特許拒絶査定不服審判
2022-017551
着座姿勢判定装置、椅子、着座姿勢判定方法、プログラム
- 審判番号
- 2022-017551
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-167989
- 請求日
- 2022年11月01日
- 審決日
- 2023年09月11日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
- 【請求人代理人】松沼 泰史
- 【請求人】株式会社オカムラ
- 【請求人代理人】松沼 泰史
- 審判長/審判官
- 審判長 筑波 茂樹
- 審判官 沼生 泰伸
- 審判官 中村 則夫
- 分類
- P18 .536-WY (A47C) / P18 .121-WY (A47C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第30条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-167989号「着座姿勢判定装置、椅子、着座姿勢判定方法、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月17日出願公開、特開2018- 75357号、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、特許法第30条第2項(発明の新規性喪失の例外)の規定を受けようとする旨を願書に記載して平成29年8月31日(優先権主張 平成28年11月2日)にされた出願であって、その出願の経緯は以下のとおりである。
令和 3年 3月30日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 8月 4日:意見書、手続補正書の提出
令和 3年 8月 5日:手続補足書の提出
令和 4年 1月31日付け:拒絶理由(最初の拒絶理由)通知書
令和 4年 7月25日付け:拒絶査定
令和 4年11月 1日:審判請求書の提出
第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は「この出願については、令和 4年 1月31日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。」というものである。
そして、令和4年1月31日付けの拒絶理由通知の概要は次のとおりである。
1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1について
請求項1-12における機械学習における教師データであるとして明細書[0031]に開示されたところの着座の有無及び着座姿勢と座面及び背板面の凹む方向への傾き又は傾きの変化量との間において、出願人は明細書等において相関関係があることを裏付けていないし、出願時の技術常識を鑑みても相関関係が存在することが推認できない。したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は請求項1-12に係る発明に対して当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されていない。
●理由2について
・請求項 1-12
引用文献等 3
<引用文献等一覧>
3.特開2015-168339号公報
第3 本願発明
本願の請求項1~12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明12」という。)は、令和3年8月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「 【請求項1】
椅子に人が着座した状態における前記椅子の人が接触する面を有する部材の前記面に沿った異なる位置となる複数箇所に設けられた傾きセンサのそれぞれから傾き情報を取得する傾き情報取得部と、
前記複数箇所において取得された傾き情報及び取得された前記傾き情報と対応する着座姿勢を含む計測情報を複数用いて機械学習を行うことにより算出された識別関数に前記複数箇所における傾き情報を入力して着座姿勢を判定する着座姿勢判定部と、
を備える着座姿勢判定装置。
【請求項2】
前記識別関数は、人が複数の異なる着座姿勢で学習用椅子に着座した状態において当該学習用椅子の人が接触する部材の複数箇所であって、前記椅子の人が接触する部材の複数箇所それぞれに相当する各箇所における傾き情報を用いて前記機械学習により算出された関数である
ことを特徴とする請求項1に記載の着座姿勢判定装置。
【請求項3】
前記識別関数は、人が前記学習用椅子に着座していない状態における前記複数箇所における傾き情報と、人が複数の異なる着座姿勢で前記学習用椅子に着座した状態において得られた前記複数箇所の傾き情報との差をそれぞれ用いて前記機械学習により算出された関数である
ことを特徴とする請求項2に記載の着座姿勢判定装置。
【請求項4】
前記識別関数は、人が予め定められた姿勢で前記学習用椅子に着座した状態における前記複数箇所における傾き情報と、人が複数の異なる着座姿勢で前記学習用椅子に着座した状態における前記複数箇所の傾き情報との差を用いて前記機械学習により算出された関数である
ことを特徴とする請求項2に記載の着座姿勢判定装置。
【請求項5】
前記傾き情報取得部は、前記椅子の座面に設けられた複数の傾きセンサから傾き情報を取得する
請求項1に記載の着座姿勢判定装置。
【請求項6】
前記傾き情報取得部は、人が前記椅子に着座していない状態における前記傾きセンサにおける前記椅子の幅方向の傾き検出基準軸を基準とした傾き情報を取得する
請求項1に記載の着座姿勢判定装置。
【請求項7】
前記傾き情報取得部は、少なくとも前記椅子の幅方向の中心位置における傾き情報を取得する
請求項1に記載の着座姿勢判定装置。
【請求項8】
前記椅子が背板部を備え、
前記傾き情報取得部は、前記背板部の幅方向の中心位置における傾き情報を取得する
請求項7に記載の着座姿勢判定装置。
【請求項9】
前記傾きセンサが前記椅子の人が接触する部材の裏面に設けられた請求項1から請求項8の何れか一項に記載の着座姿勢判定装置。
【請求項10】
椅子に人が着座した状態における前記椅子の人が接触する面を有する部材の前記面に沿った異なる位置となる複数箇所に設けられた傾きセンサのそれぞれから傾き情報を取得する傾き情報取得部と、
前記複数箇所において取得された傾き情報及び取得された前記傾き情報と対応する着座姿勢を含む計測情報を複数用いて機械学習を行うことにより算出された識別関数に前記複数箇所における傾き情報を入力して着座姿勢を判定する着座姿勢判定部と、有する着座姿勢判定装置
を備えた椅子。
【請求項11】
椅子に人が着座した状態における前記椅子の人が接触する面を有する部材の前記面に沿った異なる位置となる複数箇所に設けられた傾きセンサのそれぞれから傾き情報を取得し、
前記複数箇所において取得された傾き情報及び取得された前記傾き情報と対応する着座姿勢を含む計測情報を複数用いて機械学習を行うことにより算出された識別関数に前記複数箇所における傾き情報を入力して着座姿勢を判定する
着座姿勢判定方法。
【請求項12】
着座姿勢判定装置のコンピュータを、
椅子に人が着座した状態における前記椅子の人が接触する面を有する部材の前記面に沿った異なる位置となる複数箇所に設けられた傾きセンサのそれぞれから傾き情報を取得する傾き情報取得手段、
前記複数箇所において取得された傾き情報及び取得された前記傾き情報と対応する着座姿勢を含む計測情報を複数用いて機械学習を行うことにより算出された識別関数に前記複数箇所における傾き情報を入力して着座姿勢を判定する着座姿勢判定手段、
として機能させるプログラム。」
第4 理由2についての当審の判断
1 引用文献3、引用発明
(1)引用文献3の記載
原査定の拒絶理由に引用された引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
ア 記載事項
(ア)「【0037】
図1及び図2に示す座席4Aは、乗務員Mが着席するための設備である。座席4Aは、乗務員Mが腰を掛ける腰掛として機能し、車両の運転室内の床部4B上に設置されている。座席4Aは、図1及び図2に示す座部4aと、背もたれ部4bと、図2及び図3に示す支持部材4c~4fと、図3に示す連結部材4gと、図2及び図3に示す復心部材4hなどを備えている。図1及び図2に示す座部4aは、乗務員Mが着席する座ぶとんであり、背もたれ部4bは乗務員Mの背中をもたせかける背ずりふとんである。座部4a及び背もたれ部4bは、例えば、ポリウレタンフォームなどを発泡させて形成した難燃性の詰物と、この詰物の表面に多層積層によって一体成形された純毛又はナイロンなどの難燃性の表生地と、この詰物の裏面に多層積層によって一体成形された金属板(裏当金)などを備えている。支持部材4cは、座部4aを支持する部材であり、支持部材4dは背もたれ部4bを支持する部材である。支持部材4c,4dは、FRP(繊維強化プラスチック)成形又は金属板プレス成形によってフレーム状に形成されている。支持部材4e,4fは、支持部材4cを支持する部材である。支持部材4e,4fは、金属製のフレーム状の部材であり支柱として機能する。支持部材4e,4fは、図2及び図3に示すように、この支持部材4e,4fの中心軸を回転中心として、支持部材4cと一体となって回転可能なように運転室内の床部4B上に固定されている。」
(イ)「【0039】
図2及び図3に示す復心部材4hは、支持部材4e側の中心線と支持部材4f側の中心線とが一致するように、支持部材4eに復元力を作用させる部材である。復心部材4hは、支持部材4eと支持部材4fとを連結する板ばね4kなどを備えている。復心部材4hは、支持部材4e,4fの周方向に間隔をあけて、支持部材4e,4fの外側に板ばね4kを配置している。復心部材4hは、板ばね4kの一方の端部を支持部材4eの外周面に固定し、板ばね4kの他方の端部を支持部材4fの外周面に固定している。復心部材4hは、図3(A)に示すように、支持部材4e側の中心線と支持部材4f側の中心線とが一致し座席4Aが傾斜していない状態では、支持部材4e,4fの外側に板ばね4kの中央部が僅かに突出するように、この板ばね4kを予め撓ませた状態で支持部材4e,4fに固定されている。復心部材4hは、図3(B)に示すように、支持部材4e側の中心線と支持部材4f側の中心線とが一致せず座席4Aが傾斜している状態では、支持部材4eが傾斜する方向の板ばね4kが外側に撓み、支持部材4eが傾斜する方向とは反対側の板ばね4kが内側に撓む。このため、復心部材4hは、座席4Aが前後方向及び左右方向に傾斜したときには、支持部材4e側の中心線と支持部材4f側の中心線とが一致するように、板ばね4kが弾性変形することによって発生する復元力を支持部材4eに作用させる。」
(ウ)「【0041】
図1に示す状態変化検出装置5は、乗務員Mを支持する支持体の状態の変化を検出する装置である。状態変化検出装置5は、乗務員Mを支持する支持体の状態の変化を検出することによってこの乗務員Mの姿勢を検出して、この乗務員Mの姿勢に応じた状態変化検出信号(状態変化検出情報)を異常状態検出装置6の情報入力部7に出力する。状態変化検出装置5は、図2に示すように、乗務員Mが着席する座席4Aの前後方向及び左右方向の傾斜を検出する。状態変化検出装置5は、座席4Aの傾斜角度±θFR,±θRLを検出する加速度センサ又はひずみゲージのような傾斜角度検出部5aを備えており、この傾斜角度検出部5aが座席4Aの傾斜角度±θFR,±θRLに応じた電気信号を出力する。状態変化検出装置5は、傾斜角度検出部5aが加速度センサの場合には支持部材4eの外周面に着脱自在に装着されており、傾斜角度検出部5aがひずみゲージの場合には板ばね4kに着脱自在に装着されている。
【0042】
図1に示す異常状態検出装置6は、乗務員Mの異常状態を検出する装置である。異常状態検出装置6は、乗務員Mを支持する座席4Aの傾斜角度±θFR,±θRLに基づいて乗務員Mの異常状態を検出する。異常状態検出装置6は、乗務員Mが業務を継続不可能であると判断したときには、警告を発生して乗務員Mの異常状態を知らせるとともに車両を安全に停止させる。異常状態検出装置6は、図1に示すように、情報入力部7と、傾斜角度演算部8と、基準傾斜角度設定部9と、基準傾斜角度情報記憶部10と、経過時間計測部11と、基準経過時間設定部12と、基準経過時間情報記憶部13と、異常状態判定部14と、ブレーキ動作指令部15と、異常状態送信部16と、異常状態警告部17と、プログラム記憶部18と、制御部19などを備えている。異常状態検出装置6は、例えば、パーソナルコンピュータなどによって構成されており、異常状態検出プログラムに従って所定の処理を実行する。
【0043】
情報入力部7は、種々の情報を入力させる手段である。情報入力部7は、状態変化検出装置5が出力する状態変化検出情報が入力し、この状態変化検出情報を制御部19に出力する。情報入力部7は、状態変化検出装置5と制御部19とを接続してこれらの間で種々の情報を入出力させるインタフェース(I/O)回路である。情報入力部7は、状態変化検出装置5からの出力信号(電気信号)を増幅する増幅回路と、この増幅回路が出力する電気信号(アナログ信号)をディジタル信号に変換するA/D変換回路などを備えている。
【0044】
傾斜角度演算部8は、状態変化検出装置5の検出結果に基づいて、座席4Aの前後方向及び左右方向の傾斜角度±θFR,±θRLを演算する手段である。傾斜角度演算部8は、情報入力部7が出力する状態変化検出情報に基づいて、座席4Aの前後方向及び左右方向の傾斜角度±θFR,±θRLを演算する。ここで、図2及び図4(B)に示す傾斜角度+θFRは、乗務員M側から見て座席4Aが前側に傾いたときの角度である。図2及び図4(C)に示す傾斜角度-θFRは、乗務員M側から見て座席4Aが後側に傾いたときの角度である。図2及び図4(D)に示す傾斜角度+θRLは、乗務員M側から見て座席4Aが右側に傾いたときの角度である。図2及び図4(D)に示す傾斜角度-θRLは、乗務員M側から見て座席4Aが左側に傾いたときの角度である。傾斜角度演算部8は、例えば、図4(A)に示すように、乗務員Mが通常の姿勢であるときには、座席4Aが床部4Bの床面に対して略平行であり、傾斜角度±θFR,±θRLがゼロであると演算する。傾斜角度演算部8は、例えば、図4(B)に示すように、乗務員Mが突っ伏して前側に傾いた姿勢になって座席4Aが前側に向かって下方に傾斜したときの傾斜角度+θFRを演算する。傾斜角度演算部8は、例えば、図4(C)に示すように、乗務員Mが仰け反り後側に傾いた姿勢になって座席4Aが後側に向かって下方に傾斜したときの傾斜角度-θFRを演算する。傾斜角度演算部8は、例えば、図4(D)に示すように、乗務員Mが右側に倒れ込み右側に傾いた姿勢になって座席4Aが右側に向かって下方に傾斜したときの傾斜角度+θRLを演算する。傾斜角度演算部8は、例えば、図4(E)に示すように、乗務員Mが左側に倒れ込み左側に傾いた姿勢になって座席4Aが左側に向かって下方に傾斜したときの傾斜角度-θRLを演算する。傾斜角度演算部8は、座席4Aの前後方向及び左右方向の傾斜角度±θFR,±θRLの演算結果を傾斜角度信号(傾斜角度情報)として制御部19に出力する。
【0045】
図1に示す基準傾斜角度設定部9は、乗務員Mが異常状態であるか否かを判定するときの基準傾斜角度±θthを設定する手段である。基準傾斜角度設定部9は、例えば、図4(B)~(E)に示すように、乗務員Mが異常状態になったときの座席4Aの傾斜角度±θFR,±θRLを、この乗務員Mが異常状態であるか否かを判定するときの判定基準となる基準傾斜角度(しきい値)±θthとして設定する。基準傾斜角度設定部9は、例えば、異常状態検出装置6の管理者が任意の基準傾斜角度±θthを設定するときに、この基準傾斜角度±θthを管理者が入力するための入力装置などである。基準傾斜角度設定部9は、管理者によって設定される基準傾斜角度±θthを基準傾斜角度信号(基準傾斜角度情報)として制御部19に出力する。」
(エ)「【0050】
図1に示す異常状態判定部14は、状態変化検出装置5の検出結果に基づいて、乗務員Mの異常状態を判定する手段である。異常状態判定部14は、状態変化検出装置5が検出する座席4Aの前後方向及び左右方向の傾斜に基づいて、乗務員Mの異常状態を判定する。異常状態判定部14は、図2及び図4に示す座席4Aの傾斜角度±θFR,±θRLが基準傾斜角度±θthを超えているか否かを判定する。以下では、図5に示すように、乗務員M側から見て右斜め前方にこの乗務員Mが倒れ込んだ場合を例に挙げて説明する。ここで、図5に示す縦軸は座部4a及び背もたれ部4bの傾斜角度±θFR,±θRLであり、横軸は時間である。異常状態判定部14は、例えば、図5に示すように時間T13,T15,T17において座席4Aの傾斜角度±θFR,±θRLが基準傾斜角度±θthを超えたときには、傾斜角度超過信号(傾斜角度超過情報)を制御部19に出力する。」
イ 図面
(ア)図1
「
[図:0001402515000001.jpg]
」
(イ)図2
「
[図:0001402515000002.jpg]
」
(ウ)図3
「
[図:0001402515000003.jpg]
」
(エ)図4
「
[図:0001402515000004.jpg]
」
(2)引用発明
上記(1)から、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「乗務員Mが着席する座部4a、乗務員Mの背中をもたせかける背もたれ部4b、支持部材4c~4f及び連結部材4g並びに支持部材4eと支持部材4fとを連結する板ばね4kなどを備えている復心部材4hを備える座席4Aと、
前記座席4Aの傾斜角度±θFR,±θRLに応じた電気信号を出力する加速度センサ又はひずみゲージのような傾斜角度検出部5aを備え、前記傾斜角度検出部5aが加速度センサの場合には前記支持部材4eの外周面に着脱自在に装着されており、前記傾斜角度検出部5aがひずみゲージの場合には前記板ばね4kに着脱自在に装着されている、乗務員Mが着席する座席4Aの前後方向及び左右方向の傾斜を検出する状態変化検出装置5と、
前記状態変化検出装置5が検出する座席4Aの前後方向及び左右方向の傾斜に基づいて、乗務員M側から見て右斜め前方にこの乗務員Mが倒れ込んだ場合などの、乗務員Mの異常状態を判定する異常状態判定部14を備える異常状態検出装置6と、
を備える装置。」
2 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「前記座席4Aの傾斜角度±θFR,±θRLに応じた電気信号を出力する加速度センサ又はひずみゲージのような傾斜角度検出部5aを備え、前記傾斜角度検出部5aが加速度センサの場合には前記支持部材4eの外周面に着脱自在に装着されており、前記傾斜角度検出部5aがひずみゲージの場合には前記板ばね4kに着脱自在に装着されている、乗務員Mが着席する座席4Aの前後方向及び左右方向の傾斜を検出する状態変化検出装置5」は、「傾斜角度検出部5a」がセンサであり、「座席4Aの前後方向及び左右方向の傾斜」が傾き情報であると認められることを踏まえると、本願発明1の「椅子に人が着座した状態における前記椅子の人が接触する面を有する部材の前記面に沿った異なる位置となる複数箇所に設けられた傾きセンサのそれぞれから傾き情報を取得する傾き情報取得部」と、「センサから傾き情報を取得する傾き情報取得部」という点において共通する。
(イ)引用発明の「前記状態変化検出装置5が検出する座席4Aの前後方向及び左右方向の傾斜に基づいて、乗務員M側から見て右斜め前方にこの乗務員Mが倒れ込んだ場合などの、乗務員Mの異常状態を判定する異常状態判定部14を備える異常状態検出装置6」は、「乗務員M側から見て右斜め前方にこの乗務員Mが倒れ込んだ場合などの、乗務員Mの異常状態」は乗務員の着座姿勢に含まれるものであると認められることを踏まえると、本願発明1の「前記複数箇所において取得された傾き情報及び取得された前記傾き情報と対応する着座姿勢を含む計測情報を複数用いて機械学習を行うことにより算出された識別関数に前記複数箇所における傾き情報を入力して着座姿勢を判定する着座姿勢判定部」と、「取得された傾き情報を入力して着座姿勢を判定する着座姿勢判定部」という点において共通する。
(ウ)引用発明の「装置」は、乗務員の着座姿勢に含まれる「乗務員Mの異常状態」を判定するものであると認められることを踏まえると、本願発明1の「着座姿勢判定装置」に相当する。
(エ)上記(ア)~(ウ)より、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「センサから傾き情報を取得する傾き情報取得部と、
取得された傾き情報を入力して着座姿勢を判定する着座姿勢判定部と、
を備える着座姿勢判定装置。」
<相違点1>
傾き情報取得部について、本願発明1は、「椅子に人が着座した状態における前記椅子の人が接触する面を有する部材の前記面に沿った異なる位置となる複数箇所に設けられた傾きセンサのそれぞれから傾き情報を取得する」構成であるのに対し、引用発明は、傾斜角度検出部5aとしての加速度センサ又はひずみゲージが、支持部材4eの外周面又は板ばね4kに装着されている一方、乗務員が着座する座部4a又は乗務員の背中をもたせかける背もたれ部4bの乗務員が接触する面に沿った異なる位置となる複数箇所に設けられておらず、また、加速度センサ又はひずみゲージの一つ一つが個別に「傾きセンサ」を構成するものか不明であり「傾きセンサのそれぞれから傾き情報を取得」しているか明らかでない点。
<相違点2>
着座姿勢判定部について、本願発明1は、「前記複数箇所において取得された傾き情報及び取得された前記傾き情報と対応する着座姿勢を含む計測情報を複数用いて機械学習を行うことにより算出された識別関数に前記複数箇所における傾き情報を入力して着座姿勢を判定する」構成であるのに対し、引用発明は、そのように構成されていない点。
イ 判断
まず、相違点1について検討するに、引用文献3の全記載をみても、引用発明において、傾斜角度検出部5aの配設位置を、支持部材4eの外周面や、板ばね4kから変更する理由はないし、これを座部4a又は背もたれ部4bの乗務員が接触する面に沿った異なる位置となる複数箇所に設けることを動機付ける他の証拠も見当たらない。したがって、その余の点について検討するまでもなく、引用発明において、本願発明1の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本願発明10~12について
本願発明10~12は、請求項1の着座姿勢判定装置を備えた椅子、前記着座姿勢判定装置を用いた着座姿勢判定方法及びコンピュータを前記着座姿勢判定装置として機能させるプログラムの発明であり、引用発明との間に上記相違点1及び2と同様の相違点を有するものであると認められる。
したがって、上記(1)イで検討したのと同様に、本願発明10~12は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本願発明2~9について
本願発明2~9は、請求項1を直接または間接的に引用するものであって、引用発明との間に少なくとも上記相違点1及び2を備えるものであるから、本願発明1と同様に、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
以上(1)~(3)で検討したとおり、本願発明1~12が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことを理由とする、本願発明1~12についての原査定は維持することができない。
第5 理由1についての当審の判断
令和4年1月31日付けの拒絶理由通知書に記載した理由1(実施可能要件)について、指摘された内容は上記「第2 原査定の概要」において示したとおりである。
しかしながら、当業者であれば、本願明細書の段落【0031】等を参酌すれば、座面や背板面が人の荷重で凹むこと及び着座姿勢によって凹む位置及び量が変わり、座面や背板面の複数箇所における傾きが着座姿勢によって変わることは明らかであるから、椅子に人が着座した状態における前記椅子の人が接触する面を有する部材の前記面に沿った異なる位置となる複数箇所に設けられた傾きセンサのそれぞれから取得された傾き情報と着座姿勢との間には、一定の関係性があることが理解できる。
そうすると、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明1~12を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものと認められる。
したがって、本願発明1~12が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないことを理由とする、本願発明1~12についての原査定は維持することができない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1~12は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、また、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明1~12を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-017551