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商標拒絶査定不服審判

2022-017512

ヒガシヤマロサンジン、ロサンジン、ヒガシヤマ

審判番号
2022-017512
法域
商標
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
商願2021-129463
請求日
2022年11月01日
審決日
2024年07月09日
公報発行日
2024年09月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社 カネイ岡
  • 【請求人代理人】弁理士法人小笠原特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 豊瀬 京太郎
  • 審判官 清川 恵子
  • 審判官 飯田 亜紀
分類
T18 .22 -Z (W33)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法4条1項7号
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第7号
データ出所
審決公報(XML)

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商願2021-129463拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 本願商標及び手続の経緯 本願商標は、「東山 魯山人」の文字を横書きしてなり、第33類「清酒」を指定商品として、令和3年10月18日に登録出願されたものである。 原審では、令和4年3月28日付けの拒絶理由の通知、同年5月9日に意見書の提出、同年7月26日付けで拒絶査定がなされたもので、これに対して、同年11月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 原査定の拒絶の理由(要旨) 原査定において、「本願商標は、「東山 魯山人」の文字を横書きしてなるものであるが、構成中の「魯山人」の文字部分は、「京都の生まれの陶芸家。本名、房次郎。書・篆刻もよくした。料理に通じ、食器用に斬新な意匠の陶磁器を製作。」を意味する語であり、歴史上の人物「北大路魯山人」そのものを認識させるものであり、また、「東山」の文字部分は、「京都市の東を限る山々、京都市の区名」等を意味する語である。ところで、一般に、歴史上の著名な人物にゆかりのある土地等では、当該人物の氏名や略称などの標章を観光や土産物販売等の事業に用いて地域振興を図っているのが通常であり、かつ、人々から敬愛の念を持って親しまれているとともに、その人物の名声により強い顧客吸引力を有している。そして、「北大路魯山人」のゆかりの地においては、足立美術館・魯山人館では、魯山人の作品を約500点所蔵しており、魯山人館にて公開されており、また、山代温泉では、魯山人の旧別荘が一般公開されており、さらに、魯山人にまつわる企画展やイベント等が行われている実情にある。そうすると、このような歴史上の著名な人物である「北大路魯山人」を表したものと認識される本願商標について、当該人物との直接的な関係が認められない出願人が、自己の商標として、その指定商品について商標権を取得し、これを独占的に使用することは、当該人物名を使用した観光振興や地域おこしなどの公益的な施策の遂行を阻害することとなり、社会公共の利益に反するとみるのが相当である。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、拒絶したものである。 第3 当審の判断 1 商標法第4条第1項第7号について 商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は、商標登録を受けることができないと規定する。ここでいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(1)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(3)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号)。 ところで、周知・著名な歴史上の人物名は、その人物の名声により強い顧客吸引力を有する。その人物の郷土やゆかりの地においては、住民に郷土の偉人として敬愛の情をもって親しまれ、例えば、地方公共団体、商工会議所等の公益的な機関が、その業績を称え記念館を運営していたり、地元のシンボルとして地域興しや観光振興のために人物名を商標として使用したりするような実情が多くみられるところであり、当該人物が商品又は役務と密接な関係にある場合はもちろん、商品又は役務との関係が希薄な場合であっても、強い顧客吸引力を発揮すると考えられる。このため、周知・著名な歴史上の人物名を商標として使用したいとする者も、少なくないものと考えられる。一方、敬愛の情をもって親しまれているからこそ、その商標登録に対しては、国民又は地域住民全体の反発も否定できない。 そして、上記判決では、商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものとして、(1)ないし(5)の場合を例示として挙げており、その例示の一つとして、「(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合」が挙げられている。 そうとすれば、周知・著名な歴史上の人物名からなる商標は、(ア)当該歴史上の人物の周知・著名性、(イ)当該歴史上の人物名に対する国民又は地域住民の認識、(ウ)当該歴史上の人物名の利用状況、(エ)当該歴史上の人物名の利用状況と指定商品・役務との関係、(オ)出願の経緯・目的・理由、(カ)当該歴史上の人物と請求人(出願人)との関係に係る事情を総合的に勘案して、当該商標を特定の者の商標としてその登録を認めることが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものと認められる場合には、商標法第4条第1項第7号に該当するというべきである。 2 本願商標の商標法第4条第1項第7号該当性について (1)本願商標 本願商標は、「東山 魯山人」の文字を横書きしてなるところ、その構成中、「東山」の文字は「京都市の区名。」等の意味(「広辞苑第7版」株式会社岩波書店)を有し、一般に商品の産地や販売地を認識させるものであるから、当該文字部分は、商品の出所識別標識としての機能を有しない若しくは極めて弱いものと認められる。 そうすると、本願商標は、その構成中の「魯山人」の文字部分が、独立して商品の出所識別標識として機能し得るものといえる。 (2)「魯山人」の文字について 「魯山人」の文字は「陶芸家。本名、房次郎。京都生れ。はじめ書・篆刻で名をなし、のち料理・食器の研究にあたる。北鎌倉に窯を築き多彩な陶磁器を製作。(1883~1959)」(別掲1)を指称する「北大路魯山人」の略称であると認められる。 「魯山人」について、職権による調査(別掲)及び請求人の主張によれば、以下のとおりである。 ア 「魯山人」の周知・著名性 「魯山人」は、上記(1)及び別掲2ないし別掲7のとおり、書家、篆刻家、陶芸家、料理家、美食家等多才な人物として知られ、数多くの書籍に取り上げられたり、同人にまつわるテレビ番組が制作されるなど、全国的に周知、著名な歴史上の人物名である北大路魯山人を表すものとして、広く一般に知られている。 そうすると、「魯山人」の文字は、全国的に周知、著名な歴史上の人物名である「北大路魯山人」を表示したものと容易に認識されるものといえる。 イ 「魯山人」に対する国民又は地域住民の認識 北大路魯山人(魯山人)は、上記(1)及び(2)アのとおり、歴史上の人物として全国的に知られているほか、別掲8ないし別掲13のとおり、同人の出生地である京都市上賀茂には石碑が建立され、同人が逗留した温泉施設や生活していた古民家などが観光地として紹介されており、また、同人のゆかりの地において観光振興のためのイベントも開催されている。 また、同人の制作した書、絵画、篆刻、陶磁器、漆器等は、国立工芸館をはじめとする複数の美術館等において所蔵されており(原審における拒絶理由通知書(6)及び別掲14~16)、現在においても、京都国立近代美術館をはじめとする日本全国に所在する多数の美術館において展示会や展覧会が開催されていることから(別掲17~36)、ゆかりの地における地域住民はもとより、我が国の国民に広く敬愛されているといえる。 ウ 「魯山人」の名称の利用状況 上記イのとおり、北大路魯山人(魯山人)のゆかりの地において、地域振興や観光振興のために、同人の名称を利用していることが認められ、また、京都国立近代美術館をはじめとする全国各地の国公立美術館や私立美術館、その他の展示会場等において、同人の作品に関する展示会や展覧会、また、記念イベント等が多数開催されており、同人の名称が広く利用されていることが認められる。 エ 「魯山人」の名称の利用状況と指定商品・指定役務との関係 本願の指定商品は、前記第1のとおり、第33類「清酒」であるところ、当審において職権をもって調査したところ、本願の指定商品及びこれに類似する商品を取り扱う分野において、請求人以外にも「魯山人」の名称及び当該名称を含む標章を使用している者が存在する(別掲37、38)。 また、一般に美術館等におけるミュージアムショップでは、展示作品に関する商品や地域の特産品等が広く販売されているところ、別掲39ないし別掲47のように、本願の指定商品をはじめとするアルコール飲料が販売されている事実が少なからず見受けられる。 さらに、北大路魯山人(魯山人)は、上記(2)アのとおり、料理家や陶芸家としても広く知られているところ、同人は、本願の指定商品である「清酒」を飲む際に使用するとっくりやぐい呑みといった酒器も多数制作している事実がある(別掲48)。 オ 出願の経緯・目的・理由 請求人は、本願商標の出願の経緯等について、以下のとおり主張する。 請求人は、3件の魯山人に関する登録商標の商標権者であり、そのうち1件の登録商標に係る指定商品「清酒」について、平成17年から同26年まで京都伏見の酒造会社である東山酒造有限会社(以下「A社」という。)に使用許諾を行っていたが、同年9月30月に当該指定商品に係る部分をA社に譲渡した(第4号証、第5号証)。 そして、A社は、請求人から譲り受けた商標(登録第4928030号商標の2)を使用していたが、更新登録の申請を失念したことにより、平成28年2月10日に当該商標の商標権は消滅した(第6号証)。A社は当該商標の使用及び登録について請求人に協力を求めたため、請求人はA社と協議の上で本願商標の登録出願を行った。また、A社は、「魯山人」の文字を、商品「清酒」に使用している(第7~10号証)。 カ 「魯山人」と請求人(出願人)との関係 職権により調査するも、「魯山人」と請求人とを関連づけるような事実は発見できない。 (3)判断 上記(2)アないしカで認定した事実によれば、「北大路魯山人」は、書家、篆刻家、陶芸家、料理家及び美食家等多才な人物として、全国的に著名な存在であり、現在においても、我が国の国民(一般需要者)の間に、広く認識されている存在であることは明らかである。そして、「魯山人」は、我が国において、著名な歴史上の人物である「北大路魯山人」の略称であるところ、同人の出生地やゆかりの地における関連施設は観光地として紹介され、また、同人の名称を利用したイベントの開催、あるいは同人の制作した書、絵画、篆刻、陶磁器、漆器等は、国立工芸館をはじめとする複数の美術館等において所蔵され、現在においても、京都国立近代美術館をはじめとする日本全国に所在する多数の美術館や展示会場等において展示会や展覧会等が多数開催されており、「魯山人」の人名は、それぞれの地域における公益的事業の遂行と密接な関係を有しているものといえる。 そして、本願の指定商品は、上記第1のとおり「清酒」であるところ、美術館等に併設するミュージアムショップでは、展示作品に関する商品や地域の特産品等が広く販売されており、その中には、本願の指定商品をはじめとするアルコール飲料が販売されている事実は少なくないし、また、魯山人は、本願の指定商品である「清酒」を飲む際に使用するとっくりやぐい呑みといった酒器についても、作品として多数制作している事実があることから、「魯山人」の名称は、本願の指定商品とは密接な関係性を有しないものとはいえない。 さらに、本願の指定商品及びこれに類似する商品を取り扱う分野において、「魯山人」の名称及び当該名称を含む標章を使用している者が、A社以外にも存在している実情が認められることを踏まえれば、本願の指定商品の分野において、今後更に多くの事業者が、「魯山人」の語の使用を欲する可能性は極めて高いといえる。 以上の内容に照らすと、請求人による本願商標の出願の経緯等が上記(2)オのとおりであって、公益的な施策等に便乗し、その遂行を阻害し、利益の独占を図る意図をもってしたものでないとしても、「魯山人」の文字を有してなる本願商標が、特定の者(請求人)の商標として登録された場合には、全国各地の「魯山人」を活用した地域振興や観光振興等の遂行を阻害するおそれや公正な商取引を阻害するおそれがあり、さらに、ゆかりの地に関連した各種の商品等を取り扱う事業者や、今後「魯山人」の語の使用を欲するであろう多くの事業者に対して無用の混乱を招くおそれがあるものと判断するのが相当である。 してみれば、このような事情を招くおそれがある本願商標を請求人の商標として登録を認めることは、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものというべきである。 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 3 請求人の主張について 請求人は、歴史上の人物名からなる過去の登録例を挙げ、本願も同様に判断されるべきである旨主張する。 しかしながら、登録出願に係る商標が商標法第4条第1項第7号に該当するか否かは、当該商標の査定時又は審決時における実情に基づき判断すべきものであるところ、本願については上記2のとおりであるから、具体的な状況や構成態様の異なるこれら登録例が上記判断に影響を及ぼすものとはいえない。 したがって、請求人の上記主張は採用することができない。 4 むすび 以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、これを登録することはできない。 よって、結論のとおり、審決する。

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2022-017512

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