商標拒絶査定不服審判
2022-015265
アイデイパスワードレス、パスワードレス
- 審判番号
- 2022-015265
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2021-092155
- 請求日
- 2022年09月27日
- 審決日
- 2024年02月07日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社PAY ROUTE
- 【請求人代理人】杉浦 健文
- 審判長/審判官
- 審判長 大橋 良成
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 浦崎 直之
- 分類
- T18 .13 -Z (W36) / T18 .272-Z (W36)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法4条1項16号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第4条第1項第16号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2021-92155拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年7月26日の登録出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
令和4年 2月10日付け:拒絶理由通知書
令和4年 4月15日受付:意見書、手続補正書
令和4年 6月20日付け:拒絶査定
令和4年 9月27日受付:審判請求書
令和5年 9月27日付け:審尋
令和5年12月12日受付:回答書
第2 本願商標
本願商標は、「ID/パスワードレス」の文字を普通に用いられる方法で横書きしてなり、第36類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として登録出願されたものであり、その後、指定役務については、上記第1の手続補正により、第36類に属する別掲1に記載のとおりの指定役務に補正されたものである。
第3 原査定の拒絶の理由の要旨
本願商標は、「ID/パスワードレス」の文字を書してなるところ、その構成中の「ID」の文字は、ID番号(複数の人や物を一意的に識別するための符号)の略であり、「レス」の文字は「他の語の下に付いて、…のない」ほどの意を表す語として親しまれている。
そして、本願の指定役務を取り扱う分野において、本人を認証する際やアカウントにログインする際に、IDやパスワードを利用しないことを、「IDレス」「パスワードレス」と称していることが認められる。
してみると、本願商標は全体として、「ID、パスワードを利用しない」ほどの意味合いを容易に理解させるというのが相当である。
そうすると、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、例えば「ID、パスワードを利用しないデビットカード利用者に代わってする支払代金の決済」のように「ID、パスワードを利用しない役務」であると認識するにとどまるというのが相当であるから、本願商標は、単に役務の質・特徴を普通に用いられる方法で表示したにすぎないものと認められる。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、上記の役務以外の役務に使用するときは、役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。
第4 当審における審尋
当審において、本願商標の商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について、請求人に対し、審尋で別掲2ないし7のとおりの事実を示すとともに、当審における合議体の暫定的見解について通知し、相当の期間を指定して、これに対する意見を求めた。
第5 審尋に対する請求人の回答の要旨
請求人は、上記第4の審尋に対し、回答書を提出し、要旨、以下のとおりの意見を述べた。
「決済」と「認証」とは、それらの行為時に要求される情報が異なっており、役務の事業者も一致していないことが多く、それぞれ独立した役務として提供され、「決済」に係る役務の提供において、「認証」が不可欠であるといった事情はなく、「認証」の有無が「決済」に大きな影響を与えるものではないから、決済に係る役務と利用者の認証とは、密接な関連性は有しているとはいえない。
本願商標「ID/パスワードレス」から、全体として「ID、パスワードが不要な役務」ほどの意味合いが生じるとしても、その意味合い自体が多義的であって、本願商標をその指定役務に使用したときであっても、本願指定役務の質を直接的かつ具体的に表示するものとして、取引者、需要者に認識、把握されるとは言い難く、むしろ、その構成文字全体をもって、一種の造語を表したものとして認識される。
第6 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の該当性について
本願商標は、「ID/パスワードレス」の文字を普通に用いられる方法で横書きしてなるところ、その構成中「ID」の文字は、「ID番号(複数の人や物を一意的に識別するための符号。)・IDカード(身分証明書)の略。」等(「広辞苑第七版」株式会社岩波書店)を意味する語であり、「/」の文字は、「言葉の切れ目や、「または」の意などを示すために入れる斜線。」等(「大辞林第四版」株式会社三省堂)を意味する語であり、「パスワード」の文字は、「複数の人があるシステムを利用する場合、機密保護などのためにシステムに登録し利用者の確認に用いる符号。」(「大辞林第四版」株式会社三省堂)を意味する語であり、「レス」の文字は、「他の外来語の下に付いて「欠いている」「無い」などの意を表す。」(「大辞林第四版」株式会社三省堂)を意味する語であるから、本願商標は、全体として「ID、パスワードがない」ほどの意味合いが容易に理解されるものである。
ところで、近時のキャッシュレス決済の普及に伴い、別掲2のとおり、決済に係る役務を提供する場面においては、利用者の認証が広く行われており、決済に係る役務と利用者の認証とは、密接な関連性を有するものである。
また、別掲3のとおり、一般に、利用者の認証を行う際には、例えば生体認証のように、ID、パスワード不要の認証が行われており、別掲4ないし6のとおり、「IDレス」、「パスワードレス」及び「ID/パスワードレス」等の文字が使用されている事実も認められる。
さらに、本願の指定役務を取り扱う業界においては、IDやパスワードが不要な決済として、例えば、現金による決済はもとより、交通系電子マネーのような前払い式電子マネーによる決済等、様々なものがあることは、経験則上明らかであるとともに、別掲7のとおり、IDやパスワードが不要な電子決済について、「IDレス決済」、「パスワードレス決済」等の文字が使用されている事実も認められる。
そうすると、本願商標は、本願の指定役務との関係において、その構成文字の意味や上記の事実から、全体として「ID、パスワードが不要」ほどの意味合いが理解され、本願商標を、その指定役務に使用したときには、これに接する取引者、需要者は、例えば「ID、パスワードが不要な支払代金の電子決済」等の「ID、パスワードが不要な役務」であること、すなわち、単に役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であると認識するにとどまり、本願商標は、自他役務の識別標識としては認識し得ないというのが相当である。
また、本願商標を前記の指定役務以外の本願指定役務に使用するときは、当該役務があたかも「ID、パスワードが不要な役務」かのごとく、役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるというのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
2 請求人の主張について
(1)請求人は、「決済」と「認証」とは、それらの行為時に要求される情報が異なっており、役務の事業者も一致していないことが多く、それぞれ独立した役務として提供され、「決済」に係る役務の提供において、「認証」が不可欠であるといった事情はなく、「認証」の有無が「決済」に大きな影響を与えるものではないから、決済に係る役務と利用者の認証とは、密接な関連性は有しているとはいえない旨主張する。
しかしながら、近時のキャッシュレス決済の普及に伴い、別掲2のとおり、決済に係る役務を提供する場面では、インターネットを通じた電子決済等に関連して、利用者の認証が広く行われており、決済に係る役務と利用者の認証とは、密接な関連性を有するというべきである。
(2)請求人は、本願商標「ID/パスワードレス」から、全体として「ID、パスワードが不要な役務」ほどの意味合いが生じるとしても、その意味合い自体が多義的であって、本願商標をその指定役務に使用したときであっても、本願指定役務の質を直接的かつ具体的に表示するものとして、取引者、需要者に認識、把握されるとは言い難く、むしろ、その構成文字全体をもって、一種の造語を表したものとして認識される旨主張する。
しかしながら、上記1のとおり、「ID」、「/」、「パスワード」及び「レス」の語の意味や、決済に係る役務と利用者の認証とは、密接な関連性を有すること、例えば生体認証のように、実際に利用者の認証を行う際には、ID、パスワード不要の認証が行われ、「IDレス」、「パスワードレス」及び「ID/パスワードレス」等の文字が使用されている事実、IDやパスワードが不要な電子決済について、「IDレス決済」、「パスワードレス決済」等の文字が使用されている事実を併せみれば、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者に、例えば「ID、パスワードが不要な支払代金の電子決済」等の「ID、パスワードが不要な役務」であること、すなわち役務の質を表示したものと一般に認識されるというべきである。
(3)したがって、請求人による上記主張は、いずれも採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、これを登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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