特許拒絶査定不服審判
2022-017948
反射型の電磁波吸収体
- 審判番号
- 2022-017948
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-514217外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年11月08日
- 審決日
- 2023年07月03日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-514217「反射型の電磁波吸収体」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 6月23日国際公開、WO2022/131298、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)12月15日を国際出願日(優先権主張 令和2年12月17日(以下、「優先日」という。))とする出願であって、令和4年3月22日付けで拒絶理由通知がされ、令和4年5月26日に意見書が提出されると同時に手続補正がされたが、令和4年8月3日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和4年11月8日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和4年8月3日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(進歩性)
本願請求項1-11に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2ないし4に記載された技術事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2020-161584号公報
2.特開2013-236064号公報
3.国際公開第2018/088492号
4.特開2020-145278号公報
第3 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、令和4年11月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
厚さ0.1~2.0μmの電磁波透過層と、無機材料を含む抵抗層と、誘電体層と、反射層とをこの順序で備える積層構造を有し、
前記電磁波透過層は、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリアニリン誘導体及びポリピロール誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の導電性有機材料を含有し、
前記誘電体層は、少なくとも一種の誘電性化合物と、粘着性を有する樹脂成分とを含有する樹脂組成物で構成されており、
前記樹脂組成物は、周波数3.7GHz及び周波数90GHzの少なくとも一方における比誘電率が10.0よりも高く且つJIS Z0237:2009に記載の方法に準拠して測定されるステンレス304鋼板に対する粘着力が1.0N/25mm以上10N/25mm以下である、反射型の電磁波吸収体。
【請求項2】
厚さ0.1~2.0μmの電磁波透過層と、無機材料を含む抵抗層と、誘電体層と、反射層とをこの順序で備える積層構造を有し、
前記電磁波透過層は、ポリエチレンジオキシチオフェンを含む導電性ポリマーを含有し、
前記誘電体層は、少なくとも一種の誘電性化合物と、粘着性を有する樹脂成分とを含有する樹脂組成物で構成されており、
前記樹脂組成物は、周波数3.7GHz及び周波数90GHzの少なくとも一方における比誘電率が10.0よりも高く且つJIS Z0237:2009に記載の方法に準拠して測定されるステンレス304鋼板に対する粘着力が1.0N/25mm以上10N/25mm以下である、反射型の電磁波吸収体。
【請求項3】
前記誘電体層は、周波数90GHzにおける比誘電率が10.0よりも高い樹脂組成物で構成されており、
前記誘電体層の厚さが20~80μmである、請求項1又は2に記載の電磁波吸収体。
【請求項4】
前記誘電性化合物の比誘電率が前記樹脂成分の比誘電率よりも高い、請求項1~3のいずれか一項に記載の電磁波吸収体。
【請求項5】
前記誘電性化合物が金属化合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の電磁波吸収体。
【請求項6】
前記金属化合物が酸化チタン及びチタン酸バリウムの少なくとも一方である、請求項5に記載の電磁波吸収体。
【請求項7】
前記樹脂成分の周波数90GHzにおける比誘電率が2.5~9.5である、請求項1~6のいずれか一項に記載の電磁波吸収体。」
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同様。)
A 「【0015】
本発明は、その一態様において、抵抗膜、誘電体層、及び反射層を含み、反射層の誘電体層側の表面の表面粗さ(Rz)が0.2μm以上5μm以下である、λ/4型電波吸収体(本明細書において、「本発明のλ/4型電波吸収体」と示すこともある。)、に関する。以下に、これについて説明する。」
B 「【0016】
<1-1.抵抗膜>
抵抗膜は、電波吸収体において抵抗層として機能し得る層を含む限り特に制限されない。
・・・中略・・・
【0019】
抵抗膜の厚みは、特に制限されない。抵抗膜の厚みは、例えば1nm以上200nm以下、好ましくは2nm以上100nm以下、より好ましくは2nm以上50nm以下である。
【0020】
抵抗膜の層構成は特に制限されない。抵抗膜は、1種単独の層から構成されるものであってもよいし、2種以上の層が複数組み合わされたものであってもよい。
【0021】
<1-1-1.抵抗層>
<1-1-1-1.ITO含有抵抗層>
抵抗層としては、例えば酸化インジウムスズ(以下「ITO」とする)が用いられる。なかでも、非晶質構造が極めて安定であり、高温多湿の環境下においても抵抗層のシート抵抗の変動を抑えることができる点から、1~40重量%のSnO2、より好ましくは2~35重量%のSnO2を含有するITOを含有するものが好ましく用いられる。上記ITOの含有量は抵抗層中、例えば50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、通常100質量%未満である。」
C 「【0042】
<1-2.誘電体層>
誘電体層は、電波吸収体において目的の波長に対して誘電体として機能し得るものである限り、特に制限されない。誘電体層としては、特に制限されないが、例えば樹脂シート、粘着剤等が挙げられる。
・・・中略・・・
【0048】
誘電体層の比誘電率は、特に制限されない。誘電体層の比誘電率は、例えば1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~10、さらに好ましくは1~5である。
【0049】
誘電体層の比誘電率は、ネットワークアナライザー、空洞共振器などを用いて10GHzにおける比誘電率を空洞共振器摂動法により測定することができる。
【0050】
誘電体層の厚みは、特に制限されない。誘電体層の厚みは、例えば100~1000μm、好ましくは150~900μm、より好ましくは200~800μmである。
【0051】
誘電体層の厚みは、Nikon DIGIMICROSTANDMS-11C+Nikon DIGIMICRO MFC-101によって測定することができる。
【0052】
誘電体層の層構成は特に制限されない。誘電体層は、1種単独の誘電体層から構成されるものであってもよいし、2種以上の誘電体層が複数組み合わされたものであってもよい。例えば、粘着性を有しない誘電体とその両面に配置された粘着剤層とからなる3層構造の誘電体層、粘着性を有する誘電体からなる1層構造の誘電体層等が挙げられる。」
D 「【0070】
<1-5.層構成>
本発明のλ/4型電波吸収体において、各層は、電波吸収性能を発揮することができる順に配置される。一例として、抵抗膜、誘電体層、及び反射層は、この順に配置される。」
E 「【0093】
(2)測定、評価
(2-1)粘着力(誘電体層/反射層)の評価
得られた電波吸収体を10mm幅の短冊状に裁断して試験片を作製し、誘電体層の反射層に面する側とは反対側を露出させた。露出した面を、測定装置の台座に固定した。この試験サンプルの反射層をJIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、180°粘着力(N/10mm)を測定した。誘電体層/反射層間の粘着力が5N/10mm以上を〇、5N/10mm未満を×とする。」
F 上記Eには、誘電体層と反射層との間の粘着力である「誘電体層/反射層間の粘着力が5N/10mm以上を〇」とすることが記載されており、引用文献1における「λ/4型電波吸収体」の誘電体層と反射層との間の粘着力は、電波吸収体を10mm幅の短冊状に裁断して試験片を作製し、誘電体層の反射層に面する側とは反対側を露出させ、露出した面を、測定装置の台座に固定し、この試験サンプルの反射層をJIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、180°粘着力(N/10mm)を測定した際に、粘着力が5N/10mm以上であるといえる。
(2)引用発明
上記(1)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる
「抵抗膜、誘電体層、及び反射層を含む、λ/4型電波吸収体において、
抵抗膜の厚みは、1nm以上200nm以下であって、
抵抗膜の層構成は、2種以上の層が複数組み合わされたものであって、抵抗層としては、酸化インジウムスズ(以下「ITO」とする)が用いられ、
誘電体層の比誘電率は、1~20であり、ここで、比誘電率は、ネットワークアナライザー、空洞共振器などを用いて測定した10GHzにおけるものであって、
誘電体層は、1種単独の誘電体層から構成されるものであり、粘着性を有する誘電体からなる1層構造のものであって、
各層は、抵抗膜、誘電体層、及び反射層の順に配置されるものであり、
誘電体層と反射層との間の粘着力は、電波吸収体を10mm幅の短冊状に裁断して試験片を作製し、誘電体層の反射層に面する側とは反対側を露出させ、露出した面を、測定装置の台座に固定し、この試験サンプルの反射層をJIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、180°粘着力(N/10mm)を測定した際に、粘着力が5N/10mm以上である、
λ/4型電波吸収体。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
A 「【0008】
本発明のノイズ吸収積層体は、少なくとも1つの導電性ポリマー層及び少なくとも1つの軟磁性材料含有層を有する。導電性ポリマー層の厚さは、0.5~5μmが好ましい。また、導電性ポリマー層の厚さは、均一であることがより好ましい。
【0009】
[導電性ポリマー層]
導電性ポリマー層が含む導電性ポリマーとしては、π共役ポリマーがドーパントによってドープされているπ共役ポリマー複合体、具体的には、置換又は無置換のポリアニリンがドーパントによってドープされているポリアニリン複合体、置換又は無置換のポリピロールがドーパントによってドープされているポリピロール複合体、並びに置換又は無置換のポリチオフェンがドーパントによってドープされているポリチオフェン複合体が挙げられ、置換又は無置換のポリアニリンがドーパントによってドープされているポリアニリン複合体が好ましい。」
B 「【0063】
ポリチオフェンの分子量、分子量分布、置換ポリチオフェンの置換基は上記ポリアニリンと同様である。置換ポリチオフェンとしては、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)が好ましい。」
C 「【0099】
導電性ポリマー(例えば、ポリアニリン)層は透磁率特性を有さず、自由空間のインピーダンス整合をはかり、電磁波の反射を導電性ポリマー層表面で抑え、電磁波ノイズを減衰させる。」
D 「【0116】
導電性ポリマー層は、通常、導電性ポリマー材料を塗工した後、乾燥して成膜する。#10のバーコーターの場合、例えば80℃で10分間乾燥を行う。この場合、導電性ポリマー層の膜厚は1μm程度とすることができる。また、#40のバーコーターの場合、例えば80℃で30分乾燥を行う。この場合、膜厚は2μm程度とすることができる。」
3 引用文献3について
(1)引用文献3記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
A 「[0014] 本願で開示する電磁波吸収シートは、可撓性を有する電磁波吸収シートであって、抵抗皮膜と、誘電体層と、電磁波遮蔽層とが順次積層して形成され、前記抵抗皮膜が、導電性有機高分子により形成されている。
[0015] このようにすることで、本願で開示する電磁波吸収シートは、抵抗皮膜と誘電体層と電磁波遮蔽層とが積層して形成された電波干渉型の電磁波吸収シートとして、強く湾曲された場合でも抵抗皮膜にひび割れなどが生じにくく、インピーダンス整合を維持して高い電磁波吸収特性を発揮することができる。」
B 「[0043] [抵抗皮膜]
本実施形態にかかる電磁波吸収シートにおいて、抵抗皮膜1は、導電性有機高分子で構成される。
[0044] 導電性有機高分子としては、共役導電性有機高分子が用いられ、ポリチオフェンやその誘導体、ポリピロールやその誘導体を用いることが好ましい。」
C 「[0047] この他にも、抵抗皮膜1としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子を使用することができ、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、および、これらの共重合体等を用いることができる。」
4 引用文献4について
(1)引用文献4記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
A 「【0019】
(他の成分)
抵抗皮膜は、ポリアニリン及びポリアニリン複合体、バインダー、並びにフェノール性水酸基を有する化合物以外の他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含むことができる。他の成分として、例えば、無機材料、硬化剤、可塑剤、有機導電材料等の添加剤等が挙げられる。」
B 「【0026】
抵抗皮膜11の厚みは格別限定されず、例えば、0.1μm以上、0.5μm以上、又は1μm以上とすることができ、また、30μm以下、20μm以下、又は10μm以下とすることができる。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
ア 本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「誘電体層」、「反射層」は、各々、本願発明1の「誘電体層」、「反射層」に相当する。
また、引用発明の「抵抗膜」は、「2種以上の層が複数組み合わされたものであって」、「酸化インジウムスズ」からなるものである。ここで、「酸化インジウムスズ」は導電性の無機材料と認められ、また、λ/4型電波吸収体は、電磁波が抵抗膜を透過し反射層で反射されるものであるから、引用発明の2層で構成される「抵抗膜」は、導電性の無機材料を含む電磁波を透過する層といえる。
してみると、引用発明の2層で構成される「抵抗膜」のうちの一方と、本願発明1の「厚さ0.1~2.0μmの電磁波透過層」は、後記の点で相違するものの、「電磁波を透過する層」の点では共通する。
また、引用発明の2層で構成される「抵抗膜」のうちの他方は、本願発明1の「無機材料を含む抵抗層」に相当する。
そして、引用発明の「各層が、抵抗膜、誘電体層、反射層の順に配置される」ことと、本願発明1の「厚さ0.1~2.0μmの電磁波透過層と、無機材料を含む抵抗層と、誘電体層と、反射層とをこの順序で備える積層構造を有」することは、後記の点で相違するものの、「電磁波を透過する層と、無機材料を含む抵抗層と、誘電体層と、反射層とをこの順序で備える積層構造を有」することの点では共通する。
(イ)また、上記(ア)の点を踏まえると、引用発明の2層で構成される「抵抗膜」のうちの一方と、本願発明1の「前記電磁波透過層は、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリアニリン誘導体及びポリピロール誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の導電性有機材料を含有」することとは、後記の点で相違するものの、「前記電磁波を透過する層は、導電性材料を含有」することの点では共通する。
(ウ)引用発明の「誘電体層」は、「粘着性を有する誘電体からなる1層構造のものであ」って、技術常識を鑑みれば、「誘電体層」は、少なくとも一種の誘電性化合物と、粘着性を有する樹脂成分とを含有する樹脂組成物で構成されているものと認められる。
また、 引用発明の「誘電体層」は、10GHzにおける「比誘電率」が「1~20」であり、「誘電体層と反射層との間の粘着力」を、「JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、180°粘着力(N/10mm)を測定」すると、「5N/10mm以上」である。ここで、「5N/10mm以上」は、本願発明1における単位「N/25mm」に変換すると「12.5N/25mm」となことから、引用発明の、「誘電体層と反射層との間の粘着力」は、「12.5N/25mm」以上といえる。
してみると、引用発明の「誘電体層」と、本願発明1の「前記誘電体層は、少なくとも一種の誘電性化合物と、粘着性を有する樹脂成分とを含有する樹脂組成物で構成されており、前記樹脂組成物は、周波数3.7GHz及び周波数90GHzの少なくとも一方における比誘電率が10.0よりも高く且つJIS Z0237:2009に記載の方法に準拠して測定されるステンレス304鋼板に対する粘着力が1.0N/25mm以上10N/25mm以下である」ことは、後記の点で相違するものの、「前記誘電体層は、少なくとも一種の誘電性化合物と、粘着性を有する樹脂成分とを含有する樹脂組成物で構成されて」いる点では共通する。
(エ) 引用発明の「λ/4型電波吸収体」は、「抵抗膜」、「誘電体層」、「反射層」を有するものであるから、後記の点で相違するものの、本願発明1の「反射型の電磁波吸収体」に対応する。
(オ) してみると、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、また相違する。
[一致点]
「電磁波を透過する層と、無機材料を含む抵抗層と、誘電体層と、反射層とをこの順序で備える積層構造を有し、
前記電磁波を透過する層は、導電性材料を含有し、
前記誘電体層は、少なくとも一種の誘電性化合物と、粘着性を有する樹脂成分とを含有する樹脂組成物で構成されている、
反射型の電磁波吸収体。」
[相違点1]
「電磁波を透過する層」が、本願発明1では、「厚さ0.1~2.0μmの電磁波透過層」であって、さらに、「前記電磁波透過層は、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリアニリン誘導体及びポリピロール誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の導電性有機材料を含有」するものであるのに対して、引用発明では、2層で構成される「抵抗膜」のうちの一方の厚さは特定されておらず、さらに、「酸化インジウムスズ」を含有するものである点。
[相違点2]
本願発明1では、「前記樹脂組成物は、周波数3.7GHz及び周波数90GHzの少なくとも一方における比誘電率が10.0よりも高く且つJIS Z0237:2009に記載の方法に準拠して測定されるステンレス304鋼板に対する粘着力が1.0N/25mm以上10N/25mm以下である」のに対して、引用発明では、「誘電体層」は、10GHzにおける「比誘電率」が「1~20」であり、「誘電体層の反射層に対する粘着力」を、「JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、180°粘着力(N/10mm)を測定」すると、「5N/10mm以上である」点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
引用文献1の段落【0093】(上記第4 1 (1) E)には、粘着力が「5N/10mm未満を×」と記載され、ここで、5N/10mmを本願発明1における単位「N/25mm」に変換すると「12.5N/25mm」であって、引用文献1においては、粘着力が「12.5N/25mm未満」のものは「×」(不適)とされるものである。してみると、引用発明において粘着力を、あえて「×」とされる領域である「12.5N/25mm未満」の「1.0N/25mm以上10N/25mm以下」とする理由が存在しない。
また、引用文献2ないし4には、樹脂組成物の「JIS Z0237:2009に記載の方法に準拠して測定されるステンレス304鋼板に対する粘着力が1.0N/25mm以上10N/25mm以下」とすることは記載されておらず、本願の優先日前に周知の技術であったとも認められない。
したがって、相違点1については検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1に記載された発明、引用文献2ないし4に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1の「電磁波透過層」の材料を、「ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリアニリン誘導体及びポリピロール誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の導電性有機材料」に代えて、「ポリエチレンジオキシチオフェンを含む導電性ポリマー」としたものであるから、本願発明2と引用発明は、上記相違点2、及び、以下の相違点3で相違する。
[相違点3]
「電磁波を透過する層」が、本願発明2では、「厚さ0.1~2.0μmの電磁波透過層」であって、さらに、「電磁波透過層は、ポリエチレンジオキシチオフェンを含む導電性ポリマーを含有」するものであるのに対して、引用発明では、2層で構成される「抵抗膜」のうちの一方の厚さは特定されておらず、さらに、「酸化インジウムスズ」を含有するものである点。
そして、相違点2は、上記1 イで検討したように、当業者であっても引用文献1に記載された発明、引用文献2ないし4に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、相違点3については検討するまでもなく、本願発明2は、引用文献1に記載された発明、引用文献2ないし4に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
3 本願発明3ないし7について
本願発明3ないし7は、本願発明1または本願発明2の構成を含むものであるから、本願発明1または本願発明2と同じ理由により、当業者であっても引用文献1に記載された発明、引用文献2ないし4に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 原査定について
本願発明1ないし7は、相違点2に係る本願発明1の構成を含むものであるから、当業者が、拒絶査定において引用された引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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