商標拒絶査定不服審判
2022-017421
マスバランスフィルム、マッスバランスフィルム、マスバランス、マッスバランス、マス、マッス、バランスフィルム、バランス
- 審判番号
- 2022-017421
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2021-124756
- 請求日
- 2022年10月31日
- 審決日
- 2024年11月07日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】朋和産業株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人藤本パートナーズ
- 審判長/審判官
- 審判長 大森 友子
- 審判官 小俣 克巳
- 審判官 田中 瑠美
- 分類
- T18 .272-Z (W1620)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項16号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第16号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2021-124756拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和3年10月7日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 4月 8日付け:刊行物等提出書
令和4年 4月21日付け:刊行物等提出書
令和4年 4月28日付け:刊行物等提出書
令和4年 6月 6日付け:拒絶理由通知書
令和4年 7月20日 :意見書の提出
令和4年 7月28日付け:拒絶査定
令和4年10月31日 :審判請求書の提出
令和6年 6月25日付け:審尋
令和6年 8月 6日 :回答書の提出
2 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第16類「ラミネート加工した包装用のプラスチック製フィルム及びプラスチック製袋,金属はくを蒸着した包装用のプラスチックフィルム及びプラスチック製袋,プラスチックと紙とを組み合わせてなる包装用フィルム及び包装用袋,開封用テープを装着させたチャックテープ付きプラスチック製包装用袋,家庭用食品包装フィルム,家庭用食品包装フィルム袋,包装用プラスチックフィルム,プラスチックフィルム製の包装用袋,プラスチック製包装用袋,紙製包装用袋,包装紙,プラスチック製気泡状包装材料,包装材料(文房具),プラスチック材料で被覆された紙製包装容器,食品包装に用いられる業務用プラスチック製フィルム,薬剤包装に用いられる業務用プラスチック製フィルム,業務用食品包装用プラスチックフィルム,業務用薬剤包装用プラスチックフィルム,業務用プラスチック製食品包装用袋,業務用プラスチック製薬剤包装用袋,紙製またはプラスチック製の食品用包装袋,紙製またはプラスチック製の薬剤用包装袋,紙製又はプラスチック製の包装袋,紙製又はプラスチック製の吸収機能を有する食品包装用シート,紙製又はプラスチック製の食品包装用調湿シート,食品用包装紙,薬剤用包装紙,薬剤用の板紙製包装用容器,薬剤分包機用分包紙,紙袋,紙箱,段ボール箱,紙製又は厚紙製の詰物用材料,紙製包装用容器,段ボール,段ボール原紙,セロハン類,紙類,文房具用又は家庭用の粘着テープ,文房具類」及び第20類「食品包装用プラスチック製包装用容器,薬剤包装用プラスチック製包装用容器,プラスチックフィルム製包装用容器,プラスチック製包装葉,食品包装用プラスチック製トレイ,トレー状のプラスチック製包装用容器,プラスチック製包装用容器,プラスチック製包装用容器のキャップ,密封キャップ(金属製のものを除く。),プラスチック製包装用容器の栓,全面開口を可能にした固形物や粘稠物の包装に適したプラスチック製の袋,コルク製・プラスチック製及び木製の栓,木製・竹製・プラスチック製包装用容器,プラスチック製及び木製のふた,袋を密封するためのプラスチック製包装用クリップ」を指定商品として登録出願されたものである。
3 原査定の拒絶の理由(要旨)
本願商標は、別掲1のとおり、黒地縦四角形内に「MASS」「BALANCE」及び「FILM」の欧文字を3段に白抜きで表示し、その下部に天秤の図形を白抜きで表示してなるところ、プラスチック製品製造業界等においてマスバランス方式を用いたプラスチック製品を「マスバランス方式」又は「マスバランス」と称して多数取り扱われている事実からすると、「マスバランスフィルム」の文字(語)は、全体として「原料段階での生物由来成分を完成した化学品に割り当てはめる手法によるフィルム」、すなわち、「マスバランス方式によるフィルム」と認識するものと認められる。
そうすると、「マスバランスフィルム」を欧文字で表示したものと認められる部分を有する本願商標を、その指定商品について使用するときは、これに接する取引者、需要者が、当該商品を「マスバランス方式により生産されたフィルム、マスバランス方式により生産されたフィルムを使用した袋・包装用袋・包装用容器」であると容易に認識するものである。
したがって、本願商標は、これをその指定商品中、「マスバランス方式により生産されたフィルム、マスバランス方式により生産されたフィルムを使用した商品」以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。
4 当審における審尋
当審において、令和6年6月25日付け審尋により、別掲2に掲げる事実を提示した上で、本願商標が、その指定商品との関係において、商標法第4条第1項第16号に該当する旨の暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、請求人に対し、意見を求めた。
5 審尋に対する請求人の意見(要旨)
請求人は、上記4の審尋に対し、令和6年8月6日に回答書を提出し、要旨以下(1)ないし(4)のとおりの意見を述べた。
(1)合議体は、「マスバランス(物質収支)」について、バイオマス由来原料を活用するための特定の手法(以下、「本件手法」という。)を表す語として認定しているが、「マスバランス」及び「物質収支」の文字自体が有する意味合いとしては、「ある化学反応の系において、その系に投入した物質の量と系から得られた物質の量との収支」であって、あくまで物質量の収支を表す語であることから、本件手法のような何らかのやり方や方法を表す語とは異なるものであり、何らかの手法を表す語として使用されているものは、「マスバランス方式」若しくは「マスバランスアプローチ」の文字であることから、「マスバランス」の文字単独で本件手法を示す語として一般的に使用されているとはいうべきではなく、「マスバランス」の文字は、構成文字の意味合い及び使用状況のいずれをみても、本件手法の意味合いを表す語とは直ちに認識できない。
(2)本願商標中の「MASS BALANCE FILM」の文字からは、「物質収支のフィルム」程の抽象的で漠然とした意味合いは理解できるとしても、「マスバランス」と「マスバランス方式」の文字の意味が異なる以上、「マスバランス方式により生産されたフィルム」の意味合いは生じ得ない。
(3)「マスバランス方式」の文字が、再生可能資源をより積極的に活用するための認証制度における手法の一つを表す語であって、決して製造方法を表すものではないことからすれば、仮に本願商標から「マスバランス(物質収支)方式により生産されたフィルム」程の意味合いが認識され得る場面があったとしても、該意味合いの表現自体が、製品がどのような品質、生産方法で製造されたものかということを直ちに理解できないような抽象的なものでしかない。
(4)本願の指定商品の分野において、「MASS BALANCE FILM」の欧文字及びその片仮名表記である「マスバランスフィルム」の文字自体が、その他商品の品質等を直接的かつ具体的に表すものとして一般的に使用されている事実も見当たらないことからすれば、本願商標は本願の指定商品との関係で直ちに商品の製造方法や品質を表示しているものとして認められるべきものでなく、むしろ特定の意味合いを有しない一種の造語と認識されると考えるのが相当である。
6 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第16号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり、黒地の角が丸い長方形の内側に「MASS」、「BALANCE」及び「FILM」の白抜きの文字を3段に表し(以下「本願の文字部分」という。)、その下に天秤を表したと思しき白抜きの図形を配してなるところ、本願の文字部分のうち、「MASS」の文字は、「大きさ、量、かさ、質量」の意味を、「BALANCE」の文字は、「釣り合い、平均、均衡、調和」の意味をそれぞれ有する英単語(すべて出典は、株式会社研究社「新英和中辞典第7版」)であるところ、上段の「MASS」と中段の「BALANCE」の文字を「MASS BALANCE」と一連に表した場合は、「物質収支」、つまり、「原料から製品への加工・流通工程において、ある特性を持った原料(例:バイオマス由来原料)がそうでない原料(例:石油由来原料)と混合される場合に、その特性を持った原料の投入量に応じて、製品の一部に対してその特性の割り当てを行う手法のこと」を意味するものとして、後掲2のとおり、広く使用されている「マスバランス(物質収支)」の欧文字表記と理解されるものである。
また、原審提示の情報に加え、別掲2の参考情報にもあるとおり、「マスバランス(物質収支)」は、従来の化石資源を一気にバイオマス由来原料に置き換えることが技術的に困難とされる中、生産者に再生可能原料の使用を促し、再生可能な資源を普及させる重要な手法として注目されており、既に紙製品やパーム油、電力業界で一般に採用されてきたところ、近年は特に、化学業界において、循環型経済への移行を図る有効な手だてとして採用する企業が増加していることが確認できる。
そして、実際に、本願の指定商品に関連する分野においては、原料段階での生物由来成分を完成した化学品に当てはめる手法のことを「マスバランス(物質収支)」と称している実情が認められ、そのうえ、構成中の「FILM」の文字は、「(表面にできる)薄皮、薄膜、皮膜」等の意味を有する英単語(前掲書)であって、本願の指定商品との関係では、商品の品質、形状を表示する文字と認められるところ、「マスバランス(物質収支)」方式によるフィルムが生産されている事実も確認できることから、本願の文字部分は、全体として、「マスバランス(物質収支)方式により生産されたフィルム」程の意味合いを認識させるものといえる。
そうすると、「マスバランスフィルム」の欧文字表記と理解される「MASS BALANCE FILM」の文字を有する本願商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、当該商品が「マスバランス方式により生産されたフィルム、マスバランス方式により生産されたフィルムを使用した商品」であることを認識するものというべきである。
したがって、本願商標は、これをその指定商品中の「マスバランス方式により生産されたフィルム、マスバランス方式により生産されたフィルムを使用した商品」以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、合議体は、「マスバランス(物質収支)」について、バイオマス由来原料を活用するための特定の手法(本件手法)を表す語として認定していると述べ、「マスバランス」及び「物質収支」の文字自体が有する意味合いとしては、「ある化学反応の系において、その系に投入した物質の量と系から得られた物質の量との収支」であって、あくまで物質量の収支を表す語であることから、本件手法のような何らかのやり方や方法を表す語とは異なるものであり、何らかの手法を表す語として使用されているものは、「マスバランス方式」若しくは「マスバランスアプローチ」の文字であることから、「マスバランス」の文字単独で本件手法を示す語として一般的に使用されているとはいうべきではなく、「マスバランス」の文字は、構成文字の意味合い及び使用状況のいずれをみても、本件手法の意味合いを表す語とは直ちに認識できない旨主張する。
しかしながら、「マスバランス(物質収支)」の語が、「原料から製品への加工・流通工程において、ある特性を持った原料(例:バイオマス由来原料)がそうでない原料(例:石油由来原料)と混合される場合に、その特性を持った原料の投入量に応じて、製品の一部に対してその特性の割り当てを行う手法のこと」を意味するものとして広く使用されていることは、別掲の参考情報に提示したとおりであり、実際に、本願の指定商品に関連する分野においても、原料段階での生物由来成分を完成した化学品に当てはめる手法のことを「マスバランス(物質収支)」と称している実情が認められることよりすれば、当該「マスバランス(物質収支)」の語は、本願商標の取引者、需要者をして、上記の手法を表すものと理解、認識させるものであるといわざるを得ない。
そして、「マスバランス(物質収支)」の使用実情を示す事例に「方式」や「アプローチ」の文字が含まれているとしても、「マスバランス(物質収支)」の語が、上記手法を表すものとして使用されている事実には相違なく、近年は特に、化学業界において、循環型経済への移行を図る有効な手だてとして上記手法が採用され、社会一般に浸透しつつある状況下では、「マスバランス(物質収支)」の語のみでも上記手法を認識させるというのが相当であり、上記認定、判断は妥当なものというべきである。
イ 請求人は、本願商標中の「MASS BALANCE FILM」の文字からは、「物質収支のフィルム」程の抽象的で漠然とした意味合いは理解できるとしても、「マスバランス」と「マスバランス方式」の文字の意味が異なる以上、「マスバランス方式により生産されたフィルム」の意味合いは生じ得ない旨主張する。
しかしながら、上記(1)で述べたとおり、本願の指定商品に関連する分野においては、原料段階での生物由来成分を完成した化学品に当てはめる手法のことを「マスバランス(物質収支)」と称している実情が認められ、また、「マスバランス(物質収支)」の語のみでも上記手法を認識させるというのが相当であることに加え、本願商標の構成中の「FILM」の文字は、本願の指定商品との関係では、商品の品質、形状を表示する文字と認められるところ、「マスバランス(物質収支)」方式によるフィルムが生産されている事実も確認できることから、本願商標中の「MASS BALANCE FILM」の文字からは、全体として、「マスバランス(物質収支)方式により生産されたフィルム」程の意味合いを認識させるものというべきである。
ウ 請求人は、「マスバランス方式」の文字が、再生可能資源をより積極的に活用するための認証制度における手法の一つを表す語であって、決して製造方法を表すものではないことからすれば、仮に本願商標中の「MASS BALANCE FILM」の文字から「マスバランス(物質収支)方式により生産されたフィルム」程の意味合いが認識され得る場面があったとしても、該意味合いの表現自体が、製品がどのような品質、生産方法で製造されたものかということを直ちに理解できないような抽象的なものでしかない旨主張する。
しかしながら、商標法第4条第1項第16号該当性の判断において、「商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標」に該当するというためには、その商標によってあらわされるような品質の商品が現実に製造、販売されていることを必要とするものではなく、一般需要者が、その商標を付した商品に接したとするならば、その商品の品質効能等の特性を誤認するおそれがあれば足るものというのが相当である(平成元年4月20日東京高裁昭和63年(行ケ)113号)。
そして、「マスバランス方式」の文字が、再生可能資源をより積極的に活用するための認証制度における手法の一つを表す語であるとしても、上記(1)で述べたとおり、本願商標中の「MASS BALANCE FILM」の文字部分は、本願の指定商品に関連する分野における実情に照らせば、これに接する取引者、需要者をして、当該認証方式により生産されたフィルム、すなわち「マスバランス(物質収支)方式により生産されたフィルム」であること、という商品の品質、生産方法を表示するものと理解、認識させるものであるといわざるを得ない。
エ 請求人は、本願の指定商品の分野において、「MASS BALANCE FILM」の欧文字及びその片仮名表記である「マスバランスフィルム」の文字自体が、その他商品の品質等を直接的かつ具体的に表すものとして一般的に使用されている事実も見当たらないことからすれば、本願商標中の「MASS BALANCE FILM」の文字は、本願の指定商品との関係で直ちに商品の製造方法や品質を表示しているものとして認められるべきものでなく、むしろ特定の意味合いを有しない一種の造語と認識されると考えるのが相当である旨主張する。
しかしながら、本願の指定商品に関連する分野における「MASS BALANCE」、つまり、「マスバランス(物質収支)」の語に関する取引の実情については、別掲2の参考情報で提示したとおりであり、「FILM」(フィルム)の文字は、本願の指定商品との関係では、商品の品質、形状を表示する文字と認められるところ、実際に、「マスバランス(物質収支)」方式によるフィルムが生産されている事実も確認できることよりすれば、本願商標中の「MASS BALANCE FILM」の文字は、「マスバランス(物質収支)方式により生産されたフィルム」を表すものとして一般に認識されるものといわざるを得ず、商品の品質を表すものというべきである。
オ したがって、請求人の上記アないしエの主張は、いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第16号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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