商標拒絶査定不服審判
2022-013901
クブンアパート、クブン
- 審判番号
- 2022-013901
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2020-149336
- 請求日
- 2022年09月06日
- 審決日
- 2024年03月19日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ネクサスエージェント
- 【請求人代理人】小笠原 匡隆
- 【請求人代理人】青木 孝博
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 渡邉 あおい
- 審判官 茂木 祐輔
- 分類
- T18 .13 -Z (W36)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2020-149336拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は、「区分アパート」の文字を標準文字で表してなり、第36類「建物における中古物件の買い取り価格の評価及びこれらに関する情報の提供,建物の売買の代理若しくは媒介又はこれらに関する情報の提供,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,建物又は土地の情報の提供,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介」を指定役務として、令和2年12月3日に登録出願されたものである。
本願は、令和3年8月30日付けで拒絶理由の通知がされ、同年10月14日付けで意見書が提出されたが、同4年6月1日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年9月6日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、「区分アパート」の文字を標準文字で表してなるところ、構成中の「区分」は、「区分け」の意味を、「アパート」は、「集合住宅」を意味する語であるから、全体として、「区分けされたアパート」といった意味合いを認識させるものである。そして、指定役務に関連する分野においては、一棟全体のマンションやアパートについて、「一棟マンション」、「一棟アパート」の文字が使用され、一棟のうちの一部屋など区分された部分のマンションやアパート部分について、「区分マンション」、「区分アパート」の文字が使用されている実情がある。そうすると、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者・需要者は、「区分されたアパート部分に係る役務であること、すなわち役務の質(内容)を表示したものと認識するにとどまる。したがって、本願商標は、役務の質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審における審尋
当審において、令和5年11月22日付け審尋により、別掲に掲げる事実を記載した上で、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとの暫定的見解を示し、期間を指定した上で請求人に対し意見を求めた。
第4 証拠調べ通知書に対する請求人の意見
請求人は、前記第3の証拠調べ通知書に対し、令和6年1月9日付けで回答書を提出し、要旨以下のとおり意見を述べた。
1 本願商標の語義及び使用状況について
以下の理由により、「アパート」と「マンション」に関する認定は妥当ではない。
(1)一般的に、アパートとは木造・軽景鉄骨造で2から3階建てまでの共同住宅を指し、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造で3階建て以上の共同住宅をマンションと称呼している例が多く、これが一般的な捉え方であって、また、アパートと呼ばれる建物の多くは、その構造から、マンションに比べて、法定耐用年数が短いのも特徴の一つである。
(2)「建物の区分所有等に関する法律」(以下「区分所有法」という。)は、1962年に制定された民法の特別法であり、その立法趣旨は、区分所有建物(分譲マンションのように独立した各部分から構成される建物のこと)が通常の建物に比べて所有関係が複雑であって、所有者相互の利害関係を調整する必要性が高く、民法の特例が必要となったために立法されたものであり、その後、分譲マンションが急速に普及したことに伴って生じた諸問題点に対応して1983年に改正された経緯があるものである。同法は、そもそも法定耐用年数の長いマンションを基準に定めたものであって、アパートを想定したものではない。
(3)区分所有法と関連する法律で、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」(以下「マンション建替法」という。)及び「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(以下「マンション管理適正化法」という。)が存在し、「マンション」の用語の意義を定めた規定があり、そもそも二以上の区分所有者が存する建物は「マンション」であって、「アパート」ではあり得ないことが定義として明記されている。言い換えれば、一つ一つの部屋の所有権という概念の無いアパートという言葉に区分という言葉を付記することはあり得ない。
(4)よって、インターネット上で「区分アパート」が数点存在するも、具体的な例はなく、一般的な言葉とはいえず、あくまでウェブサイト閲覧者や需要者に対して曖昧な意味を醸出するにすぎず、暗示的でしかない。
2 商標法第3条第1項第3号の解釈
商標法第3条第1項第3号では、ある語が商品や役務の用途、品質(質)等を表示する用語と判断されるには業界において取引上普通に使用されている事実証左がなければならず、単に暗示的であるという程度で、成語として使用されることもない語まで拒絶できるとする趣旨ではない。商標採択者は、その商標が需要者に商品の機能、性能等を容易に連想させる可能性があって宣伝・広告的な機能があり、さらに、需要者、取引者層に記憶されやすいものである商標を高く評価して、そのような暗示的な商標を好んで選択する傾向にある。品質又は質表示語として使用されていない言葉は、たとえ品質又は質を暗示、連想する言葉であっても、その登録を拒絶することは、商標採択者の選択の可能性を奪うことになる。こうした観点から自他役務の識別力の有無を判断すべきである。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号について
商標法第3条第1項第3号が、その役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格又は提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標について商標登録の要件を欠くと規定しているのは、このような商標は、指定役務との関係で、その役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他役務の識別力を欠くものであることによるものと解される。
そうすると、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、本願商標がその指定役務との関係で役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途その他の特性を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標がその指定役務に使用された場合に、将来を含め、指定役務の取引者、需要者によって役務の上記特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される(平成26年(行ケ)第10056号判決)。
2 本願商標の語義及び使用状況について
(1)本願商標は、「区分アパート」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「区分」の文字は、「区別して分けること。また、その分けたそれぞれの仕切り。区分け。「土地を-する」」等の意味を、「アパート」の文字は、「一棟の建築物の内部を複数の独立の住居に仕切ったもの。集合住宅。」等の意味を、それぞれ有する語であり(いずれも「広辞苑第7版」)、上記「土地を-する」の例に倣えば、全体として、「区分(区分け)されたアパート」ほどの意味合いが生じるものである。
また、「区分」の語と「アパート」の語を結合した「区分アパート」の文字は、別掲(1)のとおり、その使用状況を確認できるところ、これによると、一棟丸ごと購入して所有するアパート(一棟アパート)に対し、部屋単位など区分けして購入、所有するアパートについて、「区分アパート」と称する実情がみられる。
(2)別掲(1)の事例中、「区分アパート」の記載と併せて、「区分マンション」が同内容のものとして並列に記載されている事例も見られるところ、「アパート」と、「中高層の集合住宅。」を意味する「マンション」(広辞苑第七版)との関係について、別掲(2)の情報によれば、両者に明確な定義はなく、「アパート」又は「マンション」のいずれかの名称とするかは、建物の所有者等の裁量に委ねられるものであることが確認できる。
(3)区分所有法において、別掲(3)のような規定は存在するものの、アパートやマンションに関する定義や、アパートと称する建物についての区分所有を制限又は禁止するような規定は見られない。
3 商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、上記2(1)のとおり、構成文字の語義から、「区分(区分け)されたアパート」ほどの意味合いが生じるものである。また、別掲(1)の使用状況からすれば、「区分アパート」の文字は、一棟丸ごと所有するアパートに対し、「区分所有可能なアパート」を指すものとして、不動産購入や不動産投資等の場面で使用されている実情がある。
さらに、上記2(2)の事実からすれば、「アパート」と「マンション」の区別に明確な定義はなく、建物の所有者等の都合により、「アパート」に「マンション」の名前を付けることもでき、「区分アパート」の文字は、別掲(1)の事例に見られる「区分マンション」と称される区分所有可能なマンションと同内容の物件を表すものとして、使用されている実情がある。また、上記2(3)のとおり、「アパート」と称する建物についての区分所有を制限又は禁止するような規定も見られない。
以上よりすると、「区分アパート」の文字は、区分所有可能なマンション(区分マンション)と同様に、「区分けされたアパート」ほどの意味合いを理解せせるものであるから、「区分アパート」の文字よりなる本願商標を、その指定役務に使用をしても、これに接する取引者、需要者は、本願商標を「区分けされたアパート」ほどの意味合いを理解し、指定役務の取引対象となる物件を表したもの、すなわち役務の質(内容)であると認識するにとどまるというのが相当である。
してみれば、本願商標は、役務の質(内容)を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であるとともに、本願商標がその指定役務に使用された場合に、将来を含め、指定役務の取引者、需要者によって役務の質(内容)を表示したものと一般に認識されるものというべきである。
加えて、本願商標は、上記第1で述べたとおり標準文字で表されたものであるから、普通に用いられる方法で表されたものである。
したがって、本願商標は、役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
4 請求人の主張について
請求人は、上記第4 1(1)ないし(3)のとおり、「アパート」及び「マンション」と称される建物の構造的特徴や、区分所有法の制定趣旨及び改正の経緯等、マンション建替法及びマンション管理適正化法における「マンション」の用語に関する規定等を挙げ、「アパート」に「区分」を付記することはなく、「区分アパート」の文字は、需要者等に対して曖昧な意味を醸出するものであって、暗示的である旨主張する(同(4))。
しかしながら、上記2のとおり、「区分アパート」の文字は、「区分マンション」と同内容のものとして取引上使用されており、「区分アパート」の文字のみが曖昧に受け止められているといった様子は見られない。
また、上記2(2)及び(3)のとおり、「アパート」という名称にするか「マンション」という名称にするかについての厳密な定義や禁止規定等はみられず、区分所有可能な建物に「アパート」の名称を用いることについての制約があるものとみることはできない。なお、マンション建替法及びマンション管理適正化法における用語の意義を定めた規定(ともに第2条)においては、いずれも「この法律において、」と記載されているように、それぞれの法律内で定める用語であって、その定義の範囲もそれぞれの法律で異なるものである。
さらに、例えば別掲(1)ウのウェブサイトにおける「初心者 始め方」、「初心者にはとっかかりやすいかとは思います。」といった記載や、同エのウェブサイトにおける「【年収500万円クラスの会社員へのおすすめ】」の記載があることや、別掲(2)アないしウのウェブサイトが広く一般の者に利用されるものであること等からもいえるように、本願の指定役務の需要者は、一般の消費者も含まれると解されるところ、こうした需要者が、前記したような各法令の詳細な情報に精通しているとは限らないといえることからすれば、たとえ区分所有法が分譲マンションを想定して制定等されたという背景があることや、マンション建替法等に「マンション」の用語に関する規定があるとしても、それらの事情をもって、本願の指定役務の需要者が「区分アパート」の文字から「区分けされたアパート」ほどの意味合いを理解できないということはできない。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。
5 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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