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特許拒絶査定不服審判

2022-015555

使い捨ての酸素低減キット、器具及びそれらの使用方法

審判番号
2022-015555
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-144595外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年09月30日
審決日
2023年05月31日
公報発行日
2023年11月24日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A61J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-144595「使い捨ての酸素低減キット、器具及びそれらの使用方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年11月26日出願公開、特開2020-189224〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

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この出願は、2016年(平成28年)3月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年3月10日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2017-547473号の一部を令和2年8月28日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 2年 8月28日提出 :手続補正書
令和 3年 8月 4日付け :拒絶理由通知書
令和 4年 1月14日提出 :意見書、手続補正書
令和 4年 5年25日付け :拒絶査定
令和 4年 9月30日提出 :審判請求書、手続補正書
令和 4年11月14日提出 :手続補正書(方式)

第2 令和4年9月30日に提出された手続補正書による手続補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和4年9月30日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「酸素不透過性である外側容器と、
前記外側容器内に封入された折り畳み可能な内側の血液容器と、
前記外側容器と前記折り畳み可能な内側の血液容器とを分離するスペーサーと、
前記外側容器と前記折り畳み可能な内側の血液容器との間に置かれた、一以上の小袋内に収納されている酸素吸収剤、又は酸素及び二酸化炭素吸収剤と、
を備える酸素枯渇器具を用意することと、
血液を前記酸素枯渇器具の前記折り畳み可能な内側の血液容器に流入させることと、
酸素飽和度が20%未満の酸素低減血液を作ることと、
を含み、
前記スペーサーが少なくとも1つの空隙を含むメッシュ又はマットであって、前記外側容器と前記折畳み可能な内側の血液容器とにより画定されるヘッドスペースを維持し、
前記一以上の小袋内に収納されている酸素吸収剤又は前記酸素及び二酸化炭素吸収剤が前記ヘッドスペース内に配置されており、前記スペーサーが一以上の小袋内に収納されている酸素吸収剤でも酸素及び二酸化炭素吸収剤でもなく、前記スペーサーが血液と接触していない、保存用の血液の調製方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の、令和4年1月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「酸素不透過性である外側容器と、
前記外側容器内に封入された折り畳み可能な内側の血液容器と、
前記外側容器と前記折り畳み可能な内側の血液容器とを分離するスペーサーと、
前記外側容器と前記折り畳み可能な内側の血液容器との間に置かれた酸素吸収剤、又は酸素及び二酸化炭素吸収剤と、
を備える酸素枯渇器具を用意することと、
血液を前記酸素枯渇器具の前記折り畳み可能な内側の血液容器に流入させることと、
酸素飽和度が20%未満の酸素低減血液を作ることと、
を含み、
前記スペーサーが少なくとも1つの空隙を含むメッシュ又はマットであって、前記外側容器と前記折畳み可能な内側の血液容器とにより画定されるヘッドスペースを維持し、
前記酸素吸収剤又は前記酸素及び二酸化炭素吸収剤が前記ヘッドスペース内に配置されている、保存用の血液の調製方法。」

2 補正の適否

本件補正は、「酸素吸収剤」の構成について「一以上の小袋内に収納されている」との限定を付加し、また、「スペーサー」について「前記スペーサーが一以上の小袋内に収納されている酸素吸収剤でも酸素及び二酸化炭素吸収剤でもなく、前記スペーサーが血液と接触していない」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)補正後の本願発明

本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項

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ア 引用文献1

原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である国際公開第2014/134503号(平成26年9月4日国際公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(日本語訳は当審で作成し、下線は当審で付した。)

「[0024] Figures 5 A-C illustrate an exemplary single liquid chamber depletion device having a flexible enclosure, flexible liquid chamber, and a flexible depletion chamber according to the present disclosure.」

(日本語訳)

「[0024]図5A-Cは、本開示による、可撓性筐体、可撓性液体チャンバ、および可撓性枯渇化チャンバを有する例示的な単一の液体チャンバ枯渇化デバイスを示す図である。」

「[0062] As illustrated in Figures 5A-C, 6A-C, and 7A-C, enclosures according the present disclosure may be prepared as a flexible or expandable enclosure. Referring to Figures 5A-C, the enclosure of device 500 may formed of two gas barrier film flexible shells 129 separated from an inner liquid chamber by two gas permeable barriers 107 to prepare a single liquid chamber 101.」

(日本語訳)

「[0062] 図5A-C、6A-C、および7A-Cに示されるように、本開示による筐体は、可撓性または膨張性筐体として作製されてもよい。図5A-Cを参照すると、デバイス500の筐体は、単一の液体チャンバ101を形成する2つのガス透過性バリア107による内側液体チャンバから離間されたガスバリアフィルムの可撓性シェル129から形成され得る。」

「[0075] As illustrated in Figures 1 A-D, a rigid liquid chamber 101 may be formed by a combination of an inner shell 109 and two gas permeable barriers 107. Similarly, as illustrated in Figures 3A-C, 9A-C and lOA-C, embodiments of depletion devices of the present disclosure may have two or more rigid liquid chambers 101 formed by a combination of two or more outer inner shells 109 each combined with two gas permeable barriers 107. In other embodiments, for example as illustrated in Figures 5A-C, 6A-C, and 7A-C, a liquid chamber 101 may be formed by a combination of two flexible gas permeable barriers 107. In certain embodiments according the present disclosure, the outer enclosure is 5 inches x 8 inches. In certain embodiments, the gas permeable barrier is between 35 to 175 μm thick.」

(日本語訳)

「[0075] 図1A-Dに示されるように、剛性液体チャンバ101は、内側シェル109および2つのガス透過性バリア107の組合せにより形成されてもよい。同様に、図3A-C、9A-Cおよび10A-Cに示されるように、本開示の枯渇化デバイスの実施形態は、それぞれ2つのガス透過性バリア107と組み合わされた2つ以上の外側内側シェル109の組合せにより形成された2つ以上の剛性液体チャンバ101を有してもよい。他の実施形態において、例えば図5A-C、6A-C、および7A-Cに示されるように、液体チャンバ101は、2つの可撓性ガス透過性バリア107の組合せにより形成されてもよい。本開示によるある特定の実施形態において、外側筐体は、5インチ×8インチである。ある特定の実施形態において、ガス透過性バリアは、35-175μmの間の厚さである。」

「[0085] In embodiments according to the present disclosure, a lower concentration or partial pressure of a gas of depletion chamber 102 may be achieved by providing a depletion media 106. In an embodiment, a depletion media 106 may be an oxygen sorbent material. In another embodiment, a depletion media 106 may be a carbon dioxide sorbent material. In yet another embodiment, a depletion media 106 may be a combined oxygen and carbon dioxide sorbent material.」

(日本語訳)

「[0085] 本開示による実施形態において、枯渇化チャンバ102のガスのより低い濃度または分圧は、枯渇化媒体106を提供することにより達成され得る。一実施形態において、枯渇化媒体106は、酸素収着剤材料であってもよい。別の実施形態において、枯渇化媒体106は、二酸化炭素収着剤材料であってもよい。さらに別の実施形態において、枯渇化媒体106は、組み合わされた酸素および二酸化炭素収着剤材料であってもよい。」

「[0086]・・・In certain embodiments, a depletion media 106 may of an oxygen sorbent material that can deplete a unit of blood to less than 3% s02 in thirty minutes. A depletion media 106, of an oxygen sorbent material that can deplete 34 ml of blood to 3% s02 in two minutes.・・・」

(日本語訳)

「[0086]・・・ある特定の実施形態において、枯渇化媒体106は、血液の単位を30分で3%未満のsO2まで枯渇化し得る酸素収着剤材料であってもよい。枯渇化媒体106は、34mlの血液を2分で3%のsO2まで枯渇化し得る酸素収着剤材料であってもよい。・・・」

「[0096] In embodiments according to the present disclosure, depletion media 106 may be incorporated into, or provided to, a depletion chamber 102 in various forms. As used herein, depletion media 106 provides for, and includes, depletion media comprising oxygen sorbents, carbon dioxide sorbents and combined oxygen and carbon dioxide sorbents. It will be appreciated that sorbents can be incorporated into storage receptacles and bags in any known form, such as in sachets, patches, coatings, pockets, and packets.」

(日本語訳)

「[0096] 本開示による実施形態において、枯渇化媒体106は、様々な形態で枯渇化チャンバ102に組み込まれるまたは提供され得る。本明細書において使用される場合、枯渇化媒体106は、酸素収着剤、二酸化炭素収着剤、ならびに組み合わされた酸素および二酸化炭素収着剤を含む枯渇化媒体を提供し、それを含む。収着剤は、小袋、パッチ、コーティング、ポケット、およびパケット等の任意の既知の形態で貯蔵容器およびバッグ内に組み込まれてもよいことが理解される。」

「[0099] In embodiments according to the present disclosure, sachets, pockets, bags, packets or receptacle for holding a depletion media 106 may be shaped or formed to increase the surface area. In an embodiment, a sachet or packet may be formed with a surface texture to increase the surface area. In other embodiments, a sachet may be a molded element with surface texture to increase the surface area. In an embodiment, a sachet or packet may have a comb-like geometry for rapid gas depletion. A sachet having a depletion media 106 may have a rectangular shape such as, for example, a 4" x 6" rectangle, although other sizes are possible. In an embodiment, the depletion media may be in a sachet that is 6 cm x 6 cm (e.g., 36 cm2).」

(日本語訳)

「[0099] 本開示による実施形態において、枯渇化媒体106を保持するための小袋、ポケット、バッグ、パケットまたは容器は、表面積を増加させるために整形または成形されてもよい。一実施形態において、小袋またはパケットは、表面積を増加させるための表面テクスチャを有するように成形されてもよい。他の実施形態において、小袋は、表面積を増加させるための表面テクスチャを有する型成形品であってもよい。一実施形態において、小袋またはパケットは、急速なガス枯渇のための櫛のような配列構造を有してもよい。枯渇化媒体106を有する小袋は、例えば、4”×6”の長方形等の長方形形状を有してもよいが、他のサイズも可能である。一実施形態において、枯渇化媒体は、6cm×6cm(例えば36cm2)の小袋内にあってもよい。」

「[0123] The lowest oxygen saturation may be achieved by using devices in which depletion media 106 is placed close to gas permeable barrier 107 and, in turn, a liquid in liquid chamber 101 to enable rapid diffusion time. Additional factors that increase gas diffusion are larger active surface area of gas permeable barrier 107. The scavenging rates of depletion media 106 may be limited by the surface area available for reaction with oxygen or oxygen and carbon dioxide and how readily the oxygen or oxygen and carbon dioxide diffuses into depletion media 106. Surface area availability can be increased by incorporating the depletion media 106 into microparticles or microfibers as provided above.」

(日本語訳)

「[0123] 迅速な拡散時間を達成するために、枯渇化媒体106をガス透過性バリア107と液体チャンバ107内の液体に近接して配置させるデバイスを用いることよって、最も低い酸素飽和度を達成し得る。ガス拡散を増加させる更なる因子は、ガス透過性バリア107のより大きな機能している面積である。枯渇化媒体106の捕捉速度は、酸素または酸素および二酸化炭素との反応に利用可能な表面積、ならびに酸素または酸素および二酸化炭素がどれ程容易に枯渇化媒体106内に拡散するかにより制限され得る。表面積の利用可能性は、枯渇化媒体106を上述のようなマイクロ粒子またはマイクロ繊維に組み込むことにより増加させることができる。」

「[0173] Pre-storage Phase A 21 includes the time from collection from a donor 15 to storage in an anaerobic environment 27. During Phase A 21, whole blood 31 may be collected from a donor 15, and the blood components, namely, plasma 33, platelets 34 and RBCs 32 may be separated. An optional additive solution 18 may be added to the whole blood to aid in storage and/or processing, as further described herein. Processing such as pathogen inactivation 11, leukoreduction 12 and editing 14 may occur during Pre-storage Phase A 21. During Phase A 21, oxygen, carbon dioxide, or oxygen and carbon dioxide are depleted using the depletion devices 20 of the present disclosure prior to Storage Phase B 22.」

(日本語訳)

「[0173] 貯蔵前段階A21は、供血者15からの採取から嫌気的環境27内での貯蔵までの期間を含む。段階A21の間、全血31が供血者15から採取されてもよく、血液成分、すなわち血漿33、血小板34およびRBC32が分離されてもよい。本明細書においてさらに説明されるように、貯蔵および/または処理を補助するために、任意選択的な添加剤溶液18が全血に添加されてもよい。病原体不活性化11、白血球低減12および編集14等の処理は、貯蔵前段階A21の間に行われてもよい。段階A21の間、酸素、二酸化炭素、または酸素および二酸化炭素が、貯蔵段階B22の前に本開示の枯渇化デバイス20を使用して枯渇化される。」

「[0222] In this example, a red blood cell suspension flows through a test set once. Table 4 summarizes the results of the deoxygenation process in the different test sets. All tests are performed at temperatures between 22.0 to 23.6°C. The average partial pressure of oxygen in blood measured by the inlet sensor in a first device of the test set is p02 d1in. The average partial pressure of oxygen in blood measured by the outlet sensor in a third device of the test set is p02 d3out. The change in oxygen level (Δp02) is calculated by taking the difference between p02d1in and p02 d3out. The percentage of oxygen reduction (%02 reduction) is calculated by dividing Ap02 by p02 diin. Table 5 compares the measured %S02 at 37°C with calculated %S02 values based on the p02 measurements at both 23°C and 37°C. The conversion calculation is made based on the Hill Equation:
[図:0001403368000001.jpg]
where n=2.7 represents the cooperativity of oxygen binding to hemoglobin, and P50 represents the partial pressure at which hemoglobin is half-saturated at either 23°C or 37°C. The measured or calculated oxygen saturation of the red blood cell suspension before and after the deoxygenation are %S02 in and %S02 out, respectively.」

(日本語訳)

「[0222] この例において、赤血球懸濁液は、一度試験セットを通って流動する。表4は、異なる試験セットにおける脱酸素プロセスの結果を要約している。全ての試験は、22.0-23.6℃の間の温度で行われる。試験セットの第1のデバイスにおける入口センサにより測定された血液中の酸素の平均分圧は、pO2 d1inである。試験セットの第3のデバイスにおける出口センサにより測定された血液中の酸素の平均分圧は、pO2 d3outである。酸素レベルの変化(ΔpO2)は、pO2 d1inとpO2 d3outとの間の差を取ることにより計算される。酸素低減のパーセンテージ(%O2低減)は、ΔpO2をpO2 d1inで除すことにより計算される。表5は、23℃および37℃の両方におけるpO2測定値に基づき、37℃における測定%SO2を計算%SO2値と比較している。変換計算は、以下のヒルの式に基づいてなされる。
[図:0001403368000002.jpg]
式中、n=2.7は、ヘモグロビンに結合する酸素の協同性を表し、P50は、ヘモグロビンが23℃または37℃において半分飽和する分圧を表す。脱酸素の前および後の赤血球懸濁液の測定または計算酸素飽和度は、それぞれ%SO2inおよび%SO2 outである。」
「図1
[図:0001403368000003.jpg]
」
「図3
[図:0001403368000004.jpg]
」

「図4

[図:0001403368000005.jpg]

「図5
[図:0001403368000006.jpg]
(イ)上記の記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 枯渇化デバイスに関し([0024])、筐体は、可撓性または膨張性筐体として作製される。筐体は、単一の液体チャンバ101を形成する2つのガス透過性バリア107による内側液体チャンバから離間されたガスバリアフィルム可撓性シェル129から形成される([0062])。
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b 液体チャンバ101は、2つの可撓性ガス透過性バリア107の組合せにより形成される([0075])。
c 枯渇化媒体106は、酸素収着剤材料、又は、組み合わされた酸素および二酸化炭素収着剤材料である([0085])。収着剤は、小袋、パッチ、コーティング、ポケット、およびパケット等の任意の既知の形態で組み込まれる([0096])。
d 枯渇化媒体106は、血液の単位を30分で3%未満のsO2まで枯渇化し得る酸素収着剤材料である。枯渇化媒体106は、34mlの血液を2分で3%のsO2まで枯渇化し得る酸素収着剤材料である([0086])。
e 小袋またはパケットは、表面積を増加させるための表面テクスチャを有するように成形される。または、小袋は、表面積を増加させるための表面テクスチャを有する型成形品である。または、小袋またはパケットは、急速なガス枯渇のための櫛のような配列構造を有する([0099])。
f 迅速な拡散時間を達成するために、枯渇化媒体106をガス透過性バリア107と液体チャンバ107内の液体に近接して配置するデバイスを用いることよって、最も低い酸素飽和度を達成し得る。ガス拡散を増加させる更なる因子は、ガス透過性バリア107のより大きな機能している面積である([0123])。
g 貯蔵前段階A21は、供血者15からの採取から嫌気的環境27内での貯蔵までの時間を含む。段階A21の間、全血31が供血者15から採取され、また、段階A21の間、酸素、二酸化炭素、または酸素および二酸化炭素が、貯蔵段階B22の前に本開示の枯渇化デバイス20を使用して枯渇化される([0173])。
h 図1、3、4から、枯渇化媒体106をガス透過バリア107と接触しないように配置していることが看て取れる。
i 図5から、液体チャンバ101がガスバリアフィルム可撓性シェル129に封入されていることが看て取れる。また、ガスバリアフィルム可撓性シェル129とガス透過バリア107との間に枯渇化媒体106が置かれていることが看て取れる。
(ウ)上記a~c、e~iの記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「枯渇化デバイスは、
筐体が、可撓性または膨張性筐体であり、ガスバリアフィルム可撓性シェル129から形成され、
液体チャンバ101が、ガスバリアフィルム可撓性シェル129に封入されており、2つの可撓性ガス透過性バリア107で形成され、
枯渇化媒体106が、酸素収着剤材料、又は、組み合わされた酸素および二酸化炭素収着剤材料であり、小袋、パッチ、コーティング、ポケット、およびパケット等の任意の既知の形態で組み込まれ、ガスバリアフィルム可撓性シェル129とガス透過バリア107との間に枯渇化媒体106が置かれるものであり、
全血31が供血者15から採取され、
酸素、二酸化炭素、または酸素および二酸化炭素が、枯渇化デバイス20を使用して枯渇化されることを含む、
貯蔵段階B22の前に枯渇化する方法。」
イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開昭62-221352号公報(昭和62年9月29日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)引用文献2の記載
「次に、上記薬液入りプラスチック容器を脱酸素剤とともに少なくとも前記脱酸素剤の周囲に空間が存在するように、耐熱性と高い酸素ガス非透過性を有する包装材料で包装する。前記脱酸素剤をその周囲に空間が存在しないように包装材料で包装すると、脱酸素剤の酸素除脱効果が悪くなり、高圧蒸気滅菌時または保存時に、上記プラスチック容器内の薬液が酸素により変質しやすくなる。前記脱酸素剤の周囲に空間を存在させる方法は、上記薬液入りプラスチック容器と脱酸素剤を包装材料に入れるとき、空気や不活性ガス等を入れる方法や、脱酸素剤を片面から他面に連通する孔を有する構造体で覆う方法や、凹凸を有する板の上に脱酸素剤と薬液入りプラスチック容器を位置させ包装材料に入れる方法や、包装材料に凸部を設ける方法や、トレー部とシート状蓋体から構成される包装材料を用いる方法等がある。(4ページ左下欄1-17行)」
「また第3図(a)、(b)に示すように、脱酸素剤の周囲に空間を存在させるために、凹凸を有する板37の上に、脱酸素剤34と薬液入りプラスチック容器を乗せ、包装材料33に入れることにより、脱酸素剤34の酸素除脱効果を高めることもできる。(7ページ右下欄1-5行)」
「図3(a)
[図:0001403368000007.jpg]
」
(イ)引用文献2に記載された技術的事項
「凹凸を有する板37の上に、脱酸素剤34と薬液入りプラスチック容器を乗せ、包装材料33に入れることにより、脱酸素剤34の酸素除脱効果を高めること」
(3)引用発明との対比
ア 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の枯渇化デバイスは、図5の記載から明らかなように、酸素収着剤材料を用いて酸素を枯渇化するものであり、ガスバリアフィルム可撓性シェル129が酸素不透過性であることは自明であるから、引用発明の「ガスバリアフィルム可撓性シェル129」は、本件補正発明の「酸素不透過性である外側容器」に相当する。
引用発明の「2つの可撓性ガス透過性バリア107で形成され」る「液体チャンバ101」は、本件補正発明の「折り畳み可能な内側の血液容器」に相当する。
引用発明の「小袋」、「酸素収着剤材料」、「組み合わされた酸素および二酸化炭素収着剤材料」は、それぞれ、本件補正発明の「小袋」、「酸素吸収剤」、「酸素及び二酸化炭素吸収剤」に相当する。
また、引用発明は、全血31を供血者15から採取して、枯渇化デバイス20を使用して枯渇化するものであり、枯渇化デバイス20を用意すること、液体チャンバ101に血液を流入させること、その結果、酸素の低減した全血が作られることが自明であるから、引用発明の「全血31が供血者15から採取され、酸素、二酸化炭素、または酸素および二酸化炭素が、枯渇化デバイス20を使用して枯渇化する」は、本件補正発明の「酸素枯渇器具を用意することと、血液を前記酸素枯渇器具の前記折り畳み可能な内側の血液容器に流入させることと」、「酸素低減血液を作ること」に相当する。
また、図1及び3を参照すると引用発明の液体チャンバ101の「ガス透過バリア107」と「ガスバリアフィルム可撓性シェル129」との間に空間が画定されており、当該空間は「ヘッドスペース」と表現できる。したがって、引用発明の「小袋」「内に組み込まれ」た「枯渇化媒体106」について、「ガスバリアフィルム可撓性シェル129とガス透過バリア107との間に枯渇化媒体106が置かれている」ことは、本件補正発明の「前記一以上の小袋内に収納されている酸素吸収剤又は前記酸素及び二酸化炭素吸収剤が前記ヘッドスペース内に配置されている」ことに相当する。
さらに、引用発明の「全血31」を「貯蔵段階B22の前に枯渇化する方法」は、本件補正発明の「保存用の血液の調整方法」に相当する。
イ 一致点及び相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
酸素不透過性である外側容器と、
前記外側容器内に封入された折り畳み可能な内側の血液容器と、
前記外側容器と前記折り畳み可能な内側の血液容器との間に置かれた、一以上の小袋内に収納されている酸素吸収剤、又は酸素及び二酸化炭素吸収剤と、
を備える酸素枯渇器具を用意することと、
血液を前記酸素枯渇器具の前記折り畳み可能な内側の血液容器に流入させることと、
酸素低減血液を作ることと、
を含み、
前記一以上の小袋内に収納されている酸素吸収剤又は前記酸素及び二酸化炭素吸収剤が前記ヘッドスペース内に配置されている、保存用の血液の調製方法。」

【相違点1】

本件補正発明では、「前記外側容器と前記折り畳み可能な内側の血液容器とを分離するスペーサー」を有しており、「前記スペーサーが少なくとも1つの空隙を含むメッシュ又はマットであって、前記外側容器と前記折畳み可能な内側の血液容器とにより画定されるヘッドスペースを維持し」、「前記スペーサーが一以上の小袋内に収納されている酸素吸収剤でも酸素及び二酸化炭素吸収剤でもなく、前記スペーサーが血液と接触していない」のに対し、引用発明では、スペーサーを有しておらず、それゆえ、「前記スペーサーが少なくとも1つの空隙を含むメッシュ又はマットであって、前記外側容器と前記折畳み可能な内側の血液容器とにより画定されるヘッドスペースを維持」するものとも、「前記スペーサーが一以上の小袋内に収納されている酸素吸収剤でも酸素及び二酸化炭素吸収剤でもなく、前記スペーサーが血液と接触していない」ともいえない点。

スペーサーを設けていない点。

【相違点2】

本件補正発明では、「酸素飽和度が20%未満の酸素低減血液を作る」のに対し、引用発明では、枯渇化した全血31の酸素飽和度が不明である点。

(4)判断

ア 相違点1について

引用文献1には、ガス拡散を増加させる更なる因子はガス透過性バリア107のより大きな機能している面積であること([0123])、枯渇化媒体106をガス透過バリア107と接触しないように配置していること(図1、3、4)、さらに、酸素収着剤材料を収納した小袋またはパケットに、急速なガス枯渇のために小袋に櫛のような配列構造を設けて表面積を増やすこと([0099])が記載されている。したがって、引用文献1には、酸素収着剤材料とガス透過性バリア107との間にスペースを設けることが示唆されているといえる。

一方、引用文献2には、酸素剤の周囲に空間を存在させるために、凹凸を有する板37の上に、脱酸素剤34と薬液入りプラスチック容器を乗せ、包装材料33に入れることにより、脱酸素剤34の酸素除脱効果を高めることが記載されている。

そうしてみると、引用発明と引用文献2はいずれも酸素吸収剤と内側の血液容器との間にスペースを設けて酸素吸収材の吸収効率を高めるという同一の課題を有するものであるから、引用発明の酸素収着剤材料とガス透過性バリア107との間にスペースを設けるために、引用文献2の凹凸を有する板37を適用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

さらに、空間を確保するための手段、すなわち、スペーサーとして空隙を含むメッシュやマットを用いることは例を挙げるまでもなく周知である。

してみれば、引用発明に、引用文献2の技術的事項及び周知の事項を適用することは、当業者であれば容易に想到し得たものであって、その場合、「前記ガスバリアフィルム可能性シェル129と前記折り畳み可能な内側の可撓性ガス透過性バリア107とを分離するスペーサー」を有するもの、「前記スペーサーが少なくとも1つの空隙を含むメッシュ又はマットであって、前記ガスバリアフィルム可能性シェル129と前記折畳み可能な内側の可撓性ガス透過性バリア107とにより画定されるヘッドスペースを維持」するもの、さらに、「前記スペーサーが一以上の小袋内に収納されている酸素収着剤材料でも酸素及び二酸化炭素吸収剤でもなく、前記スペーサーが血液と接触していない」ものとなることは明らかである。

イ 相違点2について

引用文献1に、3%未満のsO2まで枯渇化し得る酸素収着剤材料を用いることが記載されている([0086])。そして、sO2は、酸素飽和度を意味することは技術常識である(必要であれば引用文献1の[0222]を参照。)。そうしてみると、引用発明の枯渇化媒体106として3%未満のsO2まで枯渇化し得るものを用いて、酸素飽和度が20%未満の酸素低減血液を作ることは当業者であれば容易に想到し得たことである。

ウ 効果

また、本件補正発明の効果も、引用発明及び引用文献2に記載の技術的事項から予想される程度のものであり格別のものがあるとは認められない。

エ 小括

したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび

よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和4年9月30日提出の手続補正書による手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年1月14日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-16に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用文献1:国際公開第2014/134503号
引用文献2:特開昭62-221352号公報

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、酸素吸収剤、又は酸素及び二酸化炭素吸収剤に関して、「一以上の小袋内に収納されている」という限定事項、また、スペーサーに関して、「一以上の小袋内に収納されている酸素吸収剤でも酸素及び二酸化炭素吸収剤でもなく、前記スペーサーが血液と接触していない」という限定事項を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項の全てを含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-015555

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