特許拒絶査定不服審判
2022-016889
メンテナンス液、及びそれを使用したインクジェット記録装置のメンテナンス方法
- 審判番号
- 2022-016889
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-099191
- 請求日
- 2022年10月21日
- 審決日
- 2022年12月27日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社DNPファインケミカル
- 【請求人代理人】正林 真之
- 【請求人代理人】林 一好
- 審判長/審判官
- 審判長 古屋野 浩志
- 審判官 藤本 義仁
- 審判官 佐藤 海
- 分類
- P18 .121-Z (C11D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第41条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022- 99191「メンテナンス液、及びそれを使用したインクジェット記録装置のメンテナンス方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年10月17日出願公開、特開2022-159268〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う令和4年3月31日(優先日、令和3年3月31日、同年6月28日、同年同月28日)に出願した特願2022-58300号の一部を令和4年3月31日に新たな特許出願とした特願2022-60466号の一部を令和4年6月20日に新たな特許出願としたものであって、同年7月5日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年8月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年同月18日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされたのに対し、同年10月21日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1乃至8に係る発明は、令和4年8月9日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1乃至8に記載された事項により特定され、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
インクジェット記録装置に用いられるメンテナンス液であって、
有機溶剤を含有し、
水分の含有量がメンテナンス液全量中5質量%以下であり、
前記有機溶剤は、
ラクトン系溶剤を含有するか、
又は、
アミド系溶剤及びラクトン系溶剤を含有し、
前記ラクトン系溶剤は、下記式(1-3)で表されるラクトン系溶剤であり、
前記アミド系溶剤と前記ラクトン系溶剤との合計含有量は、メンテナンス液全量中7質量%以上である
メンテナンス液。
【化1】
[図:0001395142000001.jpg]
(式(1-3)中、R6は、炭素数4以上5以下のアルキレン基であり、R7は、水素若しくは炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。)」
第3 原査定の拒絶の理由
拒絶査定の理由である、令和4年7月5日付け拒絶理由通知の理由は、次の理由を含むものである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された特開2017-190374号公報に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 当審の判断
1 引用例
本願の優先日前に頒布された公開公報である特開2017-190374号公報(以下「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】
溶剤系インクジェットインキと、メンテナンス液とを有するインキセットであって、
溶剤系インクジェットインキが、有機溶剤(SA)と、色材と、樹脂とを含有し、
有機溶剤(SA)が下記一般式(1)または下記一般式(2)で表される有機溶剤をインキ全量中1~30重量%含有し、
メンテナンス液が、有機溶剤(SB)を含有し、有機溶剤(SB)が下記一般式(1)または下記一般式(2)で表される有機溶剤をメンテナンス液全量中0.5~50重量%含有するインキセット。
一般式(1)
【化1】
[図:0001395142000002.jpg]
(一般式(1)中、R1およびR2はそれぞれ独立に、-CH2-、-NR4-、または、-O-を表すが、R1およびR2が同時に-CH2-であることはない。
R4は炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシ基、または、水素原子を表す。
R3は-CmH2m-、-CmH2m-2-、または、-CmH2m-4-で表される炭化水素基を表し、
mは1~8の整数を表す。)
一般式(2)
【化2】
[図:0001395142000003.jpg]
(一般式(2)中、R5、R6およびR7はそれぞれ独立に、炭素数が1~5のアルキル基を表し、分岐構造があってもよい。)」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録に好適に用いられるインキセットに関する。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、インクジェット吐出安定性に優れるインクジェットインキと、洗浄力や長期保管におけるメンテナンス性に優れたメンテナンス液とのセットを提供することを目的とする。」
(4)「【発明の効果】
【0017】
本発明の溶剤系インクジェットインキとメンテナンス液のセットによると、インキの付着により汚染された装置やヘッド等の洗浄を、効率よく洗浄することが出来る。更に、メンテナンス液をヘッドに充填した長期保管においても、部材を腐食すること無く、安定して吐出することが出来る。」
(5)「【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明の溶剤系インクジェットインキ(以下単に「インキ」とも言う。)およびメンテナンス液に含まれる有機溶剤について説明する。なお、以下、特にことわりのない限り、「部」「%」は、「重量部」「重量%」を表す。
【0019】
<一般式(1)または一般式(2)いずれかで表される有機溶剤>
インキに一般式(1)または一般式(2)いずれかで表される有機溶剤(SA)を含むことによって各種耐性に優れた画像を形成することができる。
メンテナンス液に一般式(1)または一般式(2)いずれかで表される有機溶剤(SB)を含むことによって、洗浄性、保存性に優れる。ここで洗浄性とは、インキまたはインキが固化したものを取り除くことをいい、保存性とは、メンテナンス液をプリンターに充填した後のインクジェットヘッドの安定性等をいう。
【0020】
一般式(1)
【化3】
[図:0001395142000004.jpg]
【0021】
(式(1)中、R1及びR2は各々独立に、-CH2-、-NR4-又は-O-を表し、R1及びR2が同時に-CH2-であることはなく、R4は炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシ基又は水素原子を表す。R3は-CmH2m-、-CmH2m-2-又は-CmH2m-4-で表される炭化水素基を表し、mは1~8の整数を表す。)
【0022】
一般式(2)
【化4】
[図:0001395142000005.jpg]
【0023】
( 式(3)中、R5、R6およびR7はそれぞれ独立に、炭素数が1~5のアルキル基を表し、分岐構造があってもよい。)
【0024】
インクジェットインキに含まれる有機溶剤(SA)の含有量は、吐出安定性の点、インキ流路のチューブ内での固化抑制の点から、インキ全重量を基準として1~30重量%が好ましく、2~25重量%がより好ましく、3~20重量%が更に好ましく、5~10%が特に好ましい。
メンテナンス液に含まれる有機溶剤(SB)の含有量は、洗浄性やインクジェット装置の部材への腐食性の点から、メンテナンス液全重量を基準として0.5~50重量%が好ましく、2~30重量%がより好ましく、3~20%が更に好ましい。
【0025】
インクジェットインキ及びメンテナンス液に含まれる有機溶剤(SA)および有機溶剤(SB)の含有量は、下記式を満たすことが好ましい。
(式3) SA/2 ≦ SB≦ SA×2
上記式SAは、インクジェットインキに含まれる有機溶剤(SA)の含有量であり、
SBは洗浄液に含まれる有機溶剤(SB)の含有量である。
より好ましくは、(SA/2)×1.5 ≦ SB≦ SA×1.5である。
上記を満たすことにより、インクジェットインキの洗浄性、保存性に優れたインキセットを提供することができる。
【0026】
一般式(1)で表される有機溶剤として、例えば、ラクトン構造を有する溶剤、ラクタム構造を有する溶剤、オキサゾリジノン構造を有する溶剤、環状カーボネート構造を有する溶剤、イミダゾリジノン構造を有する溶剤、等が挙げられる。
【0027】
R1及びR2が、-CH2-及び-O-で表される有機溶剤として、ラクトン構造を有する溶剤が挙げられる。具体例として、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、γ-カプリロラクトン、γ-ラウロラクトン、γ-ラクトン、γ-ヘキサラクトン、γ-ヘプタラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサラクトン、δ-ヘプタラクトン、δ-オクタラクトン、δ-ノナラクトン、δ-デカラクトン、δ-ウンデカラクトン、ε-カプロラクトン、及びε-ラクトン等が挙げられる。中でも、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が好ましい。
【0028】
R1及びR2が、-CH2-及び-NR4-で表される有機溶剤として、ラクタム構造を有する溶剤が挙げられる。具体例として、2-ピロリドン(γ-ブチロラクタム)、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、γ-バレロラクタム、γ-ヘキサラクタム、γ-ヘプタラクタム、γ-オクタラクタム、γ-ノナラクタム、γ-デカラクタム、γ-ウンデカラクタム、δ-バレロラクタム、δ-ヘキサラクタム、δ-ヘプタラクタム、δ-オクタラクタム、δ-ノナラクタム、δ-デカラクタム、δ-ウンデカラクタム、及びε-カプロラクタム等が挙げられる。中でも、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、γ-バレロラクタム、ε-カプロラクタム等が好ましい。
【0029】
R1及びR2が、-NR4-及び-O-で表される有機溶剤として、オキサゾリジノン構造を有する溶剤が挙げられる。具体例として、3-メチル-2-オキサゾリジノン(沸点266℃)、3-エチル-2-オキサゾリジノン、及び3-プロピル-2-オキサゾリジノン等が挙げられる。中でも、3-メチル-2-オキサゾリジノンが好ましい。
【0030】
R1及びR2が、共に-O-で表される有機溶剤として、環状カーボネート構造を有する溶剤が挙げられる。具体例として、エチレンカーボネート(沸点244℃)、プロピレンカーボネート(沸点240℃)、及び1,2-ブチレンカーボネート(沸点251℃)等が挙げられる。中でも、プロピレンカーボネートが好ましい。
【0031】
R1及びR2が、共に-NR4-で表される有機溶剤として、イミダゾリジノン構造を有する溶剤が挙げられる。具体例として、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0032】
一般式(1)で表される有機溶剤は、インキに含まれる樹脂の溶解性や吐出安定性の面から、7員環以下であることが好ましい。例えば、一般式(1)において、R1及びR2が各々独立に、-CH2-、-NR4-又は-O-を表し、R1及びR2が同時に-CH2-であることはなく、R4は炭素数1~3のアルキル基、R3が-CmH2m-かつmが2~4である有機溶剤が好ましい。
【0033】
一般式(1)で表される有機溶剤の中でも、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、プロピレンカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種が、インキの吐出安定性、多基材密着性や、メンテナンス液の洗浄性の点から好ましく用いられる。」
(6)「【0087】
<メンテナンス液>
本発明のメンテナンス液の組成としては、有機溶剤を含み、水を実質的に含有しないことを特徴とする。「水を実質的に含有しない」とは、意図的に水を含有させないことを意味するものであり、メンテナンス液中に含まれる微量の水分を除外するものではない。例えば、メンテナンス液に含まれる水の量は、メンテナンス液全量を基準として1重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましく、0.3重量%以下であることが更に好ましい。」
(7)「【0097】
<メンテナンス液の調製例>
表1の溶剤組成になるように有機溶剤をそれぞれ混合し、ハイスピードミキサーにて均一になるまで約30分撹拌混合した後、1μmのフィルターでろ過してメンテナンス液を得た。
【0098】
なお、表1における実施例に用いた溶剤は以下のとおりである。
・MOZ:3-メチル-2-オキサゾリジノン(一般式(1))
・GBL:γ-ブチロラクトン(一般式(1))
・ECL:ε-カプロラクトン(一般式(1))
・PC:プロピレンカーボネート(一般式(1))
・M100:3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(一般式(2))
・DPM:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(一般式(4))
・DEDG:ジエチレングリコールジエチルエーテル(一般式(5))
・DMTeG: テトラエチレングリコールジメチルエーテル(一般式(5))
・BGAc:エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(一般式(6))
【0099】
【表1】
[図:0001395142000006.jpg]
【0100】
(実施例1~25、比較例1~5)
得られたインキ及びメンテナンス液について、下記の方法でインキの吐出性、チューブ固化性、洗浄性、保存性、部材適合性(マテコン)を評価した。
【0101】
(インキの吐出性評価)
得られたインキをインクジェットプリンターIP-6500(株式会社セイコーアイ・インフォテック製)のカートリッジに充填し、光沢塩ビシートMD5(メタマーク社製)に印字した。印字物におけるドット抜け(印字されなかった部分)の有無を目視で観察し、吐出性の指標とした。ドット抜けの発生頻度を計算し、以下のように評価を行った。C以上を吐出性良好とする。
AA: ドット抜けの発生なし。
A: 全ノズルの1%未満
B; 全ノズルの1~3%未満
C: 全ノズルの3~5%未満
D: 全ノズルの5%以上
【0102】
(インキのチューブ固化性)
プリンターのインキの流路に用いられるポリエチレンチューブに、インキを半分満たし、室温に静置させた際の、インキが固化するまでの時間を測定する。インキが固化するまでにかかる時間が長い程、チューブ固化性が良いと言える。C以上を実用レベルとする。
AA: インキが固化するまでの日数が4週間以上
A: インキが固化するまでの日数が3週間以上、4週間未満
B: インキが固化するまでの日数が2週間以上、3週間未満
C: インキが固化するまでの日数が1週間以上、2週間未満
D: インキが固化するまでの日数が1週間未満
【0103】
(洗浄性評価: チューブ固化溶解性)
プリンターのインキの流路に用いられるポリエチレンチューブに、インキを満たし、70℃のオーブンで2時間掛けて乾燥させた。そこに各メンテナンス液を満たし、乾燥したインキが完全に溶解するまでの時間を測定する。乾燥したインキが溶解するまでにかかる時間が短い程、洗浄性が高いと言える。C以上を実用レベルとする。
AA: 固化したインキが完全に溶解するまでの時間が5分未満、またはインキが固化しない。
A: 固化したインキが完全に溶解するまでの時間が5分以上30分未満
B: 固化したインキが完全に溶解するまでの時間が30分以上60分未満
C: 固化したインキが完全に溶解するまでの時間が60分以上120分未満
D: 固化したインキが完全に溶解するまでの時間が120分以上、または溶解しない
【0104】
(保存性評価: 顔料粒度安定性)
インキ1.00gに対して各メンテナンス液を9.00g混合させ十分に撹拌した後、ガラス瓶に充填し、70℃オーブンで1週間保管、経時促進させた。初期と経時後の平均粒径を測定し、変化率を確認した。初期と比較して平均粒径が増大しない方がメンテナンス液の保存性に優れるといえる。C以上を実用レベルとする。平均粒径は、インキを酢酸エチルで200~1000倍に希釈し、動的光散乱式粒度分布測定装置(日機装社製「マイクロトラックUPA150」)にて測定した。
A: 初期からの変化率が20%未満
B: 初期からの平均粒径増加率が20%以上40%未満
C: 初期からの平均粒径増加率が40%以上60%未満
D: 初期からの平均粒径増加率が60%以上
【0105】
(マテコン評価:部材適合性評価)
ガラス瓶を用い、プリンターのインキの流路に用いられるポリエチレンチューブを、メンテナンス液に浸漬させ、60℃で1週間保管した。浸漬前(初期)と経時後のチューブの寸法や重量変化について確認した。AまたはBが実用レベルである。
A: 初期と比較して重量変化が5%未満
B: 初期と比較して重量変化が5%以上10%未満
C: 初期と比較して重量変化が10%以上
【0106】
表1に示すように、有機溶剤(SA)を1~30重量%含むインキは吐出性に優れ、それらのインキと有機溶剤(SB)を0.5~50重量%含むメンテナンス液のセットである実施例1~25は、洗浄性、保存性及びマテコンの評価が良好であった。
一方、インキ又はメンテナンス液に、一般式(1)または一般式(2)で表される有機溶剤を含まない比較例1~5は、洗浄性、保存性のいずれかが不良である結果であり、全てが良好となるものは得られなかった。また、一般式(1)または一般式(2)で表される有機溶剤を50重量%より多く含む比較例4または5は、保存性及びマテコンが不良であった。
【0107】
実施例1~9より、インキセットに含まれる有機溶剤(SA)及び(SB)の含有量は、式(3)を満たすことにより良好な結果となった。
【0108】
実施例12~15より、インキセットに含まれる有機溶剤(SA)及び(SB)以外の有機溶剤として、一般式(4)~(6)で表される有機溶剤を含むことにより良好な結果となり、なかでも、一般式(5)または(6)で表される有機溶剤を含む方が良好な結果となった。
【0109】
実施例10及び11より、インキのバインダー樹脂としてアクリル樹脂を含むほうが良好な結果となった。
【0110】
以上より、インクジェット吐出安定性に優れるインクジェットインキと、洗浄力や長期保管におけるメンテナンス性に優れたメンテナンス液とのセットを提供できた。」
(8)上記(5)より、引用文献に記載のメンテナンス液はインクジェット記録装置に用いられるものと認められる。
(9)上記(7)【表1】には、実施例13として、有機溶剤としてジエチレングリコールジエチルエーテルを95.0重量%及びε-カプロラクトンを5.0重量%含有しているメンテナンス液が示されている。
そうすると、上記記載事項(1)乃至(7)及び認定事項(8)及び(9)より、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「インクジェット記録装置に用いられるメンテナンス液であって、有機溶剤として、ジエチレングリコールジエチルエーテルを95.0重量%及びε-カプロラクトンを5.0重量%含有しているメンテナンス液。」
2 当審の判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 後者の「インクジェット記録装置」、及び「メンテナンス液」は、それぞれ、前者の「インクジェット記録装置」、及び「メンテナンス液」に相当する。
イ 前者の「式(1-3)で表されるラクトン系溶剤」には、本願の明細書の【0084】乃至【0086】及び【0241】乃至【0245】を参酌すれば、ε-カプロラクトンが包含される。そうすると、後者の「有機溶剤としてε-カプロラクトン」は、前者の「式(1-3)で表されるラクトン系溶剤」に相当する。
ウ 後者の「メンテナンス液」は、有機溶剤として、ジエチレングリコールジエチルエーテルを95.0重量%及びε-カプロラクトンを5.0重量%含有しており、水分は実質含まれていないことから、前者の「メンテナンス液」と後者の「メンテナンス液」とは、「水分の含有量」が「メンテナンス液全量中5質量%以下」である点で一致する。
(2)本願発明と引用発明の一致点と相違点について
上記(1)の対比を踏まえると、本願発明と引用発明とは、つぎの一致点で一致し、相違点において相違する。
[一致点]
「インクジェット記録装置に用いられるメンテナンス液であって、
有機溶剤を含有し、
水分の含有量がメンテナンス液全量中5質量%以下であり、
前記有機溶剤は、
ラクトン系溶剤を含有し、
前記ラクトン系溶剤は、下記式(1-3)で表されるラクトン系溶剤である、
メンテナンス液。
【化1】
[図:0001395142000007.jpg]
(式(1-3)中、R6は、炭素数4以上5以下のアルキレン基であり、R7は、水素若しくは炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。)」
[相違点]
ラクトン系溶剤の含有量が、本願発明は、「メンテナンス液全量中7質量%以上」であるのに対し、引用発明は、5.0重量%である点。
(3)上記各相違点についての検討
上記「1 (5)」のとおり、引用例には、メンテナンス液に含まれる有機溶剤の中でも、ε-カプロラクトンが洗浄性の点から好ましいこと、及びメンテナンス液に含まれる有機溶剤(SB)の含有量は、2~30重量%がより好ましいことが記載されている。
そうすると、引用文献に示された実施例13の有機溶剤としてε-カプロラクトンを5.0重量%含有しているところ、引用例の上記記載を参酌すれば、引用発明において、ラクトン系溶剤の含有量を、メンテナンス液全量中7質量%以上とすることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。
ウ よって、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして、本願発明の効果も、引用発明から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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