなくても必要な特性インピーダンスが実現できる場合に,配置する」ところ、引用文献1には、「第2信号線」に当該周知技術を適用した場合でも、「絶縁層が薄く上下並列導体がなくても必要な特性インピーダンスが実現できる」ことについては、記載も示唆もされておらず、当業者にとって自明であるともいえない。
そうすると、当該周知技術を引用発明に適用する動機付けがあるとはいえない。
したがって、相違点7、9に係る本願発明1の構成は、当業者といえども、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項から、容易に想到することはできない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本願発明2-11について
本願発明2-11は、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第6 原査定についての判断
令和4年12月21日提出の手続補正書で補正された本願発明1-11は、相違点7、9に係る本願発明1の構成を有しており、本願発明1-11は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
よって、原査定を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-020706