特許拒絶査定不服審判
2022-016998
糖鎖解析方法、糖鎖解析システム、糖鎖解析用プログラム、及び糖鎖解析用キット
- 審判番号
- 2022-016998
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-035083
- 請求日
- 2022年10月25日
- 審決日
- 2023年12月11日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】学校法人近畿大学
- 【請求人代理人】弁理士法人京都国際特許事務所
- 【請求人】株式会社島津製作所
- 【請求人代理人】弁理士法人京都国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 三崎 仁
- 審判官 松本 隆彦
- 審判官 加々美 一恵
- 分類
- P18 .121-Z (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018- 35083「糖鎖解析方法、糖鎖解析システム、糖鎖解析用プログラム、及び糖鎖解析用キット」拒絶査定不服審判事件〔令和元年9月5日出願公開、特開2019-148564〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成30年2月28日の出願であって、令和3年6月10日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月20日に意見書及び手続補正書が提出され、令和4年1月7日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月30日に意見書が提出されたが、同年7月21日付けで拒絶査定(原査定)がされたところ、これに対し、同年10月25日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、令和3年8月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「 【請求項3】
a)試料中の糖鎖を蛍光標識する蛍光標識ステップと、
b)蛍光標識された糖鎖を含む試料を、レクチンが添加されていない緩衝液と該緩衝液に複数種類のレクチンがそれぞれ添加された複数種類のレクチン添加済み緩衝液のうちの少なくとも二種以上の分離用緩衝液を用いたマイクロチップ電気泳動法により分離して蛍光検出する測定ステップと、
c)前記二種以上の分離用緩衝液を用いた測定により取得された複数のエレクトロフェログラムを比較することにより、前記試料中の糖鎖を同定する同定ステップと、
を有し、前記緩衝液はタンパク質との相互作用が実質的にないものであることを特徴とする糖鎖解析方法。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。
1 この出願の請求項1ないし10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.国際公開第2004/036216号
引用文献2.特開2009-074811号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3.特開2002-243701号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4.国際公開第2002/044708号(周知技術を示す文献)
なお、請求項3を含む請求項1~4、7~10に係る発明について、以下のように説示している。
「引用文献1に記載された発明は、明細書第35頁第21行~第36頁第5行に記載されているように、泳動液に緩衝液を用い、電気泳動を行う前にAPTSで蛍光標識した糖鎖を電気泳動で分析し、レクチンを含んだ泳動液をキャピラリーに注入するものである。ここで、レクチンは同文献の請求項7等にも記載されているように、ニホンニワトコレクチン、イヌエンジュレクチン等、複数のレクチンを用いている。さらに、同文献の請求項5等に記載されているように、特異的に認識する糖鎖が明らかな1種以上の糖鎖結合性タンパク質と、当該糖鎖結合性タンパク質と結合することが不明の1種以上の糖鎖混合物とを反応させる糖鎖反応工程と、上記糖鎖混合物のみの分離結果と、上記糖鎖反応工程によって得られた反応混合物の分離結果との比較に基づき、上記糖鎖混合物中に、上記糖鎖結合性タンパク質と結合する糖鎖の有無を判定する糖鎖判定工程とを有するものである。そして、同文献の請求項13等に記載されているように、糖鎖判定工程では、マイクロチップ電気泳動による泳動結果の比較に基づいて、糖鎖を判定することを想定しているものである。加えて、明細書第35頁第22行に記載されているように、100mMのトリスアセテート緩衝液(pH 7.4)を用いていることを想定しているものである。
ここで、緩衝液について、本願明細書の[0040]を参照するに、「2%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む80mMのトリス酢酸緩衝液(pH 7.5)を使用した」と記載されている。
してみれば、マイクロチップ電気泳動の分野において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含むトリス緩衝液を用いることは周知技術であるから(例えば、引用文献2の[0020]のヒドロキシプロピルメチルセルロース、[0021]、[0028]、引用文献3の[0010]、引用文献4の明細書第11頁第22行~第13頁第1行を参照されたい)、引用文献1に記載された発明も、トリス緩衝液を用いるものであるところ、該周知技術を適用して、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含むトリス緩衝液を用いることは当業者が容易に想到し得ることであって、適用に際して、令和3年8月20日付け手続補正書でした補正における請求項1~4、7~10に規定される緩衝液の濃度、相互作用に関する性質、pHに関する性質のものとすることは当業者の通常の創作能力の発揮である。」
第4 引用文献の記載事項
1 引用文献1
(1) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である国際公開第2004/036216号(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審において付加した。)。
(引1-ア)
「より詳細には、糖タンパク質やグリコサミノグリカンから得られた糖鎖の混合物と、各種のレクチンあるいは糖鎖結合性タンパク質との相互作用を一斉測定する方法について鋭意に検討した結果、レクチンあるいは糖鎖結合性タンパク質を含む緩衝溶液中で蛍光標織した糖鎖の混合物を電気泳動的な手段により分離することにより、従来知られていなかったレクチンあるいは糖鎖結合性タンパク質の微妙な糖鎖認識能の相違を明確に測定できることを見出した。このような知見に基づき、本発明を完成させるに至った。」(明細書5頁5~12行)
(引1-イ)
「すなわち、本発明の糖鎖のスクリーニング方法は、上記本発明の測定方法を用いる糖鎖のスクリーニング方法であって、特異的に認識する糖鎖が明らかな1種以上の糖鎖結合性タンパク質と、当該糖鎖結合性タンパク質と結合することが不明の1種以上の糖鎖混合物とを反応させる糖鎖反応工程と、上記糖鎖混合物のみの分離結果と、上記糖鎖反応工程によって得られた反応混合物の分離結果との比較に基づき、上記糖鎖混合物中に、上記糖鎖結合性タンパク質と結合する糖鎖の有無を判定する糖鎖判定工程とを含むことを特徴としている。」(明細書6頁14~21行)
(引1-ウ)
「上記 「糖鎖結合性タンパク質」は、例えば、既知の100種類以上の糖鎖結合性タンパク質から、任意かつ多種多様に選択して用いることができる。後述する実施例で使用した6つのレクチンを用いることが好ましい。 すなわち、タチナタ豆レクチン(ConA : Concanavalin A)、小 麦胚芽レクチン : wheat germ agglutinin) 、チューリップレクチン(TGA : T. gesneriana agglutinin) 、リゾプスカビレクチン(RSL : Rizopus stronipher lectin) 、二ホンニワ卜コ レクチン (SSA : Sambucus sieboldiana lectin)、イヌエンジュレクチン (MAM : Maackia anmurensis lectin)を用いることが好ましく、これらのレクチンを複数組み合わせた糖鎖結合性タンパク質ライブラリー(レクチンセット)を用いることがより好ましい。」(明細書10頁5~15行)
(引1-エ)
「図1(a) ~図1(c)は、実施例1におけるa1酸性糖タンパク質由来の糖鎖のレクチン添加の有無による電気泳動の結果を示した図であり、図1(a)はレクチンを添加しない場合の電気泳動の結果を示した図であり、図1(b)はα1酸性糖タンパク質由来の糖鎖の模式図であり、図1(c)は3種のレクチン(WGA、ConA、TGA)を添加した場合の電気泳動の結果を示した図である。」(明細書12頁7~12行)
(引1-オ)
「多流路キャピラリー電気泳動あるいは多流路マイクロチップ電気泳動装置を用いて、糖鎖結合性タンパク質ライブラリー(Con A,WGA、TGA,PHA-E4,RSL,AAL,SSAおよびMAM) が含まれる緩衝液を電気泳動用緩衝液として、未知糖鎖試料を分析することにより、未知糖鎖試料と標準糖鎖ライブラリーの糖鎖との泳動挙動の比較により、生体成分中の未知糖鎖あるいはその混合物を、容易に、しかも秒単位で決定できるようになる。」(明細書27頁8~14行)
(引1-カ)
「以下の実施例では、異なる濃度の糖鎖結合性タンパク質存在下、キャピラリー電気泳動によってレーザー励起された蛍光を検出する。このようにして提供する技術は、(1) ~(3) を同時に検出できる。(1)種々の糖鎖、(2)特異的なタンパク質に対する糖鎖部分の結合特異性、(3)カイネティックデータ(例えば、それぞれの糖鎖の結合定数など)。この結果、例えば、細胞表面で糖鎖変化を表現する生物学的現象を解明するために有用である。また、遺伝子組換えされた生物学的薬剤を評価する上で特に重要である。なぜなら、異なる細胞株または異なる培養条件によって得られた製品は、時々、多種多様の糖鎖を含んでいる場合があるからである。キャピラリー電気泳動、2次元、3次元のクロマトグラフ技術、スラブゲル形式での糖鎖電気泳動などを含む新しい技術の開発が、オリゴ糖分析では増加している。電気泳動とレーザー励起蛍光法(LIF)とを組み合わせた検出方法は、糖タンパク質試料中の糖鎖を超高感度で解析するために有力な方法である。試料中の糖鎖を蛍光標識するための試薬としては、LIF検出でのキャピラリー電気泳動に用いる還元糖の誘導体化および分析に用いられる、例えば、8-アミノピレン-1.3.6-トリスルフォネート(APTS)を用いた。これにより、キャピラリー電気泳動によって単離されるα1酸性糖タンパク質(AGP)由来の糖鎖分析に好適な分析方法を提供することができる(実施例1) 。」(明細書29頁21行~30頁16行)
(引1-キ)
「本発明では、糖鎖の複雑な混合物のハイスループット機能分類の方法を提案する。混合物または糖鎖は予め蛍光標識されている。そして選択された複数のレクチンセットの存在下、キャピラリー電気泳動によって分析する。本発明者は、糖鎖を、各糖鎖の泳動様式に基づいて分類することに成功した。また、電荷を有する蛍光標識試薬を用いて標識することが提案されている (Shimura K., et al, Anal. Biochem., 1995, 227, 186-194.) 。この提案では、標識された糖鎖の電荷が、タンパク質と結合する糖鎖、または、結合しない糖鎖の泳動のための駆動力となる。本発明では、糖鎖の還元末端が下記の化学式に示すように、APTSを用いた還元的アミノ化によって修飾されている。
[図:0001407302000001.jpg]
APTS標識された糖タンパク質試料である単糖およびオリゴ糖および化学修飾されたキャピラリーを用いることにより、よい分離能を示す。アミノピレン残基のスルホン酸によるマイナスの電荷は、結合反応の研究においては適している。」(明細書32頁13~33頁10行)
(引1-ク)
「〔キャピラリーアフィニティ一電気泳動〕
泳動液は、lOOmMのトリスアセテート緩衝液(pH7.4)を用いた。キャピラリーアフィ二ティー電気泳動を行う前に APTSで蛍光標識した糖鎖を前述のようにしてキャピラリー電気泳動により、印加電圧10kvで分析した。続いて、図11に示される濃度のレクチンを含んだ上記泳動液をキャピラリーに注入した。分析する前に、キャピラリー泳動用緩衝液で1分間洗浄した。 次に、レクチンを含んだ同じ緩衝液で1分間洗浄した。この実験装置は、同じ溶液を96-wellプレートで処理できるので、一連の結合反応を自動的に実行できる。」(明細書35頁21~36頁5行)
(引1-ケ)
「〔実施例1〕 α1酸性糖タンパク質由来の糖鎖の分類
α1酸性糖タンパク質(AGP)は、図1(b) および図2に示すように、2本鎖、3本鎖、4本鎖の糖鎖を含んでいる。さらに、3本鎖、4本鎖の糖鎖の中には、非還元末端のGalβ1-4GlcNAc残基に、フコース残基を含んでいる糖鎖も存在する。本実施例では、AGPから得られたアシアロー糖鎖の混合物の移動度を検討した。その結果を図1(c)に示す。
2本鎖の糖鎖(AI)は、最も早い移動時間に観察された(5.2分)。3本鎖(AII)4本鎮(AIV)の糖鎖は、それぞれ6.2分と7.2分に観察された。6.5分と7.5分とに観察されたピークは3本鎖の糖鎖(AIII)および4本鎖の糖鎖(AV)であり、いずれもフコース残基が付加している(図1(a))。
(1)WGAの添加
泳動液にWGAを添加すると、興味深い移動を示した。6μMのWGA濃度では、AIIとAIIIとが単一のピークとして8.2分に、さらにAIVとAVとが9.2分に単一のピークとして観察された。12μMのWGAでは、AIIとAIII、およびAIVとAVの移動順序が逆転した。これらのデータは、フコース残基が3本鎖および4本鎖の糖鎖の分枝に付加することにより、WGAとの結合が減少したことを示している。
(2)ConAの添加
ConAを泳動液に添加すると、2本鎖の糖鎖のピーク強度が変化した。レクチン非存在下で 5.2分に観察された2本鎖の糖鎖(AI)のピーク強度は、0.2μMのConAよりも高濃度のConAで、大きく減少した。一方、ConAは、これらの濃度では3本鎖および4本鎖の糖鎖には明らかに親和性を示さなかった。これらの結果は、Kakehi K, et al., Anal. Chem., 2001, 73, 2640― 2647.に記載のデータに類似している。
(3)TGAの添加
チューリップの球根は、2種類のレクチンを含み、その1つは、イースト菌に結合する。もう 1種類のレクチン(TGA)は、マウスの赤血球に特異的に結合し、この結合は、豚チログロブリンによって特異的に阻害される。TGAを添加すると、AGP由来のオリゴ糖の移動において、興味深い結果を示した。3本鎖の糖鎖(AIIおよびAIII)が、このレクチン(TGA)に対して高い特異性を示した。2μMのTGAでは、AIIとAIIIとのグループが、7.0分に移動した。12μMのTGAでは、AIIとAIIIとがブロードな単一ピークとして溶出し、最も遅く(約 9.3分)に観察された。これに対して、TGAと2本鎖および4本鎖の糖鎖との親和性は弱いものであった。」(明細書37頁9行~38頁22行)
(引1-コ)
「以上のように、本発明の技術は、既知および/または未知の糖鎖ライブラリーを、既知または未知のタンパク質の可溶化溶液、ゲル、またはゾルを媒体として用いる電気泳動にかけ、その泳動下で形成される糖鎖-糖鎖結合性タンパク質複合体の電気泳動の相違に基づき、糖鎖の分類、および糖鎖とタンパク質との相互作用の解析を行う。糖鎖ライブラリーと電気泳動媒体とはキットで、また電気泳動ゲル媒体はマイクロチップなどの形で提供し得る。」(49頁18~24行)
(引1-サ)
「1.1種以上の糖鎖混合物の分離結果と、当該糖鎖混合物と糖鎖結合性タンパク質とを反応させた反応混合物の分離結果との比較に基づき、糖鎖-糖鎖結合性タンパク質の相互作用を測定することを特?とする糖鎖-糖鎖結合性タンパク質の相互作用の測定方法。
2.上記1種以上の糖鎖混合物の電気泳動結果と、上記反応混合物の電気泳動結果とを比較することを特徴とする請求の範囲1に記載の糖鎖-糖鎖結合性タンパク質の相互作用の測定方法。
・・・
4.上記糖鎖結合性タンパク質は、タチナタ豆レクチン、小麦胚芽レクチン、チュ一リップレクチン、リゾプスカビレクチン、ニホンニワトコレクチン、イヌエンジュレクチン、ヒイロチャワンタケレクチン、イヌエンジュレクチンから選択される1以上の糖鎖結合性タンパク質であることを特徴とする請求の範囲1、2または3に記載の糖鎖-糖鎖結合性タンパク質の相互作用の測定方法。
・・・
13.上記糖鎖判定工程または糖鎖結合性タンパク質判定工程では、キャピラリー電気泳動、 または、マイクロチップ電気泳動による泳動結果の比較に基づいて、糖鎖または糖鎖結合性タンパク質を判定特徴とする請求の範囲5~12のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。」(請求の範囲)
(引1-シ)
[図:0001407302000002.jpg]
(2) 引用文献1からの看取・認定事項
(引1-サ)の請求の範囲1の「当該糖鎖混合物と糖鎖結合性タンパク質とを反応させた反応混合物の分離結果」について、「糖鎖結合性タンパク質」は、(引1-ウ)、(引1-ケ)及び(引1-サ)の請求の範囲4記載から、複数種のレクチンであり、(引1-エ)および(引1-シ)から、キャピラリーアフィニティ電気泳動による、図1(a)がレクチンを添加しない場合の電気泳動の結果を示しており、図1(c)が3種のレクチン(WGA、ConA、TGA)を添加した場合の電気泳動の結果を示しており、(引1-ク)には、WGA、ConA、TGAをそれぞれ泳動液に添加した時の泳動結果が、添加しない場合からどのように変化したかが記載されていることから、泳動液に「糖鎖結合性タンパク質」である「複数種のレクチン」をそれぞれ添加することで、複数種の泳動液を「糖鎖混合物と糖鎖結合性タンパク質とを反応させ」ていると認められる。また、これらの事項から(引1-ア)の「レクチンあるいは糖鎖結合性タンパク質を含む緩衝溶液中で蛍光標織した糖鎖の混合物を電気泳動的な手段により分離することにより」という記載における「レクチンを含む緩衝溶液」は「泳動液」であると認められる。
(3) 引用文献1に記載された発明
上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「特異的に認識する糖鎖が明らかな1種以上の糖鎖結合性タンパク質と、当該糖鎖結合性タンパク質と結合することが不明の1種以上の糖鎖混合物とを反応させる糖鎖反応工程と、上記糖鎖混合物のみの分離結果と、上記糖鎖反応工程によって得られた反応混合物の分離結果との比較に基づき、上記糖鎖混合物中に、上記糖鎖結合性タンパク質と結合する糖鎖の有無を判定する糖鎖判定工程とを含む糖鎖のスクリーニング方法であって、(引1-イ)
1種以上の糖鎖結合性タンパク質は、複数のレクチンであり、(引1-ウ)
糖鎖は予め蛍光標識され、(引1-カ)
前記複数のレクチンと結合することが不明の1種以上の糖鎖混合物とを反応させる糖鎖反応工程は、泳動液に複数種のレクチンをそれぞれ添加することであり、(2)
前記複数種のレクチンをそれぞれ添加したトリスアセテート緩衝液(引1-ク)である各泳動液中で蛍光標織した糖鎖の混合物を電気泳動により分離し(引1-ア)(引1-サ)(2)、レーザー励起された蛍光を検出し(引1-オ)
キャピラリーアフィニティ電気泳動によるレクチンを添加しない場合の糖鎖混合物の電気泳動結果と、レクチンを含む緩衝溶液である泳動液における電気泳動結果とを比較するものである(請求の範囲2、(引1-ク)、(引1-エ))
糖鎖のスクリーニング方法。」
2 周知技術
(1)引用文献2~4の記載事項
ア 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-074811号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある(下線は当審において付加した。)。
「【0020】
また、マイクロチップ電気泳動又はキャピラリー電気泳動に適用する場合には、泳動用緩衝液には、分離媒体としてポリマーが含まれる。このような分離媒体用のポリマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリ―N,N―ジメチルアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、熱応答性ポリマー(ポリN-イソプロピルアクリルアミド等)、ナノボール(M. Tabuchi, M. Ueda, N. Kaji, Y. Yamasaki, Y. Nagasaki, K. Yoshikawa, K. Kataoka, and Y. Baba, Nanospheres for DNA Separation Chips, Nature Biotech., 2004, 22(3), 337-340.)、ナタデココ由来ポリマー分子(M. Tabuchi and Y. Baba, Design for DNA Separation Medium using Bacterial Cellulose Fibrils, Anal. Chem., 2005, 77, 7090-7093.)等が挙げられる。また、泳動用緩衝液中の分離媒体用のポリマーの濃度としては、例えば0.5~5.0重量%、好ましくは1.0~4.0重量%、更に好ましくは1.5~3.0重量%が挙げられる。
【0021】
試料用緩衝液及び泳動用緩衝液に使用される緩衝剤成分は、特に制限されるものではなく、使用中の高分子化合物の種類等に応じて適宜選択される。該緩衝剤成分として、具体的には、Tris(Tris(hydroxymethyl)aminomethane)、MES、Bis-Tris(Bis(2-hydroxyethyl)amino-tris(hydroxymethyl)methane)、ADA(N-(2-Acetamido)iminodiacetic acid)、PIPES(: Piperazine-1,4-bis(2-ethanesulfonic acid))、ACES(N-(2-Acetamido)-2-aminoethanesulfonic acid)、MOPSO(3-Morpholino-2-hydroxypropanesulfonic acid)、BES(N,N-Bis(2-hydroxyethyl)taurine)、MOPS(: 3-(N-Morpholino)propanesulfonic acid)、TES(N-[Tris(hydroxymethyl)methyl]-2-aminoethanesulfonic acid)、HEPES(4-(2-Hydroxyethyl)piperazine-1-ethanesulfonic acid)、DIPSO(N,N-Bis(2-hydroxyethyl)-3-amino-2-hydroxypropanesulfonic acid)、TAPSO(N-[Tris(hydroxymethyl)methyl]-3-amino-2-hydroxypropanesulfonic acid)、POPSO(Piperazine-1,4-bis(2-hydroxypropanesulfonic acid) dihydrate)、HEPPSO(4-(2-Hydroxyethyl)piperazine-1-(2-hydroxypropanesulfonic acid))、EPPS(4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazinepropanesulfonic acid)、Tricine(N-[Tris(hydroxymethyl)methyl]glycine)、Bicine(N,N-Bis(2-hydroxyethyl)glycine)、TAPS(N-[Tris(hydroxymethyl)methyl]-3-aminopropanesulfonic acid)、CHES(2-(Cyclohexylamino)ethanesulfonic acid)、CAPSO(3-(Cyclohexylamino)-2-hydroxy-1-propanesulfonic acid)、CAPS(3-(Cyclohexylamino)-1-propanesulfonic acid)、イミダゾール、モルホリン等が挙げられる。これらの緩衝剤成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。核酸(特にDNA)の分離・濃縮を行う際には、上記の中でもTrisが好適である。また、緩衝液中の緩衝剤成分の濃度については、使用する緩衝剤成分の種類に応じて適宜設定されるが、例えば0.001~1.0M、好ましくは0.005~0.7M、更に好ましくは0.01~0.5Mが挙げられる。これらの緩衝剤成分の濃度は、試料用緩衝液と泳動用緩衝液において、それぞれ同一であってもよいが、相互に異なっていてもよい。また、これらの緩衝剤成分の種類は、試料用緩衝液と泳動用緩衝液において、相互に異なっている方がよく、それぞれ同一であった場合は、pHが異なっている必要がある。」
イ 引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-243701号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載がある(下線は当審において付加した。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】石英、ガラス、プラスチックなどに流路を形成して電気泳動を行なうマイクロチップ電気泳動方法に関するものであり、特に泳動液として使用するバッファ溶液の組成に特徴のあるマイクロチップ電気泳動方法に関するものである。」
「【0010】分析は以下の手順に従って行なう。
1)チップ5のリザーバ#1から親水性ポリマーを含有した本発明のバッファ泳動液を加圧送液し、流路54,55及び各リザーバ53にバッファ泳動液を満たす。バッファ泳動液としては、50mMトリスーホウ酸バッフア(pH8.2)を使用した。そして、このバッファ泳動液中には、親水性ポリマーとして、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(このポリマーは分子量が10,000以下で、2%水溶液にしたときの粘度が5cPである。)を0.2%含む。親水性ポリマーとしては、他にヒドロキシ工チルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースも使用できる。」
ウ 引用文献4
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である国際公開第2002/044708号(以下「引用文献4」という。)には、以下の記載がある(下線は当審において付加した。)。
「例えば、後述の実施例などに記載のマイクロチップを用いて電気泳動を行なう場合、該マイクロチップのチャネルが、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC (hydroxypropyl methyl cellulose) 〕、ヒロドキシエチルセルロース、〔HEC (hydroxyethyl cellulose)、ヒドロキシプロピルセルロース 〔HPC (hydroxypropyl cellulose) 〕、ポリエチレングリコール〔PEG (polyethylene glycol) 〕、ポリエチレンオキシド〔PE0 (polyethylene oxide)〕、ポリアクリルアミド〔PAA (polyacrylamide)〕、ポリビニルピロリドン〔PVP (polyvinyl pyrrolidone) 〕、デキストラン (dextran)およびアガロース (Agarose)からなる群より選ばれた少なくとも1種を保持するものであることが望ましい。」(明細書12頁11~15行)
「前記分離媒体の具体例としては、1重量%メチルセルロースを含有した緩衝液であって、かつ該緩衝液が、トリス-ホウ酸緩衝液(pH8.2)、トリス-酢酸緩衝液、TAE (トリス-酢酸、EDTA) 緩衝液、TBE (トリス-ホウ酸、EDTA)緩衝液、トリス-塩酸緩衝液およびリン酸緩衝液からなる群より選ばれた1種である分離媒体などが挙げられる。」(明細書12頁18行~13頁1行)
(2)周知技術
(1)で摘記した引用文献2~4の記載は、いずれもマイクロチップ電気泳動に用いる緩衝液に関するものであり、各記載から、「分離媒体用のポリマーとして、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み、緩衝材成分として、Trisを含むマイクロチップ電気泳動に用いる緩衝液」は、周知であると認められる。
第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。
(1) 引用発明において、「予め蛍光標識され」る「糖鎖」は、「当該糖鎖結合性タンパク質と結合することが不明の1種以上の糖鎖混合物」の糖鎖であり、「当該糖鎖結合性タンパク質と結合することが不明の1種以上の糖鎖混合物」はスクリーニング対象となる試料であるから、引用発明の「当該糖鎖結合性タンパク質と結合することが不明の1種以上の糖鎖混合物」の「糖鎖」が「予め蛍光標識され」ることは、本願発明の「試料中の糖鎖を蛍光標識する蛍光標識ステップ」に相当する。
(2) 引用発明は、「糖鎖混合物」の「分離」は、「キャピラリーアフィニティ電気泳動」により行われるものであり、「前記複数種のレクチンをそれぞれ添加したトリスアセテート緩衝溶液である各泳動液」は、本願発明の「該緩衝液に複数種類のレクチンがそれぞれ添加された複数種類のレクチン添加済み緩衝液」に相当し、引用発明における「によるレクチンを添加しない場合」の泳動液は、本願発明の「レクチンが添加されていない緩衝液」に相当するから、引用発明において、「該緩衝液に複数種類のレクチンがそれぞれ添加された複数種類のレクチン添加済み緩衝液」と「マイクロチップ電気泳動によるレクチンを添加しない場合」の泳動液を用いて、「蛍光標織した糖鎖の混合物を」「マイクロチップ電気泳動」「により分離し」、「レーザー励起された蛍光を検出」することは、本願発明の「蛍光標識された糖鎖を含む試料を、レクチンが添加されていない緩衝液と該緩衝液に複数種類のレクチンがそれぞれ添加された複数種類のレクチン添加済み緩衝液のうちの少なくとも二種以上の分離用緩衝液を用いたマイクロチップ電気泳動法により分離して蛍光検出する測定ステップ」に相当する。
(3) 引用発明の「電気泳動結果」は、本願発明の「エレクトロフェログラム」に相当するから、引用発明の「キャピラリーアフィニティ電気泳動によるレクチンを添加しない場合の糖鎖混合物の電気泳動結果と、レクチンを含む緩衝溶液である泳動液における電気泳動結果とを比較」して、「上記糖鎖結合性タンパク質」である「レクチン」と結合する糖鎖の有無を判定する糖鎖判定工程」は、本願発明の「前記二種以上の分離用緩衝液を用いた測定により取得された複数のエレクトロフェログラムを比較することにより、前記試料中の糖鎖を同定する同定ステップ」に相当する。
2 そうすると、本願発明と引用発明とは、
「 a)試料中の糖鎖を蛍光標識する蛍光標識ステップと、
b)蛍光標識された糖鎖を含む試料を、レクチンが添加されていない緩衝液と該緩衝液に複数種類のレクチンがそれぞれ添加された複数種類のレクチン添加済み緩衝液のうちの少なくとも二種以上の分離用緩衝液を用いたマイクロチップ電気泳動法により分離して蛍光検出する測定ステップと、
c)前記二種以上の分離用緩衝液を用いた測定により取得された複数のエレクトロフェログラムを比較することにより、前記試料中の糖鎖を同定する同定ステップと、
を有する糖鎖解析方法。」
の発明である点で一致し、次の点において相違する。
(相違点1)
電気泳動法が、本願発明では「マイクロチップ」電気泳動法であるのに対し、引用発明では、キャピラリーアフィニティ電気泳動法である点。
(相違点2)
緩衝液について、本願発明は、「タンパク質との相互作用が実質的にないものである」のに対して、引用発明は、トリスアセテート緩衝溶液である点。
第6 判断
1 相違点について
(1)相違点1について
引用文献1の(引1-オ)及び(引1-サ)には、引用発明の糖鎖のスクリーニングの電気泳動として、キャピラリー電気泳動法(キャピラリーアフィニティ電気泳動法を含む)とマイクロチップ電気泳動法が同様に適宜選択して用いられることが示されていることから、引用発明におけるキャピラリーアフィニティ電気泳動法に替えて「マイクロチップ電気泳動法」を用いることは当業者が容易になし得たことである。
(2)相違点2について
本願発明の「タンパク質との相互作用が実質的にない」との技術的定義は、本願明細書を参照しても必ずしも明確とはいえないが、本願発明の「タンパク質との相互作用が実質的にない」「緩衝液」として、具体的には、本願明細書の【0040】に「[分離条件の具体例及び実測例] 実測ではマイクロチップ電気泳動装置として島津製作所製のMCE-202を使用した。分離ゲルは一般的な緩衝液に中性ポリマーを添加することで生成することができるが、本発明者は幾つかの種類のポリマーとその濃度とを実験的に検討した結果、ここでは、2%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む80mMのトリス酢酸緩衝液(pH 7.5)を使用した。」と記載されている。
一方、上記「マイクロチップ電気泳動法」を用いる場合には、緩衝液として、「ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み、緩衝材成分としてTrisを含む緩衝液」を用いることは、上記第4 2(2)で述べたように本出願前周知であることであり、当該「ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み、緩衝材成分としてTrisを含む緩衝液」は、「2%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む80mMのトリス酢酸緩衝液(pH 7.5)」と成分的には同等な緩衝液といえるものである。そうすると、「マイクロチップ電気泳動法」に用いる「ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み、緩衝材成分としてTrisを含む緩衝液」は、本願発明でいう「タンパク質との相互作用が実質的にない」緩衝液といえる。
したがって、電気泳動法として「マイクロチップ電気泳動法」を用いる場合に、緩衝液を「ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み、緩衝材成分としてTrisを含む緩衝液」とする、すなわち「タンパク質との相互作用が実質的にない」緩衝液とすることは、「マイクロチップ電気泳動法」を用いることと同様に当業者が容易になし得たことである。
2 本願発明の奏する作用効果
本願発明が奏する作用効果は、本願明細書に
「【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、従来のCAE法に比べて、例えば糖鎖混合物である一つの試料についての測定に要する時間を短縮することができるので、解析作業のスループットを向上させることができる。また本発明によれば、従来のCAE法では同定できなかった糖鎖を含め、多くの種類の糖鎖を同定することが可能となる。さらにまた、糖鎖の同定精度も向上させることができる。」と記載されているが、当該効果は、「マイクロチップ電気泳動法」を用いた時の効果であり、当業者が予期し得るものである。
また、本願明細書に、
「【0027】
なお、本発明者の実験によれば、本発明に係る糖鎖解析方法では、従来のCAE法では使用することができなかった、SSA(日本ニワトコ樹皮レクチン)、MAM(イヌエンジュレクチン)、DSA(チョウセンアサガオレクチン)などのレクチンを使用可能であることが確認できた。こうした、従来のCAE法では使用できなかったレクチンの少なくともいずれか一つを用いることで、従来、同定できなかった又は同定の精度が十分でなかった糖鎖の高精度な同定が可能となる。」とも記載されているが、引用文献1の(引1ーサ)にはレクチンとして「イヌエンジュレクチン」などを用いることも記載されているから、これらの効果も引用文献1の記載から予期し得るものである。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、審判請求書の請求の理由において、
「3.3 本願発明と引用発明との対比
(1)・・・
上述したように、引用文献1には、該文献1に記載の測定方法又はスクリーニング法において、キャピラリー電気泳動に代えてマイクロチップ電気泳動を採用し得ることは記載されているものと思料いたします。しかしながら、キャピラリー電気泳動とマイクロチップ電気泳動とでは、アフィニティ電気泳動において糖鎖の同定性能を改善するために適切な分析条件や緩衝液の特性等が全く相違するところ、マイクロチップ電気泳動を用いてアフィニティ電気泳動を行う際の適切な分析条件や緩衝液の特性等の開示や示唆は、引用文献1には一切ありません。
(2)・・・
・・・本願発明者は、糖鎖を対象としたキャピラリーアフィニティ電気泳動(CAE)では、緩衝液に分子篩効果がないと、レクチンが結合した糖鎖と結合していない糖鎖との識別が困難になる場合があることを新たに見出しました。こうした現象は従来知られておらず、本願発明者による長年の実験及びその検討の結果、明らかになったことです。本願発明者は、上記の新たな知見に基いて、キャピラリー電気泳動とは異なりマイクロチップ電気泳動では、高い圧力で以て高濃度のゲルを流路に注入することが可能である点に着目し、マイクロチップアフィニティ電気泳動において、分子篩効果が生じる濃度の分離ゲルである緩衝液を用いることに想到し、本願請求項1に係る発明をなすに至りました。
こうしたことから、本願請求項1に係る発明における上記特徴は、決して当業者の通常の創作能力の発揮によって想到し得るものとは言えません。
(3)本願請求項2~4に係る発明における上記各特徴についても請求項1に係る発明における上記特徴と同様であり、本願請求項2~4に係る発明における上記各特徴は、決して当業者の通常の創作能力の発揮によって想到し得るものではありません。」
との主張を行っている。
(2)請求人の主張に対する当審の判断
上記主張について検討するに、請求人は「本願請求項2~4に係る発明における上記各特徴についても請求項1に係る発明における上記特徴と同様」として、本願発明の「タンパク質との相互作用が実質的にない」「緩衝液」と請求項1に係る発明の「分子篩効果が生じる濃度の分離ゲルである緩衝液」とを同一視しているが、緩衝液として、「タンパク質との相互作用が実質的にない緩衝液」と「分子篩効果が生じる濃度の分離ゲルである緩衝液」が同じ液であるという技術常識もなく、これらの主張をもとに上記1及び2の判断が覆ることはない。
4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-016998