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特許拒絶査定不服審判

2022-020630

スピーカおよびスピーカの製造方法

審判番号
2022-020630
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-132365外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年12月20日
審決日
2023年07月14日
公報発行日
2023年08月25日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .113-WY (H04R) / P18 .121-WY (H04R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-132365「スピーカおよびスピーカの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月21日出願公開、特開2019- 30003、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 15項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、平成30年7月12日(パリ条約による優先権主張2017年7月27日、米国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和4年 3月29日付け:拒絶理由通知書
令和4年 5月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年10月 6日付け:拒絶査定
令和4年12月20日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要

原査定(令和4年10月6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由1について

・請求項 1、6、8-10、12

・引用文献等 1

●理由2について

・請求項 1-10、12

・引用文献等 1

・請求項 11

・引用文献等 1、2

引用文献等一覧

1.特開2010-258537号公報

2.特開2000-261884号公報

第3 本願発明

本願の請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、令和4年12月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
コイル受入開口を有する第一層と前記第一層に取り付けられかつ前記コイル受入開口を横断する第二層とを有する振動板と、
前記コイル受入開口内へ延びるとともに前記コイル受入開口を横断する前記第二層の面に直接接触する端部を有するコイルと、
を備え、
続きを表示(全46行)
前記第二層の材料が多孔性であり、
前記コイルの前記端部は、接着剤により前記コイル受入開口を画定する前記第一層の縁に取り付けられている
スピーカ。
【請求項2】
コイル受入開口を有する第一層と前記第一層に取り付けられかつ前記コイル受入開口を横断する第二層とを有する振動板と、
前記コイル受入開口内へ延びるとともに前記コイル受入開口を横断する前記第二層の面に直接接触する端部を有するコイルと、
を備え、
前記コイルの前記端部は、前記コイル受入開口を画定する前記第一層の縁に取り付けられている
スピーカ。
【請求項3】
前記第一層と前記第二層とが重なる
請求項1又は請求項2に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記第二層は、前記コイル受入開口を横断する実質的に平面である部分を有する
請求項1から3のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項5】
前記第二層は、前記コイル受入開口を横断するとともに前記コイル受入開口内に突出する突出部を有する
請求項1から3のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項6】
前記振動板は、前記コイル受入開口を有する実質的に平面である部分、および前記実質的に平面である部分から外側に延びる円錐部分を有する
請求項1から3のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項7】
前記第一層は第1の材料を有し、前記第二層は前記第1の材料とは異なる第2の材料を有し、
前記第1の材料は第1の剛性を有し、前記第2の材料は前記第1の剛性とは異なる第2の剛性を有する
請求項1から6のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項8】
前記第2の剛性は前記第1の剛性よりも大きい
請求項7に記載のスピーカ。
【請求項9】
スピーカフレームと、
前記振動板を前記スピーカフレームに取り付けるエッジと、
可撓性サスペンションと、
をさらに備え、
前記コイルは、前記可撓性サスペンションによって前記スピーカフレームに取り付けられる
請求項1に記載のスピーカ。
【請求項10】
前記コイル受入開口は長円形状である
請求項1に記載のスピーカ。
【請求項11】
コイル受入開口を有する第一層と前記第一層に取り付けられかつ材料が多孔性であり前記コイル受入開口を横断する第二層とを有する振動板をスピーカフレームに取り付けることと、
コイルの端部が前記コイル受入開口内へ延びるとともに前記コイル受入開口を横断する前記第二層の面に直接接触するように、かつ、前記コイルの前記端部が接着剤により前記コイル受入開口を画定する前記第一層の縁に取り付けられるように、前記振動板を前記コイルに取り付けること、
を含むスピーカの製造方法。」

第4 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、軽量で剛性が高く、ピストン振動帯域が広い振動板を用いたスピーカーに関し、特に、音波を放射する前面側に配置される第1振動板と、第1振動板の背面側に配置される第2振動板と、第1振動板および第2振動板が連結するボイスコイルのボビンと、を含む二重振動板構造のスピーカー振動系を有するスピーカーに関する。」
「【0007】
ただし、従来の二重振動板構造のスピーカー振動系では、十分ではない。前面側の第1振動板と背面側の第2振動板とを備えることで、その重量が重くなりがちな二重振動板構造のスピーカー振動系は、スピーカーの再生能率を高めるには全体的に軽量化を図る必要がある。二重振動板構造のスピーカー振動系は、前面側の第1振動板と背面側の第2振動板とをそれぞれ最適に設計しなければ、軽量化することで剛性が不足すると、それぞれの振動板での分割振動モードの影響が低い周波数で現れてしまうという問題がある。つまり、ボイスコイルのボビンを含めて第1振動板と第2振動板を組み合わせた二重振動板構造のスピーカー振動系は、連結した構造体としての剛性が低くなると、音圧周波数特性上のピーク・ディップが大きくなり、ピストン振動領域が狭くなって再生音質の低下を招く場合があるという問題がある。」
「【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるスピーカー1の概略断面図である。また、図2は、スピーカー1のスピーカー振動系について説明する要部拡大図であり、図1に図示するX部分を拡大した断面図である。なお、後述するように、スピーカー1の一部の構造や、内部構造等は、省略している。また、スピーカー1では、第1振動板であるスピーカー振動板5が露出する図示する上方が前面側であり、磁気回路10が取り付けられている図示する下方が背面側である。
【0025】
スピーカー1は、砲弾状のイコライザー9を備える口径が約15cmの動電型のスピーカーであって、音波を放射する前面側に配置される略コーン形状の第1振動板5と、第1振動板5の背面側に配置されてその外周側で第1振動板5の外周側と連結する略コーン形状の第2振動板6と、第1振動板5および第2振動板6の内周側がそれぞれ離隔して連結する略円筒形状のボイスコイルボビン2と、ボイスコイルボビン2の下端部に巻回されたボイスコイル3とを有し、これらが、二重振動板構造のスピーカー振動系を構成する。ボイスコイルボビン2およびボイスコイル3は、フレーム8に固定された磁気回路10の磁気空隙に配され、入力信号に応じて磁気空隙内を変位することにより、このスピーカー1の二重振動板構造のスピーカー振動系を駆動する。また、このスピーカー1の二重振動板構造のスピーカー振動系は、フレーム8に外周側を固定されたダンパー4およびエッジ7により、図示する上下方向に振動可能に支持されている。
【0026】
ボイスコイルボビン2は、例えば、材厚が0.05mmのアルミニウムからなり、その下端部にボイスコイル3が巻回されて、ボイスコイル3が巻回されていない外側曲面には補強紙が巻かれて、全体として直径約39.0mmの円筒形状に成形されている。ボイスコイルボビン2は、他にも、ポリイミドフィルム、ジュラルミン、シルター、キャプトン等で形成されていても良い。ボイスコイル3には、錦糸線(図示しない)がハンダづけされて固定されており、錦糸線の他端側がフレーム8に固定される(図示しない)ターミナルに導通するように固定される。ボイスコイル3には、これらのターミナル及び錦糸線を介して音声信号電流が供給される。」
「【0030】
第1振動板5は、二重振動板構造のスピーカー振動系を有するスピーカー1を前面視した場合に前面側に露出する振動板であって、断面形状が滑らかに連続する曲線で規定される略コーン形状の振動板であり、略コーン形状の振動板部分5aと、その外周端部から折り返されるように延設される係合鍔部5bを有する。略コーン形状の振動板部分5aは、内径寸法が直径約39.5mmであり、外径寸法が直径約113.5mmであり、高さが約26.8mmである。約1.5mmの長さの係合鍔部5bは、図2に図示するように、前面側に凸状の稜線部5cを規定するとともに、稜線部5cの背面側に係合凹部5dを規定する。第1振動板5の内径端は、ボイスコイルボビン2の外側曲面にアクリル系の接着剤で連結される。」
「【0033】
また、第2振動板6は、二重振動板構造のスピーカー振動系を有するスピーカー1を前面視した場合に背面側に隠れる振動板であって、断面形状が滑らかに連続する第1振動板5とは異なるR曲線と直線とで規定される略コーン形状の振動板であり、図2に図示するように、略コーン形状の振動板部分6aと、その外周端部に第1振動板5の係合凹部5dに係合する係合部6bと、を有する。略コーン形状の振動板部分6aは、内径寸法が直径約39.5mmであり、外径寸法が直径約111.5mmであり、高さが約31.2mmである。第2振動板6の内径端は、ボイスコイルボビン2の外側曲面にアクリル系の接着剤により第1振動板5の内径端と離隔するように連結される。」
「【0038】
すなわち、本実施例のスピーカー1では、第2振動板6およびエッジ7が形成する振動系に第1振動板5の外周端部を接着する工程において、第1振動板5の係合鍔部5bがエッジ7のコルゲーションが形成する環状凹部5dに係合するようにすれば、第1振動板5を傾かせることなくボイスコイルボビン2、および、第2振動板6に接着することができる。第2振動板6は、その外周端部に第1振動板5の係合凹部5dに係合する係合部6bを有するので、ここに第1接着剤Ad1を塗布すると、第1振動板5と第2振動板6とが連結される。図1に示すように、第1振動板5および第2振動板6は、その内周側がそれぞれ離隔して略円筒形状のボイスコイルボビン2と連結するので、断面が略三角形の強固な構造体となる二重振動板構造のスピーカー振動系を構成する。
【0039】
また、本実施例のスピーカー1の二重振動板構造のスピーカー振動系は、エッジ7の内周部7bが連結する部分として規定される第2振動板6の外周縁部が、第1振動板5との間に、第2振動板6の係合部6bから内周側に向かうにつれて離隔する距離が大きくなる離隔空間Yを形成する。離隔空間Yは、図2に図示するように、第1振動板5の背面と第2振動板6の前面との間に規定される断面が鋭角な三角形状の空間である。この離隔空間Yを設けることで、前面側で音波を放射する第1振動板5の外周側を、第1振動板5より分割振動する周波数が高いさらに強固な第2振動板6の外周側が補強するという構造が実現される。」
「【実施例5】
【0077】
図9は、本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカー31の概略断面図である。スピーカー31は、先の実施例のスピーカー1に比較して、砲弾状のイコライザー9を備えず、二重振動板構造を構成する第1振動板の構成が先の実施例の場合と相違する他は、ほぼ共通するスピーカーである。具体的には、スピーカー31は、逆ドーム形状の中央部33を振動板部分35aと一体に成形した第1振動板35を備え、砲弾状のイコライザー9を備えない点で相違し、先の実施例と共通する第2振動板6を備える点等で共通する。したがって、共通する構成については、説明を省略する。
【0078】
スピーカー31を構成する第1振動板35は、先の実施例の第1振動板25と同様に、紙繊維を抄紙して成形した紙材を基材とする基体(振動板部分、係合鍔部、稜線部、係合凹部を含む。)が前面側に露出する振動板であり、基体の前面側に接着される表面材25eを備えない振動板である。具体的には、第1振動板35の基体は、抄紙してプレス乾燥し、中央部33を残して外周側を切断して成形した紙コーンである。また、第1振動板35は、略コーン形状の基体の内周側に、ボイスコイルボビン2の端部に連結する連結部32と、連結部32の内周側を覆う逆ドーム形状の中央部33と、を、基体と一体に成形して備えている。連結部32は、環状に成形される段差、あるいは、厚みが一部で変化するリブから規定される。第1振動板35の連結部32には、ボイスコイルボビン2の端部がアクリル系の接着剤で連結される。
・・・(中略)・・・
【0080】
また、本実施例のスピーカー31の二重振動板構造のスピーカー振動系は、先の実施例の場合と同様に、エッジ7の内周部7bが連結する部分として規定される第2振動板6の外周縁部が、第1振動板35との間に、第2振動板6の係合部6bから内周側に向かうにつれて離隔する距離が大きくなる離隔空間Yを形成する。したがって、この離隔空間Yを設けることで、前面側で音波を放射する第1振動板35の外周側を、第1振動板35より分割振動する周波数が高いさらに強固な第2振動板6の外周側が補強するという構造が実現される。
【0081】
本実施例の第1振動板35は、中央部33を備えることでその剛性が高められるので、より強固な二重振動板構造が実現され、外周側が分割振動を始めるモードの周波数をより高い周波数に押し上げて、ピストン振動領域を拡げることができる。また、第1振動板35は、ボイスコイルボビン2の端部に連結する連結部32を備えるので、第1振動板35にボイスコイルボビン2が密着して連結し、剛性の高い二重振動板構造のスピーカーの振動系が構成される。したがって、さらに音圧周波数特性上のピーク・ディップが少ない再生音質に優れたスピーカー31を実現することができる。」
「【図1】
[図:0001400359000001.jpg]
」
「【図9】
[図:0001400359000002.jpg]
」

(1)上記【0001】の記載によれば、引用文献1には、音波を放射する前面側に配置される第1振動板と、第1振動板の背面側に配置される第2振動板と、第1振動板および第2振動板が連結するボイスコイルのボビンと、を含む二重振動板構造のスピーカー振動系を有するスピーカーについて記載されている。

(2)引用文献1の【0024】-【0054】、図1-5には、実施例1のスピーカー1について記載されており、当該スピーカー1は、上記【0024】、【0025】、図1の記載によれば、音波を放射する前面側に配置される略コーン形状の第1振動板5と、第1振動板5の背面側に配置されてその外周側で第1振動板5の外周側と連結する略コーン形状の第2振動板6と、第1振動板5および第2振動板6の内周側がそれぞれ離隔して連結する略円筒形状のボイスコイルボビン2と、ボイスコイルボビン2の下端部に巻回されたボイスコイル3とを有している。

(3)引用文献1の【0077】-【0081】、図9には、実施例5のスピーカー31について記載されており、上記【0077】の記載によれば、当該スピーカー31は、逆ドーム形状の中央部33を振動板部分35aと一体に成形した第1振動板35を備え、第1振動板の構成が先の実施例の場合と相違する他は、ほぼ共通するスピーカーである。

そして、上記【0078】の記載によれば、第1振動板35は、略コーン形状の基体の内周側に、ボイスコイルボビン2の端部に連結する連結部32と、連結部32の内周側を覆う逆ドーム形状の中央部33と、を、基体と一体に成形して備えており、連結部32には、ボイスコイルボビン2の端部がアクリル系の接着剤で連結される。

また、ボイスコイルボビン2が略円筒形状を有していることを勘案すると、上記図1、図9からは、ボイスコイルボビン2が第2振動板6の内周側を貫通していることが見て取れるから、第2振動板6は、ボイスコイルボビン2が貫通する開口を有していることは明らかであり、さらに、上記図9からは、第1振動板35の中央部33が当該開口を横断していることも見て取れる。

したがって、実施例5のスピーカー31に着目して、上記(1)~(3)を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「音波を放射する前面側に配置される第1振動板35と、第1振動板35の背面側に配置されてその外周側で第1振動板35の外周側と連結する略コーン形状の第2振動板6と、第1振動板35および第2振動板6がそれぞれ離隔して連結する略円筒形状のボイスコイルボビン2と、ボイスコイルボビン2の下端部に巻回されたボイスコイル3とを有するスピーカー31であって、
第1振動板35は、略コーン形状の基体の内周側に、ボイスコイルボビン2の端部に連結する連結部32と、連結部32の内周側を覆う逆ドーム形状の中央部33と、を、基体と一体に成形して備えており、
連結部32には、ボイスコイルボビン2の端部がアクリル系の接着剤で連結され、
第2振動板6は、ボイスコイルボビン2が貫通する開口を有し、第1振動板35の中央部33は当該開口を横断している、
スピーカー31。」

第5 対比・判断

1.本願発明2について

事案に鑑み、本願発明2についてまず検討する。

(1)対比

本願発明2と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明のスピーカー31は第1振動板35及び第2第2振動板6を有しているから、本願発明2と引用発明は、振動板を備えるスピーカである点で共通する。

イ 引用発明の第2振動板6が有する「開口」は、ボイスコイルボビン2が貫通するものであるから、本願発明2の振動板の第一層の「コイル受入開口」と機能が共通するものである。そうすると、引用発明の第2振動板6は、「コイル受入開口を有する」点で本願発明2の振動板の第一層と共通する。また、引用発明の第1振動板35は、第2振動板6が有する開口を横断する中央部33を備えているから、「コイル受入開口を横断する」点で本願発明2の振動板の第二層と共通している。

しかしながら、引用発明の第1振動板35と第2振動板6は、それぞれの外周側で連結してはいるものの、ボイスコイルボビン2に対してそれぞれ離隔して連結しているから、それらは2つの別々の振動板であって、1つの振動板の第一層と第二層を構成するものではない。すなわち、引用発明の振動板は、本願発明2のように第一層と第二層とからなる二層構造の振動板ではない。

したがって、本願発明2の振動板は、「コイル受入開口を有する第一層と前記第一層に取り付けられかつ前記コイル受入開口を横断する第二層とを有する振動板」であるのに対して、引用発明の振動板は、「音波を放射する前面側に配置される第1振動板35と、第1振動板35の背面側に配置されてその外周側で第1振動板35の外周側と連結する略コーン形状の第2振動板6」であって、「第1振動板35は、略コーン形状の基体の内周側に、ボイスコイルボビン2の端部に連結する連結部32と、連結部32の内周側を覆う逆ドーム形状の中央部33と、を、基体と一体に成形して備えており」、「第2振動板6は、ボイスコイルボビン2が貫通する開口を有し、第1振動板35の中央部33は当該開口を横断している」点で相違する。

ウ 引用発明の「ボイスコイルボビン2と、ボイスコイルボビン2の下端部に巻回されたボイスコイル3」は、本願発明2の「コイル」に相当する。そして、引用発明のボイスコイルボビン2は、第2振動板6が有する開口を貫通しているから、「コイル受入開口内へ延びる」ものであるということができ、また、引用発明のボイスコイルボビン2は、第1振動板35及び第2振動板6と連結しており、その端部は、第1振動板35の連結部32に連結されているから、「コイル受入開口を横断する」振動板に「取り付けられている」ということができる。

しかしながら、本願発明2のコイルの端部は、コイル受入開口を横断する振動板の面(振動板の第二層の面)に直接接触するのに対して、引用発明のボイスコイルボビン2の端部は、アクリル系の接着剤で第1振動板35の連結部32に連結されているから、当該端部と当該連結部32との間には接着剤が介在することになる。そうすると、引用発明のボイスコイルボビン2の端部は、コイル受入開口を横断する振動板の面(第1振動板35の面)に直接接触はしていない。

したがって、コイルに関して、本願発明2と引用発明は「コイル受入開口内へ延びるとともに」「コイル受入開口を横断する」振動板の面に「接触する端部を有する」点で共通するが、当該端部が、本願発明2においては、コイル受入開口を横断する振動板の面に直接接触するのに対して、引用発明においては、直接接触はしていない点で相違する。

さらに、引用発明のボイスコイルボビン2の端部は、開口を有する第2振動板6ではなく、第1振動板の連結部32に連結しているから、本願発明2のように「コイル受入開口を画定する前記第一層の縁に取り付けられている」ものではない。

以上を総合すると、本願発明2と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>

振動板と、

コイル受入開口内へ延びるとともに前記コイル受入開口を横断する前記振動板の面に接触する端部を有するコイルと、

を備える

スピーカ。

<相違点>

(相違点1)

本願発明2の振動板は、「コイル受入開口を有する第一層と前記第一層に取り付けられかつ前記コイル受入開口を横断する第二層とを有する振動板」であるのに対して、引用発明の振動板は、「音波を放射する前面側に配置される第1振動板35と、第1振動板35の背面側に配置されてその外周側で第1振動板35の外周側と連結する略コーン形状の第2振動板6」であって、「第1振動板35は、略コーン形状の基体の内周側に、ボイスコイルボビン2の端部に連結する連結部32と、連結部32の内周側を覆う逆ドーム形状の中央部33と、を、基体と一体に成形して備えており」、「第2振動板6は、ボイスコイルボビン2が貫通する開口を有し、第1振動板31の中央部33は当該開口を横断している」点。

(相違点2)

コイルの端部が、本願発明2においては、コイル受入開口を横断する振動板の面に直接接触するのに対して、引用発明においては、直接接触はしていない点。

(相違点3)

コイルの端部が、本願発明2においては、「コイル受入開口を画定する前記第一層の縁に取り付けられている」のに対して、引用発明はそうではない点。

(2)相違点についての判断

ア 相違点1、3について

上記相違点1、3に係る本願発明2の発明特定事項については、引用文献1、および、長円形状のボイスコイルを示すために引用された引用文献2には記載されていないし、また、周知技術であるとも技術常識であるともいえない。

さらに、引用文献1の上記第4の1.で摘記した段落【0007】には、ボイスコイルのボビンを含めて第1振動板と第2振動板を組み合わせた二重振動板構造のスピーカー振動系は、連結した構造体としての剛性が低くなると、音圧周波数特性上のピーク・ディップが大きくなり、ピストン振動領域が狭くなって再生音質の低下を招く場合があるという課題が記載されており、また、上記第4の1.で摘記した段落【0038】、【0039】、【0080】には、引用発明の発明特定事項を採用することで、第2振動板6が、内径端において、ボイスコイルボビン2の外側曲面に、第1振動板35の内径端と離隔するように連結されることによって、エッジ7の内周部7bが連結する部分として規定される第2振動板6の外周縁部が、第1振動板35との間に、第2振動板6の係合部6bから内周側に向かうにつれて離隔する距離が大きくなる離隔空間Yを形成し、この離隔空間Yを設けることで、前面側で音波を放射する第1振動板35の外周側を、第1振動板35より分割振動する周波数が高いさらに強固な第2振動板6の外周側が補強するという構造が実現できることが記載されている。

したがって、第1振動板35の内径端、つまりボイスコイルボビン2の端部と離隔するように構成される、第2振動板6とボイスコイルボビン2の連結位置を、ボイスコイルボビン2の端部に変更して離隔空間Yがなくなるようにしたり、離隔空間を有しない、二層構造の1つの振動板としたりする動機付けは存在しない。

よって、引用発明において、振動板を、「コイル受入開口を有する第一層と前記第一層に取り付けられかつ前記コイル受入開口を横断する第二層とを有する」ものとし、コイルの端部を、「コイル受入開口を画定する前記第一層の縁に取り付けられている」ようにすることが当業者に容易に想到し得たことであるとはいえない。

イ まとめ

上記アに記載のとおりであるため、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明2は、当業者であっても、引用発明に基づいて、又は引用発明および引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明1、3-10について

本願発明1、3-10は、本願発明2の発明特定事項をすべて備えるものであるから、本願発明2と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて、又は引用発明および引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本願発明11について

本願発明11は、本願発明1に対応するスピーカの製造方法の発明であり、本願発明2の発明特定事項に対応する発明特定事項を備えるものであるから、本願発明2と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて、又は引用発明および引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 原査定について

1.理由1(特許法第29条第1項第3項)について

上記第5の1.(1)で説示したとおり、本願発明1-11は、引用発明に対して相違点1-3を有するから、引用文献1に記載された発明であるとはいえない。

したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

2.理由2(特許法第29条第2項)について

上記第5の1.(1)で説示したとおり、本願発明1-11は、引用発明に基づいて、又は引用発明および引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、原査定の理由2を維持することはできない。

第7 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-020630

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