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商標拒絶査定不服審判

2022-013283

審判番号
2022-013283
法域
商標
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
商願2020-118451
請求日
2022年08月24日
審決日
2023年07月04日
公報発行日
2023年09月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ローランド株式会社
  • 【請求人代理人】塚田 美佳子
  • 【請求人代理人】山田 薫
審判長/審判官
  • 審判長 矢澤 一幸
  • 審判官 小田 昌子
  • 審判官 阿曾 裕樹
分類
T18 .13 -Z (W15) / T18 .17 -Z (W15)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法3条1項3号商標法3条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第3条第2項、商標法第3条第1項第3号、商標法第5条第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

商願2020-118451拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1 本願商標及び手続の経緯 本願商標は、別掲1(1)のとおりの構成からなり、商標法第5条第4項に基づく「商標の詳細な説明」を願書記載のとおりに記載して、第15類「電子楽器,ドラムマシン」を指定商品として、令和2年9月25日に位置商標として登録出願されたものである。 原審では、令和3年11月19日付けで拒絶理由の通知、同年12月23日受付で意見書及び手続補正書の提出、これに対して同4年5月16日付けで拒絶査定されたもので、これに対して同年8月24日に本件拒絶査定不服審判が請求され、同5年3月10日付けで上申書が、同年5月12日受付で回答書が、同月26日受付で上申書が提出されている。 本願商標の「商標の詳細な説明」は、原審における手続補正書により、別掲1(2)のとおりに補正された。 2 原査定の拒絶の理由(要旨) 本願商標は、別掲1(1)のとおりの構成からなる位置商標であり、電子楽器の操作盤上の手前右に横一列に位置し、奥側と手前側で高低差があり、その境目に、小さな円柱が配されている16個の赤色、オレンジ色、黄色、白色のボタンの立体的形状からなることが把握できる。 ところで、本願商標の指定商品を取り扱う業界においては、商品の機能や美感を発揮させるため、又は需要者の注意を惹くための装飾等を目的として、出所を表示するための識別標識以外の種々の立体的形状、図形及び色彩が採用されている実情がある。 そして、本願商標の指定商品を取り扱う業界において、種々の色彩を付したボタンの立体的形状を配した電子楽器が一般に製造、販売されている実情がある。 そうすると、本願商標は、その指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に商品の美観や機能を発揮するために採用し得る商品の形状の一部を表したものと理解、認識するにとどまるから、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である。 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。 3 当審による審尋 当審において、令和5年3月28日付け審尋により、請求人に対し、別掲2の事例を示しつつ、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当する旨の暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、これに対する回答及び本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備する旨を主張するのであれば、その主張内容及び証拠の提出を求めた。 4 請求人の意見 本願商標は、その独創性から、本来的に自他商品識別力を十分に発揮しうるものであって、単に商品の(形状)を普通に用いられる方法で表示するものとはいえず、よって商標法第3条第1項第3号に該当しない。 仮に該当するとしても、本願商標が使用される「TR-808」が1980年に発売され、その後伝説の名機として多くの音楽雑誌・インターネット記事などで紹介された結果、本願商標は請求人の電子楽器に係るアイコニックなボタン部分の色彩の組み合わせ及び位置として、需要者等に広く知られるに至っている。 さらに、「TR-808」の復刻版として、同一の16個のボタン色彩の組み合わせ、配列及び位置を採用した「TR-08」が2017年から発売され、請求人による宣伝広告がされてきたことも、本願商標の周知、著名性の増大に寄与している。 上記の点を総合的に判断すれば、本願商標はその指定商品を取り扱う市場において識別標識としての機能を有するに至っており、商標法第3条第2項の要件を具備する。 5 当審の判断 (1)商標法第3条第1項第3号について ア 本願商標は、別掲1(1)及び(2)のとおり、(ア)長方形状のボタン(上部には小さな円形の突起がある。)を16個、横一列に並べたもので、(イ)それらのボタンを、左から4個ずつ赤色、オレンジ色、黄色、白色に彩色して、(ウ)電子楽器の操作盤上の手前右の位置に配置した位置商標である。 イ そして、本願商標の指定商品「電子楽器,ドラムマシン」のような電子機器の商品形状においては、操作盤のボタン形状を長方形状にすることや、その上部に又は近接して点状の小さな発光部を設けることは、極めて一般的に採択されているデザイン手法である。 そして、別掲2のとおり、16個の四角形状のボタンを、横一列に並べた構成部分を有する楽器(それらを操作しやすい手前位置に配置するものを含む。)が、広く流通している取引の実情もある。 さらに、操作盤のボタンを、複数の色彩で塗り分けて彩色することや、多様な色彩に発光させることで、操作性や美感を向上させることは、極めて一般的に採択されているデザイン手法である。 ウ そうすると、本願商標は、上記ア(ア)から(ウ)のいずれの構成要素(形状、色彩、位置)も、商品デザインの一部を構成するものであって、操作盤のボタン操作を容易にしつつ、商品デザインとして優れたものとなるように、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されたもの、又はそのような理由による形状の選択と予測し得る範囲のものにすぎない。 したがって、本願商標は、その指定商品について、商品の形状(装飾)又は特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。 (2)商標法第3条第2項について ア 請求人の主張並びに原審及び当審における提出証拠(令和3年12月23日付けの意見書に添付した甲第1号証から甲第41号証は、甲1-1から甲1-41と、審判請求書及び令和5年3月10日受付の上申書に添付した甲第1号証から甲第43号証は、甲2-1から甲2-37と、同年5月12日受付の回答書及び同月26日受付の上申書に添付した甲第1号証から甲第10号証を、甲3-1から甲3-10と表記する。)によれば、以下のとおりである。 (ア)請求人は、1980年にリズムマシン「TR-808」(以下「請求人商品」という。)を発売し、1983年まで販売していた(甲1-2、請求人の主張)。 また、請求人商品のサウンド、デザイン、操作感を再現したリズム・コンポーザー「TR-08」が、2017年に発売されている(甲1-9)。 (イ)上記(ア)の商品は、いずれも長方形の箱状の機体に多数のツマミやスイッチを配してなるもので、その手前右の位置には、長方形状のボタン(上部には小さな円形の部品が付いている。)を16個、横一列に並べて配置しており、それらボタンは、左から4個ずつ赤色、オレンジ色、黄色、白色に彩色されている(甲1-2、9)。 (ウ)請求人商品の国内販売台数は、約3年の販売期間(1980年11月~1983年9月)で約2千台であり、販売金額にして約3億円とされる(甲3-1)。 また、請求人商品の復刻版「TR-08」は、国内各地の楽器販売店で販売され、2017年9月の発売以降の国内販売台数は約1千4百台であり、販売金額にして約5千万円とされる(甲3-3、4)。 (エ)請求人商品は、「32種類のリズムの作成と編集が可能で、作成されたパターンを自由に組み合わせて一曲分のリズムパターンを作り出せる画期的なリズムマシンで・・・「ヒップホップ」や「テクノ」など新しい音楽ジャンルの定番リズム音として世界中のミュージシャンに愛用され、品番をもじった「ヤオヤ」という愛称で広く知られ、現代のポピュラー音楽の世界で欠かせない音源として活躍」した電子楽器として、国立科学博物館の2019年度「重要科学技術史資料(未来技術遺産)」に登録されている(甲1-2~4)。 (オ)請求人商品は、「Keyboard magazine」(2001年5月号)、「Sound&Recording」(2011年10月号、2013年4月号、2017年7月号)などの雑誌において、DJやアーティストなどの使用機器として商品の機能や使い方などを紹介する記事が掲載されている(甲1-5~8)。 (エ)請求人商品の復刻版である「TR-08」の広告宣伝として、ソーシャルメディアを通じて、商品の機能や操作方法などを紹介する動画が配信されており、その動画制作に約100万円支出されている(甲3-3)。 また、当該商品は、2018年に開催された楽器フェアや2019年のDJイベントなどにおいて、請求人のその他の商品とともに、展示されている(甲1-18、20、21)。 さらに、当該商品は、インターネット上の記事情報などにおいて、請求人商品を復刻した商品として、商品紹介記事が掲載されているが、スイッチ部の形状や色彩について特段言及する記述はない(甲1-12~17)。 イ 以上の認定事実によれば、本願商標の構成要素(形状、色彩、位置)を備える形状からなる請求人商品は、1980年に発売され、主に楽曲を制作するミュージシャンの間で使用、評価され、数年に一度程度の頻度で専門雑誌等でも紹介される電子楽器であることは把握できるとしても、その販売期間は発売後の約3年間にすぎず、その販売実績(約2千台、約3億円)も多いものではないばかりか、専門性が高い商品であることも相まって、一般の音楽愛好家が購入、使用して親しむような商品とは考えにくく、広告宣伝をするメディアや広告宣伝規模も限定的であるから、本願商標の指定商品「電子楽器,ドラムマシン」の需要者である一般の音楽愛好家を含む一般需要者の間において、その商品形状の特徴を含めて、広く認知されているとは評価しがたい。 また、請求人商品の復刻版で、2017年に発売された「TR-08」にしても、販売実績(約1千4百台、約5千万円)は請求人商品より少なく、「電子楽器」の取引市場における注目度は決して高いものとは評価し得ないばかりか、当該商品を紹介するインターネット記事等においても、本願商標に相当する形状や色彩について、請求人に係る出所識別標識たる特徴として解説、言及するような記述も特段ない。 その他、請求人からは、本願商標の指定商品に係る一般需要者の間において、本願商標の構成要素(形状、色彩、位置)が請求人に係る出所識別標識たる特徴として認知されている程度を直接かつ具体的に示す証拠は提出されていない。 そうすると、本願商標の構成要素(形状、色彩、位置)は、請求人提出の証拠によっては、請求人に係る出所識別標識たる特徴として、本願商標の指定商品「電子楽器,ドラムマシン」の需要者である一般の音楽愛好家を含む需要者の間において、広く知られるに至っていたものとは認められない。 ウ 請求人の主張について (ア)請求人は、請求人商品及び「TR-08」の販売期間・販売台数・販売金額・宣伝広告費等が一般消費財と比較した場合、極めて高い数字ではないとしても、リズムマシンという商品の特殊性が勘案されるべきで、その需要者が音楽制作者、演奏者や音楽愛好家であり、限定された需要者である点を考慮すべきである旨を主張する。 しかしながら、本願商標の商標法第3条第2項の要件充足性は、その指定商品「電子楽器,ドラムマシン」の需要者である一般の音楽愛好家を含む広い範囲の需要者層を基準として判断すべきであって、それら商品の需要者層が、請求人が主張するような限定された需要者であるというべき具体的な根拠は見いだせない。 (イ)請求人は、請求人商品のボタン部分のデザインや位置を取り入れた商品として、ドラムマシン「TR-8」、「TR-8S」及び「TR-6S」を発売し、16個のボタン色彩の組み合わせ及び配列が、手前部分の右寄りの位置にあるデザインを採用しており、また、Tシャツ、スニーカー、特設サイトなどを通じて、「赤色、オレンジ色、黄色、白色」をイメージカラーとする宣伝広告活動を行っている旨を主張する。 しかしながら、商標法第3条第2項の要件を具備するかどうかは、本願商標と同一の使用商標を前提として判断すべきであるところ、本願商標は、上記(1)のとおり、(ア)長方形状のボタン(上部には小さな円形の突起がある。)を16個、横一列に並べたもので、(イ)それらボタンを、左から4個ずつ赤色、オレンジ色、黄色、白色に彩色して、(ウ)電子楽器の操作盤上の手前右の位置に配置した位置商標であって、色彩のみからなる商標ではない。 そうすると、請求人が主張するイメージカラーに関する広告宣伝活動は、位置商標である本願商標とは客体が相違し、同一の商標に係るものではないから、本願商標の商標法第3条第2項の要件充足性の判断の直接の根拠となるものではない。 なお、請求人が援用する商品は、ボタンの形状が本願商標とは異なるもので、また、ボタン部が発光する商品であって、その色彩は容易に変更できるから、常に本願商標と同様の色彩の配置とはならない。 エ 以上によれば、本願商標は、請求人提出の証拠によっては、請求人により使用された結果、需要者が何人(請求人)かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとはいえないから、商標法第3条第2項の要件を具備しない。 (3)まとめ 以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、また、請求人による使用実績によっては、同法第3条第2項の要件を具備しない。 よって、結論のとおり審決する。

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