商標拒絶査定不服審判
2022-012399
ホールカカオ、ホール
- 審判番号
- 2022-012399
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2021-106128
- 請求日
- 2022年08月09日
- 審決日
- 2024年06月28日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】江崎グリコ株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 山田 啓之
- 審判官 渡邉 あおい
- 分類
- T18 .13 -Z (W3543) / T18 .16 -Z (W3543)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第1項第6号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2021-106128拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年8月26日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年2月10日付け :拒絶理由通知書
令和4年4月7日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年5月12日付け :拒絶査定
令和4年8月9日 :審判請求書の提出
令和6年2月28日付け :審尋
令和6年4月11日 :回答書の提出
第2 本願商標
本願商標は、「WHOLE CACAO」の文字を標準文字で表してなり、第30類、第35類及び第43類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、登録出願されたものであり、指定商品及び指定役務については、上記第1の手続補正書の提出により、第35類「菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「飲食物の提供」に補正されたものである。
第3 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、「本願商標は、「WHOLE CACAO」と横書きしてなるところ、食品や飲食物の分野において、「CACAO」を片仮名で表記したものである「カカオ」は、カカオの豆や果実を原材料に使用した食品・飲食物を表す際に使用されている(「カカオミルク」等)ことから、本願商標は補正後の指定役務との関係において、「カカオ(の豆や果実)をまるごと使用した飲食物の提供」や「カカオ(の豆や果実)をまるごと使用した菓子・パンの小売の業務」といったことを認識させるにとどまり、役務の質を理解させ、また、小売等役務の取扱商品の品質を表示したものと理解させるにすぎないものであるというべきである。そして、上記以外の役務に使用した場合、役務の質の誤認を生ずるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同第6号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第4 当審における審尋
当審において、令和6年2月28日付けで通知した審尋により、別掲1、別掲2(1)アないしウ及び別掲2(2)に示すとおりの事実を新たに示した上で、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同項第6号に該当する旨の見解を示し、相当の期間を指定して請求人に意見を求めた。
第5 上記第4の審尋に対する請求人の意見の要旨
「ホール(whole)」が「まるごと。全部。全体。」と訳されることについて請求人は争うものではないが、特許庁の過去の登録例や、審尋において示された「ホールカカオ」の使用事例からすれば、「WHOLE CACAO」が「まるごとカカオ」という意味合いを想起させるとしても、「まるごとカカオ」から具体的にどのようなことを表しているのかまでは想起できず、いまだ暗示的意味合いにとどまるものであり、そもそも「WHOLE CACAO」から一般の需要者が「まるごと使用したカカオ」といった意味合いを直ちに理解するとの審判官の指摘には同意できない。
第6 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号及び同項第6号の趣旨
(1)商標法第3条第1項第3号に掲げる商標が、商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、指定役務との関係で、その役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他役務の識別力を欠くものであることによるものと解される。
そうすると、商標が、指定役務について役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるというためには、商標が指定役務との関係で、役務の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、当該商標が当該指定役務に使用された場合に、取引者、需要者によって、将来を含め、役務の質を表示したものとして一般に認識されるものであれば足りるものであって、必ずしも当該商標が現実に当該指定役務に使用されていることを要しないと解される(最高裁昭和53年(行ツ)第129号判決、知財高裁令和3年(行ケ)第10100号判決参照)。
(2)商標法は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」ものであるところ(同法第1条)、商標の本質は、自己の業務に係る商品又は役務と識別するための標識として機能することにあり、この自他商品又は役務の識別標識としての機能から、出所表示機能、品質保証機能及び広告宣伝機能等が生じるものである。同法第3条第1項第6号が、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を商標登録の要件を欠くと規定するのは、同項第1号ないし第5号に例示されるような、識別力のない商標は、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、自他商品又は役務の識別力を欠くために、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである(知財高裁平成24年(行ケ)第10323号判決参照)。
2 本願商標の商標法第3条第1項第3号及び同項第6号該当性について
(1)本願商標を構成する「WHOLE CACAO」の文字について
本願商標は、「WHOLE CACAO」の文字を標準文字で表してなるものであるから、その構成文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められる。
そして、別掲1に示した辞書情報への記載によれば、本願商標の構成中の「WHOLE」の文字(語)は、「まるごと。全部。全体。」を、「CACAO」の文字(語)は、「赤道に近い熱帯地方に生育する・・・植物で,果実からカカオ豆をとり,チョコレートやココアの原料とする」(カカオ)を意味する、いずれも親しまれた語と認められる。
また、別掲2(1)アないしウによれば、本願商標の指定役務に通じる食品の分野においては、例えば、「ホールフード」が、食材を全部食べる(使う)という意味合いで、「ホールトマト」が、トマトがまるごとという意味合いで、「ホールチキン」が、鶏肉まるごとという意味合いで、それぞれ使用されていることからすると、本願商標の構成中の「WHOLE」に通じる「ホール」の語に名詞(食材)が続いた場合は、当該「ホール」は、その名詞が表すもの(食材)をまるごと、全部、との趣旨で使用され、また、そのような使用法が一般的に受け入れられているものと認められる。
さらに、別掲2(2)アによれば、本願商標の指定役務に通じる食品の分野においては、本願商標の構成中の「CACAO」に通じる「カカオ」の語は、「チョコレートの原料であるカカオは、熱帯・亜熱帯気候に育つフルーツ。」、「カカオに捨てるところなし。/カカオニブだけじゃなく、カカオ豆を包む殻も、周りについている果肉もおいしい食材なんです!」、「カカオニブをまぶした骨つきラムのローストにカカオマスを使った赤ワインソース、くるみとカカオバターのパン、カカオパルプのヴィシソワーズなど、食材としてのカカオを味わい尽くすプレートをご用意しました。コーヒーなど選べるドリンク付きです。〈エディアール〉カカオをまるごと味わうプレート・・・」のように、「カカオ」の文字のみで食材の名称を表す語として使用され、そのような使用法が一般的に受け入れられているものと認められる。
上記に加えて、別掲2(2)ア及び同イによれば、「カカオ豆」の商品について本願商標の構成文字「WHOLE CACAO」に通じる「ホールカカオ」の語が使用されている事実も確認できる。
(2)判断
上記(1)の認定事実によれば、「WHOLE CACAO」の文字は、本願商標の指定役務の分野の取引者及び需要者に、「まるごとのカカオ」ほどの意味合いを理解させるものというのが相当である。
そうすると、本願商標は、これをその指定役務中、「菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に使用するときは、当該便益の提供に係る取扱商品である「菓子及びパン」が「まるごとのカカオ」を使ったものであるという、取扱商品の品質を表示記述したものとして、一般に認識されるものというのが相当であり、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、自他役務の識別力を欠くというべきである。
したがって、本願商標は、その指定役務中、「菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に使用するときは、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標として、商標法第3条第1項第6号に該当する。
また、本願商標は、これをその指定役務中、「飲食物の提供」に使用するときは、その役務が「まるごとのカカオ」を使った飲食物の提供であるという役務の質を表示記述したものとして、一般に認識されるものというのが相当であり、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、自他役務の識別力を欠くというべきである。
さらに、上記(1)のとおり、本願商標は、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものである。
したがって、本願商標は、その指定役務中、「飲食物の提供」に使用するときは、その指定役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当する。
3 請求人の主張について
請求人は、「ホール(whole)」が「まるごと。全部。全体。」と訳されることについて争うものではないが、特許庁の過去の登録例や、審尋において示された「ホールカカオ」の使用事例からすれば、「WHOLE CACAO」が「まるごとカカオ」という意味合いを想起させるとしても、「まるごとカカオ」から具体的にどのようなことを表しているのかまでは想起できず、いまだ暗示的意味合いにとどまるものであり、そもそも「WHOLE CACAO」から一般の需要者が「まるごと使用したカカオ」といった意味合いを直ちに理解するとの審判官の指摘には同意できない旨主張する。
しかしながら、別掲2(2)ア及び上記2(1)のとおり、「カカオ」は、それのみで食材の名称を表す語として使用され、そのような使用法が一般的に受け入れられているものと認められることに加えて、別掲2(1)アないしウによれば、本願商標の指定役務に関係の深い食品の分野においては、例えば、「ホールフード」が、食材を全部食べる(使う)という意味合いで使用されており、ホールフードは、食品ロスの削減につながることでも注目されている事実がうかがえること、別掲2(2)アによれば、「カカオ」は、その全体が食材となり得る旨紹介されており、実際にカカオの全体を使った食事のメニューが飲食物の提供の対象となっていることをも併せ考慮すれば、「まるごとのカカオ」は、本願商標との指定役務との関係について、上記2の判断のとおり、役務の取扱商品の品質又は役務の質を表示記述したものとして、一般に認識されるものというのが相当であり、これを認識させる本願商標は、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、自他役務の識別力を欠くというべきである。
なお、本願商標の構成中の「WHOLE」に通じる「ホール」の語に名詞(食材)が続いた場合は、当該「ホール」は、その名詞が表すもの(食材)をまるごと、全部、との趣旨で使用され、また、そのような使用法が一般的に受け入れられているものと認められることについては、別掲2(1)エないしキに示した「ホールカシューナッツ」、「ホールアーモンド」、「ホールピスタチオ」及び「ホールマカダミアナッツ」の使用事例からも確認できるものである。
さらに、請求人は、他の商標が商標登録されている事例を踏まえれば、本願商標も商標登録されるべきである旨主張するが、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号又は同項第6号に該当するものであるかどうかの判断は、当該商標の構成態様と指定商品又は指定役務とに基づいて、個別具体的に検討・判断されるというほかないというべきであって、請求人の主張に係る各事例が存在するからといって、本願商標が同各号に該当することを否定することはできず、また、本願商標についての同各号該当性の判断が、これらの各事例によって左右されるものでもない。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同項第6号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり、審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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