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特許拒絶査定不服審判

2022-012837

最良の乾燥性能及びスタイリング性能を達成するためにユーザを補助するブラシ、ヘアドライヤー、及びクライアントデバイスを含むシステム

審判番号
2022-012837
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-516800外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年08月16日
審決日
2024年09月02日
公報発行日
2025年02月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A45D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-516800号「最良の乾燥性能及びスタイリング性能を達成するためにユーザを補助するブラシ、ヘアドライヤー、及びクライアントデバイスを含むシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年4月4日国際公開、WO2019/067716、令和2年12月10日国内公表、特表2020-535860号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 8項目
理 由

第1 経緯の概略

本願は、2018年(平成30年)9月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2017年9月29日 米国、2017年9月29日 米国)を国際出願日とする出願であって、その経緯は、概ね次のとおりである。

令和3年 5月27日付け 拒絶理由通知書

令和3年 8月31日受付 意見書、手続補正書

令和3年11月22日付け 拒絶理由通知書

令和4年 2月24日受付 意見書

令和4年 4月 6日付け 拒絶査定

令和4年 8月16日受付 拒絶査定不服審判請求書

令和5年 8月 9日付け 拒絶理由通知書

令和6年 1月15日受付 意見書、手続補正書

令和6年 2月28日付け 拒絶理由通知書

令和6年 5月21日受付 意見書

第2 本願発明

本願の請求項1~18に係る発明は、令和6年1月15日受付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~18に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1、10に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」、「本願発明10」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ヘアドライヤーと、
ヘアブラシと、を備え、
前記ヘアブラシは、ユーザの髪及び前記ヘアドライヤーの少なくとも1つの特徴を検知済み特徴として検知し、前記検知済み特徴を前記ヘアドライヤーに転送するように構成され、
前記ヘアドライヤーは、前記ヘアブラシが取得した前記検知済み特徴をフィードバックとして受信するように構成され、
前記ヘアドライヤーは、前記ヘアブラシから受信した前記検知済み特徴に基づいて、警告を出力するように構成される、システム。」
「【請求項10】
ヘアドライヤー及びヘアブラシを含むシステムによって実施される方法であって、
前記ヘアブラシは、ユーザの髪及び前記ヘアドライヤーの少なくとも1つの特徴を検知済み特徴として、検知することと、
前記検知済み特徴を前記ヘアブラシから前記ヘアドライヤーに転送することと、
前記ヘアドライヤーは、前記ヘアブラシが取得した前記検知済み特徴をフィードバックとして受信することと、
前記ヘアブラシから受信した前記検知済み特徴に基づいた警告を前記ヘアドライヤーから出力すること
を含む、方法。」

第3 当審にて通知した拒絶の理由の概要

当審にて令和6年2月28日付けで通知した拒絶の理由は次の理由を含むものである。すなわち、本願発明1、10は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例1~5に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

(引用例)

引用例1 特開平3-8号公報

引用例2 特開平5-95813号公報

引用例3 特開平5-7508号公報

引用例4 実願昭59-57920号(実開昭60-170130号)のマイクロフィルム

引用例5 実願平1-55843号(実開平3-826号)のマイクロフィルム

第4 当審にて通知した拒絶の理由についての判断

1 引用例1の記載事項

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(1) 引用例1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審にて付与した。)。

・「この発明は、毛髪ブラシの一部に水分センサを取り付け、毛髪をブラッシングしながら毛髪の水分率を検出し、その水分率に応じて風温を最適に制御するようにした水分センサ付ドライヤに関するものである。」(1頁右欄14~18行)

・「この発明の目的は、ブラッシングしながら毛髪の水分率を簡単かつ迅速に測定できて、水分率に応じた風温調整が行え、毛髪の過乾燥を防止するとともに、頻繁な風温変化による不快感を無くすことのできる水分センサ付ドライヤを提供することである。」(2頁左上欄19行~右上欄4行)

・「第4図は毛髪ブラシ1の縦断面図であり、水分センサ4の電極7,8はプリント基板12のコネクタ13に直接接続され、電極間の相対距離が変化しないようになっており、安定した検出精度を得るとともに製造しやすくなっている。また、プリント基板12は遮熱板11によりドライヤ5の温風の影響をなくすとともに、毛髪ブラシ1のハウジングの内面にはシールド材(図示せず)を設けて裏面からの手などによる影響を無くすようになっている。プリント基板12上には検出回路の一部が有り、この出力はコネクタ14によりドライヤ本体5内の回路に着脱自在に接続されている。」(3頁左上欄3~14行)

・「第5図は電気回路図であり、第6図はそのタイミングチャートである。毛髪の静電容量は水分率と正の相関関係がある。

水分センサ4の電極7,8間の静電容量は発振器15の一部を構成し静電容量に応じた周波数(負の相関)の発振出力を得る。この出力はバッファ16を介して周波数-電圧(F-V)変換回路17、アンプ18により直流電圧に変換される。

この出力は、高水分率判定手段であるコンパレータ19で基準電圧と比較され、検出される水分率が高水分率時には低出力となり、水分率表示しED21で表示される。また、この出力は電力制御回路20に入力される。ここでは遅延手段である単安定マルチバイブレーク22により入力の立ち上りを検出して一定時間(数秒~数10秒)高出力となる出力と、入力の反転出力とのOR出力がトランジスタ23に入力される。このトランジスタ23により高水分率を検出したときと高水分率が最後に検出されてから一定時間の間、リレーコイル25aと電力表示LED24に電流が流される。26は温風発生回路であり、商用電源27が電源スィッチ32を介してヒータ29とモータ31に入力されている。電力切換スイッチ33はヒータ29の一部とモータ31の分圧抵抗30の一部にそれぞれ並列に挿入され、ヒータ電力、モータ回転数を連動して切換える。

ヒータ29と直列にダイオード28とリレー接点25bの並列回路が接続されている。リレー接点25bがOFFのときは、ヒータ29はダイオード28により半分の電力となり、ONのときはフルパワーとなる。モータ31の回転数はリレー接点25bに関係なく一定である。

したがって電力切換スイッチ33によりドライヤ5の高出力、低出力どちらの場合もリレー接点25bがONのとき、すなわち高水分率を検出したときと最後に高水分率を検出してから一定時間の間は高風温となる。リレー接点25bがOFFのとき、すなわち最後に高水分率を検出してから一定時間以降は、風量が変わらず電力が半分となるため低風温となる。」(3頁左上欄15行~左下欄14行)

・「第8図は第3の実施例であり、請求項(1)および(2)の両発明に対応する。

毛髪ブラシ1とドライヤ本体5とは分離しており、毛髪ブラシ1にはブルッスル2が植毛されたブリッスル基台3上のほぼ中央に水分センサ4が配設され、検出信号が制御回路40に入力される。制御回路40では検出した水分率に応じて表示器41でレベル表示するとともにブザー42に報知する。また、ドライヤ本体5の風温を水分率に応じて制御する。43は電源コードである。

使用者は毛髪ブラシ1でブラッシングしながら、表示器41とブザー42の報知で現在の水分率を確認し、ドライヤ本体5で毛髪を乾燥する。使用者に現在の水分率および全体の乾き具合を確認できる。そのため、乾いていない所を集中的に乾燥できるて効率よく乾燥できる。

なお、前記各実施例では風温制御を風量一定としてヒータ電力を制御するようにしたか、風量、ヒータ電力とともに制御してもよい。」(5頁左上欄20行~右上欄18行)

・「この発明の水分センサ付ドライヤは、毛髪ブラシに水分センサを設けたので、水分率の測定のための動作を必要とせず、毛髪ブラシで通常のブラッシングやセットをすることにより、水分率が検出される。しかも、高水分率判定手段を設け、高水分率のときは高風温に、また低水分率の時は低風温になるようにしたので、高風温で効果的に乾燥でき、かつ一定本分率を切ったときは低風温として毛髪の過乾燥を防止でき、毛髪を傷めることがない。」(5頁右上欄20行~左下欄9行)

・「

[図:0001418423000001.jpg]

」

・「

[図:0001418423000002.jpg]

」

・「

[図:0001418423000003.jpg]

」

・「

[図:0001418423000004.jpg]

」

(2) 引用例1の第8図に係る第3の実施例として記載された水分センサ付きドライヤにおいて、水分センサ4は、第3頁左上欄第15行~右上欄第2行、第5図、第6図の記載も考慮すると、毛髪の静電容量を検知し、当該静電容量に基づいて水分率を検出し、その水分率に応じて制御装置40の表示器41でレベル表示されるとともにブザー42に報知されるものであるから、毛髪の現在の静電容量を検知し、静電容量に基づいて毛髪の水分率を検出するものである。

そうすると、引用例1には、次の発明(以下、それぞれ、「引用発明1」、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明1)

「ドライヤ本体5と、制御回路40と、
毛髪ブラシ1と、を備え、
前記毛髪ブラシ1には、毛髪の現在の静電容量を検知し、静電容量に基づいて毛髪の水分率を検出する水分センサ4が配設され、水分センサ4の検出信号が制御回路40に入力され、制御回路40は検出した水分率に応じて表示器41でレベル表示するとともにブザー42に報知し、ドライヤ本体5の風温、風量を水分率に応じて制御する水分センサ付きドライヤ」

(引用発明2)

「ドライヤ本体5と、制御回路40と、毛髪ブラシ1とによって実施される方法であって、
前記毛髪ブラシ1に配設された水分センサ4が、毛髪の現在の静電容量を検知することと、
前記静電容量に基づいた毛髪の水分率を、前記毛髪ブラシ1から制御回路40に入力することと、
水分センサ4の検出信号が制御回路40に入力され、制御回路40は検出した水分率に応じて表示器41でレベル表示するとともにブザー42に報知し、ドライヤ本体5の風温、風量を水分率に応じて制御すること、
を含む方法」

2 本願発明1について

(1) 対比

本願発明1と引用発明1とを、その機能に照らして対比する。

ア(ア) 引用発明1において「ドライヤ本体5」と「制御回路40」は別の筐体に分離されているものの、それぞれ、温風を吹き出す装置と、当該装置を制御する回路であるから、両者を合わせて本願発明1における「ヘアドライヤー」と同様の機能を持つ。そうすると、引用発明1における「ドライヤ本体5」と「制御回路40」を合わせたものと、本願発明1の「ヘアドライヤー」とは、「毛髪を乾かす装置」という点で共通する。

(イ) 引用発明1における「毛髪ブラシ1」は、本願発明1における「ヘアブラシ」に相当する。

(ウ) 引用発明1における「毛髪の現在の静電容量」に基づいて検出する「毛髪の水分率」はユーザの髪の特徴であるから、本願発明1における「ユーザの髪及び前記ヘアドライヤーの少なくとも1つの特徴」に相当し、検知された「毛髪の水分率」は、本願発明1の「検知済み特徴」に相当する。

そうすると、引用発明1において、毛髪ブラシ1に、「毛髪の現在の静電容量を検知し、静電容量に基づいて毛髪の水分率を検出する水分センサ4が配設され、水分センサ4の検出信号が制御回路40に入力され」る点は、本願発明1と、ヘアブラシが、「ユーザの髪及び前記ヘアドライヤーの少なくとも1つの特徴を検知済み特徴として検知し、前記検知済み特徴を前記毛髪を乾かす装置に転送するように構成され」る点で共通する。

イ 引用発明1における「ドライヤ本体5」は、毛髪ブラシ1の水分センサ4が検知した静電容量に基づいた水分率に応じて風温、風量を制御していることから、水分率によるフィードバックがされているといえる。

そうすると、引用発明1において、「毛髪の現在の静電容量を検知し、静電容量に基づいて毛髪の水分率を検出する水分センサ4」の検出した水分率に応じて、「ドライヤ本体5の風温、風量を水分率に応じて制御」している点は、本願発明1において、「前記ヘアブラシが取得した前記検知済み特徴をフィードバックとして受信するように構成され」ている点に相当する。

ウ 引用発明1は、「水分率に応じて表示器41でレベル表示するとともにブザー42に報知し」ているところ、この「レベル表示」や「報知」は、本願発明1の「警告」と、「前記ヘアブラシから受信した前記検知済み特徴に基づいて」出力される「情報」である点で共通する。

そうすると、引用発明1において、「前記毛髪ブラシ1」に配設された「水分センサ4の検出信号が制御回路40に入力され、制御回路40は検出した水分率に応じて表示器41でレベル表示するとともにブザー42に報知」する点は、本願発明1と、「前記ヘアブラシから受信した前記検知済み特徴に基づいて、情報を出力するように構成される」点で共通する。

エ 引用発明1の「水分センサ付きドライヤ」は、「ドライヤ本体5」、「制御回路40」、「毛髪ブラシ1」からシステムを構成しているといえるから、本願発明1の「システム」に相当する。

オ 以上のとおりであるから、本願発明1と、引用発明1とは、以下の点で一致し、相違する。

<一致点>

「毛髪を乾かす装置と、
ヘアブラシと、を備え、
前記ヘアブラシは、ユーザの髪及び前記ヘアドライヤーの少なくとも1つの特徴を検知済み特徴として検知し、前記検知済み特徴を前記毛髪を乾かす装置に転送するように構成され、
前記毛髪を乾かす装置は、前記ヘアブラシが取得した前記検知済み特徴をフィードバックとして受信するように構成され、
前記毛髪を乾かす装置は、前記ヘアブラシから受信した前記検知済み特徴に基づいて、情報を出力するように構成される、システム。」

<相違点1>

本願発明1は、「ヘアドライヤー」が制御の機能を備えた毛髪を乾かす装置であって、ヘアブラシは、検知済み特徴を「ヘアドライヤー」に転送するように構成され、「ヘアドライヤー」が、ヘアブラシが取得した検知済み特徴をフィードバックとして受信するように構成され、「ヘアドライヤー」が、ヘアブラシから受信した検知済み特徴に基づいて、情報を出力するように構成されているのに対して、引用発明1のドライヤ本体5と制御回路40は別の筐体に分離されており、ドライヤ本体5は制御の機能を備えておらず、毛髪ブラシ1は、水分率を制御回路40に入力し、制御回路40が検出した水分率に応じて表示器41でレベル表示するとともにブザー42に報知し、ドライヤ本体5の風温、風量を水分率に応じて制御する点。

<相違点2>

本願発明1は、「前記ヘアブラシから受信した前記検知済み特徴に基づいて、警告を出力するように構成される」のに対し、引用発明1においては、「水分率に応じて表示器41でレベル表示するとともにブザー42に報知」する点。

(2) 判断

ア 相違点1について

引用例1の第3頁左上欄第3行~左下欄第14行及び第4図、第5図には、プリント基板12上に検出回路の一部を配置し、その出力をコネクタ14によりドライヤ本体5内の回路に着脱自在に接続される点が記載されており、ドライヤ本体5に制御回路を収める技術が記載されている。

そして、部品点数の削減、構成の単純化は、技術分野を問わず、様々な機器において周知の課題であるところ、引用発明1においても当然内在している課題である。当該課題に基づいて、引用例1に記載された上記技術を勘案し、引用発明1における制御回路40内の回路をドライヤ本体5内に設けるようにし、制御回路40の機能をドライヤ本体5に備えさせ、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について

引用発明1は、水分率に応じた表示、報知により、毛髪が乾燥されたことを知らせているが、これにより使用者はこれ以上の乾燥は好ましくないことを認識し得るのであるから、当該表示、報知により、過度の乾燥を防止しているともいえる。その意味からすると、当該表示、報知は、これ以上の乾燥を防止するための警告と解することもでき、引用発明1は実質的に相違するものではない。

そうでないとしても、引用発明1において、相違点2に係る構成とすることは、以下に述べるとおり、当業者にとって格別困難なことではない。

例えば、引用例2には、ドライヤ本体10に設けられた毛髪温度検出手段20により、毛髪温度を検出し、温風を当てている毛髪が所定の加熱温度に達すると、毛髪温度認識手段30の赤色LED31が点灯、点滅する点、ブザー35を用いる点、これにより、毛髪の過熱を防止する点が記載されている(特に、【0015】、【0017】、【0021】)。

また、引用例3には、ブラシに設けられた水分センサ4により、毛髪の水分率を検出し、毛髪が乾燥して水分率が第1のレベルを下回ると、ブザー33が断続音を発生し、さらに毛髪が乾燥して水分率が第2のレベルを下回ると、ブザー33が連続音を発生する点、発光ダイオードなどの光によって報知する点、これにより、過乾燥を防止する点が記載されている(特に、【0030】~【0037】)。

そして、引用例4には、ヘアブラシに設けられた温度センサー(5)により、ドライヤーがヘアブラシ接近し過ぎて、毛髪が過熱されるおそれが生じた場合に、温度センサー(5)でその状態を感知し、警告信号発信手段(4)を作動させ、警告音や警告ランプ等の所望の警告信号を出力する点が記載されている(特に、2頁下から5行~3頁下から5行、4頁4~12行)。

さらに、引用例5には、ヘアブラシに設けられた温度センサ9、湿度センサ4により、髪の毛の温度や湿度を検知し、髪の毛が設定温度以上になるか、髪の毛の湿度が設定値以下になると、ブザー、ランプの報知手段が作動し、ドライヤーを当てすぎることが避けられる点が記載されている(特に、3頁5~10行、6頁2行~下から4行)。

このように、ドライヤーによって髪を乾かす際に、過度の乾燥を防止するために、髪の温度、水分、湿度を検知し、それに応じて、ユーザに警告することは周知の技術である。

引用発明1において、毛髪の過度の乾燥を防止するといった課題は当然内在しており(前記1(1)ア(2頁左上欄19行~右上欄4行、5頁右上欄20行~左下欄9行))、水分率に応じた表示、報知により、乾燥されたことを知らせ、過度の乾燥を防止しているといえるものであるから、このような引用発明1において、周知の技術を適用し、髪の温度、水分、湿度を検知し、検知した温度等をフィードバックし、それに応じて、ユーザに警告するように構成すること、すなわち、相違点2に係る構成とすることは、相違点1に係る構成を考慮しても、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 本願発明1の奏する効果についてみても、引用発明1及び周知の技術から予測の範囲内のものであって、格別のものとは認められない。

エ 請求人の主張について

(ア) 請求人は、概ね、次のように主張している(令和6年5月21日受付意見書)。

・適切な水分率の基準、尺度を、表示や報知に伴うとした開示は引用例1のどこにも見当たらないから、相違点2についての「過乾燥を防止しているともいえる。」との判断は、論理に飛躍がある。

・引用例2はヘアブラシでの検知ではなく、ヘアドライヤー側での検知で構成されているため、警告の思想がない引用発明1と組み合わせた場合、警告用センサの配置をドライヤーの側とする形態となり、検知対象も水分率ではなく、毛髪温度とされているため、「検知済み特徴に基づいて」の「警告」の変更を伴い、本願発明1には至り得ない。

・引用例3には、ヘアーブラシ単体での構成例と、ヘアーブラシがドライヤーと一体化した構成例とが開示されており、前者を参考とした場合引用発明1の構成を大きく変更することになり、後者を参考とした場合にも一体化への変更を伴う。いずれにしても、本願発明1に至る必然性は考えられない。

・引用例4に開示されているセンサーは、引用発明1と異なる温度センサーであり、警告出力をする主体はブラシとされている。引用例4の開示内容を引用発明1に適用した場合には、引用発明1に対しての構成上の置換が大きく働くため、組み合わせた結果の装置は、本願発明1には至り得ない。

・引用例5も、ヘアブラシ単体での報知を開示するものであり、引用発明1との組み合わせを講じても、報知の主体がヘアブラシとなるのが必定であり、本願発明1には至り得ない。

(イ) 引用例1には、ドライヤを高風温から低風温に切り換える基準レベルaとして、毛髪の最適水分率よりもやや高めの水分率に相当する電圧を設定し、この基準レベルaよりも低水分率となると低風温になる旨(前記1(1)ア(4頁左上欄5~15行))、高水分率時に水分率表示LED21は点灯し、ブザーが報知する旨(前記1(1)ア(4頁右上欄12行~左下欄1行))が記載されており、毛髪の最適水分率を考慮し定めた高水分率の表示、報知をしているといえるから、引用例1には、適切な水分率の基準、尺度に伴う表示や報知の示唆が認められる。

また、低風温であっても使用する時間如何で過度に乾燥され得ることは明らかで、引用発明1における、水分率に応じた表示、報知により、使用者は必要以上の乾燥は好ましくないことを認識し得ることも明らかであるから、当該表示、報知により、過度の乾燥を防止していると十分にいえるものである。

そして、既に述べたとおり、ドライヤーによって髪を乾かす際に、過度の乾燥を防止するために、髪の温度、水分、湿度を検知し、それに応じて、ユーザに警告することは、引用例2~5に示されているように周知の技術であるから、毛髪の過度の乾燥を防止するといった課題が内在し、水分率に応じた表示、報知により、乾燥されたことを知らせ、過度の乾燥を防止しているといえる引用発明1において、周知の技術を適用し、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものである。

さらに、引用発明1において、周知の技術を適用するに当たり、引用例2~5に記載された技術における、検知する内容、検知や警告する位置等は、相違点2に係る構成とする上で、特段支障となる事情でもない。

引用例2~5に記載された、毛髪の過度の乾燥を防止するための検知、警告に係る技術思想(毛髪の乾燥の度合いを検知し、それに基づいて警告すること)は、ドライヤーによって髪を乾かすための手段における個別具体的な構成の違いに必ずしも拘束されるものではないことは、当業者であれば容易に理解することができる。引用発明1において、引用例2~5に記載された点を適用するに当たり、当然に、引用発明1の構成を大きく変更することになるとは認められない。

また、引用例2、4に記載された技術は、毛髪の温度を検知するものであるが、温度、水分率とも毛髪の乾燥の度合いを測る情報である点で共通しているから、引用発明1において検出された水分率に基づいて警告する上で、十分に参考になるものであるし、引用発明1において、毛髪の過度の乾燥を防止するために、毛髪ブラシ1において毛髪温度を検出し、それに基づいて警告するように構成することも、当業者にとって格別困難なことではない。

よって、請求人の主張は採用することができない。

オ 以上のとおり、本願発明1は、引用発明1及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 本願発明10について

(1) 対比

本願発明10と引用発明2とを、その有する機能に照らして対比する。

ア(ア) 引用発明2において「ドライヤ本体5」と「制御回路40」は別の筐体に分離されているものの、それぞれ、温風を吹き出す装置と、当該装置を制御する回路であるから、両者を合わせて本願発明10における「ヘアドライヤー」と同様の機能を持つ。そうすると、引用発明2における「ドライヤ本体5」と「制御回路40」を合わせたものと、本願発明10の「ヘアドライヤー」とは、「毛髪を乾かす装置」という点で共通する。

(イ) 引用発明2における「毛髪ブラシ1」は、本願発明10における「ヘアブラシ」に相当する。

(ウ) 引用発明2における「毛髪の現在の静電容量」に基づいて検出する「毛髪の水分率」はユーザの髪の特徴であるから、本願発明10における「ユーザの髪及び前記ヘアドライヤーの少なくとも1つの特徴」に相当し、検知された「毛髪の水分率」は、本願発明10における「前記検知済み特徴」に相当する。

そうすると、引用発明2において、毛髪ブラシ1に配設された水分センサ4が、「毛髪の現在の静電容量を検知」し、「当該静電容量に基づいた毛髪の水分率を、前記毛髪ブラシ1から制御回路40に入力すること」と、本願発明10において、ヘアブラシが、「ユーザの髪及び前記ヘアドライヤーの少なくとも1つの特徴を検知済み特徴として、検知」し、「前記検知済み特徴を前記ヘアブラシから前記ヘアドライヤーに転送する」こととは、ヘアブラシが、「ユーザの髪及び前記ヘアドライヤーの少なくとも1つの特徴を検知済み特徴として、検知することと、前記検知済み特徴を前記ヘアブラシから前記毛髪を乾かす装置に転送すること」という点で共通する。

イ 引用発明2における「ドライヤ本体5」は、毛髪ブラシ1の水分センサ4が検知した静電容量に基づいた水分率に応じて風温、風量を制御していることから、水分率によるフィードバックがされているといえる。

そうすると、引用発明2において、「水分センサ4の検出信号が制御回路40に入力され」、「ドライヤ本体5の風温、風量を水分率に応じて制御する」ことは、本願発明10において、「前記ヘアブラシが取得した前記検知済み特徴をフィードバックとして受信すること」に相当する。

ウ 引用発明2は、「水分率に応じて表示器41でレベル表示するとともにブザー42に報知し」ているところ、この「レベル表示」や「報知」は、本願発明10の「警告」と、「前記ヘアブラシから受信した前記検知済み特徴に基づい」て出力される「情報」である点で共通する。

そうすると、引用発明2において、「前記毛髪ブラシ1」に配設された「水分センサ4の検出信号が制御回路40に入力され、制御回路40は検出した水分率に応じて表示器41でレベル表示するとともにブザー42に報知」する点は、本願発明10と、「前記ヘアブラシから受信した前記検知済み特徴に基づいた情報を前記毛髪を乾かす装置から出力すること」という点で共通する。

エ 引用発明2の「水分センサ付きドライヤ」は、「ドライヤ本体5」、「制御回路40」、「毛髪ブラシ1」からシステムを構成しているといえるから、本願発明10の「システム」に相当し、引用発明2は、本願発明10と、「毛髪を乾かす装置及びヘアブラシを含むシステムによって実施される方法」である点で共通する。

オ 以上のとおりであるから、本願発明10と、引用発明2とは、以下の点で一致し、相違する。

<一致点>

「毛髪を乾かす装置及びヘアブラシを含むシステムによって実施される方法であって、
前記ヘアブラシは、ユーザの髪及び前記ヘアドライヤーの少なくとも1つの特徴を検知済み特徴として、検知することと、
前記検知済み特徴を前記ヘアブラシから前記毛髪を乾かす装置に転送することと、
前記毛髪を乾かす装置は、前記ヘアブラシが取得した前記検知済み特徴をフィードバックとして受信することと、
前記ヘアブラシから受信した前記検知済み特徴に基づいた情報を前記毛髪を乾かす装置から出力すること
を含む、方法。」

<相違点3>

本願発明10は、「ヘアドライヤー」が制御の機能を備えた毛髪を乾かす装置であって、ヘアブラシから、検知済み特徴を「ヘアドライヤー」に転送するように構成され、「ヘアドライヤー」が、ヘアブラシが取得した検知済み特徴をフィードバックとして受信するように構成され、「ヘアドライヤー」が、ヘアブラシから受信した検知済み特徴に基づいて、情報を出力するように構成されているのに対して、引用発明2のドライヤ本体5と制御回路40は別の筐体に分離されており、ドライヤ本体5は制御の機能を備えておらず、毛髪ブラシ1は、水分率を制御回路40に入力し、制御回路40が検出した水分率に応じて表示器41でレベル表示するとともにブザー42に報知し、ドライヤ本体5の風温、風量を水分率に応じて制御する点。

<相違点4>

本願発明10は、「前記ヘアブラシから受信した前記検知済み特徴に基づいた警告」を出力するように構成されているのに対し、引用発明2においては、「水分率に応じて表示器41でレベル表示するとともにブザー42に報知」する点。

(2) 判断

そこで、相違点3、4について検討するに、相違点3、4は、実質的に前記相違点1、2と同じであるから、本願発明1と同様の理由により、本願発明10は、引用発明2及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび

以上のとおり、本願発明1は、引用発明1及び周知の技術に基いて、本願発明10は、引用発明2及び周知の技術に基いて、いずれも、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-012837

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