特許拒絶査定不服審判
2022-015928
易開封性包装体
- 審判番号
- 2022-015928
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-012718
- 請求日
- 2022年10月06日
- 審決日
- 2023年12月01日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】藤森工業株式会社
- 【請求人代理人】田▲崎▼ 聡
- 【請求人代理人】大浪 一徳
- 【請求人代理人】貞廣 知行
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 茂夫
- 審判官 西堀 宏之
- 審判官 金丸 治之
- 分類
- P18 .121-Z (B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-12718「易開封性包装体」拒絶査定不服審判事件〔令和1年8月8日出願公開、特開2019-131198〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)1月29日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年10月 5日付け :拒絶理由通知書
令和3年11月16日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 2月 8日付け :拒絶理由通知書
令和4年 4月15日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 7月28日付け :拒絶査定(以下、「原査定」という。)
(令和4年 8月 2日 :原査定の謄本の発送日)
令和4年10月 6日 :審判請求書の提出
第2 本願発明について
本願の請求項1ないし6に係る発明は、令和4年4月15日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1の記載は次のとおりである。
以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。
「【請求項1】
少なくとも最外樹脂層と、中間樹脂層と、ヒートシール可能なシーラント層を重ね合わせた、3層以上からなる積層体から構成され、前記シーラント層どうしを対向するように配置した前記積層体の周縁部をシールすることでパウチ状に形成した包装体であって、
前記積層体は、前記中間樹脂層のみ、または前記最外樹脂層および前記中間樹脂層を基材フィルム層とし、
前記中間樹脂層のみに傷加工による開封誘導線が施されており、前記傷加工は少なくとも前記中間樹脂層の前記シーラント層に近い側の面になされており、前記開封誘導線はシーラント層に近い側の開口部の面積よりも、シーラント層から遠い側の開口部の面積の方が小さいことを特徴とする、易開封性包装体。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の根拠となった、令和4年2月8日付けの拒絶理由のうち、引用文献4に基づく進歩性に係る理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性)本願発明は、その出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった次の引用文献4に記載された発明及び引用文献5~8に記載された技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
<引用文献等一覧>
4.特開2016-43946号公報
5.特開2001-106240号公報
6.特開2008-68889号公報
7.特開2007-106497号公報
8.特開2015-67330号公報
第4 当審の判断
1 引用文献の記載および引用発明
(1)引用文献4
ア 原査定の拒絶の理由において引用した引用文献4には、以下の記載がある(下線は当審において付与した。「・・・」は、文の省略を意味する。以下同様とする。)。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層およびレーザー光に対して透明な熱可塑性樹脂からなるシーラント層を含む積層体で構成され、積層体をシーラント層同士を対向させる配置で周縁部を熱溶着してなる包装袋であって、
ハーフカットは少なくとも一方の積層体のシーラント層側からのレーザー照射によって設けられていることを特徴とする易開封性包装袋。
【請求項2】
前記ハーフカットが、基材層側からシーラント層側に向かってハーフカットの幅が広くなっていることを特徴とする請求項1に記載の易開封性包装袋。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、易開封性包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック材料を用いた包装袋はさまざまな食品や菓子類、洗剤などの生活用品やその他の物品、液体などの用途に広く用いられている。それらの内容物を取り出そうとする場合には、容器の端部に設けられた切込みをきっかけにして袋を切り裂いて開封するか、あるいは開封を容易にする手段が設けてある場合には、それに沿って開封する方法がある。一般に開封を容易にする手段が設けてある包装袋を易開封性包装袋と呼ぶ。
【0003】
易開封の手段としては製袋の過程でプラスチック糸やカットテープをシーラントフィルムの内側に固定する方法、延伸フィルムの配向性を利用するもの、基材の全面にポーラスの微細孔を施すものなどが知られている。
・・・
【0005】
ハーフカットを形成するにはレーザー光による加工が知られているが、これはレーザー光の照射によって基材フィルムの一部を焼き飛ばす技術である。たとえば開口幅が作業性や機能性に大きく影響する詰め替え用途の注ぎ口を有するパウチでは、注ぎ口部の任意の開口予定線にハーフカット加工を施した構造が多く提案されている。
・・・
【0009】
またハーフカット手法として、CO2レーザーを用いることが一般的であるが、印刷絵柄と照射位置を目視で確認しながら調整しやすいメリットがあるので、基材側から照射する方法が生産適性があるとされている。
【0010】
しかし基材側から照射する場合には、開封の際にハーフカットから外れないようにハーフカットを深く入れるため、レーザー出力を強くすることによってフィルムのハーフカットと同時に印刷インキやフィルム貼り合せの接着剤も昇華物として飛散する。
【0011】
昇華物の量が増えると集塵機のフィルターの目詰まりが発生しやすくなり堆積物となってレンズ上に落下し、レーザーかすれの不具合を発生する懸念がある。またレーザー出力を強くすると基材外面端部が隆起する場合があって、加工ライン上もしくは充填ライン上で引っかかり充填不具合やフィルム破れなどの問題発生にもつながる。」
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はかかる状況に鑑み、易開封性を損なうことなく、ハーフカット加工においてレーザーかすれの不具合を起こすことのない包装袋を提供しようとするものである。」
(エ)「【0019】
【図1】 図1は本発明に係る積層体へのレーザー照射によるハーフカットの部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
包装袋を構成する積層体(10)は基材層(3)およびシーラント層(4)からなる。易開封性のためのハーフカット(6)はレーザー光をシーラント層(4)側から照射して形成する。このハーフカット(6)が包装袋の開封予定線となる。ハーフカット(6)はレーザー照射によって基材層(3)に形成される。
【0021】
基材層(3)には、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム(1)とポリアミドフィルム(2)の積層体を用いることができる。包装袋としての機械的強度、耐突き刺し性などの強靭性を与えるとともに、包装袋外側の面(8)に印刷を施して、商品名や内容物のイメージを印刷したり必要な情報を表示することができる。
【0022】
シーラント層(4)は熱可塑性樹脂からなり、積層体(10)をシーラント層同士が対向する配置で重ね合わせ、周縁部への加熱・加圧で熱溶着させて、製袋することが可能である。
・・・
【0026】
シーラント層(4)に用いる熱可塑性樹脂、例えば直鎖状低密度ポリエチレンはCO2レーザーのレーザー光(5)に対して透明であるため、シーラント層(4)自体にはダメージを与えることなく基材層(3)に対してのみハーフカット(6)を施すことが可能である。
・・・
【0028】
このとき、基材層(3)の包装袋外側の面(8)側に設けられた印刷インキ(7)は、レーザー光(5)の照射を受けることがないため、ダメージを受けずレーザー光線による熱で昇華物となって集塵機のフィルターの目詰まりなどを起こす恐れはない。
【0029】
またシーラント層(4)側からの照射であるため、ハーフカット(6)が露出することはなく、基材層(3)のフィルムやフィルムの貼り合せに使用した接着剤なども昇華物の飛散を起こすことがない。したがってハーフカット加工を量産において行った場合でもレーザーかすれなどの品質不具合を防止することができる。
【0030】
ハーフカット(6)はレーザー光(5)がポリアミドフィルム(2)に吸収され、それによる熱でポリアミドフィルム(2)が破断し空洞が生じて作られる。また空洞は基材層を突き抜けることなく基材層の層内でとどまる。これはレーザーの焦点を光学的に絞り込むことで実現できる。
・・・
【0032】
またレーザー光線のエネルギー強度と照射時間を制御することで、ハーフカットの深さを基材層内でとどめることができる。同時にそのエネルギー強度の調節によってハーフカット後にハーフカット部分の基材層が包装袋外側に向かって膨らんだり盛り上がったりすることを回避することができる。
・・・
【0039】
易開封性包装袋は、ピロー包装袋、三方シール袋や四方シール袋などさまざまな形態のものに応用されて商品として流通しているが、本発明は別部材の折り込みテープを底部材として挿入熱溶着して自立するタイプのいわゆるスタンディングパウチの形態のものにも適用することができる。」
(オ)「【図1】
[図:0001406321000001.jpg]
」
イ 上記記載から、引用文献4には、易開封性包装袋(【0001】)について、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
引用文献4の【0020】より、包装袋を構成する積層体は、基材層およびシーラント層からなり、ハーフカットが基材層に形成され、ハーフカットが包装袋の開封予定線となる。
同じく【0021】及び図1より、基材層はポリエチレンテレフタレートフィルム1及びポリアミドフィルム2からなり、ポリエチレンテレフタレートフィルム1、ポリアミドフィルム2、シーラント層の順に積層されている。
同じく【0022】より、積層体のシーラント層同士を対向する配置で重ね合わせ、周縁部への加熱・加圧で熱溶着させて製袋することができ、【0039】より、その袋はスタンディングパウチの形態とすることができる。
図1より、ハーフカットは、シーラント層4に近い側の面になされ、シーラント層4に近い側の開口部の面積よりも、シーラント層4から遠い側の開口部の面積の方が小さくなるように形成され、ポリアミドフィルム2を貫通しポリエチレンテレフタレートフィルム1の中まで達していることが看取される。
ウ 引用発明
上記ア、イより、引用文献4には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「包装袋を構成する積層体は、基材層およびシーラント層からなり、
基材層は外側に配置したポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリアミドフィルムからなり、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、シーラント層の順に積層され、
積層体のシーラント層同士を対向する配置で重ね合わせ、周縁部への加熱・加圧で熱溶着させて製袋してスタンディングパウチの形態とした、易開封性包装袋であって、
基材層に形成されて包装袋の開封予定線となるハーフカットが、シーラント層に近い側の面になされ、シーラント層に近い側の開口部の面積よりも、シーラント層から遠い側の開口部の面積の方が小さくなるように形成され、ポリアミドフィルムを貫通しポリエチレンテレフタレートフィルムの中まで達している、易開封性包装袋。」
(2)引用文献6~8
ア 原査定の拒絶の理由において引用された引用文献6には、以下の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチの初期開封直後において、表裏のフィルム縁が互いにくっつくことなく、表裏のフィルムをつまんで容易に引き離して開口を形成可能な易開封パウチに関する。」
(イ)「【0016】
本発明のユニバーサルパウチ10の一例としては、図1(a)に示すように、上下左右のフィルム外周をヒートシールしてなるパウチ10の、左右のシール部分2にそれぞれ形成されたノッチ6を起点に、水平方向へとフィルムを切除することにより、図1(b)に示すように、パウチ10を初期開封する構成である。」
(ウ)「【0022】
特に、前記切り込み7、8は、図3(b)側断面図に示すように、片側3層(表面層a、中間層b、接着層c)からなる、表裏2組の積層フィルムF、F'のそれぞれ中間層bに形成されている。よって、積層フィルムF、F'の表面層aには切り込み7、8が形成されないので、積層フィルムF、F'の強度を低下させることなく、また積層フィルムF、F'のガスバリヤー性等を低下させることなく、開封性のみを向上させることが可能である。」
(エ)「【0034】
前記積層フィルムF、F'の前記中間層bとしては、2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート、2軸延伸ポリプロピレン、エチレンビニルアルコール共重合体等のフィルムが使用できる。中間層bは上記のフィルムを1層で使用してもよいし、2層以上積層して使用してもよい。また、アルミニウム箔との積層体を形成してもよい。前記中間層bとして2層以上のフィルムを積層して使用する場合には、積層する層の内の強度のある層にのみ切り込み7を設けるか、2層ともに切り込み7を設けるようにしてもよい。
(オ)「【0035】
また、前記積層フィルムF、F'の前記表面層aとしては、2軸延伸ポリプロピレン、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート、2軸延伸ナイロン等の2軸延伸プラスチックフィルムないしはそれらのフィルムに塩化ビニリデン樹脂等のガスバリヤー性樹脂をコーテイングしたフィルムが使用できる。」
(カ)「【0036】
また、前記積層フィルムF、F'の前記接着層cとしては、低・中・高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等の熱接着性樹脂が使用できる。」
イ 原査定の拒絶の理由において引用された引用文献7には、以下の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルムの積層体からなる包装袋で、開封容易な包装袋に関する。」
(イ)「【0017】
次に、本発明に使用する積層体について説明する。図2は図1のX-X線断面図である。図2に示すように、表面基材層2、中間層3及び熱接着性樹脂層4が順次積層され、さらに中間層3に開封用切れ目5が形成されている。表面基材層2には、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のプラスチツクフイルムまたはそれらのフイルムに酸化アルミニウム等の金属酸化物や酸化珪素等の無機物を蒸着したプラスチックフィルムもしくは塩化ビニリデン樹脂やポリビニルアルコール等のガスバリヤー性樹脂をコーテイングしたり、共押出ししたフイルムが使用できる。これらのフィルムは、二軸延伸されたプラスチックフィルムを用いると引裂き開封性を向上させることができ、一層好適である。中間層3には、二軸延伸ナイロン、二軸延伸ポリエステル、二軸延伸ポリプロピレン、エチレンビニルアルコール共重合体等のフィルムが使用できる。中間層3は上記のフィルムを1層で使用してもよいし、2層以上積層してもよい。また、上記フィルムとアルミニウム箔との積層体として使用してもよい。中間層3として2層以上のフィルムを積層して使用する場合には、積層する層のいずれか強度のある層に開封用切れ目5を形成するか、もしくは2層とも開封用切れ目5を形成するようにしてもよい。熱接着性樹脂層4には、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンプロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体等の熱接着性樹脂が使用できる。表面基材層2、中間層3、熱接着性樹脂層4を積層する方法は、例えば、ウレタン系等の接着剤を使用してドライラミネーション法やポリエチレン樹脂等の溶融押出しラミネーション法が使用できる。・・・」
ウ 原査定の拒絶の理由において引用された引用文献8には、以下の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は食品用包装材料である易開封性レトルトパウチに関する。」
(イ)「【0020】
以下図面を参照しながら本発明に係るレトルトパウチおよびその製造方法について説明する。図1は本発明に係るレトルトパウチの一実施例の断面を示す模式図である。本発明に係るレトルトパウチの層構成は、外層(4)、中間層(5)、内層(6)からなる。・・・」
(ウ)「【0025】
切り取り線は、外層、中間層、内層の積層フィルムにレーザー光(7)を中間層(5)に焦点を絞り込んで、内層(6)の側から照射して形成する。内層(6)には、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂を用いることができる。たとえばレーザー光源として、炭酸ガスレーザーを用いる場合には、その波長は9.4μmと10.6μmにピークを持つため、この波長に吸収波長を持たないポリエチレンやポリプロピレンからなる内層(6)は損傷されることなく中間層(5)であるナイロンフィルムにレーザー光が照射された部分のみが焼き飛ばされて除去され、切り取り線(8)を形成することができる。」
(エ)「【0026】
さらに外層(4)のうちバリア層(2)にアルミ箔を用いた場合にはアルミ箔はレーザー光を反射するので、外層(4)に影響を及ぼすことなく、中間層(5)にのみ選択的に切り取り線を形成することをより確実にすることができる。」
(オ)「【0028】
内層(6)には、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が適しておりそれらのフィルムを用いることができるが、押し出し機を用いて内層(6)を形成することもできる。この層は外層、中間層、内層の積層フィルムを、内層同士が接触するようにして包装袋に加工する際のシーラント層となりシール部(9)を形成する。」
エ 引用文献6~8に記載された技術的事項
以上より、引用文献6~8には、次の技術的事項(以下、「周知技術」という。)が記載されていると認められる。
「最内面にシーラント層を有する複数の樹脂層を重ね合わせた3層以上からなる積層体から構成され、当該シーラント層どうしを対向するように配置した積層体の周縁部をシールすることでパウチ状に形成した包装体において、
その中間層のみに開封を容易にするための切り込みが施されている。」
2 引用発明との対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する
ア 引用発明の「シーラント層」は、本願発明の「シーラント層」に相当する。
また、引用発明の積層体の「シーラント層」は、シーラント層同士を対向させて溶着し製袋するものであり、製袋された後のスタンディングパウチにおいて最内層に位置することからすると、引用発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、シーラント層の順に積層」した積層体の「ポリエチレンテレフタレートフィルム」は本願発明の「最外樹脂層」に、「ポリアミドフィルム」は「中間層」に、それぞれ相当する。
イ 引用発明の積層体は、「ポリエチレンテレフタレートフィルム」、「ポリアミドフィルム」、及び、「シーラント層」を重ね合わせた積層体であるから、本願発明の「少なくとも最外樹脂層と、中間樹脂層と、ヒートシール可能なシーラント層を重ね合わせた、3層以上からなる積層体」に相当する。
ウ 引用発明は、「積層体のシーラント層同士を対向する配置で重ね合わせ、周縁部への加熱・加圧で熱溶着させて製袋してスタンディングパウチの形態とした」ものであるから、本願発明の「シーラント層どうしを対向するように配置した積層体の周縁部をシールすることでパウチ状に形成した」に相当する。
エ 引用発明のポリエチレンテレフタレートフィルムとポリアミドフィルムの積層体から形成された基材層は、本願発明の「積層体は、中間樹脂層のみ、または最外樹脂層および中間樹脂層を基材フィルム層とし」たものに相当する。
オ ハーフカットとは、シートを厚み方向に残して切り込みを入れることであり、引用発明の「ハーフカット」は本願発明の「傷加工」に相当する。
引用発明の「ハーフカットが基材層に形成されて包装袋の開封予定線となり」、「ハーフカットは、シーラント層に近い側の面になされており、シーラント層に近い側の開口部の面積よりも、シーラント層から遠い側の開口部の面積の方が小さくなるように形成され」たものであるから、本願発明の「傷加工は少なくとも中間樹脂層のシーラント層に近い側の面になされており、開封誘導線はシーラント層に近い側の開口部の面積よりも、シーラント層から遠い側の開口部の面積の方が小さいこと」に相当する。
(2)以上のことから、本願発明の引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「少なくとも最外樹脂層と、中間樹脂層と、ヒートシール可能なシーラント層を重ね合わせた、3層以上からなる積層体から構成され、前記シーラント層どうしを対向するように配置した前記積層体の周縁部をシールすることでパウチ状に形成した包装体であって、
前記積層体は、前記中間樹脂層のみ、または前記最外樹脂層および前記中間樹脂層を基材フィルム層とし、
傷加工による開封誘導線が施されており、前記傷加工は少なくとも前記中間樹脂層の前記シーラント層に近い側の面になされており、前記開封誘導線はシーラント層に近い側の開口部の面積よりも、シーラント層から遠い側の開口部の面積の方が小さい易開封性包装体。」
【相違点】
本願発明は、「中間樹脂層のみに傷加工による開封誘導線が施されて」いるのに対して、引用発明の開封予定線となるハーフカットが「ポリアミドフィルムを貫通しポリエチレンテレフタレートフィルムの中まで達している」点。
3 判断
以下、相違点について検討する。
(1)引用文献4の段落【0028】~【0030】に記載されるように、ハーフカットは、基材層の包装袋外側の面に到達して露出しないように、レーザー光を中間層のポリアミドフィルムに吸収させ、それによる熱で破断して空洞を生じさせ基材層の層内でとどめることで、包装袋外側の印刷インキの昇華による集塵機のフィルター目詰まりを防ぐように形成されたものである。
そして、引用発明の基材層がポリアミドフィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムで構成されるところ、最外層のポリエチレンテレフタレートフィルムまでレーザー光で貫通してしまうと、上記のとおりポリエチレンテレフタレートフィルム外側の印刷インキを昇華させて集塵機のフィルターの目詰まりを発生させる問題があるから、レーザー光で形成されるハーフカットを基材層の層内で確実にとどめるために、開封に支障がない範囲で、ハーフカットができるだけ最外層のポリエチレンテレフタレートフィルムに深く形成されないようにする動機付けがある。
そして、複数の積層体から構成されるパウチ状の包装体において、その中間層のみに開封を容易にするための切り込みを形成することは、引用文献6~8に示されるように本願出願前に周知技術である。
そうすると、引用発明において、ハーフカットを基材層の層内で確実にとどめるために、基材層におけるハーフカットを形成する深さを、周知技術にみられるように中間層であるポリアミドフィルムのみとすることは、当業者であれば通常なし得た事項である。
(2)また、積層体の周縁部をシールすることで形成されたパウチ状の包装体において、当該包装体の厚み方向に対して、傷加工による開封誘導線の占める割合が大きければ、引き裂きによる開封性が向上する一方で耐圧性や耐衝撃性といった包装体自体の強度が低下し、その割合が小さければ、包装体自体の強度低下が抑制できる一方で引き裂きによる開封性が低下するというように、引き裂きによる開封性と、耐圧性や耐衝撃性といった包装体自体の強度がトレードオフの関係となることは、当業者がその構造から見て自明であると認められる。
(3)そして、本願明細書の段落【0026】~【0029】、【図3(b)】、【図3(f)】において、傷加工は最外樹脂層及び中間樹脂層の両方、または、中間樹脂層のみのいずれも選択可能であるとされていることからみても、中間樹脂層のみに傷加工を施すことは、切りやすさと強度等を比較衡量して決定するものであって、その作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(4)よって、本願発明の上記相違点に係る構成は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。
4 本願発明についてのまとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-015928