商標拒絶査定不服審判
2022-014077
カルイザワコーゲンキョーカイ、コーゲンキョーカイ
- 審判番号
- 2022-014077
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2021-121384
- 請求日
- 2022年08月23日
- 審決日
- 2023年07月12日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社星野リゾート
- 【請求人代理人】中島 慧
- 【請求人代理人】羽鳥 貴広
- 【請求人代理人】緒方 隼一
- 審判長/審判官
- 審判長 豊瀬 京太郎
- 審判官 板谷 玲子
- 審判官 白鳥 幹周
- 分類
- T18 .13 -WY (W45) / T18 .17 -WY (W45)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2021-121384拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願商標は、登録すべきものとする。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和3年9月30日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 9月30日 :手続補正書の提出
令和3年11月19日付け:拒絶理由通知書
令和4年 3月29日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 5月16日付け:拒絶査定
令和4年 8月23日 :審判請求書の提出
令和5年 3月28日付け:審尋
令和5年 5月 9日 :回答書の提出
2 本願商標
本願商標は、「軽井沢高原教会」の文字を標準文字で表してなり、第45類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として登録出願されたものである。
本願の指定役務は、原審における上記1の手続補正書により、最終的に第45類「婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」となったものである。
3 原査定の拒絶の理由(要旨)
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、「軽井沢高原教会」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「軽井沢」は「長野県東部、北佐久郡にある町。」を、「高原」は「海面からかなり高い位置にあって、平らな表面をもち、比較的起伏が小さく、谷の発達があまり顕著でない高地。」を、「教会」は「キリスト教徒の礼拝祭儀および宗教的会合のための建物。」を、それぞれ意味し、全体としては「長野県の軽井沢町の高原にある教会」程度を認識させるものである。
また、軽井沢町には高原が存在し、かつ、教会において一般に婚礼や結婚式等が行われている。
そうすると、本願商標をその指定役務に使用した場合、取引者及び需要者は、長野県の軽井沢町の高原にある教会に係る役務であることを理解するにとどまるものであるから、本願商標は、単に役務の質、特徴を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて
出願人の提出した証左をもってしては、本願商標が、その使用の結果、出願人の業務に係る役務「婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」を表示するものであると、需要者が認識することができるものになっているとはいえない。
したがって、出願人の主張はいずれも採用できず、本願商標は商標法第3条第2項の要件を具備するものとはいえない。
4 当審における審尋
当審において、令和5年3月28日付け審尋により、別掲1及び別掲2に掲げる事実を提示した上で、本願商標が、その指定役務との関係において、商標法第3条第1項第3号に該当し、また、同条第2項に規定する要件を具備しない旨の暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、請求人に対し、意見を求めた。
5 審尋に対する請求人の意見(要旨)
請求人は、上記4の審尋に対し、令和5年5月9日に回答書を提出し、要旨以下のとおりの意見を述べた。
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
ア 本願商標は「軽井沢高原教会」の標準文字を表してなるところ、その構成文字は同書同大で外観上もまとまりよく一体的に表されたものであり、構成文字の全体から生じる「カルイザワコウゲンキョウカイ」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものであるから、本願商標は、切れ目のないひとまとまりの言葉として需要者、取引者に認識され、請求人が約50年もの長きにわたって所有してきた長野県北佐久郡軽井沢町にあるプロテスタントの教会を表したものと理解されるというべきである。
イ 審尋において審判体も認めているとおり、「軽井沢高原」は正式な地名として地図等で使用されているものではない。
ウ 本願商標「軽井沢高原教会」における「教会」の文字部分は、本願の指定役務「婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」を表すものではなく、役務の提供の場所や質等を普通に用いられる方法で表示するものとはなり得ない。
エ 以上のことからすると、本願商標は、その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ではなく、商標法第3条第1項第3号に該当しない。
(2)商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて
ア 請求人が「軽井沢高原教会」の文字を用いて婚礼に関する業務を行う教会(以下「本件教会」という。)における年間挙式取扱組数は、全国の1事業所当たりの年間挙式等取扱件数を大きく上回るものであり、かつ、大手の婚礼事業者や著名な結婚式場における年間挙式等取扱組数を凌駕していることに加え、本願の指定役務に関する広告等において本願商標が数多く使用されてきたことから、本願の指定役務に係る本願商標の使用数量は多いといえる。
イ 役務に係る標章の「使用」には、広告的使用が含まれるため、全国を販売エリアとする情報誌や全国の需要者が閲覧できるウェブページにおいて数多くの広告を掲載してきたことからすれば、本願の指定役務に関する広告等において、本願商標は全国的に使用されてきたといえる。
ウ 商標法第3条第2項該当性に係る判断において、需要者の認識度を客観的に示す証拠は必須のものとされていない。
エ 過去、数多くのテレビ番組や雑誌等において本件教会や本件教会における結婚式について紹介されており、このことは、本件教会や本件教会における結婚式の提供、本願商標が全国的に知られていたことを示すものである。
オ 以上のことからすると、本願商標は、その指定役務との関係で、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるものであるといえ、商標法第3条第2項の要件を具備するといえる。
6 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、「軽井沢高原教会」の文字を標準文字で表してなるものである。
そして、その構成中「軽井沢高原」の文字は、正式な地名として地図等に用いられている事実は認められないものの、別掲1のとおり、「軽井沢周辺の高原地域(高原としての軽井沢周辺地域)」又は「高原にある観光地としての軽井沢地域」、すなわち「軽井沢及びその周辺地域」を指称する語として、広く一般的に使用されているものである。
また、同構成中の「教会」の文字は、本願の指定役務「婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」との関係において、その施設の種類を表しているといえるものである。
そうすると、本願商標を、その指定役務に使用したときは、これに接する取引者、需要者において、「軽井沢及びその周辺地域にある教会」ほどの意味合いが看取され、それが「軽井沢及びその周辺地域にある教会に係る役務」であるという、役務の質を表したものと容易に理解、認識されるというべきであるから、本願商標は、その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて
請求人は、令和4年8月23日付け審判請求書及び令和5年5月9日提出の回答書において、本願商標は、その指定役務の分野において使用された結果、需要者が請求人の業務に係る役務であることを認識することができるに至ったものである旨主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第161号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。また、表記に当たっては「甲○」(「○」部分は数字)のように省略して記載する。なお、甲79の14、甲80及び甲82は、欠番である。)を提出しているところ、上記証拠及び請求人の主張(令和4年3月29日付け意見書における主張を含む)並びに職権による調査によれば、以下のとおりである。
ア 請求人は、現在は請求人の子会社である「株式会社ホライズン・ホテルズ」が所有する、長野県北佐久郡軽井沢町所在の教会において、昭和49年から現在に至るまで約50年、「軽井沢高原教会」の文字を用いて、婚礼に関する役務(西洋式ウェディングの役務)を提供しており(請求人の主張、甲2、甲14及び甲16)、また、同教会の公式ウェブページや請求人の業務(同教会を婚礼のための施設として提供すること)に係る取引書類、パンフレットなどにおいて「軽井沢高原教会」の文字を使用している(甲24、甲25、甲30ないし甲33、甲35)。
イ 本件教会は、長野県北佐久郡軽井沢町にのみ存在するものであるが、本件教会で挙式をした者には、同町近郊地域のみならず、全国40都道府県に居所を有する者が含まれている(甲5)。
ウ 直近10年(平成24年ないし令和3年)では、コロナ感染症拡大防止による外出制限等が求められた令和2年を除き、本件教会において、年1千組以上の式が挙げられており、年1億円前後の挙式料が収められている(甲6)。なお、平成28年から令和2年までの各年においては、1千前後の事業所において、毎年約13万件ないし17万件の挙式又は披露宴が取り扱われており、1事業所当たりの年間の挙式等取扱い件数は約140ないし150件程度である(甲110)。また、同年における大手の婚礼事業者による国内での挙式等取扱い件数は、多いところでも1施設当たり4百件前後である(甲112ないし甲117)。さらに、令和3年の本件教会における挙式取扱い件数は1,597件(甲6)であるが、同年における国内での挙式等の取扱い件数1位のホテル(ホテル雅叙園東京)における当該件数は1,226件である(甲118の2)。
エ 請求人は、本件教会において、夏の1ヶ月間及び冬の1ヶ月間、未婚のカップル向けに夜間イベントを実施しており、2012年(平成24年)ないし2019年(令和元年)(2017年(平成29年)を除く。)では年間平均4万人以上の人々が訪れた(甲8)。
オ 請求人は、以下のとおり、本件教会に関する、又は、本件教会に関する事項を含む、広告宣伝活動を行った。
(ア)平成22年11月から令和3年12月までのほぼ毎月、首都70km圏内を往来する在来線(電車)の車内において、広告を掲示した(甲9ないし甲11)。その期間における年間平均出稿額は約3,400万円である(甲11)。
(イ)平成5年から令和4年にかけて、株式会社リクルート発行の雑誌「ゼクシィ」を始めとする複数の雑誌において、広告を継続的に掲載した(甲36ないし甲53、甲56ないし甲69)。出稿費用は、平成21年から令和4年までの上記「ゼクシィ」に係るものだけでも約8億3千万円であり(甲54)、また、同「ゼクシィ」の平成25年における1ヶ月当たりの発行部数は約30万部であって、その販売地域は全国に及ぶものが含まれている(甲55、甲119)。
(ウ)平成14年から令和4年にかけて、「ゼクシィnet」「マイナビウェディング」など5つの結婚式関連情報ウェブサイトにおいて、広告を継続的に掲載した(甲72ないし甲78)。出稿費用は、平成21年から令和4年までの、3つのウェブサイトに係るものだけでも約1億3千万円である(甲54、甲79及び甲81)。
(エ)平成16年から令和4年にかけて、「Yahoo」や「Google」のリスティング広告として広告を掲載した(請求人の主張)。広告費用は平成27年1月から令和4年7月まででも約8百万円である(甲83)。
(オ)平成20年から令和3年にかけて、株式会社リクルートが主催する結婚式検討者向けのイベントに合計31回参加し、宣伝した(甲53、甲91ないし甲95)。最近の7回分のイベントでみると1回当たり千人ないし3千人程度の来場者であった(請求人の主張、甲84ないし甲90)。
カ 請求人以外の者が、新聞や書籍、雑誌、ウェブページ及びテレビ番組において、本件教会を紹介している事例が複数あり、その中には全国で販売、放送等されているものが含まれている(甲28、甲29、甲96ないし甲101、甲123ないし甲160)。
キ 「軽井沢高原協会」の文字からなる商標を、本願の指定役務について、請求人以外の者が現在使用しており、又は、過去に使用していたという事例は見当たらない(請求人の主張、職権による調査)。
ク 上記アないしキによれば、請求人は、約50年の長きにわたり、長野県北佐久郡軽井沢町において、本願商標又はこれと同一性を損なわないと考えられる商標を、婚礼に関する役務について使用しており、また、本件教会に関して、多額の費用を投じ、長期継続的に全国規模で広告宣伝を行ってきたものといえる。
そして、他人が本願商標をその指定役務について現在使用しており、又は、過去に使用していたという事実は認められないものである。
また、本件教会において取り扱った挙式件数は、全体の件数に占める割合がさほど多いとはいえないものの、1事業所(1施設)当たりの挙式件数としては、平均的な事業者のものと比較すれば約7倍ないし8倍であって、大手婚礼事業者や有名なホテルのものと比較しても多いといえるものであり、本件教会が長野県北佐久郡軽井沢町という必ずしも人口の多いとはいえない地域にあることも踏まえて考えれば、本件教会における挙式件数は相当多いといえるものである。
さらに、本件教会は、全国で販売、放送等されているものを含む、新聞や書籍、雑誌、ウェブページ及びテレビ番組において度々紹介されており、「軽井沢高原教会クリスマスキャンドルナイト 1921年より歴史を重ねる軽井沢高原教会で、例年12月に開催。・・・日により多彩な催しを実施」(甲148)、「挙式などの催事以外は自由に見学ができる「軽井沢高原教会」」(甲149)、「毎週日曜13:30~の日曜ゴスペル礼拝や「キャンドルナイト」は、誰でも自由に参加できる。」(甲151)など、婚礼のための施設としてのみならず、軽井沢地域における観光スポットしても広く紹介されているものである。
以上のことからすると、本願商標は、その指定役務との関係において、我が国の需要者の間において、広く認識されているに至っているということができる。
したがって、本願商標は、請求人による長期継続的な使用の結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるものになっているといえ、商標法第3条第2項の要件を具備するものといえる。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものの、同条第2項に規定する要件を具備するものであり、商標登録を受けることができるものであるから、原査定は取消しを免れない。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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