2022-020680
吐出容器
- 審判番号
- 2022-020680
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-067615外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年12月20日
- 審決日
- 2024年10月17日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成30年3月30日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 9月22日付け 拒絶理由通知書
令和3年12月 2日 意見書、手続補正書の提出
令和4年 4月 5日付け 拒絶理由通知書
令和4年 6月 6日 意見書の提出
令和4年 9月30日付け 拒絶査定(以下「原査定」という。」)
(令和4年10月 4日 原査定の謄本の送達)
令和4年12月20日 審判請求書、手続補正書の提出
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年12月20日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1) 本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(なお、下線は補正箇所を表すものとして審判請求人が付したものである。)。
「内容物の収容空間を形成する減容変形可能な内層体、及び該内層体を取り囲む外層体を備える二重容器本体と、内容物を吐出する吐出口を形成する吐出筒を有し、前記二重容器本体の口部に装着される吐出キャップと、該吐出キャップの径方向内側に配置され、前記収容空間から前記吐出口へ向かう内容物の流れを許容するとともに前記吐出口から前記収容空間へ向かう逆流を阻止する逆止弁構造とを備え、前記逆止弁構造は、前記収容空間から前記吐出口へ向かう内容物の流路を区画形成する筒状の区画壁と、該区画壁の下端部にヒンジ部を介して設けられ、該ヒンジ部を支点として揺動する片開き構造の弁体とを有し、前記区画壁は、前記収容空間と外部との圧力差に基づいて前記吐出キャップに対して上下方向に移動可能であり、前記区画壁を前記吐出キャップの内側において上下方向に移動可能に保持する弁保持部材を更に備え、前記弁保持部材は、底部に開口を有する有底筒状形状を有し、前記区画壁が下方向に移動したときに前記弁体が前記底部に着座可能であることを特徴とする吐出容器。」
(2) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(令和3年12月2日にされた手続補正により補正されたもの)の記載は、次のとおりである。
「内容物の収容空間を形成する減容変形可能な内層体、及び該内層体を取り囲む外層体を備える二重容器本体と、内容物を吐出する吐出口を形成する吐出筒を有し、前記二重容器本体の口部に装着される吐出キャップと、該吐出キャップの径方向内側に配置され、前記収容空間から前記吐出口へ向かう内容物の流れを許容するとともに前記吐出口から前記収容空間へ向かう逆流を阻止する逆止弁構造とを備え、前記逆止弁構造は、前記収容空間から前記吐出口へ向かう内容物の流路を区画形成する筒状の区画壁と、該区画壁の下端部にヒンジ部を介して設けられ、該ヒンジ部を支点として揺動する片開き構造の弁体とを有し、前記区画壁は、前記収容空間と外部との圧力差に基づいて前記吐出キャップに対して上下方向に移動可能であることを特徴とする吐出容器。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「区画壁」の保持に関し、「前記区画壁を前記吐出キャップの内側において上下方向に移動可能に保持する弁保持部材を更に備え」ることを特定するとともに、「前記弁保持部材は、底部に開口を有する有底筒状形状を有し、前記区画壁が下方向に移動したときに前記弁体が前記底部に着座可能である」ことを限定して特定するものである。そして、本件補正の前後において、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものか)について、以下検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上述1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
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ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2015-127215号公報(平成27年7月9日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当審において付したものであり、「・・・」は文の省略を意味する。
・「【0001】
本発明は、容器の外殻を形成する外層体と、外層体の内側に収められ減容変形可能な内層体とを備える二重容器に関し、特に、容器の押圧解除時に内容液用逆止弁と中栓との間に内容液中の粒状物が滞留することを抑制し、もって内容液の充填空間内への外気の侵入を抑制すると共に、注出部からの液垂れの発生も抑制しようとするものである。」
・「【0014】
以下、図1~図2を参照して、本発明の第1実施形態に係る二重容器について詳細に例示説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る二重容器10は、容器の外殻を形成する外層体20と、外層体20の内側に収められる内層体30とを備えていて、該二重容器10の口部上に中栓40、内容液用逆止弁50、空気用逆止弁60、注出栓70、及び蓋体80とを備えている。」
・「【0016】
外層体20は、円筒状の口部周壁21に、復元自在な可撓性を有する胴部を連結するとともに、図示を省略した底部を胴部に連結したものである。口部周壁21の外周面には雄ねじ部22を設けている。・・・」
・「【0017】
内層体30は、その内側に内容液を充填可能とする充填空間Sを形成するとともに、充填空間Sに通じる上部開口31を有するものであり、積層された外層体20から剥離させることで減容変形させることができる。・・・」
・「【0018】
中栓40は、内層体30の上部開口31を覆う天壁41を有している。天壁41には、上向き凸状となる中央段部42を設けている。この中央段部42は、容器10の軸線Oを中心とする円板状の中央上面壁42aと、この中央上面壁42aの外周縁から垂下する中央周壁42bとからなっている。中央周壁42bは、上方に向けて僅かに縮径するテーパ状になっている。中央上面壁42aには、表裏を貫通する液流路43を設けている。本例では、液流路43は、軸線Oの周りに等間隔に配置された4つの円形状の孔からなっている。」
・「【0019】
また、中栓40の天壁41には、中央周壁42bの径方向外側に環状壁44が設けられ、中央周壁42bの径方向外側と環状壁44の径方向内側との間に内容液用逆止弁50の摺動筒部51が移動可能なように収容されている。更に、環状壁44の径方向外側には、内層体30の上部開口31に嵌合する環状の外側段部45を設けている。外側段部45の外周縁には、円筒状の内周壁46を設けている。内周壁46には、内外を貫通する空気孔47が設けられている。
【0020】
内容液用逆止弁50は、例えばゴム(エラストマー)などの弾性材料からなっている。また、内容液用逆止弁50は、軸線Oの周りに周設された円筒状の摺動筒部51を有する。摺動筒部51の外周面には、上方に向って縮径する段差部51aが形成されている。摺動筒部51の上端は、円板状の開閉壁部52で覆われており、開閉壁部52には、貫通部として、本例では十文字状のスリット53が形成されている。この十文字状のスリット53の中心部は、天壁41の中央上面壁42aの中心部に位置している。すなわち、開閉壁部52が天壁41の中央上面壁42aに当接したときに、スリット53が下方(液流路43側)に押し開かれるのを防止して、シール性が有効に維持されるように、スリット53の中心部を、中央上面壁42a上の液流路43を避けた位置で支持するようになっている。なお、スリット53は、一文字状など、その他の形状であってもよい。」
・「【0022】
注出栓70は、口部周壁21を取り囲む外周壁71を連結していて、外周壁71の内周面には、口部周壁21の雄ねじ部22に対応する雌ねじ部72を設けている。また、外周壁71の上部には、中栓40、内容液用逆止弁50及び空気用逆止弁60を覆い隠す頂壁73を設けている。頂壁73には、内容液用逆止弁50による液流路43の開放下にて充填空間S内の内容液を注出する注出部74を設けている。頂壁73の下面には、環状壁44の上部内周面に嵌合する上部嵌合壁75が形成されている。これにより、液流路43と注出部74との間に内容液の流通空間N1が区画される。上部嵌合壁75は、内容液用逆止弁50の開閉壁部52が注出部74側へ移動したときに、内容液用逆止弁50の摺動筒部51の段差部51aに当接して、それ以上の移動を阻止するようになっている。」
・「【0025】
前記のように構成される二重容器10から内容液を吐出するに当たっては、図2に示すように蓋体80を開き、二重容器10を、起立姿勢から倒立姿勢に姿勢変更すると、内容液用逆止弁50が自重により注出部74側に移動する。その際、摺動筒部51が中央周壁42bと環状壁44との間で案内されて摺動し、摺動筒部51の段差部51aが上部嵌合壁75の先端に当接すると、内容液用逆止弁50の移動が止まる。そして、外層体20の胴部を押圧すると、内層体30は、外層体20と内層体30との間の空気にて押圧されて充填空間Sが加圧される。これにより、加圧された内容液が内容液用逆止弁50の開閉壁部52を注出部74側に押し、開閉壁部52に形成されたスリット53が注出部74側に押し開かれる。これにより、液流路43から内容液が流出し、注出部74から外界に注出される。・・・」
・「【図1】
[図:0001417953000001.jpg]
」
・「【図2】
[図:0001417953000002.jpg]
」
・図1の記載からみて、「内容液用逆止弁50」は、「注出栓70」の径方向内側に配置されていることが看取される。
・段落【0020】の記載とともに図1をみれば、「内容液逆止弁50」は、下方向に移動したときに「中央上面壁42a」に着座することが看取される。
・段落【0018】の記載とともに図1をみれば、「中栓40」は有底筒状形状であることが看取される。
・図2の記載からみて、「筒状摺動部51」は、「充填空間S」から「注出部74」の出口へ向かう内容液の流路の一部を区画する筒状の部材であることが看取される。
(イ)これらの記載から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「容器の外殻を形成する外層体20と、外層体20の内側に収められる内層体30とを備え、内部に充填空間Sを形成する減容変形可能な二重容器10と、内容液を注出する注出部74を有し、二重容器10の口部周壁21の外周面に設けられた雄ねじ部22に対応する雌ねじ部72が設けられた注出栓70と、注出栓70の径方向内側に配置され、充填空間S内の内容液を注出部74から外界に注出する内容液用逆止弁50とを備え、当該内容液用逆止弁50は、充填空間Sから注出部の出口へ向かう内容液の流路の一部を区画する筒状の摺動筒部51を有し、当該摺動筒部51に設けられスリット53が形成されている開閉壁部52とを有し、摺動筒部51は注出部74側に移動可能であり、当該摺動筒部51を注出栓70の内側において移動可能に保持する中栓40を備え、当該中栓40は、開口を有する中央上面壁42a、中央周壁42b、環状壁44を有する有底筒状形状を有し、当該中央上面壁42aに内容液用逆止弁50が着座する容器」
(ウ)また、引用文献1には、上述(ア)の記載のほか、第3実施例として以下の記載がある。
・「【0031】
次に、図5~図6を参照して、本発明の第3実施形態に係る二重容器について詳細に例示説明する。
図5に示すように、本実施形態に係る二重容器12は、図1~図2を用いて説明した二重容器10とは、中栓400及び内容液用逆止弁500の形状が異なる他は、同一の構成になっている。
【0032】
・・・また、中栓400は、環状壁44の基端部において、天壁41に上向き凸状となる中間段部490を設け、当該中間段部490を設けた分だけ、中央周壁42bの上下方向幅を低減させている。
【0033】
また、本実施形態の内容液用逆止弁500は、摺動筒部54が、注出栓70の上部嵌合壁75の内周面に沿って摺動するように構成されている。また、開閉壁部52が注出部74側に移動した際には、摺動筒部54の上端が、頂壁73の下面に当接することで、開閉壁部52の移動が止まるようになっている。その他の構成は、前掲図1の内容液用逆止弁50の場合と同一になっている。」
・「【図5】
[図:0001417953000003.jpg]
」
イ 引用文献2
(ア)同じく原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2018-016362号公報(平成30年2月1日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
・「【0001】
本発明は、内層体と外層体を有する二重容器本体に内容物を収容するとともに、口部に装着した吐出キャップの吐出口から内容物を吐出する吐出容器に関し、特に、例えばソースや味噌などの若干の固形物を含んだ比較的粘度の高い内容物を吐出するのに適した吐出容器に関する。」
・「【0016】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る吐出容器1は、二重容器本体2と、二重容器本体2に装着された吐出キャップ3と、弁部材4と、弁保持部材5とを備える。なお、本明細書、特許請求の範囲、要約書および図面では、後述する蓋体37が位置する側を上方(図1における上側)とし、二重容器本体2が位置する側を下方(図1における下側)とする。」
・「【0025】
弁部材4は、吐出キャップ3の内側に装着される弁保持部材5によって、吐出キャップ3内に保持されている。ここで、弁保持部材5は合成樹脂製であり、内層体21の上部開口を覆うように配置される隔壁部51と、隔壁部51の外周縁から立設する外筒部52とを備えている。隔壁部51には、筒状の保持筒部53が設けられており、保持筒部53の端部には、径方向内側に向けたフランジ状の環状壁54が設けられている。環状壁54には、内容物の流路となる開口54aが形成されている。なお、環状壁54は、後述する弁体45の弁座部として機能するものであり、環状壁54の上面に弁体45の外縁部が全周に亘って当接することにより、開口54aが閉塞される。・・・」
・「【0026】
弁部材4は、例えばゴムやエラストマー等の軟材質により形成され、弾性変形可能である。・・・弁部材4は、円筒状のベース部41と、当該ベース部41の内側に設けられた環状のフランジ部42と、フランジ部42の内縁から垂下する円筒状の区画壁43と、区画壁43にヒンジ部44を介して設けられ、ヒンジ部44を支点として揺動する片開き構造の弁体45と、を備える。・・・」
・「【図1】
[図:0001417953000004.jpg]
」
・段落【0026】とともに図1の記載をみれば、「弁体45」は「弁部材4」の下端部に「ヒンジ部44」を介して設けられ、当該「ヒンジ部44」を支点として揺動する片開き構造の弁体であることが看取される。
(イ)上述(ア)の記載から、引用文献2には次の事項が記載されているものと認められる。
「内層体と外層体を有する二重容器本体において、弁体45が弁部材4の下端部にヒンジ部44を介して設けられ、当該ヒンジ部を支点として揺動する片開き構造の弁体であり、弁保持部材5の底部の開口に着座する吐出容器。」
(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア 一致点
本件補正発明と引用発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する。
(ア)引用発明の「外層体20」、「内層体30」は、「充填空間S」を持ち減容変形可能な「二重容器10」を形成するものであるから、その構造から見て、それぞれ本件補正発明の「外層体」、「内層体」に相当する。また、同「内層体30」が「外層体20の内側に収められる」態様、「充填空間S」、「二重容器10」、「内容液」、「容器」は、それぞれ本件補正発明の「外層体」が「内層体を取り囲む」態様、「内容物の収容空間」、「二重容器本体」、「内容物」、「吐出容器」に相当する。
(イ)引用発明の「注出部74」は、「内容液を注出する」部位であることから、本件補正発明の「内容物を吐出する吐出口を形成する吐出筒」に相当する。また、引用発明の「注出栓70」は、当該「注出部74」を有するとともに、「二重容器10の口部周壁21の外周面に設けられた雄ねじ部22に対応する雌ねじ部72が設けられた」ものであるから、その構造からみて、本件補正発明における「二重容器本体の口部に装着される吐出キャップ」に相当する。
(ウ)引用発明の「内容液逆止弁50」は、「注出栓70」の径方向内側に配置されたものであり、また、「充填空間S内の内容液を注出部74から外界に注出する」ための逆止弁であるから、その構造及び機能に鑑みれば、本件補正発明における「該吐出キャップの径方向内側に配置され、前記収容空間から前記吐出口へ向かう内容物の流れを許容するとともに前記吐出口から前記収容空間へ向かう逆流を阻止する逆止弁構造」に相当する。
(エ)引用発明の「内容液逆止弁50」が有する「充填空間Sから注出部の出口へ向かう内容液の流路の一部を区画する筒状の摺動筒部51」は、本件補正発明の「前記収容空間から前記吐出口へ向かう内容物の流路を区画形成する筒状の区画壁」に相当する。また、当該「摺動筒部51」は、「充填空間S」と外部との圧力差に基づいて上下方向に移動可能であることは明らかであるから、本件補正発明の「区画壁」が「前記収容空間と外部との圧力差に基づいて前記吐出キャップに対して上下方向に移動可能」であることに相当する。
(オ)引用発明の「スリット53が形成されている開閉壁部52」は、逆止弁として機能していることから、本件補正発明のような「区画壁の下端部にヒンジ部を介して設けられ、外ヒンジ部を支点として揺動する片開き構造の弁体」とは構造が異なるものの、逆止弁の弁体として、ひとまず本件補正発明の「弁体」に相当する。
(カ)引用発明の「中栓40」は、その構造からみて、「注出栓70」の内側において「摺動筒部51」を上下方向に移動可能に保持するものであり、さらに「開口を有する中央上面壁42a、中央周壁42b、環状壁44を有する有底筒状形状を有し、当該中央上面壁42aに内容液用逆止弁50が着座する」ものであるから、その「開口」が設けられている部位はさておき、本件補正発明の「開口を有する有底筒状形状を有し、前記区画壁が下方向に移動したときに前記弁体が前記底部に着座可能である」「弁保持部材」にひとまず相当する。
してみれば、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致する。
「内容物の収容空間を形成する減容変形可能な内層体、及び該内層体を取り囲む外層体を備える二重容器本体と、内容物を吐出する吐出口を形成する吐出筒を有し、前記二重容器本体の口部に装着される吐出キャップと、該吐出キャップの径方向内側に配置され、前記収容空間から前記吐出口へ向かう内容物の流れを許容するとともに前記吐出口から前記収容空間へ向かう逆流を阻止する逆止弁構造とを備え、前記逆止弁構造は、前記収容空間から前記吐出口へ向かう内容物の流路を区画形成する筒状の区画壁と、弁体とを有し、前記区画壁は、前記収容空間と外部との圧力差に基づいて前記吐出キャップに対して上下方向に移動可能であり、前記区画壁を前記吐出キャップの内側において上下方向に移動可能に保持する弁保持部材を更に備え、前記弁保持部材は、開口を有する有底筒状形状を有し、前記区画壁が下方向に移動したときに前記弁体が前記底部に着座可能である吐出容器。」
イ 相違点
一方、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件補正発明における「逆止弁構造」は、「区画壁の下端部にヒンジ部を介して設けられ、該ヒンジ部を支点として揺動する片開き構造の弁体とを有し」ているのに対して、引用発明における「開閉壁部52」は、「摺動筒部51」の下端部に設けられたものではなく、また、「スリット53」による弁である点。
<相違点2>
本件補正発明における「弁保持部材」は、「底部に開口を有する有底筒状形状を有し、前記区画壁が下方向に移動したときに前記弁体が前記底部に着座可能である」のに対して、引用発明における「中栓40」は、「開口を有する中央上面壁42a、中央周壁42b、環状溝44を有する有底筒状形状を有し、当該中央上面壁42aに内容液用逆止弁50が着座」するものであるが、本件補正発明のように「底部に開口を有する」ものではなく、また、その結果として「弁体が前記底部に着座可能である」ものでもない点。
(4)判断
当該相違点1、2は、互いに関連するものであるため、まとめて判断する。
上述2(2)ア(ウ)に記載したとおり、引用文献1の段落【0032】には、「中栓400は、環状壁44の基端部において、天壁41に上向き凸状となる中間段部490を設け、当該中間段部490を設けた分だけ、中央周壁42bの上下方向幅を低減させている」ことが記載されており、「中央周壁42b」の上下方向幅、すなわち「中栓400」における底部の高さを調整することが示唆されている。また、逆止弁の構造として、スリット状の弁体もヒンジを支点として揺動する片開き構造の弁体は慣用されているものである。
してみれば、引用発明における「中央周壁42b」について、引用文献1に記載の事項を適用し、その高さを調整することにより、「開口を有する中央上面壁42a」を「環状壁44」から続く底部に配した有底筒状とすることで「中栓40」の底部に開口を設け、「開閉壁部52」が底部に着座可能とするとともに、逆止弁の構造として「スリット53が形成されている開閉壁部52」を引用文献2に記載の事項である弁部材の下端にヒンジ部を介して設けられ、当該ヒンジ部を支点として揺動する片開き構造の弁体に置換し、相違点1及び2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本件補正発明において、これらの相違点による格別な効果を得ているともいえない。
してみれば、本件補正発明は、引用発明、引用文献1に記載の事項、及び引用文献2に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「引用文献2に記載の片開きの弁体45は、図1に示すように弁体の直下に弁体が着座する弁座部(環状壁54)が常に配置されているからこそ容易に採用し得る可能性がある構造であって、本願発明のように区画壁43が上下方向に大きく移動する構成では、当業者であっても弁座部に対して区画壁43と共に片開きの弁体45を上下方向に大きく移動させる本願発明の構成に容易に想到することはできないものと思料いたします。本願発明の構成は、図3から図6に示しているように、区画壁43の上下動と、片開きの弁体45の開閉のタイミングとを考慮することによって初めてなし得た発明であり、引用文献2に記載の区画壁が固定され弁体の直下に弁座部(環状壁54)が常に配置されている構成から当業者が容易に想到し得る構成ではありません」との主張をしている。
確かに、区画壁43が上下方向に大きく動くため、弁体の開閉タイミングの調整が必要になることは理解するが、本件補正発明ではこの点について特に特定されていない。加えて、開閉タイミングの調整は、スリット状の弁体でも同様であり、この点をもって片開きの弁体が適用困難であるということはできない。
4 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年12月20日にされた手続補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年12月2日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上述第2の1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下の引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載の事項及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2に記載事項は、上述第2の2(2)に記載したとおりのものである。
4 対比・判断
本願発明は、上述第2の2で検討した本件補正発明から、「区画壁」の保持に関し「前記区画壁を前記吐出キャップの内側において上下方向に移動可能に保持する弁保持部材を更に備え」ること、及び「前記弁保持部材は、底部に開口を有する有底筒状形状を有し、前記区画壁が下方向に移動したときに前記弁体が前記底部に着座可能である」ことを削除したものである。そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を特定して限定した本件補正発明が引用発明、引用文献1に記載の事項及び引用文献2に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も同様に当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-020680