2022-015127
筐体及び筐体の製造方法
- 審判番号
- 2022-015127
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-548306外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年09月26日
- 審決日
- 2023年07月18日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】東レ株式会社
- 分類
- P18 .121-WY (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 21項目
第1 手続の経緯
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本願は、2017年(平成29年)6月20日(優先権主張 平成28年6月23日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和3年 6月14日付け 拒絶理由通知
令和3年 8月20日 意見書・手続補正書 提出
令和4年 1月 7日付け 拒絶理由通知
令和4年 3月 4日 意見書・手続補正書 提出
令和4年 6月20日付け 拒絶査定(原査定)
令和4年 9月26日 審判請求書・手続補正書 提出
令和5年 4月 3日付け 拒絶理由通知(当審拒絶理由)
令和5年 5月24日 意見書・手続補正書 提出
第2 原査定の概要
原査定(令和4年6月20日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(進歩性)本願の特許請求の範囲の請求項1-8に係る発明は、以下の引用文献AないしCに記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
A.特開2014-239106号公報
B.特開2010-263147号公報(周知技術を示す文献)
C.特開2015-147378号公報(周知技術を示す文献)
第3 当審拒絶理由の概要
令和5年4月3日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。
(進歩性)本願の特許請求の範囲の請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.特開2004-111502号公報
2.特開2015-147378号公報(原査定の引用文献C)
第4 本願発明
本願請求項1に係る発明ないし請求項4に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、令和5年5月24日提出の手続補正書によって補正(以下、「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。
「【請求項1】電子回路を有するカバーで構成される電子機器筐体であって,前記電子回路が、ガラス繊維に熱硬化性樹脂を含侵させてなるガラス繊維強化樹脂プリプレグによるプリフォーム中に前記電子回路を配置し、さらに炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させてなる炭素繊維強化樹脂プリプレグをその両表面に配置したプリフォームを成形して得られる繊維強化熱硬化性樹脂からなるカバーに内挿されていることを特徴とする電子機器筐体。【請求項2】続きを表示(全11行)前記カバーは,少なくとも平面部を有し,前記電子回路は,少なくともカバーの平面部に内挿されていることを特徴とする,請求項1に記載の電子機器筐体。【請求項3】前記カバーが,電子回路と接続可能な機構を有することを特徴とする,請求項1または2に記載の電子機器筐体。【請求項4】電子回路を有するカバーで構成され,前記電子回路がカバーに内挿された電子機器筐体の製造方法であって,ガラス繊維にあらかじめ熱硬化性樹脂が含侵されてなるガラス繊維強化樹脂プリプレグによるプリフォーム中に前記電子回路を配置し、さらに炭素繊維にあらかじめ熱硬化性樹脂を含浸させてなる熱硬化性樹脂プリプレグをその両表面に積層してプリフォームを得る工程、及び、前記プリフォームを加圧および/または減圧して形状を賦型する工程を有する、電子機器筐体の製造方法。」
第5 引用文献
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
当審拒絶理由の引用文献1(特開2004-111502号公報)には、以下の記載がある。(下線は、当審が付加した。以下同様。)
ア 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,携帯型電子機器の外装部品および携帯型電子機器に関する。【0002】続きを表示(全18行)【従来の技術】従来より,携帯電話やPDA等の各種携帯型電子機器がある。このような携帯型電子機器は,機器を動作させるための各種電子部品を備えており,これら各種電子部品は,回路基板に実装され,外装本体に囲われたスペースすなわち携帯型電子機器の筐体内に回路基板と共に収納されている。【0003】一方,半導体素子を熱可塑性樹脂基材に挿入して半導体素子の電極を熱可塑性樹脂基材の反対側の面に露出させ,電極が露出された熱可塑性樹脂基材表面に回路パターンを形成した半導体部品実装済部品,及びこの半導体部品実装済部品を別の2枚の熱可塑性樹脂基材により厚み方向から挟んで作製されたICカードが知られている(例えば,特許文献1参照)。また,電子部品をその接合部が露出するように樹脂により封止して,電子部品の接合部が露出する面に回路パターンを形成した電子部品内蔵基板が知られている(例えば,特許文献2参照)。【0004】【特許文献1】特開2001-93934号公報【特許文献2】特開2001-53413号公報【0005】【発明が解決しようとする課題】ところで,携帯型電子機器は,薄型化が進んでいるものの,その携帯性,操作性等の観点から,さらなる薄型化が検討されている。ところが,上述した従来の携帯型電子機器では,電子部品が回路基板と共に外装本体に囲われたスペースに収納されているため,携帯型電子機器は,電子部品の高さ,回路基板の厚さ,及び外装ケースの厚さを合わせた以上の厚さになってしまう。このため,従来の携帯型電子機器では,薄型化に限界があり,さらなる薄型化が困難であった。【0006】本発明は,上記課題に鑑みなされたものであり,携帯型電子機器を薄型化することができる携帯型電子機器の外装部品,およびこの外装部品を備えた携帯型電子機器を提供することを目的としている。」
イ 図1
[図:0001400248000001.jpg]
ウ 図2
[図:0001400248000002.jpg]
エ 「【0014】【発明の実施の形態】図1は本発明の第1の実施の形態に係る携帯型電子機器である携帯電話1の構造を示す平面図であり,図2は携帯電話1の外装部品を成す上ケースユニット10の構造を示す断面図である。携帯電話1は,外装部品を成す上ケースユニット10と,2枚の回路基板80a,80bと,電池81と,下ケース82とを備えている。上ケースユニット10は,外装本体を成す上ケース11と,ICのベアチップ21,チップ抵抗22等の各種電子部品と,回路30とを備えている。【0015】続きを表示(全15行)上ケース11は,携帯電話1を外装するものであり,絶縁性樹脂により成形されている。ベアチップ21及びチップ抵抗22は,電極21a及び電極22aが上ケース11の内側面側に露出する状態で,上ケース11内に埋め込まれている。また,その他の各種電子部品(不図示)も,同様に,電極が露出する状態で上ケース11内に埋め込まれている。【0016】回路30は,上ケース11に埋め込まれているベアチップ21,チップ抵抗22等の各種電子部品を電気的に接続するものであり,導電性材料である銀ペーストを上ケース11の内側面に印刷することにより,上ケース11の内側面上に形成されている。【0017】下ケース82は,携帯電話1を外装するものであり,上ケース11と同じ絶縁性樹脂により成形されており,上ケース11に装着される。回路基板80a,80bは,各種電子部品が実装されており,上ケース11の内側面と下ケース82の内側面とに囲われたスペースに収納される。電源81は,携帯電話1の各部に電力を供給するものであり,下ケース82に装着される。回路30,回路基板80a,回路基板80b,及び電源81は,フィルム型配線85a,85b,85cにより電気的に接続される。【0018】上記上ケースユニット10は,以下のようにして作製される。まず,金型(不図示)内に流動性樹脂を注入し,金型内で流動性樹脂を硬化させて上ケース11を成形する。次に,成形した上ケース11を金型から取出して,図3に示すように,上ケース11の内側面を上に向けて基台91に載せ,ベアチップ21,チップ抵抗22を電極21a,電極22aが上になるように上ケース11の内側面上に位置決めして配置する。また,その他の電子部品(不図示)も,同様に,電極が上になるように上ケース11の内側面上に配置する。そして,これらベアチップ21,チップ抵抗22等の電子部品をプレス装置92にて上ケース11へ押し付けて上ケース11内に圧入する。【0019】これにより,ベアチップ21,チップ抵抗22は,上ケース11の内側面側に電極21a,電極22aが露出する状態にて埋め込まれ,その他の電子部品も,同様に,上ケース11の内側面に電極が露出する状態に埋め込まれる。このとき,上ケース11は,成形直後の樹脂が完全に硬化する前の状態のものを金型から取出し,この完全硬化前の上ケース11に電子部品を圧入して埋め込む。その後,ベアチップ21,チップ抵抗22等の電子部品が埋め込まれた上ケース11の内側面に銀ペーストを印刷することにより,上ケース11の内側面上に回路30を形成する。これにより,上記上ケースユニット10が完成する。【0020】以上のように,ベアチップ21,チップ抵抗22等の電子部品は,携帯電話1の上ケースユニット10の上ケース11内に埋め込まれている。このため,ベアチップ21,チップ抵抗22等の電子部品を配置するためのスペースが不要であり,携帯電話1を薄型化できる。また,回路30は上ケース11の内側面上に印刷により形成されているため,上ケース11が回路基板の役割を果たし,回路30を形成するための基板が不要であり,携帯電話1を一層薄型化できる。また,ベアチップ21,チップ抵抗22等の電子部品は圧入により上ケース11に埋め込まれるため,電子部品の埋め込み作業は,電子部品を上ケース11の内側面上に位置決めして電子部品をプレスするという簡単な作業で済む。」
(2)引用発明
上記(1)より、特に、下線部に着目すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「携帯型電子機器を薄型化することができる携帯型電子機器である携帯電話1の外装部品を成す上ケースユニットであって,上ケースユニット10は,外装本体を成す上ケース11と,ICのベアチップ21,チップ抵抗22等の各種電子部品と,回路30とを備えており,上ケース11は,携帯電話1を外装するものであり,絶縁性樹脂により成形されており,ベアチップ21及びチップ抵抗22は,電極21a及び電極22aが上ケース11の内側面側に露出する状態で,上ケース11内に埋め込まれており,回路30は,上ケース11に埋め込まれているベアチップ21,チップ抵抗22等の各種電子部品を電気的に接続するものであり,導電性材料である銀ペーストを上ケース11の内側面に印刷することにより,上ケース11の内側面上に形成されており,下ケース82は,携帯電話1を外装するものであり,上ケース11と同じ絶縁性樹脂により成形されており,上ケース11に装着されるものであり,回路基板80a,80bは,各種電子部品が実装されており,上ケース11の内側面と下ケース82の内側面とに囲われたスペースに収納される携帯型電子機器の上ケースユニット。」
2 引用文献2
(1)引用文献2の記載
当審拒絶理由の引用文献2(特開2015-147378号公報。原査定の引用文献C)には、以下の記載がある。
ア 「【技術分野】【0001】本発明は,例えばパソコンやOA機器,携帯電話等の部品や筐体部分として用いられる軽量,高強度・高剛性でかつ薄肉化が要求される用途に適した繊維強化プラスチック成形品及びその製造方法に関する。【背景技術】【0002】現在,パソコン,OA機器,AV機器,携帯電話,電話機,ファクシミリ,家電製品,玩具用品などの電気・電子機器の携帯化が進むにつれ,より小型,軽量化が要求されている。その要求を達成するために,機器を構成する部品,特に筐体には,外部から荷重がかかった場合に筐体が大きく撓んで内部部品と接触,破壊を起こさないようにする必要があるため,高強度・高剛性化を達成しつつ,かつ薄肉化が求められている。(中略)【発明が解決しようとする課題】【0018】本発明は,かかる従来技術の問題点に鑑み,一面に開口部を有する中空構造を構成する繊維強化プラスチック成形品に,成形品に要求される剛性を負担させるモノコック形状の中空構造の成形品であって,薄肉,軽量かつ高剛性で,生産性に優れた中空構造の繊維強化プラスチック成形品を提供することを目的とする。また,複雑形状の中空構造の成形品において,部品の合わせ目がなく,外観の意匠性デザイン性が向上し,複雑形状の成形体の高速成形を可能とすることを目的とする。」
イ 「【0023】本発明は,少なくとも連続した強化繊維からなる繊維強化シートから形成され,中空構造を有する繊維強化プラスチック成形品であって,繊維強化プラスチック成形品の一側面は繊維強化シートを折り曲げた折り返し部からなり,一側面の端部から延設する他の側面は繊維強化シートを重ね合わせた第1の接合部からなり,一側面と対向する側面に開口部が設けられた構成からなるものである。(中略)【0037】続きを表示(全32行)ここで,本発明に用いる繊維強化シートについて説明する。【0038】繊維強化シート6は,多数本の連続した強化繊維を一方向に引き揃えた強化繊維束を複数並べ,熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグが好適に用いられる。複数の強化繊維束は,プリプレグの幅方向に配列され,あるいは,プリプレグの厚さ方向に積層されていてもよい。繊維強化シート6の形態としては,特に制限はなく,強化繊維束を織り込んだクロス織物や,繊維がシート内で切れることなく一方向(UD:Uni Directional)に連続して配向した一方向基材等を好適に用いることができる。強度・剛性の観点からは,一方向基材を用いることが好ましい。【0039】強化繊維束を構成する強化繊維の本数には特に制限はないものの,3,000~24,000本の範囲とすることが好ましい。3,000本未満になると,強化繊維束自身が細くなり,繊維強化シート6に十分な繊維束が配列されず,一方向基材やクロス織物を構成しづらくなる。また,24,000本を越えると,逆に強化繊維束が太くなり,均一な厚みの繊維強化シート6を構成しづらくなる。特に好ましくは,6,000~12,000本の範囲である。【0040】繊維強化シート6に使用される強化繊維としては,例えば,ガラス繊維,炭素繊維,金属繊維,芳香族ポリアミド繊維,ポリアラミド繊維,アルミナ繊維,炭化珪素繊維,ボロン繊維,玄武岩繊維が用いられる。これらは,単独または2種以上併用して用いてもよい。これらの強化繊維は,表面処理が施されているものであってもよい。表面処理としては,金属の被着処理,カップリング剤による処理,サイジング剤による処理,添加剤の付着処理などが好適に用いられる。【0041】また,繊維強化シート6の強化繊維が導電繊維からなることが好ましい。繊維強化シート6の強化繊維に導電性の特性を持たせることにより,電子機器内からの発生や外部から進入する電磁気を遮断する効果が得られる。導電性を発現する強化繊維であれば特に制限はなく,アルミニウム繊維,黄銅繊維,ステンレス繊維などの金属繊維や,ポリアクリロニトリル系,レーヨン系,リグニン系,ピッチ系の炭素繊維(黒鉛繊維を含む),等が好ましく用いられる。中でも,繊維強化プラスチック成形品1の強度をより向上させることができる炭素繊維を用いることがより好ましい。【0042】本発明の繊維強化プラスチック成形品1に使用される熱硬化性樹脂としては,例えば,不飽和ポリエステル樹脂,ビニルエステル樹脂,エポキシ樹脂,フェノール(レゾール型)樹脂,ユリア・メラミン樹脂,ポリイミド樹脂,これらの共重合体,変性体,および,これらの少なくとも2種類をブレンドした樹脂が用いられる。これらの中でも,力学特性の観点からエポキシ樹脂を用いることが好ましい。耐衝撃性向上のために,熱硬化性樹脂には,エラストマーもしくはゴム成分が添加されていてもよい。【0043】また,繊維強化シート6の剛性を十分に発揮させるため,繊維強化シート6の繊維重量含有率(Wf)を適切な範囲とすることが好ましい。繊維重量含有率(Wf)の計算は,Fw:繊維重量,Rw:樹脂重量を用いて次式により決定される。Wf=Fw/(Fw+Rw)×100(%)【0044】繊維重量含有率(Wf)は,5~80重量%の範囲が好ましく,より好ましくは10~75重量%,更に好ましくは15~70重量%である。一般的に繊維重量含有率(Wf)が5重量%未満では,成形品の力学特性の向上効果が少なく,80重量%を超えると樹脂が均一に含浸されない場合や成形時に成形品表面が完全に樹脂で覆われず繊維が露出して品位が低下する場合がある。【0045】また,本発明は,少なくとも以下の工程を経ることを特徴とする繊維強化プラスチック成形品1の製造方法である。(A)中子21に,熱硬化性樹脂を含浸させた繊維強化シート6をプリフォーミングする工程(A1)~(A5),(A1)前記繊維強化シート6を所定の形状にカットする工程,(A2)前記中子21の一方の表面に前記繊維強化シート6を位置決めする工程,(A3)前記中子21の手前側面3に,前記繊維強化シート6を折り曲げて巻き付ける工程,(A4)前記中子21の手前側面の端部から延設する他の側面4に前記繊維強化シート6を重なり合うように積層する工程,(A5)(A4)工程において,前記繊維強化シート6のうち少なくとも最表層の端部を前記手前側面の端部から延設する他の側面4の外側に突出させて貼り合わせ第1の接合部18を設ける工程,(B)前記プリフォーミングされた前記繊維強化シート6を,前記中子21とともに金型29に配置する工程,(C)前記金型29を閉じて加熱加圧し,前記繊維強化シート6に含浸した熱硬化性樹脂を硬化させる工程,(D)前記金型29内から前記中子21とともに硬化した前記繊維強化プラスチック成形品1を取り出し,前記繊維強化プラスチック成形品1を冷却する工程,及び,(E)前記中子21を前記繊維強化プラスチック成形品1から脱型する工程。」
(2)引用文献2記載技術
上記(1)より,特に,下線部に着目すると,引用文献2には,以下の発明(以下,「引用文献2記載技術」という。)が記載されていると認められる。
「携帯電話などの電気・電子機器の筐体に用いられ,薄肉,軽量かつ高剛性で,生産性に優れた中空構造の繊維強化プラスチック成形品であって,強化繊維からなる繊維強化シートから形成されており,繊維強化シート6は,多数本の連続した強化繊維を一方向に引き揃えた強化繊維束を複数並べ,熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグが好適に用いられ,複数の強化繊維束は,積層されていてもよく,繊維強化シート6に使用される強化繊維としては,例えば,ガラス繊維,炭素繊維などが用いられ,これらは,2種以上併用して用いてもよく,また,繊維強化シート6の強化繊維が導電繊維からなることが好ましく,繊維強化シート6の強化繊維に導電性の特性を持たせることにより,電子機器内からの発生や外部から進入する電磁気を遮断する効果が得られ,繊維強化プラスチック成形品1に使用される熱硬化性樹脂としては,例えば,エポキシ樹脂などの樹脂が用いられ,熱硬化性樹脂を含浸させた繊維強化シート6をプリフォーミングし,前記プリフォーミングされた前記繊維強化シート6を,前記中子21とともに金型29に配置し,前記金型29を閉じて加熱加圧し,前記繊維強化シート6に含浸した熱硬化性樹脂を硬化させて得られる繊維強化プラスチック成形品。」
3 引用文献Aおよび引用文献B
(1)引用文献Aの記載
原査定の引用文献A(特開2014-239106号公報)には、以下の記載がある。
ア 「【技術分野】【0001】本発明は、筐体及びその製造方法に関する。【背景技術】続きを表示(全15行)【0002】携帯電話、スマートホン、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型パーソナルコンピュータ及びナビゲーション装置等の電子機器には、薄く且つ軽量であるとともに、堅牢であることが求められている。そのため、これらの電子機器の筐体材料には、薄肉化しても十分な強度が確保できることから、アルミニウム合金又はマグネシウム合金などが使用されることが多い。【先行技術文献】【特許文献】【0003】【特許文献1】特開2011-165206号公報【特許文献2】特開2012-199985号公報【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0004】薄型化及び軽量化が可能であるとともに十分な強度を確保でき、電波を送受信する機能を備えた電子機器に適用できる筐体及びその製造方法を提供することを目的とする。」
イ 「【0009】以下、実施形態について説明する前に、実施形態の理解を容易にするための予備的事項について説明する。【0010】携帯電話、スマートホン、PDA、ノート型パーソナルコンピュータ及びナビゲーション装置等の電子機器は通信機能を備えており、アンテナが必須である。続きを表示(全16行)【0011】アンテナが筐体の外側に露出していると、製品のデザイン性が損なわれる。そのため、通信機能を備える電子機器の多くは、筐体内にアンテナを配置している。【0012】ところで、近年、微細な金属粒子を含む導電性インクを使用し、スクリーン印刷又はインクジェット印刷等により導電パターンを形成するプリンテッドエレクトロニクス技術が開発されている。この技術を利用して、筐体の内面に導電性インクによりアンテナとなる導電パターンを形成すれば、電子機器のより一層の薄型化が可能になる。【0013】しかし、筐体全体をアルミニウム合金やマグネシウム合金等の導電性材料により形成してしまうと、筐体により電波が遮られてしまうため、筐体内に配置されたアンテナに電波が届かなくなってしまう。そのため、筐体材料として金属を使用する場合でも、少なくともアンテナの周辺部分はプラスチック等の非導電性材料で形成することが重要となる。【0014】金属とプラスチックとを組み合わせて筐体を製造する場合は、製造工程数が増えて製品コストの上昇の原因となってしまうだけでなく、製品のデザイン性が損なわれてしまうこともある。【0015】そこで、筐体をFRP(繊維強化プラスチック)で形成し、その内側の面に導電性インクによりアンテナを形成することが考えられる。しかし、導電性インクを乾燥及び焼成する際には130℃~180℃程度の温度で熱処理する必要があり、一般的なFRPに使用されるポリエステル樹脂等では熱処理時の温度に耐えることができない。【0016】以下の実施形態では、薄型化及び軽量化が可能であるとともに十分な強度を確保でき、電波を送受信する機能を備えた電子機器に適用できる筐体及びその製造方法について説明する。」
ウ 図1
[図:0001400248000003.jpg]
エ 「【0017】(実施形態)図1は、実施形態に係る筐体を示す斜視図である。また、図2は、図1中にI-I線で示す位置における断面図である。本実施形態は、ノート型パーソナルコンピュータの筐体のうち液晶パネルを収納する部分に適用した例について説明している。【0018】図1に例示すように、本実施形態に係る筐体10は、矩形状の平板部10aと、平板部10aの四辺からそれぞれ垂直方向に突出する側板部10bとを有する。」
オ 図2
[図:0001400248000004.jpg]
カ 「【0019】また、図2の断面図に示すように、筐体10は、内側に配置された第1のFRPシート11と、外側に配置された第2のFRPシート13と、それらの第1のFRPシート11と第2のFRPシート13との間に配置された剛性基板12とを有する。【0020】但し、本実施形態では、剛性基板12は筐体10の平板部10aのみに配置されており、図2に示すように筐体10の側板部10bでは第1のFRPシート11と第2のFRPシート13とが直接接合している。また、剛性基板12には、後述するアンテナ14に対応する部分に切欠きが設けられている。続きを表示(全25行)【0021】第1のFRPシート11は第1の繊維強化プラスチック部の一例であり、第2のFRPシート13は第2の繊維強化プラスチック部の一例である。【0022】第1のFRPシート11の外側の面の所定の位置には導電性インクにより形成されたアンテナ14が設けられており、内側の面には無線モジュール15が取り付けられている。そして、アンテナ14と無線モジュール15とは、第1のFRPシート11を貫通する導通部14aを介して電気的に接続されている。【0023】第1のFRPシート11は、ガラス又はその他の非導電性繊維の集合体に樹脂を含浸させて形成されている。第1のFRPシート11に使用する樹脂は、その軟化温度がアンテナ14となる導電性インクを乾燥及び焼成する際の温度よりも高いものを選択することが重要である。【0024】第1のFRPシート11の樹脂として、例えばポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファサイド及びポリエーテルイミドなどを用いることができる。【0025】第1のFRPシート11の厚さは適宜設定すればよいが、本実施形態では第1のFRPシート11の厚さを0.1mm~0.4mm程度とする。【0026】第2のFRPシート13も、ガラス又はその他の非導電性繊維の集合体に樹脂を含浸させて形成されている。第2のFRPシート13は筐体10の外装面を形成するので、平滑で綺麗な表面状態が得られるものであることが好ましい。【0027】第2のFRPシート13には第1のFRPシート11ほど耐熱性が要求されない。そのため、第2のFRPシート13の樹脂は、その融点が第1のFRPシート11の樹脂の融点よりも低いものを使用できる。例えば、第2のFRPシート13の樹脂として、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート及びポリアミドなどを用いることができる。【0028】第2のFRPシート13の厚さも適宜設定すればよいが、本実施形態では第2のFRPシート13の厚さを0.1mm~0.4mm程度とする。【0029】剛性基板12は、第1のFRPシート11及び第2のFRPシート13よりも剛性が高いものであればよい。剛性基板12として、例えばアルミニウム合金若しくはマグネシウム合金等の金属シート又はダイキャスト品、CFRP(カーボン繊維強化プラスチック)シート及びセラミックシートなどを用いることができる。【0030】剛性基板12の厚さも適宜選択すればよいが、本実施形態では剛性基板12の厚さは0.1mm~0.4mm程度とする。剛性基板12が電波を遮る材料により形成されている場合、剛性基板12にはアンテナ14に対応する部分に切り欠きを設けることが重要となる。」
キ 図3
[図:0001400248000005.jpg]
ク 「【0031】なお、本実施形態では第1のFRPシート11と第2のFRPシート13とにより剛性基板12を挟んでいるが、第1のFRPシート11が剛性基板12の全体を覆っている必要はない。例えば図3に例示するように、剛性基板12の一部が筐体10の内側に露出していてもよい。剛性基板12を金属又はCFRPにより形成した場合、図3の構造とすることにより、剛性基板12を、電子部品から発生した熱を拡散する放熱経路や電気的なグラウンドとして利用することもできる。【0032】以下、図4~図10を参照して、本実施形態に係る筐体の製造方法を説明する。」
ケ 図4
[図:0001400248000006.jpg]
コ 「【0033】まず、第1のFRPシート11の材料を用意する。ここでは、第1のFRPシート11の材料として、図4に示すように、厚さが0.1mmの2枚のポリカーボネートフィルム21と、厚さが0.1mmのガラスクロスシート22を使用する。【0034】そして、これらのポリカーボネートフィルム21及びガラスクロスシート22を所定の形状の金型23a,23bで挟み、プレス加工機(図示せず)により加熱しつつ圧力を加える第1のプレス加工工程を実施する。これにより、ガラスクロスシート22とポリカーボネートフィルム21とが一体化し、平板部10a及び側板部10bを有する箱状の成形体が得られる。以下、第1のFRPシート11により形成された箱状の成形品を、予備成形品20と呼ぶ。」
サ 図5
[図:0001400248000007.jpg]
シ 図6
[図:0001400248000008.jpg]
ス 「【0035】次に、図5に示すように、予備成形品20の所定部分に、貫通穴20aを形成する。その後、図6に示すように、予備成形品20を支持台24の上に載置した後、予備成形品20の上に印刷マスク25を配置する。そして、この印刷マスク25を介して予備成形品20の表面の所定の位置に所望のパターンで導電性インク26を付着させる。導電性インク26として、例えばハリマ化成社製の銀インクを使用することができる。」
セ 図7
[図:0001400248000009.jpg]
ソ 「【0036】その後、例えば130℃の温度で導電性インク26を乾燥及び焼成する。このようにして、図7に示すように、予備成形品20の外側の面にアンテナ14が形成される。また、貫通穴20a内に充填された導電性インクにより、導通部14aが形成される。【0037】次に、剛性基板12と第2のFRPシート13とを用意する。【0038】ここでは、剛性基板12として、カーボン繊維にエポキシ樹脂を含浸させて形成されたCFRPシートを使用する。剛性基板12のサイズは、例えば幅が210mm、長さが150mm、厚さが0.2mmとする。」
タ 図8
[図:0001400248000010.jpg]
チ 「【0039】剛性基板12となるCFRPシートには電波を遮る性質があるので、図8のようにアンテナ14が配置される部分に切欠き12aを設けておく。切欠き12aの大きさは、例えば190mm×15mmとする。【0040】また、本実施形態では、レーザ加工機(例えば、キーエンス社製レーザマーカMD)等により、剛性基板12の表面に全体に格子状に溝(凹凸)を形成する。この溝により剛性基板12の表面積が増大し、剛性基板12とFRPシート11,13とを接合する際に接合強度が向上する。但し、溝は必要に応じて形成すればよく、必須ではない。【0041】一方、第2のFRPシート13の材料として、例えば厚さが0.2mmの2枚のABS樹脂フィルムと、厚さが0.1mmのガラスクロスシートを用意する。そして、2枚のABS樹脂フィルムの間にガラスクロスシートを配置し、プレス加工機により熱と圧力とを加えてガラスクロスシートとABS樹脂フィルムとを一体化して、FRPシートを形成する。このFRPシートの厚さは、例えば0.1mmとする。」
ツ 図9
[図:0001400248000011.jpg]
テ 「【0042】その後、このFRPシートを切断して、図9に示すように、剛性基板12の切欠き部に対応する大きさの第2のFRPシート13aと、平板部10aよりも一回り大きいサイズの第2のFRPシート13bとを得る。」
ト 図10
[図:0001400248000012.jpg]
ナ 「【0043】次に、図10に示すように、予備成形品20と剛性基板12とを重ね合わせる。また、剛性基板12の切欠き部に第2のFRPシート13aを配置し、予備成形品20及び剛性基板12の上に第2のFRPシート13bを配置する。【0044】そして、プレス加工機により加熱しつつ圧力を加える第2のプレス加工工程を実施して、予備成形品20と剛性基板12と第2のFRPシート13a,13bとを一体化し成型品とする。続きを表示(全15行)【0045】その後、プレス加工機から成型品を取り外し、機械加工によりバリやその他の余分な部分を除去する。このようにして、図1,図2に例示した筐体10の製造が完了する。【0046】本実施形態に係る筐体10は、第1のFRPシート11と剛性基板12と第2のFRPシート13とを一体化して形成されているので、薄く且つ軽量であるとともに、十分な強度を備えている。【0047】また、本実施形態に係る筐体10は、筐体10内に導電性インクにより形成されたアンテナ14を内蔵している。これにより、電波を送受信する機能を備えた電子機器のより一層の薄型化が可能である。【0048】この場合、第1のFRPシート11及び第2のFRPシート13はいずれも非導電性の繊維の集合体に樹脂を含浸させて形成されているので、筐体10が電波を遮ることはなく、良好な無線通信が可能である。【0049】導電性インクで導電パターンを形成するためには、高温で熱処理することが必要となる。本実施形態では、耐熱性が高い第1のFRPシート11の表面に導電性インクで導電パターンを形成した後、第1のFRPシート11の外面側に第2のFRPシート13を接合している。このため、筐体10の外装面を形成する第2のFRPシート13の樹脂には第1のFRPシート11の樹脂ほど高い耐熱性は要求されず、綺麗な表面状態が得られる樹脂を選択することができる。これにより、筐体10の外観を綺麗に保つことができる。」
(2)引用文献Bの記載
原査定の引用文献B(特開2010-263147号公報)には、以下の記載がある。
「【技術分野】【0001】本発明は、携帯電話やPDA(Pasonal Digital Assistant)、ノートPC(Pasonal Computer)など小型電子機器の外装用に用いられる、電子機器用筐体に関する。【背景技術】続きを表示(全32行)【0002】近年、各種電子機器の小型・軽量化により、それら機器の筐体自体も、肉厚が薄く、軽量でありながら高い強度をもつ部材を用いて作製することが必須となっている。【0003】そういった薄肉・高剛性の筐体用部材として、従来より(1)ガラス繊維や炭素繊維を充填した、繊維強化熱可塑性樹脂を成形した部材(2)アルミニウム合金やマグネシウム合金の圧延板をプレス加工した部材(3)アルミニウム合金やマグネシウム合金を成形(ダイカストモールド)した部材(4)金属板や繊維強化樹脂板と熱可塑性樹脂と一体成形した部材などが用いられてきた。【0004】これら、薄肉・高剛性の筐体用部材例のうち、特に、軽量の板状部材を作製可能の点から、(4)の部材のうちの、とくに繊維強化樹脂板と熱可塑性樹脂と一体成形した部材が注目されている。【0005】その繊維強化樹脂板と熱可塑性樹脂と一体成形した部材においては、繊維強化樹脂板中に充填する繊維として、通常、ガラス繊維や炭素繊維を用い、その混入繊維の形態として、長短の切断繊維を利用する切断繊維充填樹脂板を使用するケースと、それらの長尺繊維を布として利用する布状の繊維充填樹脂板を使用するケースとがある。また、後者においては、繊維を一方向のみに並列配置して樹脂で板状に固化する方式(並列繊維方式)と、縦糸と横糸とで織って織布として樹脂で板状に固化する方式(織布繊維方式)とがある。【先行技術文献】【特許文献】【0006】【特許文献1】特開平05-68297号公報【特許文献2】特開平07-60777号公報【特許文献3】特開2005-317942号公報【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0007】繊維強化樹脂板と熱可塑性樹脂と一体成形した筐体用部材に関し、繊維強化樹脂板として切断繊維を充填した樹脂板は、布状繊維を充填した樹脂板に比べ、剛性が約2分の一と劣っているのが現実である。また、布状繊維充填樹脂板のうちでは、並列繊維方式は強度特性の異方性が著しいこと、つまり並列繊維に平行方向が直交方向に比べ切断強度が大幅に劣ることが生じる。他方、織布繊維方式は、縦横方向での強度異方性が少なく、安定した部材として用いることができる。【0008】しかし、織布繊維を用い、これにマトリックスとなる樹脂(これには、通常、エポキシやフェノールなどいわゆる熱可塑性樹脂を用いる例が多い)で熱硬化させて繊維強化樹脂板とする工程において、織布の縦糸と横糸とで両者の重なり合っていない個所においてマトリックス樹脂が収縮硬化し、凹み(ヒケ)が生じ、逆に糸が重なり合った個所が連続して、点々と突起するようになる。(中略)【0014】そこで、本発明の解決しようとする課題は、炭素繊維やガラス繊維などの織布を利用いた繊維強化樹脂板からなる部材を用いた電子機器筐体であって、その部材を、例えば上蓋などの意匠面などに適用するとき、その部材が薄肉軽量、高剛性で、かつその表面が滑らかであって塗装密着性に優れているといった特徴を有する電子機器筐体を提供することにある。」
第6 対比・判断
1 本願発明1
(1)対比
本願発明1と、引用発明とを対比する。
ア 引用発明において,「携帯型電子機器である携帯電話1の外装部品を成す上ケースユニット」「は,外装本体を成す上ケース11と,ICのベアチップ21,チップ抵抗22等の各種電子部品と,回路30とを備えており,上ケース11は,携帯電話1を外装するものであり,絶縁性樹脂により成形されており,ベアチップ21及びチップ抵抗22は,電極21a及び電極22aが上ケース11の内側面側に露出する状態で,上ケース11内に埋め込まれており,」「下ケース82は,携帯電話1を外装するものであり,上ケース11と同じ絶縁性樹脂により成形されており,上ケース11に装着されるものであり,回路基板80a,80bは,各種電子部品が実装されており,上ケース11の内側面と下ケース82の内側面とに囲われたスペースに収納される」とされている。
ここで,引用発明の「ICのベアチップ21,チップ抵抗22等の各種電子部品」は,本願発明1の「電子回路」に相当する。
また,引用発明の「携帯型電子機器である携帯電話1の外装部品を成す上ケースユニット」は,「ICのベアチップ21,チップ抵抗22等の各種電子部品と,回路30とを備えて」いるから,引用発明の「上ケースユニット」は,本願発明1の「電子回路を有するカバー」に相当するといえる。
さらに,引用発明の「上ケース11」と「下ケース82」は,どちらも,「携帯電話1を外装するものであり,」「下ケース82」が「上ケース11に装着され」て,「上ケース11の内側面と下ケース82の内側面とに囲われたスペースに」「各種電子部品が実装され」た「回路基板80a,80b」が「収納され」,「携帯電話1」の筐体として機能しているといえから,引用発明の「上ケース11」は,「下ケース82」と共に,本願発明1の「電子機器筐体」に対応するといえる。
したがって,本願発明1と,引用発明とは,「電子回路を有するカバーで構成される電子機器筐体であ」る点で共通しているといえる。
イ 引用発明において,「上ケース11は,携帯電話1を外装するものであり,絶縁性樹脂により成形されており,ベアチップ21及びチップ抵抗22は,電極21a及び電極22aが上ケース11の内側面側に露出する状態で,上ケース11内に埋め込まれて」いるとされている。
ここで,引用発明において,「ベアチップ21及びチップ抵抗22」が,「上ケース11内に埋め込まれて」いることは,本願発明1において,」「電子回路」が「カバーに内挿されていること」に対応するといえる。(なお,「内挿」という用語は,一般に「内部に挿入されている」こととして解釈可能であり,筐体の分野おける専門用語として,確立したものではない。本願明細書の段落0022には,「ここで言う,電子デバイスが「カバーに内挿されている」とは,図1(a)に示すように電子デバイスがカバーを構成する材料に覆われて封止されている状態であり,カバーを構成する材料の内側に形成される空隙部に電子デバイスが存在することを意味する。このとき,図1(b)に示すように少なくとも電子デバイスの上下がカバーを構成する材料と接していることが好ましく,図1(c)に示すように電子デバイス全体(表面)がカバーを構成する材料に接していることがさらに好ましい。」という記載があるものの,当該記載は,電子デバイスの全てがカバーを構成する材料に覆われて封止されている状態に限られず,電子デバイスの一部がカバーを構成する材料に覆われて封止されている状態も含まれると解釈可能となっている。なお,図1(a)~図1(c)は単なる例示であると認められる。)
また,引用発明の「上ケース11は,」「絶縁性樹脂により成形されて」いるから,本願発明1の「カバー」と,引用発明の「上ケース11」とは,「樹脂からなるカバー」である点で共通しているといえる。
したがって,本願発明1における,「前記電子回路が、ガラス繊維に熱硬化性樹脂を含侵させてなるガラス繊維強化樹脂プリプレグによるプリフォーム中に前記電子回路を配置し、さらに炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させてなる炭素繊維強化樹脂プリプレグをその両表面に配置したプリフォームを成形して得られる繊維強化熱硬化性樹脂からなるカバーに内挿されていること」と,引用発明における,「ベアチップ21及びチップ抵抗22」が,「絶縁性樹脂により成形されて」いる「上ケース11内に埋め込まれて」いることとは,「前記電子回路」が,「樹脂からなるカバーに内挿されている」点で共通するといえる。
しかし,本願発明1の「カバー」は「ガラス繊維に熱硬化性樹脂を含侵させてなるガラス繊維強化樹脂プリプレグによるプリフォーム中に前記電子回路を配置し、さらに炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させてなる炭素繊維強化樹脂プリプレグをその両表面に配置したプリフォームを成形して得られる繊維強化熱硬化性樹脂からなる」ものであるのに対して,引用発明の上ケース11(カバー)は,このような樹脂ではない点で相違している。
(2)一致点
本願発明1と、引用発明とは、以下の点で一致する。
「電子回路を有するカバーで構成される電子機器筐体であって,前記電子回路が,樹脂からなるカバーに内挿されている電子機器筐体。」
(3)相違点
本願発明1と、引用発明とは、以下の点で相違する。
本願発明1の「カバー」は「ガラス繊維に熱硬化性樹脂を含侵させてなるガラス繊維強化樹脂プリプレグによるプリフォーム中に前記電子回路を配置し、さらに炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させてなる炭素繊維強化樹脂プリプレグをその両表面に配置したプリフォームを成形して得られる繊維強化熱硬化性樹脂からなる」ものであるのに対して,引用発明の上ケース11(カバー)は,このような樹脂ではない点
(4)相違点について
上記相違点について検討する。
本願発明1の相違点に係る「ガラス繊維に熱硬化性樹脂を含侵させてなるガラス繊維強化樹脂プリプレグによるプリフォーム中に前記電子回路を配置し、さらに炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させてなる炭素繊維強化樹脂プリプレグをその両表面に配置したプリフォームを成形して得られる繊維強化熱硬化性樹脂からなる」カバーの構成は、引用文献1、2、AおよびBには、いずれも、記載も示唆もなく、当該構成が本願優先日前に周知であったとも認められない。
したがって、本願発明の相違点に係る「ガラス繊維に熱硬化性樹脂を含侵させてなるガラス繊維強化樹脂プリプレグによるプリフォーム中に前記電子回路を配置し、さらに炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させてなる炭素繊維強化樹脂プリプレグをその両表面に配置したプリフォームを成形して得られる繊維強化熱硬化性樹脂からなる」カバーの構成は、引用発明ならびに引用文献2、引用文献Aおよび引用文献B記載の技術事項に基づいて、当業者が想到し得たものではない。
(5)小括
以上から、本願発明1は、引用発明ならびに引用文献2、引用文献Aおよび引用文献B記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。
2 本願発明2および3
本願発明2および3は、いずれも、本願発明1を減縮したものであり、本願発明1と同じ構成を備えているから、上記1で述べたとおり、本願発明1と同じ理由により、引用発明ならびに引用文献2、引用文献Aおよび引用文献B記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。
3 本願発明4
本願発明4は、本願発明1のカテゴリのみを、「電子機器筐体」の発明から、それぞれ、「情報処理装置」の発明、および、「電子機器筐体の製造方法」の発明へと変更したものであり、本願発明1と同様の構成を備えているから、上記1で述べたとおり、本願発明1と同様の理由により、引用発明ならびに引用文献2、引用文献Aおよび引用文献B記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。
第7 原査定についての判断
1 本願発明1
令和5年5月24日提出の手続補正書により、本願発明1は、「カバー」について、「ガラス繊維に熱硬化性樹脂を含侵させてなるガラス繊維強化樹脂プリプレグによるプリフォーム中に前記電子回路を配置し、さらに炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させてなる炭素繊維強化樹脂プリプレグをその両表面に配置したプリフォームを成形して得られる繊維強化熱硬化性樹脂からなる」という技術的限定を有するものとなった。当該技術的限定は、原査定における引用文献A、引用文献Bおよび引用文献C(当審拒絶理由の引用文献2)には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1は、当業者であっても、原査定における引用文献AないしCに基づいて容易に発明できたものではない。
2 本願発明2および3
本願発明2および3は、いずれも、本願発明1を減縮したものであり、本願発明1と同じ構成を備えているから、上記1で述べたとおり、本願発明1と同じ理由により、本願発明2および3は、原査定における引用文献AないしCに基づいて容易に発明できたものではない。
3 本願発明4
本願発明4は、本願発明1のカテゴリのみを、「電子機器筐体」の発明から、それぞれ、「情報処理装置」の発明、および、「電子機器筐体の製造方法」の発明へと変更したものであり、本願発明1と同様の構成を備えているから、上記1で述べたとおり、本願発明1と同様の理由により、本願発明4は、原査定における引用文献AないしCに基づいて容易に発明できたものではない。
4 小括
以上から、原査定を維持することはできない。
第8 当審拒絶理由についての判断
上記第6で述べたように,本願発明1ないし4は、いずれも、引用発明および引用文献2記載の技術事項に基づいて、当業者が想到し得たものではないから、当審拒絶理由通知における進歩性欠如の拒絶理由は解消した。
第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-015127